JP5379406B2 - 歯科用充填修復キット - Google Patents
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Description
本実施の形態に係る歯科用充填修復キットに含まれるコンポジットレジンは、酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体を含む。本明細書において、水溶性とは、23℃の水に対する溶解度が1g/l以上であることを意味する。さらに好ましくは、100g/l以上の溶解度である。そのような酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体としては、酸性基非含有の(メタ)アクリレート系単量体のうち、水溶性の(メタ)アクリレート系単量体類を何ら制限なく使用することができる。具体的に例示すると、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートあるいは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート系単量体、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等の分子内にエチレングリコール鎖を有するメタアクリレート等が挙げられる。これらは単独にまたは2以上を混合して用いることができる。
本実施の形態において、コンポジットレジンに含まれる光重合開始剤としては、化合物そのもの自身が光照射に伴って重合可能なラジカルを生成するような光重合開始剤が好適に用いられる。そのような光重合開始剤として、例えば、α−ケトカルボニル化合物、あるいはアシルフォスフィンオキシド化合物等が挙げられる。
本実施の形態において、コンポジットレジンに含まれるフィラーは、コンポジットレジンの強度を向上させ、かつ重合時の収縮を抑えるために添加される。また、フィラーの添加量により、コンポジットレジンが硬化する前の粘度(操作性)を調節することができる。フィラーは、コンポジットレジンに含まれるラジカル重合性単量体100質量部に対して、80〜2000質量部含まれる。特に好ましいフィラーの量は、コンポジットレジンに含まれるラジカル重合性単量体100質量部に対して90〜500質量部であり、100〜230質量部が最も好ましい。また、フィラーの量が80質量部より少ない場合には、コンポジットレジンとしての十分な強度が得られず、2000質量部より多い場合には、粘度が高くなりすぎるために、コンポジットレジンを充填する作業の操作性が低下する。また、プライマーにもフィラーを添加すると、接着強度がより強固なものとなるため、より好ましい。フィラーとしては、無機フィラー、有機フィラーあるいは無機―有機複合フィラーを適宜用いることができる。
本実施の形態に係る歯科用充填修復キットのプライマーに含まれる酸性基含有ラジカル重合性単量体は、1分子中に少なくとも1つの酸性基と1つのラジカル重合性不飽和基とを有する化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。このような酸性基含有ラジカル重合性単量体は、プライマーに含まれるラジカル重合性単量体100質量部中40質量部以上含まれる。また、該酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン基、リン酸モノエステル基あるいはリン酸ジエステル基等を挙げることができる。その中でも、歯質に対する接着性が高い酸性基として、カルボキシル基、リン酸モノエステル基あるいはリン酸ジエステル基がより好ましい。さらに、コンポジットレジンとプライマーとの間の物質の移動を活発化させる目的で、コンポジットレジンとプライマーとの間のpH勾配をより急勾配にするため、プライマーに含まれる酸性基含有ラジカル重合性単量体の酸性基は、強酸性であることが最も好ましい。そのような強酸性の酸性基としては、リン酸モノエステル基あるいはリン酸ジエステル基が最も好ましい。
[酸性基含有ラジカル重合性単量体]
「PM」:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェートおよびビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェートを質量比2:1の割合で混合した混合物
「MDP」:10−メタクリルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート
「MAC−10」:11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸
「D−2.6E」:2,2’−ビス(4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル)プロパン
「BisGMA」:2,2’−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン
「3G」:トリエチレングリコールジメタクリレート
「UDMA」:1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルへキサンおよび1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,4,4−トリメチルヘキサンの混合物
「HEMA」:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
「9G」:ポリエチレングリコール(重合度9)ジメタクリレート(化1の構造式)
「14G」:ポリエチレングリコール(重合度14)ジメタクリレート(化2の構造式)
「BPE−1300」:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(化3の構造式)
「M90G」:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(化4の構造式)
いずれも23℃の水に対して、任意の割合で混合できるラジカル重合性単量体である。
「IPA」:イソプロピルアルコール
アセトン
「CQ」:カンファーキノン
「DMBE」:p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
「TPO」:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
「BTPO」:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド
「PTSNa」:パラトルエンスルフィン酸ナトリウム
「HQME」:ハイドロキノンモノメチルエーテル
「BHT」:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
「F1」:球状シリカ−ジルコニア(平均粒径0.4μm)をγ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにより疎水化処理したものと、球状シリカ−チタニア(平均粒径0.08μm)γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにより疎水化処理したものとを質量比70:30にて混合した混合物
「F2」:ヒュームドシリカ(平均粒径0.02μm)をメチルトリクロロシランにより表面処理したもの
「MF」:フルオロアルミノシリケートガラス粉末(トクソーアイオノマー、株式会社トクヤマ製)を湿式の連続型ボールミル(ニューマイミル、三井鉱山株式会社製)を用いて、平均粒径0.5μmまで粉砕し、その後、粉砕粉末1gに対して20gの5.0N塩酸にてフィラー表面を20分間改質処理したもの。
牛を屠殺し、屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去した。抜去した牛前歯を、注水下、#600のエメリーペーパーで研磨し、唇面に平行かつ平坦になるように、エナメル質および象牙質平面を削り出した。次に、削り出した平面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥させた。次に、この平面に直径3mmの穴を有する両面テープを貼り付け、さらに、厚さ0.5mmおよび直径8mmの穴を有するパラフィンワックスを、先に貼り付けられた両面テープの穴の中心に、パラフィンワックスの穴の中心をあわせて固定することで、模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞に、プライマーを塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。更にその上にコンポジットレジンを充填し、可視光線照射器(トクソーパワーライト、株式会社トクヤマ製)により可視光を30秒間照射して、接着試験片を作製した。
初期接着強度測定方法と同様の接着試験片を熱衝撃試験器に入れ、4℃の水槽に1分間浸漬後、60℃の水槽に移して1分間浸漬し、再び4℃の水槽に戻す操作を、3000回繰り返した。その後、初期接着強度測定と同様の手順で引張接着強度を測定した。1試験当り4本の引張り接着強さを上記と同様の方法で測定し、その平均値を耐久試験後の接着強度として、接着耐久性の評価結果とした。
6.0gのBisGMA、3.0gの3Gおよび1.0gの9Gに対して、0.05gのBTPO、0.01gのHQMEおよび0.003gのBHTを加え、暗所にて均一になるまで撹拌し、マトリックスとした。得られたマトリックスと、16.3gのF1とをメノウ乳鉢で混合し、真空下にて脱泡することにより、フィラー充填率62%の光硬化型のコンポジットレジンCR1を得た。他のコンポジットレジン(CR2〜CR16)も同様の手順で、表1に示す組成にて作製した。
5.0gのPM、5.0gのHEMA、0.003gのBHT及び10.0gの蒸留水を暗所にて均一になるまで撹拌し、プライマーP1を得た。他のプライマー(P2〜P13)も同様の手順で、表2に示す組成にて作製した。
酸性基非含有かつ水溶性の重合性単量体の種類が異なるコンポジットレジンを用いて測定を行った。酸性基非含有かつ水溶性の重合性単量体として、単官能ラジカル重合性単量体であるHEMAを用いた実施例4、或いは90MGを用いた実施例5よりも、多官能ラジカル重合性単量体を用いた実施例1〜2の方が初期接着試験および接着耐久試験の結果が良好である傾向があった。特に、象牙質に対する接着耐久性値が向上した。
実施例2と同様の配合比で、重合開始剤の種類を変えて測定を行った。その結果、α―ジケトン系の重合開始剤であるCQとDMBEとを一緒に用いたコンポジットレジンを用いた実施例10は、他の実施例と比較すると、わずかに初期の接着強度も弱く、接着強度の耐久性も低かった。
プライマー中に多価金属イオン溶出性フィラーであるMFを添加した実施例22と、表面処理されたヒュームドシリカおよびMFを無機フィラーとして添加した実施例24を作製した。その結果、MFを添加していない実施例3と比較して、実施例22は象牙質への初期接着強度が向上した。さらに、実施例22は、エナメル質および象牙質への接着耐久性も向上した。また、2種類の無機粒子を混合した実施例24は、実施例3と比較して、良好な初期接着強度および接着耐久性を示した。
プライマー中の酸性基含有重合性単量体の種類を変えて測定を行った。その結果、酸性基含有重合性単量体の酸性基がリン酸系エステルである実施例17および18は、酸性基含有重合性単量体の酸性基がカルボキシル基であるMAC−10を一部用いた実施例19よりも、良好な初期の接着強度および接着耐久性を示した。さらに、酸性基含有重合性単量体としてMAC−10のみを用いた実施例20は、実施例17〜19よりも初期の接着強度および接着耐久性が低かった。
プライマー中に重合開始剤を含有させた実施例23、重合開始剤および2種類の無機フィラーを加えた実施例25、そして、2種類の重合開始剤を用いる実施例26を作製した。いずれも実施例3と比較して、初期接着強度および接着耐久性が向上した。また、無機フィラーおよび重合開始剤の両方を添加した実施例25は、前述の実施例24とほぼ同程度の良好な初期接着強度および接着耐久性を示した。
酸性基非含有かつ水溶性の重合性単量体を含まないコンポジットレジンを用いて、プライマーの組成を変化させた、各比較例を作製した。各実施例に比べて接着強度が低く、特に接着耐久性が大幅に低下した。また、象牙質に対しての接着強度は、各実施例の5分の1以下であった。
酸性基非含有かつ水溶性の重合性単量体を含まず、かつ酸性基含有重合性単量体であるPMを含むコンポジットレジンを用いて、コンポジットレジンおよびプライマーの両方が、酸性基含有重合性単量体、酸性基非含有重合性単量体および重合開始剤を含む組成とした。プライマーの組成を変化させて比較例6〜9を作製した。
Claims (2)
- (a1)酸性基非含有かつ23℃の水に対する溶解度が1g/l以上であるラジカル重合性単量体を3〜30質量部含む(a)ラジカル重合性単量体100質量部、b)光重合開始剤およびc)フィラーを80〜2000質量部含む(A)充填修復材と、
(d)酸性基含有ラジカル重合性単量体を40質量部以上含むラジカル重合性単量体100質量部および(e)水を含む(B)前処理材と、
を含んでなり、
歯科治療に際して、前記(B)前処理材を窩洞に塗布または噴霧した後、塗布または噴霧したプライマーの上に前記(A)充填修復材を盛り付けて窩洞内に充填し、続いて可視光を照射することにより、窩洞内にある前記(A)充填修復材および前記(B)前処理材を硬化させることを特徴とする歯科用充填修復キット。 - 前記b)光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキシド系重合開始剤を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用充填修復キット。
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