JP5384123B2 - 希土類元素添加光ファイバ母材の製造方法 - Google Patents

希土類元素添加光ファイバ母材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は光ファイバ母材の製造方法に関し、特に、希土類元素添加の光ファイバ母材の製造方法に関する。
MCVD(modified chemical vapor deposition)法を用いてコア母材を作製する製法として、ガラス微粒子の形成と、希土類元素含有化合物等を添加する工程を別個の工程として行う、液浸MCVDと呼ばれる製造方法がある。該製造方法は、石英管の内周面にガラス微粒子を堆積した後、石英管の一方の端部から希土類元素含有化合物等を含む溶液を流し込んで微粒子中に浸透後、希土類元素含有化合物等を熱で拡散させた後にガラス微粒子を透明化させるという方法である。例えば、石英管内周面にガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子層を形成する堆積工程、該ガラス微粒子層に希土類元素含有化合物の溶液を含浸させる液浸工程、乾燥工程を経て、ガラス微粒子層の透明化工程、及び石英管をコラプスする工程により光ファイバ母材を製造する方法が特許文献1に記載されている。上記の製造方法では、ガラス微粒子層の透明化に引き続いて石英管を中実化させるコラプス工程を行うことによって光ファイバ母材を作り出している。
特開2004−83399号公報
しかしながら、微粒子ガラスの形成やコラプスする際、原料に含まれているOH基がコア内部に混入されるためにCl、BClなどのガスを流し、脱水を行わなければいけない。それはコア内にOH基が含まれることにより、ポンプ光かつ信号光の伝送損失が増え、ファイバ特性が悪くなるからである。しかし、脱水のためにCl、BClなどのガスを流すことによって、高温でこれらのガスとガラスとの反応が促進されるためにコアが選択的にエッチング(蒸発)されてしまうことがある。また、ガラスよりYb、Al、Er、Geなどの添加元素のエッチング速度が速くなるためにコア中心部の屈折率が低くなり、屈折率プロファイルの中心に凹みが生じる。一方、主な光は基本モード(LP01)としてコア中心部を導波するため、屈折率プロファイル中心の凹みによって光散乱を受け、伝送損失の増大、及びモードフィールドが歪むという現象が生じる。また、Cl、BClなどのガスによって添加元素のエッチング速度が異なり、局所的にガラス組成の揺らぎや結晶欠陥が生じてしまう。特に、Yb添加ファイバレーザの場合は自励パルス、レイリー散乱(RS)、誘導ブリルアン散乱(SBS)、誘導ラマン散乱(SRS)などの非線形特性が顕著となり、ファイバ端面が破壊されるという重大な問題が生じる。この問題を解決するためには、新たなコラプス工程が必要である。OH基の濃度を減らすために脱水は欠かせない重要な工程であるため、脱水処理を実施しつつ、上記問題を解決できるように光ファイバ母材の製造方法を改善することが求められていた。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、屈折率プロファイルの中心に凹みが生じない、光ファイバ母材の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]MCVD法により石英管の内周面に形成されたガラス微粒子に、希土類元素含有化合物の溶液を含浸させることにより、希土類元素を添加する液浸工程を有する光ファイバ母材の製造方法であって、希土類元素が添加された前記ガラス微粒子の第1透明化工程後に、さらに、ガラス微粒子を堆積する工程と、ガラス微粒子の第2透明化工程を有することを特徴とする希土類元素添加光ファイバ母材の製造方法。
[2]前記第1透明化工程に続く第1コラプス工程と、前記第2透明化工程に続く第2コラプス工程とをさらに有する、上記[1]に記載の製造方法。
[3]前記液浸工程が、前記石英管に注入された前記溶液を、前記石英管の両端に装着され、弾性材料を用いて形成された栓で封入し、前記栓が装着された石英管を中心軸の周りに回転させる工程である、ことを特徴とする上記[1]または[2]記載の製造方法。
[4]前記希土類元素含有化合物が、希土類元素含有化合物と共添加化合物を含み、前記光ファイバ母材の開口数が0.05〜0.2である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記希土類元素がイッテルビウム(Yb)であり、共添加元素がアルミニウム(Al)であることを特徴とする上記[4]に記載の製造方法。
本発明により、従来の製造装置を活用しつつ、製造プロセスの大幅な変更をすることなく、簡便な方法で、屈折率プロファイルの中心に凹みや結晶欠陥が少ない光ファイバ母材を製造することができる。
図1は本発明に係る一実施形態の光ファイバ母材の製造方法を示すフローチャートである。 図2は本発明の実施例の液浸工程を説明する断面図である。 図3は本発明の実施例の液浸工程を説明する断面図である。 図4は本発明の実施例の方法で作製した光ファイバ母材の評価結果を示すチャートである。 図5は比較例の光ファイバ母材の製造方法を示すフローチャートである。 図6は比較例の方法で作製した光ファイバ母材の評価結果を示すチャートである。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、希土類元素等がドープされたコアを有する光ファイバ母材の製造方法に関するものである。図1に本発明の製造方法をフローチャートで示す。図1に示すように、本発明の製造方法は、第1堆積工程S1、液浸工程S2、乾燥拡散工程S3、第1透明化工程S4、第1コラプス工程S5、第2堆積工程S6、第2透明化工程S7、および第2コラプス工程S8からなる。なお、堆積工程の前に、石英管の脱水工程S0を行っても良い。
[脱水工程(S0)]
MCVD法では有機金属原料中に含まれるOH基やコア作製中に混入されるOH基によって伝送損失が増え、レーザ特性を悪化させるためにOH基の混入を抑制することが望ましい。そのため、脱水工程(S0)では、無水石英管を高温に加熱しつつ、その一端から脱水ガスを導入することで、石英管の内周面を脱水する。使用する脱水ガスとしては、Cl、SiCl、GeCl、POCl、BClなどを用いることができる。その際、脱水ガスを単独で供給しても構わないが、O、Ar、Heなどのガスと同時に流しても良い。また、脱水温度は石英管内周面の損傷を考慮し、1200℃から1500℃が望ましい。なお、無水石英管とは、OHを含む量が1ppm以下(赤外線分光器による測定の限界)の石英管を意味する。
[第1堆積工程(S1)]
次に、第1堆積工程S1では、中空の石英管の内周面にガラス微粒子(以下、スートということがある)層を形成する。第1堆積工程では、石英管を加熱しつつ、その一端から、ガラス原料ガス、キャリヤガス、反応ガスなどを導入する。これにより、石英管内周面にガラス微粒子を堆積させることで、スート層を形成する。石英管を加熱する温度は1000℃から1600℃が好ましい。堆積時の加熱温度が1600℃を超えると、微粒子ガラスの大きさや密度が変動し、希土類元素含有化合物をガラス微粒子中に浸透させる液浸工程S2(後述)にて、微粒子ガラス中に染み込む添加元素や希土類元素のドーピング濃度に好ましく無い影響を与える。一方、1000℃未満の低温で微粒子ガラスを堆積すると石英管からスート層が剥がれ落ちる場合がある。また、微粒子を堆積する際には石英管の内圧が、大気圧より約4Pa低くなるようにガラス内圧を制御することが好ましい。
MCVDで用いるガラス原料ガスとしては、SiCl、SiF、POCl、BF、BClなどが挙げられる。また、キャリヤガスとしては、He、Arが挙げられ、反応ガスとしてはOが挙げられる。
なお、一般に、形成するスート層の層厚は、約0.05mm〜約0.5mmである。適当な層厚は使用する石英管の管径により異なるが、スート層を厚く堆積してコラプスする方が、ファイバ母材からのファイバの生産量が増えるので上記範囲内で層厚は厚いほうが好ましい。
[液浸工程(S2)]
次の工程は、スート層が形成された石英管内周面に希土類元素含有化合物溶液(以下、処理液ともいう)を注入して、スート層に含浸させる液浸工程S2である。ここで、希土類元素含有化合物溶液は、希土類元素及び希土類元素との共添加物のそれぞれの塩化物または酸化物を溶解した溶液である。希土類元素含有化合物として、塩化エルビウム(ErCl3、ErCl・6HO)、塩化ネオジム(NdCl)、塩化イッテルビウム(YbCl3、YbCl・6HO)、塩化ツリウム(TmCl)、塩化ランタン(LaCl)など、共添加化合物として、AlCl、AlCl・6HO、P、HPOなどが挙げられる。溶媒としてはアルコール類、水、塩酸などの極性溶媒が挙げられるが、乾燥除去の容易性からエタノールが最も好ましい。
希土類元素添加のファイバの特性は、希土類元素や共添加物の濃度に大きく影響される。YbとAlを共添加する場合、各々の溶液濃度(wt%)は、0.05≦Yb≦1.5、0.05≦Al≦2程度の範囲であることが望ましい。また、Ybのクラスタリングはガラスのフォトダークニングに影響し、ファイバレーザ特性に悪影響を及ぼすため、AlとYbのモル比もYb添加光ファイバ特性に重要なパラメータである。つまり、Ybのクラスタリングを抑制するためにはAlとYbのモル比R(=Al/Yb)を3≦R≦15にすることが望ましい。この範囲の比率にすることで、NAが0.05〜0.2の光ファイバ母材を提供することができる。
この液浸工程については、石英管内に形成されたスート層に、共添加物の溶液を含浸することができるのであれば従来の種々の方法が適用できる。その中でも、本発明者等は、処理液使用量の削減を実現しつつ、作製された光ファイバのコアNAやドーピング濃度の分布を均一にできる液浸方法として、図2、3に示す方法を見出したので、以下、本発明の液浸方法について説明する。
図2に示す実施形態は、スート層21が形成された石英管11の両端の開口にゴム栓41および42を挿入し、共添加成分を含む希土類元素含有化合物溶液(以下、処理液という場合がある)31が石英管11外に流出するのを防止しつつ、石英管11を回転させる態様を説明している。つまり、本実施形態では、ゴム栓41、42を液体流出抑制手段として用いる。石英管11をその中心軸の周りに回転させるため、下部に溜められた少量の処理液31が、スート層21の全面に行き渡り、微粒子ガラスに効果的に含浸される。スート層21には凹凸形状等が形成されていないため、凹凸起因の濃度ムラが発生することはなく、均一な処理が行われる。石英管11内への処理液31の投入量は、石英管11の管径やスート層21の厚さによっても異なるが、底面に位置するスート層21の表面から2〜5mmの水位であることが好ましい。この水位は石英管11の内容積の約20〜40%に相当する。
石英管11の内部への希土類元素含有化合物溶液31の注入は種々の方法を採用できるが、その一つの形態を図3に示す。図3に示すように、一方のゴム栓43の中央に貫通孔44が形成されており、貫通孔44には注入管50が挿入される。希土類元素含有化合物溶液31は、注入管50から石英管11の内部に注入される。石英管11はガラス旋盤により回転されるので、石英管11内での注入管50の高さ位置に達する量の希土類元素含有化合物溶液31は必要ではない。言い換えると、希土類元素含有化合物溶液31は貫通孔44から流出するほど多量に注入する必要が無い。したがって、処理液を含浸させるための石英管11の回転の際には、注入管50を抜き取るだけでよく、貫通孔が形成されていないゴム栓に取り替える必要は無い。なお、このとき、注入管50を抜き取った後の貫通孔44に栓を取り付けても良い。また、注入管50の石英管外の形状によっては、とりつけたままで石英管11を回転することもできる。なお、貫通孔44のないゴム栓に取り替えてもよい。また、貫通孔44の直径を注入管50の挿入部の外形より大きくし、貫通孔44内で注入管50が自由に回転できる態様にしておけば、注入管50を抜き取ることなく石英管11を回転させることができる。液浸の終了後には、石英管11の両端で止めたゴム栓41および42または43を外すことで、石英管11中の残留共添加溶液を除去することができる。
ここで、弾性材料を用いて成形された栓としては、代表的な例としてゴム栓が挙げられるが、栓の材料は、希土類元素含有化合物溶液による溶解や膨潤などが生じない材料であれば特に種類は限定されない。例えば、架橋イソプレンゴムまたは架橋ブチルゴム、架橋イソブチレン・イソプレンゴム、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、ウレタン系、エチレンプロピレン系、EVA系、EEA系、スチレン系などの各種エラストマー、ナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。また、熱硬化性エラストマーとしては、天然あるいは合成イソプレン系、エチレンプロピレンジエンモノマー系、イソプレンイソブチレン系、ニトリルブタジエン系、クロロプレン系、またはシリコーン系エラストマーなどを主成分とするものが挙げられる。これらの中でも、シリコーン系ゴム栓が好適に用いられる。
石英管の適切な回転速度は、石英管の管径によって異なる。たとえば、外径が28mmで内径が25mmの石英管の場合には、5〜20回転/分が好ましい。この回転速度範囲であれば、石英管内面のスート層に、希土類元素含有化合物溶液を全面均一に浸透させることができる。
[乾燥拡散工程(S3)]
液浸の終了後、乾燥拡散工程S3に移る。石英管内は、残留処理液を除去後、Oガスを流しながら自然乾燥させる。自然乾燥の時間は約1時間でよい。
乾燥後、石英管の温度を上げるために外部熱源の温度を段階的に上げ、石英管の温度を150℃から1500℃に加熱する。加熱は、脱水、希土類元素含有化合物および共添加物の分解、および、それら元素の拡散を目的としているので、150℃から1500℃まで段階的に石英管温度を上げることが望ましい。希土類元素含有化合物および共添加物の分解は150℃以上であれば起こるため、分解後に希土類元素のEr、Ybなどのイオンや、共添加物であるAl、Pなどのイオンはこの乾燥拡散工程で、微粒子ガラス中に均一に拡散されて行くものと推定される。
[第1透明化工程(S4)]
乾燥拡散工程S3に引き続き、第1透明化工程S4を実行する。透明化工程は、石英管内にCl等の脱水ガス及びHeなどのキャリヤガス、およびOガスを流しながら石英管温度を1500℃から1800℃まで上げることにより、残留する微量の水分や異物が除去され、希土類金属元素等が添加されたスート層を透明化することができる。
[第1コラプス工程(S5)]
第1透明化工程に引き続き、第1コラプス工程を実行してもよい。この第1コラプス工程を設けることにより、第2コラプス工程の時間を短縮し、ガラスエッチング(蒸発)をより効果的に防ぐことができる。第1コラプス工程を実行することによりガラス管の内径をある程度まで小さくすることができる。ただし、あまり小さくすると第2堆積工程でガラス原料ガスの流れが悪くなるので、内径15〜20mm程度にまでコラプスすることが好ましい。なお、コアが扁平になることを回避するため、石英管の内圧を、大気圧に対して0Pa〜10Pa低くすることが望ましい。また、この第1コラプス工程は省略することもできる。
[第2堆積工程(S6)]
その後、石英パイプの温度を、上述の第1堆積工程S1と同等の温度になるように外部の熱源を下げ、第1堆積工程で用いたものと同等のガラス原料ガス、キャリヤガス、反応ガスなどを流しながら微粒子ガラスの薄膜層(スート層)を形成した。なお、スート層の厚さが厚い場合、コアの中心屈折率プロファイルが下がる(すなわち、コア中心部の屈折率が低下する)ので、第2堆積工程で堆積するスート層の層厚は0.001mmから0.1mmが好ましい。
[第2透明化工程(S7)]
その後、第1透明化工程S4と同等の条件で、石英パイプ温度を1500℃から1800℃まで段階的に上げ、焼付けおよび微粒子ガラスの透明化を行う。
[第2コラプス工程(S8)]
第2透明化工程S7に引き続き、同等の温度で、石英管の外部から加熱し、石英管をコラプスさせた。この第2コラプス工程S8により、希土類元素および共添加物元素がドープされた中実コアを有する光ファイバ母材が完成する。なお、コアが扁平になることを回避するため、石英管の内圧を、大気圧に対して0Pa〜10Pa低くすることが望ましい。
[屈折率測定方法]
光ファイバ母材の光学特性の測定は、光ファイバ母材内部屈折率分布測定装置を用いて行った。使用した装置は、Photon Kinetics社製のプリフォームアナライザ(preform analyzer)モデルP104である。
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
[実施例]
外径28mmφ−管厚1.5mm−長さ400mmの無水石英管の内壁面に1.4SLMのOを流しながら段階的に温度を上げ、1200〜1500℃で石英管の内壁面の空焼きを行った後、50SCCMのClを流しながら1130℃で脱水を行った(脱水工程)。なお、ガラス旋盤による保持のため、石英管の両端に上記石英管よりも管径が大きな補助石英管を継ぎ足しても良い。補助石英管の長さは特に規定されないが、本実施例では長さ約500mmの補助石英管を用いた。この補助石英管には、スート層は形成されない。ここで、SLMおよびSCCMは、0℃基準で表記するガス流量の単位であり、それぞれ、L/min、mL/minに相当する。
その後、0.56SLMのSiCl、0.4SLMのHe、0.5SLMのOのガスを流しながら、1180℃で4回連続して、石英管内壁面へ微粒子ガラスの堆積を行った(第1堆積工程)。微粒子を堆積する際には石英管の内圧が大気圧より約4Pa低くなるように石英管の内圧を制御した。
次に、端部の微粒子ガラスを石英管内面から除去し、ゴム栓を用いて補助石英管の両端を封止した。別途、0.6gのYbCl・6HO(希土類元素含有化合物)、2gのAlCl・6HO(共添加化合物)を300mLのエタノールに溶かした希土類元素含有化合物溶液(処理液ともいう)を調製した。150mLの希土類元素含有化合物溶液を石英管中に注入した後、ガラス旋盤のチャックに保持した状態で石英管をその中心軸の周りに1時間回転させ、石英管の内面全体に均一に希土類元素含有化合物溶液を浸透させた。このとき、注入された処理液の水位は、最も低いスート層の表面から約5mmの高さであった。石英管を保持し、回転させることができるガラス旋盤のチャックの回転速度は10回転/分で行った。YbCl・6HOとAlCl・6HOは、いずれも水溶性であり、水、アルコール類に溶けるが、乾燥工程を考慮してアルコールを溶媒として用いた。YbCl・6HO、AlCl・6HOの共添加量は、目的とする光ファイバの性質によって異なるが、本実施例では、開口数(NA)が0.06〜0.08で、波長915nmでのコア吸収係数が100〜120dB/mになるように約0.5wt%のYb濃度、および約0.6wt%のAl濃度で共添加を行った(液浸工程)。
液浸処理後、石英管両端で止めたゴム栓を外し、石英管中の残留共添加溶液を流し捨てた後、Oガスを流しながら1時間ほど自然乾燥を行った。そして、石英管温度を上げるために外部熱源の温度を段階的に上げ、150℃から1500℃の石英管の温度で加熱乾燥を行った(乾燥拡散工程)。加熱乾燥は脱水、YbCl・6HO、AlCl・6HOの分解および、AlとYbを拡散させるため、150℃から1500℃まで石英管の加熱温度を段階的に昇温した。YbCl・6HO、AlCl・6HOの分解は150℃以上で起こり、生成したYbイオン、Alイオンは加熱によって、微粒子ガラス中に均一に拡散される。
その後、石英管内の内圧を大気圧より4Pa低くなるように維持し、O流量を0.3SLM、He流量を0.7SLM、Cl流量を20SCCMとして、混合ガスを流しながら石英管温度を1500℃から1800℃まで上げ、微粒子ガラスを透明化(第1透明化工程)し、ガラス管の内径を15mmφまで小さくした(第1コラプス工程)。
その後、石英パイプの温度を1180℃に低下させて維持できるように外部の熱源を制御し、0.56SLMのSiCl、0.4SLMのHe、0.5SLMのOのガスを流しながらスート層を形成した。スート層の厚さが厚い場合、コア中心の屈折率プロファイルが下がるために本実施例では、0.001mmから0.1mmが好ましい(第2堆積工程)。
その後、0.3SLMのO、0.7SLMのHe、20SCCMのClのガスを流しながら石英パイプ温度を1500℃から1800℃まで段階的に上げ、再び焼付け、微粒子ガラスを透明化した(第2透明化工程)。
最後に石英管の第2コラプス工程を行った。コラプスに際しては、加熱不足により、コア中心部に気泡や空洞が発生したり、屈折率プロファイルに凹が生じたりすることがなく、逆に、加熱しすぎて、石英管が垂れたり、Ybクラスタが起こらないように、適宜ヒータを移動させることで、長手方向のバラツキがない中実コアを作製した。光ファイバ母材内部屈折率分布測定装置(Photon Kinetics社製、モデルP104)による測定の結果、作製された光ファイバ母材のコア径は約2mmφであった。
図4に、実施例で作製した光ファイバ母材のプリフォームアナライザ・モデルP104(Photon Kinetics社製)による評価結果を示す。図4において、横軸は光ファイバ母材の中心軸からの半径位置(mm)を示し、縦軸は、測定時に用いたマッチングオイルに対する母材の屈折率差を示す。コア中心部にて屈折率の凹みがない屈折率プロファイルが得られた。これは、コラプス中に添加物元素がエッチングされることが抑えられた効果である。尚、コア中心部の結晶性も向上するために光散乱による光の伝送損失が少なくなり、非線形特性の抑制、ファイバ特性の再現性や製造の安定性の向上も期待できる。
また、本実施例で製造した光ファイバ母材のコアの長手方向におけるNAのバラツキは5%程度と小さかった。その結果、母材として用いることができる有効長さとして240mmを確保できた。なお、コアのNAの長手方向のバラツキは、240mm長の母材の端から20、60、100、140、180、220mmの位置でNA値を測定し、それらの位置でのNA値の標準偏差を2倍し、それを平均のNAで割った値をバラツキとして算出した。得られた有効長(240mm)は従来の液浸方法で製造した場合に比べて2倍以上であった。このように特性のバラツキが改善されたことにより、特性の再現性や製造の安定性の確保が可能となる。
[比較例]
比較例では、実施例と同じ外径28mmφ−管厚1.5mm−長さ400mmの無水石英管を用い、実施例の第2堆積工程、第2透明化工程および第2コラプス工程を省略し、第1透明化工程に引き続いてコラプス工程を行う以外は実施例と同じ製造条件で、コア径約2mmφの光ファイバ母材を製造した。図5は、比較例の製造工程を示すフローチャートである。
図6に、比較例の製法で作製された光ファイバ母材のプリフォームアナライザ・モデルP104(Photon Kinetics社製)による評価結果を示す。図6において、横軸は光ファイバ母材の中心軸からの半径位置(mm)を示し、縦軸はマッチングオイルに対する母材の屈折率差を示す。コア中心部に屈折率の明瞭な凹みが確認できた。
以上、説明したように、本発明の液浸MCVD法により、コア中心部に屈折率の凹みがない光ファイバ母材を提供することができる。加えて、液浸工程で、弾性材料からなる栓を用いて石英管内に希土類元素含有化合物溶液を封入し、石英管を回転させることで、スート層に希土類元素および共添加物元素ドーピングすることにより、少ない処理液量で、NAなどのバラツキが小さく、均質な光ファイバ母材を高収率で製造することができる。
本発明の製造方法により、コア中心部に屈折率の凹みがなく、コア中心部の結晶性の向上により光の伝送損失が少なく、非線形特性が抑制された光ファイバの提供が可能となる。しかも、ファイバ特性の再現性や製造の安定性の向上が期待できるうえに、NAなどのバラツキが小さく、均質な光ファイバを高収率で製造することができる。
11 石英管
21 スート層
31 希土類元素含有化合物溶液(処理液)
41,42,43 ゴム栓
44 貫通孔
50 注入管

Claims (4)

  1. MCVD法により石英管の内周面にガラス微粒子を堆積させてスート層を形成する第1堆積工程、
    前記スート層に、希土類元素含有化合物の溶液を含浸させることにより、希土類元素を添加する液浸工程、
    前記希土類元素が添加されたスート層を透明化する第1透明化工程、
    前記第1透明化工程に続く第1コラプス工程、
    前記第1コラプス工程後の石英管の内周面にMCVD法によりガラス微粒子を堆積させて層厚が0.001mmから0.1mmであるスート層を形成する第2堆積工程、
    前記第2堆積工程の次に行われ、前記第2堆積工程で形成されたスート層を透明化する第2透明化工程、及び
    前記第2透明化工程に続き、中実コアを作製する第2コラプス工程
    を有することを特徴とする希土類元素添加光ファイバ母材の製造方法。
  2. 前記液浸工程が、前記石英管に注入された前記溶液を、前記石英管の両端に装着され、弾性材料を用いて形成された栓で封入し、前記栓が装着された石英管を中心軸の周りに回転させる工程である、ことを特徴とする請求項記載の製造方法。
  3. 前記希土類元素含有化合物が、希土類元素含有化合物と共添加化合物を含み、前記光ファイバ母材の開口数が0.05〜0.2である請求項1または2記載の製造方法。
  4. 前記希土類元素がイッテルビウム(Yb)であり、共添加元素がアルミニウム(Al)であり、YbとAlの溶液濃度(wt%)が、それぞれ0.05≦Yb≦1.5、0.05≦Al≦2であり、AlとYbのモル比R(=Al/Yb)が3≦R≦15であることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
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