JP5362339B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明はモータ制御装置及びその設計方法に関する。
多慣性共振特性を有する機械装置をモータによって駆動する場合の速度制御器は、従来のPI(比例積分)制御器を用いるだけでは機械装置の反共振特性や共振特性による振動が発生するという問題や、高周波数領域においてトルク制御系やモータ位置又は速度検出器における遅れによって制御系が不安定になり易いという問題がある。
このような問題を解消すべく、特許文献1にはFB(フィードバック)制御器による振動抑制装置が提案されている。また、特許文献2には振動抑制器を備えたFB制御器によるモータ制御装置が提案されている。
目標動作に対する追従特性を独立して調整することが可能なFF(フィードフォワード)制御器に関しても、装置の振動特性を考慮することによって、目標動作によって振動を励起しない駆動が実現出来る。この様な振動特性を考慮したFF制御器の調整方法に関しては、特許文献3に提案されている。但し、FB制御器において振動抑制補償を行っている場合とそうでない場合には、振動抑制補償器の特性に見合った補償入力をFF制御器にて生成する必要があり、FF制御器とFB制御器を互いに関連させた調整方法が必要となる。
特開2002−325473号公報 特開2002−335686号公報 特許第3404388号公報
しかし、特許文献1〜3に記載された発明には下記の様な問題点が存在する。
(特許文献1)
1.トルク制御系やモータ位置又は速度検出器における遅れに起因する高周波数領域における不安定化が考慮された制御系になっていない。
2.FB制御器の調整方法が不明である。
3.FF制御器の調整方法が不明である。
(特許文献2)
1.トルク制御系やモータ位置又は速度検出器における遅れに起因する高周波数領域における不安定化が考慮された制御系になっていない。
2.FF制御器の調整方法が不明である。
(特許文献3)
1.FF制御器、FB制御器共に、機械装置の共振特性を考慮した制御器及びその調整方法となっておらず、共振特性を考慮した制御系のような高い性能が得られない。
2.トルク制御系やモータ位置又は速度検出器における遅れに起因する高周波数領域における不安定化が考慮された制御系になっていない。
以上のような従来の問題点を鑑み、本発明は、機械装置の共振特性、高周波数領域における不安定化を考慮した制御装置及びその調整方法を提供しようとするものである。
具体的には、モータ駆動による多慣性共振特性を持つ機械装置の運動制御において、機械装置の振動を抑制しつつ、適切な指令応答特性を得ることのできる制御装置及びその設計方法を提供しようとするものである。
本発明の態様によるモータ制御装置は、モータと負荷及びこれらを結合する結合部とを含む多慣性共振系を制御対象とし、制御指令値と制御対象からフィードバックされる状態量との差に基づいてモータを制御する閉ループ制御系を備え、該閉ループ制御系はモータ速度指令からモータトルク指令を決定する第1の制御手段を含む。
本モータ制御装置においては、更に、前記状態量に応じて振動を抑制する制振制御手段を備え、前記第1の制御手段の第1のゲイン、前記制振制御手段の第2のゲインを、閉ループ制御系の感度特性のカットオフ周波数ω、閉ループ制御系の相補感度特性のカットオフ周波数ωCSを調整パラメータとして決定するようにされる。
なお、前記閉ループ制御系の感度特性がω>ωの低周波領域でs/ωに漸近し、閉ループ制御系の相補感度特性がωCS<ωの高周波領域でωCS/sに漸近するように調整される(但し、sはラプラス演算子)ことが望ましい。
更に、前記制振制御手段のもう一つの第3のゲインを、前記多慣性共振系の振動減衰特性の調整パラメータkで決定するようにしても良い。
なお、前記第1〜第3のゲインをそれぞれ、kωM、kθT、kωTとした場合、これら第1〜第3のゲインは以下数1、
Figure 0005362339
(但し、Jはモータのロータ部のイナーシャ、Jは負荷のイナーシャ、ωaは1次の共振特性の反共振周波数)
で表される。
更に、前記制振制御手段は、負荷位置とモータ位置との差を負荷とモータの相対変位として演算する演算手段と、前記相対変位から負荷とモータの相対速度を算出する手段と、前記相対変位が入力され前記第2のゲインkθTをゲインとする第2の制御手段と、前記相対速度が入力され前記第3のゲインkωTをゲインとする第3の制御手段とを含むもので良い。
前記制振制御手段はまた、モータ位置からモータ速度を算出する手段と、算出されたモータ速度と前記モータトルク指令とを用いて負荷とモータの相対変位の推定値と、負荷とモータの相対速度の推定値を求める状態オブザーバと、前記相対変位の推定値が入力され前記第2のゲインkθTをゲインとする第2の制御手段と、前記相対速度の推定値が入力され前記第3のゲインkωTをゲインとする第3の制御手段とを含むものでも良い。
前記カットオフ周波数ωと前記カットオフ周波数ωCSの比率を固定値として設定し、前記カットオフ周波数ω、前記カットオフ周波数ωCSの一方を調整パラメータとして用いるようにしても良い。また、前記制御指令値と前記制御対象からフィードバックされる状態量との差を演算する演算手段の前段に、フィードフォワード制御器を備えるようにしても良い。
本発明の他の態様によれば、モータと負荷及びこれらを結合する結合部とを含む多慣性共振系を制御対象とし、制御指令値と制御対象からフィードバックされる状態量との差に基づいてモータを制御する閉ループ制御系を備え、該閉ループ制御系はモータ速度指令からモータトルク指令を決定する第1の制御手段を含むモータ制御装置の設計方法が提供される。
本設計方法は、閉ループ制御系の感度特性の利得が0dB以下になる周波数領域を設定する第1のステップと、閉ループ制御系の相補感度特性の利得が0dB以下になる周波数領域を設定する第2のステップを有することを特徴とする。なお、更に、前記多慣性共振系の振動減衰特性の調整パラメータkを設定する第3のステップを有していても良い。
本発明によれば、状態フィードバックを用いる閉ループ制御系の設計を、閉ループ制御系の感度特性のカットオフ周波数ω、閉ループ制御系の相補感度特性のカットオフ周波数ωCS、振動減衰特性の調整パラメータkのうち、少なくともカットオフ周波数ω、カットオフ周波数ωCSの調整パラメータによって行うことにより、感度特性、相補感度特性、減衰性という制御上重要な特性のうち、少なくとも感度特性、相補感度特性を互いに干渉せずに調整することが可能となる。
これにより、モータ駆動による多慣性共振特性を持つ機械装置の運動制御において、機械装置の振動を抑制しつつ、適切な指令応答特性を得ることができる。
はじめに、本発明を理解し易くするために、本発明の基礎となる構成について説明する。
図4は、モデル追従制御法によるFF制御器と、位置P(比例)速度PI(比例積分)制御器とを組み合せた制御装置の一般的な構成を示すブロック図である。ここでは、負荷を、結合部(動力伝達機構等)を介してモータで駆動する機械装置を想定し、制御対象を2慣性共振モデルとして考えることを前提としている。
図4において、制御対象としてのプラント(plant)100に、モータトルク(制御入力)τが入力され、検出器(図示省略)によりモータ位置θが検出される。τはモータ外乱トルクであり、θは負荷位置を示す。位置指令θは追従特性モデルMを経由して負荷位置指令θLRとなる。PL2Mは負荷位置θからモータトルクτへの開ループ伝達特性を示し、PL2τは負荷位置θからモータ位置θへの開ループ伝達特性を示す。kθMはモータ位置FB制御器(P又はPI)のゲイン(パラメータ)、kωMはモータ速度FB制御器(P又はPI)のゲイン(パラメータ)をそれぞれ示す。
図4では、開ループ伝達特性PL2τを経て得られるモータ位置指令θMRとモータ位置θとの差を演算器101で演算してゲインkθMのモータ位置FB制御器へ入力することによりモータ速度を得るようにし、このモータ速度とモータ位置θを微分して得られるモータ速度ωとの差を演算器102で演算してモータ速度FB制御器へ入力することによりモータトルクを得るようにしている。以上のような構成は、FB制御器と呼ぶことができる。なお、sはラプラス演算子である。
一方、開ループ伝達特性PL2Mを経て得られるトルクτFFとモータ速度FB制御器からのモータトルクを、モータ速度FB制御器とプラント100との間に設けた加算器103で加算してモータトルク指令τを得るようにしている。追従特性モデルM、開ループ伝達特性PL2τ、PL2Mを持つ要素を含む構成はFF制御器と呼ぶことができる。なお、このFF制御器は、モータ位置指令θMRを微分してモータ速度指令ωMRを得、演算器102に与える要素をも含む。
ところで、機械装置は一般的には複数の共振特性を有するが、本発明では最も支配的な特性である1次の共振特性を対象にした制御装置について考える。
2慣性共振系の制御対象を1次の共振特性のみで近似した運動特性は以下の数2のような状態空間表現により表すことができ、ブロック線図で表すと図5の様になる。
Figure 0005362339
ここで、式(2)中の変数は制御対象の特性を表すパラメータであり、Jはモータのロータ部のイナーシャ、Jは負荷のイナーシャ、Kは1次の共振特性を表すモータと負荷の結合部(動力伝達機構等)の等価結合剛性、Bはその減衰特性を表す結合部の等価粘性をそれぞれ表している。
また、図5において図4で説明した要素と同じ要素には同じ符号を付しており、それら以外の要素であるωは負荷速度、θは負荷とモータの相対変位(負荷位置とモータ位置の差)、ωは負荷とモータの相対速度(負荷速度とモータ速度の差)、τは負荷とモータの相互作用トルク、τdLは負荷外乱トルクである。
以上のような一般的な構成に対し、図1、図2は、それぞれ本発明による制御装置の実施形態の構成を示す。
図1は、図4で説明した構成に制振制御器10を追加した構成となっている。制振制御器10は制御対象における状態量のフィードバック値として負荷位置θ、モータ位置θを受け、これらの状態量から演算器14により負荷とモータの相対変位θを演算する。制振制御器10はまた、相対変位θを微分して負荷とモータの相対速度ωを算出する。制振制御器10は、相対速度ωについてはゲインkωTの制御器(第3の制御手段)12を通し、相対変位θについてはゲインkθTの制御器(第2の制御手段)13を通したうえで両者を加算器11で加算して加算器103’に与える。
なお、図1では、制振制御器10を新たに備えることにより、FF制御器20においては負荷位置θからモータトルクτへの開ループ伝達特性をP’L2Mで示し、これを経て得られるトルクをτ’FFで示している。そして、加算器103’が、ゲインkωmのモータ速度FB制御器(第1の制御手段)からのモータトルクと、FF制御器20からのトルクτ’FFと、制振制御器10の出力を加算してモータトルク指令τをモータに与える。
以上の構成は、状態量としての負荷位置θ、モータ位置θをそのまま用いる、状態FB速度制御装置と呼ぶことができる。
一方、図2は、図1の制振制御器10に代えて、状態オブザーバ(state observer)15を持つ制振制御器10’を備えている。状態オブザーバ15は、状態量としてのモータ位置θを微分して算出したモータ速度ωとモータトルク指令τとを用いて負荷とモータの相対速度の推定値ω^と、負荷とモータの相対変位の推定値θ^を推定する。制振制御器10’は、相対速度の推定値ω^についてはゲインkωTの制御器を通し、相対変位の推定値θ^についてはゲインkθTの制御器を通したうえで両者を加算器11’で加算して加算器103’に与える。この構成も、状態FB速度制御装置と呼ぶことができる。
いずれにしても、本実施形態では、図1のように状態量を直接計測するか、あるいは図2のように状態オブザーバ15を用いて推定値を得るなどして、モータ速度(ω)のほか、モータと負荷の相対速度(ω)、モータと負荷の相対変位(θ)、あるいはそれらの推定値を得て、フィードバック制御を行う。
本実施形態では、上記の信号、つまりモータ速度(ω)、相対速度(ω)、相対変位(θ)、相対速度の推定値(ω^)、相対変位の推定値(θ^)に対して乗じるFBゲインkωM、kθT、kωTを上記式(1)の様に決定する。
ここで、上記式(1)中のωは感度関数(感度特性)のカットオフ周波数、ωCSは相補感度特性(相補感度関数)のカットオフ周波数、kは振動減衰特性の調整パラメータを表しており、制御特性を調整するパラメータである。また、ω(=√K/J)は1次の共振特性の内の反共振周波数を表している。なお、感度関数のカットオフ周波数というのは、感度関数の利得が0dB以下または−3dB以下となる低周波領域側の周波数を示し、相補感度関数のカットオフ周波数というのは、相補感度関数の利得が0dB以下または−3dB以下となる高周波領域側の周波数を示す。
これまでは、kωM、kωT、kθTは、単にゲインとして決めるという考えしかなく、これらのゲインを決定した後、出力を見て、再度、ゲイン調整を行なうという考え方しかなかった。
これに対し、本実施形態では、ゲインkωM、kωT、kθTを式(1)に基づいて感度特性のカットオフ周波数ω、相補感度特性のカットオフ周波数ωCSで決定できるようにしている。これを以下に説明する。
図1、図2に示されるようなフィードバックを施すと、上記式(2)で表される機械装置の速度制御系の特性方程式Cは以下の数3で表すことができる。
Figure 0005362339
また、モータの速度指令と実際のモータ速度との偏差をモータ速度偏差とすると、モータ速度指令からモータ速度偏差までの伝達特性Sは、感度特性と呼ばれ、以下の数4で表される。
Figure 0005362339
一方、モータの速度指令から実際のモータ速度までの伝達特性Tは、相補感度特性と呼ばれ、以下の数5で表される。
Figure 0005362339
上記式から、感度特性Sは、分子多項式のsのゼロ次項が無いことから、低周波領域では周波数に比例してゲインが低下する。その時のゲイン曲線は周波数ωに対してω/ωに漸近する。
一方、相補感度特性Tは、分子多項式のsの項が無いことから、分母多項式と分子多項式のsの次数差が1となっており、高周波領域では周波数に反比例してゲインが低下する。その時のゲイン曲線は周波数ωに対してωCS/ωに漸近する。
上記の様子を図3(a)に示す。図3(a)では、ゲイン特性をラプラス演算子sを用いて表しており、感度特性Sの低域特性がs/ωに、相補感度特性Tの高域特性がωCS/sに、それぞれ漸近している様子が見て取れる。これをボード線図で示すと、図3(b)のようになる。
ところで、図1、図2に示すような制御装置の閉ループ制御系を簡略化して示すと、図6のようになる。そして、このような閉ループ制御系における感度特性S、相補感度特性Tについて考えると以下のようになる。
感度特性S=E/R=1/(1+CP)
相補感度特性T=Y/E=CP/(1+CP)
ここで、感度特性S=E/Rなので図3(b)のボード線図において感度特性Sのゲインが低いところの周波数領域(ω>ω)では、誤差のゲインが低いので応答性が良い。一方、相補感度特性T=Y/Eなので、図3(b)のボード線図において相補感度特性Tのゲインが低いところの周波数領域(ω<ω)では、ノイズ感度が低く、ノイズ特性、安定性が向上する。
以上の様に、式(1)の様なゲインの設定方法を採用することによって、応答性と安定性を独立させた制御特性の設計を容易に実現することが出来る。
本実施形態による状態FB速度制御装置では、感度関数や、相補感度関数を設定するわけではなく、低周波領域で感度特性Sに漸近する関数s/ωを設定し、高周波領域で相補感度特性Tに漸近する関数ωCS/sを設定するようにしている。よって、制御装置に入力する数値はカットオフ周波数ωとωCSだけでよく、入力すると、制御系の感度特性Sがω>ωの領域でs/ωに漸近し、相補感度特性TがωCS<ωの領域でωCS/sに漸近するような制御装置が設計される。
なお、相補感度特性Tのカットオフ周波数ωCSと感度特性Sのカットオフ周波数ωの比率を固定的に設定することによって、調整パラメータをどちらか一方のみにし、調整を容易にすることも可能である。この場合、ωCS/ω=1.5〜6程度が望ましい。
同時に、式(1)に見られるように、ゲインkωTによって、応答性と安定性とは独立させて、振動の減衰特性を調整することが可能となる。式(1)における第3式の振動減衰特性の調整パラメータkは、ねじり角速度のフィードバックゲインを決定するパラメータ、言い換えればねじり振動の減衰を調整するパラメータと考えることができ、概ね±6の範囲で調整することで良好な応答を得ることが可能である。
また、一般的に積分補償により定常偏差を補償したりするが、速度ループ積分補償ゲインの調整は感度特性のカットオフ周波数ωの1/3以下程度の帯域に設定すれば、その他の特性との大きな干渉を起こさずに容易に導入することが可能である。同様に、上記では速度制御系の設計方法を説明しているが、その外部ループとして位置制御系を構成する場合も、位置ループゲインを感度特性のカットオフ周波数ωの1/3以下程度の帯域に設定すれば、その他の特性との大きな干渉を起こさずに容易に導入することが可能である。
なお、上記実施形態とは別の構成として、モータ速度の比例補償のみを施した場合には、感度特性はω/[kωM/(J+J)]、相補感度特性は(kωM/J)/ωにそれぞれ漸近する。よって、感度特性を変化させると同時に相補感度特性も変化してしまい、特に負荷のイナーシャJがモータのイナーシャJに対して非常に大きい場合(例えば、10倍以上)には、感度特性と相補感度特性の漸近する周波数特性が大きく離れてしまい、応答性の向上と安定余裕の確保の両立が困難になる。
次に、FF制御器20の設計(調整)方法を説明する。
本実施形態では、前述したように、FF制御器20にはモデル追従制御手法を用いる。
モデル追従制御手法では、最終的に制御したい負荷の先端部などに対して与える運動特性をモデル特性として設定する。このモデル特性は、1次遅れや高次遅れであったり、遅れ特性に対して積分補償をしたものであったりする。そして、制御対象の制御入力であるモータトルクからフィードバックする各状態量に対する伝達特性の逆特性とモデル特性とを掛け合わせたものを各状態量への動作指令として入力すると同時に、この運動に見合うモータトルクを入力する。この様な指令入力を行うことにより、各状態量を所望の運動状態であるモデル特性に追従させることが可能となる。
ここで、多慣性共振系のもっとも簡単な制御系の一つである、モータ速度のPI(比例積分)制御の外部ループに位置のP(比例)制御を行う場合(P−PI制御系)の構成を考える。
この時、モデル追従制御系を構成するには、前述したように、FF制御器においてモータ位置指令θMR、モータ速度指令ωMR、モータトルクτFFをそれぞれ算出する。この時の各入力の算出式は下記の数6のようになる。
Figure 0005362339
ここで、前述したように、θLRは負荷位置指令であり負荷の動作に対する指令値であるものとする。また、Mはモデル特性、PL2τは負荷位置θからモータ位置θまでの伝達特性、PL2Mは負荷位置θからモータトルクτまでの伝達特性の逆関数であり、それぞれ下記の数7で表される。
Figure 0005362339
上記のような状態フィードバックを施している場合、フィードバックしている各状態量に対しても動作指令が必要となる。しかし、これに対して各々の動作指令を生成する演算を行うと、演算量が非常に増加する為、好ましくない。これに対して、上記式(6)における伝達特性PL2τを、上記のP−PI制御系に対して付加しているフィードバック量のみに着目して変形すると以下の数8となる。
Figure 0005362339
よって、上記式(6)で表されていたP−PI制御系に対するモデル追従制御系の各入力の内、モータトルクのみを以下の数9で表されるトルクτ’FFに変更するだけで、上記のような状態フィードバックに対応したモデル追従制御系の入力を得ることが可能となる。
Figure 0005362339
式(7)の第2式と式(8)は同じ次数の伝達方程式であるので、式(6)の第3式と式(9)のモータトルク入力の伝達特性も同じ次数の伝達方程式となる。よって、上記の様にモデル追従制御系の各入力を算出することにより、演算量の増加は全く生じずに上記状態フィードバックに対応したFF制御器20を得ることが出来る。
以上説明した2つの実施形態による、多慣性共振系の1次共振特性を対象にした制御装置の設計方法を用いることにより、以下の効果が得られる。
1.状態フィードバックを用いる制御系の調整を、感度特性のカットオフ周波数ω、相補感度特性のカットオフ周波数ωCS、振動減衰特性の調整パラメータkの各調整パラメータによって行うことにより、感度特性、相補感度特性、減衰性という制御上重要な特性を互いに干渉せずに調整することが可能となる。
2.ωCS/ωを固定とすることにより、調整パラメータを更に減じ、容易に調整を行うことが可能となる。
3.上記の様な速度制御系は、速度ループ積分補償、位置制御ループを容易に追加することが可能であり、高性能な速度サーボ制御、位置サーボ制御を容易に実現し、且つ、容易に調整することが可能である。
4.上記の様な、速度又は位置制御系に対して、モデル追従制御手法によるFF制御器を調整する場合、本実施形態によるモータトルク入力演算式を用いることで、演算量を増加させずに適切なモータトルク入力を算出することが可能となる。
5.上記の様な、FB制御器、FF制御器の設計(調整)方法は、制御器の調整則と制御対象の特性同定部が独立しているセルフチューニング制御手法によるオートチューニングに用いることが可能であり、オートチューニングによる調整と、ユーザによる微調整などの介入を容易に両立することが可能である。
6.上記の様な、FB制御器、FF制御器の設計(調整)方法は、制御に用いるフィードバック信号を全て実際に計測する場合にも適用可能であり、例えばモータ速度の様に式(2)の状態量の可観測性が得られるだけの計測量から状態観測器によって得た信号をフィードバックする場合にも適用可能である。
図1は、本発明による制御装置の実施形態の構成を示すブロック図である。 図2は、本発明による制御装置の他の実施形態の構成を示すブロック図である。 図3(a)、(b)は、本発明の実施形態における感度特性、相補感度特性を周波数とゲインとの関係で示すと共に、各特性と漸近線との関係を説明するための図である。 図4は、モデル追従制御法によるFF制御器と、位置P(比例)速度PI(比例積分)制御器とを組み合せた制御装置の一般的な構成を示すブロック図である。 図5は、2慣性共振系の制御対象を1次の共振特性のみで近似した運動特性のブロック線図を示す。 図6は、図1、図2に示すような制御装置の閉ループ制御系を簡略化して示した図である。
符号の説明
10、10’ 制振制御器
11、11’、103、103’ 加算器
12 状態オブザーバ
20 FF制御器
100 制御対象としてのプラント
101、102 演算器

Claims (7)

  1. モータと負荷及びこれらを結合する結合部とを含む多慣性共振系を制御対象とし、制御指令値と制御対象からフィードバックされる状態量との差に基づいてモータを制御する閉ループ制御系を備えたモータ制御装置において、
    前記閉ループ制御系は
    モータ速度指令からモータトルク指令を決定するモータトルク指令決定手段と、
    前記状態量に応じて振動を抑制する制振制御手段と、を備え、
    前記モータトルク指令決定手段の第1のゲイン、前記制振制御手段の第2のゲイン、閉ループ制御系の感度特性のカットオフ周波数ω、閉ループ制御系の相補感度特性のカットオフ周波数ωCS用いて決定され、且つ、前記閉ループ制御系の感度特性がω >ωの低周波領域でs/ω に漸近し、閉ループ制御系の相補感度特性がω CS <ωの高周波領域でω CS /sに漸近するように調整される(但し、sはラプラス演算子)ことを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記制振制御手段の第3のゲインを、前記多慣性共振系の振動減衰特性の調整パラメータkで決定することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記第1〜第3のゲインをそれぞれ、kωM、kθT、kωTとした場合、これら第1〜第3のゲインは以下の式(
    Figure 0005362339
    (但し、Jはモータのロータ部のイナーシャ、Jは負荷のイナーシャ、ωは1次の共振特性の反共振周波数)
    で表されることを特徴とする請求項に記載のモータ制御装置。
  4. 前記制振制御手段は、
    負荷位置とモータ位置との差を負荷とモータの相対変位として演算する演算手段と、
    前記相対変位から負荷とモータの相対速度を算出する手段と、
    前記相対変位が入力され前記第2のゲインkθTをゲインとする制御手段と、
    前記相対速度が入力され前記第3のゲインkωTをゲインとする別の制御手段とを含むことを特徴とする請求項に記載のモータ制御装置。
  5. 前記制振制御手段は、
    モータ位置からモータ速度を算出する手段と、
    算出されたモータ速度と前記モータトルク指令とを用いて負荷とモータの相対変位の推定値と、負荷とモータの相対速度の推定値を求める状態オブザーバと、
    前記相対変位の推定値が入力され前記第2のゲインkθTをゲインとする制御手段と、
    前記相対速度の推定値が入力され前記第3のゲインkωTをゲインとする別の制御手段とを含むことを特徴とする請求項に記載のモータ制御装置。
  6. 前記カットオフ周波数ωと前記カットオフ周波数ωCSの比率を固定値として設定し、前記カットオフ周波数ω、前記カットオフ周波数ωCSの一方を調整パラメータとして用いることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  7. 前記制御指令値と前記制御対象からフィードバックされる状態量との差を演算する演算手段の前段に、フィードフォワード制御器を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
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