JP5385632B2 - 活性金属含有銅合金溶製用フラックス - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、銅合金の溶湯を保持炉から樋を通してタンディッシュに移送して連続鋳造する過程において、活性金属を添加した後の銅合金溶湯周囲をArガス雰囲気とすることによってArガスで溶湯面をシールドし、活性金属の添加歩留を向上することができる旨が記載されている。
すなわち、特許文献1に記載の技術には、Arガスを用いて溶湯面をシールドするための設備が複雑になるだけでなく、シールド用の媒体が気体であるためシールド効果が完全ではなく、活性金属の添加歩留は90%に留まる。
ここで、図1を参照する。図1に示すように、CaO−SiO2−Al2O3−MgO系複合酸化物に含有されるほとんどの酸化物は、溶融温度が非常に高く、そのほとんどの組成領域において1300℃を超えていることがわかる。
また、本発明に係る活性金属含有銅合金溶製用フラックスは、溶湯の表面に前記したフラックスを添加して溶湯の表面を被覆するだけであるので、設備を複雑にせずに活性金属の添加歩留を高くすることができる。
本発明に係る活性金属含有銅合金溶製用フラックス(以下、単に「フラックス」という。)は、溶解炉又は保持炉によって、活性金属として少なくともCrを含有する銅合金を1300℃以下で溶製するに際して、炉内の銅又は銅合金の溶湯の表面に使用され、当該溶湯の温度で液相となるフラックスであって、CaO−SiO2−Al2O3−MgO−X2O−Cr2O3系複合酸化物を含み、前記X2Oは、Na2O及びK2Oのうちの少なくとも一方であり、これらの成分を後記する特定の組成で含有してなる。
前記CaOは、フラックスの組成の合計を100質量%としたときに、16〜45質量%の範囲で含有しているのが好ましい。このような範囲でCaOを含有させると、より確実にフラックスの液相線温度を低下させることが可能となる。
CaOの含有量が16質量%未満となったり、45質量%を超えたりするとフラックスの液相線温度が上昇するおそれがある。
SiO2の含有量が31質量%未満となったり、65質量%を超えたりするとフラックスの液相線温度が上昇するおそれがある。
Al2O3の含有量が8質量%未満となったり、25質量%を超えたりするとフラックスの液相線温度が上昇するおそれがある。
MgOの含有量が0質量%(すなわち含有されていない)であったり、10質量%を超えたりすると、フラックスの液相線温度が上昇するおそれがある。
X2Oの含有量が0質量%である(すなわち含有されていない)と、フラックスの液相線温度が低下せず、溶湯の温度である1300℃以下で液相状態を維持できないおそれがある。一方、X2Oの含有量が5質量%を超えると、X2Oが溶湯中のCrと反応して銅合金におけるCrの添加歩留を低下させるおそれや、フラックスの液相線温度が低下し過ぎてしまうために耐火物の寿命を低下させるおそれがある。
Cr2O3の含有量が0質量%である(すなわち含有されていない)と、フラックスに含有されるX2Oと溶湯中のCrが反応して溶湯中のCrが減少してしまい、Crの添加歩留が低下するおそれや、溶湯中のCrとフラックス中のX2Oが反応してフラックスのX2O含有量が低下してしまうことによるフラックスの液相線温度の上昇を招くおそれがある。一方、Cr2O3の含有量が5質量%を超えると、Cr2O3の含有量が多過ぎるためにフラックスの液相線温度が上昇してしまうおそれがある。
このフラックスは、Li2O及びCaF2から選ばれる1種以上を含有する点、並びに、これらのうちの1種以上を含有するため後記するようにCaO、SiO2、及びAl2O3の含有量が若干異なることとなる点以外は、前記したフラックスと同様であるので、以下では前記と同様となる説明については重複する説明を省略することとし、主に異なる点について説明する。
フラックスがLi2O及びCaF2から選ばれる1種以上を含有している場合、Li2OとCaF2の合計量は、フラックスの組成の合計を100質量%としたときに、0質量%を超え10質量%以下の範囲で含有するのが好ましい。この場合において、Li2OとCaF2の合計量が0質量%である(すなわち含有されていない)と、フラックスの溶融温度を低下させる効果が得られない。一方、Li2OとCaF2の合計量が10質量%を超えるとフラックスの溶融温度が低下し過ぎてしまうために容器等の耐火物の寿命を低下させるおそれがある。
なお、フラックスがLi2O及びCaF2から選ばれる1種以上を含有している場合におけるMgO、X2O及びCr2O3の含有量は変動しない。
このフラックスは、Li2O及びCaF2から選ばれる1種以上を含有する点、TiO2及びZrO2含有する点、並びに、これらを含有するため後記するようにCaO、SiO2、及びAl2O3の含有量が若干異なることとなる点以外は、前記したフラックスと同様であるので、以下では前記と同様となる説明については重複する説明を省略することとし、主に異なる点について説明する。
なお、フラックスがTiO2又はZrO2を含有している場合におけるMgO、X2O、Cr2O3の含有量、及びLi2OとCaF2の合計量は変動しない。
また、活性金属含有銅合金の溶製の諸条件、例えば、溶製する際の溶湯の温度や加熱時間、溶湯の撹拌手法も任意に設定することができることはいうまでもない。なお、溶湯の温度は1300℃以下とする。
先ず、10kgの純銅を所定数用意し、これを1230℃に加熱した誘導溶解炉によって溶製した。そして、その湯面に下記表1のNo.1〜38に示された成分及び組成を有する各フラックスを200g添加した。次いで、活性金属として50gのCr(10kgの純銅に対して0.5質量%相当)を添加し、60分間保持した。また、活性金属としてさらにTi又はZrをCrと複合して添加する場合には、10gのTi(10kgの純銅に対して0.1質量%相当)又は10gのZr(10kgの純銅に対して0.1質量%相当)をCrと併せて添加し、60分間保持した。
なお、フラックスの液相線温度(TL)は、振動発生器、振動片、レーザー変位計、電気炉および制御用コンピュータで構成した振動片式粘度計を用い、No.1〜38に係るフラックスを装填した坩堝を電気炉内に設置し、1500℃まで昇温後、3℃/minで降温しながら粘度測定を行い、粘度が急激に上昇し始める温度を液相線温度とし、表1に示した。なお、表1中において、1500℃まで昇温しても溶融しないフラックスについては、計算値を記入した。
また、Crの添加歩留(%)、Tiの添加歩留(%)、Zrの添加歩留(%)は、Thermo Jarrell Ash社製融合結合プラズマ発光分光分析装置(IRIS/AP−HR型)を用い、ICP−AES法による定量分析値により決定した。Crの添加歩留(%)は、95質量%を超えるものを合格とし、フラックスがTiO2又はZrO2を含有している場合は、Tiの添加歩留(%)及びZrの添加歩留(%)が80質量%以上となるものを合格とした。
Claims (3)
- 溶解炉又は保持炉によって、活性金属として少なくともCrを含有する銅合金を1300℃以下で溶製するに際して、炉内の銅又は銅合金の溶湯の表面に使用され、当該溶湯の温度で液相となる活性金属含有銅合金溶製用フラックスであって、
前記フラックスは、CaO−SiO2−Al2O3−MgO−X2O−Cr2O3系複合酸化物を含み、前記X2Oが、Na2O及びK2Oのうちの少なくとも一方であり、且つ、
組成の合計を100質量%としたときに、
前記CaOを16〜45質量%、
前記SiO2を31〜65質量%、
前記Al2O3を8〜25質量%、
前記MgOを0質量%を超え10質量%以下、
前記X2Oを0質量%を超え5質量%以下、
前記Cr2O3を0質量%を超え5質量%以下の範囲で含有している
ことを特徴とする活性金属含有銅合金溶製用フラックス。 - 溶解炉又は保持炉によって、活性金属として少なくともCrを含有する銅合金を1300℃以下で溶製するに際して、炉内の銅又は銅合金の溶湯の表面に使用され、当該溶湯の温度で液相となる活性金属含有銅合金溶製用フラックスであって、
前記フラックスは、CaO−SiO2−Al2O3−MgO−X2O−Cr2O3系複合酸化物を含み、前記X2Oが、Na2O及びK2Oのうちの少なくとも一方であり、さらにLi2O及びCaF2から選ばれる1種以上を含有し、且つ、
組成の合計を100質量%としたときに、
前記CaOを14〜45質量%、
前記SiO2を28〜65質量%、
前記Al2O3を7〜25質量%、
前記MgOを0質量%を超え10質量%以下、
前記X2Oを0質量%を超え5質量%以下、
前記Cr2O3を0質量%を超え5質量%以下、
前記Li2Oと前記CaF2の合計量を0質量%を超え10質量%以下の範囲で含有している
ことを特徴とする活性金属含有銅合金溶製用フラックス。 - 溶解炉又は保持炉によって、活性金属としてCrに加えてさらにTi又はZrを含有する銅合金を1300℃以下で溶製するに際して、炉内の銅又は銅合金の溶湯の表面に使用され、当該溶湯の温度で液相となる活性金属含有銅合金溶製用フラックスであって、
前記フラックスは、CaO−SiO2−Al2O3−MgO−X2O−Cr2O3系複合酸化物を含み、前記X2Oが、Na2O及びK2Oのうちの少なくとも一方であり、さらにLi2O及びCaF2から選ばれる1種以上を含有し、前記銅合金が前記活性金属としてCrとTiを含有する場合は、さらにTiO2を含有し、前記銅合金が前記活性金属としてCrとZrを含有する場合は、さらにZrO2を含有し、且つ、
組成の合計を100質量%としたときに、
前記CaOを12〜45質量%、
前記SiO2を24〜65質量%、
前記Al2O3を6〜25質量%、
前記MgOを0質量%を超え10質量%以下、
前記X2Oを0質量%を超え5質量%以下、
前記Cr2O3を0質量%を超え5質量%以下、
前記Li2Oと前記CaF2の合計量を0質量%を超え10質量%以下、
前記TiO2又は前記ZrO2を含有している場合は、前記TiO2又は前記ZrO2を0質量%を超え10質量%以下の範囲で含有している
ことを特徴とする活性金属含有銅合金溶製用フラックス。
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