以下では、図1を用いて、本発明に係るインバータ式エンジン発電装置の実施の一形態であるインバータ式エンジン発電装置(以下、単に「発電装置」と記す)1の概略構成について説明する。
発電装置1は、所定の周波数の交流電流を発生するものである。図1に示すように、発電装置1は、主としてエンジン10、発電機20、インバータ30、アクチュエータ40、インバータ出力検出手段41、エンジン回転数検出手段42、冷却水温度検出手段43、潤滑油温度検出手段44、入力手段45、キースイッチ46、セルモータ47、制御装置50等を備える。
エンジン10は、発電装置1が備える他の機器を駆動するための動力を発生するものである。エンジン10は、主として機械式調速機構11、燃料噴射ポンプ(図示せず)等を備える。
機械式調速機構11は、エンジン10の回転数を設定するとともに、エンジン10に対する負荷の変動による前記回転数の変化を抑制するものである。エンジン10は、機械式調速機構11により、多少の負荷変動が生じた場合においても、略一定の回転数を保持することができる。機械式調速機構11は、主として設定回転数変更手段(図示せず)、ガバナレバー(図示せず)等を備える。
前記設定回転数変更手段(例えば、レギュレータレバー等)は、前記ガバナレバー等と連動連結される。前記設定回転数変更手段が回動操作されることにより、前記ガバナレバー等を介して前記燃料噴射ポンプのコントロールラック位置が調節される。前記コントロールラックの位置が調節されることにより、エンジン10への燃料の供給量が調節される。前記燃料の供給量が調節されることにより、エンジン10の回転数が調節される。また、エンジン10への燃料の供給を遮断することにより、エンジン10が停止される。すなわち、前記設定回転数変更手段が回動操作されることにより、エンジン10の回転数が調節又は停止される。
発電機20は、エンジン10の動力により駆動され、発電するものであるインバータ30は、発電機20により発電された電流を整流した後に、所定の周波数の交流電流に変換するものである。インバータ30には、基準出力電流Ipeが設定される。基準出力電流Ipeは、インバータ30が備える素子を保護するために設定される電流値である。発電装置1に接続される負荷機器の要求により、インバータ30が基準出力電流Ipeを超える電流を出力した場合、インバータ30は当該電流の出力を停止する。これによって、インバータ30に過大な電流が流れることを防止し、前記素子の損壊を防止する。なお、基準出力電流Ipeの代わりに基準出力電圧を設定し、インバータ30の出力電圧が、前記許容出力電圧を越えないように制御することも可能である。
アクチュエータ40は、機械式調速機構11を作動させるものである。より詳細には、アクチュエータ40は、機械式調速機構11が備える前記設定回転数変更手段を作動させるものである。アクチュエータ40は、具体的には、ステッピングモータや油圧シリンダ等で構成される。アクチュエータ40が前記設定回転数変更手段を回動操作することにより、エンジン10の回転数が調節又は停止される。
なお、発電装置1は、エンジン10の回転数を調節するためのアクチュエータと、エンジン10を停止するためのアクチュエータと、を別個に備える構成とすることも可能である。
インバータ出力検出手段41は、インバータ30の出力電流Iを検出するものである。インバータ出力検出手段41は、具体的にはカレントトランス等の電流検出器で構成される。
エンジン回転数検出手段42は、エンジン10の実際の回転数(以下、単に「実エンジン回転数」と記す)Nreを検出するものである。エンジン回転数検出手段42は、具体的には磁気ピックアップ式の回転数センサやロータリエンコーダ等で構成される。
冷却水温度検出手段43は、エンジン10の冷却水の温度(以下、単に「冷却水温度」と記す)TWを検出するものである。
潤滑油温度検出手段44は、エンジン10の潤滑油の温度(以下、単に「潤滑油温度」と記す)TOを検出するものである。
入力手段45は、後述するソフトスタート制御モード及びF/V制御モードのいずれか一方を選択するものである。入力手段45は、具体的にはスライドスイッチ、セレクタスイッチ、押しボタンスイッチ等の種々のスイッチやタッチパネル等で構成される。
キースイッチ46は、エンジン10の始動を指示するものである。キースイッチ46は、発電装置1の外周に設けられる操作パネル等の、オペレータが操作することが可能な位置に配置される。
セルモータ47は、エンジン10を始動させるものである。セルモータ47が駆動すると同時に、セルモータ47が有するピニオンと、エンジン10が有するフライホイールに設けられたリングギヤと、が噛み合う。これによって、セルモータ47により前記フライホイールが回動され、エンジン10が始動される。
以下では、図1及び図2を用いて、制御装置50について説明する。制御装置50は、種々のプログラムやデータ等に基づいてアクチュエータ40の動作等を制御するものである。図1に示すように、制御装置50は、主として記憶部51、演算部(図示せず)等を備える。
記憶部51は、各種制御プログラムを格納するROM及びデータ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM等により構成される。記憶部51は、制御装置50が制御を行うための種々のプログラムやデータ(例えば、エンジンマップ)等を格納する。
記憶部51は、図2に示すような、インバータの負荷率Lと、当該負荷率Lに対応する適切なエンジン10の回転数(以下、単に「エンジン回転数」と記す)Nである目標エンジン回転数Ntaとの関係を示すエンジンマップを格納する。負荷率Lとは、インバータ30の定格時の出力電流に対する、インバータ30の実際の出力電流の割合を百分率(0%〜100%)で表したものである。
前記エンジンマップに示される負荷率Lと目標エンジン回転数Ntaとの相関関係は、予め数値計算や実験等により決定される。目標エンジン回転数Ntaは、エンジン10が発生する騒音や、排気ガス量をできる限り抑えることができるよう考慮して決定される。前記エンジンマップに基づいて、インバータ30の負荷率Lに対応する適正なエンジン回転数Nでエンジン10を運転することにより、必要以上の燃料消費や、騒音及び排気ガスの発生を抑制することができる。
図2に示すように、負荷率Lが0%の場合(無負荷時)に対応する目標エンジン回転数Ntaを、無負荷エンジン回転数Nminとする。また、負荷率Lが100%の場合(定格時)に対応する目標エンジン回転数Ntaを、定格エンジン回転数Nmaxとする。なお、図2に示す前記エンジンマップは例示であり、負荷率Lと目標エンジン回転数Ntaとの相関関係は、これに限るものではない。
前記演算部は、種々のプログラムやデータ等に基づいて演算を行うマイクロコンピュータ等により構成される。前記演算部は、記憶部51が格納する種々のプログラムやデータ等に基づいて演算を行い、アクチュエータ40の動作等を制御する。
制御装置50は、インバータ出力検出手段41と接続され、インバータ出力検出手段41により検出されるインバータ30の出力電流Iの値を取得することができる。制御装置50は、エンジン回転数検出手段42に接続され、エンジン回転数検出手段42により検出される実エンジン回転数Nreの値を取得することができる。制御装置50は、冷却水温度検出手段43に接続され、冷却水温度検出手段43により検出されるエンジン10の冷却水温度TWの値を取得することができる。制御装置50は、潤滑油温度検出手段44に接続され、潤滑油温度検出手段44により検出されるエンジン10の潤滑油温度TOの値を取得することができる。制御装置50は、入力手段45に接続され、ソフトスタート制御モード及びF/V制御モードのうち、入力手段45により選択された制御モードを検出することができる。制御装置50は、キースイッチ46に接続され、キースイッチ46が投入(オン)状態にある場合に、その旨の信号を取得することができる。
制御装置50は、インバータ30に接続され、インバータ30の周波数を制御することができる。制御装置50は、アクチュエータ40に接続され、アクチュエータ40の動作を制御することができる。制御装置50は、セルモータ47に接続され、セルモータ47の動作を制御することができる。
制御装置50は、キースイッチ46がオン状態にある旨の信号を取得した場合、セルモータ47を駆動し、エンジン10を始動させる。
以下では、図3から図9までを用いて、制御装置50による発電装置1の制御について説明する。
制御装置50は、発電装置1が備えるキースイッチ46がオン状態になると、図3に示す制御を開始する。
図3に示すように、ステップS100において、制御装置50は、ソフトスタート制御モード及びF/V制御モードのうち入力手段45により選択された制御モードに基づく制御を開始する。
以下では、図4を用いて、制御装置50のソフトスタート制御モードに基づく制御について具体的に説明する。前記ソフトスタート制御モードは、コンデンサ等を用いたソフトスタート用の回路を用いることで実現される。制御装置50は、時間Aにおいて負荷機器が投入されると、インバータ30の出力電流Iを、前記負荷機器の要求電流にかかわらず、前記負荷機器の定常時における要求電流Icoまで漸次または段階的に増加させる。この際の出力電流Iの増加率は、突入電流Iruの発生を防止するために適切な値となるように、実験や数値計算等に基づいて予め決定され、当該決定に基づいて制御回路が設計される。ここで、突入電流Iruとは、前記負荷機器が起動時に要求する電流である。突入電流Iruは、前記負荷機器の定常時における要求電流Icoよりも、大きな電流である。
制御装置50が、ソフトスタート制御モードに基づく制御を行うことにより、インバータ30が突入電流Iruを出力することを防止することができる。つまりは、出力電流Iが基準出力電流Ipeを超えることを防止することができる。これによって、インバータ30は出力を停止することがないため、前記負荷機器を始動させることができる。また、突入電流Iruを許容するための大容量インバータを用いる必要がないため、部品コストを抑えることができる。
図5を用いて、制御装置50のF/V制御モードに基づく制御について具体的に説明する。制御装置50は、時間Bにおいて負荷機器が投入されると、インバータ周波数Fを、所定のインバータ周波数Floから定格インバータ周波数Fcoまで段階的に増加させる。これにより、インバータ30の出力電流Iを、前記負荷機器の要求電流にかかわらず、前記負荷機器の定常時の要求電流Icoまで漸次または段階的に増加させる。これによって、インバータ30に、前記負荷機器の突入電流Iruが流れることを防止することができる。この際のインバータ周波数Fの増加率は、突入電流Iruの発生を防止するために適切な値となるように、実験や数値計算等に基づいて予め設定される。
制御装置50が、F/V制御モードに基づく制御を行うことにより、インバータ30が突入電流Iruを出力することを防止することができる。つまりは、出力電流Iが基準出力電流Ipeを超えることを防止することができる。これによって、インバータ30は出力を停止することがないため、前記負荷機器を始動させることができる。また、突入電流Iruを許容するための大容量インバータを用いる必要がないため、部品コストを抑えることができる。また、インバータ周波数Fの増加率を所望の値に変更するだけで、出力電流Iの増加率も変更することができ、種々の負荷機器に対応した制御を容易に行うことができる。
また、オペレータによって入力手段45が操作されることにより、ソフトスタート制御モード及びF/V制御モードのいずれか一方を任意に選択することができる。これによって、発電装置1の運転状況や、発電装置1に接続される負荷機器の変更に合わせて、制御方法を任意に選択することができる。
なお、本実施形態において、制御装置50は、ステップS100において入力手段45により選択された制御モードに基づく制御を開始するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、記憶部51に予め記憶される設定や、ディップスイッチ等による設定等に基づいて、ソフトスタート制御モード及びF/V制御モードのいずれか一方を選択する構成とすることも可能である。前記設定は、発電装置1の出荷時等に予め設定される。これによって、発電装置1の使用環境や販売地域、ユーザーのニーズ等に応じて予め選択する制御モードを設定しておくことが可能である。
図3に示すように、制御装置50は、入力手段45により選択された制御モードに基づく制御を開始した後、ステップS110に移行する。
ステップS110において、制御装置50は、エンジン回転数Nが無負荷エンジン回転数Nminとなるように、アクチュエータ40を作動させる。つまり、無負荷エンジン回転数Nminに対応する作動量だけ、アクチュエータ40を作動させる。記憶部51には、アクチュエータ40の作動量と、当該作動量だけアクチュエータ40を作動させた場合のエンジン回転数Nと、の相関関係が予めマップ等により記憶される。制御装置50は、当該相関関係に基づいて、所望のエンジン回転数Nに対応する作動量だけアクチュエータ40を作動させることにより、エンジン回転数Nを制御することができる。制御装置50は、アクチュエータ40を作動させた後、ステップS120に移行する。
ステップS120において、制御装置50は、出力電流Iに基づいて、発電装置1に負荷がかかっているか否かを判定する。具体的には、記憶部51には、無負荷状態における出力電流(以下、単に「無負荷出力電流」と記す)Iminが予め記憶される。制御装置50は、出力電流Iと無負荷出力電流Iminとを比較する。制御装置50は、出力電流Iが無負荷出力電流Iminを超える値であれば、発電装置1に負荷がかかっていると判定する。また、制御装置50は、出力電流Iが無負荷出力電流Imin以下の値であれば、発電装置1に負荷がかかっていないと判定する。その結果、制御装置50は、発電装置1に負荷がかかっていない場合には、ステップS120の処理を再度行う。ステップS120の処理を行っている間は、エンジン10は必要最低限の回転数(無負荷エンジン回転数Nmin)で運転されるため、エネルギー(燃料)消費及び排気ガスの排出量は少なく、騒音も小さい状態に保たれる。また、制御装置50は、発電装置1に負荷がかかっている場合には、ステップS130に移行する。
ステップS130において、制御装置50は、過出力保護制御を行う。以下では、図6を用いて、ステップS130における過出力保護処理の詳細について説明する。
ステップS131において、制御装置50は、出力電流Iが、予め記憶部51に記憶される設定値(以下、単に「許容出力電流」と記す)Ith以上であるか否かを判定する。その結果、制御装置50は、出力電流Iが許容出力電流Ith以上である場合には、ステップS132に移行する。また、制御装置50は、出力電流Iが許容出力電流Ith以上でない、すなわち、許容出力電流Ith未満である場合には、ステップS140(図3参照)に移行する。
ステップS132において、制御装置50は、アクチュエータ40を作動させ、エンジン10への燃料の供給を遮断し、エンジン10を停止する。これによって、インバータ30及び発電装置1に接続される負荷機器に対して、過電流が流れることを防止し、インバータ30が備える素子等の損壊を防止することができる。
図3に示すように、ステップS140において、制御装置50は、回転数処理を行う。以下では、図7を用いて、ステップS140における回転数処理の詳細について説明する。
ステップS141において、制御装置50は、インバータ出力検出手段41により検出される出力電流I、及び記憶部51に予め記憶されるインバータ30の定格時の出力電流に基づいて、負荷率L(n)を算出する。制御装置50は、負荷率L(n)を算出した後、ステップS142に移行する。
ステップS142において、制御装置50は、前記エンジンマップに基づいて、負荷率L(n)に対応する目標エンジン回転数Nta(n)を算出する。制御装置50は、目標エンジン回転数Nta(n)を算出した後、ステップS143に移行する。
ステップS143において、制御装置50は、エンジン回転数Nが目標エンジン回転数Nta(n)となるように、アクチュエータ40を作動させる。つまり、目標エンジン回転数Nta(n)に対応する作動量だけ、アクチュエータ40を作動させる。これによって、発電装置1にかかる負荷の変動に応じて、エンジン回転数Nを適切な値に制御することができる。また、インバータ30の出力電流Iに基づいて制御を行うことで、エンジン10に負荷がかかる前に、エンジン回転数Nの制御を行うことができる。制御装置50は、アクチュエータ40を作動させた後、ステップS150(図3参照)に移行する。
図3に示すように、ステップS150において、制御装置50は、出力電流Iが、ステップS140において前記回転数処理を行った際の値から変動したか否かを判定する。その結果、制御装置50は、出力電流Iが、前記回転数処理を行った際の値から変動していない場合には、ステップS150の処理を再度行う。また、制御装置50は、出力電流Iが、前記回転数処理を行った際の値から変動した場合には、ステップS160に移行する。
ステップS160において、制御装置50は、発電装置1に負荷がかかっているか否かを判定する。その結果、制御装置50は、発電装置1に負荷がかかっていない場合には、ステップS100に移行する。また、制御装置50は、発電装置1に負荷がかかっている場合には、ステップS170に移行する。
ステップS170において、制御装置50は、新たに負荷率L(n+1)を算出する。負荷率L(n+1)とは、ステップS150において検出される出力電流Iが変動した後の負荷率Lであり、負荷率L(n)とは、当該変動前の負荷率Lである。制御装置50は、負荷率L(n+1)を算出した後、ステップS180に移行する。
ステップS180において、制御装置50は、負荷率L(n)に対する負荷率L(n+1)の変動率(負荷変動率Lvo)を算出する。ここで、負荷変動率Lvo(%)は、Lvo=|{L(n+1)−L(n)}/L(n)×100|で算出される。制御装置50は、負荷変動率Lvoを算出した後、ステップS190に移行する。
ステップS190において、制御装置50は、負荷変動率Lvoが予め設定された設定値(本実施形態では10(%))以上であるか否か判定する。その結果、制御装置50は、負荷変動率Lvoが10(%)以上でない、すなわち、10(%)未満である場合には、ステップS150に移行する。また、制御装置50は、負荷変動率Lvoが10(%)以上である場合には、ステップS200に移行する。このように構成することにより、制御装置50は、負荷変動率Lvoが前記設定値以上となる場合だけ、後述するステップS200及びS210においてアクチュエータ40を作動させる。これによって、微少な負荷変動に反応してエンジン回転数Nが細かく変動することを防止し、騒音フィーリング(騒音の変動による不快感)の悪化を抑制することができる。
なお、ステップS190において、負荷変動率Lvoが10(%)以上であるか否かを判定したが、当該判定の基準となる値は例示であり、10(%)に限るものではない。前記基準となる値は、実験や数値計算等に基づいて、騒音フィーリングの悪化を防止できるように定められる、設定値である。
ステップS200において、制御装置50は、負荷遮断処理を行う。以下では、図8を用いて、ステップS200における負荷遮断処理の詳細について説明する。
ステップS201において、制御装置50は、負荷率L(n)が予め定められた設定値(本実施形態では80(%))以上であるか否か判定する。その結果、制御装置50は、負荷率L(n)が80(%)以上である場合には、ステップS202に移行する。また、制御装置50は、負荷率L(n)が80(%)以上でない、すなわち、80(%)未満である場合には、ステップS210(図3参照)に移行する。
ステップS202において、制御装置50は、負荷率L(n+1)が予め定められた設定値(本実施形態では20(%))以下であるか否か判定する。すなわち、制御装置50は、ステップS201及びS202の処理を行うことにより、負荷率Lが、所定負荷率幅(本実施形態では60(%))以上減少したか否かを判定する。その結果、制御装置50は、負荷率L(n+1)が20(%)以下である場合には、ステップS203に移行する。また、制御装置50は、負荷率L(n+1)が20(%)以下でない、すなわち、20(%)を超える場合には、ステップS210(図3参照)に移行する。
ステップS203において、制御装置50は、負荷率Lが、負荷率L(n)から負荷率L(n+1)に変動するまでの時間tが所定時間(本実施形態では0.3(s))以下であるか否か判定する。その結果、制御装置50は、前記時間tが0.3(s)以下である場合には、ステップS204に移行する。また、制御装置50は、前記時間tが0.3(s)以下でない、すなわち、0.3(s)を超える場合には、ステップS210(図3参照)に移行する。
ステップS204において、制御装置50は、負荷率L(n+1)に対応する設定エンジン回転数Nesを算出する。設定エンジン回転数Nesとは、負荷率Lが、前記設定時間以内に、前記設定負荷率幅以上減少した際に、制御装置50により変更されるエンジン回転数Nの目標値である。負荷率Lと、当該負荷率Lに対応する適切な設定エンジン回転数Nesとの相関関係は、実験や数値計算等に基づいて予め定められ、記憶部51に記憶される。制御装置50は、当該相関関係に基づいて、負荷率Lに対応する設定エンジン回転数Nesを算出する。制御装置50は、設定エンジン回転数Nesを算出した後、ステップS205に移行する。
ステップS205において、制御装置50は、エンジン回転数Nが、設定エンジン回転数Nesとなるように、アクチュエータ40を作動させる。つまり、設定エンジン回転数Nesに対応する作動量だけ、アクチュエータ40を作動させる。これによって、制御装置50は、負荷率Lが前記設定時間以内に、前記設定負荷率幅以上減少した際に、エンジン回転数Nを設定エンジン回転数Nesに制御する。エンジン10にかかる負荷が急激に低下した場合、エンジン回転数Nが急激に上昇する場合がある。これにより、エンジン10から発生される騒音や排気量が増加する。しかし、設定エンジン回転数Nesを、上記エンジン回転数Nの急激な上昇を抑制できる程度に十分小さい値に定めておくことで、騒音や排気量の増加を防止することができる。制御装置50は、アクチュエータ40を作動させた後、ステップS210(図3参照)に移行する。
本実施形態のステップS201及びS202において、負荷率Lの判定の基準値として80(%)及び20(%)という値を用いたが、当該判定の基準値は例示であり、これに限るものではない。つまり、前記判定の基準値は、負荷率L(n)からL(n+1)まで前記所定負荷率幅以上減少したことが判定できる値に定められる。本実施形態の前記所定負荷率幅は、60(%)という値を用いたが、本発明はこれに限るものではく、実験や数値計算等に基づいて定められる。
本実施形態のステップS203において、負荷率L(n)から負荷率L(n+1)に変動するまでの時間tの判定の基準値として0.3(s)という値を用いたが、当該判定の基準値は例示であり、これに限るものではない。
本実施形態のステップS204において、制御装置50は、設定エンジン回転数Nesを算出する構成としたが、本発明はこれに限るものではない。つまり、設定エンジン回転数Nesとして、予め記憶部51に記憶される所定の値(例えば、「2300rpm」等)を用いる構成とすることも可能である。このような構成の負荷遮断処理においては、ステップS204の処理は省略される。
本実施形態のステップ215において、制御装置50は、所定作動量幅ずつ段階的にアクチュエータ40を作動させる構成とすることも可能である。つまり、エンジン回転数Nを、設定エンジン回転数Nesに向かって、所定エンジン回転数幅(例えば、「200rpm」等)ずつ、段階的に減少させる構成とすることも可能である。このように構成することにより、エンジン回転数Nを、設定エンジン回転数Nesまで一気に減少させる場合よりも、エンジン回転数Nの変化に伴って発生される騒音を低減することができる。また、急激なエンジン回転数Nの変化による騒音フィーリングの悪化も抑制することが可能となる。
図3に示すように、ステップS210において、制御装置50は、急負荷制御を行う。以下では、図9を用いて、ステップS210における急負荷処理の詳細について説明する。
ステップS211において、制御装置50は、負荷率L(n+1)が予め設定された設定値(本実施形態では90(%))以上であるか否か判定する。その結果、制御装置50は、負荷率L(n+1)が90(%)以上である場合には、ステップS212に移行する。また、制御装置50は、負荷率L(n+1)が90(%)以上でない、すなわち、90(%)未満である場合には、ステップS213に移行する。
ステップS212において、制御装置50は、エンジン回転数Nが定格エンジン回転数Nmaxとなるように、アクチュエータ40を作動させる。つまり、定格エンジン回転数Nmaxに対応する作動量だけ、アクチュエータ40を作動させる。これによって、エンジン10に大きな負荷がかかる前に、エンジン回転数Nを増加させ、前記負荷によるエンジン回転数Nの減少、及びエンジンストールを防止することができる。制御装置50は、アクチュエータ40を作動させた後、ステップS150(図3参照)に移行する。
なお、ステップS212において、制御装置50は、エンジン回転数Nが定格エンジン回転数Nmaxとなるように制御を行ったが、本発明はこれに限るものではない。つまり、エンジン10にかかる負荷によって、エンジン回転数Nの減少、及びエンジンストールが発生しない程度に十分高い、所定のエンジン回転数(例えば、許容される最大エンジン回転数)以上まで、エンジン回転数Nを増加させる構成であればよい。
また、ステップS211において、負荷率L(n+1)が、90(%)以上であるか否かを判定したが、当該判定の基準となる値は例示であり、90(%)に限るものではない。前記基準となる値は、実験や数値計算等に基づいて、エンジン回転数Nの減少、及びエンジンストールの発生を防止できるように定められる、設定値である。
ステップS213において、制御装置50は、負荷率L(n+1)に対応する目標エンジン回転数Nta(n+1)を算出する。制御装置50は、目標エンジン回転数Nta(n+1)を算出した後、ステップS214に移行する。
ステップS214において、制御装置50は、エンジン回転数Nが目標エンジン回転数Nta(n+1)となるように、アクチュエータ40を作動させる。つまり、目標エンジン回転数Nta(n+1)に対応する作動量だけ、アクチュエータ40を作動させる。制御装置50は、アクチュエータ40を作動させた後、ステップS150に移行する。制御装置50は、ステップS210において急負荷処理を行った後、ステップS150(図3参照)に移行する。
制御装置50は、発電装置1が備えるキースイッチ46がオフ状態になると、図3に示す制御を終了する。
制御装置50は、上述した制御と並行して、以下で説明する制御を行う。制御装置50は、キースイッチ46が投入され、セルモータ47の駆動を開始した後に、図10に示す制御を開始する。ステップS300において、エンジン回転数検出手段42により検出される実エンジン回転数Nreが、予め定められた設定値(本実施形態では600(rpm))以上であるか否か判定する。その結果、制御装置50は、実エンジン回転数Nreが600(rpm)以上である場合には、ステップS301に移行する。また、制御装置50は、実エンジン回転数Nreが600(rpm)以上でない、すなわち、600(rpm)未満である場合には、ステップS300の処理を再度行う。すなわち、制御装置50は、セルモータ47の駆動を続行させる。
ステップS301において、制御装置50は、セルモータ47によるエンジン10の始動動作を終了する。これによって、セルモータ47が、始動したエンジン10により回される現象(オーバーラン)の発生を防止することができ、セルモータ47の損壊を防止することができる。また、前記オーバーランの発生防止のために、セーフティリレー等の専用部品を別途装備する必要がないため、部品コストの低減を図ることができる。制御装置50は、セルモータ47の始動動作を終了した後、ステップS310に移行する。
なお、ステップS300において、実エンジン回転数Nreが、600(rpm)以上であるか否かを判定したが、前記設定値は例示であり、600(rpm)に限るものではない。前記設定値は、実験や数値計算等に基づいて、セルモータ47の損壊を防止できるように定められる。
ステップS310において、制御装置50は、エンジン回転数検出手段42により検出される実エンジン回転数Nreが、予め定められた設定値(本実施形態では1800(rpm))以上であるか否か判定する。その結果、制御装置50は、実エンジン回転数Nreが1800(rpm)以上である場合には、ステップS311に移行する。また、制御装置50は、実エンジン回転数Nreが1800(rpm)以上でない、すなわち、1800(rpm)未満である場合には、ステップS310の処理を再度行う。すなわち、制御装置50は、エンジン10が始動した時の状態を維持する。
ステップS311において、制御装置50は、エンジン10を保護するためのエンジン保護モードに基づく制御を開始する。つまり、制御装置50は、実エンジン回転数Nreが、前記設定値以上になった時点で、前記エンジン保護モードに基づく制御を開始する。
前記エンジン保護モードに基づく制御とは、種々のプログラムやデータ等に基づいてアクチュエータ40を作動させ、所定の場合にエンジン10を停止する制御である。前記エンジン保護モードに基づく制御の第一の実施形態として、制御装置50は、冷却水温度検出手段43により検出される冷却水温度TWが、予め定められる許容値である許容冷却水温度TWth以上であると判定した場合、アクチュエータ40を作動させ、エンジン10を停止する構成とすることができる。これによって、冷却水温度TWが上昇することによる過負荷運転からエンジン10を保護することができる。前記エンジン保護モードに基づく制御の第二の実施形態として、制御装置50は、潤滑油温度検出手段44により検出される潤滑油温度TOが、予め定められる許容値である許容潤滑油温度TOth以上であると判定した場合、アクチュエータ40を作動させ、エンジン10を停止する構成とすることも可能である。これによって、潤滑油温度TOが上昇することによる過負荷運転からエンジン10を保護することができる。前記エンジン保護モードに基づく制御の第三の実施形態として、制御装置50は、エンジン回転数検出手段42により検出される実エンジン回転数Nreが、予め定められる許容値である許容エンジン回転数Nth以上であると判定した場合、アクチュエータ40を作動させ、エンジン10を停止する構成とすることも可能である。これによって、エンジン回転数異常から、エンジン10を保護することができる。
前記エンジン保護モードに基づく制御を開始するタイミングは、発電装置1が備えるダイナモ等の充電装置の電圧に基づいて決定することも可能である。しかし、前記充電装置の電圧に基づくタイミングの決定は、当該充電装置の個体差によるばらつきがあり、安定しない場合がある。本実施形態の如く、実エンジン回転数Nreに基づいて前記タイミングを決定することにより、ばらつきのない安定した前記タイミングの決定が可能となる。制御装置50は、前記エンジン保護モードに基づく制御を開始した後、ステップS320に移行する。
なお、ステップS310において、実エンジン回転数Nreが、1800(rpm)以上であるか否かを判定したが、前記設定値は例示であり、1800(rpm)に限るものではない。前記設定値は、実験や数値計算等に基づいて、制御装置50が前記エンジン保護モードに基づく制御を適切なタイミングで開始できるように定められる。
ステップS320において、制御装置50は、エンジン回転数検出手段42により検出される実エンジン回転数Nreが、予め定められた設定値(本実施形態では2000(rpm))以上であるか否か判定する。その結果、制御装置50は、実エンジン回転数Nreが2000(rpm)以上でない、すなわち、2000(rpm)未満である場合には、ステップS310に移行する。また、制御装置50は、実エンジン回転数Nreが2000(rpm)以上である場合には、ステップS330に移行する。上記の如く、制御装置50は、実エンジン回転数Nreが2000(rpm)以上となる場合だけ、後述するステップS340におけるアクチュエータ40の制御を行う。すなわち、制御装置50は、エンジン10が確実に始動されている(実エンジン回転数Nreが2000(rpm)を超えている)場合にのみ、後述するステップS340におけるアクチュエータ40の制御を行う。これによって、エンジン10が停止している際に制御装置50が誤作動し、エンジン回転数Nを上昇させようとアクチュエータ40を作動させ、当該アクチュエータ40が焼損するのを防止することができる。
なお、ステップS320において、実エンジン回転数Nreが、2000(rpm)以下であるか否かを判定したが、前記設定値は例示であり、2000(rpm)に限るものではない。前記設定値は、実験や数値計算等に基づいて、エンジン10が確実に始動していると判定できるように定められる。
ステップS330において、制御装置50は、目標エンジン回転数Ntaを補正する。具体的には、制御装置50は、目標エンジン回転数Ntaと実エンジン回転数Nreとの差を算出する。制御装置50は、前記差を目標エンジン回転数Ntaに加えた値を、補正後の目標エンジン回転数Ntaとする。前記補正される目標エンジン回転数Ntaとは、具体的には、ステップS142(図7参照)及びステップS213(図9参照)で算出される目標エンジン回転数Nta(n)及びNta(n+1)である。制御装置50は、目標エンジン回転数Ntaを補正した後、ステップS340に移行する。
ステップS340において、制御装置50は、エンジン回転数Nが前記補正後の目標エンジン回転数Ntaとなるように、アクチュエータ40を作動させる。つまり、前記補正後の目標エンジン回転数Ntaに対応する作動量だけ、アクチュエータ40を作動させる。これによって、エンジン回転数Nを、実エンジン回転数Nreに基づいて正確に制御することができる。制御装置50は、アクチュエータ40を作動させた後、ステップS350に移行する。
ステップS350において、制御装置50は、前記補正後の目標エンジン回転数Ntaと実エンジン回転数Nreとの差(以下、単に「誤差」と記す)を算出し、当該誤差が設定値(本実施形態では±15(rpm))以上であるか否か判定する。その結果、制御装置50は、前記誤差が±15(rpm)以上である場合には、ステップS330に移行する。これによって、目標エンジン回転数Ntaの補正を再度行うことができ、さらに正確なエンジン回転数Nの制御を行うことができる。また、制御装置50は、前記誤差が±15(rpm)以上でない、すなわち、±15(rpm)未満である場合には、図10に示す制御を終了する。
なお、ステップS350において、前記誤差が±15(rpm)以上であるか否かを判定したが、当該判定の基準値は例示であり、±15(rpm)に限るものではない。前記基準値は、実験や数値計算等に基づいて、エンジン回転数Nの制御に必要な精度が得られる値に定められる。
以上の如く、本実施形態の発電装置1は、機械式調速機構11を有するエンジン10と、機械式調速機構11を駆動させることで燃料噴射量を調節しエンジン10の回転数を変更するアクチュエータ40と、エンジン10により駆動される発電機20と、発電機20の出力を所定の周波数の交流電流に変換するインバータ30と、インバータ30の出力電流Iを検出するインバータ出力検出手段41と、インバータ出力検出手段41により検出された出力電流Iから負荷率Lを算出し、算出した負荷率Lに対応する目標エンジン回転数Ntaを算出し、目標エンジン回転数Ntaに対応する作動量だけアクチュエータ40を作動させる制御装置50と、を有する発電装置1において、制御装置50は、接続対象となる負荷機器の要求電流に対し、段階的に出力電流Iを増加させるソフトスタート制御モードを備えるものである。このように構成することにより、負荷機器投入時の要求電流に対して、段階的に出力電流Iを増加させるため、インバータ30が突入電流Iruを出力することを防止できる。これによって、インバータ30は、出力を停止することがないため、負荷機器を始動させることができる。また、突入電流Iruを許容するための大容量インバータが不要であるため、部品コストを抑えることができる。
また、本実施形態の発電装置1は、機械式調速機構11を有するエンジン10と、機械式調速機構11を駆動させることで燃料噴射量を調節しエンジン10の回転数を変更するアクチュエータ40と、エンジン10により駆動される発電機20と、発電機20の出力を所定の周波数の交流電流に変換するインバータ30と、インバータ30の出力電流Iを検出するインバータ出力検出手段41と、インバータ出力検出手段41により検出された出力電流Iから負荷率Lを算出し、算出した負荷率Lに対応する目標エンジン回転数Ntaを算出し、目標エンジン回転数Ntaに対応する作動量だけアクチュエータ40を作動させる制御装置50と、を有する発電装置1において、制御装置50は、接続対象となる負荷機器の要求電流に対し、段階的にインバータ30の周波数Fを増加させることで、段階的に出力電流Iを増加させるF/V制御モードを備えるものである。このように構成することにより、負荷機器投入時の要求電流に対して、段階的にインバータ周波数Fを増加させることで、段階的に出力電流Iを増加させるため、インバータ30が突入電流Iruを出力することを防止できる。これによって、インバータ30は、出力を停止することがないため、負荷機器を始動させることができる。また、突入電流Iruを許容するための大容量インバータが不要であるため、部品コストを抑えることができる。
また、本実施形態の発電装置1は、機械式調速機構11を有するエンジン10と、機械式調速機構11を駆動させることで燃料噴射量を調節しエンジン10の回転数を変更するアクチュエータ40と、エンジン10により駆動される発電機20と、発電機20の出力を所定の周波数の交流電流に変換するインバータ30と、インバータ30の出力電流Iを検出するインバータ出力検出手段41と、インバータ出力検出手段41により検出された出力電流Iから負荷率Lを算出し、算出した負荷率Lに対応する目標エンジン回転数Ntaを算出し、目標エンジン回転数Ntaに対応する作動量だけアクチュエータ40を作動させる制御装置50と、を有する発電装置1において、制御装置50は、接続対象となる負荷機器の要求電流に対し、段階的に出力電流Iを増加させるソフトスタート制御モードと、接続対象となる負荷機器の要求電流に対し、段階的にインバータ30の周波数Fを増加させることで、段階的に出力電流Iを増加させるF/V制御モードと、を備え、前記ソフトスタート制御モード及び前記F/V制御モードのいずれか一方を選択し、当該選択された制御モードに基づく制御を開始するものである。このように構成することにより、発電装置1の使用環境や、ユーザーのニーズ等に応じて予め設定される制御方法に基づいて、制御を開始することができる。
また、本実施形態の発電装置1は、前記ソフトスタート制御モード及び前記F/V制御モードのいずれか一方を選択可能な入力手段45を備え、制御装置50は、入力手段45により選択された制御モードに基づく制御を開始するものである。このように構成することにより、発電装置1の運転状況や、発電装置1に接続される負荷機器の変更に合わせて、制御方法を任意に選択することができる。