JP5360846B2 - 膜タンパク質の発現を解析するモニタータンパク質 - Google Patents

膜タンパク質の発現を解析するモニタータンパク質 Download PDF

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Description

本発明は、細胞膜上での膜タンパク質の発現を測定可能なモニタータンパク質に関する。また、それをコードするDNA、その発現ベクター、それを発現する細胞、それを検出・定量する方法、細胞膜上での膜タンパク質の発現及び膜タンパク質の細胞内輸送に対する被験物質の阻害又は促進活性を測定する方法に関する。
細胞表面に存在する細胞膜タンパク質は、細胞膜(膜厚が約4ナノメートル)を構成しているタンパク質である。その存在形態は、膜表面に結合していたり、片側に埋まっていたり、膜を貫通していたりする。膜タンパク質には、トランスポーター、イオンチャンネル、受容体、酵素および構造タンパク質、制御タンパク質ならびにその役割が未解明なものも数多く存在する。また、宿主・病原体の細胞構成成分として構成的に発現する膜タンパク質もある。
多細胞生物においては、細胞内外環境の恒常性維持が細胞の生存にとって本質的意味を持つ。これを達成するために、生物は膜タンパク質を通じて外部環境と物質や情報の交換を行うことにより、細胞内外の環境を一定に保っている。例えばイオントランスポーターは、原則的に脂質二重層膜は不透過である無機イオンや生体代謝に関与する多くの水溶性有機物質をATPのエネルギーを使うことによる能動輸送を行う機能を有している。
膜タンパク質が生理的に機能するためには多様な活性制御機構を集積しながら細胞膜上の特定の場所に局在する必要があり、細胞膜上特定部位への組み込み、集積、局在維持は、ほぼ全ての膜輸送の研究で考察されている。膜タンパク質の機能発現には生合成後の細胞表面までの細胞内輸送が必須であり、細胞表面の発現量変化は細胞のシグナル伝達に大きな影響を与えるため、膜タンパク質の細胞内輸送に変化を及ぼす分子のプロファイリングが重要である。
タンパク質の機能発現には生合成後の細胞表面までの輸送が必須であり、この輸送効率は細胞表面の発現量に相関する(非特許文献1)。膜タンパク質の細胞内輸送過程は、小胞体からゴルジ体への移行時間として、糖鎖付加による分子量増加とパルスチェイス実験を組み合わせて測定されている(非特許文献2)。
また、イオンチャネル・トランスポーターの機能解析では、膜電位固定法やパッチクランプ法(非特許文献3)によりチャネル電流を、膜小胞による輸送実験によってトランスポーター活性を調べることにより、輸送タンパク質の機能特性の解析が行われている。さらに最近、創薬でのイオンチャンネル・トランスポーターの正常な発現をモニターするニーズの高まりから、パッチクランプ法を自動化した装置や原子吸光法を適用した方法(非特許文献4)、蛍光色素を利用してイオンチャンネルを測定する方法(非特許文献5)等が開発されている。しかしながら、パッチクランプ法では精密なデータは得ることができるが、自動化されているとはいえ、一日で処理できる検体はせいぜい3,000個程度が限界である。原子吸光法は、ハイスループット解析に適用しやすい反面、生体に本来存在しない、ルビジウムイオンを細胞内に導入することになり、細胞内プロテオームを攪乱する可能性がある。また、蛍光色素を用いた方法は、蛍光色素を励起するために紫外線や特定波長のレーザー光線を検体細胞に照射する必要があり、前者と同様の問題が生じる。
従って、これらの点を改善した迅速で大規模なスクリーニングを可能とする膜タンパク質の細胞内輸送を測定するアッセイ系の開発が望まれている。創薬においては、主薬効として治療のために細胞内輸送を改善させる物質を発見することも、副作用として細胞内輸送を阻害するか否かを確認することも重要である。しかしながら、上記記載のように、現状では膜タンパク質のトラフィッキングに対するスループット性の高い系がなく、効率的にプロファイリングができていない。
イオンチャンネル、トランスポーターの分子自身の遺伝子同定、生理的機能解析、病態との関連分析が近年急速に進展してきた過程で、創薬分野において、膜タンパク質の細胞内輸送の阻害・促進をプロファイルすること、膜タンパク質が正常に細胞膜まで輸送され、機能していることを測定するニーズが高まっている。例として、多くの抗不整脈薬、抗ヒスタミン剤、向精神薬、抗生物質がhERG (human ether-a-go-go related gene product)の膜表面への発現を阻害し、QT延長症候群を惹起することが判明し、すべての候補薬に対してhERGチャンネルに対する安全性を確認することが推奨されている。
Pfeffer, S. Cell (2003) 112, 507-517. Nishimura, N. and Balch, W. E. Science (1997) 277, 556-558. Hamill, O.P., Marty, A., Neher, E., Sakmann, B. and Sigworth, F.J. Pflugers Arch. (1981) 391, 85-100. Weir, S. W. and Weston, A. H. (1986) Br. J. Pharmacol. 88, 121-128. Waggoner, A. J Membr Biol.(1976) 27, 317-334.
本発明の目的は、細胞膜上における膜タンパク質の発現を測定できるタンパク質を作製することである。
本発明者らは、発光タンパク質を融合させた膜タンパク質を細胞表面上で発現させ、細胞内に浸透しない発光タンパク質の基質を融合させた発光タンパク質と反応させ、その発光量を測定することにより、細胞表面上の膜タンパク質の発現を測定することに成功した。さらに、細胞機能を損なわずタンパク質を失活する方法を組み合わせることにより、膜タンパク質の細胞内輸送をモニターすることにも成功した。本発明は、これらの知見に基づき、完成されたものである。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)膜タンパク質と発光タンパク質とが結合された融合タンパク質からなり、細胞膜上での膜タンパク質の発現を測定可能なモニタータンパク質。
(2)膜タンパク質が、イオンチャンネル、トランスポーター、Gタンパク質、イオンチャンネル型受容体、チロシンキナーゼ型受容体、Gタンパク質共役型受容体又は細胞接着分子を含む(1)記載のモニタータンパク質。
(3)発光タンパク質が非分泌型である(1)記載のモニタータンパク質。
(4)発光タンパク質が、発光昆虫、発光性渦鞭毛藻(虫)、夜光虫、ウミシイタケ、ガウシア、ウミサボテン、ウミボタル及びオワンクラゲからなる群から選ばれるいずれかの生物に由来する(1)記載のモニタータンパク質。
(5)発光タンパク質が、膜タンパク質の細胞外発現領域に位置するように設計された(1)記載のモニタータンパク質。
(6)発光タンパク質が、膜タンパク質の膜貫通領域に存在しないように設計された(1)記載のモニタータンパク質。
(7)発光タンパク質が、アミノ末端側又はカルボキシル末端側に位置するように設計された(1)記載のモニタータンパク質。
(8)膜タンパク質と発光タンパク質との間にスペーサー配列を含む(1)記載のモニタータンパク質。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のモニタータンパク質をコードしているDNA。
(10)(9)記載のDNAを含む発現ベクター。
(11)(10)記載の発現ベクターを保持する形質転換細胞。
(12)(1)記載のモニタータンパク質と発光物質を反応させ、発光量を測定することにより、モニタータンパク質を検出又は定量する方法。
(13)発光物質が、ホタルルシフェリン、バクテリアルシフェリン、渦鞭毛藻類ルシフェリン、ヴァルグリン及びセレンテラジンからなる群から選ばれる(12)記載の方法。
(14)発光物質が、細胞の脂質二重膜を透過しない性質を有する(12)記載の方法。
(15)(12)記載の方法を利用して、細胞膜上での膜タンパク質の発現を測定する方法。
(16)(12)記載の方法を利用して、膜タンパク質の細胞内輸送を測定する方法。
(17)膜タンパク質の細胞内輸送に対する被験物質の阻害又は促進活性を測定する方法であって、
(a)(1)記載のモニタータンパク質を細胞膜上に発現する細胞を用意する工程、
(b)前記細胞の細胞膜上に発現しているモニタータンパク質を失活させる工程、
(c)前記細胞に被験物質を接触させる工程、
(d)前記細胞に発光物質を接触させた後、発光量の時間変化を測定する工程、
を含む前記方法。
(18)細胞膜上での膜タンパク質の発現に対する被験物質の阻害又は促進活性を測定する方法であって、
(a)(1)記載のモニタータンパク質を細胞膜上に発現する細胞を用意する工程、
(b)前記細胞の細胞膜上に発現しているモニタータンパク質を失活させる工程、
(c)前記細胞に被験物質を接触させる工程、
(e)前記細胞に発光物質を接触させた後、発光量を測定する工程、
を含む前記方法。
本発明により、ハイスループットな方法を採用することが従来不可能であった膜タンパク質の細胞膜上での発現を簡便・迅速に測定することが可能となる。
また、細胞膜上に発現している融合タンパク質を失活させる工程を組み込むことにより、膜タンパク質の細胞内輸送過程・細胞膜への到達時間を簡便・迅速に決定するシステムを構築できた。
以下に本発明を詳細に説明する。
膜タンパク質は生物の全タンパク質の30%を占めており、生物学上重要な意味を持ち、具体的には細胞内外との物質の移行や細胞外からの情報を細胞内に伝達するなど、細胞の生存維持に不可欠である。膜タンパク質の機能発現には、生合成後の細胞表面までの輸送が必須であり、この輸送効率は細胞表面の発現量に直接関係していることが報告されている。細胞表面の発現量変化は細胞のシグナル伝達に大きな影響を与えるため、膜タンパク質の細胞内輸送に変化を及ぼす分子のプロファイリングが重要となる。また、創薬においては、主薬効として治療のために細胞内輸送を改善する物質を発見することも、副作用として細胞内輸送を阻害するか否かを確認することも重要である。しかし、現状では、膜タンパク質の輸送に対するハイスループットアッセイ系がなく、効果的なプロファイリングができていない。
本発明は、膜タンパク質の細胞膜上での発現を簡便に測定できるモニタータンパク質を作製し、これを利用して、創薬分野における薬剤又は薬剤候補化合物の膜タンパク質発現促進または阻害活性をハイスループット解析することを可能とした。
本発明は、膜タンパク質と発光タンパク質とが結合された融合タンパク質からなり、細胞膜上での膜タンパク質の発現を測定可能なモニタータンパク質を提供する。
本発明における膜タンパク質は、細胞表面に存在するトランスポーターおよびチャンネルの物質輸送機能を担うもの、受容体および制御タンパク質の情報伝達機能を有するもの、細胞の形状維持するために必要である構造タンパク質および機能が未知であるタンパク質を含有する。例えば、イオンチャンネル、トランスポーター、Gタンパク質、イオンチャンネル型受容体、チロシンキナーゼ型受容体、Gタンパク質共役型受容体、細胞接着分子などを含む。
本発明において解析されうる膜タンパク質は、細胞膜上で発現しているタンパク質であればその種類を問わない。モニタータンパク質を作製するためには、1ヶ所以上の膜貫通ドメインが存在し、タンパク質の一部分が細胞外に露出しているものが好ましい。
膜タンパク質はその種類が豊富で機能が不明であるものもまだ数多く存在しているが、ゲノムプロジェクトの恩恵により、詳細に解析が進んでいない膜タンパク質であっても膜貫通領域や細胞の外側に存在するアミノ酸を推定することが可能である。より好ましくは生理的機能解析、病態との関連分析がより進んでいる膜タンパク質を使用することが企図される。
発光タンパク質としては、発光昆虫(ホタル、ヒカリコメツキ等)、ウミシイタケ、渦鞭毛藻(虫)、夜光虫、ラチア、ガウシア、ウミサボテン、ウミボタル、オワンクラゲなどの各種発光生物由来のもの(例えば、ルシフェラーゼ、グリーン蛍光蛋白質(GFP)など)が挙げられる。
発光タンパク質は非分泌型であることが好ましい。発光タンパク質が分泌されて細胞膜表面より外側に浸出すると、細胞膜上でのみ発現しているモニタータンパク質由来の発光活性が正確に測定できなくなるからである。しかしながら、分泌型発光タンパク質であっても、膜タンパク質と結合させてモニタータンパク質となり、細胞膜上に存在するようになれば、それらも使用することができる。あるいはまた、分泌型発光タンパク質から分泌シグナル配列を削除するなどの改変を行って、非分泌型にしてもよい。
また、発光タンパク質の熱安定性、pH耐性、界面活性剤耐性などを付与するためにアミノ酸配列を改変したものも、モニタータンパク質として使用されうる。上記の膜タンパク質および発光タンパク質は、膜タンパク質としての性質および発光タンパク質としての性能を保持していれば、必ずしも全長である必要はない。
モニタータンパク質は、膜タンパク質と発光タンパク質を結合させて融合タンパク質として機能するよう設計する。この場合、膜タンパク質が1つ以上の膜貫通領域を有していることが好ましい。膜タンパク質の細胞膜上での存在形態は膜を貫通しているタイプ、膜の片側に埋まっているタイプ、膜の表面に結合しているタイプがある。発光タンパク質を膜タンパク質のある一部分に融合させるように設計する。文献やコンピュータによる構造シミュレーションの結果より、膜タンパク質のどの領域が細胞の外側に露出しているかを判断することが可能であり、その近傍に発光タンパク質が位置するようデザインするとよい。膜タンパク質であってかつ細胞外に露出している領域が存在しないタンパク質であっても、膜タンパク質のアミノ末端もしくはカルボキシル末端に発光タンパク質を結合させることにより、発光タンパク質が細胞の外側に露出し、モニタータンパク質として機能させるようにすることができる。また、発光タンパク質は、膜タンパク質の膜貫通領域に存在しないように設計するとよい。モニタータンパク質の細胞膜上での存在形態を図1に示す。
さらに、本発明では、ウエスタンブロット法やELISA法などでモニタータンパク質の発現を解析することができるようにモニタータンパク質のアミノ末端もしくはカルボキシル末端に公知であるHis-tag配列、FLAG配列も付加することができる。本発明のモニタータンパク質のネガティブコントロールとして、モニタータンパク質のアミノ末端もしくはカルボキシル末端に公知である各細胞小器官移行シグナルを付加した該タンパク質も使用される。最も好ましい形態は、カルボキシル末端に小胞体移行シグナル(KDEL配列)を付加したモニタータンパク質である。
また、モニタータンパク質のアミノ末端にはリーダー配列を挿入してもよい。リーダー配列は、新生ペプチドが膜に吸着する際に関与する配列であり、発現させた融合タンパク質が膜輸送系を経て細胞膜表面に発現させることを可能にする。
本発明のモニタータンパク質においては、構成要素である膜タンパク質と発光タンパク質の空間的な配置がその性能に大きく関わる可能性がある。膜タンパク質と発光タンパク質と融合させた場合において、タンパク質の折りたたみ様式により発光タンパク質の活性中心が細胞の外側に出現しなかったり、モニタータンパク質が細胞膜上で発現しても、膜タンパク質としての機能が著しく損なわれている場合、または細胞内でストレスが発生してモニタータンパク質にミスホールディングが生じて異物として認識され、エンドサイトーシスやオートファジーを経由して非特異的なタンパク質分解を受ける可能性がある。
かかる問題を解決するために、膜タンパク質と発光タンパク質との結合部位にスペーサーとなるペプチド配列を挿入することが企図される。ペプチドの数は1〜100アミノ酸からなり、アミノ酸残基の種類は二次構造を取りにくいアミノ酸、すなわちアスパラギン酸、アスパラギン、プロリン、セリン、グリシンから選ばれかつ、1種類のみから構成される。例えば、以下のような配列を例示することができる。
Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro-Pro(配列番号9)
Gly-Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号10)
Asn-Asn-Asn-Asn-Asn-Asn-Asn-Asn-Asn-Asn(配列番号11)
Asp-Asp
Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser-Ser(配列番号12)
また、本発明は前記のモニタータンパク質をコードするDNAを提供する。該DNAは、モニタータンパク質の前記各構成タンパク質の遺伝子情報をGenBank、EMBL、DDBJ等の遺伝子配列情報データバンク等から入手したり、公知のPCRを用いた方法により、あるいは制限酵素とリガーゼを用いた方法で作製することができる。
モニタータンパク質を細胞で発現させるためには、細胞内で定常的に発現するプロモーターの支配下にモニタータンパク質をコードするDNAを配置することが好ましい。定常的に発現するプロモーターとしては、HSVtkプロモーター、SV40プロモーター、CMVプロモーターまたはEF−1αなどのハウスキーピング遺伝子由来のプロモーターなども利用できる。本発明はさらに、前記のモニタータンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターも提供する。該発現ベクターは、本発明のモニタータンパク質をコードするDNAを公知の真核細胞用発現ベクター(例えば、p3xFLAG-CMV10、p3xFLAG-CMV9(シグマ社製))、原核細胞用発現ベクター(例えばpET-19b(メルク社製))、ウイルスベクター(例えばpLP-Adeno-X-CMV(Clontech社製))に挿入することにより得ることができる。
本発明はさらに、前記発現ベクターを保持する、形質転換された細胞およびトランスジェニック動物を提供する。該細胞は、前記の発現ベクターを対象とする細胞に導入することにより得られる。細胞へのベクター導入法は公知のトランスフェクション法やウイルス感染法が使用できる。本方法はリポフェクション法、エレクトロポレーション法などが例示される。遺伝子導入細胞としては、真核細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞由来CHO−K1細胞、ヒト胎児腎臓由来HEK293細胞)、酵母などが挙げられる。あるいは原核細胞(例えば大腸菌など)を用いることができる。また、公知である受精卵前核中へのDNA顕微注入によりトランスジェニック動物を作製することができる。
また、本発明は、前記のモニタータンパク質と発光物質を反応させ、発光量を測定することにより、モニタータンパク質を検出又は定量する方法を提供する。この方法を利用して、細胞膜上での膜タンパク質の発現や膜タンパク質の細胞内輸送を測定することができる。タンパク質がその機能を保持して発現するためには、転写翻訳を経て細胞内輸送を通じて機能するべき場所に移行する。本発明は、今まで行われてきた細胞膜上での膜タンパク質発現のモニタリングを簡便に行う手法を提供するものである。
細胞膜上での発現を正確に測定するために、[1]アッセイは細胞表面に存在するタンパク質の活動のみを測定する [2]アッセイに要する時間は、細胞の機能回復時間と比較して十分短い [3]細胞表面の機能的なタンパク質を急速に定量的かつ不可逆的に不活性化する、が必要である。これらの条件を満たすことではじめて細胞表面に新たに到達した膜タンパク質のみの機能評価が可能となる。本発明により、上記[1]から[3]をすべて満たし、かつ細胞表面に新たに到達したモニタータンパク質の発光活性を測定することができるシステムの構築を可能とする。
本発明のモニタータンパク質を利用して、細胞膜上での膜タンパク質の発現や膜タンパク質の細胞内輸送速度を測定する方法の手順の一例を説明する。
まず、公知のトランスフェクション法もしくはマイクロインジェクション法などで本発明のベクターを対象細胞へ導入し、適当時間培養する。少なくとも24時間以上培養を行うことが好ましい。次に、モニタータンパク質を発現するベクターの導入された細胞が、本発明のモニタータンパク質を細胞膜上に発現しているかどうかを測定する。細胞を培養している培地に直接ルシフェリン(細胞膜を透過しない性質を有するルシフェリン)を添加して、発光量を測定する。
上記の方法により該ベクターを導入された細胞がモニタータンパク質を細胞膜上に発現していることを確認した後に、該細胞のモニタータンパク質の細胞膜上での機能を消失させる。モニタータンパク質の機能を一時的に消失させる試薬はタンパク質を不可逆的に失活させる試薬を用いる。該試薬としては、特定のアミノ酸残基を化学修飾するもの、特定の膜タンパク質の抗体が例示される。また、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)でもよい。本発明でモニタータンパク質の一時的な機能消失に使用する試薬としては、リジン残基を特異的に化学修飾するSulfo-NHS、システイン残基を特異的に化学修飾する[2- (Trimethylammonium) ethyl]methanethosulfonate (MTSET)を使用することが好ましい。さらに、修飾試薬は水溶性であって細胞内の他のタンパク質には影響を与えない、他の細胞機能への影響を最小限化するものであることが好ましい。
次に、細胞内輸送を促進または阻害するもしくは膜タンパク質の細胞膜上での正常な発現に影響を与える可能性があるか否かなどを検討する薬剤(被験物質)を該細胞と接触させる。処理時間は薬剤の種類により異なるが、例えば、1分間から24時間までの間で選択される。この場合、該細胞に処理する薬剤は単独であってもよく、あるいは薬理学的に許容される担体に混合されていても良い。また薬剤は、それぞれ単独で含有されるだけでなく、組み合わせて含有することも可能である。細胞の代わりに動物を用いる場合は、経口的な方法もしくは非経口的な方法により薬剤を投与できる。
生物発光を利用した発光活性(「発光量」)を測定するために、モニタータンパク質が発現している細胞膜上で、発光物質(例えば、ルシフェリン)を上記の薬剤処理を施された細胞等に接触させる。本明細書において、「発光物質」とは、発光タンパク質と相互作用することにより発光を生じる物質を含む概念である。例えば、ルシフェリン(発光物質)はルシフェラーゼ(発光タンパク質)との反応により発光を生じるが、この生物発光は、有機分子であるルシフェリンの酸素または代謝物類の一つによる酸化による発光である。該反応はルシフェリンが、発光タンパク質またはルシフェラーゼとして通常知られているタンパク質に緊密に、または共有結合で結合して、該タンパク質によって触媒される。
この反応のスキームは以下の通りである。
(数1)
酸素(オキデアニオンまたは過酸化水素)+ルシフェリン+発光タンパク質(または発光タンパク質)→オキシルシフェリン+光
また、本反応が進行するために、下記の因子が必要である。
(a)H、Ca2+、Mgのようなカチオン、Cu/Cu2+、Fe2+/Fe3+のような遷移金属
(b)ATP、NADH、FMN、などの補因子
これまでに5種のルシフェリンが同定されている
(1)ホタルルシフェリン
(2)バクテリアルシフェリン
(3)渦鞭毛藻類ルシフェリン
(4)ヴァルグリン
(5)セレンテラジン
ホタルルシフェリンは、ホタル(北米産ホタル、ヒカリコメツキ、鉄道虫、イリオモテボタルなど)の持つルシフェリンで、ルシフェリンルシフェラーゼ (EC 1.13.12.7)の基質である。 ベンゾチアゾール誘導体である。
バクテリアルルシフェリンは、バクテリアやある種のイカ、魚に見られる長鎖のアルデヒドと還元型のリン酸リボフラビンからなる構造を持つ。
渦鞭毛藻類ルシフェリンは、クロロフィルの誘導体で、テトラピロール環を持つ。渦鞭毛藻類(海洋性プランクトン)から主に単離されている。オキアミ類もこれと類似するものを持っていることがある。
ヴァルグリン (vargulin) は貝虫 (ostracods) やガマアンコウ (Midshipman fish) に見られる。イミダゾロピラジン誘導体である。
セレンテラジン (coelenterazine) は放散虫、有櫛動物、刺胞動物、イカ、橈脚類、毛顎動物、魚、エビなどに見られる。また、発光タンパク質エクオリン中の発光分子でもある。
以上5種類における代表的なルシフェリンの化学構造式を図2にまとめた。さらに詳しい発光基質についての説明は、J.W. Hastings著 Biological diversity, chemical mechanisms, and the evolutionary origins of bioluminescent systems(1983年、Journal of Molecular Evolution. v. 19: pp.309-321)に参照されている。
本発明のモニタータンパク質の、細胞膜上での発現を発光反応により測定するために、上記にあげたすべての化学種のルシフェリンが使用可能である。現在レポーターアッセイで多用されているルシフェリンはホタルルシフェリンまたはセレンテラジンである。これらのルシフェリンは培養細胞に吸収されることが知られている。すなわち、本発明は、アッセイは細胞表面に存在するタンパク質の活動のみを測定することを特徴とするので、細胞膜上に発現しているモニタータンパク質の発光活性のみを測定できることが好ましい。ゆえにモニタータンパク質の構成要素として例えばホタルルシフェラーゼやウミシイタケルシフェラーゼを使用した場合、これらの発光基質は細胞内に吸収され、細胞内で輸送されている途中のモニタータンパク質を発光させる可能性がある。
かかる問題を回避するため、細胞に吸収されないように、細胞の脂質二重膜を透過しない性質を有する発光物質を使用するとよい。このような性質を有する発光物質としては、渦鞭毛藻(虫)ルシフェリン(図2のC)を例示することができる。
従って、本発明のモニタータンパク質の構成要素である発光タンパク質としては、細胞膜を透過しないことが判明している直鎖テトラピロール類ルシフェリンを基質とする渦鞭毛藻(虫)類由来ルシフェラーゼを使用することが好ましい。
ルシフェリンなどの発光物質はモニタータンパク質を測定するとき、単体で加えられてもよい。また、ルシフェリンを保護する薬剤がルシフェリンと同時に加えられることもあり得る。ルシフェリンを保護する薬剤として好ましくはチジオスレイトール、ジチオエリトルトール、βメルカプトエタノール、2−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロパノール、2,3−ジチオプロパノール、グルタチオン、コエンザイムAなどのスルフヒドリル化合物、アスコルビン酸、α−トコフェロールなどのビタミン類が挙げられる。
発光酵素が補因子を必要とする場合、これらを発光物質と同時に添加することも可能である。
発光物質は培地に添加してもよいし、自動化されたシステムによりその添加が支援されることも企図される。
また、トランスジェニック動物や植物に発光物質を導入するために、灌流法により、生体全体に発光物質を行き渡らせる方法もとられる。
発光活性を測定するには、一般的に使用されている光電子増倍管(フォトマルチプラー)により光子数を測定してそれを数値化するルミノメーターと呼ばれる機器を使用することが好ましい。培養細胞を用いる場合は、本測定手順を自動化することも可能である。
培養細胞を用いた場合の発光活性測定の自動化を支援する装置の一例の概略図を図3に示す。被検物質と接触させ、一定時間経過した細胞株(試料(1))が培養されているウェルプレート(2)が試料台(3)に設置される。ウェルの位置は試料台をモーター(4)の動力を用いて水平方向に移動させる。さらに、培地は発光反応に影響を及ぼすこと、膜タンパク質を失活させる薬剤や被検物質が混入しているため、除去することが望まれる。培地の除去は、吸引ポンプ(5)の動力により廃液パイプライン(6)に送られることにより行われる。廃液パイプライン(6)は廃液タンク(7)に接続されている。次に、ウェルの壁面に付着した培地や被検物質を完全に除去するため、ウェルの洗浄操作が行われる。送液ポンプ1(8)の動力により洗浄液(9)が送液パイプライン(10)を通じて分注装置(11)に送られ、分注装置(11)で分注されてからウェルに送られる。分注量はコンピュータで制御可能であり、ウェルのサイズにより任意に変更される。洗浄液としては生理食塩水やPBSバファーが例示される。ウェルに分注された洗浄液を除去するため、吸引ポンプ(5)の動力により洗浄液(9)を廃液パイプライン(6)に送液する。細胞膜表面に発現された発光タンパク質の発光量を測定するため、発光基質(12)がウェルに分注される。発光基質(12)は送液ポンプ2(13)の動力を用いて送液パイプライン(10)を通じて分注装置(11)に送られる。分注装置(11)は発光基質(12)の分注量も任意に制御することが可能である。発光基質は発光タンパク質の種類により変更し、反応条件を最適化した検出試薬としての形態をとることも企図される。試料から発せられた光は集光レンズ(14)により集約され、検出器(15)に導入される。検出器において発光シグナルを電気シグナルに変換し、その値がコンピュータ(16)に転送される。なお、光電子増倍管、試料台、試料、集光レンズは外界の光が完全に遮断できる材質の箱に納められる。
また、X線フィルムに感光させて、その強度を画像的に定量化する方法や、CCDカメラ、発光をできる顕微鏡を使用することにより、細胞表面での発光を確認することも企図される。特に、動物・植物の生体中の膜タンパク質を測定する場合にはCCDカメラを用いることが好ましい。
細胞膜上での膜タンパク質の発現に対する薬剤(被験物質)の阻害又は促進活性を測定する場合には、薬剤処理した上記細胞(細胞膜上に発現しているモニタータンパク質は失活処理されている)に発光物質を接触させた後、適当な時間経過後に発光量を測定するとよい。例えば、ある薬剤の細胞膜上での膜タンパク質の発現に対する阻害もしくは促進作用の有無を確認する手法として、薬剤処理区と無処理区の発光量を測定してその値を比較するとよい。すなわち、無処理区の発光量よりも薬剤処理区の発光量が少なければ、その薬剤は膜タンパク質の発現を阻害すると言える。また、逆に、無処理区の発光量よりも薬剤処理区の発光量が多ければ、その薬剤は膜タンパク質の発現を促進すると言える。なお、発光量の測定は、モニタータンパク質の失活処理後、新たなモニタータンパク質が細胞膜上に発現しうるまでの十分な時間が経過した後に行うとよい。
さらに、上記細胞を可溶化して、細胞内容物を培地中に遊離させ、それらにルシフェリンなどの発光物質を添加して発光量を測定してもよい。可溶化する成分としては、Triton-X100やサポニンなどが選択される。Triton-X100の濃度は0.1%〜1%、サポニンは0.01%〜0.1%の範囲が好ましい(アッセイ時の濃度)。これにより、細胞内に発現しているモニタータンパク質と細胞膜表面に発現したモニタータンパク質の発光反応による発光量を測定することができる。従って、この測定値を利用して、細胞膜上に発現している膜タンパク質の発現率を算出することができる。
膜タンパク質の細胞内輸送に対する薬剤(被験物質)の阻害又は促進活性を測定する場合には、薬剤処理した上記細胞(細胞膜上に発現しているモニタータンパク質は失活処理されている)に発光物質を接触させた後、一定の時間、適当な時間間隔で、発光量を測定するとよい。例えば、ある薬剤の細胞内での輸送の阻害もしくは促進の有無を確認する手法として、薬剤処理区と無処理区の任意の時間経過後の発光量を測定してその値を比較するとよい。すなわち、無処理区の発光量の変化(回復)よりも薬剤処理区の発光量の変化が小さければ、その薬剤は細胞内での輸送を阻害すると言える。また、逆に、無処理区の発光量の変化(回復)よりも薬剤処理区の発光量の変化が大きければ、その薬剤は細胞内での輸送を促進すると言える。
以上は、薬剤(被験物質)の薬理効果を測定する方法を例にとり説明したが、このような薬剤を添加しないで、上記の操作を行えば、膜タンパク質の発現や細胞内輸送の解析を行うこともできる。なお、細胞膜上での膜タンパク質の発現を解析するには、モニタータンパク質の細胞膜上の機能を消失させる処理は行わなくともよい場合もあろう。
本発明の実施例を以下に例示することにより、本発明の効果を一層明確なものとする。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
膜タンパク質の細胞膜上での発現を発光反応で確認するためのモニタータンパク質を設計した。細胞膜上での発現を確認する膜タンパク質として、CD-8を選択した。CD-8は免疫グロブリンスーパーファミリーの分子で、成熟T細胞の"サプレッサー/細胞障害性"T細胞亜群に発現する膜貫通糖タンパクである。胸腺細胞の約63%、脾細胞の約9%、リンパ節細胞の約20%、末梢血リンパ球の約15%にみられる。その機能は、T細胞の抗原認識において、MHCクラス(特)拘束性のTCRの共刺激レセプタである。モニタータンパク質の発光タンパク質は渦鞭毛藻由来のルシフェラーゼPL-D3を選択した。発光タンパク質が膜タンパク質(CD-8)よりアミノ末端側に位置するように設計し、該タンパク質を発現するようにデザインされたDNAを作製した。
CD-8をコードしているDNA断片(Gene Bank accession No. NM_001768)(配列番号1)を、動物細胞用発現ベクターp3xFLAG-CMV9(シグマ社製)のHind III-Not Iサイトにライゲーションにより挿入した。ライゲーションはDNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ製)を用いて行った。このp3xFLAG-CMV9ベクターは、CMVプロモーターを有していることから、本ベクターが導入された動物細胞では、プロモーターより下流の遺伝子が恒常的に発現する。また、本ベクターには分泌タンパク質のアミノ末端ドメインをコードする配列であるリーダー配列(配列番号6のアミノ酸配列中の4番目のアミノ酸(Ser)〜17番目のアミノ酸(Ala)からなるアミノ酸配列)が含まれている。さらに、FLAGタグ配列(配列番号6のアミノ酸配列中の18番目のアミノ酸(Asp)〜39番目のアミノ酸(Lys)からなるアミノ酸配列)も該ベクターには含まれており、抗FLAG抗体を用いたウエスタンブロットによる遺伝子の発現を検出することが可能である。p3xFLAG-CMV9にCD-8が挿入されたベクターをpCMV-CD-8とする。次に、pCMV-CD-8のHind IIIサイトに、渦鞭毛藻ルシフェラーゼPL-D3を挿入するため、PL-D3の5’および3’末端がHind IIIサイトを持つよう、PCRによりPL-D3のDNA断片(Gene Bank accession No. AF394059)(配列番号3)の増幅を行った。増幅したDNA断片をアガロースゲルに電気泳動を行い、目的の断片を切り出してpCMV-CD-8のHind IIIサイトにライゲーションにより挿入した。PL-D3の導入の有無を確認するため、ミニプレップによりDNA断片を抽出し、制限酵素Hind IIIで該DNA断片を消化し、PL-D3の導入を確認した。増幅したPL-D3断片の配列に変異が入っていないかを確認するため、シークエンス反応を行い、塩基配列の確認を行った。塩基配列が確認されたベクターをpCMV-DL-D3-CD8とした。このベクターのモニタータンパク質の部分をコードしている配列を配列番号5及び6に記載している。上記と同様の手法でCD-8のカルボキシル末端側に小胞体移行シグナル(KDEL配列)(配列番号7、8)を付加したモニタータンパク質発現用ベクターも作製した。該ベクターは、細胞内で転写・翻訳後に輸送されず小胞体にとどまるように設計されたものである。該ベクターをpCMV-DL-D3-CD8-KDELとした。尚、pCMV-DL-D3-CD8およびpCMV-DL-D3-CD8-KDELにおける、モニタータンパク質をコードするDNAの模式図を(図4)に示す。
次に、動物細胞へ上記で作製した2種類のモニタータンパク質発現ベクターを導入した。CHO-K1細胞(理研セルバンクより購入)を1 x 106個ずつ6ウェルプレートへ播種し、D-MEM/Ham’s F-12培地(和光純薬社製)10% FCS中で培養した。37℃で培養し、翌日各ウェルにpCMV-DL-D3-CD8 4μgもしくはpCMV-DL-D3-CD8-KDEL 4μgを250μlのOpti-MEM無血清培地(Gibco BRL社製)と混合し、室温で5分間反応、250μlのOpti-MEM無血清培地で室温5分間反応された10μlのLipofectamine 2000 (Invitrogen社製)と混合し、Opti-MEM無血清培地中でトランスフェクションした。培地をD-MEM/Ham’s F-12培地10% FCSに交換、10 cmディッシュに継代後、さらに3日間培養した。次に、トランスフェクションされた細胞をセルスクレイパーで剥離し、PBSで細胞を洗浄した。その後、細胞数をカウントして1 x 106.個/mlに調整された細胞懸濁液を用意した。
細胞数を調整したモニタータンパク質を発現する細胞と発現ベクターを導入していない細胞の各発光量を測定した。細胞懸濁液50μlに200 mM リン酸バッファーpH 5.5 50μlおよび50μM 渦鞭毛藻由来ルシフェリン(渦鞭毛藻由来ルシフェリンは、公開特許公報、特開2005-049213の方法に従って抽出・精製した。)2μlを添加し、ベルトールド社製ルミノメーターCentro LB960型でサンプルから発せられる光子数を測定した。さらに、細胞膜上に発現しているモニタータンパク質に加え、細胞内にとどまっていると考えられる輸送途中のモニタータンパク質の発光量を確認するため、細胞懸濁液50μlに、200 mMリン酸バッファーpH 5.5に0.02%サポニンを含有した溶液50μl、渦鞭毛藻由来ルシフェリン(50μM)を2μl加え、細胞内容物を滲出させ、その発光活性を得た。
測定結果を図5に示す。pCMV-DL-D3-CD8を発現させ、サポニンで処理していない区において発光が確認された(図5のC)。小胞体でとどまるように設計されたpCMV-DL-D3-CD8-KDELでは、発光はバックグラウンドレベルであった(図5のA)。故に、本発光は、細胞膜上で発現しているモニタータンパク質のみの発光量由来であることが示された。また、サポニン処理をおこなった各区(図5のBおよびD)では、無処理区と比較して発光量の増大が認められた。このことから、細胞中に翻訳途中や輸送途中のモニタータンパク質が存在しており、発光基質が細胞膜を透過する性質のものである場合、バックグラウンドの値を上昇させる原因になることが示唆される。また、いずれの遺伝子も導入していない実験区では、サポニン処理の有無にかかわらず発光は確認されなかった(図5のEおよびF)。
本モニタータンパク質を使用した、膜タンパク質の細胞内トラフィッキングをモニターすることが可能であることを示すモデル実験を行った。実施例1で作製されたpCMV-DL-D3-CD8を、動物細胞へ導入した。CHO-K1細胞を1 x 106個ずつ6ウェルプレートへ播種し、D-MEM/Ham’s F-12培地(和光純薬社製)10% FCS中で培養した。37℃で培養し、翌日各ウェルにpCMV-DL-D3-CD8 4μgを250μlのOpti-MEM無血清培地(Gibco BRL社製)と混合し、室温で5分間反応、250μlのOpti-MEM無血清培地で室温5分間反応された10μlのLipofectamine 2000と混合し、Opti-MEM無血清培地中でトランスフェクションした。培地をD-MEM/Ham’s F-12培地10% FCSに交換、10 cmディッシュに継代後、さらに3日間培養した。次に、トランスフェクションされた細胞をセルスクレイパーで剥離し、PBSで細胞を洗浄した。その後、細胞数をカウントして2 x 107.個/mlに調整された細胞懸濁液を用意した。
細胞懸濁液に0.5 mMのSulfo-NHS(Pierce社製)を添加することにより、細胞膜上で発現している、モニタータンパク質を不活化した。次に、Sulfo-NHSを除去する操作を行った。すなわち、D-MEM/Ham’s F-12培地10% FCSを、10 mlモニタータンパク質が不活化された細胞を含む溶液に添加し、1,000 x gで遠心分離を行い、沈殿を再度D-MEM/Ham’s F-12 10% FCS培地22 mlに再懸濁した。次に、細胞内の輸送を阻害する試薬であるBrefeldin A(BFA:BIOMOL社製)1 mMを添加した区と、無処理区とを設定した。1、2、3、4、6時間培養後にそれぞれ、死細胞および死細胞由来の培地中に含まれるモニタータンパク質を除去するためにPBSにBFA処理区、無処理区の細胞を懸濁し、1,000 x gで遠心操作を行った後、細胞数をカウントし、100μl中 4 x 10個になるように調整した。本細胞懸濁液を20μlずつに分割し、一方に渦鞭毛藻由来ルシフェリン2μlを添加することにより、細胞膜上で発現しているモニタータンパク質の発光活性を測定した。もう一方は細胞数が各時間後とのサンプルで一定しているかを確認するため、CellTiter-Glo(Promega社製)によりATP由来の発光量を測定した。
細胞膜上で発現している膜タンパク質由来の発光量をプロットしたグラフを図6に示す。BFAを処理していない細胞の実験区では、膜タンパク質の失活処理後1時間より発光が確認されはじめる(図6の丸印A)。しかしながら、BFAを処理した実験区では、失活処理6時間経過しても発光が確認されていない(図6の三角印B)。この結果、本モニタータンパク質はある薬剤による細胞内トラフィキングに対する影響を、細胞膜上で発現しているモニタータンパク質の失活処理を行った後の回復時間を測定することにより可能にするデータが得られた。
本発明は、膜タンパク質の発現や細胞内トラフィッキングの解析、膜タンパク質の発現の促進・阻害や細胞内輸送の促進・阻害の測定に利用することができ、新薬候補のスクリーニングや副作用の予見にも応用できる。
ルシフェリンの構造式を記した図。 モニタータンパク質の細胞膜表面上での存在形態を表した模式図。 発光測定の自動化を支援する装置の模式図。 モニタータンパク質をコードしているDNAの構造を示した概略図。 モニタータンパク質が細胞膜上で発現しているもの、および細胞内にとどまっているものを、発光活性により比較したグラフ。 モニタータンパク質が細胞内輸送を通じて細胞膜上で発現したものおよび、細胞内輸送を阻害する試薬で処理することにより、モニタータンパク質の細胞膜上での発現を抑制したものを、発光活性により比較したグラフ。
1:試料
2:ウェルプレート
3:試料台
4:モーター
5:吸引ポンプ
6:廃液パイプライン
7:廃液タンク
8:送液ポンプ1
9:洗浄液
10:送液パイプライン
11:分注装置
12:発光基質
13:送液ポンプ2
14:集光レンズ
15:検出器
16:コンピュータ
<配列番号1>
配列番号1は、ヒトCD-8をコードしているDNA断片(Gene Bank accession No. NM_001768)の配列を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、配列番号1の配列がコードしているアミノ酸配列を示す。
<配列番号3>
配列番号3は、渦鞭毛藻ルシフェラーゼPL-D3をコードしているDNA断片(Gene Bank accession No. AF394059)の配列を示す。
<配列番号4>
配列番号4は、配列番号3の配列がコードしているアミノ酸配列を示す。
<配列番号5>
配列番号5は、pCMV-DL-D3-CD8ベクターのモニタータンパク質の部分をコードしている配列を示す。
<配列番号6>
配列番号6は、配列番号5の配列がコードしているアミノ酸配列を示す。
<配列番号7>
配列番号7は、KDEL配列のDNA配列を示す。
<配列番号8>
配列番号8は、KDEL配列のアミノ酸配列を示す。
<配列番号9〜12>
配列番号9〜12は、スペーサーのアミノ酸配列を示す。

Claims (2)

  1. 膜タンパク質の細胞内輸送に対する被験物質の阻害又は促進活性を測定する方法であって、
    (a)膜タンパク質と発光タンパク質とが結合された融合タンパク質からなり、細胞膜上での膜タンパク質の発現を測定可能なモニタータンパク質を細胞膜上に発現する細胞を用意する工程、
    (b)前記細胞の細胞膜上に発現しているモニタータンパク質を失活させる工程、
    (c)前記細胞に被験物質を接触させる工程、
    (d)前記細胞に発光物質を接触させた後、発光量の時間変化を測定する工程、
    を含む前記方法。
  2. 細胞膜上での膜タンパク質の発現に対する被験物質の阻害又は促進活性を測定する方法であって、
    (a)膜タンパク質と発光タンパク質とが結合された融合タンパク質からなり、細胞膜上での膜タンパク質の発現を測定可能なモニタータンパク質を細胞膜上に発現する細胞を用意する工程、
    (b)前記細胞の細胞膜上に発現しているモニタータンパク質を失活させる工程、
    (c)前記細胞に被験物質を接触させる工程、
    (e)前記細胞に発光物質を接触させた後、発光量を測定する工程、
    を含む前記方法。
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