JP5370388B2 - クロスダイポールアンテナ、これを用いるタグ - Google Patents

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本発明は、無線高周波信号を用いてリーダライタ(R/W)とタグ間で情報の通信を行うRFID(無線周波数ID)システムに適用されるクロスダイポールアンテナ、及びこれを用いるタグに関する。
RFID(無線周波数ID)システムは、UHF帯(860〜960MHz)の無線周波数信号を用いて、リーダライタから約1Wの搬送波信号を送信する。タグ側でその搬送波信号を受信し、再びリーダライタ側へタグ情報で前記搬送波信号を変調して、応答信号として送り返すことにより、タグ内の情報をリーダライタで読み取ることができるシステムとして、その適用分野は広がっている。
その通信距離はタグに備えられるアンテナのゲイン、信号処理のためのLSIチップの動作電圧、更に周囲環境に依存するが、およそ3〜5mである。タグは、厚さ0.1mm程度のシート、フィルム等の基体に形成された導電体のアンテナパターンと、アンテナ給電点に接続されるLSIチップ(約1mm角、厚さ0.2mm程度)から構成される。
図1に示すように、LSIチップ2は抵抗Rc(たとえば500Ω)と、キャパシタンスCc(例えば、1.4 pF)の並列接続で等価的に示すことができる。一方、タグアンテナ1は、放射抵抗Ra(例えば400Ω)と、インダクタンスLa(例えば20nH)の並列接続で等価的に示すことができる。
両者を並列接続することにより、キャパシタンスとインダクタンスが共振し、式1から分かるように、所望の共振周波数f0で整合し、アンテナ1での受信パワーがチップ2側へ十分供給されることになる。
Figure 0005370388
ここで、図2Aに基本的なダイポールアンテナを示す。アンテナ全体の長さは、使用波長λの1/2であるから、953MHzではλ/2波長=145mm程度である。それぞれλ/4のアンテナ素子の給電点にLSIチップ2が接続される。
このアンテナ全体の長さをλ/2にすることにより、953MHzでアンテナが共振するが、図1に示したLa成分を持たない。そこで、図2Bに示したように、λ/2よりも長い180mm程度にすることにより、アンテナ1がLa成分を持つようになり、LSIチップ2と共振させることができる。
このような、RFIDタグに形成されるダイポールアンテナとしてλ/2よりも大きいアンテナ長とすることは、例えば、非特許文献1において知られている。
また、このタグアンテナ1は直線偏波であるため、図示していないリーダライタ(R/W)側のアンテナは、通常、円偏波を用いる。これは、タグを紙面に平行な面で回転させてもほぼ同一距離で送受信できるようにするためである。仮にR/W側に直線偏波アンテナを用いた時、偏波の方向がタグと一致する場合は、通信距離は円偏波の約1.4倍に延びるが、垂直方向になれば、通信距離は激減してしまう。
ところで、チップは通常、図1に示したような2端子であるが、図3に示すように並列に2系統接続されて4端子を持つものも市販されている。接地側(GND)同士は直流(DC)的に接続されているものが多い。そこで、アンテナを2系統構成にして、例えば図1のダイポールアンテナを十字に構成すれば、R/W側のアンテナが直線偏波であっても通信距離を高く保つことができる。しかし、縦横それぞれが180mmとなり、タグアンテナとしては、巨大なものとなり実用的でない。
Nikitin, P.V.; Lam, S.;Rao, K.V.S.,"Low cost silver ink RFID tag antennas" Antennas and Propagation Society International Symposium, 2005 IEEE vol. 2B,pages 353-356 July 2005
かかる点から本発明の課題は、リーダライタ(R/W)側が直線偏波アンテナを用いる場合であっても、タグの向きによらない無指向に近いコンパクトなアンテナ構成および、かかるアンテナ構成を適用するタグを提供することにある。
上記の課題を達成する本発明に従う第1の側面は、無線高周波信号を用いてリーダライタとタグ間で情報の通信を行うRFIDシステムに適用されるクロスダイポールアンテナであって、
一対のダイポールアンテナを有し、
前記一対のダイポールアンテナは、互いに十字に交差する給電点から延びた直線線路と、前記直線線路を折り曲げた部分が先に3角形状に広がる線路を形成し、
さらに、前記3角形状に広がる線路の先端部に直線の延長部を有し、
前記一対のダイポールアンテナのそれぞれの全長が使用波長λの1/2よりも長い
ことを特徴とする。
上記の課題を達成する本発明に従う第2の側面は、無線高周波信号を用いてリーダライタとタグ間で情報の通信を行うRFIDシステムに適用されるタグであって、
基体と、
前記基体に導体で形成され、前記無線高周波信号の送受信機能を備えるLSIチップに接続された一対のダイポールアンテナと、
前記一対のダイポールアンテナの互いに十字に交差する給電点に接続されたLSIチップを有し、
前記一対のダイポールアンテナは、互いに十字に交差する給電点から延びた直線線路と、前記直線線路を折り曲げた部分が3角形状に広がる線路を形成し、
さらに、前記3角形状に広がる線路の先端部に直線の延長部を有し、
前記一対のダイポールアンテナのそれぞれの全長が使用波長λの1/2よりも長い
ことを特徴とする。
本発明により、R/W側が直線偏波アンテナを用いる場合であっても、タグの向きによらない無指向に近い、コンパクトなくダイポールアンテナが提供されるので、これにより、タグ自身が大きくなることを回避できる。
抵抗RcとキャパシタンスCcの並列接続で等価的に示すLSIチップの説明図である。 基本的なダイポールアンテナを示す図である。 λ/2よりも長い、インダクタLa成分を有するダイポールアンテナを示す図である。 並列に2系統接続されて4端子を持つ等価的に示すLSIチップの説明図である。 本発明に従う第1の実施例のアンテナパターンを示す。 インピーダンス調整部の長さLをパラメータに、インダクタンス成分Laを市販の電磁界シミュレータで計算した結果を示す図である。 インピーダンス調整部の長さLをパラメータに、アンテナの放射抵抗Raを市販の電磁界シミュレータで計算した結果を示す図である。 R/Wアンテナが直線偏波100とした場合のタグの動作を示している。 図7Aにおいて、タグの回転核と通信距離の関係を示す図である。 本発明に従う第2の実施例のアンテナパターンを示す図である。 第2の実施の形態例における導電バーの接続される点の距離L2とアンテナ放射抵抗Raの関係を示す図である。 第2の実施の形態例における導電バーの接続される点の距離L2とインダクタンス成分Laの関係を示す図である。 本発明に従う第3の実施例のアンテナパターンを示す図である。
以下に実施例図面を参照して、本発明の実施の形態例を説明する。なお、実施の形態例は、本発明の理解のためのものであり本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。
図4に本発明に従う第1の実施例のアンテナパターン構造を示す。アンテナパターンは、タグの基体となるPET、フィルム或いは紙材上に、Cu、Ag、又は、Al等の導電材料を用いて形成される。
一対のダイポールアンテナ1a、1bが、給電点20で並列接続され、ダイポールアンテナ1a、1bのそれぞれに対応する接地側アンテナ素子GND1a、GND1bが図3に示したように、導体12により共通接続される。
一対のダイポールアンテナ1a、1bは、給電点20から十字形状にアンテナ線路が延び、端に達したところで直角に折り曲がり、更に3角形形状に線路が広がっている。アンテナパターンの全体の大きさは、縦78mm、横78mmであり、十字形状の中心位置である給電点20にLSIチップ2の搭載部を持つ。
前記の3角形状に広がる線路により、様々な長さのアンテナ全長を有することができ、これによりアンテナの周波数特性を広帯域にすることができる。
かかる構成において、十字状にアンテナ1a、1bが存在し、それぞれの全長は約180mm(>λ/2)であるので、先に図2Bについて説明した様にインダクタンス成分Laを持つことができる。
さらに、図4の実施の形態例において、3角形領域の先端に長さLのインピーダンス調整部10a、10b及び11a、11bが延びている。
図5、図6は、インピーダンス調整部10a、10b及び11a、11bの長さLをパラメータに、インダクタンス成分La及びアンテナの放射抵抗Raを市販の電磁界シミュレータで計算した結果を示す図である。
ここで、RFIDシステムに用いるタグは、基体にアンテナ導体を貼り付けて使用するため、基体の誘電率εr、 厚さtを考慮することが望ましい。したがって、図5、図6のシミュレーション計算では、タグ基体をプラスチックと考え、εr=3とし、厚さt=1、2、 4mmと仮定した。
例えば、LSIチップ2のキャパシタンスCc=1.4pFとすると、これと共振するのはLa=20nHである。図5のデータから、厚さt=1mmのプラスチック(εr=3)基体に貼り付けるならばL=0、紐でぶら下げてアンテナ周囲が空気(εr=1)の場合はL=13mmが最適値である。このとき、図6に示すように、アンテナの放射抵抗Raはチップ抵抗500Ωに近くになっており、ほぼ整合している。
なお、周囲条件に応じた最適値を選択しなくとも、通信距離が若干落ちるだけで、全く通信できなくなるわけではない。
図7A、図7Bには、R/Wアンテナが直線偏波100とした場合のタグの動作を示している。図7Aにおいてアンテナ1aの偏波面100aは、左右方向(水平方向)から約30°回転した方向にあり、アンテナ1bはそれと90°異なる。
R/Wアンテナ直線偏波面100とタグ偏波面が一致したとき、最も通信距離が大きくなり、それらが90°異なる時、最も通信距離が小さくなる。したがって、アンテナ1aだけに注目すると、図7Aに示すように30°左回転させると、アンテナ直線偏波面100とタグ偏波面100aが一致し、通信距離最大となり、更に90°回転して、120°回転位置で通信距離が最小になる。この様子は、図7Bにおいて、破線1aで示される。図7Bにおいて、横軸に回転角、縦軸に通信距離を示している。
一方、アンテナ1bに注目すると、アンテナ1aと90°位相が異なる。そして、図7Bにおいて回転角と通信距離との関係は一点鎖線1bで示される。したがって、アンテナ1aと1bの特性を合成すると、図7Bに(1a+1b)で示される実線で示すように、全体として通信距離が大きく劣化することのないタグが実現できることが理解できる。
このときの、最大距離は、R/Wアンテナが円偏波、タグが通常の直線偏波とした場合の約1.4倍であるため、RFIDシステムの通信距離を伸ばすことができる。
図8は、本発明に従う第2の実施例のアンテナパターンを示す図である。図8に示す実施の形態は、アンテナインピーダンスの調整方法として、導電バー13を設けた構成である。導電バー13の配置される位置の特定を、アンテナ1a、1bの交差中心点で、LSIチップ2の搭載される位置からL2の距離に導電バー13が接続されると考える。
このときの導電バー13の接続される点の距離L2とアンテナ放射抵抗Raとインダクタンス成分Laの関係を図9、図10に示した。先に説明したLSIチップ2のキャパシタンスCc=1.4pFと共振するためにインダクタンスLa=20nHにするには、L2=22mmが最適値であることが分かる。
図11は、更に本発明に従う第3の実施例のアンテナパターンを示す図である。
それぞれのアンテナ1a、1bから延びる3角形部分に流れる電流は、3角形の周辺部分に偏り、中心付近には電流は集中しない。このため、電流の流れにくい中央部分は、刳り抜いても良い。例えば、Agペーストでアンテナ1a、1bを形成する場合、使用する金属部分はなるべく少ない方がコスト減になる。
よって、図11に示すように、 アンテナ1a、1bの折り曲げ部分に形成される3角形は、その輪郭部の導体20a、20b、20c、及び21a、21b、21cで形成する。他の部分は、図4に示した第1の実施の形態例と同様である。
1、1a、1b ダイポールアンテナ
2、2a、2b LSIチップ

Claims (2)

  1. 無線高周波信号を用いてリーダライタとタグ間で情報の通信を行うRFIDシステムに適用されるクロスダイポールアンテナであって、
    一対のダイポールアンテナを有し、
    前記一対のダイポールアンテナは、互いに十字に交差する給電点から延びた直線線路と、前記直線線路を折り曲げた部分が3角形状に広がる線路を形成し、
    さらに、前記3角形状に広がる線路の先端部に、長さによりインピーダンスを調整するための直線の延長部を有し、
    前記一対のダイポールアンテナのそれぞれの全長が使用波長λの1/2よりも長い
    ことを特徴とするクロスダイポールアンテナ。
  2. 無線高周波信号を用いてリーダライタとタグ間で情報の通信を行うRFIDシステムに適用されるタグであって、
    基体と、
    前記基体に導体で形成され、前記無線高周波信号の送受信機能を備えるLSIチップに接続された一対のダイポールアンテナと、
    前記一対のダイポールアンテナの互いに十字に交差する給電点に接続されたLSIチップを有し、
    前記一対のダイポールアンテナは、互いに十字に交差する給電点から延びた直線線路と、前記直線線路を折り曲げた部分が3角形状に広がる線路を形成し、
    さらに、前記3角形状に広がる線路の先端部に、長さによりインピーダンスを調整するための直線の延長部を有し、
    前記一対のダイポールアンテナのそれぞれの全長が使用波長λの1/2よりも長い
    ことを特徴とするタグ。
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