JP5376064B2 - 内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に関する。
内燃機関は、燃焼室に燃料および空気が供給されて、燃焼室にて燃料が燃焼することにより駆動力を出力する。燃焼室において燃料を燃焼させるときには、空気と燃料との混合気を圧縮した状態になる。内燃機関の圧縮比は、出力および燃料消費量に影響を与えることが知られている。圧縮比を高くすることにより出力トルクを大きくしたり、燃料消費量を少なくしたりすることができる。
特開2000−230439号公報には、燃焼室に圧力調整弁を介して通じる副室を設け、圧力調整弁は、弁体と弁体に接続されて燃焼室側に付勢された弁棒とを有する自着火式の内燃機関が開示されている。この自着火式の内燃機関は、過早着火等により燃焼圧が所定の許容圧値を超えた場合に、弾性体の圧力に抗して圧力調整弁を押し上げて副室に圧力を逃すことが開示されている。この公報には、過早着火等が生じる圧力よりも大きな圧力で圧力調整弁が動くことが開示されている。また、この公報においては、燃焼室に通じる副室が形成され、副室に上下に移動可能な副ピストンが挿入されている内燃機関が開示されている。副ピストンは、機械ばねで押圧されている。燃料が燃焼した時に、燃焼室の圧力により機械ばねが縮んで副ピストンが上昇し、燃焼室に通じる副室の容積が大きくなることが開示されている。
特開2000−213375号公報においては、ピストンが上死点に停止する割合を大幅に低減させて、エンジンの始動性を向上させる内燃機関が開示されている。この内燃機関においては、イグニションスイッチを停止位置にすると、電子制御装置が吸気絞り弁の絞り開度を零にする全閉制御を行なう。この内燃機関では、エンジン惰性回転数が予め設定された回転数以上にある間は吸気絞り弁の絞り開度を零にする制御を継続する。電子制御装置は、エンジン惰性回転数が予め設定された回転数を下回ると、吸気絞り弁の絞り開度を零より大きくする制御を行なうことが開示されている。
特開2002−039038号公報においては、スタータを用いることなく自己始動が可能なエンジン始動装置が開示されている。このエンジン始動装置は、コントロールユニットが膨張行程にある気筒を検出し、燃料を噴射および点火してエンジンを再始動させる。コントロールユニットは、膨張行程の気筒の燃料噴射および点火時に、圧縮行程の気筒の吸気弁が開くように、バルブタイミング位相可変機構による吸気弁の閉時期を制御することが開示されている。
特開2000−230439号公報 特開2000−213375号公報 特開2002−039038号公報 特開2006−112366号公報 特開2009−215995号公報 特開2008−247128号公報
燃料が燃焼したときの燃焼室の圧力を制御する装置は、燃焼室の圧力が上昇したときに縮む部材として、上記の特開2000−230439号公報に開示されている機械ばねの他に、気体が封入された気体ばねを採用することができる。気体ばねは、内部の気圧を高くすることにより、燃焼室の高い圧力に容易に対応することができる。すなわち、気体ばねを採用することにより、容易に弾性を強くすることができる。
ところが、燃焼室の圧力を制御する装置に気体ばねを採用することにより、気体ばねに封入されている気体が漏れて燃焼室に流入する場合があった。例えば、内燃機関の停止期間中に、気体ばねに封入されている空気が徐々に漏れて燃焼室に流入する場合がある。この場合に、燃焼室が密閉された状態であると、燃焼室に貯留されている気体の量が増加する。また、燃焼室の圧力が上昇する。燃焼室の圧力が上昇した状態で、始動機により内燃機関を始動させようとしても、燃焼室の圧力が更に高くなってしまい始動しにくくなるという問題があった。
また、気体ばねの空気が燃焼室に漏れて、燃焼空燃比が変化してしまう場合があった。すなわち、所望の空気よりも多くの空気が燃焼室に供給され、所望の空燃比よりも高い空燃比にて燃焼が行われる場合があった。
このように、気体ばねを備える燃焼室の圧力を制御する装置において、気体ばねから燃焼室に気体が漏れることにより内燃機関の運転が不安定になるという問題があった。
本発明は、燃焼室の圧力を制御する気体ばねを備え、安定した運転を行なうことができる内燃機関を提供することを目的とする。
本発明の内燃機関は、気体が圧縮されることにより弾性を有する気体ばねを含み、燃焼室の圧力が予め定められた制御圧力に到達したときに、燃焼室の圧力変化を駆動源として気体ばねが縮むことにより燃焼室の容積または燃焼室に連通する空間の容積が変化する容積可変装置を備える。内燃機関は、気体ばねから燃焼室に気体が漏れたことを検出する漏れ検出装置と、気体の漏れにより生じる運転状態への影響を補正する補正制御を行う補正制御装置とを備える。内燃機関は、漏れ検出装置により気体ばねから燃焼室への気体の漏れを検出した場合に補正制御を行う。
上記発明においては、漏れ検出装置は、気体ばねから燃焼室への気体の漏れ量を推定するように形成されており、内燃機関が停止しているときに燃焼室が密閉されている気筒を検出し、燃焼室が密閉されている気筒において、内燃機関が停止している期間における気体ばねの気体の漏れ量を推定し、推定した漏れ量が予め定められた判定値よりも大きい場合に、内燃機関を始動すべきときに補正制御を行うことが好ましい。
上記発明においては、漏れ検出装置は、内燃機関が停止している時間を検出し、停止している時間に基づいて気体ばねの気体の漏れ量を推定することが好ましい。
上記発明においては、要求される負荷が零の期間に、燃焼室における燃焼を一時的に停止させる停止装置を備え、停止装置が燃焼室における燃焼を停止した場合に、補正制御を禁止することが好ましい。
上記発明においては、使用者が燃焼室における燃焼の開始および停止を切替える切替え装置と、切替え装置により燃焼室における燃焼を停止した場合に、予め定められた時間内に燃焼室における燃焼を開始するか否かを予測する再始動予測装置とを備え、再始動予測装置が予め定められた時間内に燃焼室における燃焼を開始すると予測した場合に、補正制御を禁止することが好ましい。
上記発明においては、内燃機関を始動すべきときに燃焼室の圧力を低下させる補正制御を行うことが好ましい。
上記発明においては、燃焼室における燃焼空燃比を調整する空燃比調整装置を備え、漏れ検出装置は、気体ばねから燃焼室への気体の漏れ量を推定するように形成されており、漏れ検出装置により推定した気体の漏れ量に基づいて、燃焼室における燃焼空燃比を調整する補正制御を行うことが好ましい。
上記発明においては、内燃機関が停止したときのピストンの停止位置を調整する停止位置調整装置を備え、内燃機関を停止すべきときに、停止位置調整装置により圧縮行程の吸気弁が閉じる位置からピストンが圧縮上死点に到達するまでの区間を避けて、ピストンを停止させる補正制御を行うことが好ましい。
上記発明においては、気体ばねに気体を供給する気体供給装置を備え、内燃機関が停止しているときに、圧縮行程の吸気弁が閉じる位置からピストンが圧縮上死点に到達するまでの区間内にて停止している特定気筒を検出し、内燃機関の始動を開始した1回目の燃焼サイクルにおいて、特定気筒の気体ばねに気体の供給を行うことを禁止する補正制御を行うことが好ましい。
上記発明においては、内燃機関を始動すべきときに開閉が可能な吸気弁および内燃機関を始動すべきときに開閉が可能な排気弁のうち少なくとも一方を備え、内燃機関を始動すべきときに、吸気弁および排気弁のうち少なくとも一方の弁を開くことにより、燃焼室の圧力を低下させる補正制御を行うことが好ましい。
上記発明においては、内燃機関を始動するための始動機を備え、始動機は、内燃機関の出力軸を逆回転させるように形成されており、内燃機関を始動すべきときに、始動機により出力軸を逆回転させて、吸気弁および排気弁のうち少なくとも一方を開いて燃焼室の圧力を低下させる補正制御を行うことが好ましい。
上記発明においては、内燃機関を始動するための始動機を備え、始動機は、内燃機関を始動させる駆動力が可変に形成されており、内燃機関を始動すべきときに、始動機により第1の駆動力にて始動を開始した後に、第1の駆動力よりも小さな第2の駆動力により始動を継続する補正制御を行うことが好ましい。
上記発明においては、燃焼室において燃料が燃焼するときの圧縮比を変更する圧縮比可変装置を備え、内燃機関を始動すべきときに、圧縮比可変装置により燃焼室における圧縮比を低下させる補正制御を行うことが好ましい。
本発明によれば、燃焼室の圧力を制御する気体ばねを備え、安定した運転を行なうことができる内燃機関を提供することができる。
実施の形態1における内燃機関の概略図である。 実施の形態1における内燃機関を複数の気筒が並ぶ方向に切断したときの概略断面図である。 実施の形態1における内燃機関の気体ばねの部分の拡大概略断面図である。 クランク角度と燃焼室の圧力との関係を説明するグラフである。 実施の形態1における内燃機関の燃焼サイクルの行程図である。 実施の形態1における内燃機関の圧縮比可変機構の機能の説明図である。 実施の形態1における停止位置調整制御のフローチャートである。 実施の形態1における内燃機関の圧縮行程における圧力上昇を説明するグラフである。 実施の形態1における第1の漏れ検出制御のフローチャートである。 実施の形態1における内燃機関を停止すべきときに行う制御のフローチャートである。 実施の形態1における第2の漏れ検出制御のフローチャートである。 実施の形態1における第1の補正禁止制御のフローチャートである。 実施の形態1における内燃機関を停止すべきときに行う制御のフローチャートである。 実施の形態1における車線維持支援装置、車両用ナビゲーション装置、およびイグニッションスイッチの説明図である。 実施の形態1における第2の補正禁止制御のフローチャートである。 実施の形態1における第3の補正禁止制御のフローチャートである。 実施の形態1における他の容積可変装置を含むピストンの破断斜視図である。 実施の形態2における第1の補助制御のフローチャートである。 実施の形態2における第1の補助制御のタイムチャートである。 実施の形態2における第2の補助制御を行う排気弁の拡大概略断面図である。 実施の形態2における第2の補助制御のフローチャートである。 実施の形態2における第2の補助制御のタイムチャートである。 始動時の燃焼室の圧力と始動時間との関係を説明するグラフである。 実施の形態2における第3の補助制御を行う内燃機関の燃焼サイクルの行程図である。 実施の形態2における第3の補助制御を行う始動機の概略図である。 実施の形態2における第3の補助制御のフローチャートである。 実施の形態2における第3の補助制御のタイムチャートである。 実施の形態2における第4の補助制御を行う始動機の概略図である。 実施の形態2における第4の補助制御のフローチャートである。 実施の形態2における第4の補助制御のタイムチャートである。 実施の形態2における第5の補助制御を行う内燃機関の圧縮比可変機構の概略斜視図である。 実施の形態2における第5の補助制御を行う燃焼室の部分の概略断面図である。 実施の形態2における第5の補助制御を行う燃焼室の部分の他の概略断面図である。 実施の形態2における第5の補助制御のフローチャートである。 実施の形態2における第5の補助制御のタイムチャートである。 実施の形態2における第1の漏れ検出制御のフローチャートである。 実施の形態2における内燃機関の始動時に行う制御のフローチャートである。 実施の形態2における第2の漏れ検出制御のフローチャートである。 実施の形態2における第3の漏れ検出制御のフローチャートである。 内燃機関が停止してからの経過時間と気体ばねの漏れ空気重量との関係を示すグラフである。 実施の形態2における第4の漏れ検出制御のフローチャートである。 ピストンの停止位置が燃焼室の圧力に与える影響を説明するグラフである。 燃焼室の壁面の温度が燃焼室の圧力に与える影響を説明するグラフである。 内燃機関が停止したときの初期の燃焼室の圧力が、内燃機関が停止した後の燃焼室の圧力に与える影響を説明するグラフである。 気体ばねのガス室の圧力が燃焼室の圧力に与える影響を説明するグラフである。 ピストンリングの劣化が燃焼室の圧力に与える影響を説明するグラフである。 実施の形態2における内燃機関の始動時に行う制御のフローチャートである。 実施の形態2における第1の補正禁止制御のフローチャートである。 実施の形態2における第2の補正禁止制御のフローチャートである。 実施の形態3における内燃機関の燃焼室の部分の概略断面図である。 実施の形態3における始動時の空燃比制御のフローチャートである。 実施の形態3における運転期間中の空燃比制御のフローチャートである。 実施の形態3における燃焼空燃比と始動時間との関係を示すグラフである。
実施の形態1
図1から図17を参照して、実施の形態1における内燃機関について説明する。本実施の形態においては、車両に配置されている内燃機関を例に取り上げて説明する。
図1は、本実施の形態における内燃機関の概略図である。本実施の形態における内燃機関は、火花点火式である。内燃機関は、機関本体1を備える。機関本体1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド4とを含む。シリンダブロック2の内部には、ピストン3が配置されている。ピストン3は、シリンダブロック2の内部で往復運動する。本発明においては、ピストンが圧縮上死点に達したときにピストンの冠面とシリンダヘッドとに囲まれる気筒内の空間および、任意の位置にあるピストンの冠面とシリンダヘッドとに囲まれる気筒内の空間を燃焼室と称する。
燃焼室5aは、それぞれの気筒ごとに形成されている。燃焼室5aには、機関吸気通路および機関排気通路が接続されている。機関吸気通路は、燃焼室5aに空気または燃料と空気との混合気を供給するための通路である。機関排気通路は、燃料の燃焼により生じた排気ガスを燃焼室5aから排出するための通路である。
シリンダヘッド4には、吸気ポート7および排気ポート9が形成されている。吸気弁6は吸気ポート7の端部に配置され、燃焼室5aに連通する機関吸気通路を開閉可能に形成されている。排気弁8は、排気ポート9の端部に配置され、燃焼室5aに連通する機関排気通路を開閉可能に形成されている。シリンダヘッド4には、点火装置としての点火プラグ10が固定されている。点火プラグ10は、燃焼室5aにて燃料を点火するように形成されている。
本実施の形態における内燃機関は、燃焼室5aに燃料を供給するための燃料噴射弁11を備える。本実施の形態における燃料噴射弁11は、吸気ポート7に燃料を噴射するように配置されている。燃料噴射弁11は、この形態に限られず、燃焼室5aに燃料を供給できるように配置されていれば構わない。たとえば、燃料噴射弁は、燃焼室5aに直接的に燃料を噴射するように配置されていても構わない。
燃料噴射弁11は、電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ29を介して燃料タンク28に接続されている。燃料タンク28内に貯蔵されている燃料は、燃料ポンプ29によって燃料噴射弁11に供給される。
各気筒の吸気ポート7は、対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結されている。サージタンク14は、吸気ダクト15およびエアフローメータ16を介してエアクリーナ(図示せず)に連結されている。吸気ダクト15には、吸入空気量を検出するエアフローメータ16が接続されている。吸気ダクト15の内部には、ステップモータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置されている。一方、各気筒の排気ポート9は、対応する排気枝管19に連結されている。排気枝管19は、触媒コンバータ21に連結されている。本実施の形態における触媒コンバータ21は、三元触媒20を含む。触媒コンバータ21は、排気管22に接続されている。
本実施の形態における内燃機関は、電子制御ユニット31を備える。本実施の形態における電子制御ユニット31は、デジタルコンピュータを含む。電子制御ユニット31は、双方向バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、入力ポート36および出力ポート37を含む。
エアフローメータ16は、燃焼室5aに吸入される吸入空気量に比例した出力電圧を発生する。この出力電圧は、対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。アクセルペダル40には、負荷センサ41が接続されている。負荷センサ41は、アクセルペダル40の踏込量に比例した出力電圧を発生する。この出力電圧は、対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
クランク角センサ42は、クランクシャフトが、例えば所定の角度を回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスは入力ポート36に入力される。クランク角センサ42の出力により、機関回転数を検出することができる。また、クランク角センサ42の出力により、クランク角度を検出することができる。たとえば、第1気筒の圧縮上死点を0°としたときのクランク角度を検出することができる。すなわち、クランクシャフトの回転角度を検出することができる。サージタンク14には、機関吸気通路の空気の圧力を検出する圧力センサ43が配置されている。圧力センサ43の出力は、対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
電子制御ユニット31の出力ポート37は、それぞれの対応する駆動回路39を介して燃料噴射弁11および点火プラグ10に接続されている。本実施の形態における電子制御ユニット31は、燃料噴射制御や点火制御を行うように形成されている。すなわち、燃料を噴射する時期および燃料の噴射量が電子制御ユニット31により制御される。更に点火プラグ10の点火時期が電子制御ユニット31により制御されている。また、出力ポート37は、対応する駆動回路39を介して、スロットル弁18を駆動するステップモータ17および燃料ポンプ29に接続されている。これらの機器は、電子制御ユニット31により制御されている。
吸気弁6は、吸気カム91が回転することにより開閉するように形成されている。排気弁8は、排気カム92が回転するようことにより開閉するように形成されている。本実施の形態における内燃機関は、吸気弁6の開閉時期を変更する可変バルブタイミング装置93を備える。また、本実施の形態における内燃機関は、排気弁8の開閉時期を変更する可変バルブタイミング装置94を備える。本実施の形態における可変バルブタイミング装置93,94は、それぞれのカムの回転軸に接続されている。
図2に、本実施の形態における内燃機関の概略断面図を示す。図2は、複数の気筒が並ぶ方向に機関本体を切断したときの断面図である。本実施の形態における内燃機関は、4気筒である。第1気筒、第2気筒、第3気筒および第4気筒が、この順に配置されている。それぞれの気筒には、燃焼室5a〜5dが形成されている。それぞれの気筒に配置されているピストン3は、コネクティングロッド45に接続されている。コネクティングロッド45は、クランクシャフト46に接続されている。クランクシャフト46は、回転可能なようにシリンダブロック2に支持されている。
本実施の形態における内燃機関は、燃料が燃焼したときの燃焼室の圧力を制御する燃焼圧力制御装置を備える。本実施の形態における燃焼圧力制御装置は、燃焼室に連通する空間の容積が変化する容積可変装置を備える。容積可変装置は、気体ばね50a〜50dを含む。気体ばね50a〜50dは、それぞれの気筒において燃焼室5a〜5dに接続されている。本実施の形態における内燃機関は、それぞれの燃焼室5a〜5dに連通する空間としての副室60を有する。本実施の形態における容積可変装置は、副室60の容積が変化する。
図3に、本実施の形態における気体ばねの部分の拡大概略断面図を示す。図3は、複数の気筒が並ぶ方向に燃焼室を切断したときの概略断面図である。図3には、第1気筒の概略断面図が示されているが、第2気筒から第4気筒も同様の構成を有する。
本実施の形態における容積可変装置は、燃焼室5aの圧力が制御圧力に到達したときに、燃焼室5aの圧力変化を駆動源として副室60の容積が変化する。すなわち、容積可変装置は、燃焼室5aの圧力が変化することにより作動する。本発明における制御圧力は、容積可変装置が作動し始めるときの燃焼室の圧力である。すなわち、副室用ピストン55が移動し始める時の燃焼室の圧力である。容積可変装置は、燃焼室5aの圧力が異常燃焼の発生圧力以上になることを抑制する。本実施の形態においては、燃焼室5aの圧力が異常燃焼の発生する圧力以上にならないように制御圧力を定めている。
本発明における異常燃焼は、たとえば、点火装置により混合気が点火し、点火した点から順次燃焼が伝搬する状態以外の燃焼を含む。異常燃焼は、たとえば、ノッキング現象、デトネーション現象およびプレイグニッション現象を含む。ノッキング現象は、スパークノック現象を含む。スパークノック現象は、点火装置において点火し、点火装置を中心に火炎が広がっているときに、点火装置から遠い位置にある未燃燃料を含む混合気が自着火する現象である。点火装置から遠い位置にある混合気は、点火装置の近傍の燃焼ガスにより圧縮されて高温高圧になって自着火する。混合気が自着火するときに衝撃波が発生する。
デトネーション現象は、高温高圧の混合気の中を衝撃波が通過することにより、混合気が着火する現象である。この衝撃波は、たとえば、スパークノック現象によって発生する。
プレイグニッション現象は、早期着火現象とも言われる。プレイグニッション現象は、点火プラグの先端の金属または燃焼室内に堆積するカーボンスラッジ等が加熱されて、所定の温度以上を維持した状態になり、この部分を火種として点火時期の前に燃料が着火して燃焼する現象である。
気体ばね50aは、内部に気体を密閉することにより弾性を有するように形成されている。気体ばね50aは、内部に気体を封入する封入機構を有する。気体ばね50aは、燃焼室5aに連通している筒状部を構成する筒状部材51を含む。本実施の形態における筒状部材51は、円筒状に形成されている。筒状部材51の内部には、移動部材としての副室用ピストン55が配置されている。筒状部材51の内部の空間は、副室用ピストン55により区画されている。筒状部材51の内部には、燃焼室5aに向かう側に副室60が形成され、燃焼室5aに向かう側と反対側にガス室61が形成されている。
副室用ピストン55は、矢印550に示すように、筒状部材51の内部を移動できるように配置されている。副室用ピストン55は、封止部材としてのピストンリング56を介して筒状部材51に接触している。副室60には燃焼ガスが流入するために、ピストンリング56は、耐熱性を有する材料で形成されている。ピストンリング56は、たとえば金属により形成されている。副室用ピストン55は、筒状部材51に固定されておらず、筒状部材51の軸方向に移動するように形成されている。
気体ばね50aのガス室61には、燃焼室5aの圧力が所望の制御圧力に到達したときに、副室用ピストン55が移動し始めるように、加圧された気体が封入されている。本実施の形態においては、ガス室61に空気が封入されている。密閉されたガス室61の圧力により副室用ピストン55が押圧されている。
筒状部材51は、燃焼室5aに向かう側の端部に形成された係止部52を有する。係止部52は、副室用ピストン55を筒状部材51の端部で係止する。副室用ピストン55が係止部52に接触している状態が、副室用ピストン55が筒状部材51の内部で着底している状態である。
図2および図3を参照して、本実施の形態における内燃機関は、容積可変装置の気体ばねに気体を供給する気体供給装置を備える。本実施の形態における気体供給装置は、気体ばね50a〜50dのガス室61に空気を供給する。
本実施の形態における気体供給装置は、モータ71と、モータ71により駆動される圧縮機72と含む。圧縮機72の出口には、逆止弁82が配置されている。逆止弁82は、ガス室61の気体が逆流して流出することを防止する。圧縮機72には、逆止弁81およびフィルタ73が接続されている。フィルタ73は、圧縮機72に吸入される空気から異物を除去する。逆止弁81は、圧縮機72から空気が逆流することを防止する。
それぞれの気体ばね50a〜50dには、気体を供給する流路が接続されている。本実施の形態における気体供給装置は、それぞれの気体ばね50a〜50dのガス室61の圧力を変更する機能を有する。気体供給装置は、空気排出弁84を含む。空気排出弁84は、それぞれの気体ばね50a〜50dごとに配置されている。空気排出弁84は、ガス室61の気体を排出することができるように配置されている。気体供給装置は、圧力調整弁85を含む。圧力調整弁85は、それぞれの気体ばね50a〜50dごとに配置されている。圧力調整弁85は、開閉することによりガス室61に供給する空気の圧力を調整する。本実施の形態においては、副室用ピストン55が移動する期間中は、圧力調整弁85および空気排出弁84が閉止される。圧力調整弁85および空気排出弁84を閉止することにより、ガス室61に接続される流路を遮断して、ガス室61を密閉することができる。
本実施の形態における気体供給装置は、気体ばね50a〜50dに供給する気体の流量を検出する流量検出器としての流量センサ76を含む。気体供給装置は、それぞれの気体ばね50a〜50dのガス室61の圧力を検出するガス室圧力検出器としての圧力センサ74を含む。本実施の形態における圧力センサ74は、それぞれの気体ばね50a〜50dごとに配置されている。
また、本実施の形態における内燃機関は、燃焼室5a〜5dの圧力を検出する燃焼室圧力検出器を備える。本実施の形態における燃焼室圧力検出器は、筒内圧力センサ75を含む。それぞれの筒内圧力センサ75は、燃焼室5a〜5dにおける圧力を検出する。
気体供給装置は、電子制御ユニット31により制御されている。本実施の形態においては、モータ71が電子制御ユニット31に制御されている。本実施の形態における空気排出弁84および圧力調整弁85は、電磁弁であり、電子制御ユニット31により制御されている。圧力センサ74、筒内圧力センサ75および流量センサ76等の検出器の出力は、電子制御ユニット31に入力される。
本実施の形態における内燃機関は、運転期間中または停止期間中にガス室61から空気が漏れても、ガス室61に空気を充填することができる。たとえば、モータ71にて圧縮機72を駆動し、更に圧力調整弁85を開くことにより、気体ばね50a〜50dのガス室61に空気を供給することができる。
また、本実施の形態における気体供給装置は、ガス室61の圧力を上昇させることができる。更に、本実施の形態における気体供給装置は、それぞれの気体ばね50a〜50dのガス室61から気体を排出することができる。空気排出弁84を開くことにより、ガス室61の圧力を下降させることができる。このように、ガス室61の圧力を変更することにより、制御圧力を変更することができる。気体供給装置としては、この形態に限られず、気体ばねのガス室に気体を供給できる任意の装置を採用することができる。
図4に、本実施の形態の内燃機関における燃焼室の圧力のグラフを示す。横軸がクランク角度であり、縦軸が燃焼室の圧力および副室用ピストンの変位である。図4には、燃焼サイクルのうち圧縮行程および膨張行程のグラフが示されている。副室用ピストン55は、筒状部材51の底部に着底しているときの変位が零である。本実施の形態における容積可変装置は、燃焼サイクルの圧縮行程から膨張行程の期間中に、燃焼室の圧力が制御圧力に到達した場合に、副室用ピストン55が移動する。この結果、それぞれの気体ばね50a〜50dの副室60の容積が大きくなる。
図3および図4を参照して、圧縮行程の開始時には副室用ピストン55が筒状部材51の底部に着底している。圧縮行程ではピストン3が上昇して、燃焼室5aの圧力が上昇する。ここで、ガス室61には制御圧力に対応する圧力の気体が封入されているために、燃焼室5aの圧力が制御圧力になるまでは、副室用ピストン55は着底した状態が維持される。
図4に示す実施例では、クランク角度が0°(TDC)より僅か後に点火される。点火されることにより燃焼室5aの圧力が急激に上昇する。燃焼室5aの圧力が制御圧力に達したときに、副室用ピストン55が移動し始める。混合気の燃焼が進むと、ガス室61が縮んで副室用ピストン55の変位が大きくなる。副室60の容積が大きくなる。このために、燃焼室5aおよび副室60の圧力が上昇することが抑制される。図4に示す例では、燃焼室の圧力がほぼ一定に保たれる。なお、厳密には副室用ピストン55が移動することによりガス室61内の圧力が上昇するために、燃焼室5aの圧力も上昇する。
燃焼室において、更に燃料の燃焼が進むと、副室用ピストン55の変位は最大になった後に小さくなる。ガス室61の圧力が減少して、副室用ピストン55の変位が零に戻る。すなわち、副室用ピストン55は着底する位置まで戻る。燃焼室5aの圧力が制御圧力未満になった場合には、クランク角度の進行とともに燃焼室5aの圧力が減少する。
このように、本実施の形態における燃焼圧力制御装置は、燃焼室5aの圧力が制御圧力に到達したときに燃焼室の圧力上昇を抑制し、燃焼室の圧力が異常燃焼の発生する圧力以上にならないように制御することができる。
図4には、比較例1および比較例2の燃焼室の圧力のグラフが示されている。比較例1および比較例2は、本実施の形態における容積可変装置を有していない内燃機関である。内燃機関は、点火時期に依存して、燃焼室の圧力が変動する。内燃機関は、出力トルクが最大になる点火時期θmaxを有する。比較例1は、点火時期θmaxで点火したときのグラフである。出力トルクが最大になる点火時期で点火することにより、燃焼室の圧力が高くなり熱効率が最良になる。ところが、比較例1のように点火時期が早いと、燃焼室の圧力が異常燃焼の発生する圧力よりも高くなる。比較例1のグラフは、異常燃焼が発生しないと仮定している。一方で、実際の内燃機関では、燃焼室の最大圧力(Pmax)が異常燃焼の発生する圧力よりも小さくなるように点火時期を遅角させている。
比較例2の内燃機関では、異常燃焼を回避するために、出力トルクが最大になる点火時期よりも遅らせて点火している。点火時期を遅角させた場合には、出力トルクが最大になる点火時期で点火した場合よりも燃焼室の最大圧力が小さくなる。
本実施の形態における内燃機関は、燃焼室の圧力が異常燃焼の発生する圧力未満で燃焼を行なうことができる。点火時期を早くしても異常燃焼の発生を抑制することができる。特に、圧縮比が高いエンジンにおいても異常燃焼を抑制することができる。さらに、燃焼室の圧力が高い時間を長くすることができる。このため、比較例2の点火時期を遅らせた内燃機関よりも熱効率が改善され、出力トルクを大きくすることができる。または、燃料消費量を少なくすることができる。
図3を参照して、本実施の形態における容積可変装置は、ピストンリング56によりガス室61の封止機構が構成されている。ところが、ピストンリング56の封止機構をすり抜けて、ガス室61の空気が漏れる場合がある。ガス室61から漏れた空気は、燃焼室5aに流入する。特に、ガス室61には制御圧力に対応する高い圧力の空気が封入されているために漏れる場合があった。また、封止機構の劣化等により、ガス室61に封入されている空気が漏れる場合があった。
図5に、本実施の形態における内燃機関の燃焼サイクルの行程図を示す。それぞれの気筒における燃焼サイクルは、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程を含む。本実施の形態の内燃機関においては、第1気筒、第3気筒、第4気筒および第2気筒が、この順に点火される。図5に示す例では、第1気筒のピストンが圧縮行程の上死点(TDC)に到達したときのクランク角度を0°としている。
内燃機関を停止する場合には、燃焼室における燃料の燃焼を停止する。たとえば、燃料の供給および点火を停止する。燃料の供給および点火を停止した直後では、クランクシャフトの慣性によりクランクシャフトが回転し続ける。燃料の供給および点火を停止した後には、機関回転数が徐々に減少して、最終的に機関回転数が零になる。
本実施の形態における容積可変装置は、内燃機関の停止期間中には、気体ばね50a〜50dに空気が封入された状態で保持される。すなわち、気体ばね50a〜50dに接続される流路に配置されている圧力調整弁85および空気排出弁84が閉止している状態で保持される。
また、内燃機関が停止したときに、吸気弁および排気弁が閉じた状態であると燃焼室が密閉される。内燃機関が停止したときに、いずれかの気筒が圧縮行程の途中であり、燃焼室が密閉されている場合がある。本発明においては、内燃機関が停止したときに、圧縮行程であり吸気弁および排気弁が閉止されている気筒を特定気筒という。内燃機関が停止したときに、特定気筒は、圧縮行程における吸気弁が閉じる位置からピストンが圧縮上死点に到達するまでの区間内で停止している。
特定気筒において、内燃機関の停止期間中に気体ばねに封入されている空気が燃焼室に漏れると燃焼室の圧力が上昇する。気体ばねには、制御圧力に対応した高い圧力で空気が封入されているために空気の漏れにより燃焼室が高い圧力になる。始動機により内燃機関の始動を開始すると、特定気筒においてピストンが上昇する。ところが、特定気筒の燃焼室の空気が圧縮されて、更に高い圧力になる。このため、始動機にてクランクシャフトを回転させることができない場合がある。すなわち、内燃機関の始動時にクランキングを行なうことができない場合がある。または、内燃機関の始動が不安定になる場合がある。
図5では、それぞれの気筒において圧縮行程の吸気弁が閉じる位置からピストンが圧縮上死点に到達するまでの区間を、クランキングが困難な区間として記載している。複数の気筒のうち1つの気筒が、クランキングが困難な区間内で停止している場合には、クランキングができなかったり不安定になったりする。
本実施の形態においては、内燃機関の運転が不安定になることを抑制する補正制御装置を備える。補正制御装置は、気体の漏れにより生じる運転状態への影響を補正する補正制御を行うように形成されている。特に、補正制御装置は、運転状態への悪影響を抑制する制御を行うように形成されている。
本実施の形態の補正制御では、全ての気筒が、クランキングが困難な区間内を避けて停止するように、内燃機関を停止させる制御を行う。図5を参照すると、本実施の形態における内燃機関は、全ての気筒において、クランキングが困難な期間にならない期間を有し、この区間をクランキングが容易な区間として記載している。たとえば、図5の実施例では、クランク角度540°から吸気弁が閉じる位置までの区間が、クランキングが容易な区間である。本実施の形態における補正制御では、内燃機関が完全に停止したときに、クランキングが容易な区間内で停止するように制御を行う。
本実施の形態における内燃機関は、内燃機関が停止したときのピストンの停止位置を調整する停止位置調整装置を備える。停止位置調整装置は、内燃機関を所望のクランク角度で停止させることができる。停止位置調整装置により、補正制御としての停止位置調整制御を行なう。図1を参照して、本実施の形態における停止位置調整装置は、可変バルブタイミング装置93,94を含む。
図6に、本実施の形態における可変バルブタイミング装置の作用を説明するグラフを示す。横軸はクランク角度であり、縦軸は吸気弁のリフト量および排気弁のリフト量である。図6のグラフにおいては、吸気弁または排気弁が、早い時期に開く早開き制御が実線で示されている。また、吸気弁または排気弁が、遅い時期に開く遅開き制御が破線で示されている。排気弁は、クランク角度の幅C1°の範囲内で開閉時期を変更することができる。また、吸気弁は、クランク角度の幅C2°の範囲内で開閉時期を変更することができる。
本実施の形態における停止位置調整装置は、可変バルブタイミング装置を制御して開閉弁の開閉動作を制御する。燃焼室への燃料の供給および点火を停止した後に、慣性により回転するクランクシャフトの回転数を調整することにより、最終的に内燃機関が停止する位置を制御する。すなわち、機関回転数が零になったときのクランク角度を調整する。
図7に、本実施の形態における停止位置調整制御のフローチャートを示す。本実施の形態における内燃機関は、図5に示すクランキングが容易な区間内に停止させるための機関回転数のモデルを有している。このモデルには、燃焼室における燃料の燃焼を停止した後に、慣性により機関回転数が徐々に減少していくときの基準となる機関回転数(以下、「基準機関回転数」)が予め定められている。停止位置調整制御においては、実際の機関回転数を検出し、実際の機関回転数を基準機関回転数に近づける制御を行う。
本実施の形態においては、吸気弁の開閉時期および排気弁の開閉時期を制御することにより、減速しながら回転する出力軸の慣性に作用する回転抵抗を制御する。すなわち、吸気弁または排気弁の開閉時期を制御することにより、それぞれの気筒における燃焼室の圧力を変化させる。または、ポンピングロスを変化させる。
実際の機関回転数が基準機関回転数よりも高い場合には、機関回転数の減少速度を増加させるために、回転抵抗を大きくする制御を行なうことができる。実際の機関回転数が基準機関回転数よりも低い場合には、機関回転数の減少速度を減少させるために、回転抵抗を小さくする制御を行なうことができる。実際の機関回転数を基準機関回転数に近づけることにより、所望のクランク角度にて内燃機関を停止させることができる。
図1を参照して、燃焼室5aにおける燃料の燃焼を停止した後の基準機関回転数は、例えば、電子制御ユニット31のROM34に記憶されている。実際の機関回転数は、クランク角度センサ42の出力により検出することができる。
本実施の形態においては、内燃機関の停止要求を検出したら、全ての燃焼室において燃料の供給および点火を停止する。この後に、図7に示す停止位置調整制御を行う。停止位置調整制御は、たとえば所定の時間間隔をあけて繰り返し行なうことができる。
ステップ152においては、全ての気筒において燃焼が停止しているか否かを判別する。本実施の形態においては、全ての気筒において点火が停止しているか否かを判別する。ステップ152において、全ての気筒において点火が停止している場合には、ステップ153に移行する。ステップ152において、少なくとも一つの気筒において、点火が継続されている場合には、この制御を終了する。
次に、ステップ153において、スロットル弁18を全開にする。スロットル弁18を全開にすることにより、機関吸気通路内の圧力が大気圧になる。すなわち、サージタンク14、吸気枝管13および吸気ポート7の圧力が、ほぼ大気圧になる。本実施の形態における停止位置調整制御においては、吸気弁6および排気弁8の開閉により、燃焼室の圧力変化を利用して空気の反力トルクを制御する。スロットル弁を全開にして、機関吸気通路内の圧力をほぼ一定に維持することにより、反力トルクによる制動の精度を向上させることができる。
次に、ステップ154においては、実際の内燃機関の機関回転数を検出する。
次に、ステップ155においては、実際の機関回転数と予め定められた基準機関回転数との差の絶対値が判定値以上か否かが判別される。実際の機関回転数と基準機関回転数との差の絶対値が判定値以上であると、内燃機関の停止位置が目標位置からずれると判別する。この場合には、ステップ156に進む。ステップ155における判定値としては、実際の機関回転数の調整が必要である閾値を採用することができる。ステップ155において、実際の機関回転数と基準機関回転数との差の絶対値が判定値未満の場合には、この制御を終了する。
ステップ156においては、実際の機関回転数から基準機関回転数を減算した値が0よりも大きいか否かが判別される。すなわち、実際の機関回転数が基準機関回転数よりも大きいか否かが判別される。ステップ156において、実際の機関回転数が基準機関回転数未満の場合にはステップ157に進む。
ステップ157においては、吸気弁の開閉時期および排気弁の開閉時期を導出する。例えば、実際の機関回転数と基準機関回転数との差を関数にする吸気弁の開閉時期および排気弁の開閉時期を、予め電子制御ユニット31に記憶させておくことができる。実際の機関回転数と基準機関回転数との差を算出し、吸気弁の開閉時期および排気弁の開閉時期を導出することができる。ステップ157では、実際の機関回転数が基準機関回転数未満であるために、実際の機関回転数の減少速度を小さくする開閉時期を導出する。それぞれの気筒における空気の反力トルクが減少して、実際の機関回転数の減少速度が抑制される開閉時期が選定される。
ステップ158においては、ステップ157において導出された開閉時期に基づいて、吸気弁の閉じる時期が遅くなる制御を行っている。また、排気弁の開く時期が早くなる制御を行っている。実際の機関回転数が低下する速さを小さくすることができる。この結果、実際の機関回転数を基準機関回転数に近づかせることができる。
ステップ156において、実際の機関回転数が基準機関回転数よりも大きな場合には、ステップ159に移行する。この場合には、実際の機関回転数の減少速度を速くする制御を行う。ステップ159においては、吸気弁の開閉時期および排気弁の開閉時期を導出する。それぞれの気筒における空気の反力トルクが増加して、実際の機関回転数の減少速度が大きくなる開閉時期が選定される。吸気弁の開閉時期および排気弁の開閉時期を導出は、ステップ157と同様の方法により行うことができる。
次に、ステップ160においては、ステップ159において導出された開閉時期に基づいて、吸気弁の閉じる時期が早くなる制御を行っている。また、排気弁の開く時期が遅くなる制御を行っている。実際の機関回転数が減少する速さを大きくすることができる。この結果、実際の機関回転数を基準機関回転数に近づかせることができる。
図7における制御を予め定められた時間間隔ごとに繰り返すことにより、燃焼室における燃焼を停止した後に減少していく機関回転数を、基準機関回転数に近づかせることができる。この結果、所望のクランク角度にて内燃機関を停止させることができる。
図5を参照して、本実施の形態の内燃機関は、クランキングが容易な区間内にて停止させることができる。クランキングが容易な区間内では、膨張行程の1つの気筒を除いて、吸気弁および排気弁のうち少なくとも一方が開いている。内燃機関の停止期間中に気体ばねから燃焼室に向かって空気が漏れた場合にも、漏れた空気を機関吸気通路または機関排気通路に逃すことができる。停止期間中における燃焼室の圧力上昇を抑制することができる。膨張行程の1つの気筒においては、吸気弁および排気弁が完全に閉じている。この気筒においては、気体ばねの空気が燃焼室に漏れて燃焼室の圧力が上昇すると、ピストンを押し下げる向きに力が働く。すなわち、内燃機関の始動を付勢する向きに力が働く。このために、始動性を悪化させることにはならない。
このように、本実施の形態における内燃機関は、始動時間が長くなったり、内燃機関が始動できなかったりすることを抑制できる。本実施の形態における内燃機関は、安定した始動を行うことができる。
本実施の形態における停止位置調整装置では、実際の機関回転数を検出して、吸気弁および排気弁の開閉時期を調整する制御を行なっているが、この形態に限られず、クランキングが容易な区間内にて内燃機関を停止させる任意の装置を採用することができる。例えば、減速中の機関回転数を調整するために、吸気弁のリフト量や排気弁のリフト量を変更する制御を行なっても構わない。または、機関回転数が零に近づいたときに、機械的にクランクシャフトに抵抗を与えて、内燃機関を所望の位置に停止させる装置を採用しても構わない。
上述の停止位置調整制御は、内燃機関を停止する度に行うことができる。一方で、本実施の形態の内燃機関は、気体ばねから燃焼室に気体が漏れたことを検出する漏れ検出装置を備える。本実施の形態における内燃機関は、漏れ検出装置により気体ばねから燃焼室への気体の漏れを検出した場合に補正制御を行う。すなわち、気体ばねの漏れを検出した場合に、停止位置調整装置により内燃機関が停止する位置を調整する。
図8に、本実施の形態の内燃機関の1つの気筒において、圧縮行程における燃焼室の圧力の変化を示すグラフを示す。横軸がクランク角度であり、縦軸が燃焼室の圧力である。実線で気体ばねの漏れがない場合を示し、破線で気体ばねの漏れがある場合を示している。圧縮行程において吸気弁および排気弁が閉じると、燃焼室の圧力が上昇する。気体ばねから燃焼室への気体の漏れが生じていると、燃焼室の圧力は、気体の漏れがない場合に比べて速く上昇する。
本実施の形態においては、点火時期から所定の角度α°前の時に、燃焼室の圧力を検出する。クランク角度(点火時期−α)°のときの気体ばねの漏れがない場合には、燃焼室は圧力PCCSになる。これに対して、同じクランク角度(点火時期−α)°において、気体ばねの漏れがある場合の燃焼室は、例えば圧力PCCHになる。漏れがある場合の燃焼室の圧力PCCHは、漏れがない場合の燃焼室の圧力PCCSよりも高くなる。本実施の形態においては、クランク角度(点火時期−α)°における燃焼室の圧力を検出して、検出した燃焼室の圧力により気体ばねの漏れがあるか否かの判別を行う。
図9に、本実施の形態における第1の漏れ検出制御のフローチャートを示す。本実施の形態の漏れ検出制御においては、運転期間中に気体ばねから燃焼室に向かって漏れがあるか否かを検出する。本実施の形態の漏れ検出制御においては、それぞれの気筒ごとに気体ばねの漏れがあるか否かを判別している。
始めにステップ161において圧縮行程の気筒iを検出する。クランク角センサによりクランク角度を検出し、圧縮行程の気筒iを検出することができる。
次に、ステップ162において、クランク角度が気筒iの点火時期から所定の角度α°前であるか否かを判別する。クランク角度が(点火時期−α)°でない場合には、この角度になるまでステップ162を繰り返す。ステップ162において、クランク角度が(点火時期−α)°である場合には、ステップ163に移行する。
ステップ163においては、気筒iの燃焼室の圧力PCCXを検出する。図2および図3を参照して、燃焼室の圧力は、筒内圧センサ75により検出することができる。
次に、ステップ164において、機関吸気通路の圧力を検出する。機関吸気通路を通って燃焼室に流入する空気の圧力を検出する。図1を参照して、機関吸気通路の圧力は、サージタンク14に取り付けられた圧力センサ43により検出することができる。
次に、ステップ165において、圧力判定値PCCDを読み込む。本実施の形態における内燃機関は、気体ばねの気体の漏れを判定するための圧力判定値PCCDを有する。本実施の形態においては、クランク角度が(点火時期−α)°の時の機関吸気通路の圧力を関数にする圧力判定値PCCDが電子制御ユニット31に記憶されている。図8を参照して、圧力判定値PCCDは、漏れがない場合の燃焼室の圧力PCCSよりも大きな値を採用することができる。
次に、ステップ166においては、燃焼室の圧力PCCXが圧力判定値PCCDよりも大きいか否かを判別する。ステップ166において、燃焼室の圧力PCCXが、圧力判定値PCCDよりも大きい場合には、漏れが生じていると判別する。この場合には、ステップ167に移行する。ステップ167においては、漏れ判定フラグを1にする。本実施の形態においては、任意の判定フラグを定めた場合には電子制御ユニットにて保存している。
ステップ166において、燃焼室の圧力PCCXが圧力判定値PCCD以下の場合には、気体ばねからの空気の漏れ量が零か、または空気の漏れ量が許容範囲内であると判別する。この場合には、ステップ168に移行する。ステップ168においては、漏れ判定フラグを0にする。
このように、内燃機関の運転期間中に、気体ばねからの気体の漏れがあるか否かを判別することができる。
図10に、本実施の形態における停止時の制御のフローチャートを示す。図10は、内燃機関を停止すべきときに補正制御としての位置調整制御を行なうか否かを判別するフローチャートである。
ステップ171においては、内燃機関の停止要求を検出する。
次に、ステップ172においては、漏れ判定フラグが1であるか否かを判別する。本実施の形態における漏れ検出制御においては、それぞれの気筒ごとに気体ばねから空気が漏れているか否かを判別することができる。ステップ172においては、たとえば、少なくとも一つの気筒において漏れ判定フラグが1である場合に、ステップ173に移行することができる。または、予め定められた1つの気筒において漏れ判定フラグが1である場合には、ステップ173に移行することができる。
ステップ173においては、停止位置調整制御を行なって内燃機関を停止する。ステップ172において、漏れ判定フラグが1でない場合には、漏れ判定フラグは0である。この場合には、ステップ174に移行する。ステップ174においては、通常の停止制御を行う。すなわち、停止位置調整制御を行わずに内燃機関を停止する。
このように、本実施の形態の内燃機関は、運転期間中に気体ばねから燃焼室に向かって気体の漏れかあるか否かを判別し、漏れがある場合には停止位置調整制御を行ないながら内燃機関を停止させることができる。
図11に、本実施の形態における第2の漏れ検出制御のフローチャートを示す。第2の漏れ検出制御においては、運転期間中に気体ばねの内部の圧力を検出することにより気体ばねから漏れがあるか否かの判別を行う。
ステップ181においては、運転期間中に気体ばねへの気体の供給を停止する。図2および図3を参照して、例えば、それぞれの気体ばね50a〜50dに接続されている流路に配置されている圧力調整弁85を閉じる制御を行う。気体ばね50a〜50dのガス室61の密閉状態を維持する制御を行う。
次に、ステップ182において、気体ばね50a〜50dのガス室61の圧力PGSXを検出する。副室用ピストン55が予め定められた位置であるときに、ガス室61の圧力を検出する。たとえば、副室用ピストン55が筒状部材51の底部に着底している時のガス室61の圧力を検出する。図3を参照して、ガス室61の圧力は、例えば、それぞれの気体ばね50a〜50dに対応して配置されている圧力センサ74により検出することができる。
次に、ステップ183において、予め定められた時間の間待機する。
次に、ステップ184において、予め定められた時間の経過後に、気体ばね50a〜50dのガス室61の圧力PGSYを検出する。ステップ184においては、ステップ182と同様に、副室用ピストン55が予め定められた位置になった時のガス室61の圧力を検出する。例えば、副室用ピストン55が、筒状部材51の底部に着底している時のガス室61の圧力を検出する。
次に、ステップ185においては、ガス室の圧力PGSXからガス室の圧力PGSYを減算した値が、予め定められた判定値よりも大きいか否かを判別する。気体ばねから気体が漏れている場合には、ステップ183において所定の時間待機している間に、ガス室61の圧力が低下する。すなわち、気体ばねから気体が漏れている場合には、圧力降下量(PGSX−PGSY)が大きくなる。ステップ185において、圧力降下量(PGSX−PGSY)が判定値よりも大きい場合には、気体ばねから空気が漏れていると判別することができる。この場合には、ステップ186に移行する。ステップ186においては、漏れ判定フラグを1にする。
ステップ185において、圧力降下量(PGSX−PGSY)が判定値以下である場合には、気体ばねの空気の漏れ量が零か、または空気の漏れ量が許容範囲内と判別することができる。この場合には、ステップ187に移行する。ステップ187においては、漏れ判定フラグを0にする。
このように、本実施の形態の第2の漏れ検出制御においても、気体ばねから燃焼室に向かって気体の漏れがあるか否かを判別することができる。第2の漏れ検出制御を行った後には、たとえば、前述の図10に示す停止時の制御により、停止位置調整制御を行うか否かを判別することができる。
本実施の形態においては、運転期間中の燃焼室の圧縮行程における圧力または運転期間中の気体ばねの圧力を検出することにより、気体ばねからの気体の漏れを検出したが、この形態に限られず、気体ばねから燃焼室に向かう気体の漏れを検出できる任意の漏れ検出装置を採用することができる。または、停止期間中に任意の方法により気体ばねの漏れを検出し、漏れ判定フラグを保存しておいても構わない。
また、本実施の形態における第1の漏れ検出制御においては、気体ばねから空気が漏れた時の燃焼室の圧力を検出している。第2の漏れ検出制御においては、気体ばねのガス室の圧力降下量を算出している。これらの燃焼室の圧力および気体ばねの圧力降下量から、気体ばねの気体の漏れ量を算出することができる。換言すれば、本実施の形態における漏れ検出制御では、運転期間中の気体ばねの空気の漏れ量を推定し、空気の漏れ量が予め定められた判定値よりも大きい場合には、気体の漏れが生じていると判別している。このように、推定した空気の漏れ量が予め定められた判定値よりも大きい場合に補正制御を行うことにより、漏れが生じているか否かをより正確に判別することができて、実質的に漏れが生じていないときに補正制御を行うことを回避できる。
気体ばねの漏れを判別する漏れ検出装置としては、上記に限られず、任意の装置で気体ばねに漏れが生じているか否かを判別することができる。
次に、本実施の形態における補正制御を禁止する制御について説明する。
内燃機関は、自動的に燃焼室における燃焼を一時的に停止させる停止装置を備える場合がある。使用者の判断に依存せずに内燃機関の運転状況を検出して、停止装置が燃焼室における燃焼を一時的に停止させる場合がある。例えば、内燃機関が自動車に配置されている場合に、信号待ちや渋滞時等により走行を停止している期間中に、燃焼室における燃焼を一時的に停止させる場合がある。または、自動車が、走行のための内燃機関と走行用モータとを備えるハイブリッド自動車の場合には、走行用モータのみで走行を行なう期間には、内燃機関を一時的に停止させる場合がある。
このような停止装置による停止の場合には、停止時間が短いために気体ばねの漏れに対応する補正制御を行う必要性が小さい。すなわち、気体ばねに漏れが生じていたとしても漏れ量が少ないと判断することができる。このため、停止装置により燃焼室における燃焼を停止する場合には、補正制御を禁止する制御を行うことができる。過剰に補正制御を行うことを回避できる。
図12に、本実施の形態における第1の補正禁止制御のフローチャートを示す。第1の補正禁止制御においては、停止装置が燃焼室における燃焼を停止させた場合には、補正制御を禁止する。
始めに、ステップ191においては、燃焼室における燃料の燃焼の停止要求を検出する。本実施の形態における停止装置は、要求される負荷が零であり、自動車の速度が零のときに燃焼室における燃料の燃焼を一時的に停止させる。
次に、ステップ192においては、停止装置により燃焼室における燃焼の停止要求が発信されているか否かを判別する。ステップ192において、停止装置により停止要求が発信されている場合には、ステップ193に移行する。この場合には、内燃機関の停止が一時的であり、短時間の経過後に燃焼室における燃焼を開始すると判別することができる。ステップ193においては、補正制御禁止フラグを1にする。すなわち、補正制御を禁止する。
ステップ192において、停止要求が停止装置により発信されていない場合には、ステップ194に移行する。たとえば、使用者によるイグニッションスイッチの操作により、停止要求が発信されている場合には、ステップ194に移行する。この場合には、内燃機関の停止が長時間であると判別することができる。ステップ194においては、補正制御禁止フラグを0にする。すなわち、補正制御を許可する。
図13に、本実施の形態における補正制御の実施を判別する制御のフローチャートを示す。図12に示す補正禁止制御において定められた補正制御禁止フラグに基づいて、補正制御を行ったり補正制御を行わなかったりする。
ステップ221においては、補正制御禁止フラグが1であるか否かを判別する。補正制御禁止フラグが1である場合には、ステップ222に移行する。ステップ222においては、補正制御が禁止されているために燃焼室における燃焼の通常停止を行う。
ステップ221において、補正制御禁止フラグが1でない場合には、ステップ223に移行する。ステップ223においては、補正制御を伴って燃焼室における燃焼を停止する。本実施の形態においては、停止位置調整制御を伴って燃焼室における燃焼を停止する。
図12および図13に示す補正制御を禁止する制御は、図10に示す停止時の制御と組み合わせることができる。たとえば、図12および図13に示すように補正制御が禁止されるか否かを判別した後に、図10に示す気体ばねの漏れがあるか否かの判別を行うことができる。
このように、内燃機関の停止装置が、燃焼室における燃焼を停止させる場合には、漏れに対応する補正制御を禁止する制御を行なうことができる。本実施の形態における停止装置は、渋滞時等に燃焼室における燃料の燃焼を停止させる装置を例に取り上げて説明したが、この形態に限られず、燃費の向上等により自動的に燃焼室における燃焼を停止する任意の停止装置を採用することができる。
ところで、内燃機関の要求負荷が零のときに、使用者が内燃機関を手動で停止させる場合がある。本実施の形態における内燃機関は、使用者が燃焼室における燃焼の開始および燃焼の停止を切替える切替え装置を備える。本実施の形態における切替え装置は、イグニッションスイッチを含む。本実施の形態におけるイグニッションスイッチは、燃焼室における燃料の燃焼を停止させるための停止位置として「切」の位置を含む。
図14に、本実施の形態における内燃機関の電子制御ユニットに接続されている機器の概略図を示す。イグニッションスイッチ146は、電子制御ユニット31に接続されている。イグニッションスイッチ146の出力信号は、電子制御ユニット31に入力される。使用者がイグニッションスイッチ146を停止位置にすることにより燃焼室における燃料の燃焼が停止する。
本実施の形態における内燃機関は、使用者がイグニッションスイッチ146により燃焼室における燃焼を停止した場合に、予め定められた時間内に燃焼室における燃焼を開始するか否かを予測する再始動予測装置を備える。再始動予測装置が予め定められた時間内に燃焼室における燃焼を開始すると予測した場合には、補正制御を禁止する制御を行う。
例えば、内燃機関が自動車に配置されている場合に、渋滞などにより自動車が停止する場合がある。このときに、燃焼室における燃料の燃焼を使用者が停止させる場合がある。この場合には、短時間の経過後に燃焼室における燃焼が開始されるために、補正制御を禁止する制御を行なうことができる。過剰に補正制御を行うことを回避できる。
本実施の形態における第1の再始動予測装置は、車線維持支援装置147を含む。車線維持支援装置147の出力は、電子制御ユニット31に入力される。本実施の形態における車線維持支援装置147は、自動車の走行中に白線同士に挟まれる車線から自動車が逸脱する場合に、運転者のハンドル操作を補助する装置である。本実施の形態における車線維持支援装置147は、車線内の自動車の位置を検出可能に形成されている。車線維持支援装置147は、自動車の前方を撮影する監視カメラと、監視カメラの映像を解析する解析装置とを含む。道路に描かれている白線を監視カメラで撮影し、撮影した映像を解析することにより、白線同士の範囲内における自動車の位置を検出することができる。
図15に、本実施の形態における第2の補正禁止制御のフローチャートを示す。
ステップ201においては、イグニッションスイッチが停止位置になったことを検出する。すなわち、使用者がイグニッションスイッチを「切」の位置にしたことを検出する。
ステップ202においては、道路上の自動車の位置を検出する。本実施の形態の第2の補正禁止制御においては、車線維持支援装置147により車線における自動車の位置を検出する。
ステップ203においては、自動車の位置が車線のほぼ中央か否かを判別する。すなわち、白線で挟まれる領域のほぼ中央であるか否かを判別する。ステップ203において、自動車の位置が車線のほぼ中央である場合には、ステップ204に移行する。この場合には、運転者が自動車を長時間停止させる可能性が小さいと予測することができる。短時間の経過後に燃焼室における燃焼を開始すると予測することができる。ステップ204においては、補正制御禁止フラグを1にする。すなわち、補正制御を禁止する。
ステップ203において、自動車の位置が車線のほぼ中央でない場合には、ステップ205に移行する。この場合には、自動車の位置が車線の端部であるために、長時間にわたって自動車を停車すると予測することができる。ステップ205においては、補正制御禁止フラグを0にする。すなわち、補正制御を許可する。
このように、車線維持支援装置により、燃焼室における燃焼の停止が予め定められた時間内か否かを予測することができる。すなわち、燃焼室における燃焼の停止が短時間か長時間かを予測することができる。
次に、本実施の形態における第2の再始動予測装置について説明する。第2の再始動予測装置は、車両用ナビゲーション装置を含む。図14を参照して、本実施の形態における車両用ナビゲーション装置148は、地図上における自動車の現在の位置を検出することができる。車両用ナビゲーション装置148の出力は、電子制御ユニット31に入力される。地図上における自動車の位置が電子制御ユニット31に送信される。第2の再始動予測装置は、車両用ナビゲーション装置148の出力により、燃焼室における燃焼の停止が短時間か否かを予測することができる。
図16に、本実施の形態における第3の補正禁止制御のフローチャートを示す。ステップ211においては、イグニッションスイッチが停止位置になったことを検出する。
次に、ステップ212においては、車両用ナビゲーション装置により自動車の現在の位置を検出する。
次に、ステップ213において、自動車の現在の位置が主要道路上であるか否かを判別する。主要道路は、たとえば恒常的に自動車が通行している道路を含む。ステップ213において、自動車の現在の位置が主要道路上である場合には、ステップ214に移行する。自動車の現在の位置が主要道路上である場合には、短時間の停止であると予測することができる。例えば、信号による停止や渋滞等による短時間の停止であると予測することができる。ステップ214においては、補正制御禁止フラグを1にする。すなわち、補正制御が禁止される。
ステップ213において、自動車の現在の位置が主要道路上でない場合には、ステップ215に移行する。この場合には、例えば、車両が所定の施設の駐車場に入っている場合、または自宅に戻った場合が含まれる。
ステップ215においては、補正制御禁止フラグを0にする。すなわち、補正制御が許可される。
本実施の形態における第2の補正禁止制御および第3の補正禁止制御についても第1の補正禁止制御と同様に、補正禁止制御を行った後に、図13に示す制御を行って内燃機関を停止させることができる。
このように、本実施の形態における内燃機関は、短時間の間に燃焼室における燃焼を開始するか否かを予測し、予測した結果に基づいて気体ばねの気体の漏れに対応する補正制御を行うか否かを判別することができる。
図2および図3を参照して、本実施の形態における容積可変装置は、燃焼室5aに連通する副室60の容積が変化する。すなわち、燃焼室5aに連通する空間の容積が変化するように形成されているが、この形態に限られず、容積可変装置は、燃焼室の容積が変化するように形成されていても構わない。
図17に、本実施の形態における他の容積可変装置の部分の破断斜視図を示す。本実施の形態における他の容積可変装置は、気体ばねがピストンの内部に形成されている。本実施の形態における他の容積可変装置は、ピストン63を含む。ピストン63は、ピストン本体64とピストン本体64の上部を覆うように形成されている覆い部材65とを含む。ピストン本体64と覆い部材65とは、矢印551に示すように、互いに相対移動する。気体ばねは、ピストン本体64と覆い部材65とを含む。ピストン本体64の上面と覆い部材65とにより気体ばねのガス室66が構成されている。
ピストン本体64は、筒状に形成されている。ピストン本体64は、コネクティングロッドに接続するためのピストンピンを挿入するための穴部64aを有する。覆い部材65は、ピストン63の冠面を構成する天板65aを有する。ピストン本体64の側面には、溝部64cが形成されている。溝部64cには、燃焼室からクランクケースに燃焼ガスが漏れることを抑制するピストンリング等が配置される。覆い部材65は、ストッパー部として機能する係止部65bを有する。本実施の形態における係止部65bは、ピストン本体64に形成された窪み部64bの内部に配置されている。
ピストン63は、ガス室66からの気体の漏れを抑制する封止部材としてのピストンリング67を有する。ピストンリング67は、ピストン本体64と覆い部材65とが接触する領域に配置されている。
気体ばねのガス室66の内部には、加圧された気体が封入されている。ガス室66には、制御圧力に対応した圧力にて気体が封入されている。他の容積可変装置は、燃焼室の圧力が制御圧力に到達したときに気体ばねが縮む。この結果、燃焼室の容積が増加して燃焼室の圧力上昇を抑制することができる。このような容積可変装置においても、本実施の形態における補正制御を行うことができる。
本実施の形態の内燃機関は、気体ばねの内部に空気が封入されているが、この形態に限られず、気体ばねの内部には任意の気体を封入することができる。また、本実施の形態においては、4気筒の内燃機関を例に取り上げて説明したが、この形態に限られず、任意の数の気筒を有する内燃機関に本発明を適用することができる。
実施の形態2
図18から図49を参照して、実施の形態2における内燃機関について説明する。本実施の形態における容積可変装置の構成は、実施の形態1における内燃機関の容積可変装置の構成と同様である(図1から図3参照)。本実施の形態においては、内燃機関を始動すべきときに気体ばねの気体の漏れにより生じる運転状態への影響を補正する補正制御について説明する。
図2を参照して、本実施の形態における内燃機関の停止期間中には、気体ばね50a〜50dのガス室61が加圧された状態で密閉されている。停止期間中においては、全ての気筒の圧力調整弁85および空気排出弁84が閉止している。
図18は、本実施の形態における第1の補正制御のフローチャートである。第1の補正制御においては、内燃機関が停止しているときに、圧縮行程の吸気弁が閉じる位置からピストンが圧縮上死点に到達するまでの区間内にある特定気筒を検出する。補正制御装置は、内燃機関を始動すべきときに、特定気筒の気体ばねへの気体の供給を禁止する補正制御を行う。
始めに、ステップ231においては、内燃機関の始動要求を検出する。
次に、ステップ232においては、複数の気筒のうち特定気筒があるか否かを検出する。すなわち、図5を参照して、クランキングが困難な区間内にて停止している気筒を検出する。特定気筒は、クランク角度を検出することにより特定することができる。ステップ232において、特定気筒がない場合には、ステップ241に移行して通常の始動制御を行う。ステップ232において、特定気筒がある場合には、ステップ233に移行する。本実施の形態においては、第1気筒が特定気筒である場合を例に取り上げて説明する。
ステップ233においては、特定気筒以外の気筒の気体ばねのガス室に空気を供給する。本実施の形態においては、第2気筒、第3気筒および第4気筒の気体ばねのガス室の圧力が制御圧力に対応する圧力になるように空気を供給する。図2を参照して、圧縮機72を駆動して気体ばね50b,50c,50dに対応する圧力調整弁85を開くことにより、第1気筒以外の気筒の気体ばね50b,50c,50dに空気を供給する。このときに、第1気筒の気体ばね50aにおいては、圧力調整弁85を閉止状態に維持することにより加圧を避ける。
次に、ステップ234においては、クランキングを開始する。本実施の形態においては、始動機によりクランクシャフト46を回転させる。
次に、ステップ235において、クランキング開始後の1回目の燃焼サイクルにおいて、特定気筒における燃料の燃焼を行わずにクランキングを継続する。クランクシャフト46の回転が開始したときに、最初に第1気筒のピストンが圧縮上死点に到達する。第1気筒の1回目の燃焼サイクルにおいては、点火を行わないでクランキングを行う。
次に、ステップ236において、特定気筒の次に圧縮行程になる気筒においては、点火を行うことにより燃焼室における燃焼を行なう。本実施の形態においては、第1気筒の次には第3気筒が圧縮行程になる。ステップ236においては、第3気筒において燃料の燃焼を行なう。
次に、ステップ237において、特定気筒の気体ばねに空気を供給する。図3を参照して、第1気筒の気体ばね50aに対応する圧力調整弁85を開くことにより、第1気筒の気体ばね50aに空気を供給する。気体ばね50aのガス室61の圧力を、予め定められた制御圧力に対応する圧力にする。
次に、ステップ238において、特定気筒の2番目の後に圧縮行程になる気筒において燃料の燃焼を行なう。本実施の形態においては、第4気筒において燃料の燃焼を行なう。更に、ステップ239において、特定気筒の3番目の後に圧縮行程になる気筒において燃料の燃焼を行なう。本実施の形態においては、第2気筒にて燃料の燃焼を行なう。ステップ239が終了することにより1回目の燃焼サイクルが終了する。
次に、ステップ240においては、特定気筒において燃料の燃焼を行なう。2回目の燃焼サイクルが開始して、特定気筒が圧縮行程になる。2回目の燃焼サイクルにおいては、第1気筒にて燃料の燃焼を行なう。
次に、ステップ241においては、通常の始動制御に移行する。たとえば、全ての気筒の気体ばねを密閉した状態で、始動機により機関本体のクランクシャフトの回転を継続する。全ての気筒において燃料の供給および点火を行うことにより内燃機関を始動することができる。
図19に、本実施の形態における第1の補正制御のタイムチャートを示す。時刻t1において内燃機関の始動要求が検出されて始動を開始している。特定気筒としての第1気筒以外の第3気筒、第4気筒および第2気筒には、気体供給装置により気体ばねに空気を供給して、気体ばねのガス室の圧力を上昇させる。第3気筒、第4気筒および第2気筒の気体ばねの圧力が予め定められた圧力に到達したら、時刻t2において始動機を始動させる。
第1気筒、第3気筒、第4気筒および第2気筒が、この順に圧縮行程および膨張行程になる。第1気筒における燃料の燃焼を行わずに、第3気筒、第4気筒および第2気筒では燃料の燃焼を行なう。第1気筒以外の気筒が圧縮行程および膨張行程を行っている間に、時刻t3において第1気筒の気体ばねに気体を供給して、予め定められた圧力まで上昇させる。この後に通常の始動制御に移行する。
このように、本実施の形態の第1の補正制御においては、クランキングが困難な区間内で停止している特定気筒を検出し、1回目の燃焼サイクルでは、特定気筒の気体ばねに空気を供給せずに始動を行っている。
内燃機関の停止期間中には、気体ばねから燃焼室に向かって空気が漏れて、特定気筒においては燃焼室の圧力が高くなっている場合がある。第1の補正制御においては、特定気筒が1回目の圧縮行程を終了するまでは、すなわち、特定気筒のピストンが圧縮上死点に到達するまでは、特定気筒の気体ばねへの空気の供給を停止する。この制御を行なうことにより、気体ばねからの空気の漏れによりクランキングに必要な力が大きくなることを抑制することができる。始動のためのクランクシャフトの回転を安定して行うことができる。
特定気筒において停止期間中に気体ばねから燃焼室に空気が漏れた場合には、クランキングを行うために必要な始動機の駆動力が大きくなる。このために、内燃機関は、駆動力の大きな始動機を備える必要がある。本実施の形態における第1の補正制御を行なうことにより、特定気筒において1回目の圧縮行程において到達する燃焼室の圧力を低くすることができて、駆動力の小さな始動機にて始動を行うことができる。たとえば、内燃機関を長時間停止することにより、気体ばねの圧力と燃焼室の圧力とが等しくなる。クランキングを開始したときに特定気筒のピストンが上昇すると、燃焼室の圧力上昇に伴って気体ばねの副室用ピストンが移動する。副室用ピストンが移動することにより、副室の容積が大きくなって燃焼室の圧力上昇を抑制することができる。
本実施の形態においては、特定気筒の次に圧縮行程を行う気筒にて燃料の燃焼を行なった後に、特定気筒の気体ばねに空気を供給しているが、この形態に限られず、特定気筒の1回目の圧縮行程の終了後から、特定気筒の燃焼室にて燃焼を行なうまでの任意の期間に気体ばねに空気を供給することができる。たとえば、クランキングを開始した後の複数回の燃焼サイクルの期間中は、特定気筒の気体ばねの加圧および燃料の燃焼を停止しても構わない。
また、本実施の形態の第1の補正制御においては、クランキングの1回目の燃焼サイクルにおいて、特定気筒の気体ばねの圧力を減少させる制御を行っても構わない。図2および図3を参照して、例えば、クランキングを開始する前に特定気筒を検出し、特定気筒の気体ばねに接続されている空気排出弁84を開くことにより、特定気筒における気体ばねのガス室の圧力を低下させることができる。この制御を行なうことにより、より安定した始動を行なうことができる。
本実施の形態における第1の補正制御においては、特定気筒を検出しているが、この形態に限られず、始めに圧縮工程になる気筒を検出して、その気筒の1回目の圧縮行程が終了するまでは、その気筒の気体ばねに対する気体の供給を停止する制御を行っても構わない。
次に、本実施の形態における第2の補正制御について説明する。第2の補正制御を行なう内燃機関は、電磁駆動式の開閉弁を備え、内燃機関を始動すべきときに、開閉弁を開く制御を行う。本実施の形態における開閉弁は、それぞれの気筒における燃焼サイクルの行程に依存せずに、任意の時期に開閉を行なうことができる。本実施の形態における電磁駆動式の開閉弁は、排気弁を含む。
図20に、本実施の形態における第2の補正制御を行なう内燃機関の排気弁の部分の概略断面図を示す。第2の補正制御を行う内燃機関は、排気弁8を駆動するための電磁駆動装置100を備える。電磁駆動装置100は電磁石を含み、電磁石の磁力により排気弁8を開閉することができる。
本実施の形態における電磁駆動装置100は、筐体101a〜101cを含む。本実施の形態における筐体101a〜101cは、シリンダヘッド4に支持されている。筐体101aの内部には、上側コア102と下側コア103とが配置されている。筐体101bの内部には、コイルスプリング108が配置されている。筐体101cの内部には、コイルスプリング109が配置されている。
上側コア102および下側コア103は、磁性体で形成されている。上側コア102および下側コア103は、筐体101aに固定されている。上側コア102の内部には、上側コイル104が配置されている。下側コア103の内部には、下側コイル105が配置されている。上側コイル104は、励磁するために電力を供給する電力供給装置106に接続されている。下側コイル105は、励磁するために電力を供給する電力供給装置107に接続されている。それぞれの電力供給装置106,107は、電子制御ユニット31に制御されている。
排気弁8の棒状のステム8aは、上側コア102および下側コア103を貫通している。ステム8aは、上側コア102および下側コア103の内部を移動可能に形成されている。ステム8aには、それぞれのコイルスプリング108,109を押圧するためのスプリングリテーナ110,111が固定されている。排気弁8は、コイルスプリング108により、矢印561に示す方向に付勢されている。排気弁8は、コイルスプリング109により、矢印562に示す方向に付勢されている。
電磁駆動装置100は、ステム8aに固定されている可動子112を含む。可動子112は、上側コア102と下側コア103との間に配置されている。可動子112は、磁性体で形成されている。上側コイル104および下側コイル105に通電されていないときには、排気弁8は、コイルスプリング108,109の付勢力により、中立位置に維持される。筐体101cには、排気弁8の位置を検出するためのリフトセンサ113が取り付けられている。リフトセンサ113は、移動方向における排気弁8の位置を検出可能に形成されている。リフトセンサ113の出力は、電子制御ユニット31に入力される。
排気弁8を閉じるときには、電力供給装置106が上側コイル104に通電して上側コア102を励磁する。可動子112が上側コア102に引き寄せられることにより排気弁8が閉じる。排気弁8を開くときには、電力供給装置107が下側コイル105に通電して下側コア103を励磁する。可動子112が下側コア103に引き寄せられることにより、排気弁8が開く。
図21に、本実施の形態における第2の補正制御のフローチャートを示す。
始めに、ステップ251においては、内燃機関が停止しているときに始動要求を検出する。
次に、ステップ252においては、特定気筒があるか否かを検出する。すなわち、内燃機関が停止しているときに、圧縮行程の吸気弁が閉じる位置からピストンが圧縮上死点に到達するまでの区間内にて停止している気筒があるか否かを検出する。特定気筒がない場合には、ステップ254に移行して通常の始動制御を行う。特定気筒がある場合には、ステップ253に移行する。
次に、ステップ253においては、特定気筒において排気弁の開閉を行なう。特定気筒において排気弁の開閉を行なうことにより、特定気筒の燃焼室に貯留する気体を機関排気通路に排出することができる。停止期間中に気体ばねからの漏れにより、燃焼室の圧力が高くなっている場合にも燃焼室の圧力を下げることができる。
ステップ254においては、通常の始動制御を行なう。すなわち、始動機を駆動させてクランキングを行なう。全ての気筒の燃焼室において燃料の燃焼を行なうことにより、内燃機関が始動する。
図22に、本実施の形態における第2の補正制御のタイムチャートを示す。時刻t1において、内燃機関の始動要求が検出されている。時刻t1から時刻t2までの期間において、特定気筒の排気弁を開く制御を行っている。時刻t2において、始動機を始動してクランキングを開始している。時刻t3において、クランキングが終了している。このように、第2の補正制御においては、内燃機関を始動すべきときに特定気筒の排気弁を開く制御を行っている。
図23に、始動時の燃焼室の圧力と始動時間との関係を説明するグラフを示す。横軸が始動時の燃焼室の圧力であり、縦軸が始動時間である。燃焼室の圧力が高くなるほど、始動時間が長くなることが分かる。また、燃焼室の圧力が圧力Pthよりも大きな範囲では、始動機の駆動力が不足して始動が不可能になることが分かる。
本実施の形態の第2の制御においては、停止期間中に特定気筒の燃焼室の圧力が高くなっている場合にも、圧力を下げてクランキングを開始することができる。このために、安定した始動を行うことができる。または、始動時間を短くすることができる。たとえば、図23を参照して、始動時の燃焼室の圧力が圧力Pthよりも高くなっている場合には、燃焼室を圧力Pth未満にして始動を開始することができる。
本実施の形態の第2の補正制御においては、特定気筒を検出し、特定気筒の排気弁を開く制御を行っているが、この形態に限られず、特定気筒を検出せずに全ての気筒において、開閉弁の開閉を行っても構わない。また、開閉弁を開く制御としては、排気弁に限られず、吸気弁および排気弁のうち少なくとも一方の弁を開く制御を行なうことができる。
また、開閉弁を開く制御においては、開閉弁の移動量を調整しても構わない。たとえば、本実施の形態の第2の補正制御においては、燃焼室に貯留している空気を逃すことができれば良いために、開閉弁の移動量を通常運転時の開閉弁の移動量よりも小さくしても構わない。図20を参照して、開閉弁の移動量の制御は、上側コイル104および下側コイル105のうち、少なくとも一方に供給する電力量を調整することにより行なうことができる。
なお、開閉弁を開閉する装置は、電磁駆動装置に限られず、内燃機関を始動すべきときに、開閉弁を開閉することができる任意の装置を採用することができる。
次に、本実施の形態の第3の補正制御について説明する。第3の補正制御においては、内燃機関を始動すべきときに、内燃機関の出力軸を逆回転することにより開閉弁を開ける。特定気筒の燃焼室に貯留されている気体を機関吸気通路または機関排気通路に放出させる制御を行なう。本実施の形態の第3の補正制御においては、3気筒の内燃機関を例に取り上げて説明する。第3の補正制御を行う内燃機関は、出力軸と開閉弁のカムとが連動している。すなわち、クランクシャフトの回転が吸気カムおよび排気カムに伝達され、吸気カムおよび排気カムが回転している。
図24は、本実施の形態における第3の補正制御を行なう内燃機関の燃焼サイクルの行程図である。第3の補正制御を行う内燃機関は、第1気筒、第3気筒および第2気筒が、この順に点火される。3気筒の内燃機関においても、いずれかの気筒がクランキングが困難な区間で停止する場合がある。すなわち、圧縮行程において吸気弁が閉じる位置からピストンが圧縮上死点に到達するまでの区間で停止する特定気筒がある場合がある。内燃機関を停止したときに、特定気筒がある場合にはクランキングが不安定または不可能になる。
図25に、本実施の形態における内燃機関の始動機の概略図を示す。本実施の形態における始動機は、始動モータ115aを備える。始動モータ115aは、モータ軸119aを有する。モータ軸119aには、ピニオンギヤ118aが嵌め込まれている。ピニオンギヤ118aは、モータ軸119aの延びる方向に沿って移動可能なように形成されている。クランクシャフト46には、リングギヤ120が接続されている。
本実施の形態における始動機は、ピニオンギヤ118aを移動させるためのマグネットスイッチ116aを有する。マグネットスイッチ116aは、レバー117aの一方の端部に接続されている。レバー117aは、支点121を中心に揺動可能に形成されている。レバー117aの他方の端部は、ピニオンギヤ118aに接続されている。始動モータ115aおよびマグネットスイッチ116aは、電子制御ユニット31により制御されている。
エンジンを始動する場合には、マグネットスイッチ116aが駆動することにより、レバー117aの一方の端部が、矢印563に示す方向に移動する。レバー117aが揺動することにより、ピニオンギヤ118aは、矢印564に示す方向に移動する。ピニオンギヤ118aと、リングギヤ120とが噛み合う。始動モータ115aが駆動することにより、ピニオンギヤ118aが回転する。ピニオンギヤ118aが回転することにより、矢印565に示す向きに、リングギヤ120が回転する。ここで、矢印565は、通常運転時における回転方向であり、正回転の方向である。リングギヤ120が回転することにより、クランクシャフト46が回転して内燃機関の始動を行なうことができる。内燃機関の始動が完了したら、マグネットスイッチ116aが駆動することにより、ピニオンギヤ118aがリングギヤ120から離される。
第3の補正制御においては、内燃機関を始動すべきときに、内燃機関の出力軸としてのクランクシャフトを逆回転させる。本実施の形態においては、始動機を逆回転させる制御を行う。
図26に、本実施の形態における第3の補正制御のフローチャートを示す。第3の補正制御においては、第1気筒が特定気筒である場合を例に取り上げて説明する。すなわち、第1気筒がクランキングが困難な区間で停止している場合を例に取り上げて示す。
始めに、ステップ261において、内燃機関が停止しているときに始動要求を検出する。
次に、ステップ262において、内燃機関のクランクシャフトを始動機により逆回転させる。本実施の形態においては、予め定められた回転角度でクランクシャフトを逆回転させる。図25を参照して、本実施の形態においては、始動モータ115aを逆回転させることにより、リングギヤ120を逆回転させる。リングギヤ120は、矢印565の向きと反対向きに回転する。リングギヤ120が逆回転することにより、クランクシャフト46が逆回転する。クランクシャフト46が逆回転することにより、燃焼サイクルが逆方向に進行して吸気弁が開く。このため、燃焼室に貯留している気体を機関吸気通路に逃すことができる。
次に、ステップ263において、通常の始動制御を行う。特定気筒の燃焼室の圧力が降下している状態から始動を行うことができるために、内燃機関を安定して始動することができる。
図24を参照して、本実施の形態においては、第1気筒が特定気筒である。第1気筒においては、停止期間中に気体ばねから漏れた空気が燃焼室に貯留される。内燃機関の出力軸を逆回転することにより、燃焼サイクルは逆方向に進む。クランキングが困難な区間内で停止している第1気筒では、燃焼サイクルが逆方向に進むことにより吸気弁が開く。吸気弁が開くことにより、燃焼室に貯留されていた気体を機関吸気通路に逃すことができる。この結果、気体ばねの漏れにより特定気筒の燃焼室の圧力が高くなっている場合に、特定気筒の燃焼室の圧力を低下させることができる。燃焼室の圧力が低下した状態でクランキングを開始することができる。このために、安定して内燃機関を始動することができる。
図27に、本実施の形態における第3の補正制御のタイムチャートを示す。時刻t1において、内燃機関の始動要求を検出している。時刻t1から時刻t2まで、始動機を逆回転させている。始動機が逆回転することにより、内燃機関の出力軸も逆回転する。燃焼サイクルは逆方向に進む。時刻t2から時刻t3までは、通常の始動制御を行なっている。時刻t3において、内燃機関の通常の始動制御を終了している。すなわち、クランキングを終了している。
図24を参照して、内燃機関の出力軸を逆回転させる回転角度としては、内燃機関の停止時にクランキングが困難な区間内に停止している気筒において、吸気弁が開くまで逆回転させることができる回転角度が好ましい。たとえば、圧縮行程において吸気弁が閉じる時期からピストンが圧縮上死点に到達するまでの回転角度以上の角度で、逆回転させる制御を行なうことが好ましい。本実施の形態においては、予め定められた回転角度で内燃機関の出力軸を逆回転させているが、この形態に限られず、予め定められた時間の間、逆回転を行なっても構わない。または、クランク角度を検出し、特定気筒の吸気弁が開く回転角度を算出し、算出した回転角度に基づいて逆回転を行っても構わない。
本実施の形態の第3の補正制御においては、内燃機関を始動すべきときに、特定気筒があるか否かを検出せずに、内燃機関の出力軸を逆回転させているが、この形態に限られず、内燃機関を停止している期間中に特定気筒があるか否かを判別し、特定気筒がない場合には、第3の補正制御を行なわなくても構わない。
次に、本実施の形態における第4の補正制御について説明する。第4の補正制御においては、大きな第1の駆動力でクランキングを開始した後に、第1の駆動力よりも小さな第2の駆動力に切替えてクランキングを継続する制御を行う。
図28に、本実施の形態における第4の補正制御を行う内燃機関の始動機の概略図を示す。第4の補正制御を行う内燃機関の始動機は、駆動力が可変に形成されている。始動機は、複数の始動モータ115a,115bを含む。リングギヤ120を回転させる第1回転装置は、始動モータ115a、マグネットスイッチ116a、レバー117a、およびピニオンギヤ118aを含む。第1回転装置は、本実施の形態における第3の補正制御を行う内燃機関の始動機と同様である(図25参照)。
第4の補正制御を行う内燃機関の始動機は、リングギヤ120を回転させる第2回転装置を含む。第2回転装置は、始動モータ115b、マグネットスイッチ116b、レバー117b、ピニオンギヤ11bを含む。本実施の形態における第2回転装置は、第1回転装置と同様の構成を有する。第2回転装置は、ピニオンギヤ118bが移動することにより、ピニオンギヤ118bがリングギヤ120と噛み合うように形成されている。
本実施の形態においては、第1回転装置および第2回転装置は、電子制御ユニット31に制御されている。また、2つの始動モータ115a,115bは、互いに独立に制御されている。マグネットスイッチ116a,116bは、互いに独立に制御されている。
図29に、本実施の形態における第4の補正制御のフローチャートを示す。
始めに、ステップ271においては、内燃機関が停止しているときに始動要求を検出する。
次に、ステップ272においては、内燃機関が停止している時のクランク角度を検出する。検出したクランク角度に基づいて、それぞれの気筒におけるピストンの位置を推定することができる。
次に、ステップ273において、特定気筒があるか否かを検出する。ステップ273において、特定気筒がある場合にはステップ274に移動する。
ステップ274においては、第1の駆動力にてクランキングを開始する。第1の駆動力にて、予め定められた回転角度の回転を行う。第1の駆動力は、内燃機関を始動すべきときに特定気筒がある場合にも内燃機関の出力軸を回転させることができる大きさを有する。図28を参照して、マグネットスイッチ116a,116bを駆動することにより、2つのピニオンギヤ118a,118bをリングギヤ120に噛み合わせる。2つの始動モータ115a,115bを駆動する。2つの始動モータ115a,115bによりリングギヤ120を介してクランクシャフトに第1の駆動力を供給する。本実施の形態においては、2つの始動モータ115a,115bにて内燃機関の出力軸を回転することにより、特定気筒がある場合にもクランクシャフトを回転させて始動を行うことができる。
次に、ステップ275においては、予め定められた回転角度の回転を行った後に、第1の駆動力よりも小さな第2の駆動力に切替えてクランキングを継続する。図28を参照して、本実施の形態においては、ピニオンギヤ118bをリングギヤ120から引き離す。始動モータ115bによる駆動力の供給を停止する。1つの始動モータ115aによりリングギヤ120を回転させる制御を行う。第2の駆動力にてクランキングを行う通常の始動制御を行う。
ステップ273において、特定気筒がない場合には、ステップ276に移行する。ステップ276においては、1つの始動モータ115aを用いる。第2の駆動力にてリングギヤ120の回転を開始させる制御を行う。ステップ275に移行して、第2の駆動力にてクランキングを継続する。すなわち、通常の始動制御を行う。
図30に、本実施の形態の内燃機関の第4の補正制御のタイムチャートを示す。
時刻t1において、内燃機関の始動要求を検出している。始動機による内燃機関の始動を開始している。本実施の形態においては、時刻t1から時刻t2までの期間は、2つの始動モータ115a,115bによりクランクシャフト46を回転させている。第1の駆動力によりクランキングを行なっている。時刻t1から時刻t2まで、予め定められた回転角度の回転を行っている。
時刻t2において、クランクシャフト46を回転させる駆動力を第1の駆動力から第2の駆動力に切替えている。時刻t2から時刻t3までの期間は、1つの始動モータ115aにてクランクシャフト46を回転させている。時刻t3において内燃機関の始動が完了している。
本実施の形態の第4の補正制御においては、内燃機関を始動すべきときに、特定気筒がある場合には、第1の駆動力により始動を開始した後に、第1の駆動力よりも小さな駆動力により始動を継続している。この制御により、内燃機関が停止したときに特定気筒がある場合に、大きな駆動力で内燃機関の出力軸を回転させることができる。内燃機関の始動を安定して行なうことができる。また、始動機に供給する電力を抑制しながら内燃機関の始動を行なうことができる。
第1の駆動力にて始動を行なう回転角度としては、少なくとも特定気筒のピストンが圧縮上死点に到達するまでの回転角度であることが好ましい。例えば、ステップ274における予め定められた回転角度は、圧縮行程における吸気弁が閉じる時期からピストンが圧縮上死点に到達するまでの回転角度以上の角度を採用することができる。
内燃機関の始動を行なう場合に、始動機に電力を供給する蓄電池の負荷を小さくするために、始動機に供給する電力は小さい方が好ましい。第1の駆動力にて内燃機関の始動を行なう区間を短くすることにより、蓄電池の負荷を抑制することができる。
本実施の形態の第4の補正制御を行う内燃機関の始動機は、複数のモータを含むが、この形態に限られず、始動機は、特定気筒がある場合に内燃機関の出力軸を回転させることができ、さらに、駆動力を変化させることができれば構わない。例えば、大きな駆動力を発生する1つ始動モータを含み、モータに供給する電力を変更することにより、第1の駆動力および第1の駆動力よりも小さな第2の駆動力を発生させても構わない。
また、本実施の形態における第4の補正制御を行なう場合には、始動時に特定気筒における燃焼室の圧力が高くなるために、始動時に内燃機関が破損しないような十分な強度を有する構成部品により内燃機関が形成されていることが好ましい。
本実施の形態における第4の補正制御においては、特定気筒があるか否かの判別を行っているが、この形態に限られず、特定気筒があるか否かの判別を行わずに、内燃機関を始動する度に、上記の第1の駆動力にてクランキングを開始する制御を行っても構わない。
次に、本実施の形態における第5の補正制御について説明する。第5の補正制御を行う内燃機関は、可変圧縮機構を備え、圧縮比を変更可能に形成されている。内燃機関を始動すべきときに、圧縮比を低くする制御を行う。
図31は、本実施の形態における第5の補正制御を行う内燃機関の圧縮比可変機構の分解斜視図である。図32は、第5の補正制御を行う内燃機関の燃焼室の部分の第1の概略断面図である。
図31および図32を参照して、シリンダブロック2の両側の側壁の下方には複数個の突出部130が形成されている。突出部130には、断面形状が円形のカム挿入孔131が形成されている。クランクケース129の上壁には、複数個の突出部132が形成されている。突出部132には、断面形状が円形のカム挿入孔133が形成されている。クランクケース129の突出部132は、シリンダブロック2の突出部130同士の間に嵌合する。
本実施の形態における圧縮比可変機構は、一対のカムシャフト134,135を含む。それぞれのカムシャフト134,135には、カム挿入孔131内に回転可能に挿入される円形カム136が固定されている。これらの円形カム136は、カムシャフト134,135の回転軸と同軸状に形成されている。
一方で、図32に示すように、円形カム136同士の間には、それぞれのカムシャフト134,135の回転軸に対して偏心して配置された偏心軸137が延びている。偏心軸137には、円形カム138が偏心して回転可能に取付けられている。円形カム138は、それぞれの円形カム136同士の間に配置されている。これら円形カム138は、対応するカム挿入孔133内にて回転可能に支持される。
圧縮比可変機構は、駆動モータ139を含む。駆動モータ139の回転軸140には、螺旋方向が互いに逆向きの2つのウォームギヤ141,142が取付けられている。それぞれのカムシャフト134,135の端部には、歯車143,144が固定されている。歯車143,144は、ウォームギヤ141,142と歯車143,144とが噛み合うように配置されている。駆動モータ139が回転軸140を回転させることにより、カムシャフト134,135を、互いに反対方向に回転させることができる。
図32を参照して、それぞれのカムシャフト134,135上に固定された円形カム136を、矢印570に示すように互いに反対方向に回転させると、偏心軸137が下端に向けて移動する。円形カム138は、カム挿入孔133内において、矢印571に示すように円形カム136と反対方向に回転する。
図33に、第5の補正制御を行う内燃機関の燃焼室の部分の第2の概略断面図を示す。図33は、内燃機関が低圧縮比になったときの概略図である。図33に示されるように偏心軸137が下端まで移動すると、円形カム138の中心軸が偏心軸137よりも下方に移動する。図32および図33を参照して、クランクケース129とシリンダブロック2との相対位置は、円形カム136の中心軸と円形カム138の中心軸との距離によって定まる。円形カム136の中心軸と円形カム138の中心軸との距離が大きくなるほど、矢印572に示すようにシリンダブロック2はクランクケース129から離れる。シリンダブロック2がクランクケース129から離れるほど、ピストン3が圧縮上死点に達したときの燃焼室5aの容積が大きくなる。
本実施の形態における圧縮比可変機構は、圧縮行程において吸気弁を閉じる時期をほぼ一定にしている。このために、吸気弁が閉じたときのピストンの位置からピストンが圧縮上死点に到達するまでの燃焼室の容積、すなわち行程容積は、ほぼ一定である。
図32では、ピストン3が圧縮上死点に到達しているときの燃焼室5aの容積が小さくなっている。この状態では、実際の圧縮比が大きくなる。これに対して、図33では、ピストン3が圧縮上死点に到達しているときの燃焼室5aの容積が大きくなっている。この位置では、実際の圧縮比が小さくなる。このように圧縮比を変更することができる。
本実施の形態における圧縮比可変機構は、クランクケースに対してシリンダブロックを相対移動することにより圧縮比を変更しているが、この形態に限られず、燃焼室おいて燃料が燃焼するときの実際の圧縮比を変更できる任意の機構を採用することができる。
図34に、本実施の形態における第5の補正制御のフローチャートを示す。
始めに、ステップ281においては、内燃機関が停止しているときに始動要求を検出する。
次に、ステップ282においては、圧縮比可変機構により低圧縮比に変更する。内燃機関を始動すべき時に燃焼室における圧縮比を低下させる制御を行う。図31および図33を参照して、本実施の形態においては、駆動モータ139を駆動することにより、カムシャフト134,135を回転させる。シリンダブロック2をクランクケース129から離す制御を行う。たとえば、図33に示すように、ピストン3が圧縮上死点に到達したときの燃焼室5aの容積が最も大きくなるように制御する。
次に、ステップ283において、クランキングを開始する。
次に、ステップ284において、クランキングを開始した後に1番目の気筒の圧縮行程が完了したか否かを検出する。ステップ284において、1番目の気筒の圧縮行程が完了していない場合には、ステップ284を繰り返す。
ステップ284において、1番目の気筒の圧縮行程が完了したら、ステップ285に移動して、通常の始動制御を行う。例えば、燃料が燃焼するときの実際の圧縮比を高圧縮比に切り替える制御を行う。
図35に、本実施の形態における第5の補正制御のタイムチャートを示す。時刻t1において、内燃機関の始動要求を検出している。時刻t1において、内燃機関の圧縮比を低下させている。本実施の形態においては、クランクケース129からシリンダブロック2を遠ざける制御を行う。圧縮比可変機構により、燃焼室の圧縮比を低下させる。燃焼室の圧縮比が予め定められた低い値になったら、時刻t2において始動機によりクランキングを開始している。
本実施の形態においては、クランク角度を検出し、1番目の気筒の圧縮行程が完了したときに燃焼室の圧縮比を戻している。時刻t3において通常の始動制御に移行している。本実施の形態においては、時刻t3において圧縮比を元に戻す制御を行なっている。さらに、クランキングを継続して、時刻t4において内燃機関の始動が終了している。
本実施の形態の第5の補正制御においては、内燃機関を始動すべきときに、燃焼室の圧縮比を低下させている。また、内燃機関を始動すべきときに、燃焼室の圧力を低下させている。この制御を行うことにより、特定気筒があった場合に、始動時の圧縮行程において到達する燃焼室の最大圧力を抑制することができる。または、内燃機関を始動したときに、始めに圧縮行程になる気筒の燃焼室が到達する最大圧力を低く抑えることができる。第5の補正制御においても、内燃機関を安定して始動することができる。
本実施の形態の第5の補正制御においては、特定気筒を検出していないが、この形態に限られず、特定気筒を検出し、特定気筒のピストンが圧縮上死点に到達するまで低圧縮比を継続しても構わない。特定気筒において圧縮行程が完了したら通常の始動制御に切り替えることができる。または、特定気筒がない場合には、通常の始動制御を行っても構わない。
本実施の形態における内燃機関は、実施の形態1と同様に、気体ばねから燃焼室に向かって気体の漏れを検出する漏れ検出装置を備えることができる。漏れ検出装置により気体ばねから燃焼室への気体の漏れを検出し、制御補正装置により漏れに対応した上述の補正制御を行なうことができる。停止期間中に気体ばねの漏れを検出した場合には、本実施の形態における第1の補正制御から第5の補正制御のいずれかの制御を行なうことができる。
次に、本実施の形態における漏れ検出制御について説明する。本実施の形態における漏れ検出制御は、停止している期間における漏れ量を推定し、推定した漏れ量が予め定められた判定値よりも大きいか否かを判別する。
図36は、本実施の形態における第1の漏れ検出制御のフローチャートである。第1の漏れ検出制御においては、停止期間中に密閉されている燃焼室の圧力に基づいて、停止期間中における気体ばねの漏れを検出する。
始めに、ステップ301においては、内燃機関の始動要求を検出する。
次に、ステップ302においては、気体ばねに空気を供給する。図2を参照して、気体供給装置を始動する。モータ71を駆動して圧縮機72にて加圧した空気を気体ばね50a〜50dに供給する。圧力調整弁85を開くことにより、それぞれの気体ばね50a〜50dのガス室61の圧力を、所望の圧力にすることができる。
次に、ステップ303において、複数の気筒のうち吸気弁および排気弁が閉止している気筒を検出する。検出する気筒は、圧縮行程の気筒のみではなく膨張行程の気筒であっても構わない。図5を参照して、膨張行程においても圧縮上死点から排気弁が開き始めるまでの区間においては、吸気弁および排気弁が閉じた状態になっている。このような燃焼室が密閉された状態の気筒kを検出する。クランク角度を検出することにより、燃焼室が密閉された状態の気筒kを検出することができる。
次に、ステップ304において、検出した気筒kの燃焼室の圧力PCCXを検出する。図3を参照して、燃焼室5aの圧力は、筒内圧センサ75により検出することができる。
次に、ステップ305において、予め定められた時間の間待機する。気体ばね50a〜50dのガス室61から燃焼室に漏れる気体の漏れ量に応じて、燃焼室の圧力が上昇する。本実施の形態の第1の漏れ検出制御においては、この圧力上昇量を検出する。
次に、ステップ306において、気筒kの燃焼室の圧力PCCYを検出する。
次に、ステップ307においては、所定の時間待機したときの圧力上昇量(PCCY−PCCX)を算出し、この圧力上昇量が予め定められた判定値よりも大きいか否かを判別する。所定の時間における燃焼室の圧力上昇量が判定値よりも大きな場合は、気体ばね50a〜50dから燃焼室に空気が漏れていると判別することができる。
ステップ307において、圧力上昇量(PCCY−PCCX)が判定値よりも大きな場合には、ステップ308に移行する。ステップ308においては、漏れ判定フラグを1にする。ステップ307において、圧力上昇量(PCCY−PCCX)が判定値以下の場合にはステップ309に移行する。この場合には、気体ばねからの漏れ量が零か、または気体の漏れ量が許容範囲内と判別する。ステップ309においては、漏れ判定フラグを0にする。
このように、本実施の形態の第1の漏れ検出制御においては、内燃機関が停止している期間中において、気体ばねに空気を供給し、密閉されている燃焼室の圧力上昇量を検出することにより気体ばねの漏れの検出を行なうことができる。
図37に、内燃機関の始動時に行う制御のフローチャートを示す。ステップ311においては、漏れ検出制御により定められた漏れ判定フラグが1か否かが判別される。漏れ判定フラグが1である場合には、ステップ312に移行する。ステップ312においては、補正制御を伴って始動する。すなわち、本実施の形態における第1の補正制御から第5の補正制御のうち、少なくとも1つの補正制御を伴って内燃機関を始動する。
ステップ311において、漏れ判定フラグが1でない場合、すなわち漏れ判定フラグが0である場合には、ステップ313に移行する。ステップ313においては、通常始動を行なう。
図38に、本実施の形態における第2の漏れ検出制御のフローチャートを示す。第2の漏れ検出制御においては、気体供給装置により気体を供給したときのガス室の圧力変化に基づいて、気体ばねの漏れを検出する。
始めに、ステップ321においては、内燃機関の始動要求を検出する。
次に、ステップ322においては、気体ばねのガス室の圧力PGSXを検出する。図2および図3を参照して、それぞれの気体ばね50a〜50dのガス室61の圧力は、圧力センサ74により検出することができる。内燃機関の停止期間中においては、副室用ピストン55は、着底している状態である。すなわち、副室用ピストン55は、係止部52に接触している状態である。
次に、ステップ323においては、気体ばねへの空気の供給を開始する。気体供給装置を始動して、圧力調整弁85を開いた状態にする。それぞれの気体ばね50a〜50dのガス室61に気体を供給する。ガス室61の内部の圧力が上昇する。
次に、ステップ324においては、所定の時間待機する。気体ばねのガス室61の圧力が十分に上昇して略一定になるまで待機する。気体ばねに漏れが生じている場合には、気体ばねのガス室の圧力上昇量が大きくなる。
次に、ステップ325においては、それぞれの気体ばね50aのガス室61の圧力PGSYを検出する。
ステップ326においては、気体供給装置による気体の供給を開始する前に検出した気体ばねのガス室の圧力と、気体ばねに空気を供給した後の気体ばねのガス室の圧力との差を算出する。圧力上昇量(PGSY−PGSX)を算出し、圧力上昇量が判定値よりも大きいか否かを判別する。ステップ326において、圧力上昇量(PGSY−PGSX)が判定値よりも大きい場合には、ステップ327に移行する。この場合には、気体ばねから燃焼室に向かって空気が漏れていると判別する。ステップ327においては、漏れ判定フラグを1にする。
ステップ326において、圧力上昇量(PGSY−PGSX)が、判定値以下の場合はステップ328に移行する。この場合には、気体ばねからの空気の漏れ量が零か、または空気の漏れ量が許容範囲内と判別することができる。ステップ328においては、漏れ判定フラグを0にする。本実施の形態の第2の漏れ検出制御においても、気体ばねから空気が漏れているか否かを検出することができる。
本実施の形態における第1の漏れ検出制御および第2の漏れ検出制御において、内燃機関が複数の気筒を有する場合の圧力上昇量の算出においては、1つの気筒を選定しても複数の気筒を選定しても構わない。複数の気筒を選定した場合には、たとえば、複数の気筒の圧力上昇量の平均値を判定値と比較することができる。
図39に、本実施の形態における第3の漏れ検出制御のフローチャートを示す。本実施の形態の第3の漏れ検出制御においては、内燃機関を始動すべき時に、それぞれの気体ばねに供給される全体の空気量を検出し、検出した全体の空気量に基づいて気体ばねの漏れの判定を行う。
始めに、ステップ330においては、内燃機関の始動要求を検出する。
次に、ステップ331においては、気体ばねのガス室の圧力PGSXを検出する。
次に、ステップ332において、ガス室の圧力PGSXが、制御圧力に対応した予め定められた圧力よりも小さいか否かを検出する。ガス室の圧力PGSXが、制御圧力に対応した圧力よりも小さい場合には、ステップ333に移行する。
ステップ333においては、気体供給装置により気体ばねに空気を供給する。
次に、ステップ335において、気体ばねへの空気の供給を開始してから所定の時間が経過したか否かを検出する。ここでの所定の時間は、ガス室の圧力が所望の圧力に到達するために十分な時間を採用することができる。
ステップ335において、所定の時間が経過していない場合には、ステップ331に戻り、気体ばねに空気を供給する。このように、ガス室61の圧力が制御圧力に対応した圧力になるまで空気の供給を継続する。ステップ332において、ガス室の圧力PGSXが制御圧力に対応する圧力以上になったら、ステップ334に移行する。ステップ334においては、気体ばねのガス室を密閉する。図2および図3を参照して、本実施の形態においては、それぞれの気体ばね50a〜50dに接続される流路に配置されている圧力調整弁85を閉止する。ステップ335において、所定の時間が経過した後にはステップ336に移行する。
ステップ336においては、ガス室50a〜50dに供給した空気の流量積算値を算出する。すなわち、ガス室50a〜50dに供給した全体の空気量を検出する。
図2を参照して、本実施の形態においては、それぞれの気体ばね50a〜50dに気体を供給する流路の途中に流量センサ76が配置されている。電子制御ユニット31には、流量センサ76の出力信号が入力される。流量センサ76により検出される流量を積算することにより、気体ばね50a〜50dに供給した空気の流量積算値を検出することができる。
次に、ステップ337においては、流量積算値が判定値よりも大きいか否かを判別する。すなわち、気体ばねに供給した全体の空気量が判定値よりも多いか否かを判別する。ステップ337において、流量積算値が判定値よりも大きい場合には、ステップ338に移行する。この場合には、気体ばねから空気が漏れていると判別することができる。ステップ338においては、漏れ判定フラグを1にする。
ステップ337において、流量積算値が判定値以下である場合にはステップ339に移行する。この場合には、空気の漏れ量が零か、または空気の漏れ量が許容範囲内であると判別することができる。ステップ339においては、漏れ判定フラグを0にする。
第2の漏れ検出制御または第3の漏れ検出制御を行なった後においては、本実施の形態における第1の漏れ検出制御と同様に、補正制御を行なうか否かの制御を行なうことができる(図37参照)。
本実施の形態においては、内燃機関の始動要求があった後に、漏れ検出制御を行なっているが、この形態に限られず、停止期間中の任意の時期に漏れ検出制御を行なうことができる。
ところで、本実施の形態における第1の漏れ検出制御においては、燃焼室の圧力上昇量を算出している。第2の漏れ検出制御においては、気体ばねのガス室の圧力上昇量を算出している。第3の漏れ検出制御においては、気体ばねに供給した全体の空気量を検出している。それぞれの圧力上昇量および空気量は、気体ばねの気体の漏れ量に換算することができる。すなわち、それぞれの圧力上昇量および供給した空気量は、気体ばねの空気の漏れ量に相当する。このため、本実施の形態における第1の漏れ検出制御から第3の漏れ検出制御は、換言すれば、気体ばねの気体の漏れ量を算出している。本実施の形態における漏れ検出制御では、停止期間中における気体ばねの空気の漏れ量を検出し、空気の漏れ量が予め定められた判定値よりも大きい場合には、補正制御を行っている。
更に、気体ばねから漏れた空気量は、圧力や流量等に基づいて推定する他に、内燃機関の停止時間に基づいて推定することができる。
次に、本実施の形態の内燃機関の停止時間に基づいて、気体ばねの空気の漏れ量を推定する制御について説明する。気体ばねから漏れた空気量は時間とともに変化する。このために、空気の漏れ量は、内燃機関の停止時間に基づいて推定することができる。
図40に、本実施の形態における内燃機関の停止時間と、空気の漏れ量との関係を説明するグラフを示す。横軸は、内燃機関が停止してからの経過時間であり、縦軸は漏れた空気の重量である。気体ばねから漏れた空気の重量は、密閉している燃焼室の圧力上昇量に対応する。
気体ばねから燃焼室に漏れた空気の重量(漏れ空気重量)は、停止した直後において急激に上昇し、その後に緩やかに上昇を続ける。漏れ空気重量は、最終的には、ほぼ一定の値に収束することが分かる。このように漏れ空気重量は、時間に対して非線形に上昇する。最終的に、ほぼ一定の値に収束するまでの時間は、気体ばねの密封構造等に依存する。例えば、内燃機関が停止してからの経過時間と漏れ空気重量との関係を、電子制御ユニットに記憶させておくことができる。内燃機関が停止したときからの経過時間を検出することにより、漏れ空気重量を推定することができる。
図41に、本実施の形態における第4の漏れ検出制御のフローチャートを示す。
ステップ315においては、内燃機関が停止してからの経過時間に基づいて、停止期間中の空気の漏れ量を推定する。本実施の形態においては、漏れ空気重量を推定する。
次に、ステップ316において、推定した漏れ空気重量が判定値よりも大きいか否かを判別する。漏れ空気重量が判定値よりも大きければ、ステップ317に移行する。ステップ317においては、漏れ判定フラグを1にする。
ステップ316において、漏れ空気重量が判定値以下である場合には、ステップ318に移行する。ステップ318においては、漏れ判定フラグを0にする。第4の漏れ検出制御を行なった後においては、本実施の形態における第1の漏れ検出制御と同様に、補正制御を行なうか否かの制御を行なうことができる(図37参照)。
なお、本実施の形態においては、空気量として空気重量を例示しているが、この形態に限られず、空気量を示す任意の変数を採用することができる。たとえば、漏れた空気の体積や圧力を採用しても構わない。
ところで、空気の漏れ量は、内燃機関が停止してからの経過時間のみではなく他の変数の影響を受ける。空気の漏れ量を推定する制御では、空気の漏れ量に影響を与える変数を考慮することができる。
図42は、内燃機関が停止したときのピストンの停止位置が、燃焼室の圧力に与える影響を説明するグラフである。縦軸は、燃焼室の圧力である。圧縮行程において吸気弁および排気弁が閉止した状態で、ピストンの停止位置が互いに異なる3つのグラフを示している。吸気弁が閉止したときのそれぞれの気筒の燃焼室の圧力は同一である。
燃焼室の圧力の変化は、漏れ空気重量に対応する。すなわち、燃焼室の圧力の上昇は、漏れ空気重量が多くなったことを示している。内燃機関が停止したときのピストンの停止位置が圧縮上死点に近いほど、燃焼室の圧力上昇が速いことが分かる。すなわち、漏れ空気重量の上昇速度が大きいことが分かる。また、十分に時間が経過した後には、ピストンの停止位置に関係なく、ほぼ一定の漏れ空気重量になることが分かる。このように、空気の漏れ量は、内燃機関が停止したときのピストンの停止位置に依存する。
図43は、燃焼室の壁面の温度が、燃焼室の圧力に与える影響を説明するグラフである。燃焼室の壁面が低温の場合、燃焼室の壁面の温度が中程度の場合、燃焼室の壁面が高温の場合のグラフが示されている。壁面が低温の場合とは、内燃機関を冷間始動した後に短時間で停止した場合が例示される。また、内燃機関を停止したときに、燃焼室内の気体の温度と燃焼室の壁面の温度とがほぼ同じ場合が例示される。壁面の温度が中程度の場合とは、内燃機関を停止したときに、燃焼室内の気体の温度よりも燃焼室の壁面の温度が高い場合が例示される。更に、壁面が高温とは、燃焼室内の気体の温度よりも燃焼室の壁面の温度が非常に高い場合が例示される。
内燃機関を停止した直後においては、燃焼室の壁面の温度に関係なく、燃焼室の圧力の上昇速度がほぼ一定であることが分かる。また、所定の時間の経過後には、燃焼室の壁面の温度が高いほど、燃焼室の圧力の上昇速度が速くなることが分かる。このように、漏れ空気重量は、燃焼室の壁面の温度に依存する。
図44は、内燃機関が停止したときの初期の燃焼室の圧力が、停止期間中の燃焼室の圧力に与える影響を説明するグラフである。ピストンが一定の位置で停止した時の初期の燃焼室の圧力が互いに異なる3つのグラフが示されている。内燃機関が停止したときの初期の燃焼室の圧力が高いほど、燃焼室の圧力の上昇速度が大きいことが分かる。また、内燃機関が停止したときの初期の燃焼室の圧力が高いほど、短時間で燃焼室の圧力の上限値に到達することが分かる。このように、漏れ空気重量は、内燃機関が停止したときの初期の燃焼室の圧力に依存する。
図45は、内燃機関が停止したときの気体ばねのガス室の圧力が、燃焼室の圧力に与える影響を説明するグラフである。燃焼室の圧力が一定である場合に、気体ばねのガス室の圧力が互いに異なる3つのグラフが示されている。気体ばねのガス室の圧力が高いほど、燃焼室の圧力の上昇速度が大きいことが分かる。すなわち、気体ばねの圧力と燃焼室の圧力との差圧が大きいほど、漏れ空気重量の上昇速度が大きいことが分かる。
図46は、気体ばねのガス室を封止するピストンリングの劣化が燃焼室の圧力に与える影響を説明するグラフである。ピストンリングの劣化量が互いに異なる3つのグラフが示されている。ピストンリングの劣化が大きいほど、燃焼室の圧力の上昇速度が大きいことが分かる。ピストンリングの劣化が大きいほど、漏れ空気重量の上昇速度が速いことが分かる。
ピストンリングの劣化量は、たとえば、新品のときの予め定められた条件における空気の漏れ量を記憶しておいて、使用期間中に劣化したときの同じ条件における空気の漏れ量を検出する。新品のときの空気の漏れ量と劣化したときの空気の漏れ量を比較することにより、ピストンリングの劣化量を推定することができる。空気の漏れ量が大きいほどピストンリングの劣化量が大きいと判別することができる。空気の漏れ量は、本発明における漏れ検出制御を行うときに推定することができる。たとえば、本実施の形態における第1の漏れ検出制御を用いて空気の漏れ量を推定することができる。図36を参照して、ステップ307における燃焼室の圧力上昇値から、空気の漏れ量の推定を行なうことができる。
このように、漏れ空気重量は、内燃機関が停止してからの経過時間に加えて、ピストンの停止位置、燃焼室の壁面の温度、停止した初期の燃焼室の圧力、気体ばねのガス室の圧力、およびピストンリングの劣化等の様々な変数の影響を受ける。
漏れ空気重量は、内燃機関が停止してからの経過時間に加えて、これらの変数のうち任意の変数を用いて推定することができる。例えば、ピストンの停止位置を考慮する場合には、内燃機関が停止してからの経過時間と、ピストンの停止位置とを関数にする漏れ空気重量のマップを、電子制御ユニットに記憶させておくことができる。内燃機関が停止してからの経過時間とピストンの停止位置とを検出し、漏れ空気重量のマップを用いて気体ばねから漏れた空気量を推定することができる。
または、任意の変数を関数にする漏れ空気重量を推定した後にさらに他の変数を関数にする補正係数を乗じて漏れ空気重量を補正しても構わない。例えば、始めに内燃機関が停止してからの経過時間とピストンの停止位置とに基づいて漏れ空気重量を推定する。推定した漏れ空気重量に対して、燃焼室の壁面の温度を関数にする補正係数を乗じることにより、漏れ空気重量を修正することができる。
このように、本実施の形態においては、停止してからの経過時間に基づいて、空気の漏れ量を推定することができる。この制御により、停止してからの経過時間の依存性を考慮して空気の漏れ量を推定することができる。更に、停止したときの内燃機関の状態に基づいて空気の漏れ量を推定することにより、より正確に空気の漏れ量を推定することができる。
本実施の形態における第4の漏れ検出制御においては、内燃機関が停止してからの経過時間および空気の漏れ量に影響を与える変数を考慮して、気体ばねからの漏れ量を推定したが、この形態に限られず、本発明における漏れ検出制御において、気体ばねからの気体の漏れが生じているか否かの判別を行うときの判定値を、上記の停止してからの経過時間および空気の漏れ量に影響を与える変数に基づいて変更することができる。
たとえば、図36を参照して、本実施の形態の第1の漏れ検出制御においては、燃焼室の圧力上昇量と判定値とを比較することにより、漏れが生じているか否かを判別している。ステップ307において、燃焼室の圧力上昇量(PCCY−PCCX)と判定値とを比較している。このときの判定値を、内燃機関が停止してからの経過時間および空気の漏れ量に影響を与える変数に基づいて変更することができる。たとえば、内燃機関が停止してからの経過時間が非常に短い場合には、判定値を小さくする制御を行うことができる。この制御により、気体ばねから空気が漏れているか否かをより正確に判別することができる。
本実施の形態においては、停止期間中に気体ばねの漏れを検出しているが、この形態に限られず、運転期間中に気体ばねの漏れを検出しても構わない。たとえば、実施の形態1における運転期間中の漏れ検出制御を行って漏れの判別の結果を保存しておいても構わない。
次に、内燃機関の始動時に、本実施の形態における第1の補正制御から第5の補正制御を禁止する制御について説明する。本実施の形態の補正禁止制御においても、実施の形態1における第1の補正禁止制御(図12参照)、第2の補正禁止制御(図15参照)および第3の補正禁止制御(図16参照)を採用することができる。たとえば、実施の形態1における第1の補正禁止制御と同様に、内燃機関を一時的に停止させる停止装置を備え、停止装置による一時的な停止の場合には、補正制御禁止フラグを1にすることができる。
図47に、本実施の形態における補正制御の実施を判別する制御のフローチャートを示す。ステップ341においては、補正制御禁止フラグが1か否かを検出する。補正制御禁止フラグが1の場合には、ステップ342に移行する。ステップ342においては、補正制御を行わないで通常の始動制御で内燃機関を始動する。
ステップ341において、補正制御禁止フラグが1でない場合、すなわち補正制御禁止フラグが0である場合には、ステップ343に移行する。ステップ343においては、補正制御を伴って始動する。このように実施の形態1と同様に、補正制御禁止フラグに基づいて補正制御を禁止する制御を行うことができる。
図48に、本実施の形態における第1の補正禁止制御のフローチャートを示す。第1の補正禁止制御を行う内燃機関は、車両に配置されている。内燃機関は、使用者が内燃機関の始動および停止を切替えるための切替え装置を備える。本実施の形態における切替え装置は、イグニッションスイッチを含む。本実施の形態における内燃機関は、燃焼室における燃焼を停止した場合に、予め定められた時間内に燃焼室における燃焼を開始するか否かを予測する再始動予測装置を備える。
本実施の形態における第1の補正禁止制御においては、使用者がイグニッションスイッチを停止位置にした後に、短時間の間にシートベルトが外されない場合には、予め定められた時間内に燃焼室における燃焼を開始すると予測する。
始めに、ステップ351においては、イグニッションスイッチが停止位置になったことを検出する。ステップ352においては、燃焼室における燃焼を停止する。
次に、ステップ353においては、イグニッションスイッチを停止位置にしてから所定の時間が経過したか否かを判別する。ステップ353における所定の時間としては、たとえば使用者が内燃機関を長時間停止する場合に、イグニッションスイッチを停止位置にしてから座席から離れるまでの平均的な時間を採用することができる。
ステップ353において、イグニッションスイッチが停止位置になってから予め定められた時間が経過していないときには、ステップ354に移行する。
ステップ354においては、使用者がシートベルトをはずしたか否かが検出される。ステップ354にて、シートベルトが外されていない場合にはステップ353に戻る。
このように、ステップ353およびステップ354を繰り返す。ステップ353において、イグニッションスイッチを停止位置にしてから所定の時間が経過した場合には、ステップ355に移行する。この場合には、使用者は座席に座った状態を維持しているために、短時間の間に燃焼室における燃焼を開始すると予測できる。ステップ355においては、補正制御禁止フラグを1にする。すなわち、補正制御を禁止する。
ステップ354において、シートベルトが外されている場合には、ステップ356に移行する。この場合には、短時間の間にシートベルトが外されているために、使用者が車両から長時間離れると予測することができる。すなわち内燃機関を長時間停止させると予測することができる。ステップ356においては、補正制御禁止フラグを0にする。すなわち、補正制御を許可する。
図49に、本実施の形態における第2の補正禁止制御のフローチャートを示す。
ステップ361からステップ363までは、本実施の形態における第1の補正禁止制御のステップ351からステップ353と同様である(図48参照)。ステップ363において、イグニッションスイッチを停止位置にしてから所定の時間が経過していない場合には、ステップ364に移行する。
ステップ364においては、車両のドアが開いたか否かを判別する。ステップ364において、ドアが開いた場合には、ステップ365に移行する。この場合には、使用者が車両から離れると予測することができる。また、内燃機関を長時間停止することが予測される。ステップ365において、補正制御禁止フラグを0にする。
ステップ364において、車両のドアが開いていない場合には、ステップ363に戻る。ステップ363において、イグニッションスイッチが停止位置になってから、所定の時間が経過したらステップ366に移行する。この場合には、所定の時間の間ドアが閉じられたままであるために、短時間で燃焼室における燃焼を開始すると予測することができる。ステップ366においては、補正制御禁止フラグを1にする。
このように、本実施の形態における第1の補正禁止制御および第2の補正禁止制御は、予め定められた時間内に燃焼室における燃焼を開始するか否かを予測して、予め定められた時間内に燃焼室における燃焼を開始すると予測した場合には、補正制御を禁止している。この制御により、補正制御を行う回数を削減することができる。
本実施の形態の第1の補正禁止制御または第2の補正禁止制御を行った後には、図47に示す始動時の制御を行うことができる。さらに、図37に示す始動時の制御と組み合わせて行うことができる。
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
実施の形態3
図50から図53を参照して、実施の形態3における内燃機関について説明する。本実施の形態の内燃機関においては、気体ばねから燃焼室への空気の漏れ量を推定する。推定した空気の漏れ量に基づいて、燃焼室における燃焼時の空燃比を調整する。本発明においては、燃焼室において燃料が燃焼するときの空燃比を燃焼空燃比という。
図50に、本実施の形態における内燃機関の燃焼室の部分の概略断面図を示す。本実施の形態における内燃機関は、燃焼室5aに直接的に燃料を噴射するように形成されている。燃料噴射弁11は、燃焼室5aの内部に燃料を噴射するように配置されている。その他の構成については、実施の形態1における内燃機関と同様である(図1〜図3参照)。
本実施の形態における内燃機関は、燃焼室5aにおける燃焼空燃比を調整する空燃比調整装置を備える。本実施の形態における空燃比調整装置は、電子制御ユニット31を含み、燃焼室5aの空気量に基づいて燃焼室5aへの燃料の噴射量を調整する。
図51に、本実施の形態における第1の空燃比制御のフローチャートを示す。本実施の形態における第1の空燃比制御は、内燃機関を始動すべき時に行なう。気体ばねの空気の漏れ量を検出し、漏れ量に応じて燃料の噴射量を調整する。また、内燃機関を始動すべきときに特定気筒に対して燃料の噴射量を調整する。本実施の形態の第1の空燃比制御は、内燃機関の始動を開始したときに第1回目の燃焼サイクルの期間に行なうことができる。
始めに、ステップ401において、内燃機関の始動要求を検出する。
次に、ステップ402において、内燃機関が停止しているときのクランク角度CAを検出する。
次に、ステップ403において、最初に燃料の燃焼を行なう気筒を検出する。
次に、ステップ404において、最初に燃料の燃焼を行なう気筒が、特定気筒であるか否かを判別する。すなわち、最初に燃焼を行なう気筒が、圧縮行程であり、吸気弁が閉じているか否かを判別する。ステップ404において、最初に燃料の燃焼を行なう気筒が特定気筒である場合には、ステップ405に移行する。
ステップ405においては、特定気筒における空気の漏れ量としての漏れ空気重量GLEAKを推定する。すなわち、内燃機関の停止期間中に気体ばねから燃焼室に流入した空気量を推定する。停止期間中の漏れ空気重量は、例えば、実施の形態2における漏れ検出制御により推定することができる。図38を参照して、例えば、実施の形態2における第2の漏れ検出制御において、気体ばねの圧力上昇量(PGSY−PGSX)等から漏れ空気重量を推定することができる。
次に、ステップ406において、漏れ空気重量GLEAKに対応する燃料の噴射量QLEAKを算出する。漏れ空気重量GLEAKおよび予め定められた燃焼空燃比に基づいて、漏れ空気重量GLEAKに対応する燃料の噴射量QLEAKを算出する。
次に、ステップ408において、検出したクランク角度CAにおける特定気筒の燃焼室の容積VOLを推定する。燃焼室の容積の推定においては、例えば、クランク角度を関数にする燃焼室の容積の値を、予め電子制御ユニットに記憶させておく。クランク角度を検出することにより、燃焼室の容積VOLを推定することができる。
次に、ステップ409において、燃焼室の容積VOLから空気重量Gを算出する。燃焼室の容積VOLを換算することにより空気重量Gを算出する。空気重量Gは、機関吸気通路を通って燃焼室に流入した空気の重量である。
次に、ステップ410において、空気重量Gに対応する燃料の噴射量Qを算出する。空気重量Gおよび予め定められた燃焼空燃比に基づいて、空気重量Gに対応する燃料の噴射量Qを算出する。
次に、ステップ411においては、ステップ406において算出した燃料の噴射量QLEAKと、ステップ410において算出した燃料の噴射量Qから、全体の燃料の噴射量(Q+QLEAK)を算出する。全体の燃料の噴射量(Q+QLEAK)にて、特定気筒に燃料を噴射する。
特定気筒において、気体ばねから燃焼室に空気が漏れると、通常の制御により推定される空気量よりも実際に燃焼室に充填されている空気量が多くなり、燃焼空燃比がリーン側にずれてしまう。本実施の形態における第1の空燃比制御においては、内燃機関を始動すべき時に、特定気筒に貯留している全体の空気量に対応した燃料の噴射量を定めることができる。気体ばねから燃焼室に漏れる空気に起因して燃焼空燃比がずれることを抑制できる。
ステップ404において、最初に燃料の燃焼を行なう気筒が特定気筒でない場合には、ステップ407に移行する。
ステップ407においては、漏れ空気重量GLEAKを0にする。内燃機関の停止期間中に圧縮行程の気筒である場合にも、特定気筒でない場合には吸気弁が開いている。このため、気体ばねから漏れる空気を機関吸気通路に逃すことができる。この場合には、ステップ406以降において、漏れ空気重量GLEAKに対する燃料の噴射量QLEAKが0になる。すなわち、通常の燃料の噴射量Qにて燃料の噴射を行なうことができる。
本実施の形態における第1の空燃比制御においては、燃焼を開始するときの特定気筒における燃焼空燃比を調整している。この制御により、始動時における特定気筒の燃焼を安定して行なうことができて安定した始動を行うことができる。
本実施の形態においては、気体の漏れ量に対応する燃料噴射量と、内燃機関が停止した時に特定気筒内に貯留していた空気量に対応する燃料噴射量とを個別に算出している。全体の燃料の噴射量の算出においては、内燃機関を停止した時に特定気筒内に貯留していた空気量および停止期間中に気体ばねから燃焼室に漏れた空気量から内燃機関を始動すべきときに特定気筒に貯留されている全体の空気量を算出することができる。この全体の空気量と燃焼空燃比に基づいて、全体の燃料の噴射量を算出しても構わない。
図52に、本実施の形態における第2の空燃比制御のフローチャートを示す。第2の空燃比制御においては、運転期間中に燃焼空燃比の制御を行う。図52に示す第2の空燃比制御は、例えば数ms程度の短時間ごとに繰り返し行なうことができる。本実施の形態の第2の空燃比制御においては、1回の燃焼サイクルごとに漏れ空気重量を検出する。
はじめに、ステップ421において、所定の気筒mが、燃料の噴射開始時期か否かを判別する。ステップ421において、所定の気筒mが、燃料の噴射開始時期でない場合には、ステップ422に移行する。
ステップ422においては、第2の空燃比制御を繰り返す時間Xmsの間における漏れ空気重量GLEAKを推定する。運転期間中における空気の漏れ量の検出は、たとえば、時間Xmsの間における気体ばねの気体の圧力低下量を検出することにより推定することができる。
次に、ステップ423においては、積算漏れ空気重量GLEAKTとして、前回の計算において算出した漏れ空気重量GLEAKTに、今回の計算において算出した漏れ空気重量GLEAKを加算する。ステップ423が終わったら、この制御を終了し、予め定められた繰り返し時間Xmsに基づいて、再びステップ421から制御を繰り返す。
ステップ421において、所定の気筒mが燃料の噴射開始時期である場合には、ステップ424に移行する。ステップ424においては、機関吸気通路から燃焼室に流入する空気重量Gを検出する。燃焼室に流入する空気重量Gは、例えば、機関吸気通路に配置されているエアフローメータ16の出力により推定することができる(図1参照)。
次に、ステップ425において、検出した空気重量Gに対応する燃料の噴射量Qを算出する。検出した空気重量Gおよび予め定められた燃焼空燃比に基づいて、燃料の噴射量Qを算出する。
次に、ステップ426において、ステップ423にて算出した積算漏れ空気重量GLEAKTに対応する燃料の噴射量QLEAKを算出する。積算漏れ空気重量および予め定められた燃焼空燃比に基づいて、燃料の噴射量QLEAKを算出する。
次に、ステップ427においては、ステップ425にて算出した燃料の噴射量Qと、ステップ426において算出した燃料の噴射量QLEAKとを加算して、全体の燃料の噴射量(Q+QLEAK)を算出する。この全体の燃料の噴射量にて燃料の噴射を行なう。この後に燃焼室にて燃料の燃焼を行なう。
次に、ステップ428においては、積算漏れ空気重量GLEAKTを0にする。すなわち、積算漏れ空気重量をリセットする。
本実施の形態における第2の空燃比制御を行なうことにより、通常の空燃比の制御に加えて、気体ばねから燃焼室に漏れる空気に関する補正を行なうことができて、燃焼空燃比を、より正確に目標空燃比に近づけることができる。内燃機関の安定した運転を行なうことができる。または、排気ガスの性状が悪化することを抑制できる。このように、運転期間中においても、漏れ空気重量を推定することにより燃焼空燃比の補正を行なうことができる。
第2の空燃比制御においても第1の空燃比制御と同様に、積算漏れ空気重量と今回の機関吸気通路から燃焼室に流入する空気重量を加算して全体の空気重量を算出し、その後に全体の空気重量および燃焼空燃比に基づいて全体の燃料の噴射量を算出しても構わない。
また、漏れ空気重量の算出においては、1回の燃焼サイクルの期間中に算出する制御に限られず、任意の制御により1回の燃焼サイクルの期間中の空気の漏れ量を推定することができる。たとえば、複数回の燃焼サイクルにおける漏れ空気重量を推定し、推定した漏れ空気重量から1回の燃焼サイクルにおける空気の漏れ量を推定しても構わない。
ところで、本実施の形態における第1の空燃比制御および第2の空燃比制御は、内燃機関の始動を行なっている期間中、すなわちクランキングの期間中に実施することができる。クランキングを開始した時に第1の空燃比制御を行なって、その後に第2の空燃比制御を行なうことができる。
図53に、内燃機関の始動を行なっている時の燃焼空燃比と、始動時間との関係を説明するグラフを示す。横軸が燃焼空燃比であり、縦軸がクランキングに必要な時間である。目標空燃比AFtarは、予め定められている。燃焼空燃比が目標空燃比AFtarから離れるほど、始動時間が長くなることが分かる。すなわち始動しにくくなることが分かる。
本実施の形態における第1の空燃比制御および第2の空燃比制御においては、燃焼空燃比を目標空燃比AFtarに近づけることができて、短時間で内燃機関の始動を行なうことができる。または、安定した内燃機関の始動を行なうことができる。さらに、燃焼空燃比が目標空燃比に近づくために、排気ガスの性状の悪化を抑制することができる。
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1または2と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。また、上記の実施の形態において例示した制御においては、適宜順序を入れ替えることができる。
上述のそれぞれの図において、同一または相当する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、請求の範囲に含まれる変更が含まれている。
3 ピストン
4 シリンダヘッド
5a〜5d 燃焼室
6 吸気弁
8 排気弁
10 点火プラグ
11 燃料噴射弁
16 エアフローメータ
31 電子制御ユニット
42 クランク角センサ
43 圧力センサ
50a〜50d 気体ばね
55 副室用ピストン
60 副室
61 ガス室
63 ピストン
66 ガス室
72 圧縮機
74 圧力センサ
75 筒内圧センサ
76 流量センサ
84 空気排出弁
85 圧力調整弁
93,94 可変バルブタイミング装置
100 電磁駆動装置
115a,115b 始動モータ
129 クランクケース
136 円形カム
137 偏心軸
138 円形カム
139 駆動モータ
146 イグニッションスイッチ
147 車線維持支援装置
148 車両用ナビゲーション装置

Claims (13)

  1. 気体が圧縮されることにより弾性を有する気体ばねを含み、燃焼室の圧力が予め定められた制御圧力に到達したときに、燃焼室の圧力変化を駆動源として気体ばねが縮むことにより燃焼室の容積または燃焼室に連通する空間の容積が変化する容積可変装置と、
    気体ばねから燃焼室に気体が漏れたことを検出する漏れ検出装置と、
    気体の漏れにより生じる運転状態への影響を補正する補正制御を行う補正制御装置とを備え、
    漏れ検出装置により気体ばねから燃焼室への気体の漏れを検出した場合に補正制御を行うことを特徴とする、内燃機関。
  2. 漏れ検出装置は、気体ばねから燃焼室への気体の漏れ量を推定するように形成されており、
    内燃機関が停止しているときに燃焼室が密閉されている気筒を検出し、
    燃焼室が密閉されている気筒において、内燃機関が停止している期間における気体ばねの気体の漏れ量を推定し、推定した漏れ量が予め定められた判定値よりも大きい場合に、内燃機関を始動すべきときに補正制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  3. 漏れ検出装置は、内燃機関が停止している時間を検出し、停止している時間に基づいて気体ばねの気体の漏れ量を推定することを特徴とする、請求項2に記載の内燃機関。
  4. 要求される負荷が零の期間に、燃焼室における燃焼を一時的に停止させる停止装置を備え、
    停止装置が燃焼室における燃焼を停止した場合に、補正制御を禁止することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  5. 使用者が燃焼室における燃焼の開始および停止を切替える切替え装置と、
    切替え装置により燃焼室における燃焼を停止した場合に、予め定められた時間内に燃焼室における燃焼を開始するか否かを予測する再始動予測装置とを備え、
    再始動予測装置が予め定められた時間内に燃焼室における燃焼を開始すると予測した場合に、補正制御を禁止することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  6. 内燃機関を始動すべきときに燃焼室の圧力を低下させる補正制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  7. 燃焼室における燃焼空燃比を調整する空燃比調整装置を備え、
    漏れ検出装置は、気体ばねから燃焼室への気体の漏れ量を推定するように形成されており、
    漏れ検出装置により推定した気体の漏れ量に基づいて、燃焼室における燃焼空燃比を調整する補正制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  8. 内燃機関が停止したときのピストンの停止位置を調整する停止位置調整装置を備え、
    内燃機関を停止すべきときに、停止位置調整装置により圧縮行程の吸気弁が閉じる位置からピストンが圧縮上死点に到達するまでの区間を避けて、ピストンを停止させる補正制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  9. 気体ばねに気体を供給する気体供給装置を備え、
    内燃機関が停止しているときに、圧縮行程の吸気弁が閉じる位置からピストンが圧縮上死点に到達するまでの区間内にて停止している特定気筒を検出し、
    内燃機関の始動を開始した1回目の燃焼サイクルにおいて、特定気筒の気体ばねに気体の供給を行うことを禁止する補正制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  10. 内燃機関を始動すべきときに開閉が可能な吸気弁および内燃機関を始動すべきときに開閉が可能な排気弁のうち少なくとも一方を備え、
    内燃機関を始動すべきときに、吸気弁および排気弁のうち少なくとも一方の弁を開くことにより、燃焼室の圧力を低下させる補正制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  11. 内燃機関を始動するための始動機を備え、
    始動機は、内燃機関の出力軸を逆回転させるように形成されており、
    内燃機関を始動すべきときに、始動機により出力軸を逆回転させて、吸気弁および排気弁のうち少なくとも一方を開いて燃焼室の圧力を低下させる補正制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  12. 内燃機関を始動するための始動機を備え、
    始動機は、内燃機関を始動させる駆動力が可変に形成されており、
    内燃機関を始動すべきときに、始動機により第1の駆動力にて始動を開始した後に、第1の駆動力よりも小さな第2の駆動力により始動を継続する補正制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
  13. 燃焼室において燃料が燃焼するときの圧縮比を変更する圧縮比可変装置を備え、
    内燃機関を始動すべきときに、圧縮比可変装置により燃焼室における圧縮比を低下させる補正制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
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