JP5376812B2 - 高温加圧気体成形品の製造方法 - Google Patents
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その様に軽量で、強度に優れた材料であるアルミニウム合金板材の良好な特性が損なわれるという問題に対して、材料の提案だけでなく、冷間予成形を行うなど加工技術面からの提案もなされている。
特許文献1には、アルミニウム合金を予め冷間で予成形を行い、その後超塑性成形を行えば、局部的な薄肉化を回避でき、強度面でも優れた成形品が得られることが示されている。
特許文献2には、このAl−Mg系合金にMnとCuの両者を特定量含有させる化学成分組成とすることで、成形品の強度を確保することが提案されている。
すなわち超塑性成形では、200%を超える大変形に伴い、結晶粒界の三重点や晶出物近傍でマトリックスが充填されずに空洞となる場合があり、係るキャビテーションは強度の低下だけでなく、構造材などの用途では疲労強度を低下する原因ともなる。
このキャビテーションは結晶粒を微細化することで抑制することができる。
こうした要望に対して、特許文献4や特許文献5などにおいて、従来に比べより早い成形速度での成形技術が提案されている。
特許文献5では150℃以上450℃未満の温度範囲、15kg/cm2(約1.5PMa)〜150kg/cm2(約15PMa)で、2分以下で成形することが提案されている。
しかし実際の加工工程においては、以上の従来の高温加圧気体成形品及びその高温加圧気体成形品の製造方法ではAl−Mg系アルミニウム合金板材を用いた超塑性成形での、生産性の悪さは未だ満足できる程度には改善されていない。
さらに特許文献3に示す様に、Cuを添加することで、キャビテーションを抑制することができたとしても、Cuの添加は、耐食性を劣化させると言う裏面の問題があり、成形品の強度を向上させるための現実的な解決とはなっていない。
本発明者らは以上の課題を達成するべく鋭意実験検討を重ねた結果、300℃〜450℃の温度に加熱された所定のアルミニウム合金板材を、成形前の結晶粒径を20μm未満、引張試験における伸び100%でのキャビテーション面積率を1.5%以下となるよう調製し、1〜4MPaの圧力で3分以内に成形すると、高速で導入された加工ひずみが蓄積され、その場再結晶が起こり、結晶粒径が10μm以下の極めて微細な結晶粒を有する成形品が得られることを見い出した。
本発明の高温加圧気体成形品の製造方法は、Mg3.0〜8.0%、1.5%を超えて2.0%以下のMnを含有し、Cr0.3%以下(0%は含まない)及びZr0.3%以下(0%は含まない)及びV0.3%以下(0%は含まない)のうちの1種または2種以上を含有すると共に、Feを0.3%以下に規制し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金板を、均質化処理後、熱間圧延、冷間圧延して成形前の結晶粒径を20μm未満、温度350℃、歪み速度1×10−2/secの条件下における伸び100%でのキャビテーション面積率を1.5%以下となるよう調製する工程と、300℃以上450℃以下に加熱し、圧力1MPa以上4MPa以下の加圧気体により3分以内に成形する工程とよりなり、得られる高温加圧気体成形品の0.2%耐力が150MPa以上で、得られる高温加圧気体成形品の結晶粒径を10μm以下に調整することを特徴とする。
Mg:Mgは再結晶粒を微細化して、成形性を向上させ、また材料の耐食性および溶接性を阻害することなく、強度を向上させる作用を有する。ここで、Mg量が3.0%未満では成形性向上効果が不充分となり、8.0%を越えれば、熱間圧延性、冷間圧延性が悪くなって、製造が困難となる。したがってMg量は3.0〜8.0%の範囲内とした。
結晶粒の微細化はキャビテーションの発生を抑制する上でも重要である。
さらに、一般のアルミニウム合金では不純物としてFe、Si、Cu、Zn等が含有されるが、不純物としてのFe量が多ければ、粗大なAl−Fe系、Al−Fe−S系やAl−Fe―Mn系の金属間化合物が晶出しやすくなり、キャビテーションが多くなることから、Feは不純物として0.3%以下に規制することが好ましい。Siの量が多ければ、粗大なαAl−Mn(Fe)−Si相やMg2Si相等の金属間化合物が晶出しやすくなり、キャビテーションが多くなることから、Siは不純物として0.3%未満に規制することが好ましい。またCuが多ければ耐食性が劣化するだけでなく、熱間圧延が困難となることから、Cuは0.1%未満に規制することが好ましい。そのほか、不純物としてのZnは、0.5%以下であれば特に本発明のアルミニウム合金板材の特性を損なうことはない。
ここで、キャビテーションは伸びの低下の原因となるとともに、成形後の製品の機械的性質、耐食性を劣化させる原因となる。またBeは、圧延板表面のMgの酸化を抑制し、表面を安定化する。
先ず前述のような成分組成の合金溶湯を溶製し、これを鋳造する。その鋳造法としては半連続鋳造法(DC鋳造法)が一般的であるが、連続鋳造法(例えばロールキャスト法)を用いることも可能である。なお鋳造前もしくは鋳造中には、鋳塊組織微細化剤として前述のようなTiを単独でもしくはBもしくはCとともに溶湯に添加しても良い。
鋳塊加熱後、常法に従って熱間圧延を行ない、さらに冷間圧延を施して所要の最終板厚とする。この場合、熱間圧延と冷間圧延との間、もしくは冷間圧延の中途において1回または2回以上の中間焼鈍を施しても良い。中間焼鈍の条件は特に限定しないが、バッチ式の中間焼鈍の場合には、250〜450℃×0.5〜12時間とし、連続焼鈍を適用する場合は400〜560℃×0〜30秒とすることが好ましい。バッチ式250℃以下、連続焼鈍400℃以下では軟質化の効果が不十分、バッチ式450℃以上では表面酸化皮膜が厚くなり圧延性と表面品質が低下する。連続焼鈍560℃以上では、共晶融解が発生し、キャビテーションが増加する。バッチ式0.5時間以下は軟質化の効果が不十分、12時間以上は効果が飽和し、不経済である。連続焼鈍30秒以上では表面酸化皮膜が厚くなり圧延性と表面品質が低下し好ましくない。
一方、連続鋳造法によって得られた鋳造板に対しては、熱間圧延を行いまたは行わずにコイルに巻取り、コイルの状態で通常は400〜560℃×0.5〜24時間の均質化加熱を施してから、熱間圧延を行なうことなく、冷間圧延のみによって所要の最終板厚とする。この場合も冷間圧延の中途において前記同様な条件で1回または2回以上の中間焼鈍を施しても良い。
最終板厚前の冷間圧延率が50%未満では、再結晶粒が粗大化して、充分な特性が得られない。最終板厚前の冷間圧延率が50%以上であれば、再結晶粒の粗大化を招くことなく、成形前の結晶粒径を20μm未満の微細な再結晶組織とすることができる。結晶粒径が20μm以上では強度及び成形性において十分な性能が得られない。
成形前に再結晶組織とするためには、アルミニウム合金板材の最後の製造工程として、冷間圧延板に焼鈍を施しても良いが、成形のために板を300℃〜450℃に加熱する工程で再結晶させることが好ましい。
予め加熱された加圧気体成形機にアルミニウム合金板材をセットし、300℃〜450℃に加熱する。300℃未満ではアルミニウム合金板材を十分に再結晶させることができない。450℃を超えて加熱すると、再結晶粒が粗大化する恐れが有り好ましくない。ひずみの開放を抑制し、成形品の結晶粒を微細にするためには450℃未満とすることが望ましい。このことから成形温度は300℃〜450℃、望ましくは380℃以上420℃未満とする。
成形機にセットする前に、予め板を加熱することもできる。予め板を加熱しておくことで、成形のサイクルタイムを短縮することが可能となる。その場合、板材の搬送中に温度低下を起こすときには、低下温度を見込んだ温度で予め加熱を施しても良い。成形用の高圧ガスとしては、N2ガスが比較的安価で適しているが、不活性ガスが必要な場合にはアルゴンガス等も利用できる。また、圧縮機があれば空気でもよい。
300℃〜450℃の成形温度で圧力1MPa未満では、3分以内で成形を完了することは困難である。一方4MPaを超えた圧力での成形は、破断が生じる恐れがある。成形時間については、3分以内としたが、3分を越える時間で成形すると、部分的に結晶粒の粗大化が生じる恐れが有るため好ましくない。望ましくは2分以内である。
1MPa未満の圧力では板厚にもよるが、十分なひずみ速度が得られず、その場再結晶を起こすに足り得る加工ひずみの蓄積が不十分となる。その結果、結晶粒は成形前の状態を維持するか、あるいは部分的に粗大化が起こることが有り、本発明の目的とする強度の高い高温加圧気体成形品は得られない。
本発明においては、引張試験における伸び100%でのキャビテーション面積率が1.5%以下、望ましくは1.0%以下となるよう調製したアルミニウム合金板材を用いる。
高温加圧成形では部分的に大きな板厚減少を伴う場合が多く、しばしばキャビテーションが問題となることがある。キャビテーション面積率が大きくなると、成形品の静的強度や疲労強度の劣化を招く恐れがあり好ましくない。本発明者らの検討結果から、大変形の目安となる伸び100%でのキャビテーション面積率が1.5%以下であれば、実用上問題ないことが解った。望ましくは1.0%以下である。
ここでキャビテーション面積率とは、具体的には、成形板材の断面を研磨し、画像解析装置により観察し、材料内部に発生している、キャビティーション量を測定することである。
伸び100%でのキャビテーション面積率の測定は、成形板材の板厚が、元板の1/2板厚になった板材(成形品)の測定を行うことである。
結晶粒を微細にすることで、強度が向上することは一般に知られている。本発明の組成のアルミニウム合金板材では、結晶粒径を10μm以下とすることで、0.2%耐力で150MP以上を達成することができる。そのためには、本発明で特定した合金組成、成形温度300℃〜450℃、成形圧力1〜4MPa、成形時間3分以内、結晶粒径10μm以下のすべての条件が満たされなければならない。0.2%耐力が150MPaを超えることで、たとえば薄肉化や軽量化が可能となりコスト低減、省エネ等、経済や環境に大きな効果をもたらすことが期待される。
表1に示す成分組成の9種類の合金を、常法に従ってDC鋳造法により鋳造した。
合金番号2〜合金番号6,8は本発明で規定した成分範囲に適合する合金であり、合金番号9〜合金番号11は本発明で規定した成分範囲を外れた合金である。
各鋳塊を面削した後、530℃×10時間の均質化処理を行なった。次に500℃に加熱して熱間圧延を施し、板厚6mmの熱延板を得た。その後冷間圧延を行って板厚1.5mmに仕上げた。一部のものついては冷間圧延途中で中間焼鈍を実施した。中間焼鈍は390℃×2時間保持のバッチ焼鈍とした。
成形前の結晶粒については、別途成形温度に加熱したサンプルのミクロ組織観察により結晶粒径を測定した。さらに温度350℃、ひずみ速度1×10−2/secで引張試験を行い、伸び100%でのキャビテーション面積率を測定した。
比較例である製造番号9は本発明例の合金番号4を用いて製造された。
また製造番号9の比較例は圧力3MPaの加圧気体により成形時間を100secとし、圧力1MPa以上4MPa以下の加圧気体により3分以内に成形されるとする条件に適合する条件で成形された。
さらに製造番号9の比較例では成形温度が320℃〜420℃の温度範囲とされ、温度300℃以上450℃以下に加熱するという条件に適合する条件で成形された。
製造番号9は成形前のアルミニウム合金板材のキャビテーション面積率が1.5%を越えて2.1%であった。このようなアルミニウム合金板材につき冷間圧延途中で中間焼鈍を施したが、焼鈍後の冷間圧延率が50%に満たなかったため、再結晶前の加工ひずみの蓄積が少なく、加工前結晶粒径が27μmであり、結晶粒径の大きい材料となったが、成形は可能であった。また、製造番号9の成形後の結晶粒径が10μm以下という本発明の規定を越える12μmであり、その結果成形後の0.2%耐力が150MPa以上という条件に満たない145MPaであった。
製造番号10〜製造番号14、製造番号16〜製造番号19は、温度360℃に加熱し、圧力3MPaの加圧気体により成形時間を100secとして本発明条件に適合する同一の条件で成形された。
その中で本発明例である製造番号10〜14、製造番号16は、製造番号10は合金番号2、製造番号11は合金番号3、製造番号12は合金番号4、製造番号13は合金番号5、製造番号14は合金番号6、製造番号16は合金番号8を用いて製造され、いずれも本発明例に該当する合金を用いて製造されたことから、良好な成形性、成形品強度を示した。
製造番号19は成形中の結晶粒の粗大化を抑制するCr0.3%以下、Zr0.3%以下、V0.3%以下(いずれも0%は含まない)のうちの1種のみとしてFe0.3%以下とする条件を越えてFe含有量が0.35%の合金番号11を用いたため、鋳造時生じた粗大な晶出物が原因で、成形途中に破断が発生した。また晶出物周りにキャビテーションが発生し、キャビテーション面積率が1.5%以下とする条件を充足せずキャビテーション面積率は3.2%であった。このため十分な変形能が得られず、成形途中で破断した。
Claims (1)
- Mg3.0〜8.0%、1.5%を超えて2.0%以下のMnを含有し、Cr0.3%以下(0%は含まない)及びZr0.3%以下(0%は含まない)及びV0.3%以下(0%は含まない)のうちの1種または2種以上を含有すると共に、Feを0.3%以下に規制し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金板を、均質化処理後、熱間圧延、冷間圧延して成形前の結晶粒径を20μm未満、温度350℃、歪み速度1×10−2/secの条件下における伸び100%でのキャビテーション面積率を1.5%以下となるよう調製する工程と、300℃以上450℃以下に加熱し、圧力1MPa以上4MPa以下の加圧気体により3分以内に成形する工程とよりなり、得られる高温加圧気体成形品の0.2%耐力が150MPa以上で、得られる高温加圧気体成形品の結晶粒径を10μm以下に調整することを特徴とする高温加圧気体成形品の製造方法。
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