以下、本発明を好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の経口投与剤の好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、経口投与剤1は、薬物を含む薬物含有層11と、薬物含有層11の一方の面に積層された崩壊制御層12aと、薬物含有層11の他方の面に積層された崩壊制御層12bと、崩壊制御層12aの薬物含有層11とは反対側の面に設けられたゲル状層13aと、崩壊制御層12bの薬物含有層11とは反対側の面に設けられたゲル状層13bと、を有する積層体で構成されている。
本発明において、経口投与剤1は、上記各層を有するものであれば、その形態は特に限定されず、例えば、フィルム状(シート状)、ブロック状等の形態をなすものであってもよい。
以下、経口投与剤1を構成する各層について詳細に説明する。
<薬物含有層11>
薬物含有層11は、投与すべき薬物を含む層である。
薬物含有層11に含まれる薬物は、患者等に投与すべき薬物であり、経口投与可能な薬物であれば特に限定されない。経口投与可能な薬物として、例えば、中枢神経に作用する薬物としては、アモバルビタール、エスタゾラム、トリアゾラム、ニトラゼパム、ペントバルビタール等の催眠薬、塩酸アミトリプチン、塩酸イミプラミン、オキサゾラム、クロルジアゼポキシド、クロルプロマジン、ジアゼパム、スルピリド、ハロペリドール等の向精神薬、トリヘキシフェニジル、レボドパ等の抗パーキンソン薬、アスピリン、イソプロピルアンチピリン、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸、ストレプトキナーゼ、ストレプトドルナーゼ、セラペプターゼ、プロナーゼ等の鎮痛薬および抗炎症薬、ATP、ビンポセチン等の中枢神経代謝賦活薬、呼吸器に作用する薬物としては、カルボシステイン、塩酸プロムヘキシン等の去痰薬、塩酸アゼラスチン、オキサトミド、テオフィリン、硫酸テルブタリン、トラニラスト、塩酸プロカテロール、フマル酸ケトチフェン等の抗喘息薬、循環器系に作用する薬物としては、アミノフィリン、ジギトキシン、ジゴキシン等の強心薬、アジマリン、ジソピラミド、塩酸プロカインアミド、塩酸メキシレチン等の抗不整脈薬、亜硝酸アミル、塩酸アルプレノロール、硝酸イソソルビド、ニコランジル、オキシフェドリン、ジピリダモール、塩酸ジラゼプ、塩酸ジルチアゼム、ニトログリセリン、ニフェジピン、塩酸ベラパミル等の抗狭心症薬、カリジノゲナーゼ等の末梢血管拡張薬、アテノロール、カプトプリル、塩酸クロニジン、酒石酸メトプロロール、スピロノラクトン、トリアムテレン、トリクロルメチアジド、ニカルジピン、塩酸ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド、塩酸プラゾシン、フロセミド、塩酸プロプラノロール、マレイン酸エナラプリル、メチルドパ、塩酸ラベタロール、レセルピン等の抗高血圧薬、クロフィブラート、デキストラン硫酸、ニコモール、ニセリトロール等の抗動脈硬化薬、血液および造血作用薬として、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、トラネキサム酸等の止血薬、塩酸チクロピジン、ワルファリンカリウム等の抗血栓症薬、硫酸鉄等の貧血治療薬、消化器系に作用する薬物として、アズレン、アルジオキサ、シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジン、テプレノン、レバミピド等の抗潰瘍薬、ドンペリドン、メトクロプラミド等の制吐剤、センノシド等のしゃ下薬、消化酵素製剤、グリチルリチン、肝臓エキス製剤等の肝疾患治療薬、代謝性疾患に作用する薬物として、グリベンクラミド、クロルプロパミド、トルブタミド等の抗糖尿病薬、アロプリノール、コルヒチン等の痛風治療薬、眼科領域の薬物として、アセタゾラミド、耳鼻科領域の薬物として、塩酸ジフェニドール、メシル酸ベタヒスチン等の抗めまい薬、化学療法薬および抗生物質として、イソニアジド、塩酸エタンブトール、オフロキサシン、ステアリン酸エリスロマイシン、セファクロル、ノルフロキサシン、ホスホマイシンカルシウム、塩酸ミノサイクリン、リファンピシン、ロキタマイシン等、抗悪性腫瘍薬として、シクロホスファミド、テガフール等;免疫抑制薬として、アザチオプリン等、ホルモン類および内分泌治療薬として、黄体ホルモン、唾液腺ホルモン、チアマゾール、プレドニゾロン、ベタメタゾン、リオチロニン、レボチロキシン等、生体内活性物質(オータコイド)として、塩酸ジフェンヒドラミン、フマル酸クレマスチン、D−マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン薬、アルファカルシドール、コバマミド、ニコチン酸トコフェロール、メコパラミン等のビタミン等が挙げられ、治療・予防目的等に応じて、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、本発明では、経口投与剤1は、腸内において薬物を放出することのできるものである。このため、薬物含有層11に含まれる薬物としては、腸内において吸収されることにより効果を発現する薬物を用いることが好ましい。
また、薬物含有層11には、投与量が微量な薬物から多量な薬物まで広範な種類の薬物を含有させることができる。ここで、投与量が微量とは1回の投与量が1mg以下を意味し、投与量が大量とは1回の投与量が300mg以上を意味する。
薬物含有層11における薬物の含有量は特に限定されず、薬物の種類、薬物含有層11の体積に応じて適宜調節することができるが、0.01〜70質量%であることが好ましく、0.01〜40質量%であることがより好ましく、0.01〜35質量%であることがさらに好ましい。これにより、経口投与剤1の物理的強度を優れたものとしつつ、十分な量の薬物を経口投与剤1に含ませることができる。
また、経口投与剤1は、薬物含有層11に上述したような比較的多量の薬物を含有させた場合や、薬物含有層11の物理的強度を低下させやすい不溶性でかさ高い薬物を含有させた場合であっても、十分な物理的強度を有する。これは、経口投与剤1が、薬物含有層11の両面に崩壊制御層12a、12bを有し、これらの崩壊制御層12a、12bが十分な物理的強度を経口投与剤1に付与するためだと考えられる。
また、薬物含有層11は、基剤(薬物含有層用基剤)を含んでいてもよい。基剤(薬物含有層基剤)は、投与すべき薬物を所望の状態で薬物含有層11に保持し、薬物含有層11の形状、物理的強度を調節する機能を有するものである。薬物含有層11に用いることのできる基剤としては、特に限定されないが、例えば、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース及びその誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩(例えばナトリウム塩)、α−デンプン、酸化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、デキストラン等のデンプン及びそれらの誘導体、白糖、麦芽糖、乳糖、ブドウ糖、果糖、プルラン、キサンタンガム、シクロデキストリン、キシリトール、マンニトール、ソルビトール等の糖類、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・(メタ)アクリル酸コポリマー、(メタ)アクリル酸・アクリル酸エチルコポリマー、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸メチルコポリマー、(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸塩化トリメチルアンモニウムコポリマー、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル・(メタ)アクリル酸塩化メチルコポリマー、(メタ)アクリル酸・アクリル酸塩化エチルコポリマー等のアクリル酸誘導体、シエラック、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体、アラビアゴム、トラガカントゴム等の天然ゴム類、キチン、キトサン等のポリグルコサミン類、ゼラチン、カゼイン、ダイズ蛋白等の蛋白質、酸化チタン、リン酸一水素カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、ステアリン酸塩、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸等が挙げられ、目的に応じて、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
薬物含有層11における基剤の含有量は、特に限定されないが、30〜99.9質量%であることが好ましく、60〜99.9質量%であることがより好ましく、65〜99.0質量%であることがさらに好ましい。これにより、薬物含有層11中に十分な量の薬物を含ませつつ、薬物含有層11の物理的強度を特に容易に十分なものとすることができる。
薬物含有層11の厚さは、経口投与可能な範囲内において適宜調節することができる。薬物含有層11の厚さは、特には限定されないが、例えば、0.5〜5000μmであることが好ましく、10〜3000μmであることがより好ましく、50〜1000μmであることがさらに好ましい。これにより、薬物含有層11は、各部位における薬物の含有量や厚さのばらつきを特に少ないものとすることができる。また、経口投与剤1全体としての柔軟性を十分なものとすることができ、経口投与剤1を服用することが特に容易なものとなる。
<崩壊制御層12a、12b>
崩壊制御層12aは、薬物含有層11とゲル状層13aとの間に設けられている。また、崩壊制御層12bは、薬物含有層11とゲル状層13bとの間に設けられている。なお、本発明において、崩壊制御層の崩壊とは、崩壊制御層の構成成分が溶解、流出、分解等を起こすことにより、崩壊制御層の形状が崩れることをいう。
崩壊制御層12aおよび12bは、腸内において、腸内の体液と接触することにより、崩壊することのできる層である。このため、腸内において、崩壊制御層12aおよび崩壊制御層12bが崩壊することで、薬物含有層11が腸内の体液と接触して溶解することができ、薬物が腸内に放出される。
また、崩壊制御層12aおよび12bは、ゲル状層13aおよび13bに含まれる水分と、薬物含有層11中に含まれる薬物との接触を防止し、薬物の分解・変質を防止する機能を有する層である。
さらに、崩壊制御層12aおよび12bは、薬物含有層11と唾液との接触を防止する機能も有し、薬物含有層11に含有される薬物の口腔内での溶解を防止し、薬物の味(例えば苦味、渋味、痺れ感)、臭い等をマスキングすることができる。また、薬物含有層11と胃液との接触を防止する機能も有し、胃内における意図しない薬物の放出を防止することができる。
これに対し、経口投与剤がこのような崩壊制御層を有していない場合、ゲル状層に含まれる水分が薬物含有層に浸透し、薬物含有層中の薬物が分解・変質してしまう可能性がある。また、薬物がゲル状層を介して目的の部位以外で放出されてしまう可能性がある。
また、本実施形態において、崩壊制御層12aおよび崩壊制御層12bは、それらの端部が薬物含有層11のある部分から延長されて接合している。このため、薬物含有層11は、その周囲が崩壊制御層12a、12bによって覆われている。これにより、薬物含有層11は、不用意に体液やゲル状層中の水分に接触して薬物が不本意に溶出、変質することが防止されたものとなる。
以下、崩壊制御層12aと崩壊制御層12bとは、同様の構成であるので、代表的に崩壊制御層12aについて説明する。
本発明において、崩壊制御層12aは、腸内の体液と接触することにより、溶解する腸溶性材料を含む。このような腸溶性材料を含むことにより、崩壊制御層12aは、腸内において腸内の体液と接触して崩壊する。
また、腸溶性材料は、後述するゲル状層13a、13b中に含まれる水系液体に実質的に溶解しない材料である。なお、実質的に溶解しないとは、常温における上記水系液体100gに対する溶解度が0.01g以下のことをいう。
崩壊制御層12aに用いることのできる腸溶性高分子としては、特に限定さないが、例えば、腸溶性セルロース誘導体、腸溶性アクリル酸系共重合体、腸溶性マレイン酸系共重合体、腸溶性ポリビニル誘導体、シエラック等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
腸溶性セルロース誘導体の具体例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルアセテートマレエート、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートマレエート、セルロースベンゾエートフタレート、セルロースプロピオネートフタレート、メチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースエチルフタレート、酢酸フタル酸セルロース等があげられる。
また、腸溶性アクリル酸系共重合体としては、メタクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸エチル、スチレン・アクリル酸共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸共重合体、アクリル酸メチル・メタアクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル・スチレン・アクリル酸共重合体、アクリル酸メチル・メタアクリル酸・アクリル酸オクチル共重合体等が挙げられる。
また、腸溶性マレイン酸系共重合体としては、酢酸ビニル・マレイン酸無水物共重合体、スチレン・マレイン酸無水物共重合体、スチレン・マレイン酸エステル共重合体、ビニルメチルエーテル・マレイン酸無水物共重合体、エチレン・マレイン酸無水物共重合体、ビニルブチルエーテル・マレイン酸無水物共重合体、アクリロニトリル・アクリル酸メチル・マレイン酸無水物共重合体、アクリル酸ブチル・スチレン・マレイン酸無水物共重合体等が挙げられる。
また、腸溶性ポリビニル誘導体としては、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルブチレートフタレート、ポリビニルアルコールアセテートフタレート等が挙げられる。
上述した中でも、腸溶性材料は、腸溶性アクリル酸系共重合体または腸溶性セルロース誘導体であることが好ましい。これにより、口腔や胃内において崩壊制御層12aが崩壊することが好適に防止されるとともに、腸内においては、体液と接触することにより素早く溶解することができる。また、ゲル状層13a中の水系液体の影響を十分小さいものとすることができる。上述した中でも、腸溶性材料として、メタクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロースのいずれかを用いた場合、上記のような効果はより顕著なものとなる。
また、腸溶性高分子の質量平均分子量は、特に限定されないが、5000〜500000であることが好ましく、10000〜300000であることがより好ましい。これにより、ゲル状層13a中の水系液体の影響を十分小さいものとすることができるとともに、腸内おいては、体液と接触することにより素早く溶解することができる。また、崩壊制御層12aの隣接する層との密着性を特に優れたものとすることができる。
また、崩壊制御層12aにおける腸溶性材料の含有量は、60〜99質量%であることが好ましく、75〜95質量%であることがより好ましい。これにより、口腔や胃内において崩壊制御層12aが崩壊することが好適に防止されるとともに、腸内においては、体液と接触することにより素早く溶解することができる。
また、崩壊制御層12aは、可塑剤を一定量含むことが好ましい。これにより、崩壊制御層12aのひび割れが防止されるとともに、ゲル状層13aおよび薬物含有層11との密着性を向上させることができ、嚥下時において、ゲル状層13aと崩壊制御層12aとの間や、薬物含有層11と崩壊制御層12aとの間で剥離が起きることを確実に防止することができる。
崩壊制御層12aの可塑剤として用いることのできる材料としては、特に限定されず、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリントリアセテート、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、ラウリル酸等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、崩壊制御層12aに可塑剤を含む場合、その含有量は、崩壊制御層12aの1〜40質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましい。
また、崩壊制御層12aは、疎水性物質を一定量含むことが好ましい。これにより、ゲル状層13aから薬物含有層11へ崩壊制御層12aを通して水分が浸入するのを効果的に防止することができる。
上記疎水性物質として用いることのできる材料としては、特に限定されず、例えば、固形ワックス類すなわち油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸及び高級脂肪酸エステル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましいものとしては、ミツロウ、カルナウバロウを挙げることができる。
また、崩壊制御層12aに疎水性物質を含む場合、その含有量は、崩壊制御層12aの5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
また、崩壊制御層12aは、上述したような腸溶性材料以外の基剤(崩壊制御層用基剤)を含んでいてもよい。
崩壊制御層12aの基剤として用いることのできる材料としては、特に限定されず、例えば、α−デンプン、酸化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、デキストラン等のデンプン及びそれらの誘導体、白糖、麦芽糖、乳糖、ブドウ糖、果糖、プルラン、キサンタンガム、シクロデキストリン、キシリトール、マンニトール、ソルビトール等の糖類、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル−ビニルピロリドン共重合体、アラビアゴム、トラガカントゴム等の天然ゴム類、キチン、キトサン等のポリグルコサミン類、ゼラチン、カゼイン、ダイズ蛋白等の蛋白質、酸化チタン、リン酸一水素カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、ステアリン酸塩、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸等が挙げられ、目的に応じて、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、崩壊制御層12aに基剤を含む場合、その含有量は、1〜25質量%であるのが好ましい。
また、崩壊制御層12aは、薬物含有層11に含まれる薬物と異なる薬物を含むものであってもよい。崩壊制御層12aと薬物含有層11に含まれる薬物を異なるものとすることで、経口投与剤1は、異なるタイミングで異なる薬物を放出することが可能となる。
また、崩壊制御層12aは、上述したような材料以外の成分を含むものであってもよい。例えば、崩壊制御層12aは、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル等の防腐剤、食用レーキ着色剤等の着色剤、甘味料等のマスキング剤等が、崩壊制御層12aの5質量%以下で含まれていてもよい。
また、崩壊制御層12aは、腸以外の体腔において、崩壊しにくいものであることが好ましい。具体的には、崩壊制御層12aは、口腔、胃内において崩壊しにくいものであることが好ましい。これにより、腸以外の体腔において、崩壊制御層12aが崩壊することにより薬物含有層11中の薬物が体腔内に放出されることが確実に防止される。この結果、経口投与剤1は、薬物をより確実に腸内において放出することができる。
より具体的には、崩壊制御層12aは、37℃の人工唾液(精製水に対して、NaCl:0.08質量%、KCl:0.12質量%、MgCl2:0.01質量%、CaCl2:0.01質量%、K2HPO4:0.03質量%:0.01質量%、CMC−Na:0.10質量%を添加した液)に対して、5分以内に崩壊しないものであることが好ましく、10分以内に崩壊しないものであることがより好ましい。
また、より具体的には、崩壊制御層12aは、37℃の日本薬局方に規定される崩壊試験法の試験液第1液(pH:1.2)に対して、120分未満の時間で崩壊しないものであることが必要である。
また、より具体的には、崩壊制御層12aは、37℃の日本薬局方に規定される崩壊試験法の試験液第2液(pH:6.8)に対して、10分未満で崩壊するものであることが好ましく、3分未満で崩壊するものであることがより好ましい。
崩壊制御層12aが上記のような性質を有することにより、口腔内および胃内において、唾液および胃液によって崩壊制御層12aが崩壊することが確実に防止される。このため、口腔内および胃内において、薬物含有層11中にある薬物が溶解、放出されることが確実に防止される。また、腸内においては、崩壊制御層12aが好適に崩壊し、薬物含有層11中の薬物は腸内に好適に放出される。
また、崩壊制御層12aの厚さは、特には限定されず、腸内における薬物を放出する部位に合わせて適宜調整できるが、1〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましい。これにより、経口投与剤1は、腸内においてより確実に薬物を放出することができる。
<ゲル状層>
ゲル状層13aは、崩壊制御層12aの薬物含有層11とは反対側の面に設けられている。また、ゲル状層13bは、崩壊制御層12bの薬物含有層11とは反対側の面に設けられている。
以下、ゲル状層13aとゲル状層13bとは、構成がほぼ同様であるので、代表的に、ゲル状層13aについて説明する。
ゲル状層13aは、水系液体を含み、ゲル状をなす層である。ゲル状とは、弾力性のあるゼリー状、柔らかいゼリー状等の性状のことをいう。このように最外層にゲル状の層を有することにより、経口投与剤1は、嚥下することが容易なものとなる。
ゲル状層13a中に含まれる水系液体は、主として水で構成される液体である。具体的には、水系液体中に含まれる水の含有量は、30質量%以上であるのが好ましく、50質量%以上であるのがより好ましく、70質量%以上であるのがさらに好ましい。これにより、上記崩壊制御層への影響をより小さいものとすることができるとともに、経口投与剤1の嚥下性をより高いものとすることができる。
また、水系液体は、水以外の成分を含むものであってもよい。水以外の成分としては、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類、グリセリン、ソルビトール等の糖アルコール、エタノール等のアルコール等を挙げることができる。このような成分を含むことにより、経口投与剤1を口腔内に入れた際に、唾液の分泌が促進され、経口投与剤1の嚥下性をさらに向上させることができる。
また、水系液体中には、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類等の界面活性剤、ヘキシルデカノール等の長鎖アルコール等が含まれていてもよい。また、上記のような界面活性剤と共に、油脂類等が含まれていてもよい。
ゲル状層13a中の上記水系液体の含有量は、30〜99.9質量%であるのが好ましく、50〜99.5質量%であるのがより好ましく、70〜99.2質量%であるのがさらに好ましい。これにより、経口投与剤1の嚥下性をさらに向上させることができる。
ゲル状層13aは、水分を吸収することにより膨潤してゲルを形成するゲル形成剤を含む。このようなゲル形成剤を含むことにより、ゲル状層13aは、ゲル状となり、経口投与剤1に良好な嚥下性を付与することができる。
ゲル形成剤としては、特には限定されないが、例えば、アルギン酸及びその誘導体、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ペクチン、グァーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、ジェランガム、キサンタンガム、トラガント、ヒアルロン酸、セスバニアガム、プルラン、カラヤガム、ラムザンガム等の天然多糖類;デンプン及びその誘導体;セルロース及びその誘導体;ポリアクリル酸及びその誘導体;等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アルギン酸及びその誘導体には、アルギン酸、アルギン酸のナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノール塩、アンモニウム塩等のアルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸エステル等が包含される。
この中でも、ゲル形成剤は、アルギン酸及びその誘導体、ポリアクリル酸及びその誘導体等のカルボキシル基を含有する高分子が好ましく、特に、アルギン酸及びその誘導体を含むことが好ましい。アルギン酸及びその誘導体は、ゲル状となった後においては、唾液等の水分への溶解速度が低下する傾向を有する成分である。このため、口腔内で、ゲル状層13aは、その形状がより確実に維持され、高い嚥下性をより効果的に維持することができる。また、崩壊制御層12aの崩壊する時間、体腔内の部位をより確実に制御することができる。
ゲル状層13aにおけるゲル形成剤の含有量は、ゲル形成剤の種類等に応じて適宜調節することができるが、0.1〜70質量%であるのが好ましく、0.5〜50質量%であるのがより好ましく、0.8〜30質量%であるのがさらに好ましい。これにより、経口投与剤1の嚥下性をさらに向上させることができる。
また、ゲル状層13a中には、必要に応じて架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤としては、多価金属イオンを生成する化合物が好ましく、例えば、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、塩化カルシウム、第2リン酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリミョウバン、塩化鉄ミョウバン、アンモニウムミョウバン、硫酸第二鉄、リン酸アルミニウム、クエン酸鉄、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、硫酸亜鉛等の多価金属塩類が挙げられる。多価金属イオンは、ゲル形成剤中の複数のカルボキシル基と塩を形成し、ゲル形成剤を架橋することができる。
また、ゲル状層13a中には、クエン酸、エデト酢酸四ナトリウム等の多価カルボン酸等の遅延剤が含まれていてもよい。
また、ゲル状層13a中には上記成分の他、pH調整剤、可塑剤、乳化剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、着色剤、甘味料、苦味料、酸味料等が含まれていてもよい。
上述したようなゲル状層13aの水素イオン指数pHは、2〜5であるのが好ましく、3〜4.5であるのがより好ましい。これにより、経口投与剤1の嚥下性を向上させつつ、崩壊制御層12aを構成する材料がゲル状層13a中に溶解するのを効果的に防止することができる。その結果、薬物含有層11中に含まれる薬物の溶解・変質を効果的に防止することができる。
ゲル状層13aの厚さは、経口投与可能な範囲内において適宜調節することができるが、10〜1000μmであることが好ましく、15〜500μmであることがより好ましい。
なお、図1に示す経口投与剤1では、経口投与剤1の端部において、崩壊制御層が露出しているが、経口投与剤1の端部がゲル状層で覆われていても良い。
経口投与剤1は、例えば、以下の製法に従って製造することができる。
図2および図3は、本発明の経口投与剤の製造方法の一例を示した工程図である。
(崩壊制御層形成用シート作成工程)
まず、崩壊制御層の構成材料を含んだ塗工液(崩壊制御層用塗工液)を用意する。
崩壊制御層用塗工液は、上述したような崩壊制御層を構成する成分を、精製水、エタノール等の液性媒体に分散または溶解させることで調製することができる。
次に、崩壊制御層用塗工液を平板上に塗布、噴霧した後、乾燥させる。これにより、図2(a)に示すような崩壊制御層形成用シート12b’が形成される。なお、同様にして、崩壊制御層形成用シート12a’も形成する。
(中間体作製工程(薬物封入工程))
次に、図2(b)に示すように、崩壊制御層形成用シート12b’の中央に、常温または加温下で型押しする等により、凹部(ポケット)を形成する。
次に、上記凹部内に、薬物含有層形成用材料を入れ、図2(c)に示すように、薬物含有層11を形成する。
次に、図2(d)に示すように、薬物含有層11を形成した崩壊制御層形成用シート12b’の薬物含有層11が形成されている側の面に、崩壊制御層形成用シート12a’を重ねる。
次に、図2(e)に示すように、2枚の崩壊制御層形成用シートの凹部が形成されていない部分を熱圧着する。これにより、薬物含有層11と、崩壊制御層12aおよび崩壊制御層12bとを有する中間体14が得られる。
(ゲル状層作製工程)
まず、上述したようなゲル状層の構成材料で構成されたゲル状層用溶液を用意する。
次に、ゲル状層用溶液を平板に塗布し、図3(f)に示すようなゲル状層形成用層13b’を形成する。
次に、図3(g)に示すように、形成したゲル状層形成用層13b’の中央部に、上記中間体14を置く。
次に、図3(h)に示すように、中間体14およびゲル状層形成用層13b’上に、中間体14を覆うように、ゲル状層用溶液を付与し、ゲル状層形成用層13a’を形成した。その後、必要に応じて裁断することにより、薬物含有層11と、崩壊制御層12aおよび12bと、ゲル状層13aおよび13bとを備えた経口投与剤1が得られる。
以上、本発明を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明の経口投与剤は、ゲル状層と薬物含有層との間に、任意の層を有するものであってもよい。
また、例えば、薬物含有層の形状は粉体、圧縮錠剤、液体等であってもよい。
また、例えば、崩壊制御層と薬物含有層との密着性を向上させる接着剤層等を有するものであってもよい。
また、例えば、薬物含有層と各崩壊制御層との間、および(または)、ゲル状層と各崩壊制御層との間に疎水性物質からなる防湿層を有するものであってもよい。
次に、本発明の経口投与剤の具体的実施例について説明する。
1.経口投与剤の製造
(実施例1)
(a)崩壊制御層形成用シート作成工程
まず、崩壊制御層の構成成分を含んだ塗工液Aを調製した。
エタノール:180質量部に腸溶性材料としてのメタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体(オイドラギットL100、ファーマポリマーズ社製、質量平均分子量:135000):70質量部を添加し、撹拌して溶解させた。次に、ポリエチレングリコール#1500:10質量部、ミツロウ:20質量部を順次添加して溶解させ、塗工液Aを得た。
次に、塗工液Aを十分に脱泡し、乾燥後の塗布量が50g/m2となるようにギャップを調製したアプリケーターを用いて、平板上に展延塗布し、90℃で5分間乾燥することにより、崩壊制御層形成用シートを得た。崩壊制御層形成用シートの平均厚さは、40μmであった。
(b)薬物含有層形成用材料の調整工程
青色1号(ダミー薬物):5質量部に、カルボキシメチルセルロース(NS−300、ニチリン化学工業社製):95質量部を添加し、乳鉢にて均一に混合し、薬物含有層形成用材料を得た。
(c)薬物封入工程(中間体作製工程)
上記のようにして得られた崩壊制御層形成用シートを、11mmの径の円形の穴の開いた平滑な金属板の上に乗せた。崩壊制御層形成用シートの前記穴を覆っている部分を、径が8mmの円柱状のピンで押圧することにより、円錐台状の、深さ2mmの凹部(ポケット)を形成した。
次に、上記崩壊制御層形成用シートのポケットに、薬物含有層形成用材料を50mg入れた。
次に、上記崩壊制御層形成用シートのポケットが形成されている面に、もう1枚の崩壊制御層形成用シートを重ね、重なった2枚の崩壊制御層形成用シートのポケットが形成されていない部分を、110℃、1kg/cm2で3秒間熱圧着し、薬物を封入した。これにより、薬物含有層と、2つの崩壊制御層とを有する中間体が得られた。
(d)ゲル状層作製工程
まず、アルギン酸ナトリウム(ダックアルギンNSPLL、紀文フードケミファ社製):12質量部を水:400質量部に加え、溶解させてアルギン酸ナトリウム水溶液を得た。
次に、第2リン酸カルシウム:1.3質量部を水:200質量部に分散させた第2リン酸カルシウム分散液を、上記アルギン酸ナトリウム水溶液に添加し、さらに、pH調整剤としてのグルコノデルタラクトン:12質量部を水:200質量部に溶解させたpH調整液を添加し、攪拌・混和させ、ゲル状層用溶液を得た。
次に、得られたゲル状層用溶液を鋳型に流し込み、厚さ1mmの平板状に成型し、ゲル状層形成用層を形成した。
次に、ゲル状層用溶液のゲル化が進行しないうちに、上記のようにして得られた中間体を、成型したゲル状層用形成用層上に置いた。
さらに、中間体を覆うように、鋳型にゲル状層用溶液を流し込み、全体として厚さが4mmの平板状となるように成型した。ゲル状層用溶液が完全にゲル化することにより、ゲル状層が形成された。ゲル状層の表面pHを、表面pH計(東亜ディーケーケー製)で測定したところ、3.7であった。
その後、ゲル状層に挟まれた中間体を鋳型より取り出し、中間体の薬物含有層が中心となるように、径が15mmの円形に裁断し、経口投与剤を得た。
(実施例2〜6)
ゲル状層、崩壊制御層の各材料の種類、含有量を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして経口投与剤を得た。
(比較例1)
実施例1と同様にして作成した薬物含有層形成用材料を、市販の2号カプセルに封入し、経口投与剤とした。
(比較例2)
崩壊制御層を設けなかった以外は、前記実施例1と同様にして経口投与剤を得た。
(比較例3)
(a)水膨潤性ゲル形成層作成工程
900質量部の精製水に、0.9質量部の塩化カルシウム(日本薬局方 塩化カルシウム、富田製薬製)を添加し、十分に攪拌して溶解させた。次に、ポリアクリル酸(カーボポール974P、CBC社製):33.8質量部を攪拌しながらゆっくりと添加し、添加後、約1時間攪拌を行った。次に、ポリビニルアルコール(ゴーセノールEG40、日本合成化学製):56.5質量部を攪拌しながらゆっくりと添加し、添加後、各材料が添加された混合液を70℃に加熱して、約1時間攪拌を行った。次に、グリセリン(日本薬局方 濃グリセリン、旭電化工業製):8質量部とアセスルファムカリウム(サネットAタイプ、丸善製薬製):0.8質量部とを添加して約10分攪拌を行い、塗工液Bを得た。
次に、塗工液Bを十分に脱泡し、乾燥後の塗布量が20g/m2となるように、平板上に展延塗布し、80℃で10分間乾燥することにより、水膨潤性ゲル形成層を形成した。
(b)薬物含有層形成工程
エタノール:400質量部に、青色1号(ダミー薬物):4.1質量部を添加し、ディスパーを用いて十分に溶解させた。その後、ポリビニルピロリドン(PVP K−90、アイエスピージャパン製):68.25質量部を攪拌しながらゆっくりと添加し、添加後、約30分間攪拌した。次に、グリセリン(日本薬局方 濃グリセリン、旭電化工業製):8.1質量部を添加して約10分間攪拌し、塗工液Cを得た。
次に、塗工液Cを十分に脱泡し、乾燥後の塗布量が80g/m2となるように、水膨潤性ゲル形成層上に展延、乾燥し、薬物含有層を形成した。
(c)熱圧着・裁断工程
上記のようにして、薬物含有層を形成した水膨潤性ゲル形成層を2つ用意し、薬物含有層同士が向かい合うようにして重ね、100℃、1kg/cm2で2秒間熱圧着した。
これを、径15mmの円形に裁断し、最外層に、乾燥した水膨潤性ゲル形成層を有する経口投与剤を得た。
表1、表2に各実施例および各比較例での各層の構成材料およびその含有量について示した。なお、表中、「MM」は、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、「HPMCP」は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP−55S、信越化学工業製、質量平均分子量:76000)、「PEG」は、ポリエチレングリコール#1500、「TEC」はクエン酸トリエチル、「M」は、ミツロウ、「C」は、カルナウバロウ、「AGNa」は、アルギン酸ナトリウム、「PAA」は、ポリアクリル酸、「CaHPO4」は、第2リン酸カルシウム、「CaCl2」は、塩化カルシウム、「GDL」は、グルコノデルタラクトン、「G」は、グリセリンをそれぞれ示す。
また、ゲル状層の表面pHと同程度のpHを有するMcIlvaine緩衝液(pH4.0)を用いて、崩壊制御層に用いた腸溶性材料の溶解度を測定した結果、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体のMcIlvaine緩衝液(pH4.0)100gへの溶解度は、0.01g以下であった。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートのMcIlvaine緩衝液(pH4.0)100gへの溶解度は、0.01g以下であった。
2.嚥下性評価(服用性評価)
(2−1)うがいを行い、口腔内を洗浄した。2分後に、各実施例および各比較例の経口投与剤を水無しで口腔内へ入れ、即座に嚥下を行い、嚥下の容易性について下記の4段階の基準に従い評価した。なお、評価は5度行い、総合評価として、その平均値を求めた。
4……水なしで非常に容易に服用可能。
3……水なしで服用可能。
2……できれば水とともに服用したい。
1……水なしでは服用不可能。
(2−2)うがいを行い、口腔内を洗浄した。2分後に、各実施例および各比較例の経口投与剤を水無しで口腔内へ入れ、20秒後に嚥下を行い、嚥下の容易性について上記(2−1)と同様の4段階の基準に従い評価した。なお、評価は5度行い、総合評価として、その平均値を求めた。
3.付着性評価
(3−1)うがいを行い、口腔内を洗浄した。2分後に、各実施例および各比較例の経口投与剤を水無しで口腔内へ入れ、即座に嚥下を行った。
上記操作を5度行い、以下の3段階の基準に従い評価した。
○……5度の服用のうち、1度も付着しなかった。
△……5度の服用のうち、1〜2度付着した。
×……5度の服用のうち、3度以上付着した。
(3−2)うがいを行い、口腔内を洗浄した。2分後に、各実施例および各比較例の経口投与剤を水無しで口腔内へ入れ、20秒後に嚥下を行った。
上記操作を5度行い、上記(3−1)と同様の3段階の基準に従い評価した。
4.崩壊制御層の崩壊性評価
各実施例で用いた崩壊制御層について、第15改正日本薬局方に規定される崩壊試験法に準じた方法によって崩壊性を目視評価した。
まず、各実施例で用いた崩壊制御層を作成するための塗工液Aを、乾燥後の塗布量が50g/m2となるようにギャップを調製したアプリケーターを用いて、平板上に展延塗布し、90℃で5分間乾燥した後、平板を除去することにより、崩壊制御層からなるフィルムを得た。このフィルムを直径:15mmの円形に打ち抜くことにより、試料を得た。
試験液としては人工唾液(精製水に対して、NaCl:0.08質量%、KCl:0.12質量%、MgCl2:0.01質量%、CaCl2:0.01質量%、K2HPO4:0.03質量%:0.01質量%、CMC−Na:0.10質量%を添加した液)と試験液第1液(pH:1.2)と試験液第2液(pH:6.8)とを用い、カプセル剤の操作法と同様に試験を行い、各試験液において試料が完全に崩壊するまでの時間を測定した。なお、試験は、各試験液について3回同様の試験を行ない、3回の試験の平均値を求め、下記の4段階の基準に従い評価した。
[人工唾液を用いた崩壊性に関する評価基準]
◎……崩壊しない、または、崩壊するまでの時間が10分以上であった。
○……崩壊するまでの時間が5分以上、10分未満であった。
△……崩壊するまでの時間が3分以上、5分未満であった。
×……崩壊するまでの時間が3分未満であった。
[試験液第1液を用いた崩壊性に関する評価基準]
◎……崩壊するまでの時間が120分以上であった。
×……崩壊するまでの時間が120分未満であった。
[試験液第2液を用いた崩壊性に関する評価基準]
◎……崩壊するまでの時間が3分未満であった。
○……崩壊するまでの時間が3分以上、10分未満であった。
△……崩壊するまでの時間が10分以上、20分未満であった。
×……崩壊しない、または、崩壊するまでの時間が20分以上であった。
5.薬物の溶出性評価
各実施例および各比較例の経口投与剤について、第15改正日本薬局方に規定される溶出試験法(回転バスケット法)に準じた方法によって薬物の溶出性を評価した。
なお、試験液としては、試験液としては人工唾液(前出)と試験液第1液(pH:1.2)と試験液第2液(pH:6.8)とを用いて試験を行い、各試験液において薬物が溶出を開始するまでの時間(薬物含有層に含まれるダミー薬物の青色色素が各試験液に溶出するまでの時間)を測定した。なお、試験は、各試験液について3回同様の試験を行ない、3回の試験の平均値を求め、下記の4段階の基準に従い評価した。また、薬物が溶出を開始するまでの時間の測定は、各試験液が青色に呈色したことを目視により確認することにより行った。
[人工唾液を用いた溶出性に関する評価基準]
◎……薬物が溶出しない、または、薬物が溶出するまでの時間が10分以上であった。
○……薬物が溶出するまでの時間が5分以上、10分未満であった。
△……薬物が溶出するまでの時間が3分以上、5分未満であった。
×……薬物が溶出するまでの時間が3分未満であった。
[試験液第1液を用いた溶出性に関する評価基準]
◎……薬物が溶出するまでの時間が120分以上であった。
×……薬物が溶出するまでの時間が120分未満であった。
[試験液第2液を用いた溶出性に関する評価基準]
◎……薬物が溶出するまでの時間が3分未満であった。
○……薬物が溶出するまでの時間が3分以上、10分未満であった。
△……薬物が溶出するまでの時間が10分以上、20分未満であった。
×……薬物が溶出しない、または、薬物が溶出するまでの時間が20分以上であった。
これらの結果を表2に示す。
表2に示すように、各実施例の経口投与剤は、水無しで即座に服用しても嚥下しやすいものであった。また、各実施例の経口投与剤は、腸内の体液とpHが近い溶液(試験液第2液)中では、好適に薬物を放出することができ、人工唾液および酸性の溶液(試験液第1液)中では、薬物を放出しにくいものであった。すなわち、各実施例の経口投与剤は、口腔内および胃内では薬物を放出せず、腸内において薬物を放出することが可能なものであった。
これに対し、比較例では、満足のいく結果を得られなかった。特に、比較例1および3の経口投与剤は、水無しでは即座に服用できないものであった。また、比較例2の経口投与剤は、人工唾液で薬物を放出しやすいものであり、口腔内で薬物を放出しやすいものであった。