JP5370882B2 - 培養装置 - Google Patents
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Description
更には、細胞培養の分野において細胞に物理的刺激を与えることがあるが、潅流装置を付設した状態で培養器のマイクロチャネル内に存在する受精卵へ好適に物理的な刺激を与えることは困難である。
この発明は上記課題の少なくとも一つを解決すべくなされたものである。
培養器の閉じられたチャネルへ培養液と細胞を充填し、該細胞が前記チャネル内をその軸方向へ移動するように前記培養器の姿勢を変化させる、ことを特徴とする培養方法。
このように規定された第1の局面の発明によれば、チャネルが閉じられているので培養液の使用量はチャネルの容積とほぼ等しくなる。よって、培養液の使用量を抑制できる。
また、培養器の姿勢を変化させてチャネル内の細胞を重力の作用によりその軸方向へ移動(落下)させる。かかる移動時に細胞は培養液から摩擦力を受ける。これは、チャネル内へ培養液を流通させたときに細胞が培養液から受ける摩擦力に比べて、より生体環境に近いものとなる。
第1の局面で規定される培養方法において、前記チャネルが垂直となるように前記培養器の姿勢を制御し、その後、前記培養器を180度回転して前記チャネルが逆さの垂直となるようにする。
このように規定される第2の局面の培養方法によれば、チャネル内における細胞の移動速度が最も早くなり、かかる最大速度の移動を繰り返して行えるので、培養液から充分な摩擦力を得られることとなる。
第1又は第2の局面の培養方法において、前記培養器は柔軟な材料で形成され、前記培養器はその姿勢が変化されるとともに、前記チャネルの軸方向への変形が繰り返し行なわれる。
このように規定される第3の局面の培養方法によれば、培養器の形成材料を柔軟なものとすることにより、培養器自体を変形させることが可能となる。従って、培養器をチャネルの軸方向へ変形すること、チャネルの径が変形してチャネル内に存在する受精卵へ好適な物理的刺激を与えられる。
培養器をそのチャネルの軸方向へ変形させる方法は特に限定されるものではない。例えばこの発明の第4の局面で規定するように、培養器をそのチャネルの軸方向へ伸展させたり、またチャネルの軸方向に対して垂直方向から培養器を圧縮させたりすることにより、培養器をそのチャネルの軸方向へ変形させられる。
第3の局面で規定される培養方法において、前記チャネルの内周面に凹凸部が形成され、前記培養器をチャネルの軸方向へ変形させたとき、前記チャネルの径が変化して前記凹凸部が前記細胞へ干渉して刺激を与える。
このように規定される第5の局面の培養方法によれば、チャネルの内周面に形成された凹凸部により細胞へより効率よく刺激を与えることができる。
なお培養器が無負荷状態(何ら変形されていない状態)において、凹凸部の凸部が細胞へ接触するも細胞は重力をうけてチャネル内を落下可能とすることが好ましい。
第1〜5の何れかの局面に記載の培養方法において、前記培養器はガス透過性の材料で形成される。
このように規定される第6の局面の培養方法によれば、培養器の形成材料をガス透過性とすることにより、チャネルを閉鎖系としても受精卵へ充分な酸素が供給され、また二酸化炭素などの不要なガスを外部へ排出することができるので、培養の環境がより生体環境に近づく。
柔軟な材料で形成された培養器の閉じられたチャネルへ培養液と細胞を充填し、該培養器を繰り返し前記チャネルが軸方向へ変形する、ことを特徴とする受精卵の培養方法。
このように規定された第7の局面の発明によれば、培養器の形成材料を柔軟なものとすることにより、培養器自体を変形させることが可能となる。従って、培養器をチャネルの軸方向へ変形することにより、チャネルの径が変形してチャネル内に存在する受精卵へ好適な物理的刺激を与えられる。
培養器をそのチャネルの軸方向へ変形させる方法は特に限定されるものではない。例えばこの発明の第8の局面で規定するように、培養器をそのチャネルの軸方向へ伸展させたり、またチャネルの軸方向に対して垂直方向から培養器を圧縮させたりすることにより、培養器をそのチャネルの軸方向へ変形させられる。
第8の局面に規定される培養方法において、前記チャネルの内周面に凹凸部が形成され、前記培養器をチャネルの軸方向へ変形させたとき、前記チャネルの径が変化して前記凹凸部が前記細胞へ干渉して刺激を与える。
このように規定される第9の局面の培養方法によれば、チャネルの内周面に形成された凹凸部により細胞へより効率よく刺激を与えることができる。
培養液と細胞を充填可能でありかつ閉じられたチャネルを有する培養器と、
前記チャネルの角度が変化するように該培養器の姿勢を変化させる姿勢制御手段と、を備える。
このように規定される第10の局面の培養装置によれば、チャネルが閉じられているので培養液の使用量はチャネルの容積とほぼ等しくなる。よって、培養液の使用量を抑制できる。
また、培養器の姿勢を変化させてチャネル内の細胞を重力の作用によりその軸方向へ移動(落下)させる。かかる移動時に細胞は培養液から摩擦力を受ける。これは、チャネル内へ培養液を流通させたときに細胞が培養液から受ける摩擦力に比べて、より生体環境に近いものとなる。
第10の局面で規定される培養装置において、前記姿勢制御手段は前記チャネルが垂直となるように前記培養器の姿勢を制御し、その後、前記培養器を180度回転して前記チャネルが逆さの垂直となるようにする。
このように規定される第11の局面の培養装置によれば、チャネル内における細胞の移動速度が最も早くなり、かる最大速度の移動を繰り返して行えるので、培養液から充分な摩擦力を得られることとなる。
第10又は第11に規定の培養装置において、前記培養器は柔軟な材料で形成され、前記チャネルの軸方向へ前記培養器を伸長及び圧縮する手段が更に備えられる。
このように規定される第12の局面の培養装置によれば、培養器の形成材料を柔軟なものとすることにより、培養器自体を変形させることが可能となる。従って、培養器をチャネルの軸方向へ変形することより、チャネルの径が変形してチャネル内に存在する受精卵へ好適な物理的刺激を与えられる。
培養器をそのチャネルの軸方向へ変形させる方法は特に限定されるものではない。例えばこの発明の第13の局面で規定するように、培養器をそのチャネルの軸方向へ伸展させたり、またチャネルの軸方向に対して垂直方向から培養器を圧縮させたりすることにより、培養器をそのチャネルの軸方向へ変形させられる。
第13の局面で規定される培養装置において、前記培養器において前記チャネルの内周面には凹凸部が形成されている。
このように規定される第14の局面の培養装置によれば、培養器が変形されてチャネルの径が変化することにより、チャネル内周面の凹凸部が細胞へ干渉してこれへ効率よく刺激を与えることができる。
第11〜14の何れかに記載の培養装置において、前記培養器はガス透過性の材料で形成されている。
このように規定される第14の局面の培養装置によれば、培養器の形成材料をガス透過性とすることにより、チャネルを閉鎖系としても受精卵へ充分な酸素が供給され、また二酸化炭素などの不要なガスを外部へ排出することができるので、培養の環境がより生体環境に近づく。
培養液と細胞を充填可能でありかつ閉じられたチャネルを有し、
該チャネルの軸方向への変形可能な柔軟性を有し、
前記チャネルの内周面に凹凸部が形成される培養器であって、
該培養器を前記チャネルの軸方向へ変形したとき、前記チャネルの径が変形して前記凹凸部が前記細胞に干渉して該細胞へ刺激を与えられる、ことを特徴とする培養器。
このように規定される第16の局面の培養器によれば、チャネルの内周面に形成された凹凸部により細胞へより効率よく刺激を与えることができる。
第16の局面で規定される培養器において、前記培養器はガス透過性の材料で形成されている。
このように規定される第17の局面の培養器によれば、培養器の形成材料をガス透過性とすることにより、チャネルを閉鎖系としても受精卵へ充分な酸素が供給され、また二酸化炭素などの不要なガスを外部へ排出することができるので、培養の環境がより生体環境に近づく。
チャネルの内径は受精卵を収納可能で、かつその受精卵が移動可能(回転をともなう場合もある)な大きさとする。ほ乳類の受精卵の場合、チャネルの内径は300〜1000μmとすることが好ましい。チャネルの長さは特に限定されるものではないが、10mm程度とすることが好ましい。チャネルは直線状であっても、屈曲していても、枝わかれしていてもよい。
このように凹凸部は受精卵Bの培養において効果的である。ほ乳類の卵管の内周面には粘膜ヒダがあり(図3)、この粘膜ヒダに挟まれながら受精卵は卵管を落下する。このとき、受精卵は粘膜ヒダから抵抗、即ち摩擦力を受けている。卵管は常に蠕動しているので、粘膜ヒダの抵抗が強くても受精卵は落下することとなる。
チャネルの長さが制限されるため、受精卵がチャネルの下端まで到達した後、チャネルの向きを逆さにして、再度チャネル内を受精卵が落下できるようにすることが好ましい。より好ましくは、チャネルを垂直として受精卵がその下端まで達した後、チャネルが逆さの垂直となるように培養器の姿勢を制御する。
このようにチャネルの傾きを制御することにより、短いチャネルを用いて受精卵の長い移動距離を確保できる。よって、培養液の使用量を抑制できる。
また、チャネルを切削もしくはリソグラフィーにより形成することもできる。更には、積層造形により形成することもできる。
チャネルの周面に凹凸を形成するには、中子の周面に対応する凹凸を形成しておけばよい。また、チャネルの周面をエッチングして凹凸部を形成することもできる。
好ましくは、哺乳動物由来の受精卵が用いられる。哺乳動物としては、例えば、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ヒヒ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスなどが挙げられる。
培養器を変形する手段は培養器をそのチャネルの軸方向へ伸長及び圧縮できるものであれば任意の機構を採用することができる。後述の実施例1では、培養器においてチャネルの一端部分へアームを固定し、このアームをチャネルの他端側へ近づく方向へ及び当該他端側から離れる方向へ移動させ、培養器をチャネルの軸方向へ変形させている。
また、後述の実施例2では、チャネルの軸方向に対して垂直方向から培養器を圧縮することにより、培養器をチャネルの軸方向へ変形させている。
以下、この発明の実施例について説明する。
図4はこの発明の実施例1の培養器1を示す。この培養器1はシリコンハイドロゲルで直方体形状に形成されている。このシリコンハイドロゲルとして特開平2006−199819号公報に記載の、ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーと、親水性モノマーを重合した親水性ポリマーからなり、該コポリマーと親水性ポリマーの相互網目構造を有する透明ゲルを用いることができる。このシリコンハイドロゲルは酸素を透過し、伸展可能な柔軟性を有し、かつ透明である。培養器1の中央部分に3本のチャネル2が平行に形成されている。各チャネル2の内径は0.5〜1mmであり、長さは約10mmである。各チャネル2の中に受精卵8及び培養液9が充填される。受精卵8及び培養液9の充填後にチャネル2へ蓋部材4の凸部5を無理嵌めし、これを閉塞する。このシリコンハイドロゲルを使用したとき、培養器の外周面からチャネル2までの厚さは1〜2mmとすることが好ましい。
培養器1の四隅には貫通孔7が形成されている。
図5において、符号11はテーブルであり、その表面に4本のピンが立設されて各ピン20は培養器1の貫通孔7へ挿着される。図5(A)の状態において、受精卵8を充填したチャネル2は水平状態である。
テーブル11はリテーナ12及びアーム20を備える。リテーナ12には溝15が形成されており、当該溝15にアーム20が挿入されている。溝15の周面とアーム20との間には図示しないライナが介在して、図5のような水平状態ではその自由移動が規制されている。他方、図7及び図8に示す通り、アーム20が垂直状態になると、重力によりアーム20は下方へ移動する。リテーナ12には一対のピン14が立設されている。
アーム20においてT字の下端にはカムフォロアとしてのローラ25が回転可能に取付けられている。符号18は回転ロッドである。
図5(B)において、符号31は回転ロッド18を回転させる第1のモータであり、符号33はカム部40を回転するための第2のモータである。符号35は第1のモータ31及び第2のモータ33の回転角度及び動作タイミングを制御する制御回路である。
このようにテーブル11を回転させると、チャネル2は水平から垂直にその状態が変化する。これにより、チャネル2内の受精卵がチャネル2内を下方へ移動することとなる。
さらにカム部40を回転させて図7の状態に戻すとき、伸展された培養器1のばね力により、アーム20はそのローラ25をカム部40の周面に当接させながら下方へ移動する。これにより、培養器1の伸展が解放される。このときにもチャネル内の受精卵に物理的な刺激が加えられることとなる。
カム部40を回転させることにより、培養器1の変形が繰り返され、もって物理的な刺激を受精卵へ繰り返し加えることができる。この実施例では、チャネル2を垂直にした後、20分から60分経過後にカム部40を数回回転させる。即ち、受精卵がチャネル2の下端に到達したのち、培養器1を変形させている。カム部40の回転が終了した後、培養器1を180度反転し、20分〜60分経過後、同様にカム部40を回転させる。このような培養器1の反転とカム部40の回転とのセットを数回繰り返す。
このようにして受精卵へ物理的な刺激を加えた後、第1のモータ31を駆動して培養器1を図5の状態に戻す。
培養器1の傾斜角度、即ちテーブル11の揺動角度は実施例のように90度に限定されるものではなく、任意に選択可能である。また、培養器をシーソーのように揺動することもできる。即ち、チャネル2の両端がその水平位置から上下方向に振動するように培養器を揺動する。
培養器1の姿勢を何ら変更することなく、培養器をそのチャネルの軸方向へ変形してもよい。この変形も繰り返し行なうことが好ましい。
図9にこの発明の実施例2の培養器100を示す。図9(A)は培養器100の平面図、図9(B)は図9(A)におけるB−B線断面図である。この培養器100は前述のシリコンハイドロゲルで直径14mmの円盤形状に形成されている。培養器100の中央部分に1本のチャネル102が円盤の底面と平行に形成されている。このチャネル2は開口部103を2つ有する。各チャネル102の内径は0.3〜1mmであり、長さは約8mmである。開口部103の内径も0.3〜1mmである。各チャネル102の中に受精卵8及び培養液9が充填される。受精卵8及び培養液9の充填後にチャネル2へ、図4の例と同様にして蓋部材の凸部を無理嵌めし、これを閉塞する。このシリコンハイドロゲルを使用したとき、培養器の外周面からチャネル102までの厚さは1〜2mmとすることが好ましい。
このチャンバー110は、図11に示すように、チャック120に着脱自在に装着される。このチャック120は4つの爪121−124を備えている。各爪121−124はばね弾性を有する鋼材で形成され、この爪121−124の間へチャンバー110がクリップ止め的に挿着される。チャック120は回転ロッド130に固定され、この回転ロッド130は前の実施例の回転ロッド18(図8参照)と同様に制御される。即ち、所定のタイミングでチャンバー110を傾斜させる。この実施例ではチャンバー110の一辺を上側にした垂直状態から180度回転させて、他辺を上側にした垂直状態とすることを繰り返す。このとき、培養器100のチャネル102が回転ロッド130に対して垂直方向となるように培養器100をセットすることが好ましい。これにより、チャネル102の傾斜が最大となって、受精卵へ十分な刺激を与えられる。図11において符号135はチャック120の回転装置本体であり、内部に回転ロッド130を回転させるモータが配設されている。
このようにしてチャンバー110を回転させると、培養器100のチャネル102内に挿入された受精卵がチャネル102内を移動し、好適な物理刺激を受けることとなる。
この実施例では、培養器100の全体を圧縮する構成としたが、チャネルを軸方向へ変形させる限りにおいて、チャネル培養器100の一部がチャネル102の軸方向に対して垂直方向に圧縮できればよい。これにより、受精卵へ好適な物理刺激を与えることができる。
培養器100に対する加圧力をより精密制御する場合は、突起部143を独立駆動として、培養器100へかかる圧力に基づくフィードバック制御により、当該独立した突起部143の培養器1に対する移動量を制御することが好ましい。
Claims (4)
- 培養液と細胞を充填可能でありかつ閉じられたチャネルを有する、柔軟な材料で形成された培養器と、
前記チャネルの角度が変化するように該培養器の姿勢を変化させる姿勢制御手段と、
前記チャネルの軸方向へ前記培養器を変形する手段と、を備えることを特徴とする培養装置。 - 培養液と細胞を充填可能でありかつ閉じられたチャネルを有する、柔軟な材料で形成された培養器と、
前記チャネルの角度が変化するように該培養器の姿勢を変化させる姿勢制御手段と、
前記培養器内のチャネル近傍を圧縮させることによって該チャネルを繰り返し変形する手段と、を備えることを特徴とする培養装置。 - 前記姿勢制御手段は前記チャネルが垂直となるように前記培養器の姿勢を制御し、その後、前記培養器を180度回転して前記チャネルが逆さの垂直となるようにする、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の培養装置。
- 前記培養器において前記チャネルの内周面には凹凸部が形成されている、ことを特徴とする請求項3に記載の培養装置。
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