JP5361117B2 - 気体分離膜 - Google Patents
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Description
1)膜面積
2)通気抵抗
3)耐久性
4)製造コスト
を上げることができる。このうち、通気抵抗は気体の供給圧に余裕のある大型装置では大きな問題とならないが、小型高流量処理を旨としながら使用環境に制限の多い小型装置では特に問題となりやすい。
また、液体処理装置では上記に加えて、4)気体透過性に優れた高分子材料からなる平膜を特定のピッチで山折り谷折りを繰り返すことでカーテンやスカートに見られるようなプリーツ加工を施したあと、両端のプリーツ面同士を接着して全体を円筒状に整え、最後に円筒の両端を封止して筒状ハウジングに挿入した、いわゆる「円筒プリーツモジュール」が用いられているが、気体分離装置への応用は殆どない(特許文献3)。
適であることを見出した(特許文献6)。
このうち、窒素富化空気供給装置に使用される酸素富化膜は、気体分離性ポリマーに対する酸素と窒素の溶解拡散速度の差でこれらを分離するものであるが、自動車エンジンへの供給といった産業用途を想定すると気体透過性が非常に低いため、気体分離装置の性能を向上させるために、気体分離膜のパッキング密度を高める工夫(特許文献7)に加えて、気体透過性そのものを改良する必要がある。本発明は、気体分離性ポリマーからなる超薄膜層の構造を制御することで気体透過性そのものを向上しようとするものである。まず、窒素富化空気供給装置についてその改良要求を装置の説明をした上で、以下に具体的に示す。
内燃機関は自動車エンジンに広く用いられているが、燃焼温度が高くなるとよく知られているように窒素と酸素が反応して、窒素酸化物(NOx)を生成・排出する特徴がある。窒素酸化物(NOx)除去システムとしては、ガソリンエンジンでは排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を酸化・還元反応によって同時除去する三元触媒が有効であるが、ディーゼルエンジンでは排気ガス中の酸素濃度の違いから三元触媒が有効に機能しないことが問題とされてきた。
1)酸素共存下でも有効な還元触媒(尿素SCRシステム、LNT触媒システム)
2)機関内部の酸素濃度低減(EGR排気ガス再循環システム)
などが既に知られている。このうち、尿素SCRシステムは既に一部実用化されているが、高価な触媒や尿素水噴射装置、凍結防止装置等が必要であることに加え、発生する窒素酸化物(NOx)の全てを除去するには燃料タンク並に大きな尿素水タンクを設置する必要がある。LNT触媒システムは尿素水のような還元剤の添加なしに窒素酸化物を除去できるが、運転可能範囲が狭い、触媒劣化が大きい等の問題がある。上記の中ではEGRが最も広く用いられているが、中間冷却装置が必要、高負荷では過給圧が排気圧より高くなるため再循環が困難、等の問題がある。すなわち、現在の窒素酸化物除去システムにはいずれも欠点があり、省エネルギーや二酸化炭素(CO2)排出削減の観点からディーゼルエンジンが注目を集める中、より有効な窒素酸化物除去システムの開発が大きな課題となっている。
本発明者らの発明によるボックスプリーツモジュールは、一般的な中空糸モジュールよりも供給口−非透過口間の圧力損失が極めて低いため過給圧を有効に利用できる利点があったが、自動車に余裕を持って搭載できるだけのコンパクト化を達成するには、気体分離膜の気体透過性は必ずしも十分ではなかった。
当業者であれば理解できるように、当初はクレーターの底が欠陥となって分離性を維持できないことが懸念されたが、驚くべき事に本発明によるクレーター構造の気体分離膜は、気体分離性ポリマー単独の場合と同等の分離性を発現しており、かつ、数百mを超える連続形成において欠陥の発生が見られなかったことから本発明を成すに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)多孔質支持膜の少なくとも一方の表面上に気体分離性ポリマーからなる超薄膜層を備える気体分離膜であって、
1)多孔質支持膜は、膜厚5μm以上、40μm以下、気孔率30%以上、95%以下、平均孔径1nm以上、200nm以下の微多孔膜からなり、
2)気体分離性ポリマーがパーフルオロアモルファスポリマーからなり、
3)超薄膜層の平均厚みが100nm以上、400nm以下であり、
4)超薄膜層に、直径0.5μm以上、3μm以下であって、深さが平均厚みの40%以上、100%未満の範囲にある凹状構造が、面積比20%以上、70%以下の範囲で存在し、
5)気体分離膜が50GPU以上の酸素透過速度を有し、かつ酸素と窒素の分離係数αが1.1以上である
ことを特徴とする気体分離膜。
(2)超薄膜層表面のXPSによるC1s強度比が0.002以上、0.05以下であることを特徴とする(1)に記載の気体分離膜。
(3)超薄膜層のAFM表面粗度Raが60nm以上、400nm以下である(1)又は(2)のいずれかに記載の気体分離膜。
(4)微多孔膜がポリオレフィン微多孔膜であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の気体分離膜。
(5)ポリオレフィン微多孔膜がポリエチレン微多孔膜であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の気体分離膜。
(6)気体分離性ポリマーがパーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとテトラフルオロエチレンの共重合体からなることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の気体分離膜。
一般的に、気体分離モジュールは気体分離膜、1次側気体流路、2次側気体流路、ハウジングから構成される。1次側は分離対象となる混合気体の流路であり、2次側は膜を透過した混合気体の流路である。1次側は、膜を選択的に透過する気体成分に着目したとき分圧が高い方と定義されるが、多くの場合は1次側の方が全圧も高い。1次側気体流路には吸気口が設けられ、必要に応じて排気口が設けられる。2次側気体流路には排気口が設けられ、必要に応じて吸気口が設けられる。1次側気体流路の吸気口に分離対象となる混合気体が供給されると混合気体は1次側の膜面に広がり、気体分離膜の選択透過性に従って組成の変化した混合気体が2次側の膜面に透過する。組成の変化した混合気体は2次側の排気口から取り出してそのまま用いることもできるし、2次側に吸気口を設けて外部より供給した別の気体で連続希釈しながら用いることもできる。また、1次側に排気口を設けて透過しなかった混合気体を取り出して用いることもできる。1次側の吸気口、排気口、2次側の吸気口、排気口のことを、それぞれ「供給口、フィード、feed」、「非透過口、リテンテート、retentate」、「掃気口、パージ、purge」、「透過口、パーミエート、permeate」と呼ぶことがある。
本発明の気体分離装置は、本発明の気体分離膜からなる気体分離モジュールと外部回路との接続配管、センサー、制御装置等の補機から構成される。以下、一例として、本発明の気体分離モジュールを内燃機関用窒素富化空気供給装置(窒素富化モジュール)として用いた場合の性能について説明する。
ここで、プリーツエレメントとは本発明の気体分離膜を通気性補強材と積層したものをプリーツ加工した後、外周部を補強フレームで補強した基本要素であり、これをハウジングに収納したものをプリーツモジュールという。以下は窒素富化モジュールとしてプリーツモジュールを用いた際の説明である。
以上のような窒素富化は典型的な気体分離の一例であり、他の気体分離(例えば混合気体からの水素回収や水蒸気回収など)も同様に行うことができる。
本発明において、気体分離膜は多孔質支持膜とその少なくとも一方の表面上に気体分離性ポリマーからなる超薄膜層を備えた複合膜をいう。
気体分離膜の気体透過性は、透過速度と分離係数で表現することが出来る。ここで、透
過速度Rは単位時間、単位面積、単位分圧差における気体透過量で表され、慣習的にGPU(Gas permeation unit)=10−6cm3(STP)/cm2seccmHgという単位が広く使用されている。更に、単位膜厚あたりの透過速度を透過係数Pといい、慣習的にバーラー(barrer)=10−10cm3(STP)cm/cm2seccmHgという単位が広く使用されている。透過速度が膜物性であるのに対して透過係数は素材物性であり、透過係数に優れる素材であっても、必要十分な薄膜化適性を兼ね備えない場合は気体分離に適さないため注意を要する。また、分離係数αは任意の気体の透過係数もしくは透過速度の比である。
その気体分離膜の酸素と窒素の分離係数α(=RO2/RN2)は、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.8以上が更に好ましく、2.0以上がより更に好ましく、2.2以上が特に好ましく、2.4以上が極めて好ましく、2.6以上が最も好ましい。その上限は16以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。分離係数αが1.1より小さい場合は、酸素に随伴して多量の窒素が1次側から透過側へ移動して失われるため好ましくない。分離係数αが高いほど酸素に随伴する窒素の量を抑えることが出来るため好ましいが、一般的に分離係数と透過係数はトレードオフの関係にあるため、16以上の分離係数を高分子材料からなる気体分離膜で到達することは難しい。
本発明において、多孔質支持膜はポリオレフィン微多孔膜であることを特徴とする。より具体的には特許文献7に記載の2軸延伸ポリオレフィン微多孔膜を好適に用いることができる。本発明のポリオレフィン微多孔膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4メチルペンテン、など公知の様々な材質を用いることが出来るが、結晶性が高いことからポリエチレンが好ましい。また、ポリエチレンはエチレンを主体とした結晶性の重合体である高密度ポリエチレンもしくはエチレンとα−オレフィンとの共重合体が好ましく、さらにこれらのポリプロピレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、EPR等のポリオレフィンを30%以下の割合でブレンドしたものでも差し支えない。本発明のポリオレフィン微多孔膜は2軸延伸膜であることが好ましい。1軸延伸膜は同じ面積倍率でも孔が細長く変形するため好ましくない場合がある。
多孔質支持膜の気孔率は、5%以上95%以下である。気孔率の下限は10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましく、40%以上がより更に好ましい。気孔率が5%未満では、気体透過性が不足する場合があり、気孔率が95%を越えると、機械強度が不足する場合がある。
る場合がある。
本発明において、気体分離性ポリマーはパーフルオロアモルファスポリマーであることを特徴とする。より具体的にはパーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールの共重合体が好ましく、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとテトラフルオロエチレンの共重合体がより好ましく、ジオキソールのモル%が40%以上95%以下のものが好ましく、50%以上90%以下のものがより好ましく、64%以上88%以下のものが更に好ましい。
気体分離性ポリマーの透過係数と分離係数は目的とする用途に応じて適切に選択されるが、たとえば内燃機関用窒素富化空気供給装置に用いる場合は以下の値であることが好ましい。すなわち、
気体分離性ポリマーの酸素透過係数Pは、100barrer以上が好ましく、200barrer以上がより好ましく、500barrer以上が更に好ましく、1000barrer以上がより更に好ましく、1500barrer以上が特に好ましく、2000barrer以上が極めて好ましく、2500barrer以上が最も好ましい。
気体分離性ポリマーの酸素と窒素の分離係数α(=RO2/RN2)は、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.8以上が更に好ましく、2.0以上がより更に好ましく、2.2以上が特に好ましく、2.4以上が極めて好ましく、2.6以上が最も好ましい。その上限は16以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。分離係数αが1.1より小さい場合は、酸素に随伴して多量の窒素が1次側から透過側へ移動して失われるため好ましくない。分離係数αが高いほど酸素に随伴する窒素の量を抑えることが出来るため好ましいが、一般的に分離係数と透過係数はトレードオフの関係にある。
本発明において、超薄膜層は気体分離性ポリマーからなり多孔質支持膜の表面に形成された気体分離の機能層であり、無数の凹状構造を有することを特徴とする。こうした凹状構造は、後述する[気体分離膜の製造方法]で説明するように、溶媒の蒸発にともなって多孔質支持膜に付着したコート液表面の熱が奪われ、近傍空気の露点を下回ることによって無数の微細な水滴が発生し、付着したコート液の一部を水滴形状にあわせて排除しながら共に蒸発乾固することで形成されたものと推測される。「特開2001−157574号公報(ハニカム)」には、生分解性ポリマーが50〜99w/w%および両親媒性ポリマーが50〜1w/w%からなるポリマーの疎水性有機溶媒溶液を、相対湿度50〜95%の大気下で基板上にキャストし、該有機溶媒を徐々に蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることで得られるハニカム構造
体、並びに該ハニカム構造体からなるフィルムが開示されている。しかしながら当該フィルムは細胞培養の基材の基材として開発された数μmの貫通孔を有するフィルムであり、こうした貫通孔を持たない本発明の超薄膜層とは根本的に異なる。詳細な理由は不明であるが、本発明においては、特定の多孔質支持膜を用いることによって貫通孔の生成を防ぎ、気体分離膜として用い得る均一性を獲得したものと考えられる。
こうした凹状構造を有することによって、凹となった薄い部分が透過性向上に寄与し、かつ凹とはなっていない厚膜部分と同程度の耐久性を有すると考えられる。
合、超薄膜層に数nm〜数10nmのより薄い層が存在することを示唆しており、クレーター内部に形成された非常に薄い気体分離層の寄与と考えられる。
AFMによる表面粗度Raは、60nm以上400nm以下であることが好ましい。80nm以上300nm以下であることがより好ましく、100nm以上200nm以下であることが更に好ましい。AFM表面粗度Raが60nmより小さいとクレーター構造の効果が小さくなり、400nmより大きくなると欠陥が生じやすくなる可能性が高くなる。
本発明においては、気体分離膜の製造方法は次の3つの工程からなる。
1)パーフルオロアモルファスポリマーを溶媒に溶解してコート液を調製する工程
2)ポリオレフィン微多孔膜の一方の表面上にコート液を接触させる工程
3)ポリオレフィン微多孔膜に付着したコート溶液を蒸発乾固する工程
これらをそれぞれ、溶液調製工程、コート工程、乾燥工程と略称する。
例えばパーフルオロアモルファスポリマーとして、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとテトラフルオロエチレンの共重合体(ジオキソール65モル%)を用いる場合、米国3M社の登録商標フロリナートで代表されるようなパーフルオロ溶媒を好適に用いることが出来る。フロリナートの多くはフッ素で全置換されたパーフルオロアルカンであり、炭素数の違いによって沸点をはじめとした諸物性が変化する。パーフルオロ溶媒の蒸発にともなう冷却は、パーフルオロ溶媒の蒸気圧や蒸発熱のみならず風速や温度など周囲の環境に大きく依存するため適切なパーフルオロ溶媒を選択する必要があるが、多くの場合は沸点90℃〜100℃のパーフルオロ溶媒を用いる事で好適なコート液を調製することが出来る。
本発明においては、コート工程における温度は10℃以上40℃以下であることが好ましく、15℃以上30℃以下であることがより好ましく、20℃以上25℃以下であることが更に好ましい。また、相対湿度は20%RH以上75%RH以下であることが好ましく、30%RH以上65%RH以下であることがより好ましく、40%RH以上55%RH以下であることが更に好ましい。
本発明においては、露点と室温の差が20℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがよりこのましく、10℃以下であることが更に好ましい。その下限は3℃以上であり、これより露点と室温の差が小さくなることは、凹構造が連通することによる欠陥を形成しやすくする。
別の方法によって同様の凹状構造を形成しても同様の効果が期待でき、上述のような方法以外にもマイクロプリティングなどの方法も用いることが出来る。
コート方法としては、上記条件でポリオレフィン微多孔膜の一方の表面上にコート液を接触できる方法であればいずれの方法も用いることが出来るが、ディップコート、グラビ
アコート、ダイコートなど、公知のコート方法を用いることが出来る。
本発明の製造方法のコート方法に関する第1の側面は、特別なディップコートに向けられる。すなわち、コート液槽の上部に設けられたロールの下部とコート液槽に導入されたコート液面が互いに接触しており、かつ、ロールとの脱離点が入口と出口で液面よりも高くなるよう配置されたポリオレフィン微多孔膜を連続的に走行させることで、その片面にコート溶液を付着させる方法であり、これを片面ディップコートと言う場合がある。片面ディップコートにおいては、溶液の付着量は多孔質支持膜の表面状態、ライン速度、コート装置構成など、さまざまな因子に基づき成り行きで決まるため、コート条件を大きく変更することは難しいが、品質のいい超薄膜層を比較的安価な装置で製造することが出来る。また、多孔質支持膜に溶液をコートする際に常に問題となるのが膨潤による皺の発生であるが、ディップコートではロール上で膨潤に伴う皺が深く成長して折りたたまれない限り、皺の形に追随してコート溶液が付着するため、膨潤の影響を受けにくいという特徴がある。
片面ディップコートを行う際の溶液濃度の下限は0.1重量%以上が好ましく、0.6重量%以上がより好ましく、0.8重量%以上が更に好ましい。溶液濃度の上限は、5.0重量%以下が好ましく、2.5重量%以下がより好ましい。
[透過性能評価]
気体分離膜のサンプルを直径47mmの円形に切り取り、ステンレス製ホルダー(アドバンテック社製、KS−47Fホルダー)に固定する。ホルダーの一次側から99.9%以上の酸素、もしくは99.9%以上の窒素を所定の圧力で加圧する。2次側の雰囲気が酸素99%以上、もしくは窒素99%以上に置換されていることを酸素濃度計で確認したら、透過した気体の量を石鹸膜流量計で測定する。透過した気体量、気温、大気圧から標準状態における透過速度(GPU)を計算し、酸素と窒素の透過速度の比から分離係数αを計算する。
気体分離膜のサンプルをジクロルメタンで浸漬洗浄を行ったあと、室内で風乾し、3mm四方の小片にカットした。これを2mmφのマスキングを施してXPS測定を行った。装置:VG社製 ESCALAB250
光源:Al Kα 15kV×10mA
観察範囲:直径 約1mm
得られたスペクトルのうちC−F結合の炭素原子に帰属される289〜294eVのピークをピークの両端の値を結んだ線をベースラインとして面積CFを求めた。同様にC−H結合の炭素原子に帰属される284〜285eVのピークを両端の値を結んだ線をベースラインとして面積CHを求めた。この面積から下記の式によってC1s比を定義した。
C1s比=面積CH/(面積CF+面積CH)
気体分離膜のサンプルを約1cm四方にカットし、2液混合型エポキシ樹脂でPETフィルムに固定後、両面テープでSUS板に固定し、以下の条件でAFM測定を行い、得られた画像から表面粗度測定Raを算出した。
また、穴の深さを求める際には穴の外側の平坦な部分を基準面とし、ここと穴の最深部との差を持って穴の深さとした。
装置:Digital Instruments社製 Nano Scope IV D3100
測定モード:タッピングモード
カンチレバー:NCH型シリコン単結晶プローブ
観察範囲:20μm四方
走査速度:0.3〜0.5Hz
振幅減衰率:15−25%
気体分離膜のサンプルを約0.5cm四方にカットし、両面テープと銅テープでアルミ製サンプル台に固定し、以下の条件でSEM測定を行った。
装置:日立サイエンスシステムズ社製 S−3000N
加速電圧:15.0kV
この装置で17.3μm×25.5μmの視野で観察された穴の個数から10μ四方辺りの穴数を計算した。
TOF−SIMS(飛行時間型2次イオン質量分析器)は以下の条件で測定した。断面を観察する際にはエポキシ樹脂に包埋後、クライオミクロトームによって断面を剖出させた。
使用機器:TRIFT III (Physical Electronics社製)
一次イオン:Ga+
加速電圧:25kV
電流:120pA(DCとして)
分析面積:10μm×10μm(表面)、30μm×30μm(断面)
積算時間:60min(表面)、30min(断面)
検出イオン:負イオン
中和電子銃:有
[溶液調整]
沸点97℃のパーフルオロ溶媒(3M社製、フロリナートFC−77)にパーフルオロアモルファスポリマー(デュポン社製、テフロン(登録商標)AF1600)を溶解する。このポリマーの密度は1.78g/cm3である。片面ディップコートで塗工する際には1.0重量%の濃度に調整する。
ポリエチレン製微多孔膜(膜厚20μm、目付12g/m2、気孔率40%、透気度300秒)に、片面ディップコートで上記溶液を用いて、乾燥塗工目付量が0.6g/m2に塗工なるように塗工する。このときの超薄膜層の平均厚みは340nmになる。
気温23℃、相対湿度55%の環境で溶媒を蒸発して得た塗工膜の性能を表1に示す。このときの露点温度は13℃で、気温との差は10℃である。1017GPUの酸素透過速度と2.0の分離係数αをもつ気体分離膜が得られた。図1(走査電子顕微鏡写真 倍率:2000倍)に示したようにこの膜の表面には平均直径0.79μmの凹構造が10μm四方あたり約51.8個存在している。この膜のAFMによる表面粗度は117nmと起伏に富んでおり、C1s比も0.015と基材の近くまで凹構造が発達していることがわかる。AFMによって測定された穴の深さは、160nm以上330nm以下であった。これは超薄膜層の平均厚みの49%以上、97%以下にあたる。このとき断面をSEMで観察したところ、気体分離膜の最薄部の厚さは10nm以下であった。コートした表面をTOF−SIMSで観察すると、全面にFのみが観察され、、0.1μmの分解能で貫通している穴は存在していないことが判明した。また、断面をTOF−SIMSで観察すると、表面付近にのみFが観察され、多孔質膜内への浸潤は観察されなかった。
気温23℃、相対湿度15%の環境以外は実施例1と同様に塗工した膜の性能を表1に示す。このときの露点温度は−5℃で、気温との差は28℃である。2.2の分離係数αを有していたが、酸素透過速度が768GPUの膜しか得られなかった。この膜には凹構造が全く確認されず、C1s比も0.001と低く基材が平坦に覆われていることがわかる。
Claims (6)
- 多孔質支持膜の少なくとも一方の表面上に気体分離性ポリマーからなる超薄膜層を備える気体分離膜であって、
1)多孔質支持膜は、膜厚5μm以上、40μm以下、気孔率30%以上、95%以下、平均孔径1nm以上、200nm以下の微多孔膜からなり、
2)気体分離性ポリマーがパーフルオロアモルファスポリマーからなり、
3)超薄膜層の平均厚みが100nm以上、400nm以下であり、
4)超薄膜層に、直径0.5μm以上、3μm以下であって、深さが平均厚みの40%以上、100%未満の範囲にある凹状構造が、面積比20%以上、70%以下の範囲で存在し、
5)気体分離膜が50GPU以上の酸素透過速度を有し、かつ酸素と窒素の分離係数αが1.1以上である
ことを特徴とする気体分離膜。 - 超薄膜層表面のXPSによるC1s強度比が0.002以上、0.05以下であることを特徴とする請求項1に記載の気体分離膜。
- 超薄膜層のAFM表面粗度Raが60nm以上、400nm以下である請求項1又は2のいずれかに記載の気体分離膜。
- 微多孔膜がポリオレフィン微多孔膜であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の気体分離膜。
- ポリオレフィン微多孔膜がポリエチレン微多孔膜であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の気体分離膜。
- 気体分離性ポリマーがパーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとテトラフルオロエチレンの共重合体からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の気体分離膜。
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