JP5372555B2 - 熱処理油組成物 - Google Patents
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そこで、硫黄分が300ppm以下である鉱油および合成油のうち少なくとも1種と、硫黄や硫黄化合物を配合して全硫黄分を3〜1000ppmに調整した基油と、スルホン酸のアルカリ土類金属塩、フェノールのアルカリ土類金属塩、アルケニルコハク酸誘導体、脂肪酸、脂肪酸誘導体、フェノール系酸化防止剤、およびアミン系酸化防止剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種とを含有してなる熱処理油組成物が提案されている(特許文献1参照)。また、硫黄を100重量ppm以下含有する所定の鉱油を基油として、リン酸エステル化合物とアルケニルコハク酸イミド化合物等を所定量配合してなる熱処理油組成物も提案されている(特許文献2参照)。
(1)鉱油および合成油の少なくともいずれか1種である基油に、3環以上の縮合多環芳香族化合物を配合してなり、前記3環以上の縮合多環芳香族化合物の配合量が、組成物全量基準で0.1質量%以上、5質量%以下であることを特徴とする熱処理油組成物。
(2)上述の(1)に記載の熱処理油組成物において、前記基油の40℃における動粘度が30mm 2 /s以上であり、該基油の硫黄分が300質量ppm以下であることを特徴とする熱処理油組成物。
(3)上述の(1)または(2)に記載の熱処理油組成物において、前記縮合多環芳香族化合物が炭化水素であることを特徴とする熱処理油組成物。
(4)上述の(1)または(2)に記載の熱処理油組成物において、前記縮合多環芳香族化合物がアントラセン骨格を有することを特徴とする熱処理油組成物。
(5)上述の(1)または(2)に記載の熱処理油組成物において、前記縮合多環芳香族化合物がジベンゾフラン骨格を有することを特徴とする熱処理油組成物。
本発明で用いられる基油としては、特に制限されず各種の鉱油あるいは合成油を用いることができる。鉱油としては、例えばパラフィン基系鉱油、中間基系鉱油、ナフテン基系鉱油などが挙げられる。また、合成油としては、例えばα−オレフィンオリゴマー(炭素数6〜16のα−オレフィンをオリゴマー化したもの、およびそれを水素添加したもの)、炭素数2〜16のオレフィンの(共)重合物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリフェニル系炭化水素、各種エステル類、例えばネオペンチルグリコール,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトールなどの多価アルコールの脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール誘導体などを用いることができる。
なお、鉱油の場合は、硫黄分が300質量ppm以下のいわゆる高精製度鉱油が好適に使用できる。このような高精製度鉱油は、原油から得られる重質留分に溶剤精製、水素化精製あるいは水素化分解を施して得られる。
さらに基油の粘度指数は85以上であることが好ましく、95以上がより好ましい。また、芳香族分(%CA)が10以下であることが好ましく、7以下がより好ましく、さらには3以下、特に1以下のものが好ましい。粘度指数が85以上であり、芳香族分(%CA)が10以下であると、熱処理油組成物の酸化安定性が良好となる。
上述の鉱油および合成油は、1種のみを単独で用いることもできるが、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
このような3環以上の縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、アセナフタレン、フルオレン、フェナントレン、フルオランテン、ピレン、ベンゾフルオレン、ベンゾフェナントレン、ベンゾフルオランテン、ナフタセン、トリフェニレン、クリセン、ベンゾアントラセン、ベンゾピレン、ベンゾフルオランテン、ベンゾアセフェナントレン、ペリレン、アンタントレン、ベンゾナフタセン、ベンゾクリセン、ベンゾペリレン、ジベンゾアントラセン、ナフトアントラセン、ペンタセン、ペンタフェン、ピセン、コロネン、ジベンゾクリセン、ジベンゾペリレン、ジベンゾクリセン、ナフトペリレン、ヘキサヘリセン、ベンゾコロネン、ベンゾナフトペリレン、ジベンゾコロネン、ピラントレン、ジナフトペンタセン、ナフトコロネン、ベンゾジナフトペンタセン、ベンゾフェナントロペンタセン、ジベンゾナフトペリレン、テトラゼンゾペリレン、ペンタゼンゾペリレン、およびヘキサゼンゾペリレン等の縮合多環芳香族炭化水素が挙げられる。
蒸気膜破断剤を配合することにより、蒸気膜段階が短く、かつ沸騰段階の冷却性能の増加が抑制されることから、冷却むらによる焼入れ歪を低減することができる。また、沸騰段階の温度範囲が広く、処理物の硬さを確保することができる。このような蒸気膜破断剤としては、高分子化合物が用いられ、例えば、エチレン-プロピレン共重合体などのエチレン-α-オレフィン共重合体(α-オレフィンの炭素数は3〜20)、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンなど炭素数5〜20のα-オレフィンの重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレンなど炭素数3または4のオレフィン重合体、などの各種ポリオレフィン類およびそれらポリオレフィン類の水素添加物、ポリメタクリレート、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、石油樹脂などの高分子化合物、並びにアスファルトなどを挙げることができる。これらの中でも、特に、冷却性、安定性の観点から、アスファルトが、また、光輝性をより向上させる観点からエチレン-プロピレン共重合体などのエチレン-α-オレフィン共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレンが好ましい。これら蒸気膜破断剤の数平均分子量は、800〜100,000であることが好ましい。またその配合量は、熱処理油組成物全量基準で、0.5〜10質量%の範囲が好ましい。この含有量が0.5質量%以上であると、蒸気膜破断剤の効果が発揮されるが、10質量%を超えると、熱処理油組成物の粘度が高くなりすぎ、熱処理効果が低下しやすくなる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール;2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール;2,6−ジ−tert−アミル−4−メチルフェノール;n−オクタデシル3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネートなどの単環フェノール類、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)などの多環フェノール類などが挙げられる。
本発明においては、酸化防止剤として、前記フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤の中から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。また、その配合量は、酸化防止効果および経済性のバランスなどの面から、組成物全量基準で、0.01〜5質量%程度である。
これらの清浄分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記した清浄分散剤は、熱処理油組成物を繰り返して使用した際に生じるスラッジの分散効果を有するが、金属系清浄剤は、さらに劣化酸の中和剤としての作用も有している。また、清浄分散剤の配合量は、効果および経済性のバランスなどの面から、組成物全量基準で、0.01〜5質量%程度である。
また、本発明の組成物を用いて、鋼材等の金属材料を焼入れ処理するには、熱処理油である組成物の温度を、通常の焼入れ処理の温度(60〜150℃程度)に設定してもよいし、170〜250℃の高温に設定してもよい。高油温条件で、本発明の組成物を用いて、鋼材等の金属材料を焼入れ処理すれば、冷却むらが起こりにくいことから、処理物により優れた光輝性と長い光輝性寿命を付与することができ、更に、処理物の歪みを低減させることができる。また本発明の熱処理油組成物は、金属焼入れ油としての使用初期(即ち、新油時)においても光輝性を付与する点にも特徴を有する。一般に、新油時においては光輝性を付与しにくいことから本発明の熱処理油組成物は極めて有効である。
<試料油の調製>
基油として鉱油(パラフィン系、40℃動粘度:90mm2/s)を用い、以下に示すように各種の添加剤を所定量配合して熱処理油組成物(試料油)を調製した(いずれも組成物全量基準)。
実施例1:アントラセン(0.1質量%)
実施例2:ジベンゾフラン(1質量%)
比較例1:添加剤無し(鉱油のみ)
比較例2:部分水素化ターフェニル(1質量%)
(混合物であるので代表的な構造を下に示す。他にオルト置換タイプ、パラ置換タイプ等も含まれる。)
「熱処理油槽内の酸素による光輝性への影響」(出光トライボレビュー,No.31,pp.1963〜1966、平成20年9月30日発行)を参考にして行った。具体的には以下の通りである。
まず、ダンベル形の金属材料(φ16mm S45C)と、円柱型の金属材料(φ10mm SUJ2)を組合わせて試験片とした。次に、試験片を窒素と水素の混合ガス雰囲気中で850℃まで加熱した。そして、該温度となった試験片を120℃の試料油に投入して焼入れを行った。焼入れ試験後の試験片の写真を図1〜図5に示す。
<明度>
所定の着色を施した外観見本を作成して、焼入れ後の試験片の色と比較評価した。外観見本の着色の程度は以下に示す数値で示される。
0:着色が全くない
1:薄い着色
2:黒褐色〜黒色
試験片(ダンベルと円柱の非接触部)を目視で観察し、以下の基準で評価した。
0:着色が全くないかほとんどない
1:薄い着色が認められる
2:黒褐色〜黒色の着色が認められる
試験片(ダンベルと円柱の接触部)を目視で観察し、以下の基準で評価した。
0:着色が全くないかほとんどない
1:薄い着色が認められる
2:黒褐色〜黒色の着色が認められる
前記した評価方法により得られた「明度」、「端部の着色」および「接触部の着色」を順に並べると以下の通りである。
実施例1(図1):0−0−0
実施例2(図2):0−0−0
比較例1(図3):2−2−2
比較例2(図4):2−2−2
比較例3(図5):2−2−2
上述の結果より、本発明の熱処理油組成物は、3環の縮合環芳香族化合物が配合されているので、焼入れ後も試験片が優れた光輝性を発揮していることがわかる。しかも、着色しやすい接触部であっても光輝性に優れることは特筆すべきである。一方、比較例1〜3では、3環以上の縮合多環芳香族化合物が配合されていないので光輝性が非常に劣る。なお、比較例2より、3環構造を有している芳香族化合物でもビフェニル構造では効果がないことがわかる。
Claims (5)
- 鉱油および合成油の少なくともいずれか1種である基油に、3環以上の縮合多環芳香族化合物を配合してなり、
前記3環以上の縮合多環芳香族化合物の配合量が、組成物全量基準で0.1質量%以上、5質量%以下である
ことを特徴とする熱処理油組成物。 - 請求項1に記載の熱処理油組成物において、
前記基油の40℃における動粘度が30mm2/s以上であり、該基油の硫黄分が300質量ppm以下である
ことを特徴とする熱処理油組成物。 - 請求項1または請求項2に記載の熱処理油組成物において、
前記縮合多環芳香族化合物が炭化水素である
ことを特徴とする熱処理油組成物。 - 請求項1または請求項2に記載の熱処理油組成物において、
前記縮合多環芳香族化合物がアントラセン骨格を有する
ことを特徴とする熱処理油組成物。 - 請求項1または請求項2に記載の熱処理油組成物において、
前記縮合多環芳香族化合物がジベンゾフラン骨格を有する
ことを特徴とする熱処理油組成物。
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