JP5384280B2 - 光ファイバおよびその製造方法、並びにそれを用いた医療用レーザ装置 - Google Patents

光ファイバおよびその製造方法、並びにそれを用いた医療用レーザ装置 Download PDF

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Description

本発明は、長波長伝送用の光ファイバおよびその製造方法、並びにそれを用いた医療用レーザ装置に関する。
近年、外科手術や切開手術、あるいは手術時における血液の止血のために、さらには歯科治療等において長波長レーザ光が利用されるようになっている。このような医療分野で利用される長波長帯のレーザ光の波長は1μm以上(2μm帯、3μm帯、10.6μm帯)であり、これら各種波長帯のレーザ光を低損失で伝送させる光ファイバの開発が重要な課題となっている。
ところが、医療分野への適用を目指して開発され、既に実用化されている石英系ファイバは、波長が1μmよりも短い光は低損失で伝送させることができるが、1μm以上の波長域の光を伝送する際の損失が大きい。そこで、2μm帯、3μm帯の光を伝送する新しい光ファイバとして、ZBLAN(ZrB4-BaF2-LaF3-AlF3-NaF)を材料に用いたファイバが検討されている。また、10.6μm帯の光を伝送する光ファイバとして、光が伝搬するコア部が空気や不活性ガスで構成された中空状の光ファイバが用いられている。
特開平09-25138号公報
Applied Optics Vol.31, No.27(1992) pp.5833-5837 [平成21年9月24日検索],インターネット<URL:http://annex.jsap.or.jp/OSJ/50th_cd/main/keyword/igaku_008.htm>
しかし、上述の長波長伝送用光ファイバには以下のような問題点が存在する。
ZBLANを材料に用いた光ファイバは非常に複雑な材料構成であるため、それぞれの材料の粉末を調合し、焼結して光ファイバを作成したときの高純度化が難しく、低損失特性を実現することが容易ではない。また、作成工程および作成方法が複雑であり、低コスト化が困難である。さらに、コア材を覆う低屈折率のクラッド材の選定が難しく、コアとクラッドとの比屈折率差を大きくすることが難しい。
また、光が伝搬するコアが空気や不活性ガスで構成された中空光ファイバは、短尺なものは比較的容易であり実用化されているが、長尺にすることが難しい。また、作成方法も複雑であり、低コスト化や更なる低損失化が難しい。
本発明が解決しようとする課題は、医療分野で多用される長波長レーザ光を低損失で伝送でき、且つ、比較的簡単な作成工程で作成することができる光ファイバ及びその製造方法、並びにそれを用いた医療用レーザ装置を提供することである。
本発明は、本発明者がSi-O-N膜の長波長光に対する透過率特性を検討している中で見出したものである。すなわち、本発明者は、Si-O-N膜は波長が長くなるにつれて長波長光の透過率が低下していくことを見出し、その対策案としてSi-O-N膜にAlを少しずつ添加していくことを検討した。具体的には、直径が100mmの石英ガラス基板上に、AlをAl2O3換算で1, 6, 10モル%それぞれ添加したSi-O-N膜(膜厚約5μm)をそれぞれ作成してスラブ状の2次元光導波路を構成し、その光導波路の伝搬損失をプリズムカップリング法で評価した。その結果、Alを6モル%添加したSi-O-N膜では波長3μmでの透過率が約13%向上し、さらにAlを10モル%添加したSi-O-N膜では波長3μmでの透過率が約24%向上した。以上より、Alを添加したSi-O-N(以下、Si-Al-O-Nという)を光ファイバのコアに用いれば、1.8μmから6μmの近くまでの長波長帯における透過率が高くなり、長波長光に対する低損失特性を有する光ファイバを実現できると考えられた。
本発明は、以上の結果及び考察に基づいて成されたものであり、コア部と、該コア部の外周を覆い前記コア部よりも屈折率が低いクラッド部とから成る光ファイバであって、前記コア部が、Si-Al-O-Nを含む材料で形成され、前記クラッド部がSiO2から形成されていることを特徴とする。
この場合、前記コア部の屈折率が1.50〜2.0の範囲から選ばれることが好ましい。
また、本発明の第2の態様の光ファイバは、前記コア部と前記クラッド部の間に前記クラッド部よりも屈折率が低く、且つフッ素を含有するSiO2から形成された中間層が設けられていることを特徴とする。
さらに、本発明の第の態様の光ファイバは、前記コア部と前記クラッド部の間に前記コア部よりも屈折率が低く、且つSi-O-Nから形成された組成調整層が設けられていることを特徴とする。前記組成調整層の屈折率は1.47〜1.49の範囲から選ばれる。
本発明の第4の態様の光ファイバは、前記クラッド部に、照明光を伝送する長手方向に延びる空孔が複数個設けられていることを特徴とする。
上記光ファイバにおいては、前記クラッド部内に、該クラッド部よりも屈折率が高い、画像伝送用の第2コア部を少なくとも1個設けることができる。
本発明の医療用レーザ装置は、上述の照明光を伝送するための複数の空孔をクラッド部に有する光ファイバと、
前記光ファイバの入力端からコア部内に入射され、前記光ファイバの出力端に向けて前記コア部内を伝送される長波長のレーザ光を放射するレーザ光源と、
前記光ファイバの入力端から空孔に入射され、前記光ファイバの出力端に向けて前記空孔内を伝送される照明光を放射する照明用光源と、
前記光ファイバに沿って設けられ、前記光ファイバの出力端側に位置するレーザ光及び照明光の照射部位の画像を前記光ファイバの入力端に向けて伝送する光ファイババンドルと、
前記光ファイババンドルを通して伝送される画像を受像するカメラと、
前記カメラが受像した画像を表示する画像表示装置とを備えることを特徴とする。
また、本発明の別の態様の医療用レーザ装置は、上述の照明光を伝送するための複数の空孔及び画像伝送用の第2コア部をクラッド部に有する光ファイバと、
前記光ファイバの入力端からコア部内に入射され、前記光ファイバの出力端に向けて前記コア部内を伝送される長波長のレーザ光を放射するレーザ光源と、
前記光ファイバの入力端から空孔に入射され、前記光ファイバの出力端に向けて前記空孔内を伝送される照明光を放射する照明用光源と、
前記光ファイバの第2コア部を通して伝送される、前記光ファイバの出射端側に位置するレーザ光及び照明光の照射部位の画像を受像するカメラと、
前記カメラを介して受像した画像を表示する画像表示装置とを備えることを特徴とする。
上記したいずれの医療用レーザ装置においても、前記光ファイバの入力端から前記コア部に入射され前記光ファイバの出力端に向けて前記コア部内を伝送されるガイド光を放射するガイド用光源を備えるとよい。
また、本発明は、円周方向に回転している石英ガラス管内に、Si、N、Alを含む原料ガスを、Ar又はN2から成るキャリアガスと共に送り込み、前記石英ガラス管内を他方から排気しつつ該石英ガラス管の外周方向から加熱源を用いて該石英ガラス管を加熱しながら該石英ガラス管の一方から他方に向けて該加熱源を移動させることを繰り返して該石英ガラス管内壁にSi-Al-O-N 層を複数層に形成する第1工程、
前記原料ガス及びキャリアガスの送給を停止し、前記石英ガラス管内に内圧をかけながら前記加熱源で前記石英ガラス管を融着して中心にSi-Al-O-N 部を有するガラスロッドを作成する第2工程、
該ガラスロッドを加熱炉内に挿入してその先端を加熱し、一定速度で延伸して細径の光ファイバに線引きする第3工程
を備える光ファイバの製造方法である。
上記第2工程では、加熱源で石英ガラス管の他方端から一方端に向けて該石英ガラス管を融着して中心にSi-Al-O-N 部を有するガラスロッドを作成すると良い。
本発明の光ファイバの製造方法においては、原料ガスとしてN2Oガス又はNH4ガス、SiH4ガス、AlCl3ガスから成る混合ガス、あるいはN2Oガス又はNH4ガス、SiH2Cl2ガス、AlCl3ガスから成る混合ガスを用いることができる。
また、本発明の別の態様の光ファイバの製造方法は、第1工程の前に、前記石英ガラス管の内壁に、SiH4ガス、CF4ガス及びO2を用いて高温気相化学反応によりフッ素を含有するSiO2層を形成する予備工程を付加しても良い。又、さらに別の態様として、第1工程の前に、前記石英ガラス管の内壁に、N2Oガス又はNH4ガス、及びSiH4ガスを、前記キャリアガスと共に用いてSi-O-N層を形成する予備工程を付加しても良い。
本発明の光ファイバを用いれば、波長が2μm帯、3μm帯の光信号を低損失で伝送させることができる。これにより、外科手術用、切開手術用、また手術の際の止血用などに好適な光ファイバを提供することが可能となる。
前記コア部の屈折率を1.50〜2.0の範囲に調整すると、波長1.8μmから6μmの近くまでの長波長帯において高透過率の安定したガラス構造の光ファイバを提供することが可能となる。コア部の屈折率の調整は、まず、Si-O-Nで屈折率を高めておき、それに1モル%から10数モル%の範囲のAlを共添加することによって行うことができる。
上記光ファイバのコア部とクラッド部の間に該クラッド部の屈折率よりも低い、フッ素を含有するSiO2からなる中間層を介在させると、光ファイバの比屈折率差を大きくすることができる。これにより、上述の長波長帯の光信号をコア部内に効率良く閉じ込めることができ、光信号を低損失で伝送させることが可能となる。さらに、中間層を設けたことによってコア部への光信号の閉じ込めが強くなるので、光ファイバのコア部の直径及び光ファイバの外径をより小さくすることができる。
上記構成の光ファイバは、中間層となる膜を気相化学反応により形成し、ついでその膜の表面に気相化学反応を利用して連続的にコア部となる膜を形成することにより製造することができる。このような製法を用いれば、コア部と中間層の界面の構造不整を大幅に低減することができ、より低散乱損失の光ファイバを実現することが可能となる。また、光ファイバをより小さな曲げ半径で曲げて使用してもこの曲げ部での散乱損失の増大を抑えることができ、長波長の光信号を所望の部位に低損失で伝送することが可能となる。さらに、光ファイバの損失が低いことからコア部に高パワーの光信号を伝送させることが可能になるので、例えば人間の手術の際に非常に小さい局部に高パワーの光信号を集中させることができ、より短時間で高度な手術を行えるようになる。
また、コア部とクラッド部の間に、前記コア部よりも屈折率が低く、Si-O-Nから形成され、且つ屈折率が1.47〜1.49までの範囲から選ばれる組成調整層を設けると、コア部と組成調整層の軟化温度及び熱膨張係数を近い値にすることができるという利点がある。このため、光ファイバを容易に製造することができる。また、温度変化および湿度変化に対する伝送特性の変化が少ない安定した光ファイバであって、機械的強度の優れた光ファイバを提供することができる。
光ファイバのクラッド部に照明光を伝送する空孔を複数個設けると、外科手術や切開手術の際に長波長のレーザ光が照射される照射部(手術部)全体を照明光で明るく照らすことができる。
さらに、前記クラッド部内に少なくとも1個の画像伝送用の第2コア部を設けると、外科手術時や切開手術時に手術部の画像をリアルタイムで伝送することができる。このため、画像を監視しながら極めて正確に且つ精度良く目的の部位にレーザ光照射して手術を行ったり止血を行ったりすることができる。
本発明の医療用レーザ装置によれば、光ファイバのコア部内に長波長のレーザ光を伝送させて光ファイバの出力端から所望の照射部(手術部)に照射させると共に、前記光ファイバのクラッド部内にある複数の空孔内に照明光を伝送させて上記照射部を照明することができる。また、同時に、照射部の画像を上記光ファイバ内に設けた第2コア部内、或いは別に設けた光ファイババンドル内を伝送させ、カメラを通して画像表示装置に表示させることができる。このように、本発明の医療用レーザ装置は、手術用のレーザ光伝送、手術部を照明するための照明光伝送、および手術部の画像伝送の3つの機能を備えた簡易構成の装置であるので、医者が安心して正確に安全に治療を行うことが可能であり、また患者も医者に安心して任せて手術をしてもらえることが可能となる。
また、ガイド用光源を備えることにより、本発明の医療用レーザ装置では、光ファイバのコア部を通してガイド光を前記照射部(手術部)に照射することができる。このため、予め手術部位を正確に把握することが可能になり、より正確で安全な手術を実行することができる。ガイド光は、赤色、緑色、青色のレーザ光やLED光等、視認可能な光であれば良い。
本発明の光ファイバは、円周方向に回転している石英ガラス管内に、SiH4ガスとN2O(あるいはNH4ガス)とAlCl3ガスを含む原料ガスをキャリアガス(ArかN2)と共に送り込み、該石英ガラス管内を排気しつつ該石英ガラス管の外周方向から加熱源を用いて該石英ガラス管を加熱しながら該石英ガラス管の一方から他方に向けて該加熱源を移動させることを複数回繰り返して該石英ガラス管内壁にSi-Al-O-N層を複数層に形成する第1工程、前記ガスの送給を停止して該石英ガラス管内に内圧をかけながら該加熱源で該石英ガラス管を融着して中心にSi-Al-O-N部を有するガラスロッド(光ファイバプリフォーム)を作成する第2工程、該ガラスロッドを加熱炉内に挿入して加熱し、その先端部から一定速度で延伸して光ファイバに線引きする第3工程を経て製造される。この製造方法によって、コア部にSi-Al-O-N層を有する光ファイバを実現することになる。
上記製造方法では、第1工程の終了時に加熱源が石英ガラス管の他方端に移動している。従って、第2工程では、加熱源で石英ガラス管の他方端から一方端に向けて該石英ガラス管を融着するようにすると、第1工程から第2工程にスムーズに移行することができる。
しかも上記製造方法によれば、Si-Al-O-N層を高温熱分解反応を利用した気相化学反応によって成膜しているので、2μm帯、3μm帯の波長で透過率に影響を及ぼすCr、Mn、Feなどの不純物の混入が非常に少ない低損失なSi-Al-O-N 層を形成することができる。また、上記反応を閉じた系で行うことで外部からの上記不純物の混入を抑えられるので低損失なSi-Al-O-N 層を形成することができ、結果的に低損失な光ファイバを得ることが可能となる。
さらに、Si-O-Nの中に1モル%から10数モル%のAlを共添加したSi-Al-O-N 層とすることにより、ガラス構造を保った光ファイバを始めて実現することが可能となる。このような特徴により、前述したように、波長が2μm帯、3μm帯の光信号を低損失で伝送させることができる光ファイバが得られ、外科手術用、切開手術用に、また手術の際の止血用などに好適な光ファイバを提供することが可能となる。
なお、石英ガラス管を加熱する加熱源は急速加熱、急速冷却ができる熱源であればよく、酸水素バーナ、赤外線電気炉、高周波誘導加熱炉などを用いることができる。また、第2工程の際に赤外線電気炉や高周波誘導加熱炉を用いる場合には石英ガラス管の外周方向に外圧用のガスを吹付ける装置を併用すると良い。
また、原料ガスの一つであるSiH4ガスの代わりにSiH2Cl2を用いることにより、SiH4ガスの場合よりも約300℃も高い温度(700℃から1000℃の範囲)で石英ガラス管内壁に気相化学反応を利用して低損失なガラス層を形成することができる。このため、2μm帯、3μm帯で損失の要因となる不純物(Cr、Mn、Feなど)の混入をより一層低減させることができ、これにより更なる低損失な光ファイバを提供することが可能となる。
また、第1工程の前に、石英ガラス管内壁にSiH4ガス、CF4ガス及びO2を用いて該石英ガラス管内壁にフッ素を含有するSiO2層を形成しておく予備工程を付加することにより、コア部とクラッド部の間に中間層を介在させることができる。コア部と中間層との比屈折率差は1.5%以上、例えば6%程度に大きくすることが可能であるため、長波長のレーザ光をコア部内に強く閉じ込めて低損失で伝送させることができ、この結果、微細な手術部に長波長のレーザ光を極めて効率良く、しかも精度良く照射できるようになる。
さらに、第1工程の前に、石英ガラス管内壁にSiH4ガス、N2O(あるいはNH4ガス)をキャリアガス(ArかN2)と共に用いて該石英ガラス管内壁にSi-O-N層を形成しておく予備工程を付加することにより、コア部とクラッド部の間に組成調整層を介在させることができる。コア部と組成調整層の軟化温度、熱膨張係数は近い値であるので、ガラスロッドを作成する際にクラックの発生による該ガラスロッドの割れを抑えることができる。従って、ガラスロッドを再現性良く作成できるため、光ファイバを容易に製造することが可能となる。また、温度変化や湿度変化に対して安定した伝送特性を有する光ファイバ、強度的に安定した光ファイバを提供することが可能となる。
本発明の実施例1に係る光ファイバの概略構成図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図。 光ファイバの製造工程図。 光ファイバの製造方法を説明するための図。 本発明の実施例2に係る図1相当図。 図2相当図。 図3相当図。 製造工程の他の例を示す図。 本発明の実施例3に係る図1相当図。 図2相当図。 本発明の実施例4に係る図1相当図。 本発明の実施例5に係る図1相当図。 本発明の実施例6に係る図1相当図。 本発明の実施例7に係る医療用レーザ装置の概略構成図。 本発明の実施例8に係る医療用レーザ装置の概略構成図。
以下に、本発明の具体的な実施例について順に説明する。
図1は本発明の実施例1に係る長波長伝送用光ファイバを示す。同図(a)は光ファイバの径方向に沿う横断面図、同図(b)はA-A線に沿う縦断面図である。この光ファイバ1はシングルモードの光ファイバであり、直径が8μmの断面円形状のコア部2とその周りを覆う円環状のクラッド部3からなる。前記クラッド部3の直径(外径)は125μmである。
クラッド部3はSiO2から成る。コア部2は、クラッド部3よりも高い屈折率を有するSi-Al-O-Nから成る。
コア部2のSi-Al-O-Nの屈折率(波長0.63μmでの値)は1.50〜2.0の範囲から選択される。このような屈折率を得るために、本発明者は以下の実験を行いSi-O-Nの屈折率特性を調べた。
まず、Si基板上にプラズマCVD法でガラス膜を形成し、そのガラス膜の屈折率を波長0.63μmの光源を用いて測定した。具体的には、真空排気されているプラズマCVD装置内の上部及び下部電極に高周波電力を印加し、当該上部電極と下部電極の間の反応部内にSiH4ガスとN2OガスとO2ガスを導入してプラズマ雰囲気下で熱分解反応を起こさせ、ガラス膜を形成させた。その結果、SiO2中に窒素(N)を4アトミック%添加すると屈折率は1.495、窒素(N)を10アトミック%添加すると屈折率は1.504、窒素(N)を15アトミック%添加すると屈折率は1.52、窒素(N)を20アトミック%添加すると屈折率は1.56であった。
次に、SiH4ガス、N2Oガス及びO2ガスにAlCl3ガスを加えた同様のプラズマCVD法でSi基板上にSi-Al-O-N膜を形成し、その膜の屈折率を波長0.63μmの光源を用いて測定した。その結果、Al2O3換算でアルミニウム(Al)を1モル%添加したときの屈折率に対して、12モル%添加したときの屈折率が約1.5%上昇した。このように、窒素(N)の添加量を増やせばSi-Al-O-Nの屈折率が高くなる。また、アルミニウム(Al)の添加量を増やしても屈折率が高くなるが、その勾配はなだらかであることが分かった。
以上の結果から、本実施例では、窒素(N)の添加量を約10アトミック%、アルミニウム(Al)の添加量を約5モル%とした。この結果、コア部2の屈折率は1.52であった。
SiO2の屈折率(波長0.63μmでの値)は1.4575であるので、コア部2とクラッド部3との比屈折率差は4%となる。
次に、本実施例の長波長伝送用光ファイバ1の製造方法を図2及び図3を参照して説明する。本実施例の光ファイバ1は、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法を用いて製造した。
図2のステップS1はコア部2の形成工程を示しており、この工程では、まず初めにガラス旋盤(図示せず)に取り付けられて円周方向に回転している石英ガラス管15内に当該石英ガラス管15の一方の端部(図3では左端部)から原料ガス(SiH4ガス、N2O(あるいはNH4)ガス、及びAlCl3ガス)を、キャリアガス(ArかN2)と共に送り込む。次に、前記石英ガラス管15内を他方の端部(図3では右端部)から排気しつつ、加熱源である酸水素バーナ16を用いて前記石英ガラス管15を外周方向から加熱しながら、酸水素バーナ16を矢印P1、P2方向に往復移動させる。
具体的には、酸水素バーナ16を石英ガラス管15の左端部から右端部に向かって矢印P1方向に一定速度で移動させつつ、原料ガス及びキャリアガスを石英ガラス管15の左端部から当該石英ガラス管15内に送り込み、石英ガラス管15の内壁に高温気相化学反応によりSi-Al-O-N層17を形成する。酸水素バーナ16が石英ガラス管15の右端部に達すると原料ガス及びキャリアガスの送給を停止し、酸水素バーナ16を矢印P2方向に移動させて石英ガラス管15の左端部に戻す。そして、再び原料ガス及びキャリアガスを石英ガラス管15内に送り込みながら酸水素バーナ16を矢印P1方向に一定速度で移動させ、高温気相化学反応によりSi-Al-O-N層17を形成する。
以上の動作を複数回繰り返すことにより、石英ガラス管15の内壁にSi-Al-O-N層17を多層状に形成する。このように形成された多層状のSi-Al-O-N層17の厚さは20μm〜400μmの範囲が好ましく、厚いほど長尺の光ファイバを作成することができる。なお、Si-Al-O-N層17の厚さは石英ガラス管15の内径や外径、成膜速度、光ファイバの外径及びコア部の直径等を考慮に入れて決定する。
また、前記石英ガラス管15の長さは500mm〜1500mmの範囲が好ましく、外径は15mm〜40mmの範囲が好ましい。石英ガラス管15の外径が大きいほど長尺の光ファイバを作成することができる。さらに、石英ガラス管15の肉厚は1mmから4mmの範囲が好ましく、厚いほど長尺の光ファイバを作成することができる。
SiH4ガス、N2O(あるいはNH4)ガス、AlCl3ガスそれぞれのガス流量は、Si-Al-O-N層17の所望の屈折率を考慮に入れ、50〜1000cc/minの範囲から選択される。これら原料ガスの流量が多いほど成膜速度を大きくすることができる。また、キャリアガスにはArかN2を用い、そのガス流量は原料ガス全体の流量と同程度かやや少ないことが好ましい。キャリアガスの流量が少ないと成膜速度は低下するが膜の均一性は良い。逆にキャリアガスの流量が多いと成膜速度は大きくなるが、膜厚の均一性が低下する。
酸水素バーナ16による石英ガラス管15の加熱温度が低いとSi-Al-O-N層17の成膜速度が小さく、加熱温度が高いと成膜速度が大きい。加熱温度が高いほどより低損失な膜を形成することができるが、高すぎると所望の組成の膜を形成するのが難しくなる。従って、酸水素バーナ16による石英ガラス管15の加熱温度は500℃〜900℃の範囲から選択されるが、当該加熱温度は酸水素バーナ16の移動速度とO2ガス、H2ガスの流量に依存するため、前記移動速度及び流量の値によって適宜の値に決定する。本実施例では、加熱温度を800℃付近に設定した。
以上のようにして石英ガラス管15内にコア部2となるSi-Al-O-N層17を形成した後、原料ガス及びキャリアガスの送給を停止し、石英ガラス管15内に内圧をかけながら酸水素バーナ16で石英ガラス管15を右端側から左端側に向けて加熱、融着し、中実化する。これにより、中心に略円形断面形状のコア部2(Si-Al-O-N層)を有するガラスロッド(光ファイバプリフォーム)が作成される(ステップS2)。
続いて、ガラスロッドを2000℃以上の加熱炉内に一定速度で送り込みながらそのガラスロッドの先端側から加熱、溶融して延伸し、光ファイバに線引きする(ステップS3)。
上述の方法で得られた光ファイバの損失を波長2μm帯および3μm帯で光源と光スペクトラムアナライザを用いて測定した結果、これらの波長帯で20dB/km以下の値を得ることができ、従来の光ファイバの損失(約100dB/km)よりも低損失値を実現することができた。
また、本実施例の光ファイバでは、高純度の石英ガラス管内に、高温熱分解反応を利用した気相化学反応によってコア部となるSi-Al-O-N層を成膜しているので、2μm帯、3μm帯の波長の透過率に影響を及ぼすクロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)などの不純物の混入が非常に少ない低損失なSi-Al-O-N層を形成することができる。また、上記反応を閉じた系で行うことで外部からの上記不純物の混入を抑えられるため、一層、低損失なSi-Al-O-N層を形成することができ、その結果、低損失な光ファイバを得ることができる。さらに、Si-O-Nの中に1モル%から10数モル%のAlを共添加してSi-Al-O-N層とすることにより、ガラス構造を保ったSi-Al-O-N層のコア部を有する光ファイバを実現することができる。これにより、波長が2μm帯、3μm帯の光信号を低損失で伝送させることができ、外科手術用に、切開手術用に、また手術の際における血液の止血用などに好適な光ファイバを提供することができる。
図4は本発明の実施例2に係る長波長伝送用光ファイバを示す。同図(a)は上記光ファイバの径方向に沿う横断面図、同図(b)は(a)のB-B線方向の縦断面図である。この光ファイバ4は、コア部2とクラッド部3の間に該クラッド部3よりも屈折率が低い中間層を介在させた点が実施例1の光ファイバ1と異なる。中間層5は、フッ素(F)を含有するSiO2層から成る。
本実施例の光ファイバ4の製造方法を図5及び図6を参照して説明する。この光ファイバ4の製造方法は、コア部2(Si-Al-O-N層17)の形成工程(ステップS1)の前に、フッ素を含有するSiO2層18を形成する予備工程(図5にステップPS1で示す工程)を備えている。このフッ素を含有するSiO2層18は中間層5に相当する
この予備工程では、円周方向に回転している石英ガラス管15内に該石英ガラス管15の左端部からSiH4ガス、CF4ガス(又はC2F6ガス)及びO2ガスを送り込む。そして、前記石英ガラス管15内を他方の端部(図6では右端部)から排気しつつ、加熱源である酸水素バーナ16を用いて前記石英ガラス管15を外周方向から加熱しながら、酸水素バーナ16を矢印P1,P2方向に往復移動させる。この結果、高温気相化学反応により上記石英ガラス管15の内壁にフッ素を含有したSiO2層18が形成される。その後、石英ガラス管15内のフッ素を含有したSiO2層18上に、実施例1の光ファイバ1と同様の方法でSi-Al-O-N層17を多層状に形成し(ステップS1)、続いて石英ガラス管15を外周から酸水素バーナで加熱、融着して中実のガラスロッドからなる光ファイバプリフォームを作成し(ステップS2)、最後に、光ファイバプリフォームを光ファイバ線引き装置で線引きして光ファイバを作成する(ステップS3)。
中間層5の形成に際しては、酸水素バーナ16による石英ガラス管15の加熱温度は400℃から600℃の低い温度が好ましい。この加熱温度が高温になると、フッ素(F)が添加されにくくなるためである。
中間層5の屈折率は、O2 とCF4ガスの比(O2/ CF4)を5〜40の範囲に調節することにより1.43〜1.45の範囲に調節した。本実施例では中間層5の屈折率が1.44になるようにO2 ガスとCF4ガスの比を調節した。コア部2の屈折率は実施例1の光ファイバ1と同様、1.52である。従って、コア部2と中間層5の比屈折率差を2%以上、例えば6%程度に大きくすることができる。
中間層5の厚みは2μm〜15μmの範囲から選択され、本実施例では10μmにした。コア部2の屈折率は実施例1の光ファイバ1と同様、1.52である。また、本実施例では、光ファイバ4の外径は125μm、コア部2の直径は6μmである。このような構造により、本実施例の光ファイバ4は、光信号をコア部2内に強く閉じ込めて伝送することができ、微細な手術部に対してレーザ光を極めて精度良く照射することができる。
また、本実施例の光ファイバ4の損失特性を測定した結果、波長2μm帯および3μm帯の波長範囲で15dB/km以下の低損失値を得ることができた。石英ガラス管15の内壁面はその製法上、鏡面状態にすることが難しく、荒れた状態になっている。実施例1の場合、上記石英ガラス管15の内壁に高温の気相化学反応を利用してSi-Al-O-N 層を形成しているので、コア部2(Si-Al-O-N 層)とクラッド部3(石英ガラス)との界面の構造不整が大きい。これに対して、本実施例では、石英ガラス管15の内壁に予めMCVD法で中間層5形成した後、連続的にコア部2を形成するため、コア部2と中間層5との界面の構造不整を非常に小さくすることができる。このため、構造不整による散乱損失が低減され、より低損失な光ファイバ4が得られた。
なお、本実施例の光ファイバ4は、図5に示す方法に代えて図7に示す方法で製造することも可能である。図7に示す製造方法は、予備工程(ステップPS1)及びコア部2の形成工程(ステップS1)においてSiH4ガスの代わりにSiH2Cl2ガスを用いたことを特徴とする。SiH4ガスの代わりにSiH2Cl2ガス用いると、SiH4ガスの場合よりも約300℃も高い温度(700℃から1000℃の範囲)で石英ガラス管の内壁に気相化学反応を利用して低損失なガラス層を形成することができる。また、OH基の混入を低減できるので、2μm帯、3μm帯において損失の原因となる不純物(Cr、Mn、Feなど)の混入をより一層低減させることができる。このため、いっそう低損失な光ファイバを提供することができる。
図8は本発明の実施例3の長波長伝送用光ファイバを示す。同図(a)は上記光ファイバの径方向の横断面図、同図(b)は(a)のC-C線方向の縦断面図である。この光ファイバ6は、コア部2とクラッド部3の間に前記コア部2よりも屈折率が低い組成調整層7を介在させた点が実施例1の光ファイバ1と異なる。組成調整層7はSi-O-Nから成り、その屈折率が1.47〜1.49の範囲から選ばれる。
本実施例の光ファイバ6の製造方法を図9を参照して説明する。本実施例の光ファイバ6の製造方法は、コア部2(Si-Al-O-N 層17)の形成工程(図2のステップS1)の前にSi-O-N層を形成する予備工程(ステップPS2)を備えている点が実施例1の製造方法と異なる。
この予備工程では、円周方向に回転している石英ガラス管内に当該石英ガラス管の一方の端部からSiH4ガスとN2Oガス(あるいはNH4ガス)をキャリアガス(ArかN2)と共に送り込む。次に、石英ガラス管内を他方の端部から排気しつつ、加熱源である酸水素バーナを用いて前記石英ガラス管を外周方向から加熱しながら、酸水素バーナ16を往復移動させる。これら一連の動作を複数回繰り返すことにより石英ガラス管15の内壁に高温の気相化学反応を利用してSi-O-N層を作成した(ステップPS2)。このSi-O-N層は光ファイバ6の組成調整層7に成る部分であり、窒素(N)を約5アトミック%添加して屈折率が1.49になるように調整されている。
その後、実施例1の光ファイバ1と同様の方法で、石英ガラス管内のSi-O-N層上にSi-Al-O-N層を多層状に形成し(ステップS1)、続いて、上記ガスの送付を停止して石英ガラス管に内圧をかけながら該石英ガラス管を外周から酸水素バーナで加熱、融着して、中心に略円形断面状のSi-Al-O-N部を、その外周にSi-O-N層を有するガラスロッド(光ファイバプリフォーム)を作成した(ステップS2)。そして、このガラスロッドを加熱炉内に一定速度で送り込んで加熱し、その先端部から延伸して一定速度で線引きすることによって光ファイバを作成した(ステップS3)。上記方法により得られた本実施例の光ファイバ6は、外径が125μm、コア部2の直径が8μm、コア部2の屈折率が1.52であった。
組成調整層7は、屈折率が1.47〜1.49の範囲から選ばれるSi-O-N層であることから、コア部2と組成調整層7の軟化温度、熱膨張係数が近い値となる。このため、ガラスロッドの作成時に、クラックの発生によるガラスロッドの割れを抑えることができ、再現性良くガラスロッドを製造することができる。また、光ファイバ使用時の温度、湿度変化に対して損失の変化がほとんど無く、また光ファイバ出射パターンの変化も少ない、安定した伝送特性を保持することができる。さらに、光ファイバ内に過剰な応力の残留が少ないことから、機械強度的に安定した光ファイバを提供することができる。
図10は本発明の実施例4の長波長伝送用光ファイバを示す。同図(a)は上記光ファイバの径方向の横断面図、同図(b)は(a)のD-D線方向の縦断面図である。この光ファイバ8は、照明光を伝送する複数の空孔9がクラッド部3に設けられていることを特徴とする。前記空孔9はクラッド部3の一方の端部から他方の端部まで光ファイバ8の長手方向に延びている。前記空孔9は、光ファイバプリフォームを作成した段階で当該プリフォームのクラッド部に相当する部分に切削加工で作成される。
本実施例の光ファイバ8によれば、外科手術時や切開手術時に長波長のレーザ光をコア部2を通して伝送させて手術部に照射する際に、前記空孔9を通して照明光を伝送させて手術部を明るく照らすことができる。
なお、空孔9の数が多いほどコア部2の出射側を明るく照らすことができるが、コア部2の出射側全体を照らすためには少なくとも4個の空孔9を、コア部2の周りにほぼ等間隔に設ければ良く、4〜40個程度であれば良い。また、同様の理由から空孔9の直径は大きい方が好ましく、2μm〜20μmの範囲から選ぶと良い。
図11は本発明の実施例5の長波長伝送用光ファイバを示す。同図(a)は上記光ファイバの径方向の横断面図、同図(b)は(a)のE-E線方向の縦断面図である。実施例1〜4の光ファイバはシングルモード用の光ファイバであるのに対して、本実施例の光ファイバ10は、マルチモード用の光ファイバである。すなわち、コア部11はSi-Al-O-Nからなり、その直径は30μmから100μmの範囲から選ばれる。クラッド部3はSiO2から成り、その直径は125μmから300μmの範囲から選ばれる。また、前記クラッド部3内には照明光を伝送する複数の空孔9が形成されている。本実施例の光ファイバ10は、予め空孔が形成された厚肉の石英ガラス管の内壁に実施例1や実施例2で説明した方法で得られた光ファイバプリフォームを挿入して線引きすることにより作成した。なお、図11では、空孔9の数を24個としたが、24個より多くてもよく、少なくても良い。また、本実施例では空孔9の直径は3μm〜20μmの範囲を選択することが好ましい。
本実施例のマルチモードの光ファイバ10によれば、長波長のレーザ光をより高パワーで且つより広い面積の照射部に照射することができる。
図12は本発明の実施例6の長波長伝送用光ファイバを示す。同図(a)は上記光ファイバの長さ方向の横断面図、同図(b)は(a)のF-F線方向の縦断面図である。この光ファイバ12は、クラッド部3内に照明光を伝送するための複数の空孔9、及び画像を伝送するための複数の第2コア部13が設けられている点が実施例5の光ファイバ1と異なる。第2コア部13はクラッド部3よりも高い屈折率を有するガラス材料、例えば、SiO2にGeO2、P2O5、Al2O3、TiO2などの屈折率制御用添加部材を含んだガラス材料から成る。なお、前記コア部2と同様に高屈折率のSi-Al-O-Nを用いても良く、Si-O-Nを用いても良い。画像を閉じ込めて伝送させるためには、第2コア部13の屈折率はできるだけ高いことが望ましく、クラッド部3に対して比屈折率差で0.5%から4%程度の範囲が好ましい。前記光ファイバ12の直径は125μm〜300μmの範囲から選ばれる。
本実施例の光ファイバ12を用いれば、一本の光ファイバでレーザ光照射による手術とその手術部の照明とその手術部の画像監視を行うことができる。このため、手術部の画像を監視しながら精度良くレーザ光照射手術を行うことができる。また、手術時に止血する際も、その止血部の画像を監視しながら的確にレーザ光を照射して止血を行うこともできる。
しかも、光ファイバ12の直径は125μm〜300μmの範囲から選択されるので、人体の中に光ファイバ12を挿入する際の患者の肉体的および精神的負担を大幅に緩和することができる。なお、前記光ファイバ12は、その外周が樹脂や金属の薄膜で被覆されて、フレキシブルな構造にされているとよい。
図13は本発明の実施例7に係る医療用レーザ装置を示す。この医療用レーザ装置20は、光ファイバ21でレーザ光照射による手術とその手術部の照明を行い、光ファイババンドル22で手術部の画像監視を行うように構成されている。
前記光ファイバ21は断面円形状のコア部2とその周りを覆う円環状のクラッド部3から成る。前記クラッド部3内には照明光を伝送するための複数の空孔9が設けられている。また、前記光ファイババンドル22は、断面円形状のクラッド部23と、その内部に設けられ該クラッド部23よりも高屈折率の複数のコア部24とから成る。前記光ファイバ21と光ファイババンドル22はまとめてプラスチック製の被覆チューブ25で被覆されている。なお、前記被覆チューブ25は金属製でもよい。
また、本実施例の医療用レーザ装置20は、光ファイバ21のコア部2内に長波長のレーザ光27を入射させるレーザ光源28、照明光伝送用の空孔9に照明光(例えば白色光)29を入射させる照明用光源30、光ファイババンドル22のコア部24内を伝送される画像を取り込むCCDカメラ31、CCDカメラ31が取り込んだ画像を表示するテレビ受像機32を備えている。
上記医療用レーザ装置20においては、照明用光源30から放射された照明光29がレンズ34を介して光反射板35に照射され、該光反射板35で反射された後、光ファイバ21の入力端(図13における左端部)から空孔9内に入射する。また、レーザ光源28から放射されたレーザ光27は、光反射板35に設けられたスリットを通して直接光ファイバ21のコア部2内に入射する。コア部2及び空孔9に入射したレーザ光27及び照明光29は、それぞれコア部2内及び空孔9内を伝送され、光ファイバ21の出力端(図13における右端部)から出射して手術部に照射される。これと同時に、手術部の画像は光ファイババンドル22のコア部24内を伝送され、CCDカメラ31を介してテレビ受像機32に表示される。
本実施例の医療用レーザ装置20によれば、使用者である医師は、手術部の画像をテレビ受像機32で監視しながら当該手術部に長波長のレーザ光27を照射して、外科手術や切開手術等を実行することができる。また、光ファイバ21に照明光29を伝送するための空孔9を設けたので、手術部全体を明るく照明することができる。従って、テレビ受像機32に表示される手術部の画像を明るくすることができ、手術部に対して極めて正確にレーザ光照射手術を行うことができるようになる。また、手術時に止血する際にもその止血箇所を明るく照明することができるため、止血部の画像を監視しながら的確にレーザ光を照射して止血を行うことができる。
図14に本発明の実施例8に係る医療用レーザ装置を示す。本実施例の医療用レーザ装置40は、ガイド用レーザ光41を放射するガイド用レーザ光源42を備える点が実施例7の医療用レーザ装置20と異なる。ガイド用レーザ光源42はガイド用レーザ光41として例えば赤色レーザ光を放射する。
ガイド用レーザ光源42から放射された赤色レーザ光41はフィルタ43を介して光ファイバ21のコア部2内に入射し、該コア部2を伝送された後、光ファイバ21の出力端から出射される。前記フィルタ43はレーザ光源28から光ファイバ21に至るレーザ光27の光路上に配置されており、長波長用のレーザ光を通過させ、赤色レーザ光41を反射させる機能を有する。
本実施例の医療用レーザ装置40によれば、まず、手術箇所に赤色レーザ光41を照射し手術部位を特定した後、長波長レーザ光を手術部位に照射して手術を行えるので、より正確に且つ高精度に手術を実行することができる。
なお、ガイド用レーザ光41は視認可能なレーザ光であれば良く、赤色レーザ光の他、緑色レーザ光や青色レーザ光でも良い。また、レーザ光源に代えてLEDを設け、このLED光をガイド光として用いても良い。
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行うことができる。
例えば、石英ガラス管として、SiO2にわずかのB2O3が添加されたバイコールガラス管(商品名)を用いてもよい。また、Fが添加されたSiO2層が予め形成された石英ガラス管を用いてもよい。
クラッド部3内に形成される照明光伝送用の空孔の内径は全て同じ大きさでなくてもよく、種々の大きさの内径を有する空孔を設けてもよい。また、空孔の形状は円形に限らず多角形などでもよい。
光ファイバの直径は100μm〜500μmの範囲から選ぶことができる。光ファイバを実際に使用する場合にはその外周に少なくとも1層の樹脂コーティングが被覆されているとよい。また、光ファイバの外周を金属で覆うようにしてもよい。
光ファイバの入力端および出力端には反射防止膜が形成されていてもよい。
本発明の光ファイバは、並列に並べてアレイ状に構成して用いてもよく、束ねてバンドル状に構成して用いてもよい。
本発明の医療用レーザ装置では、長波長用のレーザ光として2μm帯および3μm帯のレーザ光のどちらか、あるいは両方を用いるようにしてもよい。
本発明の光ファイバの製造方法において、SiH4ガスの代わりに、Si(OC2H5)のような有機オキシシラン系の液体ソースを気化させて用いてもよく、SiCl4ガスを用いてもよい。また、図2や図5等においてステップS2で示したガラスロッドの形成工程を行わないで光ファイバを形成しても良い。即ち、ステップS1で得られた石英ガラス管を、そのまま加熱炉内に挿入しつつ上記石英ガラス管内をわずかに減圧しながらその先端を加熱し、一定速度で延伸して細径の光ファイバに線引きする。
光ファイバのコア部とクラッド部の間に設けられる組成調整層は単層状でも多層状でも良い。組成調整層の屈折率は1.47〜1.49の範囲から選ばれるが、組成調整層を多層状にする場合、全ての層の屈折率を同じにしてもよく、屈折率が徐々に変化するようにしても良い。
1,4,6,8,10,12,21…光ファイバ
2…コア部
3…クラッド部
5…中間層
7…組成調整層
9…空孔
13…第2コア部
15…石英ガラス管
16…酸水素バーナ
20,40…医療用レーザ装置
22…光ファイババンドル
28…レーザ光源
30…照明用光源
31…CCDカメラ
32…テレビ受像機
42…ガイド用レーザ光源

Claims (15)

  1. コア部と、該コア部の外周を覆い前記コア部よりも屈折率が低いクラッド部とから成る光ファイバにおいて、
    前記コア部が、Si-Al-O-Nから形成され、前記クラッド部がSiO2から形成されていることを特徴とする光ファイバ。
  2. 前記コア部の屈折率が、1.50〜2.0の範囲から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
  3. 前記コア部と前記クラッド部の間に前記クラッド部よりも屈折率が低い中間層を有し、前記中間層がフッ素を含有するSiO2から形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ。
  4. 前記コア部と前記クラッド部の間に前記コア部よりも屈折率が低い組成調整層を有し、前記組成調整層が、Si-O-Nから形成され、屈折率が1.47〜1.49の範囲から選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ。
  5. 前記クラッド部には照明光を伝送する長手方向に延びる空孔が複数個設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ファイバ。
  6. 前記クラッド部には、該クラッド部よりも屈折率が高い画像伝送用の第2コア部が少なくとも1個設けられていることを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ。
  7. 請求項5に記載の光ファイバと、
    前記光ファイバの入力端からコア部内に入射され、前記光ファイバの出力端に向けて前記コア部内を伝送される長波長のレーザ光を放射するレーザ光源と、
    前記光ファイバの入力端から空孔に入射され、前記光ファイバの出力端に向けて前記空孔内を伝送される照明光を放射する照明用光源と、
    前記光ファイバに沿って設けられ、前記光ファイバの出力端側に位置するレーザ光及び照明光の照射部位の画像を前記光ファイバの入力端に向けて伝送する光ファイババンドルと、
    前記光ファイババンドルを通して伝送される画像を受像するカメラと、
    前記カメラが受像した画像を表示する画像表示装置とを備えることを特徴とする医療用レーザ装置。
  8. 請求項6に記載の光ファイバと、
    前記光ファイバの入力端からコア部内に入射され、前記光ファイバの出力端に向けて前記コア部内を伝送される長波長のレーザ光を放射するレーザ光源と、
    前記光ファイバの入力端から空孔に入射され、前記光ファイバの出力端に向けて前記空孔内を伝送される照明光を放射する照明用光源と、
    前記光ファイバの第2コア部を通して伝送される、前記光ファイバの出射端側に位置するレーザ光及び照明光の照射部位の画像を受像するカメラと、
    前記カメラを介して受像した画像を表示する画像表示装置とを備えることを特徴とする医療用レーザ装置。
  9. 前記光ファイバの入力端から前記コア部に入射され前記光ファイバの出力端に向けて前記コア部内を伝送されるガイド光を放射するガイド用光源を備えることを特徴とする請求項8に記載の医療用レーザ装置。
  10. 円周方向に回転している石英ガラス管内に、Si、N、Alを含む原料ガスを、Ar又はN2から成るキャリアガスと共に送り込み、前記石英ガラス管内を他方から排気しつつ該石英ガラス管の外周方向から加熱源を用いて該石英ガラス管を加熱しながら該石英ガラス管の一方から他方に向けて該加熱源を移動させることを繰り返して該石英ガラス管内壁にSi-Al-O-N 層を複数層に形成する第1工程、
    前記原料ガス及びキャリアガスの送給を停止し、前記石英ガラス管内に内圧をかけながら前記加熱源で前記石英ガラス管を融着して中心にSi-Al-O-N 部を有するガラスロッドを作成する第2工程、
    該ガラスロッドを加熱炉内に挿入してその先端を加熱し、一定速度で延伸して光ファイバに線引きする第3工程
    を備える光ファイバの製造方法。
  11. 第2工程では、加熱源で石英ガラス管の他方端から一方端に向けて該石英ガラス管を融着することを特徴とする請求項10に記載の光ファイバの製造方法。
  12. 原料ガスは、N2Oガス又はNH4ガス、SiH4ガス、AlCl3ガスから成る混合ガスであることを特徴とする請求項10又は11に記載の光ファイバの製造方法。
  13. 原料ガスは、N2Oガス又はNH4ガス、SiH2Cl2ガス、AlCl3ガスから成る混合ガスであることを特徴とする請求項10又は11に記載の光ファイバの製造方法。
  14. 第1工程の前に、前記石英ガラス管の内壁に、SiH4ガス、CF4ガス及びO2を用いて高温気相化学反応によりフッ素を含有するSiO2層を形成する予備工程を行うことを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の光ファイバの製造方法。
  15. 第1工程の前に、前記石英ガラス管の内壁に、N2Oガス又はNH4ガス、及びSiH4ガスを、前記キャリアガスと共に用いてSi-O-N層を形成する予備工程を行うことを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の光ファイバの製造方法。
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