JP3404388B2 - 電動機制御方法 - Google Patents

電動機制御方法

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JP3404388B2
JP3404388B2 JP2001328911A JP2001328911A JP3404388B2 JP 3404388 B2 JP3404388 B2 JP 3404388B2 JP 2001328911 A JP2001328911 A JP 2001328911A JP 2001328911 A JP2001328911 A JP 2001328911A JP 3404388 B2 JP3404388 B2 JP 3404388B2
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英俊 池田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、工作機
械におけるテーブルや産業ロボットのアームのような負
荷機械を駆動する、直流電動機、誘導電動機、同期電動
機など電動機の回転位置あるいは回転速度を制御する電
動機の制御方法に関するもので、特に、負荷機械が機械
共振特性を有する場合の電動機制御方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】図15は従来の電動機位置制御装置の一
例(第一の従来例)で、「計測と制御」vol.32,
No12 Dec.1993、p1010〜1013に
記載された電動機制御装置のブロック図である。図にお
いて、101は電動機トルクτMによって回転する電動機、
102は電動機によって駆動される負荷機械、103は電動機
101と負荷機械102をつなぐトルク伝達部、104は電動機
回転位置xMおよび電動機回転速度vMを検出する回転検
出器、105は電動機1と負荷機械102とトルク伝達部103
と回転検出器104を併せた機械系、106は電動機トルクτ
Mをトルク指令信号τrに一致させるトルク制御回路、10
7は機械系105とトルク制御回路106を併せた制御対象、1
08は電動機101および負荷機械102に対する位置指令信号
xrを発生する位置指令信号発生回路、109aは速度補償
回路、110aは位置補償回路、111aは速度補償回路109
aと位置補償回路110aとを含んだフィードバック補償
回路、112aは位置指令信号xrを入力とし、フィードフ
ォワードトルク信号τfと応答目標位置信号xfと応答目
標速度信号vfを出力するフィードフォワード回路、113
aはフィードバック補償回路111aとフィードフォワー
ド回路112aを含んだ全体の位置制御回路、114は負荷機
械102に入力する負荷外乱トルクτd、115は機械系105の
総イナーシャを推定するイナーシャ推定回路、116aは
位置制御回路113aの制御パラメータを調整するための
制御パラメータ調整信号である。
【0003】次に、図16は図15中フィードフォワー
ド回路112aの詳細を示すブロック図である。図15と
同一符号は同一部分を表す。117aは機械系105の動作を
模擬しモデル速度信号vaを出力する剛体イナーシャモ
デル回路、118はモデル速度信号vaを積分してモデル位
置信号xaを出力する積分回路、119aはモデル速度信号
vaを模擬的に制御するモデル速度制御回路、120aはモ
デル位置信号xaを模擬的に制御するモデル位置制御回
路である。
【0004】次に第一の従来技術の動作について説明す
る。まず、制御対象107と位置制御回路113aからなる制
御系の動作について説明する。位置指令信号発生回路10
8は位置指令信号xrを発生する。フィードフォワード回
路112aは位置指令信号xrを入力し、位置指令信号xr
に対する電動機の動作の応答目標信号として応答目標位
置信号xfと応答目標速度信号vfと、電動機101の動作
が応答目標信号に一致するようにフィードフォワード的
に演算されるトルク信号をフィードフォワードトルク信
号τfとして出力する。フィードフォワード回路112aで
は位置指令信号xrに対して剛体イナーシャモデル回路1
17aの動作を模擬的に制御しており、剛体イナーシャモ
デル回路117aはモデルトルクτaを入力し、機械系105
のイナーシャ推定値Jeを用いて次の(式1)の演算に
よってモデル速度信号vaを出力し、積分回路118はモデ
ル速度信号vaを入力して積分したモデル位置信号xaを
出力することにより、機械系105の動作を模擬する。
【0005】
【数1】
【0006】(式1)においてsはラプラス演算子を表
し、va(s)、τa(s) はそれぞれva、τaのラプラス
変換を表わし、以下の式においても同様に表記する。
【0007】次に、モデル位置制御回路120aは位置指
令信号xrとモデル位置信号xaの差信号を入力し、モデ
ル位置ゲインKrpを乗じてモデル速度指令信号vraを出
力する。モデル速度制御回路119aはモデル速度指令信
号vraとモデル速度信号vaの差信号を入力し、モデル
速度ゲインKrvを乗じてモデルトルク信号τaを出力す
ることにより、モデル位置信号xaは位置指令信号xrに
対して望ましい応答をするように制御される。フィード
フォワード回路112aは、位置指令信号xrに対する電動
機の応答目標信号として、モデル速度信号vaを応答目
標速度信号vfとして、モデル位置信号xaを応答目標位
置信号xfとして出力するとともに、制御対象107の伝達
特性がイナーシャ推定値Jeに等しいイナーシャの剛体
機械と同じである場合は、電動機101が応答目標信号と
同じ動作をするためのトルク指令信号として、モデルト
ルク信号τaをフィードフォワードトルク信号τfとして
出力する。
【0008】次に位置制御回路113aでは、応答目標位
置信号xfと実際の電動機回転位置xMとの差信号を補償
位置信号xcとして、また応答目標速度信号vfと実際の
電動機回転速度vMとの差信号を補償速度信号vcとして
それぞれフィードバック補償回路111aに入力する。
【0009】フィードバック補償回路111aは、位置補
償回路110aは補償位置信号xcを入力し、位置ゲインK
p、位置積分ゲインKpIを用いて次の(式2)で表され
るPI演算を行うことにより位置補償速度信号vcxを出
力し、速度補償回路109aは位置補償速度信号vcxと補
償速度信号vcの和信号を入力し、速度ゲインKvを乗じ
て補償トルク信号τcを出力する。
【0010】
【数2】
【0011】次に位置制御回路113aは、フィードフォ
ワードトルク信号τfと補償トルク信号τcの和信号をト
ルク指令信号τrとしてトルク制御回路106に入力し、ト
ルク制御回路105は電動機トルクτMがトルク指令信号τ
rに一致するように制御することにより電動機の動作を
制御する。
【0012】ここで、この第一の従来技術の電動機制御
装置では、制御対象107の伝達特性がイナーシャ推定値
Jeと等しいイナーシャの剛体機械と一致している場合
には、位置指令信号xrに対してはフィードフォワード
トルク信号τfのみが働いて電動機を駆動し、補償トル
ク信号τcは負荷外乱トルクτdや制御対象107と剛体イ
ナーシャモデル回路117aの誤差に対する補償のみを行
う役割をする。従って、この第一の従来技術は、位置指
令信号xrに対する応答についてはフィードフォワード
回路112aを調整し、外乱やモデルの誤差を補償する応
答についてはフィードバック補償回路111aを調整する
二自由度制御装置となっている。
【0013】次に、この従来の電動機制御装置の調整方
法について説明する。まず、フィードフォワード回路11
2aの調整方法は、位置指令信号xrに対する応答目標位
置信号xfと電動機回転位置xMの応答ができるだけ一致
するように剛体イナーシャモデル回路117aのパラメー
タであるイナーシャ推定値Jeを機械系105の総イナーシ
ャに一致させる。次に、位置指令信号xrに対する応答
目標位置信号xfの応答が良好になるようにモデル位置
制御回路120aのモデル位置ゲインKrpとモデル速度制
御回路119aのモデル速度ゲインKrvを調整する。ここ
で、剛体イナーシャモデル回路117aの入力点で切り開
かれるループをモデル制御ループと呼ぶ。このとき、位
置指令信号xrに対する目標値応答の速さを決めるため
の調整パラメータすなわち目標値応答速度調整パラメー
タとしてモデル制御ループの交差周波数ωcr[rad/
sec]が決められたとすると、上記Krvと上記Krpを
次の(式3)、(式4)のように調整すれば、位置指令
信号xrからモデル位置信号xaまでの伝達特性は(式
5)のように実重根を持つ形になり、オーバーシュート
の無い良好な応答をする。
【0014】
【数3】
【0015】ここで、位置指令信号xrに対する目標値
応答速度調整パラメータであるモデル制御ループの交差
周波数ωcrの決定方法としては、速い応答を得たい場合
はなるべく大きい値に調整されるが、機械系105が機械
共振特性を有する場合には振動を励起せず、機械系105
に無理を与えない範囲でできるだけ速い応答が得られる
ような試行錯誤を要する。
【0016】次に、フィードバック補償回路111aの調
整方法について説明する。ここで、制御対象107の入力
点で切り開かれるループをフィードバックループと呼
ぶ。外乱に対する応答の速さを決めるための調整パラメ
ータとしてフィードバックループの交差周波数ωc[r
ad/sec]が決定されたとすると、制御対象107の
伝達特性が剛体機械に近似可能とし、そのイナーシャJ
が分かっているとすると、速度補償回路109aの速度ゲ
インKvおよび位置補償回路の位置ゲインKp,位置積分
ゲインKpIを例えば以下の(式6)、(式7)、(式
8)のように調整することにより良好な外乱応答の形が
得られる。
【0017】
【数4】
【0018】ここで、フィードバックループの交差周波
数ωcは、機械系105が完全な剛体の場合には、トルク制
御回路106や制御装置の計算機サンプリングによる位相
遅れなどのモデル誤差に対して応答が不安定にならない
範囲で大きく選ばれるものであり、上記の位相遅れの特
性がわかっておれば自動的に設定することも可能であ
る。しかしながら、機械系105が機械共振特性を有する
場合には、高精度な応答を得るためには機械系105の振
動を抑制する必要があり、そのためには別の調整が必要
となる。また機械系105が機械共振特性を有する場合に
は剛体の場合に比べて高周波数領域でゲイン特性が増大
するようなモデル誤差があるため、剛体の場合と同じよ
うに速度ゲインKvを大きくすると制御系が不安定にな
る。従って、機械系105が機械共振特性を有する場合の
調整は人手で試行錯誤的に行う必要があるが、モデル誤
差に対する安定を保ちながら振動を抑制し外乱に対する
応答を速くするような調整は人手でも難しい。
【0019】次に、この第一の従来技術の自動調整方法
について説明する。イナーシャ推定回路115はフィード
フォワードトルク信号τfと補償速度信号vcを入力し、
補償速度信号vcが正ならば実際の機械系105の総イナー
シャJがイナーシャ推定値Jeより大きいと判断してイ
ナーシャ推定値Jeを大きくし、逆に補償速度信号vcが
負の場合には実際の機械系105の総イナーシャJがイナ
ーシャ推定値Jeより小さいと判断してイナーシャ推定
値Jeを小さくすることにより、補償速度信号vcが零
に近づくようにイナーシャ推定値Jeを補正し、推定さ
れたイナーシャ推定値Jeだけを制御パラメータ調整信
号116aとして出力し、フィードフォワード回路112aの
剛体イナーシャモデル回路117aが内蔵するイナーシャ
推定値Jeを調整する。また、速度補償回路109aの速度
ゲインKvを計算する(式6)におけるイナーシャJの
代わりにイナーシャ推定値Jeを用いて調整することも
可能である。しかしながら、特に機械系105が機械共振
特性を有する場合には、位置指令信号xrに対する応答
の速さを調整するパラメータである上記モデル制御ルー
プの交差周波数ωcrと外乱に対する応答の速さを調整す
るパラメータである上記フィードバックループの交差周
波数ωcは人手によって調整する必要があるため、モデ
ル速度制御回路119a、モデル位置制御回路120a、速度
補償回路109a、位置補償回路110aは人手によって調整
する必要がある。
【0020】このように、従来では機械系105のイナー
シャのみを推定して自動調整を行うため、機械系105が
機械共振特性を有する場合には、自動的に安定で高速高
精度な応答を得るような調整を行うことは不可能であ
る。
【0021】次に、第二の従来技術として、機械系105
が機械共振特性を有する場合に機械振動を抑制する機能
を有した電動機の速度を制御する電動機制御装置につい
て説明する。図17は、平成6年電気学会産業応用部門
全国大会講演論文集S.311〜S.314に記載された電動機の
速度を制御する電動機制御装置のブロック図である。図
において101〜107、114は第一の従来技術と同じである
ので説明を省略する。121は速度指令信号発生回路であ
る。122は速度制御回路である。123は機械系105が剛体
機械に近似できると仮定して負荷外乱トルクτdを推定
する外乱推定回路である。124は外乱推定回路123の出力
を系数倍してトルク指令信号τrに加算する推定外乱増
幅器である。125は速度制御回路の出力である速度制御
トルク信号τvの位相を等価的に進める効果を有する位
相進め増幅器である。
【0022】次に動作について説明する。まず、速度指
令信号発生回路108は速度指令信号vrを出力する。次
に、速度制御回路122は速度指令信号vrと電動機回転速
度vMとの差信号を入力し、PI制御などの適当な演算
により速度制御トルク信号τvを出力し、速度制御トル
ク信号τvをトルク指令信号τrに加えることにより電動
機速度vMを制御する。
【0023】次に、まず外乱推定回路123の動作を位相
進め増幅器125のゲインk2は零であると仮定してその効
果を無視して説明する。外乱推定回路123は電動機回転
速度vMと電動機トルクτMを入力し、機械系105全体の
イナーシャ推定値Jeと外乱推定回路123の推定帯域ωo
をパラメータとした(式9)の演算により、機械系105
が剛体に近似可能と仮定た場合の負荷外乱トルクτdを
推定し、推定外乱信号τdeとして出力する。
【0024】
【数5】
【0025】次に、推定外乱増幅器124は推定外乱信号
τdeを入力し、0乃至1の定数k1を乗じた信号を出力
してトルク指令信号τrに加えることにより、外乱に対
する電動機速度vMの変動を抑制する効果を有する。こ
こで、外乱推定回路123の推定帯域ωoは、機械系105が
剛体に近似可能な周波数として、最も低い反共振周波数
より小さい値が選ばれることにより、機械系105が有す
る機械共振特性に対して振動を抑制する効果を有する。
【0026】次に、上記の推定外乱信号τdeをk1倍し
た信号と速度制御トルク信号τvの和信号をトルク指令
信号τrとして制御対象107に入力することにより、振動
を抑制しながら電動機回転速度vMを制御するのが、こ
の第二の従来技術の目的であるが、外乱推定回路123を
用いて機械系105の機械共振特性に減衰を与えた結果、
速度制御トルク信号τvから電動機回転速度vMまでの伝
達特性が、外乱推定回路123を用いない場合に比べて、
共振周波数より低周波数での位相遅れが大きくなる。そ
の結果、速度制御回路122と外乱推定回路123をそのまま
同時に用いると問題を生じるため、位相進め増幅器125
のゲインk2を0より大きくすることにより、等価的に
速度制御トルク信号τvの位相を進め、位相進め増幅器1
25のゲインk2を調整して上記の位相遅れを補償する必
要がある。
【0027】このように、第二の従来技術では制御パラ
メータとして、振動を抑制する目的から外乱推定回路12
3におけるイナーシャ推定値Jeと推定帯域ωoと推定外
乱増幅器124のゲインk1を調整し、電動機回転速度vM
の応答を調整するために速度制御回路122の制御パラメ
ータを調整し、外乱推定回路123と速度制御回路122の両
方を用いるために位相進め増幅器125のゲインk2を調整
する必要があるが、上記の制御パラメータのうち、イナ
ーシャ推定値Jeと、推定帯域ωo以外はパラメータの調
整方法は明確ではない。また、電動機回転速度vMが、
振動を抑制する目的で外乱推定回路123を通ってフィー
ドバックされるのと同時に、電動機速度vMを制御する
目的で速度制御回路122を通ってフィードバックされて
いるが、これらの効果はそれぞれ独立ではあり得ない。
したがって、振動の抑制と、外乱に対する応答の高速性
と、モデル誤差に対する安定性を同時に考慮した最適な
制御パラメータの調整を行うには、複数のパラメータを
試行錯誤的に調整する必要があるため、全部の制御パラ
メータを自動的に調整するのは難しい。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、第一の
従来技術では、制御対象が剛体機械としたときのイナー
シャのみを推定するものであり、機械系が機械共振特性
を有することが十分考慮されていないため、機械系が機
械共振特性を有する場合には、モデル誤差に対する安定
を保ちながら振動を抑制し、外乱に対する応答を速くす
るような調整は人手によって試行錯誤的に行う必要があ
り難しいといった問題があった。また、位置指令信号に
対する応答の速さも、機械系の振動を励起しなく、機械
系に無理を与えないように人手によって試行錯誤的に調
整する必要があるという問題があった。
【0029】また、第二の従来技術は、振動抑制を目的
とした特定の構造を持つ制御装置の例だが、振動抑制を
目的とした外乱推定回路と速度制御を目的とした速度制
御回路とが別個にある構造をしており、これらは独立で
ないため、振動の抑制と外乱や指令信号に対する応答の
高速性とモデル誤差に対する安定性を同時に考慮した最
適な調整方法は明確でない。また調整パラメータも多い
ため、制御パラメータの全部を自動的に調整するのは難
しいという問題があった。
【0030】この発明は、上記の問題点を解決するため
になされたもので、電動機によって駆動される機械系が
機械共振特性を有する場合にも、制御装置の構造には依
存せず、剛体を制御するときと同様な簡単な構造の制御
装置であっても、振動の抑制と、外乱に対する応答の高
速性と、モデル誤差に対する安定性と、振動を励起しな
く機械系に無理を与えない範囲で動作の指令信号に対す
る応答の高速性を同時に考慮した、最適な制御パラメー
タの調整を自動的に行うような電動機制御方法を得るこ
とを目的とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】この発明は、電動機の回
転速度あるいは回転位置を制御するための指令信号を元
に生成されたトルク指令信号により、上記電動機の回転
トルクを制御して、電動機の回転速度あるいは回転位置
を制御する電動機制御方法であって、上記指令信号以外
の外乱に対する電動機の回転速度あるいは回転位置の応
答である外乱応答の特性を変更しないまま上記指令信号
に対する上記電動機の回転速度あるいは回転位置の応答
である目標値応答の特性を変更するフィードフォワード
回路を備え、上記目標値応答の速さを調整するための上
記フィードフォード回路の調整パラメータである目標値
応答調整パラメータを、電動機の回転トルクで駆動する
機械系の最も小さい反共振周波数ωzの推定値である推
定反共振周波数ωzeに所定の定数を乗じた値になるよ
うに決定することを特徴とする電動機制御方法である。
【0032】また、この発明は、電動機の回転速度ある
いは回転位置を制御するための指令信号を元に生成され
たトルク指令信号により、上記電動機の回転トルクを制
御して電動機の回転速度あるいは回転位置を制御する電
動機制御方法であって、上記指令信号を入力して極を有
する伝達関数演算によりフィードフォワードトルク信号
τfを演算してトルク指令信号に加算するフィードフォ
ワード回路を備え、上記フィードフォワード回路におけ
る上記所定の伝達関数演算の極の大きさを電動機の回転
トルクで駆動する機械系の最も小さい反共振周波数ωz
の推定値である推定反共振周波数ωzeに所定の定数を
乗じた値になるように決定する電動機制御方法である。
【0033】
【発明の実施の形態】実施の形態1.この発明の一実施
の形態を図を用いて説明する。図1は本発明の実施の形
態1による電動機制御装置の構成を示したブロック図で
ある。図において、1は電動機トルクτMによって回転
する電動機、2は電動機によって駆動される負荷機械、
3は電動機1と負荷機械2をつなぐトルク伝達部、4は
電動機回転位置xMおよび電動機回転速度vMを検出する
回転検出器、5は電動機1と負荷機械2とトルク伝達部
3と回転検出器4を併せた機械系、6は電動機トルクτ
Mをトルク指令信号τrに一致させるトルク制御回路、7
は機械系5とトルク制御回路6を併せた制御対象、8は
電動機1および負荷機械2に対する位置指令信号xrを
発生する位置指令信号発生回路、9bは速度補償回路、
10bは位置補償回路、11bは速度補償回路9bと位置補
償回路10bとを含んだフィードバック補償回路、12bは
位置指令信号xrを入力とし、フィードフォワードトル
ク信号τfと応答目標位置信号xfと応答目標速度信号v
fを出力するフィードフォワード回路、13bはフィード
バック補償回路11bとフィードフォワード回路12bを含
んだ全体の位置制御回路、14は負荷機械2に入力する負
荷外乱トルクτdである。ここで、9b、10b、11b、1
2b、13bはそれぞれ第一の従来技術の図15の109a、
110a、111a、112a、113aと制御系の構成は同じであ
るが、その調整方法は異なる。16bは制御パラメータ調
整信号である。26はスイッチ、27は駆動試験用トルク指
令信号発生回路、28aは自動調整回路である。
【0034】次に、図2はフィードフォワード信号演算
回路12bの詳細を示すブロック図である。フィードフォ
ワード回路12bは第一の従来技術のフィードフォワード
回路112aと制御系の構成は同じであるが、調整方法は
異なる。図1と同一符号は同一部分を表す。17bは機械
系5の動作を模擬しモデル速度信号vaを出力する剛体
イナーシャモデル回路、18は積分回路、19bはモデル速
度信号vaを模擬的に制御するモデル速度制御回路、20
bはモデル位置xaを模擬的に制御するモデル位置制御
回路である。ここで、17b、18、19b、20bはそれぞれ
第一の従来技術の図16の117a、118、119a、120aと
制御系の構成は同じであるが、その調整方法は異なる。
【0035】次に、図3は自動調整回路28aの詳細を表
す図である。図1と同一符号は同一部分を表す。29は高
次モデル同定部、30aは機械系5の総イナーシャJと反
共振周波数ωzを推定する機械パラメータ推定部、31は
二慣性系最適ゲイン計算部、32は周波数応答推定部、33
は限界ゲイン推定部、34aは制御パラメータ決定部であ
る。
【0036】上記のように、本発明においては、装置構
成上、自動調整回路を用いて、各パラメータを演算する
という点が特徴である。
【0037】次に動作を説明する。まず、電動機1の位
置を制御するときはスイッチ26をa)に切り替えて位置
指令信号発生回路8および位置制御回路13bを用いて制
御対象7を制御する。位置指令信号発生回路8は位置指
令信号xrを発生する。フィードフォワード回路12bは
位置指令信号xrを入力し、位置指令信号xrに対する
電動機の動作の応答目標信号として応答目標位置信号x
fと応答目標速度信号vfと、電動機1の動作が応答目標
信号に一致するようにフィードフォワード的に演算され
るトルク信号をフィードフォワードトルク信号τfとし
て出力する。フィードフォワード回路12bでは位置指令
信号xrに対して剛体イナーシャモデル回路17bの動作
を模擬的に制御しており、剛体イナーシャモデル回路17
bはモデルトルクτaを入力し、機械系5のイナーシャ
推定値Jeを用いて次の(式10)の演算によってモデ
ル速度信号vaを出力し、積分回路18はモデル速度信号
vaを入力して積分したモデル位置信号xaを出力するこ
とにより、機械系5の動作を模擬する。
【0038】
【数6】
【0039】次に、モデル位置制御回路20bは位置指令
信号xrとモデル位置信号xaの差信号を入力し、モデル
位置ゲインKrpを乗じてモデル速度指令信号vraを出力
する。モデル速度制御回路19bはモデル速度指令信号v
raとモデル速度信号vaの差信号を入力し、モデル速度
ゲインKrvを乗じてモデルトルク信号τaを出力するこ
とにより、モデル位置信号xaは位置指令信号xrに対し
て望ましい応答をするように制御される。フィードフォ
ワード回路12bは、位置指令信号xrに対する電動機の
応答目標信号として、モデル速度信号vaを応答目標速
度信号vfとして、モデル位置信号xaを応答目標位置信
号xfとして出力するとともに、制御対象7の伝達特性
がイナーシャ推定値Jeに等しいイナーシャの剛体機械
と同じである場合は、電動機1が応答目標信号と同じ動
作をするためのトルク指令信号として、モデルトルク信
号τaをフィードフォワードトルク信号τfとして出力す
る。
【0040】次に位置制御回路13bでは、応答目標位置
信号xfと実際の電動機回転位置xMとの差信号を補償位
置信号xcとして、また応答目標速度信号vfと実際の電
動機回転速度vMとの差信号を補償速度信号vcとしてそ
れぞれフィードバック補償回路111aに入力する。
【0041】フィードバック補償回路111aは、位置補
償回路110aは補償位置信号xcを入力し、位置ゲインK
p、位置積分ゲインKpIを用いて次の(式11)で表さ
れるPI演算を行うことにより位置補償速度信号vcxを
出力し、速度補償回路109aは位置補償速度信号vcxと
補償速度信号vcの和信号を入力し、速度ゲインKvを乗
じて補償トルク信号τcを出力する。
【0042】
【数7】
【0043】次に位置制御回路13bは、フィードフォワ
ードトルク信号τfと補償トルク信号τcの和信号をトル
ク指令信号τrとしてトルク制御回路6に入力し、トル
ク制御回路5は電動機トルクτMがトルク指令信号τrに
一致するように制御することにより電動機の動作を制御
する。
【0044】次に、機械系5が機械共振特性を有する場
合の位置制御回路13bの調整方法について説明する。機
械系5が機械共振特性を有するとき、電動機トルクτM
から電動機回転速度vMまでの伝達関数は、低周波側か
ら反共振特性と共振特性が交互に表れる特性を有する。
通常は最も低周波にある共振特性の振動が最も問題にな
るため、機械系5が、共振特性が一つだけある二慣性系
である場合を代表として説明する。すなわち機械系5と
して、イナーシャJMの電動機1とイナーシャJLの負荷
機械2が、イナーシャが理想的に零で減衰の無いバネで
あるトルク伝達部3でつながれているとして説明する。
このとき、機械系5の電動機トルクτMから電動機回転
速度vMまでの伝達関数をGM(s)、電動機トルクτM
から負荷機械2の回転速度までの伝達関数をGL(s)
と表記すると、GM(s)およびGL(s)はそれぞれ次
の(式12)、(式13)で表される。
【0045】
【数8】
【0046】ここで、ωzは反共振周波数、ωpは共振周
波数である。Jは機械系の総イナーシャであり、二慣性
系の場合は電動機1のイナーシャJMと負荷機械2のイ
ナーシャJLの和である。
【0047】次に、機械系5が上記の二慣性系とし、さ
らにトルク制御回路6の伝達特性は理想的に1であると
して説明する。まず、第一の従来技術と同様に総イナー
シャJを用いて次の(式14)でフィードバックループ
の交差周波数ωcを定義しておく。
【0048】
【数9】
【0049】図4は、機械系5が上記のように二慣性系
である場合に、フィードバック補償回路11bに本発明の
調整方法を施した場合のフィードバックループの一巡伝
達関数のゲイン線図を折れ線近似で表す。二慣性系の振
動を抑制することを目的とすると、電動機回転速度vM
を比例フィードバックすることにより振動成分がフィー
ドバックされ振動を減衰させる効果がある。しかしなが
ら、速度比例ゲインを無限大に大きくすると電動機の動
きを固定することになり、負荷機械だけが振動するよう
な現象を起こす。したがって振動を減衰させるには速度
比例ゲインが小さすぎず、また大きすぎない範囲にある
必要がある。その範囲は、フィードバックループの一巡
伝達関数のゲイン特性において、共振周波数付近のピー
ク特性が0[dB]より大きく、反共振周波数付近のノ
ッチ特性が0[dB]より小さくなるような範囲であ
る。
【0050】図5は簡単のために位置ゲインKpと位置
積分ゲインKpIを0にし、速度ゲインKvを変化させた
ときの振動の減衰率を示している。図5では、横軸とし
てフィードバックループの交差周波数ωcの反共振周波
数ωzに対する比(ωc/ωz)をとり、負荷機械2のイ
ナーシャJLの電動機1のイナーシャJMに対する慣性比
r(=JL/JM)を変えて示している。図5においてω
c/ωzが1のときは反共振のノッチの根元が0[dB]
となるときであり、図中で○を付した点は共振ピークの
根元が0[dB]となる点である。図5より、振動の減
衰が最大となるのはωcがωzの1倍より小さい範囲であ
ることが分かる。また、慣性比rが大きい場合には反共
振周波数ωzと共振周波数ωpの距離が大きくなるため振
動の減衰が大きく得られる範囲も広くなるが、ωcをωz
の0.5倍より小さくしても振動の減衰がより大きくな
ることはないことがわかる。また、外乱に対する応答を
考えるとωcはなるべく大きい方が良い。従って、振動
抑制と外乱に対する応答の両方を考慮すると、速度補償
回路9の速度ゲインKvは0.5以上1以下の定数nω
を用いて次の(式15)の二慣性系最適ゲインKoptに
調整することにより、振動抑制と外乱に対する応答の高
速性を同時に考慮した調整がなされる。
【0051】
【数10】
【0052】さらにnωの値に関しては、慣性比rが2
より小さい場合においても、できるだけ大きな減衰が得
られるような汎用性、また外乱に対する応答をなるべく
速くすることを考慮すると、図5より0.7以上、1未
満の値が望ましい。このため、本実施の形態ではnωを
0.8とし、このKoptを二慣性系最適ゲインと呼ぶこ
ととする。
【0053】また、位置補償回路の制御パラメータであ
る位置ゲインKpと位置積分ゲインKpIの調整方法は第
一の従来技術と同様にし、次の(式16)、(式17)
を用いるとする。
【0054】
【数11】
【0055】次に、上記の説明ではトルク制御回路6の
伝達特性が理想的に1であるとしたが、実際には位相遅
れなどのモデル誤差が存在するため上記の二慣性系最適
ゲインを選ぶと不安定になる場合もある。したがって、
安定な制御を行うためには位相遅れの影響で不安定にな
らないための限界を確認する必要がある。ナイキストの
安定定理よりフィードバックループの一巡伝達関数の周
波数応答において、位相が−180[deg]以下とな
る周波数領域でゲインが0[dB]以下ならば安定は保
証される。したがって制御対象7のトルク指令信号τr
から電動機回転速度vMまでの伝達関数をG(s)と表
記し、G(s)の周波数応答が分かったとすると、予め
設定した0以上の設定位相余裕θmと1以上の設定ゲイ
ン余裕Gmを用いて、上記G(s)の位相が−180+
θm[deg]となる最も低い周波数を安定限界周波数
ωstと呼ぶとし、安定限界周波数ωstより高周波領域に
おけるG(s)の最大ゲインGmaxを用いて、速度比例
ゲインが次の(式18)で表される限界ゲインKmaxよ
り小さければ制御系の安定は保証される。
【0056】
【数12】
【0057】したがって上記二慣性系最適ゲインKopt
と限界ゲインKmaxとを比較し、小さい方を速度ゲイン
Kvに選択することにより、モデル誤差に対する安定が
保たれる範囲でなるべく振動抑制効果と外乱に対する応
答の高速性が得られるような制御の調整が可能になる。
【0058】次に、フィードフォワード回路12bの調整
方法について説明する。フィードフォワード回路12bの
制御系の構成は第一の従来技術と全く同じもので、フィ
ードフォワード回路12bは剛体イナーシャモデル回路17
bを有し、制御対象7の伝達特性が剛体機械と一致する
場合に電動機回転位置xMを位置指令信号xrに対して任
意に調整した速さで良好な形に応答させることが可能な
ものだが、機械系5が二慣性系の場合でも、フィードフ
ォワード回路12bでイナーシャ推定値Jeに機械系5の
総イナーシャJを用いると、負荷機械2の動作を位置指
令信号xrに追従させることを目的とすると、フィード
フォワード回路12bをそのまま用いて、反共振周波数ω
zより高い周波数帯域まで負荷機械2を比較的良好に追
従させることが可能である。また、どのような制御装置
を用いても、負荷機械2の動作を反共振周波数ωzより
高い周波数帯域まで追従させようとすると、電動機1と
負荷機械2との動作の差すなわちトルク伝達部3のねじ
れを大きく励起してしまい、機械系5に無理を与えてし
まう問題を生じる。したがって、フィードフォワード回
路12bによって調整する位置指令信号xrに対する目標
値応答の速さは反共振周波数ωzを基準に設定するのが
良い。したがって本実施の形態では位置指令信号xrに
対する応答の速さを決めるための目標値応答速度調整パ
ラメータであるモデル制御ループの交差周波数ωcrを予
め設定した定数nrを用いて次の(式19)にしたがっ
て反共振周波数の定数倍に調整し、フィードフォワード
回路12bの他の調整パラメータであるモデル速度ゲイ
ンKrvとモデル位置ゲインKrpは第一の従来技術のフィ
ードフォワード回路12aと同様に次の(式20)、
(式21)で調整する。
【0059】
【数13】
【0060】ただし(式19)において本実施の形態で
はnr=1としている。
【0061】上記のようなフィードフォワード回路12b
の調整により、トルク伝達部3のねじれを大きく励起し
ない、すなわち機械系5に無理を与えない範囲で位置指
令信号xrに対する電動機回転位置xMおよび負荷機械2
の回転位置の応答を速く制御することが可能になる。
【0062】次に本実施の形態の自動調整回路28aの動
作について上記で説明した図1、図2、図6、図7を用
いて説明する。図6、図7は機械共振特性をもつ二慣性
系に近似できる機械を使い、この実施の形態1の自動調
整を実際に実験を行ったときの動作と効果を説明する図
である。
【0063】まず、自動調整を行うときは、スイッチ26
をb)に切り替え、駆動試験用トルク指令信号発生回路
27が例えば疑似ランダム信号などのトルク指令信号τr
を制御対象7に出力して駆動試験を行い、そのときのト
ルク指令信号τrと電動機回転速度vMを自動調整回路28
aに入力する。
【0064】次に、自動調整回路28aでは、高次モデル
同定部29にトルク指令信号τrと電動機回転速度vMを入
力し、内蔵している高次の伝達関数モデルのパラメータ
を例えば最小二乗法を用いて計算することにより制御対
象7のトルク指令信号τrから電動機速度vMまでの伝達
関数G(s)の詳細な同定を行い、高次モデル同定部29
は同定結果の高次モデルを出力する。
【0065】次に、機械パラメータ推定部30aでは高次
モデル同定部29が出力した高次モデルを入力し、最も小
さい複素零点の絶対値を推定反共振周波数ωzeとして選
び、高次モデルの低周波領域のゲイン特性から総イナー
シャJを推定して推定イナーシャJeとし、上記の推定
反共振周波数ωzeと推定イナーシャJeを出力する。
【0066】次に、二慣性系最適ゲイン計算部31は上記
の推定反共振周波数ωzeと推定イナーシャJeを入力
し、上記(式15)において反共振周波数ωz、総イナ
ーシャJの変わりに上記のそれぞれの推定値ωze、Je
を用いて二慣性系最適ゲインKoptを計算し出力する。
【0067】次に、周波数応答推定部32では上記同定結
果の高次モデルを入力し、その周波数応答を計算し出力
する。次に、限界ゲイン推定部33では周波数応答推定部
32が出力した周波数応答を入力し、予め設定した0以上
の設定位相余裕θmと1以上の設定ゲイン余裕Gmを用い
て上記の方法に基づき上記の最大ゲインGmaxを求め、
上記(式18)を用いて限界ゲインKmaxを計算して出
力する。図6は上記の実験において周波数応答推定部32
が出力した同定結果の高次モデルの周波数応答と、機械
パラメータ推定部30aで推定された推定イナーシャJe
の剛体の特性を表すゲイン特性、推定反共振周波数ωze
および上記の安定限界周波数ωstおよび最大ゲインGma
xを示す。
【0068】次に、制御パラメータ決定部34aでは、上
記二慣性系最適ゲインKoptと上記限界ゲインKmaxと上
記の推定イナーシャJeおよび上記の推定反共振周波数
ωzeを入力し、KoptとKmaxのうち小さい方を速度補償
回路9bの速度ゲインKvとして決定し、上記フィード
バックループの交差周波数ωcを上記(式14)で総イ
ナーシャJの代わりに推定イナーシャJeを用いて求
め、フィードバック補償回路11bの制御パラメータ、
すなわち位置補償回路10bの位置ゲインKpおよび位
置積分ゲインKpIは(式16)および(式17)を用い
て決定する。また、フィードフォワード回路12bの調整
パラメータは、剛体イナーシャモデル回路17bのパラメ
ータに推定イナーシャJeを用い、モデル速度制御回路1
9bのモデル速度ゲインKrvは反共振周波数ωzの変わり
にその推定反共振周波数ωzeを用い、(式19)、(式
20)を用いて決定し、モデル位置制御回路20bのモデ
ル位置ゲインKrpは(式21)を用いて決定する。次
に、適当な調整手段を用いフィードフォワード回路12b
の制御パラメータを上記の自動調整回路28aで決定した
調整パラメータに調整する。
【0069】本実施の形態においては、図2の構成によ
る動作および(式20)、(式21)により、フィード
フォワードトルク信号τfは、位置指令信号Xrから、次
の(式22)の伝達関数演算で演算され、目標値応答速
度調整パラメータであるモデル制御ループの交差周波数
ωcrの1/2が、伝達関数演算の極の大きさであり、
目標値応答速度(応答周波数帯域)を決定づける。従っ
て、交差周波数ωcrを推定反共振周波数ωzeのnr
倍に調整することにより、フィードフォーワード回路の
伝達関数演算の極を推定反共振周波数の(nr/2)倍
に設定する。
【0070】
【数14】
【0071】上記のような自動調整回路28aの動作によ
り、モデル誤差に対して安定を保つ範囲で振動抑制と外
乱に対する応答の高速性を得るような調整と、機械系5
に無理を与えないような範囲で位置指令信号xrに対す
る電動機回転位置xMおよび負荷機械2の回転位置の応
答を高速化する制御の調整を自動的に行うことが可能に
なる。
【0072】図7は、上述の実験においてこの実施の形
態1により自動調整された結果を用いた場合の位置指令
信号xrに対する電動機回転位置xMの応答と、第一の従
来技術を用い、機械系5の総イナーシャJを正確に推定
した後、フィードバックループの交差周波数ωc、モデ
ル制御ループの交差周波数ωcrを適当に調整した場合の
応答を示す。図7に示した例では自動的に上記の二慣性
系最適ゲインが選択されており、第一の従来技術と比較
して振動が抑制され、応答が遅くなり過ぎず、良好な応
答を示していることがわかる。
【0073】上記のように、本実施の形態においては、
複雑な制御パラメータを設定することなく、機械系の振
動を抑制し、外乱に対する応答をなるべく速くするよう
な調整を行える効果を有する。また、モデル誤差に対す
る安定性を確保した範囲でなるべく速度ゲインを大きく
するような調整を行える効果を有する。また、モデル誤
差に対する安定性を確保した範囲でなるべく機械系の振
動を抑制し、外乱に対する応答を速くするような調整を
行える効果を有する。さらに、電動機で駆動する機械系
の動作の指令信号に対する応答を機械系に負担を与えな
い範囲でなるべく速くするような調整を行える効果を有
する。
【0074】実施の形態2.以下、本発明の別の実施の
形態を図を用いて説明する。上記実施の形態1における
電動機制御装置は電動機の位置を制御するものであった
が、電動機の速度を制御する電動機制御装置において自
動調整回路を用いても良い。また実施の形態1ではフィ
ードフォワード回路12bを用いて目標値応答の速さを独
立に調整できる二自由度制御装置を用いていたが、目標
値応答の速さを完全に独立には調整できない例えば通常
のPI制御装置や二自由度PI制御装置を用いても良
い。
【0075】図8に本実施の形態2に用いられる、二自
由度PI制御装置と呼ばれる制御装置の構造をした、速
度を制御する電動機制御装置の構成のブロック図を示
す。図8において図1と同一符号は同一部分を表す。16
cは制御パラメータ調整信号、28bは自動調整回路、21
は速度指令信号発生回路、35は第一の分配係数器、36は
第二の分配係数器、37は速度比例回路、38は速度積分回
路、39は第一の分配係数器35と第二の分配係数器36と速
度比例回路37と速度積分回路38を含む速度制御回路であ
る。
【0076】次に、図9は自動調整回路28bの詳細を表
すブロック図である。図9において図3および図8と同
一符号は同一部分を表し、その説明を省略する。34bは
制御パラメータ決定部である。
【0077】次に、速度制御回路39の動作について説明
する。まず、電動機回転速度vMを制御するときはスイ
ッチ26をa)に接続する。速度制御回路39は二自由度P
I制御器と呼ばれる構成をしており、速度指令信号発生
回路8が出力した速度指令信号Vrと電動機速度vMとの
差信号を第一の分配係数器35と速度積分回路38に入力す
る。次に、第一の分配係数器35はその入力に0乃至1の
定数である分配係数αを乗じた信号を出力する。次に速
度積分回路39はその入力を積分して速度積分ゲインKvI
を乗じた信号を出力する。次に、電動機回転速度vMを
第二の分配係数器36に入力し、第二の分配係数器36はそ
の入力に上記の分配係数αを用いて(1−α)を乗じた
信号を出力する。次に、上記第一の分配係数器35の出力
と上記第二の分配係数器36の出力の−1倍の信号と上記
速度積分回路38の出力との和信号を速度比例回路37に入
力し、速度比例回路37はその入力に速度ゲインKvを乗
じたした信号をトルク指令信号τrとしてトルク制御回
路6に出力する。次にトルク制御回路6は電動機トルク
τMがトルク指令信号τrに一致するように制御すること
により電動機回転速度vMが速度指令信号vrに一致する
ように制御する。
【0078】ここで、電動機回転速度vMは第一の分配
係数器35と第二の分配係数器36の二つの回路を通ってト
ルク指令τrにフィードバックされているが、第一の分
配係数器35のゲインαと第二の分配係数器36のゲイン
(1−α)の和は1であるため、速度比例回路37の速度
ゲインKvがフィードバックループ全体の速度ゲインと
なる。
【0079】次に速度制御回路39の調整方法を説明す
る。まず、制御対象7の特性がイナーシャJの剛体機械
に近似可能な場合には、フィードバックループの交差周
波数ωc[rad/sec]が決められたとすると、速
度制御回路39の制御パラメータは次の(式23)、(式
24)のように調整することにより良好な外乱応答の形
が得られる。
【0080】
【数15】
【0081】また、速度指令信号vrに対する目標値応
答に関しては、第一の分配係数器35と第二の分配係数器
36に共通の調整パラメータαを次の(式25)のような
定数に選ぶことにより、フィードバックループの速度ゲ
インKvと速度指令信号に対する目標値応答の速さを独
立に調整する事はできないが、オーバーシュートの無い
速やかな応答をする。
【0082】
【数16】
【0083】次に、機械系5が機械共振特性を有する場
合の調整方法は、トルク制御回路6の伝達特性が理想的
に1であるとして機械系5が二慣性系に近似できるとす
ると、速度比例回路37の速度ゲインKvは上記実施の形
態1の速度補償回路9bの速度ゲインKvと全く同様に
(式15)の二慣性系最適ゲインKoptに調整し、この
ときの(式14)で表されるフィードバックループの交
差周波数ωcを用いて上記の速度積分ゲインKvIと、第
一および第二の分配係数器の調整パラメータαを(式2
4)、(式25)のように調整することにより振動抑制
と外乱に対する応答の高速性と目標値応答特性の良好な
応答が得られる。
【0084】図10は計算機シミュレーションで機械系
5を二慣性系とし、トルク制御回路6の伝達特性が理想
的に1であるとしたときに、本実施の形態2を用いて調
整した場合のステップ状の速度指令信号vrに対する電
動機回転速度vMと負荷機械2の回転速度の時間応答を
示す。図10より機械系5は振動せず、回転速度が良好
に制御されることが分かる。
【0085】また、実際にはトルク制御回路6に位相遅
れなどのモデル誤差があるため安定の限界の把握をする
必要があるが、その方法は実施の形態1における限界ゲ
インKmaxを同様に求め、上記のKoptとKmaxの小さい
方を速度ゲインKvとし、(式14)、(式24)、
(式25)を用いて調整すれば、モデル誤差に対する安
定が保たれる範囲で振動抑制と外乱に対する応答の高速
性が得られるような制御の調整が可能になる。
【0086】次に、図9の自動調整回路28bの動作は図
3に示す実施の形態1の自動調整回路28aにおいて制御
パラメータ決定部34b以外の部分は同様であり、その説
明を省略する。制御パラメータ決定部34bは、上記の推
定イナーシャJeと推定反共振周波数ωzeと二慣性系最
適ゲインKmaxと限界ゲインKmaxを入力し、二慣性系最
適ゲインKmaxと限界ゲインKmaxの小さい方を速度ゲイ
ンKvとし、機械系5の総イナーシャJの代わりに推定
イナーシャJeを用いて上記の速度積分ゲインを、(式
14)、(式24)に従い調整する。また、第一および
第二の分配係数器の調整パラメータαは(式25)のよ
うに固定している。
【0087】上記のように、本実施の形態においては、
モデル誤差に対して安定な範囲で振動抑制と外乱に対す
る応答の高速性を得るような調整を自動的に行うことが
可能となる。ここで、本実施の形態では二自由度PI制
御とよばれる簡単な制御系の構成をしており、速度指令
信号vrに対する応答の速さを完全には独立に調整でき
ないため、モデル誤差に対する安定性のために限界ゲイ
ンKmaxが速度ゲインKvに選ばれた場合は、上記実施の
形態1とは異なり、目標値応答すなわち速度指令信号v
rに対する応答も遅くなる。
【0088】実施の形態3.以下、本発明の別の実施の
形態を図を用いて説明する。上記実施の形態1における
電動機制御装置のフィードフォワード回路12bは、制御
対象7の伝達特性が剛体機械と同じ場合に位置指令信号
xrに対する電動機回転位置xMが理想的に応答するよう
にフィードフォワードトルク信号τfを演算していた
が、機械系5が機械共振特性を有する二慣性系である場
合に負荷機械2の回転位置が理想的な応答するようにフ
ィードフォワードトルク信号τfを演算するような構成
にしても良い。
【0089】図11に実施の形態3に用いられる電動機
制御装置の全体のブロック構成図を示す。図1と同一符
号は同一部分を表し、その説明は省略する。12cはフィ
ードフォワード回路、13cはフィードフォワード回路12
cとフィードバック補償回路11bを含む位置制御回路、
28cは自動調整回路、16dは制御パラメータ調整信号で
ある。図11は図1と比べてフィードフォワード回路12
cの構成が異なり、制御パラメータ調整信号16dと自動
調整回路28cの動作が一部異なるものである。
【0090】図12はフィードフォワード回路12cの詳
細を表すブロック図である。図11と同一符号は同一部
分を表す。40は応答目標負荷位置信号生成フィルタ、41
はフィードフォワードトルク信号生成フィルタ、42は応
答目標電動機位置信号生成フィルタ、43は微分回路であ
る。
【0091】図13は自動調整回路28cの詳細を示すブ
ロック図であり、図3および図11と同一符号は同一部
分を表す。30bは機械系5の総イナーシャJと反共振周
波数ωzと共振周波数ωpを推定する機械パラメータ推定
部である。34cは制御パラメータ決定部である。
【0092】次に、位置制御回路13cと制御対象7から
構成される制御系の動作および調整方法について説明す
る。図11の制御系の構成において上記の図1の制御系
の構成とフィードフォワード回路以外の部分は全く同じ
であり説明を省略し、フィードフォワード回路12cの動
作とその調整方法について説明する。
【0093】次に、フィードフォワード回路12cの動作
を説明する。まず、位置指令信号xfをフィードフォワ
ード回路12cに入力する。フィードフォワード回路12c
はトルク制御回路6の伝達特性が理想的に1で、機械系
5の伝達特性が上記の(式12)、(式13)のような
減衰が無視できる二慣性系であるときに、位置指令信号
xrに対して負荷機械2の回転位置を理想的に応答させ
るようなフィードフォワードトルク信号τf、およびそ
のときの予想される電動機回転位置xMの応答を応答目
標位置信号xf、予想される電動機回転速度vMの応答を
応答目標速度信号vfとして出力する回路である。フィ
ードフォワード回路12cでは、応答目標負荷位置信号生
成フィルタ40が位置指令信号xrを入力し、負荷機械2
の回転位置の理想的な応答として、位置指令信号xfに
対する応答の速さを調整する目標値応答速度調整パラメ
ータωrを用いて次の(式26)の演算を行い、応答目
標負荷位置信号xLfを出力する。(式26)では伝達関
数が上記のωrの4重根を持つように構成しており、位
置指令信号xrに対して応答目標負荷位置信号xLfがオ
ーバーシュート無く良好な形で応答するように構成して
いる。
【0094】
【数17】
【0095】次に、機械系5において電動機トルクτM
から電動機回転速度vMまでの伝達関数および電動機ト
ルクτMから負荷機械2の回転速度までの伝達関数が、
機械系5の総イナーシャJ、反共振周波数ωz、共振周
波数ωpを用いて、それぞれ上記の(式12)、(式1
3)で表される二慣性系の場合は、フィードフォワード
トルク信号生成フィルタ41は応答目標負荷位置信号xLf
を入力し、総イナーシャJの推定値であるイナーシャ推
定値Jeおよび共振周波数ωpの推定値である推定共振周
波数ωpeを用いて(式13)の逆関数の微分に相当する
次の(式27)の伝達関数演算において(式26)を用
いることによりフィードフォワードトルク信号τfを出
力する。なお、ここで、目標値応答速度調整パラメータ
ωrが、伝達関数演算の極であり、目標値応答速度(応
答周波数帯域)を決定づける。従って、目標値応答速度
調整パラメータωrを推定反共振周波数ωzeのnr倍
に調整することにより、フィードフォーワード回路の伝
達関数演算の極を推定反共振周波数の定数倍に調整す
る。
【0096】
【数18】
【0097】次に、応答目標電動機位置信号生成フィル
タ42は応答目標負荷位置信号xLfを入力し、機械系5の
反共振周波数ωzの推定値ωzeを用いて、(式12)と
(式13)の右辺の比に相当する次の(式28)の演算
により電動機回転位置xMの応答目標信号である応答目
標位置信号xfを出力し、微分回路43は応答目標位置信
号xfを入力して微分動作を行うことにより応答目標速
度信号vfを出力する。
【0098】
【数19】
【0099】上記のようにフィードフォワード回路12c
が位置指令信号xrを入力してフィードフォワードトル
ク信号τfと応答目標位置信号xfと応答目標速度信号v
fを出力することにより、トルク制御回路6の伝達特性
が理想的に1で機械系5の特性が(式12)および(式
13)に一致し、上記の機械パラメータの推定値Je、
ωze、ωpeが正確に推定されている場合は、フィードフ
ォワードトルク信号τfをトルク指令信号τrとして制御
対象7を駆動することにより、電動機回転位置xMは応
答目標位置信号xfに、電動機回転速度vMは応答目標速
度信号vfに、負荷機械回転位置xLは応答目標負荷位置
信号xLfに一致する。したがって位置指令信号xfに対
して負荷機械回転位置xLはオーバーシュート無く良好
な形で応答し、またその応答の速さは目標値応答速度調
整パラメータωrの調整によって任意に変えることがで
きる。
【0100】次にフィードフォワード回路12cの調整方
法について説明する。フィードフォワードトルク信号生
成フィルタ41の調整パラメータである推定イナーシャJ
e、推定反共振周波数ωze、推定共振周波数ωpeには、
それぞれ機械系5の総イナーシャJ、反共振周波数ω
z、共振周波数ωpの推定値を用いる。機械系5が二慣性
系で上記の推定値が正確とすると、応答目標負荷位置信
号生成フィルタ40の調整パラメータである目標値応答速
度調整パラメータωrを調整することにより、位置指令
信号に対する負荷機械の回転位置の応答を理論的には任
意の速さに調整可能である。しかし、上記の実施の形態
1の説明で述べたように、負荷機械2の動作を反共振周
波数ωzより高い周波数帯域まで追従させようとする
と、電動機1と負荷機械2との動作の差すなわちトルク
伝達部3のねじれを大きく励起してしまい、機械系5に
無理を与えてしまう問題を生じる。従って、目標値応答
速度調整パラメータωrを予め設定した定数nr2を用い
て次の(式29)に従い反共振周波数の定数倍に調整す
ることにより、機械系5に負担をかけない範囲で速い応
答を得る効果が得られる。
【0101】
【数20】
【0102】図14は計算機シミュレーションで機械系
5を二慣性系とし、トルク制御回路6の伝達特性が理想
的に1であるとした場合に、本実施の形態3を用いて調
整したときのステップ状の位置指令信号xrに対する電
動機回転位置xMと負荷機械2の回転位置の時間応答を
示す。ここで、図14の例では、(式29)における設
定定数nr2は2.7としている。図14より位置指令信
号xMに対して電動機回転位置xMの応答を振ることによ
り、負荷機械2の回転位置は理想的な応答になっている
ことがわかる。なお、上記の定数nr2をこれ以上大きな
値とすると、負荷機械2の回転位置はオーバーシュート
の無い理想的な形のまま速くなるが、電動機回転位置x
Mの応答が大きくオーバーシュートさせた後に戻るよう
になり、すなわちトルク伝達部3のねじれが大きくなっ
て機械系5に無理を与えるため、nr2は2.7より小さ
い値を選ぶ方がよいことがわかる。
【0103】次に、自動調整回路28cの動作について説
明する。自動調整回路28cの機械パラメータ推定部30b
と制御パラメータ決定部34c以外の部分は実施の形態1
の図3と同様でありその説明を省略する。
【0104】機械パラメータ推定部30bでは、高次モデ
ル同定部29で同定された高次モデルを入力し、例えば最
も小さい複素零点の絶対値を推定反共振周波数ωze、最
も小さい複素極の絶対値を推定共振周波数ωpeとし、ま
た低周波領域の高次モデルのゲイン特性から機械系5の
総イナーシャJを推定イナーシャJeとして推定し、推
定イナーシャJeと推定反共振周波数ωzeと推定共振周
波数ωpeを出力する。
【0105】次に、制御パラメータ決定部34cでは、推
定イナーシャJeと推定反共振周波数ωzeと推定共振周
波数ωpeと二慣性系最適ゲインKoptと限界ゲインKmax
を入力し、フィードバック補償回路11bの制御パラメ
ータは上記実施の形態1と同様に決定し、フィードフォ
ワード補償回路12cの制御パラメータは推定イナーシャ
Jeと推定反共振周波数ωzeと推定共振周波数ωpeを用
い、また予め設定された定数nr2と反共振周波数ωzの
変わりに推定反共振周波数ωzeを用いて(式29)の演
算により目標値応答速度調整パラメータωrを決定す
る。
【0106】上記のように、モデル誤差に対して安定を
保つ範囲で振動抑制と外乱に対する応答の高速性を得る
ような調整と、機械系5に無理を与えないような範囲で
位置指令信号xrに対して特に負荷機械2の回転位置の
応答を高速かつ正確に制御するような調整を自動的に行
うことが可能になる。
【0107】なお、上記説明では電動機速度を比例倍し
てフィードバックするループのゲインを速度ゲインKv
として調整したが、そのループにローパスフィルタなど
が挿入されてるような制御装置においても、最も小さな
反共振周波数付近の特性が比例フィードバックに近けれ
ば同様に利用できることは言うまでもない。
【0108】
【発明の効果】この発明に係る電動機制御方法は、電動
機の回転速度あるいは回転位置を制御するための指令信
号を元に生成されたトルク指令信号により、上記電動機
の回転トルクを制御して、電動機の回転速度あるいは回
転位置を制御する電動機制御方法であって、上記指令信
号以外の外乱に対する電動機の回転速度あるいは回転位
置の応答である外乱応答の特性を変更しないまま上記指
令信号に対する上記電動機の回転速度あるいは回転位置
の応答である目標値応答の特性を変更するフィードフォ
ワード回路を備え、上記目標値応答の速さを調整するた
めの上記フィードフォード回路の調整パラメータである
目標値応答調整パラメータを、電動機の回転トルクで駆
動する機械系の最も小さい反共振周波数ωzの推定値で
ある推定反共振周波数ωzeに所定の定数を乗じた値に
なるように決定するものであり、電動機によって駆動さ
れる機械系が機械共振特性を有する場合にも、制御装置
の構造には依存せず、剛体を制御するときと同様な簡単
な構造の制御装置であっても、振動の抑制と、外乱に対
する応答の高速性と、モデル誤差に対する安定性と、振
動を励起しなく機械系に無理を与えない範囲で動作の指
令信号に対する応答の高速性を同時に考慮した、最適な
制御パラメータの調整を自動的に行うことができ、機械
系に負担を与えない範囲で機械系の動作の応答をなるべ
く速くすることが可能であるという効果を有する。
【0109】また、この発明は、電動機の回転速度ある
いは回転位置を制御するための指令信号を元に生成され
たトルク指令信号により、上記電動機の回転トルクを制
御して電動機の回転速度あるいは回転位置を制御する電
動機制御方法であって、上記指令信号を入力して極を有
する伝達関数演算によりフィードフォワードトルク信号
τfを演算してトルク指令信号に加算するフィードフォ
ワード回路を備え、上記フィードフォワード回路におけ
る上記所定の伝達関数演算の極の大きさを電動機の回転
トルクで駆動する機械系の最も小さい反共振周波数ωz
の推定値である推定反共振周波数ωzeに所定の定数を
乗じた値になるように決定する電動機制御方法であるの
で、機械系のねじれを大きくし過ぎることなく、すなわ
ち、機械系に負担を与えない範囲で機械系の動作の応答
をなるべく速くすることが可能になるという効果を有す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1に用いられる電動機制
御装置の構成を表すブロック図である。
【図2】 本発明の実施の形態1の電動機制御装置のフ
ィードフォワード回路のブロック図である
【図3】 本発明の実施の形態1の電動機制御装置の自
動調整回路のブロック図である。
【図4】 本発明の実施の形態1の調整結果を表すフィ
ードバックループの一巡伝達関数の折れ線近似ゲイン線
図である。
【図5】 制御対象が二慣性系の場合の速度ゲインと振
動の減衰率の関係を表す図である。
【図6】 本発明の自動調整を実施した実験における制
御対象の同定結果を表す周波数応答である。
【図7】 本発明の実施の形態1の効果を表す実験にお
ける電動機回転位置の応答である。
【図8】 本発明の実施の形態2に用いられる電動機制
御装置の構成を表すブロック図である。
【図9】 本発明の実施の形態2の電動機制御装置の自
動調整回路のブロック図である。
【図10】 本発明の実施の形態2の効果を表すシミュ
レーションにおける電動機回転速度と負荷機械の回転速
度の応答である。
【図11】 本発明の実施の形態3に用いられる電動機
制御装置の構成を表すブロック図である。
【図12】 本発明の実施の形態3の電動機制御装置に
おけるフィードフォワード回路のブロック図である。
【図13】 本発明の実施の形態3の電動機制御装置の
自動調整回路のブロック図である。
【図14】 本発明の実施の形態3の効果を表すシミュ
レーションにおける電動機回転速度と負荷機械の回転速
度の応答である。
【図15】 第一の従来技術の電動機制御装置の構成を
表すブロック図である。
【図16】 第一の従来技術の電動機制御装置のフィー
ドフォワード回路のブロック図である。
【図17】 第二の従来技術の電動機制御装置の構成を
表すブロック図である。
【符号の説明】
1 電動機、2 負荷機械、3 トルク伝達部、4 回
転検出器、5 機械系、6 トルク制御回路、7 制御
対象、8 位置指令信号発生回路、9b 速度補償回
路、10b 位置補償回路、11b フィードバック補
償回路、12b、12c フィードフォワード回路、1
3b,13c 位置制御回路、14 負荷外乱トルクτ
d、15 イナーシャ推定回路、16b,16c,16
d 制御パラメータ調整信号、17b 剛体イナーシャ
モデル回路、18 積分回路、 19b モデル速度制
御回路、20b モデル位置制御回路、21 速度指令
信号発生回路、22 速度制御回路、23 外乱推定回
路、24 推定外乱増幅器、25 位相進み増幅器、2
6 スイッチ、27 駆動試験用トルク指令信号発生回
路、28a,28b,28c 自動調整回路、29 高
次モデル同定部、30a,30b 機械パラメータ推定
部、31 二慣性系最適ゲイン計算部、32周波数応答
推定部、33 限界ゲイン推定部、34a,34b,3
4c 制御パラメータ決定部、35 第一の分配係数
器、36 第二の分配係数器、37 速度比例回路、3
8 速度積分回路、39 速度制御回路、40 応答目
標負荷位置信号生成フィルタ、41 フィードフォワー
ドトルク信号生成フィルタ、42応答目標電動機位置信
号生成フィルタ、43 微分回路。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−42502(JP,A) 特開 平4−304181(JP,A) 特開 平4−317578(JP,A) 特開 平4−325886(JP,A) 特開 平6−319284(JP,A) 特開 平8−23691(JP,A) 特開 平8−168280(JP,A) 特開 昭60−190180(JP,A) 特開 昭63−706(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02P 5/00 G05B 11/32 G05B 11/36

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電動機の回転速度あるいは回転位置を制
    御するための指令信号を元に生成されたトルク指令信号
    により、上記電動機の回転トルクを制御して、電動機の
    回転速度あるいは回転位置を制御する電動機制御方法で
    あって、 上記指令信号以外の外乱に対する電動機の回転速度ある
    いは回転位置の応答である外乱応答の特性を変更しない
    まま上記指令信号に対する上記電動機の回転速度あるい
    は回転位置の応答である目標値応答の特性を変更するフ
    ィードフォワード回路を備え、 上記目標値応答の速さを調整するための上記フィードフ
    ォード回路の調整パラメータである目標値応答調整パラ
    メータを、電動機の回転トルクで駆動する機械系の最も
    小さい反共振周波数ωzの推定値である推定反共振周波
    数ωzeに所定の定数を乗じた値になるように決定する
    ことを特徴とする電動機制御方法。
  2. 【請求項2】 電動機の回転速度あるいは回転位置を制
    御するための指令信号を元に生成されたトルク指令信号
    により、上記電動機の回転トルクを制御して電動機の回
    転速度あるいは回転位置を制御する電動機制御方法であ
    って、 上記指令信号を入力して極を有する伝達関数演算により
    フィードフォワードトルク信号τfを演算してトルク指
    令信号に加算するフィードフォワード回路を備え、 上記フィードフォワード回路における上記所定の伝達関
    数演算の極の大きさを電動機の回転トルクで駆動する機
    械系の最も小さい反共振周波数ωzの推定値である推定
    反共振周波数ωzeに所定の定数を乗じた値になるよう
    に決定することを特徴とする電動機制御方法。
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