以下、本発明の一実施形態による打込機について、図1〜図8を参照して説明する。
まず、本発明の打込機としての第1の実施の形態に係る電動式の釘打機1の全体構成について、図1及び図2を用いて説明する。図1及び図2は、釘打機1の断面図である。釘打機1は、ハウジング2と、ハンドル3と、ノーズ4と、マガジン5と、トリガ6と、電池8と、コントローラ100とを備えている。
ハンドル3は、ハウジング2の表面と連続しており、内部に、トリガスイッチ31を備えている。ノーズ4は、図1におけるハウジング2の右端に設けられており、さらにマガジン5からノーズ4内部に釘51を供給するための通路が設けられている。
マガジン5は、ノーズ4に取付けられており、ノーズ4内に設けられた通路を介して射出路に供給するために、複数本の釘51を束状に内蔵している。また、マガジン5は、マガジン5内の釘51の残量を検知するための図示せぬ釘残量検出機構を備えており、釘残量検出機構は、釘51の残量が所定値以下になると釘残量スイッチ52をオンにする(図5参照)。
ハウジング2は、内部に、プランジャ21と、バネ22と、モータ23と、遊星ギア24と、ドラム25と、ワイヤ26と、第1ローラ27と、第2ローラ28と、停止スイッチ29とを包含している。
プランジャ21は、ブレード21aと、プレート21bとを備えている。ブレード21aは、軸が図1における左右方向を向くようにハウジング2内に配置されており、その右端は、ノーズ4内に設けられた通路まで延びている。プレート21bは、円板形状を有しており、その略中心が、ブレード21aの左端と接続されている。このように、ブレード21aとプレート21bとは、図1における左右方向(上死点側と下死点側との間)に一体的移動可能なように、ハウジング2内に配置されている。
バネ22は、プレート21bの左端とハウジング2の左端との間に配置されている。モータ23は、図示せぬ回転軸を備えており、電池8から供給された電力により回転し、遊星ギア24に回転力を供給する。遊星ギア24は、図示せぬ係合部と、出力軸24a(図3(a)〜図3(c)参照)とを備えている。係合部は、モータ23の回転軸と係合しており、モータ23の回転力を増幅して出力軸24aから出力している。
ドラム25は、モータ23から遊星ギア24を介して供給された回転力により、後述する圧縮開放機構7(クラッチ機構)の動作に基づいて回転する。ワイヤ26は、第1ローラ27及び第2ローラ28を介して、ドラム25とプランジャ21のプレート21bとを接続している。ワイヤ26は、複数の金属線材を束ねたものであって、しなやかさと強度を兼ね備えている。また、第1ローラ27及び第2ローラ28との接触による磨耗を防止するため、ワイヤ26の表面には、樹脂がコーティングされている。
停止スイッチ29は、後述するが、ドラム25の回転によってコントローラ100に作用し、電池8からモータ23への電力の供給を停止させるためのものである。
トリガ6は、モータ23の駆動を制御するためのものであり、トリガスイッチ31と連動するような位置に設けられている。電池8は、釘打機1の接続端子A(図5参照)に接続され、ハンドル3内に配された図示せぬ配線により、コントローラ100を介してモータ23に電力を供給している。本実施の形態においては、電池8のマイナス端子の電位をGND電位とする。
このような構成により、図2に示す状態(プランジャ21が上死点に位置する状態)でノーズ4内の射出路に配置された釘51は、図1に示す状態(プランジャ21が下死点に位置する状態)で、ブレード21aによってノーズ4の右端から押し出され、被打ち込み部材Wに打ち込まれる。また、本実施の形態による釘打機1は、釘51の打ち込みの際にノーズ4を被打ち込み部材に押し付ける必要のないプッシュレス機構を採用しているので、ノーズ4の押し付けによりを被打ち込み部材を傷付けるのを防止することができる。
次に、バネ22の圧縮開放機構7の構成について、図3(a)〜図3(c)を用いて説明する。図3(a)〜図3(c)は、圧縮開放機構7の展開図である。圧縮開放機構7は、遊星ギア24の出力軸24aと、ガイドプレート71と、ピン支持プレート72と、動力伝達ピン73と、ドラムフック74と、ドラム25と、ワイヤ26とから構成される。
出力軸24aは、その側面にキー24bを備えている。ガイドプレート71には、貫通孔71aと、ガイド溝71bと、ガイド突起71cとが形成されている。貫通孔71aは、ガイドプレート71の略中心に形成されており、出力軸24aが挿通される。ガイド溝71bは、貫通孔71aに隣接して形成されおり、ガイド突起71cは、ある一部分で貫通孔71aからガイド溝71bまでの距離が長くなるように、貫通孔71aの周囲に形成されている。詳細には、ガイド突起71cは、貫通孔71aの中心から径方向に約5〜15mmふくらんだ形状を有している。
ピン支持プレート72は、プレート本体部72aと、延出部72bとを備えている。プレート本体部72aの略中心には、貫通孔72cが形成されており、貫通孔72cには、出力軸24aが挿通される。更に、プレート本体部72aの貫通孔72cと隣接した位置には、出力軸24aのキー24bと係合可能なキー溝72dが形成されている。延出部72bは、プレート本体部72aから出力軸24aと略垂直な方向に延出している。延出部72bには、その延出方向に沿ってスライド孔72eが形成されている。
動力伝達ピン73は、一端にガイド溝係合部73aを、他端に当接部73bを備えている。ガイド溝係合部73aは、ガイドプレート71のガイド溝71bと係合可能である。従って、動力伝達ピン73の移動方向及び移動量は、ガイド溝71bの形状によって制御される。当接部73bは、圧縮開放機構7が組み合わされた状態で、後述するドラムフック74のフック部74bと同じ高さとなる。動力伝達ピン73の側面には、スライド部73cが形成されており、スライド部73cは、ピン支持プレート72のスライド孔72eによってスライド可能に支持される。
このような構成により、ピン支持プレート72及び動力伝達ピン73は、出力軸24aと常に同期して回転する。
ドラムフック74は、本体部74aと、フック部74bとを備えている。本体部74aの略中心部には、貫通孔74cが形成されている。更に、本体部74aは、その内周面と接するようにベアリング74dを備えている。出力軸24aは、ベアリング74dを介して貫通孔74cに挿通されるため、出力軸24aとドラムフック74とは、必ずしも同期して回転しない。フック部74bは、本体部74aから出力軸24aと略垂直な方向に延出しており、動力伝達ピン73の当接部73bと当接可能である。従って、動力伝達ピン73がピン支持プレート72と同期して回転し、動力伝達ピン73の当接部73bがフック部74bと当接した場合に、ドラムフック74もピン支持プレート72及び動力伝達ピン73と同期して回転することとなる。
ドラム25には、貫通孔25aと、谷部25bと、ダンパー衝突部25cとが形成されている。貫通孔25aは、ドラム25の略中心に形成されている。貫通孔25aには、ドラムフック74の本体部74aが圧入される。これにより、ドラム25とドラムフック74とは、同期して回転する。谷部25bは、ドラム25の側面に円周状に形成されている。ダンパー衝突部25cは、ドラム25から出力軸24aの軸方向に突出して設けられている。
ワイヤ26は、ドラム25とプランジャ21(図1参照)とを連結しており、ドラム25の谷部25bに巻回され得る。
次に、釘打ち時の圧縮開放機構7の動作について、図4(a)〜図4(d)を用いて説明する。図4(a)〜図4(d)は、釘打ち時の圧縮開放機構7の動作の説明図である。
まず、作業者がトリガ6を引くと、トリガスイッチ31がオンされ、電池8からモータ23に電力が供給される。供給された電力によりモータ23は、回転し、その回転力は、遊星ギア24を介して、ピン支持プレート72及び動力伝達ピン73に伝達される。
図1に示すプランジャ21が下死点に位置する初期状態では、図4(a)に示すように、動力伝達ピン73の当接部73bは、ドラムフック74のフック部74bと当接している。この状態で、出力軸24aが図4(a)における反時計回りに回転すると、当接部73bとフック部74bとが当接しているため、図示せぬドラム25も出力軸24aと同期して回転する。これにより、ワイヤ26の一端は、ドラム25の谷部25bに巻回され、ワイヤ26の他端と接続されたプランジャ21は上死点側に引っ張られる。この際、バネ22は圧縮される。
図4(b)は、ピン支持プレート72が反時計回りに約135度回転した場合の圧縮開放機構7の状態を示す図であり、図4(c)は、ピン支持プレート72が反時計回りに約270度回転した場合の圧縮開放機構7の状態を示す図である。
ピン支持プレート72が回転すると、ガイドプレート71のガイド溝71bと係合している動力伝達ピン73のガイド溝係合部73aも、ガイド溝71bに沿って移動するが、ピン支持プレート72が図4(b)の状態から図4(c)の状態へ移動する際に、ガイド溝係合部73aは、ガイドプレート71のガイド突起71cと当接し、動力伝達ピン73は、ガイド突起71cの形状に従い、ピン支持プレート72のスライド孔72eに沿って径方向へ移動する。
圧縮開放機構7が図4(c)の状態にあるとき、すなわち、ドラムが初期状態から約270度回転したとき、プランジャ21は、図2に示すように、上死点に達し、バネ22は、最も圧縮された状態となる。ピン支持プレート72が図4(c)の状態へ移動すると、動力伝達ピン73は、径方向に約5〜15mm移動し、動力伝達ピン73の当接部73bとドラムフック74のフック部74bとの当接が解除される。
当接部73bとフック部74bとの当接が解除されると、圧縮されていたバネ22が開放され、プランジャ21が下死点側へ移動する。プランジャ21が下死点側に移動すると、図4(d)に示すように、ドラム25及びドラムフック74は、プランジャ21に接続されたワイヤ26に引っ張られて逆回転を開始する。
プランジャ21が下死点に達すると、プランジャ21のブレード21aによって、釘51は、被打ち込み部材Wに打ち込まれる(図1参照)。その際、ドラム25のダンパー衝突部25c(図3(c)参照)と、ハウジング2内に固定された図示せぬドラムダンパーとが衝突し、ドラム25及びドラムフック74が固定され、圧縮開放機構7は初期状態へ戻る。
ここで、停止スイッチ29は、ドラム25の回転に伴いオン・オフし、コントローラ100は、停止スイッチ29のオン・オフに基づき、モータ23への電力の供給を制御する。詳細には、停止スイッチ29は、初期状態ではオフであり、ドラム25が初期状態から約240度回転したときにダンパー衝突部25cによってオンし、約270度までオン状態を維持するように設計されている。そして、約270度で動力伝達ピン73の当接部73bとドラムフック74のフック部74bとの当接が解除され、ドラム25が約240度まで戻ると、停止スイッチ29は、再びオフになる。
なお、停止スイッチ29のオン・オフは、ダンパー衝突部25cによらなくて、ドラム25の回転に伴うものであればよい。例えば、ピン支持プレート72の延出部72bでもよい。
次に、コントローラ100について説明する。コントローラ100は、釘51を打ち込み材へ単発で打ち込むための保持機能と、打ち込み後のモータの慣性による回転を停止させるためのブレーキ機能と、トリガ6を引いた状態で電池8を釘打機1の接続端子Aに接続してしまった場合の打ち込みを防止するための検知・遮断機能とを備えている。
まず、コントローラ100の保持機能について、図5を参照して説明する。図5は、コントローラ100の回路図である。コントローラ100は、通電スイッチたるFET101と、保持部たるPNPトランジスタ110及びNPNトランジスタ111と、保持部制御部たるトランジスタ115、コンデンサ121と、を備えている。本実施の形態においては、FET101には、NchのFETを使用している。
FET101は、電池8、トリガスイッチ31、及び、モータ23と直列に接続されている。FET101のゲート−ソース間には、抵抗103が接続されている。FET101のゲートには、更に、抵抗102が接続されている。
モータ23の高圧側端子には、抵抗105及びコンデンサ106から構成される平滑回路が接続されており、平滑回路の出力側は、抵抗107及び102を介してFET101のゲートに接続されている。これにより、トリガスイッチ31がオンすると、FET101のゲートに平滑電圧が印加されるため、FET101もオンし、モータ23に電流が流れることとなる。
また、抵抗107の出力側端子と電池8のマイナス端子との間には、FET101と並列に釘残量スイッチ52が接続されている。釘残量スイッチ52は、釘51の残量が所定値以下になるとオンする。釘残量スイッチ52がオンすると、FET101のゲートの電位はGND電位となるため、FET101は、オフする。このようにして、釘51の残量が所定値以下になった場合には、釘打機1が作動するのが防止されている。
また、前記平滑回路の出力側は、PNPトランジスタ110のエミッタとも接続されている。PNPトランジスタ110のベース−エミッタ間には、抵抗109が接続されている。更に、PNPトランジスタ110のベースは、抵抗108を介してNPNトランジスタ111のコレクタと接続されており、PNPトランジスタ110のコレクタは、抵抗113を介してNPNトランジスタ111のベースと接続されている。NPNトランジスタ111のベース−エミッタ間には、抵抗112及びコンデンサ114が並列に接続されている。NPNトランジスタ111のエミッタは、更に、電池8のマイナス端子と接続されている。NPNトランジスタ111のコレクタは、抵抗102を介して、FET101のゲートと接続されている。
また、前記平滑回路の出力側は、停止スイッチ29の一端とも接続されている。停止スイッチ29の他端は、抵抗122を介して電池8のマイナス端子と接続されている。更に、停止スイッチ29の他端と電池8のマイナス端子間には、ダイオード118と、抵抗119と、コンデンサ121とが直列に接続されている。抵抗119の出力側は、更に、PNPトランジスタ115のエミッタと接続されている。PNPトランジスタ115のベース−エミッタ間には、抵抗116が接続されており、PNPトランジスタ115のベースは、更に、抵抗117及びダイオード120を介して停止スイッチ29の他端と接続されている。また、PNPトランジスタ115のコレクタは、PNPトランジスタ110のコレクタと接続されている。
次に、このような構成のコントローラ100の保持機能の動作について、図5及び図6を参照して説明する。図6は、保持機能についてのコントローラ100の動作のタイムチャートである。
まず、トリガスイッチ31がオンされると(図6、t0)、FET101のゲートには、平滑電位が印加されることとなるため、FET101は、オンし、モータ23に電流が流れる。これにより、モータ23が回転し、ドラム25も回転を開始することとなる。なお、トリガスイッチ31がオンされただけではPNPトランジスタ110がオンしないように、抵抗103は、抵抗108及び109よりも十分大きな値(本実施の形態においては、約10倍)のものを用いている。
モータ23が回転してドラム25の回転角が約240度になると(図6、t1)、前述のように、停止スイッチ29がオンする。停止スイッチ29がオンすると、コンデンサ121が充電される。そして、ドラム25の回転角が約270度になると(図6、t2)、動力伝達ピン73の当接部73bとドラムフック74のフック部74bとが当接が解除され、バネ22の付勢力によりドラム25は逆回転を開始する。
なお、停止スイッチ29がオンしている間は、PNPトランジスタ115のエミッタ電位は、ダイオード120のカソード電位より低く、PNPトランジスタ115のベース−エミッタ間にPNPトランジスタ115をオンさせる電位差は生じないので、PNPトランジスタ115は、オフのままである。
ドラム25の逆回転により、ドラム25の回転角が約240度未満となると、停止スイッチ29は、再びオフする(図6、t2)。停止スイッチ29がオフすると、PNPトランジスタ115のベースは、抵抗117、ダイオード120、抵抗122を介してGND電位と接続されるため、充電されたコンデンサ121に接続されたPNPトランジスタ115のエミッタとの間に電位差が生じる。これにより、PNPトランジスタ115は、オンし、コンデンサ121に蓄積されていた電荷は、抵抗113を介してコンデンサ114に流れ込む。
すると、NPNトランジスタ111のベースの電位が上昇し、NPNトランジスタ111がオンする。NPNトランジスタ111がオンすることで、FET101のゲートの電位は、GND電位となるので、FET101はオフし、電流は、モータ23を流れなくなる。このようにして、停止スイッチ29が再びオフすると、モータ23の駆動は停止される。
ここで、NPNトランジスタ111がオンした際に、PNPトランジスタ110のベースも抵抗108を介してGND電位と接続されるため、PNPトランジスタ110もオンする。これにより、トリガスイッチ31がオンしている限り、NPNトランジスタ111のベースに平滑電圧が印加されることとなり、NPNトランジスタ111はオンし続けることとなる。従って、一旦NPNトランジスタ111がオンした後は、コンデンサ121に蓄えられた電荷が全て放電されたとしても、NPNトランジスタ111のオン状態、すなわち、FET101のオフ状態を保持することができる。
なお、抵抗113とコンデンサ114の値によって、停止スイッチ29がオフしてから前記FET101のオフ状態の保持に入るまでの時間が規定される。また、コンデンサ114の容量よりもコンデンサ121の容量を大きくしておくことが望ましい。
また、トリガスイッチ31がオフされれば(図6、t5)、PNPトランジスタ110がオフするので、前記FET101のオフ状態の保持を解除することができる。そして、その後、再び、トリガスイッチ31をオンすれば、FET101をオンさせて、モータ23を起動させることができる。
このような構成により、釘51を打ち込んだ後は、モータ23の駆動が停止されるので、釘51を打ち込み材へ単発で打ち込むことができ、動作の信頼性を高めることができる。更に、このような構成により、特別な機構やマイコン等の高価な回路を必要としないので、小型の釘打機1を簡便かつ安価に製造することができる。
次に、コントローラ100のブレーキ機能について、図5及び図6を参照して説明する。
コントローラ100は、更に、ブレーキスイッチたるFET133と、ブレーキ保持部たるNPNトランジスタ139と、ブレーキ遅延部たる抵抗141、143及びコンデンサ142とを備えている。本実施の形態においては、FET133には、PchのFETを使用している。
FET133のソースは、モータ23のプラス端子と接続されており、FET133のドレインは、抵抗136を介してモータ23のマイナス端子と接続されている。なお、抵抗136は、0.1から10Ω程度の低抵抗である。FET133のゲート−ソース間には、抵抗134が接続されている。また、FET133のゲートは、抵抗135を介してNPNトランジスタ139のコレクタと接続されており、FET133のドレインは、ダイオード137及び抵抗141を介してNPNトランジスタ139のベースと接続されている。
NPNトランジスタ139のエミッタは、モータ23のマイナス端子と接続されており、NPNトランジスタ139のベース−エミッタ間には、抵抗140とコンデンサ142が並列に接続されている。更に、NPNトランジスタ139のベースは、ダイオード138及び抵抗141、143を介してPNPトランジスタ110のコレクタと接続されている。
次に、このような構成のコントローラ100のブレーキ機能の動作について、図5及び図6を参照して説明する。図6は、ブレーキ機能についてのコントローラ100の動作のタイムチャートである。
前述のように、停止スイッチ29が再びオフとなるまでは、NPNトランジスタ111がオンしていないため、PNPトランジスタ110のコレクタは、GND電位である。従って、ダイオード138及び抵抗141、143を介して、PNPトランジスタ110のコレクタと接続されたNPNトランジスタ139のベースにも電流は流れず、NPNトランジスタ139はオフしている。NPNトランジスタ139がオフしているため、FET133のゲート−ソース間には電位差がないので、FET133もオフしている。
そして、ドラム25が逆回転して回転角が約240度未満となり、停止スイッチ29が再びオフすると、PNPトランジスタ115のベースがGND電位に接続されるため、PNPトランジスタ115は、オンする。すると、コンデンサ121に蓄積されていた電荷が、抵抗113を介して、コンデンサ114へ流れ込むと共に、ダイオード138及び抵抗141、143を介して、コンデンサ142に流れ込む(図6、t2)。コンデンサ142が充電されると、コンデンサ121に蓄積されていた電荷は、今度は、NPNトランジスタ139のベースに流れ込み、NPNトランジスタ139をオンさせる。
ここで、FET101がオフしているため、モータ23は、電池8から電力は供給されていない。しかし、モータ23は、慣性により依然として回転しているため、モータ23には、FET133及びトリガスイッチ31と接続される端子を正とする逆起電力が生じている。従って、NPNトランジスタ139がオンすると、抵抗134及び135に、モータ23の逆起電力による電流が流れることとなる。そして、この電流によりFET133のゲート−ソース間に電位差が生じ、FET133がオンする(図6、t3)。
FET133がオンすると、モータ23の逆起電力により抵抗136に電流が流れ、この電流により、モータ23には、ブレーキトルクが発生し、モータ23を停止させるような力が働く。また、抵抗136の両端間に電位差が生じるため、ダイオード137及び抵抗141を介して、NPNトランジスタ139のベースに電流が流れる。このように、FET133がオンしている間は、コンデンサ121に蓄えられた電荷が全て放電されたとしても、NPNトランジスタ139のオン状態が保持される。
なお、抵抗141、143とコンデンサ142の値によって、停止スイッチ29のオフからFET133をオンするまでの時間が規定される。また、FET101がオンした状態でFET133がオンしてしまうと、FET101及びFET133に大電流が流れ、破損の虞が生じる。従って、FET101がオフしてから数ミリ秒後にFET133がオンするように、抵抗141、143とコンデンサ142による時定数は、抵抗121とコンデンサ114による時定数より大きく設定されている。
そして、モータ23にブレーキがかかって回転数が減少すると、モータ23の逆起電力も低下するので、FET133のゲート電圧も低下し、FET133は、自然にオフする(図6、t4)。
このような構成により、釘51を打ち込んだ後のモータ23の慣性による回転にブレーキをかけることができるので、モータ23の不要な回転により更なる釘51を打ち出してしまうのを防止することができ、動作の信頼性を高めることができる。更に、このような構成により、特別な機構やマイコン等の高価な回路を必要としないので、小型の釘打機1を簡便かつ安価に製造することができる。
次に、コントローラ100の検知・遮断機能について、図5を参照して説明する。
コントローラ100は、更に、検知・遮断部たるPNPトランジスタ125及びNPNトランジスタ130を備えている。
PNPトランジスタ125のエミッタは、ダイオード124を介して電池8のプラス端子と接続されており、PNPトランジスタ125のベースは、抵抗127及び抵抗129を介して電池8のマイナス端子と接続されている。抵抗129には、コンデンサ128が並列に接続されている。抵抗129は、抵抗126及び127と比べて十分に大きな値(本実施の形態では、100倍)に設定されている。また、PNPトランジスタ125のベース−エミッタ間には、抵抗126が接続されている。PNPトランジスタ125のコレクタは、抵抗132を介してNPNトランジスタ130のベースと接続されている。
NPNトランジスタ130のエミッタは、電池8のマイナス端子と接続されている。また、NPNトランジスタ130のベース−エミッタ間には、抵抗131が接続されている。また、NPNトランジスタ130のコレクタは、抵抗102を介してFET101のゲートと接続されている。
次に、このような構成のコントローラ100の検知・遮断機能の動作について、図5、図7及び図8を参照して説明する。図7は、トリガスイッチ31がオンした状態で釘打機1の接続端子Aに電池8が接続された場合の検知・遮断機能についてのコントローラ100の動作のタイムチャートである。図8は、釘打機1の接続端子Aに電池8が接続された後にトリガスイッチ31がオンした場合の検知・遮断機能についてのコントローラ100の動作のタイムチャートである。
トリガスイッチ31がオンした状態(図7、t10)で、電池8を接続端子Aに接続する(図7、t11)と、PNPトランジスタ125がオンし、同時に、抵抗126及び127を介してコンデンサ128が充電される。なお、トリガスイッチ31がオンした状態で電池8を接続端子Aに接続した場合でなくても、電池8を接続端子Aに接続するのとほぼ同時にトリガスイッチ31がオンした場合でもよい。
PNPトランジスタ125がオンすると、NPNトランジスタ130のベースに電流が流れ、NPNトランジスタ130がオンする。NPNトランジスタ130がオンすると、NPNトランジスタ130のコレクタと接続されたFET101の電位もGND電位となるので、平滑電圧は、FET101のゲートには印加されない。そのため、FET101は、オフのままで、釘打機1は、作動しない。
しかし、前述のように、抵抗129は、抵抗126及び127と比べて大きな値に設定されているため、コンデンサ128の充電が完了すると、PNPトランジスタ125のベース−エミッタ間には、PNPトランジスタ125をオンさせるだけの電位差は生じず、PNPトランジスタ125は、オフする。すると、NPNトランジスタ130もオフし、FET101のゲートには、平滑電圧が印加され得る状態となる。
しかしながら、この場合も、PNPトランジスタ110とNPNトランジスタ111は、FET101のオフ状態を保持するので、NPNトランジスタ130がオフしても(図7、t11)、トリガスイッチ31がオフされない限り、FET101のオフ状態は解除されない。
一方、電池8を接続端子Aに接続(図8、t22)後、所定時間が経過した後にトリガスイッチ31をオンした場合には(図8、t22)、NPNトランジスタ130はオンしていないので、正常に釘打ち動作を行うことができる。
このような構成により、トリガ6を引いた状態、すなわち、トリガスイッチ31がオンした状態で電池8を接続端子Aに接続した場合には、FET101はオンしないので、電池8の接続と同時に釘打機1が作動するのを防止することができ、操作の安全性を確保することができる。更に、このような構成により、特別な機構やマイコン等の高価な回路を必要としないので、小型の釘打機1を簡便かつ安価に製造することができる。
尚、本発明の釘打機は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、モータ23とトリガスイッチ31は、直列に接続されていたが、図9に示すように、モータ23とトリガスイッチ31とを並列に接続してもよい。このような構成によれば、モータ23に流れる大電流がトリガスイッチ31に流れることがないので、トリガスイッチ31の容量を小型にすることができる。
更に、上記実施の形態に用いられたFETの代わりにトランジスタを用いても良いし、トランジスタの代わりにFETを用いても良い。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る打込機について図10に基づいて説明する。図10に示されるように、第2の実施の形態に係る電動式の釘打機201は、モータ223で圧縮開放機構207(クラッチ機構)を介してドラム225を回転駆動してワイヤ226を巻き取ることにより、プランジャ221をバネ222に抗わせて上死点側に移動させ、その後圧縮開放機構207によってドラム225を開放することにより、プランジャ221を下死点側へと移動させてノーズ部204にマガジン205から供給される釘251を打撃する構造であり、第1の実施の形態に係る釘打機1と略同じ構成を採っている。よって明確に異なる構造部分以外は第1の実施の形態を参照して詳細な説明を省略する。
ハンドル203は、内部に、電池208と接続されたトリガスイッチ231を備えており、トリガ206を引くことにより、トリガスイッチ231がオンになり、コントローラ200の制御によりモータ223へ電力を供給している。
モータ223と圧縮開放機構207との間には、減速機構224が介在している。減速機構224は、モータ223の駆動軸223aに連結される第一のプーリ224aと、プーリ224aに接続されるベルト224bと、ベルト224bに接続され第一のプーリ224aと反対側に設けられている第二のプーリ224dと、第二のプーリ224dと圧縮開放機構207との間に介在する複数のギア224cとから構成されており、モータ223の駆動軸223aの回転が回転数を減じられて圧縮開放機構207に伝達されている。
圧縮開放機構207は、第1の実施の形態に係る圧縮開放機構7と同様の構成を採っており、ドラム225を一定角度、具体的には、プランジャ221が下死点から上死点まで上昇するのに必要な角度回転させた後にドラム225との接続が遮断されるように構成されている。
ドラム225に接続されているワイヤ226は、被保持部226aと線部226bとから構成されている。被保持部226aは、直径が線部226bの直径よりも大きい略球形を成しており、線部226bのプランジャ221側の端部に固定されている。線部226bのドラム225側になる端部にも被保持部226aと同様の略球形をなす図示せぬ被保持部が設けられており、この図示せぬ被保持部がドラム225で保持されている。また線部226bは繊維状の鋼線を束ねて構成されるとともに表面に樹脂コーティングされて構成されている。
ドラム225は、出力軸224aと同軸にハウジング202内に配置されている。また、ドラム225は、ワイヤ226が巻回される外周の接線がバネガイド261の中心軸と同軸になるようにハウジング202内に配置されている。よって、ドラム225でワイヤ226を巻き取る際に、常にバネガイド261と平行な状態で、ワイヤ226を巻き取りかつプランジャ221を上死点側に移動させることができる。また、ハウジング202内には、バネ222を配置するためのバネガイド261が設けられているため、これによっても、常にバネガイド261と平行な状態で、ワイヤ226を巻き取りかつプランジャ221を上死点側に移動させることができる。更に、ドラム225においてワイヤ226を巻き上げる際に、ワイヤ226をガイドするガイドプーリを必要としないため、プランジャ221引き上げ時の抵抗が軽減されている。
1 200 釘打機、 29 停止スイッチ、31 トリガスイッチ、52 釘残量スイッチ、 100 コントローラ、 110 111 115 125 130 139 トランジスタ