(実施例1)
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて行う。
図1に、本実施例の画像形成装置としての、中間転写方式を用いたカラー画像形成装置の概略構成図を示す。本実施例では、タンデム中間転写方式、つまり、それぞれ像担持体を備えた、複数の画像形成部にて各色のトナー像を形成するカラー画像形成装置を用いる。
尚、前記した従来例の図10に示した画像形成装置との同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。本実施例においても、上記した従来例の画像形成装置と同様にして、画像形成が行われる。即ち、従来例と同様の画像形成工程により、各画像形成部にて、感光ドラム2表面にトナー像が形成され、中間転写ベルト8にそれぞれの画像形成部よりトナー像が重ねて転写され、それが転写材に二次転写される。そして、この転写されたトナー像が転写材に定着されたものが画像形成物として排出される。
この画像形成動作を行う本実施例における像担持体としての各画像形成手段について、具体的に説明する。
各色画像形成部の各感光ドラム2は、直径30mmの負帯電性の感光体を用い、帯電ローラ7にDC成分にAC成分を重畳した帯電バイアスを印加して、感光ドラム2を約−650Vに一様に帯電する。露光装置1は不図示の波長760nmの近赤外レーザダイオードと、感光ドラム2上にレーザ光を走査するポリゴンスキャナを有し、画像部の電位を−250Vに低下させる(画像データに従った静電潜像を形成する)。現像装置3は、現像剤として、非磁性一成分トナーを用いた接触現像器であり、感光ドラム2上の静電潜像にトナーを接触現像する。一次転写ローラ4は、中間転写ベルト8に従動回転し、一次転写ローラ4の芯金には、300Vの一次転写電圧が印加され、感光ドラム2上すなわち、像担持体上のトナー像が中間転写ベルト8に一次転写される。
中間転写ベルト8は、駆動ローラとしての役割を合わせ持つ二次転写対向ローラ15、テンションローラ9、二次転写前張架ローラ11により張架されている。二次転写対向ローラ15は直径30mmの芯金にカーボンブラックにより抵抗調整されたEPDMゴムを500μmの厚みで被覆したものである。テンションローラ9は直径30mmのアルミ製中空管であり、両端軸受け部にバネがあり総圧40Nでベルトを張架している。また、二次転写前張架ローラ11は直径20mmのステンレス製のローラであり、中間転写ベルト8に従動回転している。中間転写ベルト8は、厚み75μm、周長1000mm、長手方向(画像形成幅方向)長320mmの単層無端状のシームレスベルトであり、カーボン分散により抵抗調整を行ったポリイミドで形成されている。
次に二次転写部の構成について説明する。
二次転写部は、シームレスベルトであり、転写部材である移動可能な二次転写ベルト31、二次転写ローラ10、駆動ローラ33、清掃部材としてのブラシローラ34、対向ローラ35、吸着ローラ36から構成されている。対向ローラ35は、ブラシローラ34の対向ローラ35としても、またベルトのテンションを調整するためのテンションローラとしても機能する。あるいは、テンションローラを別途設けることも可能である。吸着ローラ36とベルトクリーナは、吸着対向ローラ軸を基準に位置決めすることで対向ローラ35との距離を保つ構成としてある。
吸着ローラ36は、給紙カセット20から搬送されてきた転写材Pを二次転写ベルト31表面に静電吸着させるためのものである。例えば金属の芯金を、体積抵抗率105〜108Ω・cm程度に調整したEPDM、ウレタンゴム、NBR等の導電弾性体で覆い、その上に中層として厚さ200〜600μm程度のウレタン等の層を設け、さらにその上に250μm程度の表層を設けている。表層にはスチレン等を用いる。
吸着ローラ36の両端の芯金部を0.04〜0.5N程度の線厚でバネ加圧することにより、吸着ローラ36を二次転写ベルト31を介して対向ローラ35に圧着させ、二次転写ベルト31の移動に対して従動回転させる。これにより、吸着ローラ36と対向ローラ35との間には吸着ニップ部が構成されている。
吸着ローラ36には定電圧電源である吸着バイアス印加電源が接続されている。本実施例における二次転写ローラ10は二次転写ベルト31の回転に従動して回転する構成であるが、二次転写ローラ10を駆動させて駆動ローラとしての機能を持たせても良く、その場合には二次転写ベルト31を支持するローラを減らすことも可能である。二次転写ローラ10は、直径が6mmの芯金に約4mmの厚みの発泡ヒドリンゴムからなる弾性層が被覆されており、外径が14mmになるように構成されている。
通常、二次転写方式の画像形成装置においては、従来例で説明したように紙を中間転写ベルト8側に沿わせて二次転写部に紙を進入させる。しかし、後に詳述する余白無しプリントモードにおいては、上記したように転写材である紙を転写材担持体である二次転写ベルト31に吸着させて二次転写ニップ部に進入させる。すなわち、転写材担持体上に転写材を担持して転写ニップに進入させる。
本構成においては、二次転写ローラ10には直接トナーが触れないため、抵抗と硬度以外にはローラの物性に関しての制約はなく、二次転写ローラ10の素材としては、EPDM、ウレタン、NBR、エピクロルヒドリン、シリコン等のゴム材が用いることができる。樹脂製の二次転写ベルト31が介在することを考慮すると、4.9N荷重状態のAskerC硬度で30°未満であることが望ましい。
また、二次転写ローラ10の抵抗値は、50Vを印加した二次転写ローラ10を表面速度が100mm/secで回転するアルミニウムシリンダに加重9.8Nで圧接して、測定した。この測定方法において106〜108Ωの抵抗値であるローラを使用した。二次転写ローラ10は、二次転写ベルト31の内側に配設されて、二次転写ベルト31を二次転写対向ローラ15に圧着し、これにより二次転写ニップ部が構成されている。片側4.9N、両側で9.8Nの加重をバネにより付与して二次転写ローラ10を二次転写対向ローラ15に対して当接させている。
また、本実施例においては、二次転写ベルト31として厚さ80μmのPVdFを用いた。二次転写ベルト31上のトナーの回収をブラシローラ34による静電回収でおこなうため、ベルト材質の選択肢は広く、PVdFの他、PPS、PET、ポリイミド、PEEKなどを選択可能である。二次転写部の硬度が高くなると、ラフ紙(紙繊維が大きく表面形状が粗い紙)の転写性低化が懸念される。本実施例のような低硬度の二次転写ローラ10と離型性に優れた樹脂ベルトを組み合わせた二次転写部の構成は、転写性とベルトクリーニング性を両立させたものである。二次転写ベルト31にゴムベルトを使用する場合には、さらに高硬度のローラを使用しても良い。
本実施例における二次転写ベルトクリーナは回転可能なブラシローラ34である。ブラシローラ34は、多数の導電糸を芯金に植え付けた構成で、全体として円柱状の外形を持つように構成されている。導電糸の基材はナイロンやポリエステルなどで、カーボンブラックなどの導電剤を添加して導電性を持たせてある。ブラシローラ34の導電糸の体積抵抗は、108〜1012Ω・cmのものを用いた。ブラシローラ34の芯金の径は6mm、ブラシローラ34の毛の長さは4mmである。本実施例で用いたブラシローラの繊維密度は100〜430kF/cm2、単繊維の太さは1〜4デニールである。
本実施例においては、ブラシローラ34は対向ローラ35から不図示のギアを介して駆動が伝達されており、二次転写ベルト31の回転方向と同方向に回転するように構成されているため、二次転写ベルト31に対してカウンタ方向に回転当接する。ブラシローラ34の回転方向は順方向でもかまわないが、ブラシローラ34によるトナー回収は物理的な掻き取り力の寄与があるため、清掃位置で逆の方向に移動するカウンタ方向とすることが望ましい。
二次転写ベルトクリーナである前記ブラシローラ34の、対向ローラ35にバックアップされた二次転写ベルト31への侵入量は0.5〜1.5mm程度が望ましい。0.5mm以下であると、二次転写ベルト31とブラシローラ34の間に安定したニップが形成できず、トナーの回収が不安定である。一方、前記侵入量を大きくしすぎると、画像形成装置が停止状態の時にブラシローラ34が大きく塑性変形して二次転写ベルト31とブラシローラ34の接触が不安定になったり、ブラシローラ34の回転トルクの上昇や摩耗劣化が懸念される。ブラシローラ34の、二次転写ベルト31への侵入量の管理によってもブラシローラ34の塑性変形や摩耗劣化の問題が解決できない場合には、ブラシローラ34を二次転写ベルト31に対して離接可能に設定するのが望ましい。
次に、二次転写工程について説明する。
本実施例の画像形成装置は、通常のプリントモードである余白有りプリントモードと、転写材の端部までトナー像を形成する余白無しプリントモードを有している。
給紙カセット20から搬送された転写材は次段の搬送手段であるレジストローラ13によって搬送され、吸着ローラ36において電荷を付与されて二次転写ベルト31上に吸着され、二次転写部に搬送される。二次転写ローラ10の芯金には、給電バネを介して不図示の二次転写バイアス電源が接続されている。二次転写ローラ10には接続された二次転写バイアス電源によって二次転写バイアスが印加される。一方、中間転写ベルト8上には、転写材(紙)からはみでる大きさのトナー像が形成されており、転写ニップにて転写材の端部に至るまで転写される。これと同時に、転写材からはみ出るトナー像は、二次転写ベルト31上に転写されることとなる。これらについては図2及び図3に示すとおりである。転写材上に転写されたトナー像は、転写材が定着装置21に搬送されて、定着装置21で転写材上に定着される。これによって余白無し画像が形成可能となる。
転写材からはみ出てて二次転写ベルト31上に転写されることとなったトナーは、二次転写している転写材の裏面を汚さないように、図3の如く、対向ローラ35に対向して配設されたブラシローラ34に一時的に回収される。そして、一旦回収されたトナーは、図4に示すように、次の転写材が二次転写位置に到着するまでのいわゆる紙間で再度二次転写ベルト31上に転移される(吐き出される)。さらには二次転写部で中間転写ベルト8上に転写されて中間転写ベルト8上に配設された中間転写体クリーナ12内のクリーニングブレードによってトナー回収ボックスに回収される。
ここで、本実施例における余白無しプリント時の画像形成プロセス速度は、60mm/secである。
本実施例によれば、余白無しプリントモードにおいて、二次転写ベルト31によって紙搬送を安定化できるので、紙先端の挙動が不安定なことによる問題を抑制することができる。例えば、二次転写ローラ10上のトナーを転写材で掻き取ることによって生じる紙先端汚れ、画像ぶれなどの発生を抑えることができる。さらには、二次転写部で紙先端に付着するトナー量が大幅に抑制されるので、定着ニップへ紙が搬送される過程で生じるガイドの汚れや、定着部材へのトナー付着を抑えることができる。
ここで、二次転写ベルト31の周長より長い転写材に余白無しプリントをするときの動作について、より具体的に図2から図5を使用して説明する。
図2に示すように中間転写ベルト8上に転写されたトナー像T1に対して給紙カセット20から給紙された転写材Pはレジストローラ13でタイミングを合わせられて搬送され、二次転写ニップ部に進入される。そして、中間転写ベルト8上のトナー像T1は転写ニップにて転写材Pに転写される。
図3に示すように、二次転写の際に転写材Pのサイズからはみ出した残トナーT2は、二次転写ベルト31上に転写され、対向ローラ35に対向して配設されたブラシローラ34に一時的に回収される。
トナーを一時的に回収する時にブラシローラ34に印加する電圧は、負極性であるトナーとは逆極性、つまり正極性のDCバイアスとしている。二次転写ベルト31に転写されたトナーは、転写バイアスにより転写されたトナーであるので、そのほとんどは負極性に帯電している。よって、回収前にトナーを再帯電することを要しない。
本実施例の画像形成装置においては、通紙可能な最大紙長さは297mm(A4サイズ)であり、紙の先端位置ずれや画像伸びを考慮して、余白無し画像プリントの際は画像形成プロセス方向に305mmの画像を形成する。従って理想的には、紙の先端、後端の二次転写ベルト31上にそれぞれ転写材からはみ出た4mmのトナーが直接転写される。一方で二次転写ベルト31の周長は200mmであるため、二次転写ベルト31上のクリーニングを実施せずにA4サイズの余白無しプリントをおこなうと、紙後端約100mmの範囲で紙裏汚れが発生する。従って、1枚プリント毎に清掃モードを設ける本実施例においては、二次転写ベルト31上に転写されたはみ出しトナーのうち、前半約100mmを一時的に回収できれば、紙後端の裏汚れを防止できる。
図4に示すように転写材Pの前半約100mmの残トナーT2がブラシローラ34に回収された後にブラシローラ34へ印加される電圧を逆転させる。これにより、二次転写ベルト31上の残トナーT2のブラシローラ34への回収は停止される。または、前半の残トナーT2がブラシローラ34に回収された後にブラシローラ34への印加を停止させてもよい。
これにより二次転写ベルト31上の後半の残トナーT3はブラシローラ34に回収されることなく搬送され、二次転写部で中間転写ベルト8上に転写される。そして、中間転写ベルト8上に配設された中間転写体クリーナ12内のクリーニングブレードによってトナー回収ボックスに回収される。
二次転写ベルト31上の後半の残トナーT3がブラシローラ34を通過してから所定時間後にブラシローラ34に回収された残トナーT2が再び二次転写ベルト31に当接するように回転制御されている。これにより逆バイアスを印加されている残トナーT2は二次転写ベルト31上に転写される。また、前述のように、前半の残トナーT2がブラシローラ34に回収された後にブラシローラ34への印加を停止させていた場合は、このタイミングでトナーの極性と同極性である負極性のバイアスが印加される。そして、ブラシローラ34に回収された残トナーT2が再び二次転写ベルト31に転写される。この後の中間転写体クリーナ12への回収は前述の通りである。
二次転写ベルト31の周長を通紙可能な最大紙長さよりも十分長く設定することにより、二次転写ベルト31のクリーニング動作を行わずに非画像形成時に中間転写ベルト8へ転移させることで一時的に回収するクリーニング手段を持たなくすることも可能である。しかし、二次転写ベルト31の周長が長くなるため装置の小型化が困難となり、装置のコストアップにも繋がる。また、ユーザが最大紙長さのプリントをしないときでもクリーニングのために長い二次転写ベルト31が一回転して残トナーを中間転写ベルト8に吐き出すまでは次の転写材への転写ができないため、スループットが低下するといった問題が発生する。
そこで、本実施例では二次転写ベルト31を極力短くすることで装置の小型化を図るために、前述のように二次転写ベルト31クリーナであるブラシローラ34を持つ構成にし、二次転写ベルト31上のトナーを一部回収するようにしている。
以上のように、本実施例においては余白無しプリント時にブラシローラ34によってトナーを一時的に回収し、短時間でのクリーニング時間を実現でき、スループットが向上する。
さらに、二次転写ベルト31に残トナーを回収するための廃トナーボックスが不必要なため、装置の小型化及び複数の廃トナーボックスをユーザが処理する必要がなく、ユーザビリティの向上が可能となる。また、ブラシローラ34によるトナー回収時間を最小限にすれば、ブラシローラ34のトナー目詰まりを抑制でき、ブラシローラ34の高寿命化が図れる。
なお、極力短くした二次転写ベルト31よりも短い転写材の余白無しプリントするときはブラシローラ34への一時的に回収が必要ないため、回収を行わないようにしている。
一方、ブラシローラ34上に回収されたトナーの一部は放電によって帯電極性が反転する場合がある。そして、ブラシローラ34の表面速度が小さくて、ブラシローラ34と二次転写ベルト31の接触部付近に回収したトナーが長く留まる場合に極性が反転されたトナーが二次転写ベルト31に吐き出される。また、ブラシローラ34が一回転してトナーを回収していた部位が再び二次転写ベルト31に接触する際にも二次転写ベルト31上に吐き出される。
トナーの極性の反転はブラシローラ34から吸着対向ローラ35に流れる電流が過剰であるときに起こりやすい。図6にブラシローラ34と二次転写ベルト31の接触位置近傍における、トナーの移動及びブラシローラ−ベルト間の放電についての模式図を示す。放電領域でトナー量に応じた適切な電流値を流すことにより、トナーは極性が反転することなくブラシローラ34上に回収されるが、放電量が大きすぎる場合には、トナーの極性が反転し、ブラシローラ34上に回収されないトナーの量が大きくなる。
さらに、ブラシローラ34は二次転写ベルト31に対してカウンタ方向に回転しているため、ブラシローラ34の表面速度が小さい場合には、物理的な掻き取り力も小さい状態になる。
反転トナーの吐き出しが特に目立つのは、大量にトナー回収がおこなわれた直後にトナー無し領域がある場合である。例えば、転写材の搬送方向における転写材先端に二次色ベタ画像の横帯を印字するような条件であり、トナーの存在する場所としない場所の境界部に電流が多く流れ、境界部のトナーの極性が反転しやすい傾向になる。ここで二次色ベタ画像とは、単色当たり0.6g/cm2のトナー量で形成したベタ画像を2色分重ねたものである。転写材の左右から二次転写ベルト31にはみ出したトナー(以下「はみ出しトナー」または「塗り足しトナー」と称する)についても同様の現象は起こりうる。しかし、紙の裏側に発生する汚れは転写材が斜行した場合にのみ目立ちやすく、発生した場合でも転写材の端部に発生位置が限定される。一方、先端のはみ出し領域に関しては、幅方向に横帯状のトナー汚れが紙の裏に生じてしまう。
そこで、本実施例では、一枚の紙にトナー像形成をしている間でのブラシローラ34の表面速度を変更する。画像不良を引き起こしやすい転写材先端のはみ出し領域においてブラシローラ34の表面速度を大きくする。また、トナーの帯電極性の反転を抑制するとともに、ブラシローラ34の物理的な掻き取り力を向上させてトナー吐き出しを抑止する。転写材先端部以外の領域においてはブラシローラ34の表面速度を小さくしてトナー回収時間を稼ぐ方式を選択している。ブラシローラ34が保持できるトナー量は、二次転写ベルト31との接触部近傍におけるブラシローラ34の導電糸の表面積との相関がある。一方、トナーの帯電極性の反転により二次転写ベルト31上に吐き出されるトナー量は、画像形成プロセス方向のトナー載り量の変動と、ブラシローラ34−二次転写ベルト31の接触部付近にトナーが留まる時間と関係がある。つまり、ブラシローラ34上のトナーが放電を受けて極性が反転する数が多い条件において、転写材の裏汚れが生じやすい。従って、本実施形態によれば、トナー載り量の多い領域でブラシローラ34の表面速度を上げることにより、ブラシローラ34単位面積当たりに接触するトナー量を減らす。これに加えて、ブラシローラ34と二次転写ベルト31との接触位置である清掃位置の付近に留まる時間を短縮でき、一時回収したトナーをよりブラシローラ34上に保持しておくことが可能となる。安定して紙先端のはみ出しトナーの回収をおこなうために、ブラシローラ34の速度切り替えのタイミングは、紙の先端がレジストローラを通過した時を基準として行う。
図7にブラシローラの表面速度とクリーニング性能に関係についての実験結果を示す。図中の記号は、○が問題ないレベル、△が時々発生、あるいは軽微に発生するレベル、×は不良が目立つレベルを示す。本実験は、ブラシローラ34から付与される電荷密度400μC/m2としておこなった。先端のはみ出しトナーの単位面積あたりのトナー量が多い場合には、ブラシローラ34の表面速度に応じて反転トナーの吐き出し量に有為な差が生じ、画像品位の低下をもたらす。一方で、ブラシローラの速度が小さいほどベルト上のクリーニング面積を稼ぐことができるため、ブラシローラ34の表面速度を速める領域は最低限に留めることが望ましい。
上記を元に本実施例では、余白なしプリントの二次転写ベルト31の表面速度は60mm/sec、ブラシローラ34の表面速度は20mm/secを標準設定とし、紙先端ではブラシローラ34の表面速度を30mm/secに設定した。また、ブラシローラ34の回転速度の切り替えは、紙先端位置ずれ、紙の斜行等を考慮し、理想上の紙先端位置から3mm分下流の位置までとし、先端はみ出しトナーの回収性の向上と広いクリーニング面積の両立を図っている。ブラシローラ34の回転速度の切り替えの方法はこの限りではなく、吸着ローラに流れる電流検知の結果を元におこなう方法等が挙げられる。また、ブラシローラの表面速度設定については、紙サイズ、はみ出し部の画像情報(例えば画像濃度)などに応じて変更しても良い。
紙サイズが小さい場合にははみ出しトナー領域に対して相対的にブラシローラの表面積が大きくなるので、紙先端部のクリーニング能力を向上させるためにさらに二次転写ベルト31に対するブラシローラの表面速度を上げることも可能である。さらには、紙サイズによってはスループットを向上させるために、ブラシローラが1回転する間に2枚のプリントをおこなえる設定にしても良い。
また、はみ出し部の画像情報に応じてブラシローラの表面速度を選択する方式としても良い。例えば、はみ出し領域のトナー量がある一定以下である場合には、ブラシローラの表面速度を低速のままとし、上述した小サイズ紙の場合と同様にスループットを重視する設定とすることができる。図8に二次転写ベルト31上の単位面積のトナー載り量とクリーニング性能の関係を示す。ここでは、電荷密度が775μC/m2とクリーニング不良が発生しやすい条件で実験をおこなっているが、ベルト上のトナー量とクリーニング性には有為な相関があり、はみ出しトナーの単位面積あたりの載り量が小さい場合にはクリーニング不良が発生しにくい。はみ出しトナーの載り量が所定値以下の場合には、ブラシローラ34の表面速度変更をおこなわず、一定速度でのクリーニングをおこなっても良い。
また、上記したように過剰な電流により、トナーの帯電極性の反転が生じるので、ブラシローラの表面速度の切り替えに同期させて、ブラシローラに印加される電圧を切り替えることが望ましい。本実施例では二次転写後のトナーの帯電量が大きい低温低湿環境において、単位面積当たり最大のトナー量(1.35g/cm2)を回収できる十分な電流を印加する。最小限の電荷密度400μC/m2(画像形成速度60mm/secにおいて約8μA)となるような電流をターゲット電流としてブラシローラ34から吸着対向ローラ35に対して流れる電流を定電流制御している。ただし、環境センサあるいは、それに準ずる手段によって検知された、画像形成装置が設置された環境に応じてターゲット電流を変化させても良い。電流検知可能であって、ターゲット電荷密度範囲内(775μC/m2以下、好ましくは200〜500μC/m2)にブラシローラ電流を制御可能であれば定電圧制御としても良い。図9に電荷密度とクリーニング性の関係を示す。ここでは、単位面積あたりのトナー載り量を1.35g/cm2とした。電荷密度が0に近い領域では、トナー回収はブラシローラ34による物理的掻き取りのみによっておこなわれるため、十分なトナー回収をおこなうことができない。一方で、電荷密度が高すぎる場合には、放電によるトナー帯電極性の反転の確率が増し、ベルト上に存在する反転トナーが増えるために、正極性を印加した回転ブラシローラ上にトナー回収ができなくなる。従って、一時的に回収方式によるベルトクリーニングにおいては、ブラシローラ34を印加される電荷密度を所定値に抑える必要がある。
上記したように、一時的に回収したトナーは、紙間でブラシローラから二次転写ベルト31上に吐き出し、さらに二次転写部で二次転写ベルト31上からITB上に転写された後、ITB上のトナーを回収するITBクリーニング手段に回収される。ブラシローラから二次転写ベルト31上へのトナー吐き出しにかかる時間は直接スループットに影響するため、短時間で行う方が望ましい。従って、ブラシローラの回収トナーの吐き出し効率を向上させるために、本実施例においては二次転写ベルト31の表面速度は120mm/sec、電荷密度775μC/m2、ブラシローラ表面速度は40mm/secとする。ブラシローラに印加されるバイアスをブラシローラ1回転毎に極性を切り替えてトナーの吐き出しをおこなう。極性の切り替えは5回以上、好ましくは10回以上おこなうことで、ブラシローラ上のトナーを充分に吐き出すことができる。ブラシローラから吐き出されたトナーの極性に同期させて二次転写部の電圧の極性を切り替えても良い。本実施例においては、ブラシローラ内に存在する正極性トナーは少ない。このため、吸着ローラ36にマイナスバイアスを印加してブラシローラから吐き出された正極性トナーを一旦吸着ローラ36に回収して負極性トナーを全てITB上に転写した後に、吸着ローラ36に印加する電圧を正極性に、二次転写部に印加する電圧を正極性に切り替えている。このようにして、吸着ローラ36から二次転写ベルト31上に転写した後、二次転写部でITB上に正極性トナーを転写して二次転写ベルト31のクリーニングを終了する。
以上、本実施例では、余白なしプリントモードを有する画像形成装置において、転写材搬送ベルト上にベルトクリーナとしての導電ブラシローラ34を当接させた。そして、搬送ベルトの表面速度と導電ブラシローラ34の表面速度を制御して余白なしプリント画像の品位向上を図った。このことは、余白なしプリント以外のプリントモード(以降、通常プリントモード)時においても、良好な画像品位と低プリントコストを維持することになる。
(実施例2)
図10に本発明の第2実施例の構成を示す。以下この図に基づいて説明を行うが、実施例1と同様の構成・作用をするものは同一の番号を付し説明は略す。
本実施例は、感光ドラム上のトナー像を、転写搬送ベルト上に吸着搬送される転写材上に直接転写する方式を採用した画像形成装置であることを特徴とする。
本実施例においては、ETBは駆動ローラ、テンションローラ、従動ローラの3軸によって張架され、一時的に回収ローラとして導電ブラシローラ34は従動ローラの対向に配設されている。
ETB上の最終的なトナー回収(クリーニングモード)は、転写部において感光ドラム上に逆転写し、感光ドラム上に当接したドラムクリーニングブレードで掻き落とされてカートリッジ容器に回収される。
感光ドラム上への逆転写は、1st、3stでは印字中とは逆極性のバイアスを転写ローラに印加し、2st、4stでは印字中と同様のバイアスを転写ローラに印加することで両極性のトナーを回収可能である。それと同時に、ETBに対して感光ドラムの回転速度を30%速めることにより、トナー回収能力を向上させ、クリーニング時間を短縮している。
本実施例におけるETBの周長は560mm、最大通紙長さは297mm、紙間は50mmであるため、1枚毎に通常プリントモード−クリーニングモードの繰り返しにより、余白なしプリントは可能である。
しかしながら、1枚プリント毎に約20secのクリーニング時間が必要になり、プリンタの生産性が非常に低くなる。
一方で、ブラシローラ34を用いることにより、1枚目のプリント時に発生したはみ出しトナーを一時的に回収できるため、少なくとも2枚プリント毎にクリーニングモードを実施すればよく、
生産性が向上する。一時的に回収性を向上させるために、紙先端部のはみ出しトナー部においてブラシローラの表面速度を上げることに関しては第一の実施例と同様である。
本実施例においては、先端100mmのクリーニングによって2枚連続プリントが可能になるが、もちろんブラシローラの外径、転写ベルトの周長、紙サイズ等のパラメータによってはさらなる生産性の向上も可能である。
また、転写ベルトクリーナとしてブラシローラ34を使用する利点としては、従来例で述べたようにベルトの劣化への寄与が小さい点も挙げられる。
以上、本実施例では、余白なしプリントモードを有する画像形成装置において、転写材搬送ベルト上にベルトクリーナとしての導電ブラシローラ34を当接させた。また、搬送ベルトの表面速度と導電ブラシローラ34の表面速度を制御して余白なしプリント画像の品位向上、生産性の向上を図った。