JP5393294B2 - タービン動翼と、タービン動翼を固定したタービンロータ - Google Patents

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本発明は、固定されたタービン動翼を有するタービンロータに関する。
特開2001−12208号公報(特許文献1)では、フォーク型翼植込部を有するタービン動翼とディスクの結合構造について開示されており、蒸気タービン用のタービンロータのタービン翼とタービンロータをピンにより結合する発明が開示されている。図11に、従来のフォーク型翼植込部と呼ばれる蒸気タービン翼とディスクの結合構造を示す。タービン翼1の下部に位置する翼植込部2aは、軸方向11に配分された複数の翼フォーク2を有し、それらはディスク側に配分されたディスクフォーク3と交互に係合され、半径方向10位置の異なる複数のピン4を軸方向11に貫通させることにより結合されている。
特開平2001−12208号公報
タービン翼とディスクの結合部には、翼の回転に伴って大きな遠心力が作用し、かつ、蒸気による振動荷重が作用する環境にある。従来例のロータ構造の翼結合部では、場合によっては蒸気による振動荷重により高い応力が発生する可能性がある。本発明の目的は、翼結合部において、蒸気による振動荷重による応力を低減するタービン翼とタービンロータの結合方法を検討し、構造健全性の高いタービンロータを提供することにある。
上記課題を解決する本発明の特徴は、タービンロータのディスクとタービン翼との結合
部に、振動荷重による応力を低減するピンを設けることにある。具体的には、複数の部材
が一体化された棒状のピンを使用し、隙間を有する部材間の摩擦力などにより応力を低減する。例えば、内部ピンなどの充填部材を有するピンを使用する。その結果、翼の回転に伴って大きな遠心力が作用したり、蒸気による振動荷重がかかった場合には、ピンを構成する複数の部材間で摩擦によるすべりなどの構造減衰力が発生し、振動負荷を減衰させることができる。

本発明によれば、構造健全性に優れたタービンロータを提供することができる。
(a)タービン翼とディスク部との結合構造を示す図である。(b)タービン翼結合部の断面を示す図である。 タービン翼とロータの結合部の詳細を示す図である。 無回転時のタービン翼とロータの結合部の形状を示す図である。 回転時のタービン翼とロータの結合部の形状を示す図である。 実施例のピンの断面を示す図である。 実施例のピンの断面を示す図である。 実施例のピンの断面を示す図である。 実施例のピンの断面を示す図である。 タービン翼とディスク部との結合構造を示す図である。 タービン翼とディスク部との結合構造を示す図である。 従来のタービン翼とディスクの結合部の構造を示す図である。
タービン翼とディスクの結合部には、翼の回転に伴って大きな遠心力が作用し、かつ、蒸気による振動荷重が作用するため、結合部は強度的に非常に厳しい環境にあった。そこで、本発明はタービン翼とタービンロータを複数の部材より形成された棒状のピンにより締結することとしている。翼の回転に伴って大きな遠心力が作用し、かつ、蒸気による振動荷重が作用した場合に、翼を締結した該ピンでは、ピンを構成する複数の部材間で摩擦によるすべりなどの構造減衰力が発生し、振動負荷を減衰させることができる。
タービン動翼とタービンロータとは、互いに嵌合され、嵌合部を棒状のピンにより固定して締結される。棒状のピンが複数の部材より形成されており、ピン内部に内部ピンなどの部材を内包させている。内部ピンを設ける構造の他、ピンを軸方向に分割し、通しボルトや嵌合などで一体化したものを使用することができる。翼の回転に伴って大きな遠心力が作用し、かつ、蒸気による振動荷重が作用した場合に、翼を締結したピンでは、ピンを構成する複数の部材間で摩擦によるすべりなどの構造減衰力が発生し、振動負荷を減衰させることができる。すなわち、振動負荷により、タービン翼やタービンロータに発生する応力を低減することができる。これにより、タービン翼やタービンロータの構造健全性を高めることができる。
内部ピンを使用する場合には、ピン軸方向に穿孔されたねじ穴やボルト穴を設け、ねじ部を有する内部ピンやボルトを挿入して嵌合部を締めることにより、容易にタービン動翼とタービンロータの締結が可能となる。
ピンに内包される部材を磁性体・ダンパ材などとすることにより、さらに振動の抑制が可能となる。
上記の構造は適宜組み合わせて設計が可能であり、上記のタービン翼を固定したタービンロータは発電設備に好適である。なお、本発明は、クリスマスツリー型,フォーク型など、従来の任意のタービン翼とディスクとの結合構造に適用可能である。以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する
図1(a)と図1(b)は蒸気タービン翼とディスクの結合構造を示している。図1(b)は、図1(a)の横断面図である。この結合構造は、フォーク型翼植込部と呼ばれる。タービン動翼1の下部に翼植込部2aが設けられており、翼植込部2aは軸方向11に配分された複数の翼フォーク2を有する。翼フォーク2は、ディスク側に設けられたディスクフォーク3と交互に係合され、複数のピン4を軸方向11に貫通させることにより結合されている。複数のピン4は、半径方向10の異なる位置に配置されている。
図2にピン4の詳細断面図を示す。ピン4には、ピン軸方向に穴が穿孔され、この穴の中に、内部ピン5を内包している。ピン4と内部ピン5は、接触面5aを介して接触している。タービン翼1に振動負荷が加わった場合、タービン翼1とディスクフォーク3を結合しているピン4も振動負荷による荷重を受けて振動する。このとき、ピン4は穿孔された穴の中に内部ピン5を有しており、ピン4と内部ピン5の間に存在する摩擦面5aにおいて、ピン4と内部ピン5の相対すべりが発生する。ピン4と内部ピン5の間に発生する相対すべりにより、ピン4と内部ピン5の間に働く摩擦力による仕事が振動負荷によるエネルギを散逸させ、タービン翼1の振動負荷に対する応答を低減することができる。
すなわち、ピン4と内部ピン5の間に存在する摩擦面5aにおいて、ピン4と内部ピン5の相対すべりを発生させることにより、ピン4と内部ピン5はダンパとして働き、タービン翼1に発生する、振動負荷に対する応答である振動応力を低減することができる。
また、内部ピンを磁石などの磁性体とすることも有効である。磁性体をピン4の内部に挿入することで、振動エネルギを誘導電流によるジュール熱に変換し、タービン翼1の減衰を大きくさせることが可能となる。
ピン4と内部ピン5の間隙は、組立てが可能な程度の隙間をあけても良いし、シメシロを設けてもよい。ピン4と内部ピン5の間に隙間がある場合は、ピン4から内部ピン5が抜けることがないように、内部ピン5の抜け防止の策を講じる。例えば、端部をカシメたり、溶接したり、ねじ止めしたりすることが好ましい。ピン4と内部ピン5にシメシロを設ける場合は、焼き嵌め,冷やし嵌め,圧入などの方法で、ピン4に内部ピン5を挿入する。
図3と図4にピン4と内部ピン5の隙間設定に関する模式図を示す。図3はタービンが無回転の状態であり、図4はタービンが回転した状態である。タービンが回転すると翼フォーク2には遠心力による荷重Aが加わり、ピン4は図のように変形し、内部ピン5は遠心力によりピン穴5eに接触する。このときピン4の穴の変形の大きい点5fと変形の小さい点5gの変形差よりも、内部ピン5とピン穴5eとの隙間を小さくすることにより、内部ピン5をピン穴5eに確実に接触させ、良好な振動減衰能力を付与することができる。この隙間は、数十μm程度とする。10〜80μmの間隙であれば、機械加工や組立てが十分可能である。
なお、図1〜図4では、ピン4に穿孔した穴がピン4を貫通している例を示しているが、ピン4を貫通している必要はなく、ピン4の端部からある適当な長さであっても良い。ピン4に貫通孔ではない挿入孔を設けることにより、ピン4の穴加工や内部ピン5の挿入が容易となる。
また、内部ピン5の側面や、ピン4に穿孔した穴の内面にローレット加工を施し、ピン側面の摩擦係数を高め、摩擦力による仕事による散逸エネルギを増加させても良い。
さらに、内部ピン5は、複数のピンや小さな玉であっても、また、ダンパ材,磁石等であっても、ピン4との間に発生する摩擦力の仕事により、振動エネルギを散逸することができる。
本実施例は、ピン4から内部ピン5が抜けることがないように、内部ピン5の抜け防止の手段を設けた例について説明する。
図5は、内部ピン5にねじ部5b,5cを有するピン4を示す図である。内部ピン5には回し穴5dが設けられており、回し穴5dにレンチを入れてピン4を回すことにより、内部ピン5をピン4に挿入する。内部ピン5にねじ部を有することにより、組立てが容易である。さらに、ピン4の端部4a,4bをカシメたり、溶接することにより、内部ピン5の抜け防止を行うことが好ましい。ピン4では、前述のように、翼の遠心荷重を分担する必要がある。この際、ピン4にはせん断応力と曲げ応力が発生するが、ピン4に穿孔した穴による断面積減少と断面係数の減少による応力増加により、ピン4と内部ピン5の応力が制限値、すなわち、降伏応力や抗張力に安全率を考慮した許容値、を超えないように設定する。
図6は、ピン4に穿孔した穴に、内部ピン5を内包し、穿孔した穴の端部に抜け止め栓6を設けた例を示す図である。他の例と同様に、ピン4と内部ピン5間に発生する相対すべりによる摩擦力の仕事により、振動エネルギを散逸させることができる。
図6の内部ピン5は、ダンパ材に変更してもよい。ダンパ材としては内部摩擦の大きな材料を使用でき、メッシュバネ,砂鉄,鉛やアルミニウムなどの軟らかい金属や、樹脂,ゴムのような粘弾性体などが例示される。ダンパ材をピン4の充填材として使用することにより、振動エネルギを抑制できる。
本実施例では、ピン4を長手方向に一体化された複数の部材で構成することにより、振動負荷に対する応答を低減する例を示す。図7は、ピン4を軸方向(長手方向)に分割された複数の部材7,8,9により構成した例である。部材7は軸端に凸部7bと凹部7aを有し、凸部7bと凹部7aを嵌め込むことにより複数の部材7を軸方向に連結する。連結された部材7の端部には、一方が平坦な部材8と部材9を嵌め込み、ピン4を構成する。凸部7b,8bと凹部7a,9aは、部材7と同様の嵌め合い構造により連結される。その結果、ピン4は、複数の部材が長手方向に一体化されており、凸部7b,8bと凹部7a,9aの嵌め合い部で多数の接触面を有し、この接触面の摩擦により、振動の減衰を高めることができる。
図8は、同様にピン4を軸方向に分割した構成である。この実施例では、ピン4の軸方向に分割された複数の部材13の中央に、さらにボルト穴13aを穿孔し、このボルト穴13aにボルト15を通した。さらに、ナット14を用いて締め込み、ピン4を構成した。この実施例においても、ピン4は、部材13の軸方向に多数の接触面を有することにより、この接触面の摩擦により、減衰を高めることができる。
図9に、実施例1と異なるタービン翼とディスクとの結合構造を示す。これは、ディスク22に溝24が設けられており、一方、翼20にはT字型の植え込み部23が設けられており、溝24と植え込み部23とを嵌合した構造である。翼20の先端にはシュラウド21が設けられている。本実施例では、ディスク22に設けた溝24とT字型の植え込み部23を嵌合した部位にピン4を挿入し、このピン4に穿孔した穴に内部ピン5が挿入されている。このピンにより、図1や図2に示した実施例と同様な作用により翼20の振動を低減することができる。
図10に、さらに他のタービン翼と、翼を固定するためのディスクとの結合構造を示す。この構造は、クリスマスツリー型翼溝と呼ばれ、ディスク31には溝33が設けられており、翼30にはクリスマスツリー型の植え込み部32が設けられており、これらを嵌合した構造である。翼30の先端にはシュラウド35が設けられている。
本実施例では、翼30の翼根元34に穿孔した穴にピン4を挿入し、このピン4に穿孔した穴に内部ピン5が挿入されている。このピンにより、図1や図2に示した実施例と同様な作用により翼30の振動を低減することができる。
1 タービン動翼
2 翼フォーク
2a 翼植え込み部
3,22,31,33 ディスク
4 ピン
4a,4b ピン端部カシメ
5 内部ピン
5a 接触面
5b,5c ねじ部
5d 回し穴
5e ピン穴
5f ピン4の穴の変形の大きい点
5g ピン4の穴の変形の小さい点
6 抜け止め栓
7,8,9,13 部材
7a,9a 凹部
7b,8b 凸部
10 タービンロータの半径方向
11 タービンロータの軸方向
12 タービンロータ
13a ボルト穴
14 ナット
15 ボルト
20,30 翼
21,35 シュラウド
23 T字型の植え込み部
24 溝
32 クリスマスツリー型の植え込み部
34 翼根元
A 遠心力による荷重

Claims (3)

  1. タービン動翼と、前記タービン動翼を固定するディスクとを有するタービンロータにお
    いて、
    前記タービン翼と前記ディスクとの結合部に棒状のピンが設けられており、前記ピンは複数の部材より形成され、
    前記ピンは、ピン軸方向に穿孔された穴を有し、前記穴の内部に充填部材を有し、
    前記充填部材は内部ピンであり、
    前記ピンと前記内部ピンの間に、前記ピンが遠心力によって生じた翼荷重により変形することにより前記内部ピンと接触するための隙間を有することを特徴とするタービンロータ。
  2. 請求項1に記載のタービンロータにおいて、
    前記内部ピンは磁性体であることを特徴とするタービンロータ。
  3. 請求項1に記載のタービンロータにおいて、
    前記穴はねじ穴を有し、前記内部ピンはねじ部を有することを特徴とするタービンロータ。
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