JP5379406B2 - 歯科用充填修復キット - Google Patents

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Description

本発明は、光重合性の歯科用修復材料を含む歯科用充填修復キットに関する。
従来、歯牙の齲歯等により生じた小さい欠損(窩洞)は、金属材料にて充填されている。しかし、近年、天然歯牙色と同等の色調を付与できることおよび操作が容易なことから、アクリル系の重合性単量体、無機フィラー、及び光重合開始剤とを含んでなる充填修復材が好んで用いられている。
しかし、上記レジン系の充填修復材自体には歯牙に対する接着性がないために、レジン系の充填修復材料のみで歯牙の窩洞を充填すると、充填修復材と歯牙との間に隙間が生じることがある。その結果、その隙間から細菌が進入し、あるいは歯牙から充填修復材が脱落してしまう危険性が高くなる。
そこで、レジン系の充填修復材と歯牙との間に、酸性基を含有する単量体等を主成分の前処理材の層を設ける案が実用化されている。前処理材は、歯牙のエナメル質および象牙質の表面処理剤として作用し、充填修復材と歯牙との接着力を高める作用をする。このような前処理材を歯牙とレジン系の充填修復材との間に介在させることにより、充填修復材と歯牙とを隙間なく接着することができる。
充填修復材は、歯牙の形状を付する際には容易に変形できるが、充填を終了するとすぐに硬化することが好ましい。このため、充填修復材および前処理材は、光重合開始剤を含み、生体に対して無害である可視光を用いて好適に硬化される。
歯牙の修復を行う作業は、以下の手順で行われる。まず、齲歯部分を削り、窩洞を形成する。次に、その窩洞に前処理材を塗布する。次に、前処理材を硬化させるために、前処理材を塗布した部分に可視光を照射する。そして、前処理材の層の上に充填修復材を充填する。最後に、充填修復材を硬化させるために、充填修復材に可視光を照射する。
上述の修復方法の場合、可視光を2回照射する必要があるが、患者の負担を軽減し、修復作業の簡略化を図る観点から、可視光の照射回数を減らすことが望ましい。
しかし、1回の可視光照射により、前処理材と充填修復材とを同時に硬化させると、充填修復材の重合収縮量が大きいために、接着界面に大きな応力が生じる。この結果、前処理材と充填修復材との間の接着強度が非常に小さくなり、あるいは長期間の接着耐久性に劣るという問題が生じやすい。
上述の問題を解決するために、充填修復材および前処理材の両方に、酸性基を有する単量体、酸性基を有しない単量体および重合開始剤を含む歯科用充填キットが提案されている。(例えば、特許文献1を参照。)当該キットにおいて、充填修復材は前処理材に似た組成から成ることから、前処理材と充填修復材との界面の親和性が高くなるため、前処理材と充填修復材との界面で剥離が生じにくくなる。したがって、前処理材と充填修復材とを1回のみの光照射で同時に重合させた場合にも、比較的高い接着強度を有する。
特開2006−131612号公報(請求項1等)
しかし、上述の特許文献1に開示される従来技術には、次のような問題がある。それは、歯牙と充填修復材との接着力および接着耐久性が、可視光を2回照射する場合に比べて劣るという問題である。つまり、充填した充填修復材が脱落しやすいという問題がある。
また、上述の従来技術で用いられる充填修復材は、酸性基を有する単量体を含有するため、食物等に含まれる塩基性の物質を吸着しやすい。このため、充填修復材の部分が着色し、審美性に欠けるという問題がある。
そこで、本発明は、1回のみの光照射により前処理材および充填修復材を硬化できる歯科用充填修復キットであって、歯牙と充填修復材との接着力を向上させ、かつ、着色しにくく優れた審美性を発揮できる歯科用充填修復キットを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明者は、鋭意研究した結果、酸性基を含むラジカル重合性単量体および水を含む前処理材を用いて前処理をした後に、酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体を含む充填修復材を窩洞に充填し、可視光を照射して硬化させたところ、前処理材および充填修復材を1回のみの光照射で重合しても、歯牙と充填修復材との間に安定した高い接着力が発現し、かつ充填修復材が着色しにくいことを見い出し、本発明を完成させるに至った。
特に、本発明は、(a1)酸性基非含有かつ水溶性(すなわち、23℃の水に対する溶解度が1g/l以上)のラジカル重合性単量体を3〜30質量部含む(a)ラジカル重合性単量体100質量部、b)光重合開始剤およびc)フィラー80〜2000質量部含む(A)充填修復材と、(d)酸性基含有ラジカル重合性単量体を40質量部以上含むラジカル重合性単量体100質量部および(e)水を含む(B)前処理材と、を含んでなり、歯科治療に際して、前記(B)前処理材を窩洞に塗布または噴霧した後、塗布または噴霧したプライマーの上に前記(A)充填修復材を盛り付けて窩洞内に充填し、続いて可視光を照射することにより、窩洞内にある前記(A)充填修復材および前記(B)前処理材を硬化させる歯科用充填修復キットとするようにしている。
また、別の本発明は、b)光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキシド系重合開始剤を含んでなる歯科用充填修復キットとしている。
このような組成の光重合開始剤を用いる歯科用充填修復キットを採用すると、歯牙と充填修復材との間の接着力をさらに強力にすることができる。したがって、充填修復材が歯牙から剥がれてしまうことをより効果的に防止できる。
本発明によれば、1回のみの光照射により前処理材および充填修復材を硬化でき、歯牙と充填修復材との接着力をさらに向上させ、かつ着色しにくく、優れた審美性を発揮できる。
以下、本発明に係る歯科用充填修復キットの好適な実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態に何ら限定されるものではない。
本発明の実施の形態に係る歯科用充填修復キットは、大別すると、充填修復材(以後、コンポジットレジンという)と前処理材(以後、プライマーという)とを含む。コンポジットレジンには、酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体が含まれ、プライマーには、酸性基含有ラジカル重合性単量体が含まれる。コンポジットレジンに含まれるラジカル重合性単量体の一部は、水溶性であるため、プライマーに含まれるラジカル重合性単量体の酸性基に対する親和性が高い。したがって、コンポジットレジンとプライマーとの親和性が高い。さらに、コンポジットレジンは、酸性基非含有のラジカル重合性単量体を含み、プライマーは、酸性基含有ラジカル重合性単量体を含むので、コンポジットレジンのpHはプライマーのpHよりも高い。したがって、コンポジットレジンとプライマーとの間にpH勾配が生じる。その結果、コンポジットレジンとプライマーとの界面において、双方へのラジカル重合性単量体の移動が生じ、両層の融和が生じる。また、コンポジットレジンに含まれるラジカル重合性単量体が、プライマー側へ進出する際に、光重合開始剤も帯同してコンポジットレジン側からプライマー側へ移行するため、プライマーに光重合開始剤を添加しなくても、プライマーの重合を行うことができる。
(a1)酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体
本実施の形態に係る歯科用充填修復キットに含まれるコンポジットレジンは、酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体を含む。本明細書において、水溶性とは、23℃の水に対する溶解度が1g/l以上であることを意味する。さらに好ましくは、100g/l以上の溶解度である。そのような酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体としては、酸性基非含有の(メタ)アクリレート系単量体のうち、水溶性の(メタ)アクリレート系単量体類を何ら制限なく使用することができる。具体的に例示すると、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートあるいは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート系単量体、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等の分子内にエチレングリコール鎖を有するメタアクリレート等が挙げられる。これらは単独にまたは2以上を混合して用いることができる。
上述の酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体の中でも、多官能ラジカル重合性単量体を用いることが好ましい。具体的に例示すると、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートあるいは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の単官能ラジカル重合性単量体よりも、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能ラジカル重合性単量体を用いることが好ましい。多官能ラジカル重合性単量体を用いることにより、プライマーを介してコンポジットレジンと歯牙との間、特に象牙質に対する接着強度を向上させることができる。
また、コンポジットレジンが含有するラジカル重合性単量体100質量部のうち、上述の酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体を3〜30質量部含有する場合には、プライマーを介して、象牙質に対するコンポジットレジンの接着強度が向上する。また、コンポジットレジンは、酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体を3質量部以上含有すると、コンポジットレジンとプライマーとの間で重合開始剤の移動が生じやすくなる。さらに、同ラジカル重合性単量体を30質量部以下含有すると、吸水性を低くすることができる。したがって、重合開始剤の移動を容易とし、吸水性を抑え、かつ歯牙とコンポジットレジンとの接着強度を向上させるためには、ラジカル重合性単量体100質量部のうち、酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体を3〜30質量部含むコンポジットレジンとすることが好ましい。特に好ましい酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体の量は、ラジカル重合性単量体100質量部のうち、5〜25質量部である。また、コンポジットレジンとプライマーとの間のpH勾配を大きくするためには、酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体を除く他のラジカル重合性単量体として、酸性基を含有しないラジカル重合性単量体を用いることが好ましい。また、他のラジカル重合性単量体として、酸性基を含有しないラジカル重合性単量体を用いると、コンポジットレジンは、塩基性の物質を吸着しないため、より着色しにくく、審美性により優れる。
また、そのような酸性基を含有しないラジカル重合性単量体としては、酸性基非含有かつ非水溶性のラジカル重合性単量体を用いることがより好ましい。なぜなら、非水溶性のラジカル重合性単量体は、吸水による膨張および収縮が生じにくいためである。
酸性基を含有しないラジカル重合性単量体の具体的例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロキシエチルプロピオネートあるいは2−メタクリロキシエチルアセトアセテート等の重合性不飽和基を1つ有する非水溶性の(メタ)アクリレート系単量体類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートあるいはウレタン(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を複数有する脂肪族系(メタ)アクリレート系単量体類、若しくは、2,2−ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシ)プロポキシフェニル)]プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、あるいは2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン等の重合性不飽和基を複数有する芳香族系(メタ)アクリレート系単量体類等が挙げられる。これらは単独にまたは2以上を混合して用いることができる。
(b)光重合開始剤
本実施の形態において、コンポジットレジンに含まれる光重合開始剤としては、化合物そのもの自身が光照射に伴って重合可能なラジカルを生成するような光重合開始剤が好適に用いられる。そのような光重合開始剤として、例えば、α−ケトカルボニル化合物、あるいはアシルフォスフィンオキシド化合物等が挙げられる。
α−ケトカルボニル化合物としては、例えば、α−ジケトン、α−ケトアルデヒド、α−ケトカルボン酸あるいはα−ケトカルボン酸エステル等が挙げられる。具体的には、ジアセチル、2,3−ペンタジオン、2,3−ヘキサジオン、ベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−ジエトキシベンジル、4,4’−オキシベンジル、4,4’−ジクロルベンジル、4−ニトロベンジル、α−ナフチル、β−ナフチル、カンファーキノン、カンファーキノンスルホン酸、カンファーキノンカルボン酸あるいは1,2−シクロヘキサンジオン等のα−ジケトン、メチルグリオキザールあるいはフェニルグリオキザール等のα−ケトアルデヒド、ピルビン酸、ベンゾイルギ酸、フェニルピルビン酸、ピルビン酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル、フェニルピルビン酸メチルあるいはフェニルピルビン酸ブチル等が挙げられる。
これらα−ケトカルボニル化合物の中では、安定性等の面からα−ジケトンを使用することが好ましく、α−ジケトンの中ではジアセチル、ベンジルあるいはカンファーキノンが特に好ましい。
アシルフォスフィンオキシド化合物としては、例えば、ベンゾイルジメトキシホスフィンオキシド、ベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシあるいは2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
上述の光重合開始剤の配合量は、コンポジットレジン中の酸性基非含有ラジカル重合性単量体100質量部に対して、0.01〜5重量部の範囲とするのがより好ましい。
さらに、上記光重合開始剤の重合開始効果を向上させるため、化合物の触媒効果に悪影響を及ぼさない還元性化合物を併用することもできる。特に、α−ケトカルボニル化合物を用いる場合には、還元性化合物により重合開始効果を向上し、光重合を促進することが好ましい。
還元性化合物としては、重合促進剤でもある第3級アミン類を使用するのが一般的である。このような第3級アミン類を具体的に例示すると、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルペン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートあるいは2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等が挙げられる。還元性化合物は、使用する光重合開始剤の0.1〜10倍、より好ましくは0.3〜5倍の範囲内の量を添加するのが一般的である。
しかし、第3級アミンは弱塩基性を示すものが多いので、コンポジットレジンから酸性を示すプライマー中に進入した際に、中和反応を生じて、塩を形成することがある。すると、塩を形成した第3級アミンの重合開始効果が著しく低下する場合がある。したがって、光重合開始剤としては、塩基性の還元性化合物を用いなくとも十分に重合開始効果の高いアシルフォスフィンオキシド化合物を用いることが特に好ましい。
また、本発明の歯科用充填修復キットは、プライマー中に重合開始剤を含有させなくとも、1回の光照射で高い接着強度が得られるが、コンポジットレジンおよびプライマーの両方に、重合開始剤あるいは還元性化合物を含有させてもよい。コンポジットレジンおよびプライマーの両方に重合開始剤を含有させる場合にも、光重合開始剤としては前述と同様の化合物を用いることができる。また、その配合量はプライマー中のラジカル重合性単量体100質量部に対して0.01〜5質量部である。
c)フィラー
本実施の形態において、コンポジットレジンに含まれるフィラーは、コンポジットレジンの強度を向上させ、かつ重合時の収縮を抑えるために添加される。また、フィラーの添加量により、コンポジットレジンが硬化する前の粘度(操作性)を調節することができる。フィラーは、コンポジットレジンに含まれるラジカル重合性単量体100質量部に対して、80〜2000質量部含まれる。特に好ましいフィラーの量は、コンポジットレジンに含まれるラジカル重合性単量体100質量部に対して90〜500質量部であり、100〜230質量部が最も好ましい。また、フィラーの量が80質量部より少ない場合には、コンポジットレジンとしての十分な強度が得られず、2000質量部より多い場合には、粘度が高くなりすぎるために、コンポジットレジンを充填する作業の操作性が低下する。また、プライマーにもフィラーを添加すると、接着強度がより強固なものとなるため、より好ましい。フィラーとしては、無機フィラー、有機フィラーあるいは無機―有機複合フィラーを適宜用いることができる。
本発明に使用される有機フィラーについて具体的に例示すると、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート共重合体あるいはメチル(メタ)アクリレート・スチレン共重合体等の非架橋性ポリマー若しくは、メチル(メタ)アクリレート・エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体あるいは(メタ)アクリル酸メチルとブタジエン系単量体との共重合体等の(メタ)アクリレート重合体等が使用できる。また、これらの2種以上の混合物を用いることもできる。
本発明に使用される無機フィラーの種類としては、公知のものを適宜選択して使用できる。例えば、周期律第I、II、III、IV族、遷移金属若しくはそれらの酸化物あるいは水酸化物、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、燐酸塩、珪酸塩もしくはこれらの混合物若しくは複合塩等から選択することができる。
代表的な無機フィラーを具体的に例示すると、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラスあるいはストロンチウムガラス等が挙げられる。さらに、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の水酸化物、酸化亜鉛、ケイ酸塩ガラスあるいはフルオロアルミノシリケートガラス等の酸化物のようなカチオン溶出性フィラーも好適に用いることができる。特に、フルオロアルミノシリケートガラスから溶出する多価金属イオンは、酸性基を有するラジカル重合性単量体の重合物とイオン架橋することにより、歯質との接着性や硬化体の物性を向上させることができる。
上述の無機フィラーの中でも、シリカ、アルミナ若しくはジルコニアのような金属酸化物粒子、または、シリカ−チタニア若しくはシリカ−ジルコニアのような複合金属酸化物粒子からなる無機フィラーを好適に用いることができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用することもできる。
また、無機−有機複合フィラーも好適に使用できる。たとえば、無機フィラーに重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後、重合させ、粉砕することにより、粒状の有機−無機複合フィラーを得ることができる。有機無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパンメタクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したもの)等を使用できる。
上述の無機フィラーあるいは無機―有機複合フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することにより、重合性単量体との親和性、重合性単量体への分散性、硬化体の機械的強度および耐水性を向上できる。かかる表面処理剤および表面処理方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が制限なく採用できる。無機フィラーの表面処理に用いられるシランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランあるいはヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。また、シランカップリング剤以外にも、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコ−アルミネート系カップリング剤を用いる方法、あるいは、フィラー粒子表面に前記重合性単量体をグラフト重合させる方法により、無機フィラー若しくは無機―有機複合フィラーの表面処理を行うことができる。
上述したフィラーの屈折率は、特に限定されない。したがって、一般的な歯科用途には、屈折率が1.4〜2.2の範囲のものが好適に用いられる。また、形状あるいは粒子径についても、特に制限はない。形状あるいは粒子径を適宜選択して使用されるが、平均粒径は通常0.001〜100μmであり、特に0.001〜10μmであることが好ましい。また、上述したフィラーの中でもとりわけ球状の無機フィラーを用いると、得られる硬化体の表面滑沢性が増し、優れた修復材料となり得るので好ましい。
(d)酸性基含有ラジカル重合性単量体
本実施の形態に係る歯科用充填修復キットのプライマーに含まれる酸性基含有ラジカル重合性単量体は、1分子中に少なくとも1つの酸性基と1つのラジカル重合性不飽和基とを有する化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。このような酸性基含有ラジカル重合性単量体は、プライマーに含まれるラジカル重合性単量体100質量部中40質量部以上含まれる。また、該酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン基、リン酸モノエステル基あるいはリン酸ジエステル基等を挙げることができる。その中でも、歯質に対する接着性が高い酸性基として、カルボキシル基、リン酸モノエステル基あるいはリン酸ジエステル基がより好ましい。さらに、コンポジットレジンとプライマーとの間の物質の移動を活発化させる目的で、コンポジットレジンとプライマーとの間のpH勾配をより急勾配にするため、プライマーに含まれる酸性基含有ラジカル重合性単量体の酸性基は、強酸性であることが最も好ましい。そのような強酸性の酸性基としては、リン酸モノエステル基あるいはリン酸ジエステル基が最も好ましい。
そのような酸性基含有ラジカル重合性単量体をより具体的に例示すると、2−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンマレエート、2−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、11−(メタ)アクロイルオキシエチル−1,1−ウンデカンジカルボン酸、2−(メタ)アクロイルオキシエチル−3’−メタクロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、4−(2−(メタ)アクロイルオキシエチル)トリメリテートアンハイドライド、N−(メタ)アクロイルグリシン、N−(メタ)アクロイルアスパラギン酸等のカルボン酸酸性ラジカル重合性単量体類;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート等のリン酸酸性基含有ラジカル重合性単量体類;ビニルホスホン酸等のホスホン酸酸性基含有ラジカル重合性単量体類;スチレンスルホン酸、3−スルホプロパン(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸酸性基含有ラジカル重合性単量体類などが挙げられる。また、これら酸性基含有ラジカル重合性単量体は、必要に応じて2種以上のものを併用しても良い。
プライマーには、その他酸性基非含有の単量体を含んでもよい。酸性基非含有の重合性単量体としては、前述の酸性基非含有かつ水溶性ラジカル重合性単量体、若しくは酸性基非含有かつ非水溶性のラジカル重合性単量体を用いることができる。特に、酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体がプライマーに含まれている場合には、歯質に対するプライマーの浸透性を向上させるため、好ましい。一方、酸性基非含有かつ非水溶性ラジカル重合性単量体がプライマー中に含まれている場合には、硬化したプライマー層の強度が向上し、好ましいが、該重合性単量体と水との相分離を引き起こし、コンポジットレジンからの重合開始剤の進入を妨げる恐れがある。そのため、ラジカル重合性単量体100質量部中に5質量部以下が好ましく、5質量部より多く配合する場合は、酸性基非含有かつ水溶性ラジカル重合性単量体と合わせて用いることが好ましい。
本実施の形態に係る歯科用充填修復キットのプライマーに含まれる水は、酸性基含ラジカル重合性単量体による歯質の脱灰を助ける働きを有する。水は、プライマーに含まれるラジカル重合性単量体100質量部に対して、5〜150質量部含まれることが好ましく、特に、プライマーに含まれるラジカル重合性単量体100質量部に対して15〜110質量部の水が含有まれるのがより好ましい。
また、プライマーの操作性をより向上させるために、プライマーは、流動性を有する親水性の有機溶媒を含んでいてもよい。例えば、アセトン、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等の溶媒が含まれていても良い。特に、エタノールあるいはイソプロピルアルコールのように、揮発性が高く、かつ毒性の低い溶剤は、後述の乾燥が容易になるため、好適に用いられる。親水性の有機溶媒の含有量は、プライマーに含まれるラジカル重合性単量体100質量部に対して、20〜300質量部が好ましく、より好ましい親水性の有機溶媒の含有量は、プライマーに含まれるラジカル重合性単量体100質量部に対して、50〜150質量部である。
さらに、本実施の形態に係る歯科用充填修復キットには、歯牙や歯肉の色調に合わせるため、顔料あるいは蛍光顔料等の着色材料を配合できる。また、紫外線に対する変色防止のため紫外線吸収剤を添加してもよい。さらに、保存安定性を向上させるために、重合禁止剤を配合することも好ましい。また、安定剤あるいは殺菌剤等を添加してもよい。
本実施の形態に係る歯科用充填修復キットのプライマーの使用方法は、特に制限されない。一般には、ハケ、ヘラ、筆、あるいはローラー等で窩洞に塗布、または窩洞に噴霧する方法を採用することができる。また、プライマーは複数回塗ってもよい。また、エッチング剤を別途用いる必要がある場合には、プライマーを塗布する前に用いてもよい。
プライマーを窩洞に塗布または噴霧した後には、好ましくは、余剰な水分および溶剤を蒸発させるために乾燥させる。乾燥の方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥、あるいは、それらを組み合わせる乾燥方法があるが、口腔内で乾燥させることを考慮すると、乾燥空気を出す気銃を用いて送風乾燥することが好ましい。
次に、乾燥したプライマーの上に、コンポジットレジンを盛り付けて窩洞を充填する。この際、コンポジットレジンの使用法は特に制限されない。一般には、ヘラ等で盛り付けられ、実際の歯牙と同様の形状に整えられる。最後に、歯科用光照射機にて可視光を充填修復部に照射することにより、充填修復部にあるプライマーおよびコンポジットレジンを硬化させることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。作製したコンポジットレジンの組成を表1に、作製したプライマーの組成を表2に、それぞれ示す。また、各実施例および各比較例における歯科用充填修復キットの組成、充填部分の初期接着試験結果および接着耐久性試験結果を、それぞれ表3および表4に示す。
まず、実施例および比較例で使用した化合物とその略称、歯牙とコンポジットレジンとの初期接着試験の測定方法、歯牙へのコンポジットレジンの接着耐久性試験の測定方法、コンポジットレジンの作製方法、およびプライマーの作製方法について説明する。
(1)使用した化合物とその略称
[酸性基含有ラジカル重合性単量体]
「PM」:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェートおよびビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェートを質量比2:1の割合で混合した混合物
「MDP」:10−メタクリルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート
「MAC−10」:11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸
[酸性基非含有ラジカル重合性単量体]
「D−2.6E」:2,2’−ビス(4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル)プロパン
「BisGMA」:2,2’−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン
「3G」:トリエチレングリコールジメタクリレート
「UDMA」:1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルへキサンおよび1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,4,4−トリメチルヘキサンの混合物
[酸性基非含有かつ水溶性のラジカル重合性単量体]
「HEMA」:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
「9G」:ポリエチレングリコール(重合度9)ジメタクリレート(化1の構造式)
「14G」:ポリエチレングリコール(重合度14)ジメタクリレート(化2の構造式)
「BPE−1300」:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(化3の構造式)
「M90G」:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(化4の構造式)
いずれも23℃の水に対して、任意の割合で混合できるラジカル重合性単量体である。
Figure 0005379406
Figure 0005379406
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[揮発性の水溶性有機溶媒]
「IPA」:イソプロピルアルコール
アセトン
[重合開始剤]
「CQ」:カンファーキノン
「DMBE」:p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
「TPO」:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
「BTPO」:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド
「PTSNa」:パラトルエンスルフィン酸ナトリウム
[重合禁止剤]
「HQME」:ハイドロキノンモノメチルエーテル
「BHT」:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
[その他成分]
「F1」:球状シリカ−ジルコニア(平均粒径0.4μm)をγ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにより疎水化処理したものと、球状シリカ−チタニア(平均粒径0.08μm)γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにより疎水化処理したものとを質量比70:30にて混合した混合物
「F2」:ヒュームドシリカ(平均粒径0.02μm)をメチルトリクロロシランにより表面処理したもの
「MF」:フルオロアルミノシリケートガラス粉末(トクソーアイオノマー、株式会社トクヤマ製)を湿式の連続型ボールミル(ニューマイミル、三井鉱山株式会社製)を用いて、平均粒径0.5μmまで粉砕し、その後、粉砕粉末1gに対して20gの5.0N塩酸にてフィラー表面を20分間改質処理したもの。
(2)コンポジットレジンの初期接着強度測定方法
牛を屠殺し、屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去した。抜去した牛前歯を、注水下、#600のエメリーペーパーで研磨し、唇面に平行かつ平坦になるように、エナメル質および象牙質平面を削り出した。次に、削り出した平面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥させた。次に、この平面に直径3mmの穴を有する両面テープを貼り付け、さらに、厚さ0.5mmおよび直径8mmの穴を有するパラフィンワックスを、先に貼り付けられた両面テープの穴の中心に、パラフィンワックスの穴の中心をあわせて固定することで、模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞に、プライマーを塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。更にその上にコンポジットレジンを充填し、可視光線照射器(トクソーパワーライト、株式会社トクヤマ製)により可視光を30秒間照射して、接着試験片を作製した。
上述の接着試験片を37℃の水中に24時間浸漬した後、引張り試験機(オートグラフ、株式会社島津製作所製)を用いて、クロスヘッドスピード2mm/minにて引っ張り、歯牙とコンポジットレジンとの引張り接着強度を測定した。歯牙とコンポジットレジンとの引張接着強度の測定は、各実施例あるいは各比較例につき、各種試験片4本についてそれぞれ測定した。その4回の引張接着強度の平均値を、該当する実施例若しくは比較例の接着強度とした。
(3)接着耐久性の試験方法
初期接着強度測定方法と同様の接着試験片を熱衝撃試験器に入れ、4℃の水槽に1分間浸漬後、60℃の水槽に移して1分間浸漬し、再び4℃の水槽に戻す操作を、3000回繰り返した。その後、初期接着強度測定と同様の手順で引張接着強度を測定した。1試験当り4本の引張り接着強さを上記と同様の方法で測定し、その平均値を耐久試験後の接着強度として、接着耐久性の評価結果とした。
(4)コンポジットレジンの調製
6.0gのBisGMA、3.0gの3Gおよび1.0gの9Gに対して、0.05gのBTPO、0.01gのHQMEおよび0.003gのBHTを加え、暗所にて均一になるまで撹拌し、マトリックスとした。得られたマトリックスと、16.3gのF1とをメノウ乳鉢で混合し、真空下にて脱泡することにより、フィラー充填率62%の光硬化型のコンポジットレジンCR1を得た。他のコンポジットレジン(CR2〜CR16)も同様の手順で、表1に示す組成にて作製した。
(5)プライマーの調製
5.0gのPM、5.0gのHEMA、0.003gのBHT及び10.0gの蒸留水を暗所にて均一になるまで撹拌し、プライマーP1を得た。他のプライマー(P2〜P13)も同様の手順で、表2に示す組成にて作製した。
表3記載のコンポジットレジン及びプライマーを用いて各実施例の歯科用充填修復キットとし、各実施例について、初期接着試験および接着耐久性試験を行った。その結果を表3に示す。
Figure 0005379406
Figure 0005379406
Figure 0005379406
酸性基非含有かつ水溶性の重合性単量体を含むコンポジットレジンを用いて実施例1〜26の測定を行った。また、実施例1〜14では、同じプライマーを使用し、実施例15〜26では、プライマーの種類を変えた。いずれの結果も、エナメル質および象牙質の両方に対して、高い接着強度が得られた。また、エナメル質および象牙質の両方に対しての接着耐久性試験を行ったところ、共に大きな接着強度の低下は見られなかった。
実施例1〜5
酸性基非含有かつ水溶性の重合性単量体の種類が異なるコンポジットレジンを用いて測定を行った。酸性基非含有かつ水溶性の重合性単量体として、単官能ラジカル重合性単量体であるHEMAを用いた実施例4、或いは90MGを用いた実施例5よりも、多官能ラジカル重合性単量体を用いた実施例1〜2の方が初期接着試験および接着耐久試験の結果が良好である傾向があった。特に、象牙質に対する接着耐久性値が向上した。
実施例10〜12
実施例2と同様の配合比で、重合開始剤の種類を変えて測定を行った。その結果、α―ジケトン系の重合開始剤であるCQとDMBEとを一緒に用いたコンポジットレジンを用いた実施例10は、他の実施例と比較すると、わずかに初期の接着強度も弱く、接着強度の耐久性も低かった。
実施例22、24
プライマー中に多価金属イオン溶出性フィラーであるMFを添加した実施例22と、表面処理されたヒュームドシリカおよびMFを無機フィラーとして添加した実施例24を作製した。その結果、MFを添加していない実施例3と比較して、実施例22は象牙質への初期接着強度が向上した。さらに、実施例22は、エナメル質および象牙質への接着耐久性も向上した。また、2種類の無機粒子を混合した実施例24は、実施例3と比較して、良好な初期接着強度および接着耐久性を示した。
実施例17〜20
プライマー中の酸性基含有重合性単量体の種類を変えて測定を行った。その結果、酸性基含有重合性単量体の酸性基がリン酸系エステルである実施例17および18は、酸性基含有重合性単量体の酸性基がカルボキシル基であるMAC−10を一部用いた実施例19よりも、良好な初期の接着強度および接着耐久性を示した。さらに、酸性基含有重合性単量体としてMAC−10のみを用いた実施例20は、実施例17〜19よりも初期の接着強度および接着耐久性が低かった。
実施例23、25、26
プライマー中に重合開始剤を含有させた実施例23、重合開始剤および2種類の無機フィラーを加えた実施例25、そして、2種類の重合開始剤を用いる実施例26を作製した。いずれも実施例3と比較して、初期接着強度および接着耐久性が向上した。また、無機フィラーおよび重合開始剤の両方を添加した実施例25は、前述の実施例24とほぼ同程度の良好な初期接着強度および接着耐久性を示した。
Figure 0005379406
比較例1〜5
酸性基非含有かつ水溶性の重合性単量体を含まないコンポジットレジンを用いて、プライマーの組成を変化させた、各比較例を作製した。各実施例に比べて接着強度が低く、特に接着耐久性が大幅に低下した。また、象牙質に対しての接着強度は、各実施例の5分の1以下であった。
比較例6〜9
酸性基非含有かつ水溶性の重合性単量体を含まず、かつ酸性基含有重合性単量体であるPMを含むコンポジットレジンを用いて、コンポジットレジンおよびプライマーの両方が、酸性基含有重合性単量体、酸性基非含有重合性単量体および重合開始剤を含む組成とした。プライマーの組成を変化させて比較例6〜9を作製した。
比較例6〜9は、比較例1〜5よりも高い接着強度を示している。しかし、各実施例に比べると、接着強度が低く、特に象牙質に対しての接着強度は、各実施例の5分の1以下であり、接着耐久性も大幅に低下した。
本発明は、欠損した歯牙の修復を行う歯科治療の分野に用いることができる。

Claims (2)

  1. (a1)酸性基非含有かつ23℃の水に対する溶解度が1g/l以上であるラジカル重合性単量体を3〜30質量部含む(a)ラジカル重合性単量体100質量部、b)光重合開始剤およびc)フィラーを80〜2000質量部含む(A)充填修復材と、
    (d)酸性基含有ラジカル重合性単量体を40質量部以上含むラジカル重合性単量体100質量部および(e)水を含む(B)前処理材と、
    を含んでなり、
    歯科治療に際して、前記(B)前処理材を窩洞に塗布または噴霧した後、塗布または噴霧したプライマーの上に前記(A)充填修復材を盛り付けて窩洞内に充填し、続いて可視光を照射することにより、窩洞内にある前記(A)充填修復材および前記(B)前処理材を硬化させることを特徴とする歯科用充填修復キット。
  2. 前記b)光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキシド系重合開始剤を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用充填修復キット。
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