JP5376263B2 - 咬害抑止シート - Google Patents

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Description

本発明は、鳥獣による咬害を抑止するフレキシブルシート、及びフレキシブルメッシュシートに関するものである。更に詳しく述べると、本発明は、農作物、穀物、果実、野菜などの収穫物を齧歯類動物や鳥などによる食荒らし被害から守るための野積シートや帆布、米・穀物や食品原料を保管用、輸送用に充填するためのフレキシブルコンテナに用いるターポリンシート、果樹園農家で果樹の根周りに埋設囲張し、モグラやネズミなど害獣の侵入、根齧りを防止するためのメッシュシート、ゴミ収集場を被覆するカラス避けメッシュシート、家屋、ビル、スタジアム、大型娯楽施設、インフラ施設などの電線や通信回線などの屋内配線をネズミの咬害から守るためのケーブルカバーシートなどに関する。
収穫した稲、麦、トウモロコシ、大豆などの屋外集積物は降雨や鳥獣などによる食荒らし被害から守るため、これらの集積物全体に防水帆布や合成樹脂コーティングクロスなどで隙間無く覆い被せる野積みにより外界からの遮断が行なわれている。また米、麦、トウモロコシ、大豆などの穀物の保管用、輸送用には合成樹脂積層クロスからなるフレキシブルコンテナが用いられ、これらの米・穀物類は鳥獣からの遮断対策が十分になされているにも拘らず、内容物が鳥獣に察知され、例えばカラスの鋭利なくちばしでの突付き行為の繰り返し、ネズミの咬齧行為の繰り返しによって、合成樹脂コーティングクロスや合成樹脂積層クロスに穴が開けられ、内容物が食い荒らされる被害、糞尿飛散被害のみならず、カラスやネズミを媒介しての雑菌汚染被害がしばしば問題となっている。
このような米・穀物を初めとする農作物、果実、野菜などの他、食品原材料の野積み保管やフレキシブルコンテナ保管において、カラスや、ネズミなどの鳥獣被害を抑止するために、合成樹脂コーティングクロスや合成樹脂積層クロスの合成樹脂層に辛味刺激物であるマイクロカプセル化カプサイシンを配合して含有させることで、カラスやネズミが合成樹脂層を突付いて傷付けたり、齧ったりした場合にマイクロカプセルが破壊して内包のカプサイシン成分が直接カラスやネズミの口内神経や視神経を刺激する苦痛によりカラスやネズミの忌避効果を得る方法が提案されている。これらは具体的に、カプサイシン類を含有する齧歯類動物忌避剤の入ったカプセルを熱可塑性樹脂に1.25〜2.50%混入した樹脂を用いて、通気性布帛に齧歯類動物忌避剤入りカプセルを点在させた齧歯類動物咬害防止布帛(特許文献1)。また、合成樹脂フィルムに防鼠剤内包マイクロカプセルを1〜3質量%含有させ、このフィルムを合成樹脂フラットヤーンクロスの両面に積層した防鼠性シートが開示されている。(特許文献2)
これらの布帛やシートは熱可塑性樹脂(合成樹脂)に対して齧歯類動物忌避剤(防鼠剤内包)マイクロカプセルを1.25〜2.50%(または1〜3質量%)程度の比較的量の少ない配合組成で忌避効果を得ようとするものであるが、これらの布帛やシートを突付いたり、齧ったりする時に、その物理的剪断力は先ず熱可塑性樹脂(合成樹脂)の変形に作用し、その時に中に含有する忌避材内包マイクロカプセル粒子も樹脂の変形に追従して変位するために、カラスが多少突付いたり、ネズミが多少齧ったりしても、なかなか忌避材内包マイクロカプセルに圧力や剪断力が掛からず、従って忌避材内包マイクロカプセルが破壊し難いことで、当初から十分な忌避効果を得ることができない事例があり、このためカラスやネズミが口内神経や視神経の苦痛を学習し、以後はこれらの布帛やシートを忌避するような効果を得る頃には、何度もカラスが突付いたり、ネズミが齧ったりすることで、これら布帛やシート本体の損傷が激しくなり、布帛やシートの交換サイクルが短くなる問題、特にフレキシブルコンテナの場合は強度低下を招くなどして輸送行程の信頼性に問題があった。
特開平06−199620号公報 特開平10−044339号公報
本発明は、農作物、穀物、果実、野菜などの収穫物を降雨や鳥獣などによる食荒らし被害から守るための野積シートや帆布、米・穀物や食品原料を保管用、輸送用に充填するためのフレキシブルコンテナに用いるターポリンシート、果樹園農家で果樹の根周りに埋設囲張し、モグラやネズミなど害獣の侵入、根齧りを防止するためのメッシュシート、ゴミ収集場を被覆するカラス避けメッシュシート、家屋、ビル、スタジアム、大型娯楽施設、インフラ施設などの電線や通信回線などの屋内配線をネズミの咬害から守るためのケーブルカバーシートなどの咬害抑止シートにおいて、カラスや、ネズミなどの齧歯類動物がこれらのシートを突付いたり、齧ったりした場合、その初期段階で口内神経や視神経の苦痛を学習することで忌避効果が得られ、それによってこれらシート本体の損傷を最小限に抑えることが出来、シートの交換サイクルが長く、しかも強度保持に対する信頼性の高い咬害抑止シートを提供しようとするものである。
本発明者は、咬害抑止シートについて上記の現状に鑑みて研究、検討を重ねた結果、織物または編物を基布として、その少なくとも1面上に熱可塑性樹脂組成物からなる鳥獣忌避層を設けてなる刺激物質内包積層体において、鳥獣忌避層がカプサイシン含有マイクロカプセル粒子及び、特定の粒子径の粗粒珪素化合物粒子を特定の質量比で含み、鳥獣忌避層の質量に対するカプサイシン含有マイクロカプセル粒子の含有量を特定の質量%とすることにより、カラスや、ネズミなどの齧歯類動物がシートを突付いたり、齧ったりした場合、その初期段階で口内神経や視神経の苦痛を学習させることで忌避効果を得て、それによってシート本体の損傷を最小限に抑えることが出来、シートの交換サイクルを長くして、しかも強度保持に対する信頼性の高い咬害抑止シートが得られることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の咬害抑止シートは、織物または編物を基布として、その少なくとも1面上に熱可塑性樹脂組成物からなる鳥獣忌避層を設けてなる刺激物質内包積層体であって、前記鳥獣忌避層がカプサイシン含有マイクロカプセル粒子及び、平均粒子径10〜100μmの粗粒珪素化合物粒子を質量比1:2〜1:3の範囲で含み、前記鳥獣忌避層の質量に対する前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子の含有量が0.1〜5質量%であることが好ましい。これによって本発明の咬害抑止シートは、カラスや、ネズミなどの齧歯類動物がシートを突付いたり、齧ったりした場合、その初期段階で口内神経や視神経の苦痛を学習させることによる効果的忌避効果を得ることを可能とし、それによりシート本体の損傷を最小限に抑えることが出来るのでシートの交換サイクルが長くなり、しかも強度保持に対する信頼性を得ることができる。
本発明の咬害抑止シートは、前記粗粒珪素化合物粒子が、ガラス粉、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シリカ、珪砂、ゼオライト、及びシラスバルーンから選ばれた1種以上であることが好ましい。この粗粒珪素化合物粒子存在によって前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子の破壊効率が高くなり、その結果、初期段階で口内神経や視神経の苦痛を学習させることが可能となり、それによる効果的忌避効果を得ることでシート本体の損傷を最小限に抑えることが出来るので、シートの交換サイクルが長くなり、しかも強度保持に対する信頼性を得ることができる。
本発明の咬害抑止シートは、前記鳥獣忌避層上に、前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含有しない熱可塑性樹脂組成物による保護被覆層を有することが好ましい。この保護被覆層の存在によって前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子を降雨や直射日光からのストレスから保護することの効果によって長期間安定してマイクロカプセル粒子内にカプサイシン有効成分を保持させること、すなわち長期間安定した咬害抑止効果を得ることを可能とする。
本発明の咬害抑止シートは、前記保護被覆層が、ガラス粉、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シリカ、珪砂、ゼオライト、及びシラスバルーンから選ばれた1種以上の粗粒珪素化合物粒子を前記保護被覆層に対して0.1〜25質量%含有することが好ましい。この保護被覆層の存在によってカラスや、ネズミなどの齧歯類動物がシートを突付いたり、齧ったりした場合に、くちばしや歯への摩耗のストレスを鳥獣に負荷することで、より忌避効果を高め、シート本体の損傷を最小限に抑えることが出来るので、シートの交換サイクルが長くなり、しかも強度保持に対する信頼性を得ることができる。
本発明の咬害抑止シートは、前記鳥獣忌避層への物理的刺激により、前記粗粒珪素化合物粒子が前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子に圧接して剪断することでカプセルを破壊し、それによってカプサイシン化合物を効果的に放出することが好ましい。この作用によって前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子の破壊効率が高くなり、その結果、初期段階で口内神経や視神経の苦痛を学習させることが可能となり、それによる効果的忌避効果を得ることでシート本体の損傷を最小限に抑えることが出来るので、シートの交換サイクルが長くなり、しかも強度保持に対する信頼性を得ることができる。
本発明の咬害抑止シートによると、カラスや、ネズミなどの齧歯類動物が本発明のシートを突付いたり、齧ったりした場合、その初期段階で口内神経や視神経の苦痛を学習することで十分な忌避効果が得られ、それによってこれらシート本体の損傷を最小限に抑えることが出来、シートの交換サイクルが長く、しかも強度保持に対する信頼性の高いシートを得ることが出来るので、本発明の咬害抑止シートは、農作物、穀物、果実、野菜などの収穫物を鳥や齧歯類動物などによる食荒らし被害から守るための用途、米・穀物や食品原料を保管用、輸送用に充填するためのフレキシブルコンテナ用途、果樹の根周りに埋設し、モグラやネズミなど害獣の侵入、根齧りを防止するための用途、ゴミ収集場を被覆するカラス避け用途、家屋、ビル、スタジアム、大型娯楽施設、インフラ施設などの電線や通信回線などの屋内配線をネズミの咬害から守るための用途に適して用いることができる。
本発明の咬害抑止シートの断面の一例を示す図 本発明の咬害抑止シートの断面の一例を示す図
本発明の咬害抑止シートに用いる基布としては、合成繊維・天然繊維・半合成繊維・無機繊維またはこれらの2種類以上から成る混用繊維から製織された織物である。合成繊維としては、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエスエル繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維が挙げられる。天然繊維としては、木綿、麻が挙げられる。半合成繊維としては、アセテート、プロミックスが挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などが挙げられる。特に本発明においては合成繊維によるフィラメントヤーンまたはスパンヤーンによる平織物が好ましい。またはラッセル編の編物を用いる事もできる。基布は必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などが施されても良く、基布を構成する合成繊維の隙間にカプサイシン含有マイクロカプセル粒子を挿入するような浸責処理や固着処理が施されていてもよい。
本発明の咬害抑止シートに用いる基布で、フレキシブルコンテナ用途やケーブルカバー用途に適した物は、278〜1666dtex、好ましくは555〜1111dtexのフィラメントヤーンを用いた目抜け空隙率5%〜35%、好ましくは空隙率5%〜25%の平織り物である。また、メッシュシート用途に適したものは、222〜1666dtex、好ましくは555〜1111dtexのフィラメントヤーンを用いた目抜け空隙率5〜50%、好ましくは空隙率5%〜35%の平織物、模紗織物、またはラッセル織りの基布である。また、野積みシート用途に適したものは、10番手(591dtex)〜60番手(97dtex)の範囲のスパンヤーン、特に10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、24番手(246dtex)、30番手(197dtex)のスパンヤーンを用いた目抜け空隙率5%未満の平織り基布である。具体的に20番手単糸、または20番手双糸を用いて1インチ間に経糸50〜70本、緯糸40〜60本の織密度で含むスパン平織織布が適している。
本発明の咬害抑止シートに用いる鳥獣忌避層は、熱可塑性樹脂、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子、及び粗粒珪素化合物粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物によって構成される。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、およびフッ素含有共重合体樹脂などを単独で使用しても、2種類以上の樹脂を併用しても良い。これらの熱可塑性樹脂の中では、特に塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤等を配合した軟質塩化ビニル樹脂を包含する)を使用することが好ましい。本発明における鳥獣忌避層の形成にはこれらの熱可塑性樹脂組成物を熱溶融させて用いる加工方法、有機溶媒に溶解させて塗料として用いる加工方法(有機溶媒の除去を伴う)、エマルジョン化して塗料として用いる加工方法(水分の除去を伴う)にいずれも適用可能である。
カプサイシン含有マイクロカプセル粒子としては、カプリリックアシドバニリルアミド、ノナノイルバニリルアミド、デシリックアシドバニリルアミド、ノルジヒドロカプサイシンI、ジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンI、ノルジヒドロカプサイシンII、ホモジヒドロカプサイシンII、カプサイシン、ホモカプサイシンI、ホモカプサイシンIIなどから選ばれた1種以上のカプサイシン化合物を尿素系樹脂、やメラミン樹脂などの樹脂膜を壁材として被覆内包するマイクロカプセル粒子が好ましい。特に好ましいカプサイシンの種類は、壁材としてメラミン樹脂膜を使用してノナノイルバニリルアミドを被覆内包したものである。マイクロカプセル粒子の粒径範囲は10〜30μmのものが用いられる。マイクロカプセル粒子に含むカプサイシン成分の含有量は25〜35質量%が好ましい。鳥獣忌避層の質量に対するマイクロカプセル粒子の含有量は0.1〜5質量%であり、特に好ましい範囲は0.1〜1.5質量%である。マイクロカプセル粒子の含有量が0.1質量%未満だと、得られるシートの咬害抑止効果が不十分であり、また5質量%を超えるとブリード等によりカプサイシン含有マイクロカプセル粒子がシート表面に滲み出てくることや加工上の問題が発生する。
粗粒珪素化合物粒子としては、ガラス粉、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シリカ、珪砂、ゼオライト、シラスバルーン(ガラス質火山灰を焼成発泡させた中空体)から選ばれた1種以上の粒子状物を用いることができ、これら粗粒珪素化合物粒子の粒径範囲は10〜100μmのもの、特に50〜100μmの粒子状物が好ましく用いられる。これらの粒子状物の中でも特にガラス粉、シリカ、珪砂のような不定形粒子状物が好ましく、シリカの場合は二次粒子径(凝集粒子径)で50〜100μmの不定形粒子状物が好ましい。また、ガラスバルーン及びシラスバルーンなどの中空体粒子には、これらが砕けて断面が鋭利となった不定形粒子状物も包含する。鳥獣忌避層の質量に対する粗粒珪素化合物粒子の含有量は0.1〜25質量%であり、特に好ましい範囲は0.1〜15質量%である。粗粒珪素化合物粒子の含有量が0.1質量%未満だと、得られるシートの咬害抑止効果が不十分となることがあり、また25質量%を超えると、鳥獣忌避層が脆くなり、シートの耐久性を損なうことがある。
鳥獣忌避層にはカプサイシン含有マイクロカプセル粒子と、粗粒珪素化合物粒子とを質量比1:1〜1:5の併用で含むことが好ましい。特に質量比1:2〜1:3の併用が好ましい。カプサイシン含有マイクロカプセル粒子に対する粗粒珪素化合物粒子の質量比が1:2未満だと得られるシートの咬害抑止効果が不十分であり、また質量比が1:3を超えても鳥獣忌避層が脆くなり、シートの咬害抑止効果が不十分となることがある。この様な質量比率による粗粒珪素化合物粒子の存在によって、鳥獣が鳥獣忌避層を囓ることにより、粗粒珪素化合物粒子がカプサイシン含有マイクロカプセル粒子に圧接して剪断することでカプセルを効率的に破壊し、それによってカプサイシン化合物を放出することで即時的な鳥獣忌避効果を得ることを可能とする。
本発明の咬害抑止シートの鳥獣忌避層上には、屋外での長期使用時にカプサイシン含有マイクロカプセル粒子の保護、具体的には耐候劣化や有機成分の揮発、溶出等を防ぐ目的で、熱可塑性樹脂組成物による保護被覆層が設けられていることが好ましい。保護被覆層に用いられる熱可塑性樹脂組成物としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂などから選ばれた1種類以上の熱可塑性樹脂を主体とする組成物であり、これらにはカプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含有しない。保護被覆層としては特に塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤等を配合した軟質塩化ビニル樹脂を包含する)を使用することが好ましい。本発明の咬害抑止シートにおいて、鳥獣忌避層と保護被覆層の層厚比1.5:1〜9:1であり、特に2.3:1〜4:1が好ましい。保護被覆層の層厚比率が少ないと、屋外での長期使用時にカプサイシン含有マイクロカプセル粒子の耐候劣化や有効成分の揮発、溶出などを防ぐ効果が不十分となることがあり、また保護被覆層の層厚比率が大き過ぎると、得られるシートの咬害抑止効果が不十分となり、シートの咬害損傷を伴う。
上記保護被覆層には、ガラス粉、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シリカ、珪砂、ゼオライト、及びシラスバルーン(ガラス質火山灰を焼成発泡させた中空体)から選ばれた1種類以上の粗粒珪素化合物粒子を保護被覆層に対して、0.1〜25質量%含有することもできる。粗粒珪素化合物粒子の含有量が0.1質量%未満だと、得られるシートの咬害抑止効果が不十分となることがあり、また25質量%を超えると、保護被覆層が脆くなり、シートの耐久性を損なうことがある。これらの珪素化合物は鳥獣忌避層に用いた粗粒珪素化合物粒子と同一、または同種のものが使用できる。保護被覆層にも粗粒珪素化合物粒子を含有することにより、鳥獣が鳥獣忌避層を囓ることにより、粗粒珪素化合物粒子がカプサイシン含有マイクロカプセル粒子をより圧接して剪断する効果、カプセルの破壊効果、及びカプサイシン化合物の放出効果が高くなり、即時的な鳥獣忌避効果を得ることを可能とする。
本発明の咬害抑止シートの鳥獣忌避層および保護被覆層には、屋外で長時間の使用する為に、公知の紫外線吸収剤や光安定剤を適量配合すること、また野積みシート、フレキシブルコンテナ、メッシュシート、ケーブルカバーシートなどに用いる際に、対象物や内容物を火事から保護する為に公知の難燃剤や防炎剤を適量配合すること、シートの外観を維持する為に公知の防汚処理を施すことや公知の防黴剤や抗菌剤を適量配合するなど、公知の添加剤処方を応用することができる。特に鳥獣忌避層及び保護被覆層には、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子との相乗効果で、辛味成分、苦味成分、酸味成分などの神経刺激性、麻痺性を有する食品成分、化学物質、及びこれらを内包するマイクロカプセル粒子を併用すること、更には香料による匂い付けをすることもできる。
本発明の咬害抑止シートにおいて、野積みシート用途に用いる帆布の製造方法の一例を示すと、空隙率が5%以下のポリエステルスパン平織織布を基布として、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子及び粗粒珪素化合物粒子とを含有する軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物液浴中に基布を浸責し、回転ロールで圧絞した含浸処理基布を熱処理することで基布の両面に鳥獣忌避層を形成する方法、またはナイフコート、グラビア転写コート、ロータリースクリーンコート、クリアランスコートなどの公知の塗工方法によって表裏面に塗布した基布を熱処理する方法が挙げられる。またフレキシブルコンテナ用途やケーブルカバー用途に用いるターポリンの製造方法の一例を示すと、カレンダー成形法、またはTダイス押出法により成形されたカプサイシン含有マイクロカプセル粒子及び粗粒珪素化合物粒子とを含有するフィルム又はシートを、繊維基布の片面または両面に接着層を介在して積層する方法、あるいは繊維基布の目抜け空隙部を介して基布両面に熱ラミネート積層する方法により製造することが挙げられ、さらにディッピング下処理、またはコーティング下処理と、フィルム積層との組み合わせ方法などでもよい。またメッシュシートの製造方法の一例を示すと、空隙率が25〜50%のポリエステル平織粗目織布を基布として、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子及び粗粒珪素化合物粒子とを含有する軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物液浴中に基布を浸責し、回転ロールで圧絞した含浸処理基布を熱処理することで基布の両面に鳥獣忌避層を形成する方法、またはナイフコート、グラビア転写コート、ロータリースクリーンコート、クリアランスコートなどの公知の塗工方法によって表裏面に塗布した基布を熱処理する方法が挙げられる。鳥獣忌避層の質量は基布の質量に対して100質量%以上を有することが好ましい。基布の質量に対する鳥獣忌避層の質量が100質量%未満だと十分な鳥獣忌避効果が得られないことがある。
本発明を下記実施例および比較例によりさらに説明する。下記実施例および比較例においてシートの評価に用いた試験方法は下記の通りである。
試験(1)マウスによる齧り試験(目視による損傷評価)
供試動物(マウス、Mus musculus albino(ICR系)、10週齢)を個別飼育ゲージに入れ、3cm幅×30cmの試験片と供に8日間放置後、試験片の囓られた跡を観察し、1回目の評価を行った。評価方法は表1に記載の評価基準による。通常飼育によるインターバル3日を設け、同一供試動物による2回目の試験(8日間放置)を行い、再度通常飼育によるインターバル3日を設け、同一供試動物による3回目の試験(8日間放置)を行った。結果を表3に示した。
試験(2)シートの引張強さ測定
試験(1)の試験片の引張強さを、JIS L 1096に準じて測定し、試験(1)に供する前の引張強さに対する保持率を算出した。これを試験(1)の齧られた跡のダメージ評価とし、強度保持率90%以上を「咬害抑止効果良好:○」、75〜90%未満を「咬害抑止効果不満足:△」、75%未満を「咬害抑止効果が認められない:×」と判定した。
[実施例1]基布+1層・・・スパン基布+軟質PVCディップ(カプサイシン含有マイクロカプセル粒子/ガラス粉)
基布として下記組織のポリエステルスパン平織織布を用いた。
(591dtex×591dtex)/(48本/25.4mm×43本/25.4mm)、質量230g/m
この基布をカプサイシン含有マイクロカプセル粒子と、粗粒珪素化合物粒子としてガラス粉(粒子径12μm)を含有する表2[配合1]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、基布に樹脂液を300g/m含浸塗布させ、鳥獣忌避層を設けた帆布シートを作製した。カプサイシン含有マイクロカプセル粒子は日本化薬(株)の商品名:R-731(粒子径15〜25μm、有効成分NVA(N-ノナノイルバニルアミド)、有効成分量32質量%)を用いた。このようにして得られた帆布シートの評価結果を表3に示す。評価結果より実施例1の帆布シートは、農作物、穀物、果実、野菜などの収穫物を鳥や齧歯類動物などによる食荒らし被害から守るための野積シートに適している。
[実施例2]基布+1層・・・メッシュ基布+軟質PVCディップ(カプサイシン含有マイクロカプセル粒子/ガラスバルーン)
基布として下記組織のポリエステルフィラメント平織織布を用いた。
(555dtex×555dtex)/(3本/25.4mm×3本/25.4mm)、質量60g/m
この基布をカプサイシン含有マイクロカプセル粒子(日本化薬(株)製:商品名:R-731)と、粗粒珪素化合物粒子としてガラスバルーン(粒子径50μm)を含有する表2[配合2]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、基布に樹脂液を70g/m含浸塗布させ、鳥獣忌避層を設けたメッシュシートを作製した。このようにして得られたメッシュシートの評価結果を表3に示す。またこのメッシュシートはカラスの忌避効果についても評価した。評価結果より実施例2のメッシュシートは、果樹園農家で果樹の根周りに埋設囲張し、モグラやネズミなど害獣の侵入、根齧りを防止するためのメッシュシート、ゴミ収集場の被覆に用いるカラス避けメッシュシートに適している。
[参考例1]基布+1層・・・フィラメント基布+EVA(カプサイシン含有マイクロカプセル粒子/シリカ)
基布として下記組織のポリエステルフィラメント平織織布を用いた。
(1111dtex×1111dtex)/(17本/25.4mm×18本/25.4mm)、質量150g/m
この基布をカプサイシン含有マイクロカプセル粒子(日本化薬(株)製:商品名:R-731)と、粗粒珪素化合物粒子としてシリカ(2次粒子径18μm)を含有する表2[配合3]のEVA樹脂組成物からなるフィルム(厚み300μm:150g/m)をカレンダー機を用いて作製し、これを基布の両面に貼着して、鳥獣忌避層を設けたターポリンシートを作製した。このようにして得られたターポリンシートの評価結果を表3に示す。評価結果より参考例1のターポリンシートは、米・穀物や食品原料を保管用、輸送用に充填するためのフレキシブルコンテナ用、また家屋、ビル、スタジアム、大型娯楽施設、インフラ施設などの電線や通信回線などの屋内配線をネズミの咬害から守るためのケーブルカバーシートに適している。
[実施例3]基布+2層・・・スパン基布+軟質PVCディップ(カプサイシン含有マイクロカプセル粒子/ガラス粉)+軟質PVCディップ
基布として下記組織のポリエステルスパン平織織布を用いた。
(591dtex×591dtex)/(48本/25.4mm×43本/25.4mm)、質量230g/m
この基布をカプサイシン含有マイクロカプセル粒子(日本化薬(株)製:商品名:R-731 )と、粗粒珪素化合物粒子としてガラス粉(粒子径12μm)を含有す前述した表2[配合1]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、基布に樹脂液を240g/m含浸塗布させ、鳥獣忌避層を設けた。次にガラス粉のみ含有する表2[配合4]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、鳥獣忌避層の上に樹脂液を60g/m含浸塗布させ、保護被覆層を設けた帆布シートを作製した。このようにして得られた帆布シートの評価結果を表3に示す。評価結果より実施例の帆布シートは、農作物、穀物、果実、野菜などの収穫物を鳥や齧歯類動物などの食荒らし被害から守るための野積シートに適している。
[実施例4]基布+2層・・・メッシュ基布+軟質PVCディップ(カプサイシン含有マイクロカプセル粒子/ガラスバルーン)+軟質PVCディップ
基布として下記組織のポリエステルフィラメント平織織布を用いた。
(555dtex×555dtex)/(3本/25.4mm×3本/25.4mm)、質量60g/m
この基布をカプサイシン含有マイクロカプセル粒子(日本化薬(株)製:商品名:R-731)と、粗粒珪素化合物粒子としてガラスバルーン(粒子径50μm)を含有する表2[配合2]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、基布に樹脂液を70g/m含浸塗布させ、鳥獣忌避層を設けた。次にガラスバルーンのみ含有する表2[配合5]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、鳥獣忌避層の上に樹脂液を30g/m含浸塗布させ、保護被覆層を設けたメッシュシートを作製した。このようにして得られたメッシュシートの評価結果を表3に示す。評価結果より実施例のメッシュシートは、果樹園農家で果樹の根周りに埋設囲張し、モグラやネズミなど害獣の侵入、根齧りを防止するためのメッシュシート、ゴミ収集場の被覆に用いるカラス避けメッシュシートに適している。
[参考例2]基布+2層・・・フィラメント基布+EVA(カプサイシン含有マイクロカプセル粒子/シリカ)
基布として下記組織のポリエステルフィラメント平織織布を用いた。
(1111dtex×1111dtex)/(17本/25.4mm×18本/25.4mm)、質量150g/m
この基布をカプサイシン含有マイクロカプセル粒子(日本化薬(株)製:商品名:R-731)と、粗粒珪素化合物粒子としてシリカ(2次粒子径18μm)を含有する表2[配合3]のEVA樹脂組成物からなるフィルム(厚み300μm:150g/m)をカレンダー機を用いて作製し、これを基布の両面に貼着して、鳥獣忌避層を設けた。次にガラスバルーンのみ含有する表2[配合6]のEVA樹脂組成物からなるフィルム(厚み150μm:75g/m)をカレンダー機を用いて作製し、これを鳥獣忌避層の両面に貼着して、保護被覆層を設けたターポリンシートを作製した。このようにして得られたターポリンシートの評価結果を表3に示す。評価結果より参考例2のターポリンシートは、米・穀物や食品原料を保管用、輸送用に充填するためのフレキシブルコンテナ用、また家屋、ビル、スタジアム、大型娯楽施設、インフラ施設などの電線や通信回線などの屋内配線をネズミの咬害から守るためのケーブルカバーシートに適している。
[比較例1]スパン基布+軟質PVCディップ(ガラス粉)
基布として下記組織のポリエステルスパン平織織布を用いた。
(591dtex×591dtex)/(48本/25.4mm×43本/25.4mm)、質量230g/m
この基布をガラス粉(粒子径12μm)のみを含有する表2[配合7]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、基布に樹脂液を300g/m含浸塗布させ、軟質塩化ビニル樹脂層を設けた。このようにして得られた帆布シートの評価結果を表3に示す。
[比較例2]スパン基布+軟質PVCディップ(カプサイシン含有マイクロカプセル粒子)
基布として下記組織のポリエステルスパン平織織布を用いた。
(591dtex×591dtex)/(48本/25.4mm×43本/25.4mm)、質量230g/m
この基布をカプサイシン含有マイクロカプセル粒子(日本化薬(株)製:商品名:R-731)のみを含有する表2[配合8]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、基布に樹脂液を300g/m含浸塗布させ、鳥獣忌避層を設けた。このようにして得られた帆布シートの評価結果を表3に示す。
[比較例3]スパン基布+軟質PVCディップ(カプサイシン含有マイクロカプセル粒子+5μmガラス粉)
基布として下記組織のポリエステルスパン平織織布を用いた。
(591dtex×591dtex)/(48本/25.4mm×43本/25.4mm)、質量230g/m
この基布をカプサイシン含有マイクロカプセル粒子(日本化薬(株)製:商品名:R-731)と粒子径2μmのガラス粉を含有する表2[配合9]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、基布に樹脂液を300g/m含浸塗布させ、鳥獣忌避層を設けた。このようにして得られた帆布シートの評価結果を表3に示す。
[比較例4]スパン基布+軟質PVCディップ(カプサイシン含有マイクロカプセル粒子+200μmガラス粉)
基布として下記組織のポリエステルスパン平織織布を用いた。
(591dtex×591dtex)/(48本/25.4mm×43本/25.4mm)、質量230g/m
この基布をカプサイシン含有マイクロカプセル粒子(日本化薬(株)製:商品名:R-731)と粒子径200μmのガラス粉を含有する表2[配合10]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、基布に樹脂液を300g/m含浸塗布させ、鳥獣忌避層を設けた。このようにして得られた帆布シートの評価結果を表3に示す。
[比較例5]スパン基布+軟質PVCディップ(カプサイシン含有マイクロカプセル粒子とガラス粉の質量比率1:0.5)
基布として下記組織のポリエステルスパン平織織布を用いた。
(591dtex×591dtex)/(48本/25.4mm×43本/25.4mm)、質量230g/m
この基布をカプサイシン含有マイクロカプセル粒子(日本化薬(株)製:商品名:R-731)とガラス粉(粒子径12μm)を質量比率1:0.5で含有する表2[配合11]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、基布に樹脂液を300g/m含浸塗布させ、鳥獣忌避層を設けた。このようにして得られた帆布シートの評価結果を表3に示す。
[比較例6]基布+1層・・・スパン基布+軟質PVCディップ(カプサイシン含有マイクロカプセル粒子とガラス粉の質量比率1:20)
基布として下記組織のポリエステルスパン平織織布を用いた。
(591dtex×591dtex)/(48本/25.4mm×43本/25.4mm)、質量230g/m
この基布をカプサイシン含有マイクロカプセル粒子(日本化薬(株)製:商品名:R-731)とガラス粉(粒子径12μm)を質量比率1:20で含有する表2[配合12]の軟質塩化ビニル樹脂組成物液浴中に浸責し、基布に樹脂液を300g/m含浸塗布させ、鳥獣忌避層を設けた。このようにして得られた帆布シートの評価結果を表3に示す。

マウスによる齧り試験の結果、実施例1〜6で得られた各種シートは全て1回目の試験では基布の露出を認める程度の損傷を伴う咬み跡を認めたが、シート本体の強度を90%以上保持しており実使用に問題の無いレベルであった。2回目の試験を行ったところ、実施例1〜6のシートには早い段階での忌避効果が見られマウスの咬み跡は認められなかった。3回目の試験は2回目の試験同様良好な忌避効果が認められた。これに対し比較例2〜6のシートでは1回目の試験でマウスに囓られて基布に部分的な損傷を発生したため、シート本体の強度保持率は75〜90%未満と、実使用において安全性を欠くものであった。比較例2〜6のシートで2回目の試験を行ったところ、比較例2〜6のシートには基布の露出を認めない程度の歯形損傷があったがシート本体の強度を90%以上保持しており実使用には問題の無いレベルであった。そして3回目の試験でようやく忌避効果が見られマウスの咬み跡は比較例2〜6のシートで認められなかった。特にカプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含有しない比較例1のシートでは全く咬害抑止効果の得られないものであり、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子は含有するが、粗粒珪素化合物粒子を含有しない比較例2のシートでは忌避効果レベルは比較例3〜6と同等ではあったが、外観上の歯形損傷は比較例2〜6の中では最も多い結果となった。これは粗粒珪素化合物粒子によるカプサイシン含有マイクロカプセル粒子の圧接剪断破壊効果が得られないためである。これらの結果より本発明の咬害抑止シートは、鳥獣忌避層がカプサイシン含有マイクロカプセル粒子と、特定の平均粒子径の粗粒珪素化合物粒子を特定の質量比で特定量を含むことによって、従来のカプサイシン含有マイクロカプセル粒子のみを含有する鳥獣忌避層に比較して明らかに早い段階での忌避効果を発現することができるので、従ってネズミ(マウス)による咬害損傷が少なくなり、シート本体の強度を維持したまま長期間の使用に供することができる。
また、カラスに対する齧り試験(忌避試験)は、実施例2のメッシュシート2m(タテ)×2m(ヨコ)サイズと、実施例2のメッシュシートの鳥獣忌避層から粗粒珪素化合物粒子を省いた鳥獣忌避層による比較用のメッシュシート2m(タテ)×2m(ヨコ)サイズを社内敷地のコンクリート製ゴミ集積場(幅2m×長さ4m)を隙間無く覆うように隣接して緊張状態に設置し、地表には豚バラ肉30g×32個を2m×4mのエリア内に45cm間隔で並べた。(幅列4個、長さ列8個)これらの豚バラ肉とメッシュシートとの間隔は全て10cmとして多数のカラスが乗っても沈まないよう吊具固定した。この試験設備ではメッシュシートの隙間から豚バラ肉が見えて、しかも臭気が周囲に放散される状態であった。朝の空腹時をターゲットに試験を行ったところ、7時45分に付近を生活範囲とする複数のハシブトガラス(嘴太鴉)が集まり出し、その時点では両方のメッシュシートエリアともに差異なくカラスが群がり、メッシュシートを突付き、カラスは両方のメッシュシート上を行き来してメッシュシートを突付いたり齧ったりしていた。飛来5分後のビデオ撮影での瞬間的カウント数は実施例2のメッシュシート側3羽、比較用メッシュシート側5羽であり、10分後の瞬間的カウントでは実施例2のメッシュシート側1羽、比較用メッシュシート側5羽であり、2羽はゴミ集積場周りを徘徊していた。飛来から15分経過時点ではゴミ集積場周りを徘徊しては時折数羽がゴミ集積場戻り、メッシュシートを突付いたり齧ったりを繰り返していた。1〜15分までの1分毎の瞬間的カウントの累積(15分間)は実施例2のメッシュシート側が38%の占有率を占めていたことから実施例2のメッシュシートは100%−38%=62%のカラス忌避効果があったものと見做すことができる。詳細は実施例2のメッシュシート側の1分間隔での瞬間カウント総計28(個体数:4、3、5、4、3、2、1、2、1,1、0、0,1、0、0)、比較用メッシュシート側総計47(個体数:4、5、3、4、5、4、3、4、3、3、3、2、2、1、1)で、特に飛来5分以後の11分間の累積では実施例2のメッシュシート側のカウント総計12、比較用メッシュシート側の総計31であり、実施例2のメッシュシート側が28%の占有率を占めていたことから実施例2のメッシュシートは100%−28%=72%のカラス忌避効果があったものと見做すことができる。以上の結果より本発明の咬害抑止シートは、開始直後のカラスの忌避効果は比較用シートと同等であるが、両方のメッシュシートを突付いたり齧ったりする間の初期段階に、本発明の咬害抑止シート方を忌避して比較用シートの方に集まる傾向が認められた。そして試験開始から26分後には試験設備周辺からカラスはすべて居なくなり、カラスは電線など遠巻きに散在し、時折数羽が飛来して試験設備周りを徘徊したが、どちらのメッシュシートに対しても突付いたり、齧ったりするような仕草は認めらなかった。30分で試験を終了し、個々のメッシュシート外観を確認したところ、比較用メッシュシートは基布の一部が露出するような損傷が18ヶ所を認めたが、実施例2のメッシュシートではそのような損傷は3ヶ所のみであった。これよりも程度の軽い傷痕(突付いた傷、齧った傷)の数で評価しても実施例2のメッシュシートの方が少ない傾向が認められた。この結果より本発明の咬害抑止シートは比較用のメッシュシートと同量のカプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含有しているにも拘らず、本発明の咬害抑止シートのみが鳥獣忌避層に粗粒珪素化合物粒子を含有することによって、粗粒珪素化合物粒子が隣接するカプサイシン含有マイクロカプセル粒子を圧接剪断することで効率的に破壊し、カプサイシン刺激物を効果的に放散することによって早い段階でカラスを遠ざける効果を有している。従って同量のカプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含有することで最終的には両方のメッシュシート共にカラスの忌避効果を発揮するものではあるが、本発明の咬害抑止シートではカラスが数回齧ったり、突付いたりするだけで忌避効果が得られるのでシート外観ダメージが少ない状態でカラスを遠ざけることが可能である。
本発明の咬害抑止シートは、カラスや、ネズミなどの齧歯類動物がシートを突付いたり、齧ったりした場合、その初期段階で口内神経や視神経の苦痛を学習することで忌避効果が得られ、それによってこれらシート本体の損傷を最小限に抑えることが出来、シートの交換サイクルが長く、しかも強度保持に対する信頼性の高いので、農作物、穀物、果実、野菜などの収穫物を鳥や齧歯類動物などによる食荒らし被害から守るための野積シートや帆布、米・穀物や食品原料を保管用、輸送用に充填するためのフレキシブルコンテナに用いるターポリンシート、果樹園農家で果樹の根周りに埋設囲張し、モグラやネズミなど害獣の侵入、根齧りを防止するためのメッシュシート(この用途では透水性や土中通気性を確保するためにメッシュが好ましい。)、ゴミ収集場を被覆するカラス避けメッシュシート(この用途では軽量で取り扱い性に優れ、中の状態が目視できるメッシュが好ましい。)、家屋、ビル、スタジアム、大型娯楽施設、インフラ施設などの電線や通信回線などの屋内配線をネズミの咬害から守るためのケーブルカバーシートなどの利用に適している。
1 基布
2 熱可塑性樹脂組成物
3 カプサイシン含有マイクロカプセル粒子
4 粗粒珪素化合物粒子
5 保護被覆層(熱可塑性樹脂組成物)

Claims (4)

  1. 織物または編物を基布として、その少なくとも1面上に熱可塑性樹脂組成物からなる鳥獣忌避層を設けてなる刺激物質内包積層体であって、前記鳥獣忌避層がカプサイシン含有マイクロカプセル粒子及び、平均粒子径10〜100μmの粗粒珪素化合物粒子を質量比1:2〜1:3の範囲で含み、前記粗粒珪素化合物粒子が、ガラス粉、ガラスビーズ、ガラスバルーン、珪砂、ゼオライト、及びシラスバルーンから選ばれた1種以上であり、さらに前記鳥獣忌避層の質量に対する前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子の含有量が0.1〜5質量%であることを特徴とする咬害抑止シート。
  2. 前記鳥獣忌避層上に、前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含有しない熱可塑性樹脂組成物による保護被覆層を有する請求項1に記載の咬害抑止シート。
  3. 前記保護被覆層が、ガラス粉、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シリカ、珪砂、ゼオライト、及びシラスバルーンから選ばれた1種以上の粗粒珪素化合物粒子を前記保護被覆層に対して0.1〜25質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の咬害抑止シート。
  4. 前記鳥獣忌避層への物理的刺激により、前記粗粒珪素化合物粒子が前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子に圧接して剪断することでカプセルを破壊し、それによってカプサイシン化合物を効果的に放出する請求項1〜3のいずれか1項に記載の咬害抑止シート。
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