JP5368754B2 - 酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒 - Google Patents
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しかし、現実の空燃比は、自動車の走行条件によってストイキを中心としてリッチ側又はリーン側に変動するため、排ガス雰囲気もリッチ側又はリーン側に変動する。そのため、上記構成の三元触媒のみでは必ずしも高い浄化性能が確保されるとは限らない。
このような酸素吸放出材としては、例えば、セリア(Ceo2)やセリア−ジルコニア(CeO2−ZrO2)複合酸化物などが知られ、実用化されている。この酸素吸放出材は、自動車触媒にとって、排ガスのA/F変動を吸収し、触媒が最も有効に作用する雰囲気に保つために必須の構成材料となっているが、安定して排ガスを浄化するためには、より大容量の酸素吸放出材が望まれている。
また、排ガスの浄化においては、エンジン始動時のような比較的低温時から高温での長時間使用後であっても、触媒が高い活性を有することが求められている。
そこで、CeO2やCeO2−ZrO2複合酸化物と比較して理論値で1分子当たり8倍の酸素を吸放出可能なランタノイド系オキシサルフェート(La2O2SO4)が注目されるに至った。
従って、本発明の目的は、酸素吸放出性能がさらに高く、特に高温での耐久性を有する酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒を提供することである。
また、本発明は、前記の酸素吸放出材を含む排ガス浄化用触媒に関する。
また、本発明によれば、酸素吸放出材が広範囲の温度で従来公知の酸素吸放出材と比較して酸素吸放出能が高く且つ高温での耐久性を有しているため、安定した触媒性能を有する排ガス浄化触媒を得ることが可能である。
図1は、La2O2SO4および/又はLa2O2Sからなる化合物のXRDのパターンと本発明の実施態様のLaの一部をCeで置換した酸素吸放出材のXRDのパターンとを比較したものである。図2はLa2O2SO4からなる化合物の結晶構造の模式図であり、図3はLa2O2SO4および/又はLa2O2Sからなる化合物の酸化雰囲気と還元雰囲気での結晶構造の変化を示す模式図であり、図4および図5は、各々La2O2SO4および/又はLa2O2Sからなる化合物と本発明の実施態様のLaの一部をCeで置換した酸素吸放出材について、室温〜900℃の範囲のOSC能を比較したグラフと800℃耐久試験後のOSC能を比較したグラフである。
(La1−xCeX)2O2SO4⇔(La1−xCeX)2O2S+2O2 (1)
(式中、XはLa+Ceとの合計1モルに対するCeモル表示の割合を示す。)
で示される可逆反応をスムーズに起こすことができることによると考えられる。そして、本発明の酸素吸放出材が耐久試験後にも高いOSC能を維持しているのは、Laのオキシ硫酸塩の熱安定性が高いことが要因の1つであると考えられる。
本発明の酸素吸放出材は、前記のLaとCeとの割合(X)が、LaとCeとの合計1モルに対してCeが0.01〜0.5モル、特に0.05〜0.5モル、その中でも0.05〜0.25モルであってよい。
すなわち、La塩、例えばLaの硝酸塩、例えばLa(NO3)3・6H2Oと、Ce塩、例えばセリウム硝酸塩(例えば、Ce(NO3)3・6H2O)、長鎖アルキル硫酸塩、例えばドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSと略記することもある。)を、アルカリ水溶液、例えばアンモニア水溶液中で、攪拌下に加熱して反応させた後、冷却して、沈殿物を分離取得、例えば沈殿物を遠心分離した後、粉末状に粉砕後、空気中で焼成、例えば500℃以上で数時間、加熱し、焼成して、La2O2SO4および/又はLa2O2Sからなる化合物においてLaの一部をCeで置換した本発明の酸素吸放出材を得ることができる。
前記のLa塩とCe塩との割合(X)は、La塩とCe塩との合計1モルに対してCe塩が0.01〜0.5モル、特に0.05〜0.5モル、その中でも0.05〜0.25モルであってよい。
前記のPt、Pd、Rh、Feからなる群から選択される1種以上の元素は、La2O2SO4および/又はLa2O2Sからなる化合物においてLaの一部をCeで置換した本発明の酸素吸放出材の量を100として0.1〜5質量%、特に0.25〜1質量%担持することが好ましい。
以下の実施例は単に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
以下の各例において、酸素吸放出材のXRDおよびOSC能の測定は以下のようにして行った。
XRD測定装置:
2.酸素吸放出材のOSC能測定(初期値)
TG(熱重量測定)装置によって、5%H2/He中での各試料(酸素吸放出材)からのO2放出による質量変化を室温から10℃/分の昇温速度で900℃まで上昇させながら測定した。本発明の酸素吸放出材からのO2放出は下記の反応による。
(La1−xCeX)2O2SO4→(La1−xCeX)2O2S+2O2 (2)
(式中、XはLa+Ceとの合計1に対するモル表示の割合を示す。)
TG装置:
3.800℃耐久試験後のOSC能測定(耐久試験)
上記と同じTG装置を用いて、各試料(酸素吸放出材)について1.4%H2/Heと0.7%O2/Heとの還元と酸化の条件のガスを交互に供給し、800℃で24時間の耐久試験を実施した。そして、初期と耐久試験後の質量変化幅の差から酸素吸放出能残存率を求めた。
1.La2O2SO4の調製
La(NO3)3・6H2O、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、アンモニアおよび水をLa(NO3)3・6H2O:SDS:アンモニア:水=1:2:30:60(モル比)の混合比でセパラブルフラスコ中に入れた。アンモニア水は添加順序は最後であるが他の試薬とともに初めから入れた。攪拌器を用いて、40℃の油浴中で1時間、回転速度350rpm、大気開放系で攪拌を続けた。その後、60℃に昇温し、9時間攪拌後、室温まで冷却した(pH=約11)。得られた沈殿物を遠心分離し、蒸留水で数回洗浄後、室温で減圧乾燥した。乾燥試料を粉末状に粉砕し、ドラフト中、500℃以上で5時間焼成した。
得られた粉末を空気中800℃で1時間焼成した後のLa2O2SO4試料および得られた粉末を水素中700℃で1時間焼成した後のLa2O2S試料について、XRD測定を行った。結果を図1に示す。
得られたLa2O2SO4の粉末0.4gに対して硝酸Pd溶液滴下量が1mLになるように溶液を調製(金属塩の量はPd担持量が1質量%に相当する量)した。一方、るつぼにLa2O2SO4約0.4gを入れ、ホッティングスターラー上に置き、適当な温度(Pd溶液が乾燥する程度の温度)にセットした。るつぼが温まってきたら、硝酸Pd溶液を少しずつ滴下しながら乾燥した。滴下後、1時間ほど室温で放置した後、乾燥機で一晩乾燥し、軽くほぐした後、空気中、400℃で2時間焼成して、Pdを1質量%担持したLa2O2SO4粉末を得た。
3.Pd1質量%担持Pr2O2SO4の調製
原料のLa(NO3)3・6H2OをPr(NO3)3・6H2Oに変えた他は比較例1と同様にして、Pd1質量%担持したPr2O2SO4粉末を得た。
4.(La0.9Ce0.1)2O2SO4の調製
原料のLa(NO3)3・6H2OをLa(NO3)3・6H2OとCe(NO3)3・6H2Oとの併用で両成分の割合がモル比(La:Ce)が9:1となるように変えた他は比較例1の1.と同様にして、(La0.9Ce0.1)2O2SO4粉末を得た。
得られた粉末を空気中800℃で1時間焼成した後の(La0.9Ce0.1)2O2SO4試料および得られた粉末を水素中700℃で1時間焼成した後の(La0.9Ce0.1)2O2S試料について、XRD測定を行った。結果を図1に示す。
4.で得られた(La0.9Ce0.1)2O2SO4粉末を比較例1の2.におけるLa2O2SO4に代えて用いた他は比較例1と同様にして、Pd1質量%担持した(La0.9Ce0.1)2O2SO4粉末を得た。
a−1)(La0.9Ce0.1)2O2SO4のXRDのパターン
d=0.6853
d=0.4014
a−2)La2O2SO4のXRDのパターン
d=0.6869
d=0.40588
b−1)(La0.9Ce0.1)2O2SのXRDのパターン
d=0.3493
d=0.3127
d=0.2461
d=0.2020
b−2)La2O2SのXRDのパターン
d=0.3504
d=0.3136
d=0.2469
d=0.2027
以上のXRDのパターンの主要ピークの比較から、La2O2SO4およびLa2O2SのXRDのパターンと比較して(La0.9Ce0.1)2O2SO4および(La0.9Ce0.1)2O2SのXRDのパターンは格子定数が少し減少している。この格子定数の減少はLaに比べてイオン半径の小さいCeにより置換に伴うと考えられる。
原料のLa(NO3)3・6H2OをLa(NO3)3・6H2OとCe(NO3)3・6H2Oとの割合をモル比(La:Ce)で9:1から8:2となるように変えた他は実施例1と同様にして、Pd1質量%担持した(La0.8Ce0.2)2O2SO4粉末を得た。
7.(La0.8Ce0.2)2O2SO4の調製
原料のLa(NO3)3・6H2OをLa(NO3)3・6H2OとCe(NO3)3・6H2Oとの併用で両成分の割合がモル比(La:Ce)が8:2となるように変えた他は比較例1の1.と同様にして、(La0.8Ce0.2)2O2SO4粉末を得た。
7.で得られた(La0.8Ce0.2)2O2SO4粉末を比較例1の2.におけるLa2O2SO4に代えて用いた他は比較例1と同様にして、Pd1質量%担持した(La0.8Ce0.2)2O2SO4粉末を得た。
図4から、La2O2SO4およびPr2O2SO4のいずれかの単一成分のOSC材と比較して、本発明のLaの一部をCeで置換したOSC材は、400〜900℃の広い温度範囲においてOSC能に優れていることがわかる。
また、図5から、本発明のLaの一部をCeで置換したOSC材は、800℃で24時間耐久試験後の酸素吸放出能残存率が65%および67%と、比較例2の17%に比べて高く、耐久試験後のOSC能が明らかに優れている。
Claims (4)
- 酸化と還元を繰り返す条件下で用いられる酸素吸放出材であって、La2O2SO4および/又はLa2O2Sからなる化合物において、LaとCeとの合計1モルに対してCeが0.05〜0.5モルとなる割合でLaをCeで置換したことを特徴とする酸素吸放出材。
- さらに、Pt、Pd、Rh、Feからなる群から選択される1種以上の元素を担持してなる請求項1に記載の酸素吸放出材。
- Pt、Rh、Feからなる群から選択される1種以上の元素の合計の担持量が、La2O2SO4および/又はLa2O2Sからなる化合物においてLaの一部をCeで置換した粉末の合計量を100として0.1〜5質量%である請求項1又は2に記載の酸素吸放出材。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素吸放出材を含む排ガス浄化用触媒。
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