以下、本発明の一態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1に示すように、X線管1は、電子銃10と、陽極ターゲット20と、真空外囲器30と、を有している。
電子銃10は、陰極11と、抑制電極12と、引出電極13と、加速電極14と、集束電極15と、アパーチャ電極16と、第1支持部41と、第2支持部42と、第3支持部43と、を有している。
陰極11は、熱電界放出型電子源である。陰極11には、端子部17が接続されている。陰極11は、端子部17を介して電圧が供給されることによって、電子ビームを放出する。
抑制電極12は、電圧が供給されることによって、陰極11から放出された電子ビームの放出方向を一定方向に制御する。
引出電極13は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部13Hを有している。引出電極13は、陰極11と対向するように配置されている。引出電極13は、第2支持部42に支持されている。引出電極13は、電圧が供給されることにより、陰極11から放出された電子ビームを引き出す。
加速電極14は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部14Hを有している。加速電極14は、引出電極13と対向するように配置されている。つまり、引出電極13は、陰極11と加速電極14との間に配置されている。加速電極14は、第1支持部41に支持されている。加速電極14は、電圧が供給されることにより、引出電極13の穴部13Hを通過した電子ビームを加速させる。
集束電極15は、陰極11の先端と同軸的に形成された円筒部15Hを有している。集束電極15は、加速電極14と対向するように配置されている。集束電極15は、電圧が供給されることにより、加速電極14の穴部14Hを通過した電子ビームを集束させる。
アパーチャ電極16は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部16Hを有している。アパーチャ電極16は、集束電極15と対向するように配置されている。つまり、集束電極15は、加速電極14とアパーチャ電極16との間に配置されている。アパーチャ電極16は、第3支持部43に支持されている。アパーチャ電極16は、電圧が供給されることにより、集束電極15の円筒部15Hを通過した不要な電子ビームを阻止する。
なお、引出電極13、加速電極14、集束電極15、アパーチャ電極16などの中心軸が陰極11の中心軸から10μm以内に納まるように組み立てられている。
陽極ターゲット20は、真空外囲器30に保持されている。この陽極ターゲット20は、電子銃10のアパーチャ電極16と対向するように配置されている。つまり、アパーチャ電極16は、陽極ターゲット20と加速電極14との間に配置されている。陽極ターゲット20は、電子銃10から放出された電子が衝突する微小焦点(電子衝突面)を有し、電子の衝突によってX線を発生する。
このような構成の電子銃10は、真空外囲器30の内部に収容されている。真空外囲器30の内部には、ゲッタ18が収容されており、ゲッタ18によって真空状態に保持されている。なお、真空状態を保持する手段として、ゲッタ18に限らず、イオンポンプなどの真空ポンプを用いてもよい。
真空外囲器30は、陰極11の先端と同軸的に形成されたX線透過窓部Wを有している。X線透過窓部Wは、例えば、ベリリウムによって形成された薄板の窓である。真空外囲器30には、X線透過窓部Wと対向するように陽極ターゲット20の一部が固定されている。
真空外囲器30は、電子銃10と陽極ターゲット20とが対向するように、電子銃10と陽極ターゲット20とを支持している。以下に、電子銃10の支持構造について説明する。
第1支持部41は、真空外囲器30に固定されている。これにより、電子銃10は、真空外囲器30の内部に固定されている。より詳細には、抑制電極12と第2支持部42とは、第1絶縁筒51を介して接続されている。第1絶縁筒51は、抑制電極12と第2支持部42との間に配置されている。抑制電極12と第1絶縁筒51との間、及び、第2支持部42と第1絶縁筒51との間は、それぞれ封着金属55を介して接続されている。この第1絶縁筒51は、陰極11及び抑制電極12と、引出電極13とを電気的に絶縁している。第1絶縁筒51は、例えば、セラミックによって形成されている。
また、第1支持部41と第2支持部42とは、第2絶縁筒52及び第1柱状体61を介して接続されている。第2絶縁筒52は、第1支持部41と第2支持部42との間に配置されている。第2支持部42は、接着金属55を介して第2絶縁筒52と接続されている。第2絶縁筒52は、引出電極13と加速電極14とを電気的に絶縁している。第2絶縁筒52は、例えば、セラミックによって形成されている。
また、第1柱状体61は、第1支持部41と、第2支持部42との間に配置されている。第1柱状体61は、第2絶縁筒52と第1支持部41との間にロウ付けされ固定されている。第1柱状体61は、例えば、金属材料によって形成されている。このような第2絶縁筒52及び第1柱状体61は、引出電極13と加速電極14との間の距離を保っている。
また、第1支持部41と第3支持部43とは、第2柱状体62を介して接続されている。第2柱状体62は、第1支持部41と第3支持部43との間に配置されている。第2柱状体62は、第1支持部41と第3支持部43との間にロウ付けされ固定されている。第2柱状体62は、加速電極14とアパーチャ電極16との間の距離を保っている。第2柱状体62は、例えば、金属材料によって形成されている。
また、第1支持部41は、第3絶縁筒53を介して集束電極15と接続されている。第1支持部41及び集束電極15は、封着金属55を介して第3絶縁筒53と接続されている。第3絶縁筒53は、第1支持部41と第3支持部43との間に配置された第2柱状体62よりも内側に配置されている。第3絶縁筒53は、加速電極14と集束電極15とを電気的に絶縁している。また、第3絶縁筒53は、加速電極14と集束電極15との間の距離を保っている。
なお、加速電極14が第1電極に相当し、第1支持部41が第1電極支持体に相当する。また、引出電極13が第2電極に相当するとき、第2電極支持体は、第2支持部42に相当し、第2電極支持体が柱状体を介して第1電極支持体に固定されるとは、第2支持部42が第1柱状体61を介して第1支持部41に固定されているということに相当する。また、アパーチャ電極16が第2電極に相当するとき、第2電極支持体は、第3支持部43に相当し、第2電極支持体が柱状体を介して第1電極支持体に固定されるとは、第3支持部43が第2柱状体62を介して第1支持部41に固定されているということに相当する。
なお、柱状体は、第1支持部41と第2支持部42との間、第1支持部41と第3支持部43との間のいずれか一方に配置されていても良い。柱状体(第1柱状体)61が第1支持部41と第2支持部42との間に配置されている場合、第1支持部41と第3支持部43との間には円筒部品が配置されていても良い。また、柱状体(第2柱状体)62が第1支持部41と第3支持部43との間に配置されている場合、第1支持部41と第2支持部42との間には円筒部品が配置されていても良い。
図2は、図1に示したX線管1の電子銃10の構造を概略的に示す斜視図である。
図2に示すように、第1柱状体61は、第1支持部41と第2支持部42との間に少なくとも3本配置されている。ここでは、3本の第1柱状体61が第2絶縁筒52と第2支持部42との間に配置されている。第1柱状体61は、等間隔に配置されている。また、3本の第1柱状体61の長さは略同等である。なお、ここでは、第1支持部41と第2支持部42との間に3本の第1柱状体61を配置した例を示したが、3本以上の第1柱状体61を配置してもよい。
また、第2柱状体62は、第1支持部41と第3支持部43との間に少なくとも3本配置されている。ここでは、3本の第2柱状体62が第1支持部41と第3支持部43との間に配置されている。第2柱状体62は、等間隔に配置されている。また、3本の第2柱状体62の長さは略同等である。なお、ここでは、第1支持部41と第3支持部43との間に3本の第2柱状体62を配置した例を示したが、3本以上の第2柱状体62を配置してもよい。
また、第1支持部41は、端部から突出部41Pを有している。突出部41Pは、真空外囲器30に固定されている。なお、ここでは、第1支持部41は、3つの突出部41Pを有しているが、この例に限らない。
なお、電子銃10は、陽極ターゲット20において、電子ビームの直径が200nmで焦点を結ぶように、電子計算機による電子軌道シミュレーションによって設計される。
このようなX線管1の動作時において、電子銃10の陰極11に電圧が供給され、陰極11から電子ビームが放出される。抑制電極12に電圧が供給され、陰極11から放出された電子ビームの放出される方向性が制御される。加速電極14に電圧が供給され、電子ビームは加速される。集束電極15に電圧が供給され、電子ビームが押し込まれ、集束される。集束された電子ビームは、アパーチャ電極16によって不要な電子ビームをカットされ、陽極ターゲット20に衝突する。陽極ターゲット20に電子ビームが衝突し、X線が発生する。X線は、X線透過窓部Wを透過して放出される。
ところで、微小焦点を有するX線管1において、陰極11の先端から放出された電子ビームを陽極ターゲット20に衝突させることによりX線が発生するため、X線を安定して放出させるたには、陰極11の近傍、例えば、引出電極13、加速電極14、集束電極15、アパーチャ電極16の近傍を約10−7Paの超高真空状態にする必要がある。
しかしながら、微小焦点を有するX線管1において、陰極11から放出された電子ビームを集束させ陽極ターゲット20に衝突させるため、陰極11から放出された電子ビームが引出電極13、加速電極14、集束電極15、アパーチャ電極16に衝突してしまうことがある。これにより、これらの電極の表面の付着ガスや電極に内蔵された内蔵ガスが放出されてしまうことがある。
これに対して、本実施の形態において、第1支持部41と第2支持部42との間に3本の第1柱状体61が配置されているため、電極から放出された付着ガスや内部ガスを第1柱状体61間から外側に容易に排除することができる。外側に排除された付着ガスや内蔵ガスは、ゲッタ18によって吸着される。したがって、短時間で陰極11の近傍を超高真空状態にすることができる。
また、本実施の形態において、第1支持部41と第3支持部43との間に3本の第2柱状体62が配置されているため、電極から放出された付着ガスや内部ガスを第2柱状体62間から外側に容易に排除することができる。外側に排除された付着ガスや内部ガスは、ゲッタ18によって吸着される。したがって、短時間で陰極11の近傍を超高真空状態にすることができる。
また、本実施の形態において、引出電極13と加速電極14とを第1柱状体61が支持するため、第1柱状体61と第2絶縁筒52との接触面積が小さく、第1柱状体61を第2絶縁筒52にロウ付けすることによる第2絶縁筒52への熱の影響を小さくすることができる。これにより、第2絶縁筒52の熱膨張を抑制することができ、第2絶縁筒52の割れ防止につながる。
さらに、本実施の形態において、電極から放出された付着ガスや内部ガスを排除する構成として第1柱状体61及び第2柱状体62を設けているため、部品の形状を簡略化することができ、製造コストを低減することができる。
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。