まず本発明における足場の設計支援方法の概略について、図1に示す組足場2を設計する場合を例に挙げて説明する。図1は、組足場2の一部を簡略化して示すものであり、この組足場2は、建築構造物の本体であるタワー(蒸留塔本体)1に付属物(付属構造物)10(図3参照)を取り付けるために設けられている。この付属物10とは、例えば配管、ダクト、電気計装、耐火被膜、保温材等が相当する。
この組足場2は、垂直に伸びる垂直支持部材である支持パイプ21(以下、「建地パイプ」という)の群と、これら建地パイプ21に支持された床部分に相当する複数段の床部(作業床等と呼ばれている)20とを備えており、実際には図18に示すように、数十枚の床部20が設けられる。
各段の床部20は、この例では図2に一点鎖線で示すタワー1(この例では、タワー1を1個としている)を囲むように、言わば角形の環状に設けられている。建地パイプ21は、この床部20のタワー1側の内縁部とタワー1と反対側の外縁部とに沿って夫々間隔をおいて並べて設けられている。なお建地パイプ21は、複数のパイプが垂直方向に伸びるように接続されて構成されている。そして内縁部側に設置された建地パイプ群及び外縁部側に設置された建地パイプ群の各々には、各段の床部20に対応する位置に、X−Y平面上の一方向(本実施形態ではX方向)に水平に伸びる複数本の布パイプ(布と呼ばれる)24が、一定の間隔を開けて架設され、これらの布パイプ24の上に、この布パイプ24と直交する方向(Y方向)に水平に伸びる腕木パイプ(ころばしと呼ばれる)25が、一定の間隔を開けて複数本架設されている。そして複数本の腕木パイプ25の上の後述する横通路32が設置される箇所に、この腕木パイプ25と直交する方向(X方向)に水平に伸びる腕木パイプ25が一定の間隔を開けて複数本架設されている。
またこれらの建地パイプ21、布パイプ24及び腕木パイプ25は、図3に示すように各パイプが交差する位置でパイプを連結する接続具であるパイプクランプ26によって連結されている。なお図3は、組足場2を設置して付属物10をタワー1に取り付けるときの床部20の詳細に示す図である。
腕木パイプ25或いは布パイプ24の上に複数の足場板3が敷かれると共に、これら足場板3で形成される通路の角の部分には、互いに直交する足場板3に対して斜めに(床部20の角を横切るように)斜め通路30が設けられている。この例では、X方向を縦とすると、X方向に伸びる縦通路31に対して、Y方向に伸びる横通路32が概ね腕木パイプ25の外径分だけ高くなっており、斜め通路30は、縦通路31と横通路32との間に渡されていることから、水平に対して若干傾いていることになる。従って本実施形態では、布パイプ24と腕木パイプ25とが、足場板3の水平支持部材となる。なお図1中15は、作業者の落下を防止するための手摺である。
次に床部20の設置位置の決定方法について説明する。まず図2の概略図に示す床部20の平面方向の領域、即ちX、Y方向における設置領域を、次にようにして決定する。床部20の平面形状については、図2に示すように外側の輪郭が四角形状であり、内側の輪郭が八角形状である環状形とみなす。外側は、布パイプ24と腕木パイプ25との外端位置同士を結ぶラインに相当し、内側の輪郭つまり内縁は、布パイプ24と腕木パイプ25との内端位置同士を結ぶライン及び斜め通路30の内縁に相当する。
この環状形における前記四角形の辺の長さや前記八角形の各辺の長さは、タワー1の大きさ及び付属物10の設置領域並びに足場板3のサイズに応じて決められる。足場板3のサイズは、予め用意された複数枚の種類の中から選択できる。そして床部20の平面形状である環状形の内縁位置は、タワー1の設置位置に応じて決まるので、建築構造物(タワー1と付属物10)の位置を決定するX、Y、Z座標空間と同じ座標空間における、X、Y座標上の床部20の設置領域(占有領域)が決定される。
続いて床部20の高さ位置を決定する。この作業は、次のようにして行われる。コンピュータのメモリに建築構造物の3次元CADデータの画像と、各段の床部20に相当する仮想の板状体5に係る3次元CADデータの画像とを別々のデータとして記憶し、これらのX、Y、Zの座標軸を互いに合わせて、建築構造物の付属物10の画像と前記仮想の板状体5の画像とを合成してモニター上に表示する。
床部20の形状については、既述のようにその平面形状を図2に破線で示した環状形とみなしており、従って上記仮想の板状体5は平面形状がこの環状形に相当し、X、Y座標上における設置領域についても既述のように決定されている。そして板状体5の厚さは、床部20の最大厚さを用いている。この最大厚さDは、図4に示すように、床部20が形成されたときの、縦通路31の布パイプ24の最下部(布パイプ24に取り付けられるパイプクランプ26の下端)から斜め通路30の横通路32側の突端部までの厚さである。つまり板状体5は、床部20が形成されたときに床部20を構成する全ての部材が収められる領域を示している。なお図4は、図2に示す矢印A地点から床部20の角部を見た側面図である。
前記仮想の板状体5と付属物10とをモニター画面上で合成して表示するにあたり、各段の床部20を最下段から最上段まで等間隔に、例えば1.8m間隔で配置されるように上記板状体5を各段に位置させる。この1.8m間隔で配置された板状体5の設置位置が、床部20の予定の設置位置となる。この画面上に表示されている板状体5と付属物10の合成画像は、オペレータの指示により拡大、縮小できるようになっており、床部20の段数が多い場合、即ち板状体5の段数が多い場合には、オペレータがこの合成画像を拡大して各段の板状体5の詳細を確認することができる。また画像をスクロールして拡大状態にしたまま、他の段の床部20を表示させることができる。
そして本実施形態では、板状体5と付属物10とが干渉している場合、その干渉部位が、他の部分と比べて、例えば発光する等して明度が大きくなるようになっており、オペレータが板状体5と付属物10とが干渉していることを視覚で捉えることができ、干渉している場合には、板状体5と付属物10とが干渉しないように板状体5の高さ位置を調整することができる。
この干渉のチェックと調整の一例について図5を参照して説明する。図5は、組足場2の一部分を拡大したものであり、上記合成画像を拡大して複数ある板状体5の中の4枚の板状体5を示している。これらの4枚の板状体5は、4段の床部20の設置位置に対応する。なお説明の便宜上図5に示す各板状体5を下から順に、第1の板状体51、第2の板状体52、第3の板状体53及び第4の板状体54と呼び、これらの板状体51〜54と付属物10との干渉チェックは、最下段から最上段に向けて順次行われる。
まず第1の板状体51の干渉チェックが行われる。第1の板状体51では、床部20の横通路32(図2参照)に相当する部分と、付属物10の一つである配管12の水平に伸びている部分(水平部分)と干渉している(図5参照)。このように配管12の水平部分と板状体51とが干渉している場合、この位置に床部20を設置すると、配管12を取り付けることができなくなることから、板状体51の高さレベルを修正し、板状体51と配管12とが干渉しないようにする。
この高さレベルの修正は、例えば表示されている3次元の合成画像の中から板状体51と配管12との干渉位置を拡大して表示させる。そしてオペレータは、この拡大位置を見ながら発光部分が消失するまで板状体51を上下方向(Z方向)に移動させ、板状体51の上方向の移動距離と下方向の移動距離とを比較し、板状体51を上昇させた方が良いのか、逆に降下させた方が良いのかを検討する。なお板状体51と配管12との干渉位置を、図6に示すような配管12が水平に伸びている方向、例えば配管12の場合にはX方向でカットした断面図として表示し、配管12の移動方向の検討を行ってもよい。
板状体51と配管12との干渉位置が、板状体51の上面40より下面41に近い場合(図6参照)、板状体51の高さレベルを上昇させた方が小さな移動量で板状体51と配管12との干渉を解消することができる。複数の板状体5の設置間隔には許容値が定められており、本実施形態ではこの許容値は、各床部20で作業者が作業を行うことができる高さ、例えば1.6m〜2.0mとして設定されている。そして板状体51のように高さレベルを修正する場合、板状体51の移動量が小さい方が、移動後の板状体51と、上段の第2の板状体52及び下段の図示しない板状体5との設置間隔が許容値内に収まる可能性が高くなる。
そのため本実施形態では、板状体51を配管12と干渉しない高さレベルまで移動させ(図7参照)、その後、上段の第2の板状体52及び図示しない下段の板状体5との間の夫々の設置間隔をチェックし、この設置間隔が許容値内であれば、その位置を第1の板状体51に対応する床部20の設置位置として決定する。
また第1の板状体51と、第2の板状体52、若しくは下段の板状体5との間の設置間隔が許容値から外れてしまった場合、その位置は不適であると判定し、再度板状体51の高さレベルを変更する。例えば板状体51を配管12の下方に位置するように下降させ、配管12と干渉せず、かつ上段の第2の板状体52及び図示しない下段の板状体5との間の夫々の設置間隔が許容値内になる位置を検出する。
なお各板状体5間の間隔は、例えば別の図示しないデータ表示ウィンドウ等に表示されるようになっており、オペレータは板状体5を移動させた後にこのデータ表示ウィンドウを見て板状体5の間隔が許容値内であるかを判定している。
続いて第2の板状体52の干渉チェックが行われる。この板状体52では、縦通路31(図2参照)に相当する部分が、付属物10の一つであるL字の配管13の垂直部分と干渉している(図5参照)。このように配管13の垂直部分と板状体52とが干渉している場合、板状体52と配管13とが干渉しないように板状体52の高さレベルを変更する方法では、板状体52の移動量が大きくなり、板状体52と上下段の板状体51、53との間の間隔を許容値内に収めることができなくなる可能性が高くなる。
そこでまず第1の板状体51と同様に、3次元の合成画像の中から板状体52と配管13との干渉位置を拡大して表示し、板状体52と配管13との干渉が解消される位置まで板状体52を上下方向(Z方向)に移動させて移動距離を調べる。そしてどちらか一方の移動距離が許容値、例えば15cmより小さい場合には、第1の板状体51と同様に板状体52の高さレベルを変更し、移動後の板状体52と、上段の第3の板状体53、若しくは下段の第1の板状体51との間の設置間隔のチェックを行う。
これに対し、移動距離が許容値を越えた場合、または設置間隔が許容値内から外れた場合には、板状体52の高さレベルを変更せずに、配管13と干渉している縦通路31を構成する足場板3、布パイプ24及び腕木パイプ25の配置の変更を行い、これらの部材と配管13とが干渉しないようにする。この方法では、まず板状体52の上面を表示すると共に、配管13と干渉している縦通路31と対応する部分を拡大して表示し、この干渉位置のデータを切り出し別のウィンドウに表示する。次に記憶されている床部20の部材配置を示すデータを読み出し、別のウィンドウ上に表示されている縦通路31と対応する位置のデータに、実際に床部20が形成されたときに縦通路31に配置される足場板3、布パイプ24及び腕木パイプ25が配置された状態のデータを重ねて表示する。
本実施形態では、床部20の設置領域を決定するときに、斜め通路30、縦通路31及び横通路32に配置される足場板3、布パイプ24及び腕木パイプ25の配置を仮決定して後述する第2の記憶部43(図15参照)記憶しており、オペレータにより表示命令が出されると、この記憶されたデータを読み出して縦通路31の画像データ上に上記各部材の配置状態を表示するようになっている。
この縦通路31の足場板3、布パイプ24及び腕木パイプ25の配置の仮決定は、まず縦通路31のX方向の長さとY方向の幅から、縦通路31内で実際に足場板3を敷く敷設領域を決定し、この敷設領域を埋めるように足場板3を敷き詰め、その後、足場板3の配置に合わせて腕木パイプ25の配置を仮決定する。
なお本実施形態では、縦通路31には、図8に示すように、2mの足場板3aと、4mの足場板3bとの2種類の足場板3が敷かれており、縦通路31の中央に4mの足場板3bが、X方向に向けて伸びるようにY方向に4列並べられ、この足場板3bのX方向の両端に2mの足場板3aが4枚並ぶように敷かれている。そして足場板3aは、X方向に伸びる2本の布パイプ24の上に置かれた4本の腕木パイプ25によって直接支持され、足場板3bは、この足場板3bを支持可能な位置に配置された2本の腕木パイプ25によって直接支持されている。なお本実施形態では足場板3の幅は、25cmで統一されている。
縦通路31に上記各部材を配置した状態のデータが表示されると、縦通路31に配置されるどの部材が配管13と干渉するのか判定することができる。図8に示す例では、X方向の中央部より−X方向よりの位置で、縦通路31の外縁側から数えて2列目の足場板3bと配管13とか干渉していることを判定することができる。そしてこの2列目の足場板3a、3bの配置を変更して、配管13を通過させる通過口33(図9参照)を形成する。
具体的には図9に示すように、オペレータが足場板3a、3bの配置を変更し、2列目の+X側の端部から足場板3bを敷き、−X側の端部から長さが3mで幅が25cmの足場板3cを敷く。これにより上記2列目では、配管13と足場板3bとが干渉していた位置に、図9に斜線領域として示す長さ1m、幅25cmの通過口33が形成されることになり、配管13はこの通過口33を通過するようになる。これにより第2の板状体52と配管13との干渉が解消されるので、この位置を第2の板状体52に対応する床部20の設置位置として決定する。また縦通路31の部材の配置変更を行った場合には、第2の板状体52に対応する縦通路31の変更後の部材配置を、設置位置のデータと合わせて記憶する。
続いて、第3の板状体53の干渉チェックが行われる。この板状体53では、第2の板状体52と同様に、横通路32(図2参照)に相当する部分が、付属物10の一つであるL字の配管14の垂直部分と干渉している(図5参照)。さらに板状体53では、第2の板状体と同様に横通路32と配管14と干渉している部分を拡大し、この干渉位置のデータを切り出し別のウィンドウに表示すると共に、横通路32を形成する上記各部材が配置された状態のデータを重ねて表示すると、図10に示すように横通路32を形成する腕木パイプ25と配管14とが干渉していることが判る。なお第3の板状体53では、第2の板状体52と同様に板状体53の高さレベルの変更では干渉を解消することができないものとする。
この場合、第2の板状体52で通過口33を形成したのと同様に、腕木パイプ25を分割して配管14の通過位置に腕木パイプ25が配置されないようにしてもよいが、強度の問題等で腕木パイプ25が分割できない場合、板状体53の横通路32に相当する部分の、X、Y座標上の位置を外側に移動させ、配管14との干渉を解消することができる。床部20の形状を変更する場合、図11に示すようにオペレータは、横通路32を、配管14と干渉しない位置まで外側に向けてX方向に移動させる。
そしてこの横通路32の移動に合わせてX、Y座標上の床部20の設置領域を変更し、この床部20の設置領域の変更に合わせて板状体53を変形して、変形後の板状体53と配管14及び他の付属物10との干渉をチェックする。そして干渉が解消された場合には、その位置を第3の板状体53に対応する床部20の設置位置として決定する。
ただしこの方法では、床部20のX、Y座標上の設置領域を変更するため、その変形に合わせて床部20を構成する部材の配置を変更する必要がある。この板状体53の場合には、縦通路31の長さを延長する必要があるため、図11に示すように縦通路31を構成する布パイプ24のX方向の長さを伸長すると共に、移動した横通路32側に敷かれている4枚の2mの足場板3aを3mの足場板3cに変更し、さらにこの足場板3cを支持する腕木パイプ25を一本増やす。そしてこの変更後の縦通路31の部材配置データを、新しい縦通路31の部材配置データとして記憶する。
さらに床部20のX、Y座標上の設置領域を変更しているため、チェック済みの他の床部20の設置位置においても、変更後の床部20のX、Y座標上の設置領域から新しい板状体5を作成して再度付属物10と板状体5との干渉チェックを行う。
また第4の板状体54のように、付属物10と干渉していない板状体54については、その板状体54が配置されている位置を第4の板状体54に対応する床部20の設置位置として決定する。そして複数段並べられた全ての板状体5について付属物10との干渉チェックが行われ、付属物10と板状体5とが干渉した場合には、上述した各修正方法によって板状体5の設置位置の修正や、斜め通路30及び縦通路31、横通路32の変更、さらに床部20のX、Y座標上の設置領域の変更が行われて、全ての床部20の設置位置が決定される。
なお付属物10の画像データは、水平部分の色と垂直部分の色を変更して、水平部分と垂直部分とを判別することができるようになっており、各板状体5が、付属物10の水平部分、または垂直部分どちらと干渉しているのか判定する場合、この付属物10の色から判定できるようになっている。また付属物10の画像データでは、水平方向に向けて伸びている部分については、例え斜め上方や斜め下方に向けて伸びている部分、即ち厳密には水平でない部分であってもこれを水平部分とし、これ以外の部分を垂直部分として色分けしている。なお板状体5と付属物10との干渉部位を発光させる場合、板状体5が、付属物10の水平部分、若しくは垂直部分のどちらと干渉しているのか判定できるので、この判定に基づいて、干渉部位の発光色が変わるようにしてもよい。
また以上の説明において、設置位置を決定するときは、例えばオペレータが操作して画面の隅にウィンドウを開き、このウィンドウに表示された各床部20と、決定又は解除とを対応付けた画面を用いて決定をクリックすることにより、コンピュータのメモリ内に各床部20の設置位置の高さレベルが記憶されることをいう。
床部20の設置位置が決定すると、次に決定された床部20の設置位置が真に適切であるかの確認処理が行われる。この確認処理を行う場合、まず図12に示す確認用データ55を生成する。この確認用データ55は、床部20の設置位置の決定に使用した板状体5を使用して生成される。
確認用データ55の生成は、まず付属物10の3次元CADの画像データを表示し、床部20のX、Y座標と板状体5のX、Y座標とを一致させる。次いで板状体5を、その下面41がタワー1の建造面16(後述する図13参照)と接触する位置まで移動させ、この位置からこの板状体5を一定の距離(板状体5の厚さより短い長さ)分ずつ、上方(Z方向)に向けて連続的にずらしながら、最上段の床部20の設置位置まで上昇させていく。そして移動した各位置で板状体5と付属物10の水平部分との干渉チェックを行い、板状体5と付属物10の水平部分とが干渉した位置を床部20の設置不可位置と判定する。そして図12に示すような床部20の設置可能位置及び設置不可位置と、各位置の高さレベルとを対応付けた高さ方向における設置可能領域56及び設置不可領域57を示す確認用データ55を生成する。
確認用データ55では、付属物10の水平部分と干渉する領域が設置不可領域57として表示され、それ以外の領域は設置可能領域56として表示されるため、真に床部20の設置ができない領域がどこであるのかを瞬時に判定することができる。そして板状体5の全体が設置可能領域56に含まれていれば適切であると判定し、また板状体5の少なくとも一部が設置不可領域57に含まれていればその位置には床部20が設置できないと判定することができるので、床部20の設置位置が真に適切であるかを判定することができる。これにより決定操作のミスで、床部20と付属物10の水平部分とが接触する、といった問題の発生を未然に防ぐことができる。
次に、建地パイプ21を立設する設置位置が決定される。既述のように付属物10は、建地パイプ21と干渉してしまうと設置することができないため、建地パイプ21の設置位置を決定する場合、付属物10と干渉しない位置を検索する必要がある。そこで本実施形態では、図13に示すように、建地位置検索用の3次元の画像データである板状の板状体47を生成し、この板状体47を、3次元CADデータの画像として表示されたタワー1及び付属物10の画像と重ねて表示し、付属物10と建地パイプ21とが干渉しない位置を検索して建地パイプ21の設置位置を決定する。
まず図13に示す仮想の板状体47を生成する。この板状体47は、タワー1の建造面16に対して垂直に立てられる板状のデータであり、上記床部20が占有するX方向若しくはY方向どちらか一方の長さ(本実施形態ではY方向)と同じ幅及びタワー1の高さと同じ高さを有している。また板状体47の厚さは、図3に示す建地パイプ21に、布パイプ24若しくは腕木パイプ25をパイプクランプ26によって連結するときに要する空間のX方向若しくはY方向どちらか一方の厚さ(本実施形態ではX方向)と同じ厚さになっている。
そしてこの板状体47を、建造面16上に立て、床部20の設置領域内に板状体47を移動させる。このとき板状体47の底面の長辺が、床部20の設置領域の外縁部の辺のうち、同じ長さを有する辺(本実施形態ではX方向に伸びる辺)と一致するように板状体47を移動させる。そしてその位置から板状体47を、一定の距離(板状体47の厚さより短い長さ)分ずつ、板状体47の厚さ方向(X方向)に向けて連続的にずらしながら、床部20のX−Y平面上の全領域内に亘って移動させる。そして移動させた位置でタワー1及び付属物10と、板状体47とが干渉する位置を検出し、干渉位置には建地パイプ21が立てられないと判断して、この干渉位置を建地パイプ21の設置不可位置とし、この設置不可位置のX、Y座標上の位置をコンピュータのメモリに記憶する。その後、板状体47の全ての領域で干渉の検出が終了したら、板状体47をずらして、再度干渉位置の検出を行い、建築構造物を上方から見たときに付属物10が配置されている位置を示す2次元の選定用データ48が生成される。
例えば図14(a)に示すように、板状体47を始点Stから終点Laまで移動させて選定用データ48を生成する場合、板状体47移動させた距離Bに対応する領域内の付属物10と板状体47との干渉位置のX、Y座標を全て検出することができるので、図14(b)に示すような距離Bに対応する領域分の選定用データ48が生成される。このような選定用データ48では、付属物10と干渉した位置の色をその他の非干渉位置と異なる色で表示するので、この選定用データ48から床部20の設置領域内で建地パイプ21を設置することができる位置を判定することができる。そしてこの選定用データ48から建地パイプ21の設置位置が決定される。このようにして、全ての床部20の設置位置と建地パイプ21の設置位置が決定されて、図1に示す組足場2が設計される。
以上のように足場の設計支援方法について説明したが、次にこの方法を実現するためのコンピュータの構成及びコンピュータを用いて既述の方法を実現する具体的なステップについて図15を参照して説明する。足場設計支援システム6は、図15に示すように、第1の記憶部42、第2の記憶部43及びプログラム記憶部44を備えている。
第1の記憶部42には、建築構造物であるタワー1及び付属物10の3次元CADのデータの他、足場板3、建地パイプ21、布パイプ24、腕木パイプ25及びパイプクランプ26等の部材データと、床部20の設置間隔の許容値等の設計に関するデータと、が記憶される。第2の記憶部43には、床部20の設置位置、建地パイプ21の設置位置、上記板状体5と板状体47との形状を特定するためのデータ及び上記確認用データ55等が記憶される。そしてプログラム記憶部44には、建地パイプ21の設置位置を設定する処理を行う建地用プログラム60、床部20の設置位置を設定する処理を行う設置用プログラム61、及び上記不可位置データ55を生成して床部20の設置位置が真に適切であるかを確認する確認処理を行う確認用プログラム62が記憶されている。
なお図15中に示す63は、オペレータの命令を受ける入力部であり、具体的にはキーボードやマウス等が相当する。また64は、タワー1及び付属物10を表示すると共に、板状体5を重ねて表示する表示部であり、CRTや液晶からなる画面を有するディスプレイが相当する。そして65は、プログラム記憶部44のプログラムを読み出し、足場設計支援システム6を制御するCPUである。
次にこの足場設計支援システム6で行われる組足場2の設計の流れについて、図16、図17のフローを参照して説明する。まず床部20の設置位置を設定する処理の流れについて説明する。床部20の設置位置を設定する場合、図16に示すように、まず第1の記憶部42からタワー1と付属物10の3次元CADのデータを読み出して表示部64に表示する(ステップS1)。
次に設置用プログラム61により、前記仮想の板状体5を生成する(ステップS2)。この板状体5を生成するステップでは、まず上方からタワー1のみを見た画像を表示し、このタワー1から一定の間隔をあけて、タワー1を包囲する環状形の床部20のX、Y座標上における設置領域を決定する。この設置領域は、第1の記憶部42に記憶される労働安全衛生規則により決定され、タワー1から設置領域の内周面までの間隔が30cm未満となるように、当該間隔が空けられており、設置領域の環状部分の幅は、X方向が1.85m、Y方向が1.5mとなっている。
次に第1の記憶部42から、床部20を構成する足場板3、布パイプ24、腕木パイプ25及びパイプクランプ26等の部材データを読み出し、図2、図4に示すような床部20を形成する。次いで、斜め通路30、縦通路31、横通路32を形成する部材データの寸法を加算して、これらの通路の重なっている部分の厚さ、即ち床部20の最大厚さを求める。そして床部20のX、Y方向における設置領域のデータと床部20の最大厚さのデータから板状体5を生成して第2の記憶部43に記憶する。なお最大厚さは、予め設計者が床部20を形成するための部材の寸法と床部20の形状から計算して求め、求めた値を入力して第2の記憶部43に記憶していてもよい。
板状体5が生成されると、次に表示部64にタワー1及び付属物10の画像と板状体5の画像とを合成して表示する(ステップS3)。このステップS3では、まず設置用プログラム61により第1の記憶部42から床部20の設置間隔の許容値(各床部20で作業者が作業を行うことができる高さ、例えば1.6m〜2.0m)を読み出し、許容値の中央値(1.8m)を算出する。そして板状体5をX、Y座標上の設置領域と一致させ、この設置領域の鉛直方向に板状体5を複数重ねていく。このとき板状体5は、タワー1の建造面16(図13参照)を基準面として各板状体5の間に中央値分の間隔が設けられるようにその間が空けられて、タワー1の頂部付近まで重ねされる。そして板状体5がタワー1の頂部付近まで重ねられ合成して表示されると、設置用プログラム61は、各板状体5と付属物10との干渉部位の有無をチェックし、干渉部位がある場合にはその干渉部位を他の部分より明るく表示する。
次に板状体5の修正処理が行われる。まずオペレータが表示部64に他の部分と比べて明るく表示されている板状体5と付属物10との干渉位置の有無を確認する(ステップS4)。そして明るく表示されている部分がある場合、この明るく表示されている部分を拡大して表示し、板状体5と付属物10との干渉状態を調べる(ステップS5)。
そしてオペレータは、干渉状態に応じて修正処理を行い、既述のように板状体5の高さ位置の修正や、板状体5の空間に形成される床部20の構成部材の配置変更、若しくは床部20のX、Y座標上の設置領域の変更を行って、板状体5と付属物10との干渉を解消する。その後修正処理を行った板状体5とその上下段の板状体5との間隔を表示部64に表示される上記データ表示ウィンドウで確認し、各板状体5の設置間隔が許容値内であれば、その位置を床部20の設置位置として決定し、各床部20と、決定又は解除とを対応付けた画面を用いて決定をクリックする。
そしてステップS4に戻り、他の板状体5と付属物10との干渉チェックを行い、干渉がある場合には干渉部位がなくなるまでステップS5、S6の工程を繰り返す。また設置用プログラム61は、干渉部位の有無を常に監視する機能を有しており、修正処理の結果ステップS4で干渉部位がなくなったことが確認できた場合、表示部64に、例えば「YES」と「NO」の二つのボタンが付いたダイアログボックスを表示する。
そしてオペレータは、現在表示されている板状体5の位置が、床部20の設置位置として適切であれば「YES」ボタンを押す。「YES」ボタンが押されると、設置用プログラム61は、第2の記憶部43にこのときの板状体5のX、Y、Z座標上の設置位置を床部20の設置位置として記憶する(ステップS7)。なお「NO」ボタンを押した場合には修正処理を続行することができるようになっている。
床部20の設置位置が設定されると、次いで各床部20の設置位置が真に適切であるかどうかの確認処理が行われる。この確認処理は、図17に示すように、まず第1の記憶部42からタワー1と付属物10の3次元CADのデータを読み出して表示部64に表示する(ステップS11)。
次に確認用プラグラム62により、確認用データ55が生成される(ステップS12)。確認用データ55を生成する場合、まず第2の記憶部43から板状体5のデータを読み出し、この板状体5を床部20のX、Y座標上の設置面と一致させると共に、下面41をタワー1の建造面16と接触させる。そして板状体5を、一定の距離(板状体5の厚さより短い長さ)分ずつ、上方(Z方向)に向けて連続的にずらしていき、付属物10の水平部分と干渉した位置を床部20の設置不可位置と判定する。そしてタワー1の頂部まで設置不可位置の判定が終了したら確認用データ55(図12参照)を生成すると共に、この確認用データ55を第2の記憶部43に記憶する。
その後確認用プログラム62は、第2の記憶部43から確認用データ55と床部20の設置位置の設定データとを読み出し、この二つのデータを重ねて各床部20の設置位置に対応する板状体5の設置位置が、設置不可領域57と干渉するかチェックを行う(ステップS13)。そして干渉がある場合には、設置不可領域57と干渉した板状体5の設置されている位置データを第2の記憶部43に記憶すると共に、例えば「干渉有り」の表示と「OK」ボタンとを備えた警告用のダイアログボックスを表示部64に表示して干渉の発生をオペレータに報知する。
そしてオペレータが「OK」ボタンをクリックすると、確認用プログラム62が終了し、再び設置用プログラム61が第2の記憶部43に記憶されている床部20の設置位置のデータを読み出して、この設置位置と対応する位置に板状体5を表示すると共に、付属物10を重ねて表示する。さらに第2の記憶部43に記憶されている設置不可領域57と干渉した板状体5の位置データを読み出して、この位置データと一致する位置に設置されている板状体5を発光させる。これによりオペレータに設置不可領域57と干渉している床部20の設置位置の修正を行うことを促し、床部20の設置位置の再設定が終了したら、再度確認処理を行う。なお干渉しない場合には、例えば「干渉無し」の表示と「OK」ボタンとを備えた確認用のダイアログボックスを表示部64に表示して、その旨オペレータに報知する。そしてオペレータにより「OK」ボタンがクリックされると、確認処理が終了する。
その後、建地設置位置プログラム60により、タワー1のデータ、床部20のX、Y座標上の設置領域のデータ及び布パイプ24若しくは腕木パイプ25と建地パイプ21とをパイプクランプ26で連結するのに要する空間のデータから板状体47を生成し、板状体47を用いて建地パイプ21の設置位置の設定を行い、この設置位置が第2の記憶部43に記憶される。そして床部20の設置位置のデータと、建地パイプ21の設置位置のデータから、付属物10と干渉しない組足場2が設計され、設計処理が終了する。
上述した足場の設計支援方法によれば、建築構造物のタワー1が建造された後に付属物10を取り付ける作業を行うための組足場2を設計するにあたり、足場板3及び当該足場板3を支持するために水平に配置される布パイプ24及び腕木パイプ25が占有する占有空間に相当する仮想の板状体5を、付属物10の3次元画像のコンピュータの画面上に合成して表示し、オペレータの操作によりこの仮想の板状体5をZ方向に移動させ、付属物10と干渉しない板状体5の高さ位置を見つけるようにしている。このため付属物10と干渉しない床部20の設置位置を容易にかつ高い正確性をもって決定することができる。従って改造や手直しがないかあるいは少ない組足場2の設計を行うことができ、組足場2の設置作業の工程短縮に寄与する。
またこの足場の設計支援方法では、板状体5が付属物10の垂直部分と干渉しているのかを判定し、垂直部分と干渉した場合には、干渉する位置に形成される斜め通路30、縦通路31及び横通路32を構成する足場板3a、3b、3c、布パイプ24及び腕木パイプ25の配置位置を変更して、付属物10と干渉しないようにするか、若しくは床部20のX、Y座標上の設置領域を変更して、付属物10と板状体5とが干渉しないようにする。
これにより板状体5と付属物10の垂直部分とが干渉したときに、板状体5を付属物10と干渉しない位置まで移動させなくても、板状体5と付属物10との干渉を解消することができる。この方法によれば、板状体5のZ方向の設置位置を修正しないので、各板状体5の間隔調整の作業を簡略化できると共に、床部20の設置位置を決定するときに、床部20を設置できる位置が多くなるので、床部20の設置位置の決定に関する自由度が向上する。
さらにこの足場の設計支援方法では、オペレータによる床部20の設置位置の設定後に確認用データ55を生成し、この確認用データ55と各床部20の高さ位置とを比較して、各床部20の設置位置が真に適切であるかどうかの判定を行っている。そのためオペレータによる床部20の設置位置の設定時にヒューマンエラーが発生することを防止することができ、設置不可領域57と干渉している床部20の高さ位置を修正することができる。従って設計時のミスで、実際に組足場2を組み立てて付属物10を取り付ける作業を行うときに床部20と付属物10とが干渉する問題の発生を未然に防ぐことができる。
なお本発明の実施の形態は、上記実施形態に限られず、例えば、板状体5を生成した後、先に確認用データ55を生成し、この確認用データ55から設置不可位置と干渉しない床部20の設置位置を設定するようにしてもよい。この場合、まずステップS1、ステップS2を行って板状体5を作成した後、ステップS11、ステップS12を行って確認用データ55を生成し、次いでステップS3を行って板状体5と、タワー1及び付属物10とを合成表示させる。
このとき、この例では確認用データ55の設置不可領域57と干渉しないように板状体5を配置することができるので、その後のステップS4〜ステップS6では、板状体5と付属物10と垂直部分との干渉チェックのみを行うことになる。そして既述のように付属物10の垂直部分と干渉した板状体5の床部20を構成する部材の配置位置を変更や、床部20のX、Y座標上の設置領域を変更して、付属物10と板状体5とが干渉しないようにして、床部20の設置位置を決定し、その後建地パイプ21の設置位置を決定する。このような方法でも、付属物10と干渉しない足場を設計することができる。
次に本実施形態の足場の設計支援方法で設計された組足場2の一例について図18及び図19を参照して説明する。図18に示す組足場2は、24段の床部20を有している。このように多数の床部20を有する組足場2であっても、本実施形態の足場の設計支援方法では、図19に示すように付属物10と床部20及び建地パイプ21とが干渉しない組足場2を設計することができる。つまり本実施形態の足場の設計支援方法は、このような多数の床部20を有する組足場2を設計するときに非常に有利となる。
また本実施形態の足場の設計支援方法は、例えば図20ないし図22に示すような吊り足場8の設計にも使用することができる。この吊り足場8の設計は、上述した組足場2の床部20の設置位置を設定したのと同じ方法で、図20に示すような吊り足場8の床部20の設置位置を設定した後、建地パイプ21の設置位置を決定する変わりに床部20を作業場82(建築構造物)に吊り下げるための垂直支持部材である吊りチェーン81(図20、図21参照)の吊設位置を決定して、付属物10と、吊りチェーン81及び床部20と、が干渉しない吊り足場8を設計することができる。なお図21は、吊り足場8の一部分を拡大して示した図であり、作業場82に吊りチェーン8が吊設され、この吊りチェーン8によって床部20が支持されている。また図22に実際に設計された吊り足場8の一例を示す。ただし図22では、吊りチェーン81の記載を省略している。
なお図20に示す80は、吊り足場8の床部20を構成する足場板3を腕木パイプ25を介して支持する親ごパイプである。そして床部20の設置位置を設定するための板状体5の厚さは、床部20を構成する足場板3、腕木パイプ25及び親ごパイプ80を組み合わせたときの床部20厚さと同じ厚さになる。