JP5359450B2 - 負圧推定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ブレーキペダルのペダルストローク量に基づいて、エンジンの生成した負圧を利用してマスターシリンダ圧を発生させる倍力装置において、倍力装置内の負圧を推定する負圧推定装置に関する。
従来から車両においては、エンジンのインテークマニホールドにおいて生成された負圧を付勢力として利用してマスターシリンダの基礎油圧から操作油圧すなわちマスターシリンダ圧を発生する倍力装置すなわちブースタを用いることが行われている。このブースタにおいては、ブレーキペダルのペダルストローク量に基づいて、負圧を利用してマスターシリンダ圧を生成している。このマスターシリンダ圧を供給油圧としてホイールシリンダに供給することにより、車両の制動が行われている。
近年における車両においては、燃費性能を向上させることを目的として、車両の停止期間中においてはなるべくエンジンを停止させること、すなわち、所謂アイドリングストップが推奨されている。このような近年の車両においては、エンジンが停止される期間が増大することから、ブースタ内の負圧を定常的に維持することが困難となり、マスターシリンダ圧を生成するにあたっての付勢力を十分に保持することが困難となる事態を招くことも考えられる。ブースタ内の負圧を維持できない状況が発生すると、エンジンを停止することが推奨される期間においてもエンジンを始動させること、あるいは、エンジンの替わりに負圧を生成する例えばバキュームポンプを駆動させる等の適宜の負圧維持のための処置を講じる必要が生じる。
上述したようないずれの処置を講じる場合においても、ブースタ内の負圧が維持できない状況を検出することが必要となり、負圧が維持できないことを検出するためには、ブースタ内の負圧を検出する必要が生じるが、ブースタ内に圧力センサを設けることは部品点数の増加を招きコストアップを招くという不都合を生じる。このため、ブースタ内の負圧を他のパラメータに基づいて推定することが考えられ、この推定を実現する手法は例えば特許文献1に記載されている。
特開2001−171511号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている手法のように、ブレーキペダルの踏力やマスターシリンダ圧からブースタ内の負圧を推定するために、ブレーキペダルに圧力センサを設けることやマスターシリンダ自体又はマスターシリンダ近傍の油圧配管に圧力センサを設けることが必要となり、これによっても部品点数の増加を招きコストアップを招くという問題がやはり生じる。
本発明は、上記問題に鑑み、コストアップを招くことなくブースタすなわち倍力装置内の負圧を推定することができる負圧推定装置を提供することを目的とする。
上記の問題を解決するため、本発明による負圧推定装置は、ブレーキペダルのペダルストローク量を検出するペダルストローク量検出手段と、前記ペダルストローク量に基づいて倍力装置内の変圧室内の単位制御周期前の体積と単位制御周期後の体積と単位制御周期前後の体積変化を算出する体積算出手段と、前記変圧室の前記体積が減少する場合に、単位制御周期前の定圧室の体積と圧力の積に前記体積変化に大気圧を乗じた値を加えた値を単位制御周期後の定圧室内の体積で除して単位制御周期後の定圧室内の圧力を算出して、前記圧力大気圧から減じて前記倍力装置内の負圧を算出する負圧算出手段を含む、ことを特徴とする。
なお、前記倍力装置はピストン及びロッドとシリンダから構成されるブースタであって、前記ピストンの前記ブレーキペダル側に画成される変圧室と、前記ピストンの前記ブレーキペダルと反対側に画成される定圧室とを含み、前記ピストンは前記ブレーキペダルのペダルストローク量に応じてストロークされる。
前記シリンダの前記ブレーキペダル側には前記変圧室と大気とを開閉自在に連通する大気圧バルブと、前記変圧室とエンジンのインテークマニホールドを開閉自在に連通する真空バルブが設けられており、前記ロッドが備えて前記大気圧バルブ及び前記真空バルブの一部をなすプランジャにより、制動時には前記大気圧バルブは開とされ、前記真空バルブは閉とされる。非制動時には、前記プランジャにより前記大気圧バルブは閉とされ、前記真空バルブは開とされる。
前記定圧室は前記エンジンのインテークマニホールドと配管により連通され、前記配管の中途には、前記定圧室から前記インテークマニホールド側に向けてのみ気体を通流する逆止弁が設けられる。ここで、前記気体は典型的には空気である。
前記定圧室内の圧力が前記インテークマニホールド内の圧力よりも高い場合には、前記逆止弁の作用に基づき、前記定圧室内の気体は前記インテークマニホールド内に流れこみ、前記定圧室内の圧力は徐々に低下して、最終的に前記インテークマニホールド内の圧力に等しくなる。逆に、前記定圧室内の圧力が前記インテークマニホールド内の圧力よりも低い場合には、前記逆止弁の作用により前記インテークマニホールド内から前記定圧室に向けて気体は流れこむことがなく、前記定圧室内の圧力は変化しない。
前記ブレーキペダルが運転者により踏み込まれていない非制動状態においては、前記ブレーキペダルを踏み込み開始位置に戻す戻しバネの作用により、前記ピストンは前記シリンダの前記ブレーキペダル側に押し付けられて、前記プランジャにより前記変圧室と大気とは前記大気圧バルブが閉となることにより遮断されて、前記変圧室に大気圧は流入されない。
前記ブレーキペダルが運転者により踏み込まれて制動状態となった場合においては、前記ブレーキペダルのペダルストローク量と前記変圧室の体積とは、一意かつ線形の関係にあり、前記ペダルストローク量の増加に比例して、前記変圧室の体積は増加する。つまり、前記ペダルストローク量の増加に伴い、前記ロッド及び前記プランジャが前記ブレーキペダルと反対側に移動されて、前記大気圧バルブは開とされるとともに前記真空バルブは閉とされ、前記変圧室と大気とが遮断されなくなり連通されて、前記変圧室に大気圧が流入される。
前記変圧室に大気圧が流入されると、前記変圧室に前記大気圧バルブを介して大気圧が流入している過渡的な状況においては、前記変圧室に流入する気体は、大気圧、気温等の条件により流量がばらつくこととなるが、過渡的な状況が経過した後の安定状態すなわち定常状態においては、前記変圧室の圧力は大気圧に等しくなる。
ここで、前記定圧室の圧力が前記インテークマニホールド内の圧力つまり負圧により低下していることから、前記定圧室の圧力が前記変圧室の圧力よりも低くなり、この圧力差に基づいて、前記ピストンには付勢力すなわちアシスト力が発生して、この付勢力に基づいて前記マスターシリンダ圧が生成される。
ここで、前記倍力装置の前記シリンダ内の体積から前記ピストンと前記ピストンを支持するロッドの体積を減じた全体体積は、前記変圧室の体積と前記定圧室の体積の和に等しい。加えて、前記定常状態においては、前記変圧室の体積の全てが前記大気圧となる。これらの知見を考慮すると、前記定圧室の体積は、前記全体体積から前記変圧室の体積を減じた体積となる。
運転者が前記ブレーキペダルを踏み込む操作を停止して、前記ブレーキペダルが前記戻しバネにより戻されて制動状態から非制動状態に移行した場合には、前記ピストンは前記ブレーキペダル側に戻されて、前記ロッドも前記ブレーキペダル側に戻されて、これに伴い、前記プランジャが前記大気圧バルブを閉として前記真空バルブを開として、前記変圧室と前記定圧室とが連通されて、前記定圧室に前記変圧室の大気圧が流入されて、前記定圧室内の圧力が上昇される。
このとき、前記インテークマニホールド内の圧力が前記定圧室内の圧力より低い場合には、前記逆止弁の作用に基づいて、前記定圧室内の圧力は前記インテークマニホールド内の圧力となる。
また、前記インテークマニホールド内の圧力が前記定圧室内の圧力より高い場合には、単位制御周期前後の前記変圧室の体積変化と体積と大気圧と前記全体体積と、前記単位制御周期前の前記定圧室の体積に基づいて、算出することができる。
この知見に基づいて、前記体積算出手段によりまず、前記ペダルストローク量に基づいて倍力装置内の変圧室内の体積を算出して、前記負圧算出手段は、前記体積に基づいて前記倍力装置内の定圧室内の圧力を算出して、前記圧力と大気圧に基づいて前記倍力装置内の負圧を算出する。
なお、前記定圧室内の前記単位制御周期後の圧力は、前記単位制御周期前の前記定圧室内の体積と圧力の積に前記体積変化に大気圧を乗じた値を加えた値を、前記単位制御周期後の前記定圧室内の体積で除した値となる。
前記負圧推定装置によれば、前記ペダルストローク量に基づいて前記倍力装置内の負圧を推定することができる。また、前記ブレーキペダルの踏力や前記マスターシリンダ圧に較べて、前記ペダルストローク量は現在の車両においてはより一般的に検出されているパラメータであるため、一般的に検出されることが多い既存のパラメータを利用して、比較的軽微な制御変更により前記負圧を推定することができる。つまり、実質的なコストアップを招くことなく負圧を推定することができる。
本発明の負圧推定装置によれば、コストアップを招くことなく倍力装置内の負圧を推定することができる。
本発明に係る負圧推定装置の一実施形態を示す模式図である。 本発明に係る負圧推定装置の一実施形態の一部を示す模式図である。 本発明に係る負圧推定装置の一実施形態の一部を示す模式図である。 本発明に係る負圧推定制御の制御内容を示すフローチャートである。 本発明に係る負圧推定制御の制御に用いられる記号の内容を示す模式図である。 本発明に係る負圧推定制御の制御内容を示すフローチャートである。 本発明に係る負圧推定制御の制御内容において用いられるマップである。 本発明に係る負圧推定制御の制御内容を示すフローチャートである。 本発明に係る負圧推定制御の制御内容において用いられるマップである。 本発明に係る負圧推定制御の制御内容において用いられるマップである。 本発明に係る負圧推定制御の制御内容において用いられるマップである。 本発明に係る負圧推定制御の制御内容を示すフローチャートである。 本発明に係る負圧推定制御の制御内容において用いられるマップである。 本発明に係る負圧推定制御の制御内容において用いられるマップである。
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る負圧推定装置の一実施形態を示す模式図である。図2は、本発明に係る負圧推定装置の一実施形態の一部を示す模式図である。図3は、本発明に係る負圧推定装置の一実施形態の一部を示す模式図である。
図1に示すように負圧推定装置1は、ブレーキECU2(Electronic Control Unit)と、ブースタ3と、ストロークセンサ4と、チェック弁5と、インテークマニホールド6を備えて構成される。インテークマニホールド6はエンジン7の吸気系統を構成し、エンジン7はエンジンECU8により制御され、エンジンECU8は図示しない圧力センサによりインテークマニホールド6内の圧力Piを検出している。ブレーキECU2と、エンジンECU8とはCAN(Controller Area Network)等の通信規格により相互に接続される。
ブレーキECU2は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行うペダルストローク量検出手段2aと、体積算出手段2bと、負圧算出手段2cを構成するものである。
ブースタ3は、図2に示すように、ピストン9及びロッド10とシリンダ11とプランジャ12から構成されて、ピストン9の図2中右側に位置するブレーキペダル20側に画成される変圧室13と、ピストン9のブレーキペダル20と反対側に画成される定圧室14とを含み、ピストン9はブレーキペダル20のペダルストローク量STに応じて図2中左右方向にストロークされる。
運転者がブレーキペダル20を踏み込んだ場合には、ピストン9、ロッド10及びプランジャ12は図2中左側に移動し、運転者がブレーキペダル20の踏み込みを解除した場合には、ピストン9、ロッド10及びプランジャ12は図示しない戻しバネの作用に基づいて、図2中右側に移動する。
エンジンECU8は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、エンジン7のスロットル弁15のスロットル開度、バルブタイミング、燃料噴射量等を制御して、主にエンジン7の回転数の制御を行い、インテークマニホールド6内の圧力Piを含むデータフレームをブレーキECU2に送信して、ブレーキECU2は圧力Piを取得する。
シリンダ11のブレーキペダル20側にはプランジャ12を収納する収納室16が設けられ、収納室16には変圧室13と大気とを開閉自在に連通する大気圧バルブ17と、変圧室13とエンジン7のインテークマニホールド6を開閉自在に連通する負圧バルブ18が設けられており、ペダルストローク量STに応じてプランジャ12が収納室16内を移動することにより、図2に示すように制動時にはプランジャ12は収納室16内を左側に移動して大気圧バルブ17を開とし、負圧バルブ18を閉とする。非制動時には、図3に示すように、プランジャ12は収納室16内を右側に移動して、大気圧バルブ17は閉とされ、負圧バルブ18は開とされる。
図2及び図3に示すように、定圧室14はエンジン7のインテークマニホールド6とは二股状の配管19の分岐側の一方により連通され、さらに、負圧バルブ18とインテークマニホールド6とは二股状の配管19の分岐側の他方により連通されて、配管19の合流側の中途には、図1に示すように定圧室14からインテークマニホールド6側に向けてのみ気体を通流するチェック弁5が設けられる。チェック弁5は逆止弁を構成する。
定圧室14内の圧力がインテークマニホールド6内の圧力よりも高い場合には、定圧室14内の気体はチェック弁5を通過してインテークマニホールド6内に流れこみ、定圧室14内の圧力は徐々に低下して、最終的にインテークマニホールド6内の圧力に等しくなる。逆に、定圧室14内の圧力がインテークマニホールド6内の圧力よりも低い場合には、チェック弁5の逆止弁作用によりインテークマニホールド6内から定圧室14に向けて気体は流れず、定圧室14内の圧力は変化しない。
図1に示すブレーキペダル20が運転者により踏み込まれていない非制動状態においては、ブレーキペダル20を踏み込み開始位置に戻す図示しない戻しバネの作用により、ブースタ3内のピストン9はシリンダ11のブレーキペダル20側に押し付けられて、プランジャ12により変圧室13と大気とは大気圧バルブ17が閉となることにより遮断されて、変圧室13に大気圧の気体は流入されない。
ブレーキペダル20が運転者により踏み込まれて制動状態となった場合においては、ブレーキペダル20のペダルストローク量STと変圧室13の体積とは、一意かつ線形の関係を有しており、図2に示すように、プランジャ12がブレーキペダル20と反対側に移動されて、大気圧バルブ17は開とされ負圧バルブ18は閉とされ、変圧室13と大気とが遮断されなくなり連通されて、変圧室13に大気圧が流入される。
変圧室13に大気圧の気体が流入されると、変圧室13に大気圧バルブ17を介して大気圧が流入している過渡的な状況においては、変圧室13に流入する気体は、大気圧、気温等の条件により流量がばらつくこととなるが、安定状態すなわち定常状態においては、変圧室13の圧力は大気圧に等しくなる。ここで、定圧室14の圧力がインテークマニホールド6内の圧力つまり負圧により低下していることから、定圧室14の圧力が変圧室13の圧力よりも低くなり、この圧力差に基づいて、ピストン9には付勢力すなわちアシスト力が発生して、この付勢力に基づいて図1に示すマスターシリンダ21においてマスターシリンダ圧が生成される。
ここで、ブースタ3のシリンダ11内の体積からピストン9とロッド10の体積を減じた全体体積Vは、変圧室13の体積Vhと定圧室14の体積Vcの和に等しいこととなり、定常状態においては、変圧室13の体積Vhの全てが大気圧となることを考慮すると、定圧室14の体積は、全体体積Vから変圧室13の体積Vhを減じた体積V−Vhとなる。
運転者がブレーキペダル20を踏み込む操作を停止して、ブレーキペダル20が戻しバネにより戻されて制動状態から非制動状態に移行した場合には、図3に示すように、ピストン9はブレーキペダル20側に戻されて、プランジャ12が大気圧バルブ17を閉として負圧バルブ18を開として、変圧室13と定圧室14とが配管19の分岐部分を介して連通されて、定圧室14に変圧室13の大気圧の気体が流入されて、定圧室14内の圧力が上昇される。
このとき、インテークマニホールド6内の圧力Piが定圧室14内の圧力Ptより低い場合には、定圧室14内の圧力Ptはインテークマニホールド6内の圧力Piとなる。また、インテークマニホールド6内の圧力Piが定圧室14内の圧力より高い場合には、単位制御周期前後の変圧室13の体積変化ΔVhと体積Vh(n−1)、Vh(n)と大気圧Paと全体体積Vと、単位制御周期前の定圧室14の体積V−Vh(n)に基づいて、算出することができる。
定圧室14内の単位制御周期後の圧力Pt(n)は、単位制御周期前の定圧室14内の体積V−Vh(n−1)と圧力Pt(n−1)の積に体積変化ΔVhに大気圧Paを乗じた値を加えた値を、単位制御周期後の定圧室14内の体積V−Vh(n)で除した値となる。つまり、Pt(n)=((V−Vh(n−1)・Pt(n−1)+ΔVh・Pa)/(V−Vh(n))、ΔVh=Vh(n−1)−Vh(n)となる。
ブレーキECU2のペダルストローク量検出手段2aは、ブレーキペダル20のペダルストローク量STをストロークセンサ4の出力結果に基づいて検出する。ブレーキECU2の体積算出手段2bは、ペダルストローク量STに基づいてブースタ3内の変圧室13内の体積Vhを算出する。ブレーキECU2の負圧算出手段2cは、ブースタ3内の変圧室13内の体積Vhに基づいてブースタ3内の定圧室14内の圧力Ptを算出して、算出した圧力Ptと大気圧Paに基づいてブースタ3内の負圧PBV=Pa−Ptを算出する。
なお、大気圧Paについては、例えば特開平8−122191号公報に記載されているように、エンジンECU8が、エンジン7のクランク軸一回転あたりの吸入空気重量を図示しないエアフローメータ等の適宜の手段を用いて検出して、検出された吸入空気重量とエンジン7を標準大気状態で同一のスロットル弁開度と回転数で回転した場合の吸入空気重量に基づいて、予め定めたマップにより大気圧Paを演算して、演算された大気圧Paを含むデータフレームをCANによりブレーキECU2に送信して、ブレーキECU2がこのデータフレームから大気圧Paを取得するものとする。
以下、本実施例1の負圧推定装置1の制御内容を、フローチャートとマップを用いて説明する。図4は、本発明による負圧推定装置1の制御内容を示すフローチャートであり、図5は、本発明による負圧推定装置1の制御内容に用いられる物理量を整理して示す模式図である。図6は本発明による負圧推定制御1の制御内容を示すフローチャートであり、図7は、本発明による負圧推定制御1の制御に用いられるマップである。
図4に示すステップS1において、ブレーキECU2の負圧算出手段2cは、定圧室14の圧力Ptを大気圧Paとする初期設定を行い、ステップS2にすすんで、周回スタートポイントを経て、ステップS3にすすみ、ステップS3において、ブレーキECU2は内部の制御フラグの内容から、車両を制動中であるか否かを判定し、肯定である場合には、図4中aとbとの間に位置するステップS4により、定圧室14内の圧力Ptを推定するロジックを実行し、ステップS3において否定である場合には、ステップS4をとばして、ステップS5にすすむ。
ステップS5において、ブレーキECU2の負圧算出手段2cは、定圧室14内の圧力Ptがインテークマニホールド6内の圧力Piより大きいか否かを判定し、肯定である場合には、ステップS6にすすんで、負圧算出手段2cは、圧力Ptを圧力Piとして、否定である場合には、ステップS6をとばして、ステップS7にすすみ、ブースタ3内の負圧PBV=Pa−Ptを算出する。ステップS7を終了した後は、再度ステップS2の周回スタートポイントに戻り、ステップS2からステップS7の処理は継続して単位制御周期毎に実行される。
なお、本発明の負圧推定装置1が用いる物理量の記号について、図5に整理して示す。図5中Ptは定圧室14内の圧力の値であり、Piはインテークマニホールド6内の圧力のセンサ値である。Paは大気圧の推定値であり、Vはブースタ3の全体体積であり、Vhは変圧室13の体積であり、PBVはブースタ3の定圧室14内の負圧である。なお、Piは推定値であってもよく、Paはセンサ値であってもよい。
図4に示したステップS4の詳細な処理内容を、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。図4に示すステップS8において、ブレーキECU2のペダルストローク量検出手段2aは、単位制御周期前つまり前回値のストローク量ST(n−1)を別のRAMに退避させて、今回値のストローク量ST(n)をストロークセンサ4により検出して、ステップS9にすすむ。
ステップS9において、ブレーキECU2の体積算出手段2bは、変圧室13の体積変化の量ΔVhを主に算出する。より具体的には、体積算出手段2bは、前回値の変圧室13の体積Vh(n−1)を、実験又はシミュレーションにより求められた図7に示すグラフ1により定義される関数Vh=F(ST)を用いて算出する。
さらに、体積算出手段2bは、今回値のストローク量ST(n)と図7に示すグラフにより定義される関数Fを用いて、今回値の変圧室13の体積Vh(n)を算出し、体積変化ΔVh=Vh(n−1)−Vh(n)の式より算出する。
なお、ここで念のためΔVhに不感帯を設けることとしてもよい。不感帯幅をVfとすると、ΔVhの絶対値がVfより小さくなる場合には、Vh(n−1)の値は、体積算出手段2bにより今周回では更新しないこととする。
つづいて、ステップS10において、体積変化ΔVhがゼロより大きいか否かを、体積算出手段2bが判定し、肯定である場合にはステップS11にすすみ、否定である場合には、ステップS12にすすむ。
ステップS11において、ブレーキECU2の負圧算出手段2cは、制動時から非制動時に移行するブレーキ緩め方向における定圧室14内の圧力Pt(n)を、ΔVhの体積変化分が、変圧室13から配管19を介して定圧室14内に流れ込むと考えて、Pt(n)=(V−Vh(n−1)・Pt(n−1)+ΔVh・Pa)/(V−Vh(n))の式から求める。
なお、完全に非制動時に移行した後は、変圧室13の体積Vhはゼロとなるため、定圧室14内の圧力はPt(n)=(V−Vh(n−1)・Pt(n−1)+ΔVh・Pa)/(V)と表されることとなる。
ステップS12においては、非制動時から制動時に移行する場合でありブレーキを掛ける方向であって、緩める側においては、変圧室13から定圧室14へ気体が流れ込むが、ブレーキを掛ける側において気体は変圧室13から定圧室14へは流れず、定圧室14内の体積変化ΔVh分の圧力変化のみであることを考慮して、負圧算出手段2cは、Pt(n)=Vh(n−1)・Pt(n−1)/Vh(n)を算出する。
以上述べた制御内容により実現される本実施例1の負圧推定装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、ペダルストローク量STに基づいてブースタ3内の負圧PBVを推定することができるため、ブレーキペダル20の踏力やマスターシリンダ圧に較べてより一般的に用いられ検出も容易なパラメータであるペダルストローク量STを用いることができ、既存のパラメータにより比較的軽微な制御内容の変更により負圧を推定することができる。これにより、実質的なコストアップを招くことなく負圧PBVを推定することができる。
なお、負圧PBVの推定は、ブレーキペダル20に作用する踏力と、マスターシリンダ21のマスターシリンダ圧に基づいて行うこともできる。以下に踏力とマスターシリンダ圧を用いた負圧PBVの推定に関する制御内容について述べる。なお、以下の制御内容においては、図1においては図示しないが、ブレーキペダル20に踏力検出用の圧力センサが設けられ、マスターシリンダ21の油圧配管の近傍にマスターシリンダ圧を検出する圧力センサが設けられて、双方の検出結果はブレーキECU2の入出力インターフェースに接続されるものとする。
図8は、本発明による負圧推定装置1の制御内容を示すフローチャートであり、図9〜11は本発明による負圧推定制御1の制御に用いられるマップである。
図8のステップS13に示すように、ブレーキECU2は、踏力FBPと、マスターシリンダ圧PMCを検出して、ステップS14にすすむ。ステップS14において、ブレーキECU2は、踏力FBPとマスターシリンダ圧PMCと、実験又はシミュレーションにより求められる図9に示すグラフ2により定義される、踏力とマスターシリンダ圧とのサーボ線Sと負圧により定まる助勢限界線ALとに基づいて、検出されたFBPとPMCのグラフ2上の位置が、サーボ線S上か助勢限界線AL上かを判定し、サーボ線上にある場合にはステップS15にすすみ、助勢限界線AL上にある場合には、ステップS16にすすむ。
なお、図9において、原点近傍から正の傾きにより右肩上がりに傾斜している線がサーボ線Sであり、サーボ線S上のほぼ等間隔の三点からそれぞれサーボ線Sよりも緩い傾斜により傾斜している線が助勢限界線ALである。助勢限界線ALは、ブースタ3の有する負圧により上下し、例えば負圧が大きいほど助勢限界線ALはマスターシリンダ圧PMCが大きい方向にシフトする。
ステップS15において、ブレーキECU2の体積算出手段2bは、これも、実験又はシミュレーションにより求められる図10に示すグラフ3により定義される、踏力と変圧室13の体積の関数Vh=H(PMC)により、変圧室13の前回値の体積Vh(n−1)=H(PMC(n−1))を算出し、今回値の体積Vh(n)=H(PMC(n))を算出し、体積変化ΔV=Vh(n−1)−Vh(n)を算出する。
ここでも、図6のステップS9と同様に、念のためΔVhに不感帯を設けることとしてもよい。不感帯幅をVfとすると、ΔVhの絶対値がVfより小さくなる場合には、Vh(n−1)の値は、体積算出手段2bにより今周回では更新しないこととする。
ステップS16において、ブレーキECU2の体積算出手段2bは、死点負圧DVBを一度セットした後、セットした後のマスターシリンダ圧PMCを記憶する。さらに、次回の周回以降で、死点負圧DVBがこのマスターシリンダ圧PMCを上回っていたら、死点負圧DVBの更新は行わない。さらに、死点負圧DVBがこのマスターシリンダ圧PMCを下回って、再度、助勢限界の判定をしたら、この時点でPMC_MEM、DVBを更新する。
ここで、PMC_MEM=PMC
DVB=J(PMC)とする。
なお、関数Jは実験又はシミュレーションで求めた図11のグラフ4に示す助勢限界負圧つまり死点負圧DVBとマスターシリンダ圧PMCとの関係を示す。
Pt=Pa−DVBとして以降の計算のつじつまあわせを行う。
ステップS15が終了した後は、図6のcに戻り、ステップS16が終了した後は、図6のdに戻る。
以上述べた手法によっても定圧室14内の圧力Ptを、ブレーキECU2の負圧算出手段2cが算出することができる。
上述した実施例1においては、ブースタ3内部に負圧を検出する圧力センサを用いることは行わなかったが、ブースタ3に負圧を検出する圧力センサを設けるコスト上の余裕がある場合には、ブースタ3の定圧室14内に圧力センサを設けて、負圧を検出する圧力センサの異常発生検出を、本発明の負圧推定装置1により判定することができる。以下それについての実施例2について述べる。
図12は、本発明による負圧推定装置1の制御内容を示すフローチャートであり、図13〜14は本発明による負圧推定装置1の制御に用いられるマップである。
なお、実施例1と共通する構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は割愛する。
なお、図13に示すように、ブースタ3の定圧室14内に設けられた図1においては図示しない圧力センサの検出した圧力と、センサ値ばらつき範囲とは実線で示す設計中央に対して、設計公差を有しており、設計公差は耐久性、温度特性等を含む。
図14に示すように、推定圧力と圧力推定誤差の関係は、元となる圧力センサの公差及び介在する部品のばらつき等により発生する。
図12のステップS17に示すように、ブレーキECU2は、シリンダ11内の定圧室14内の圧力の推定値のばらつき誤差範囲を例えば±αとして、このときの推定値をPV_ESTとすると、真値は、PV_SNS±2α内に存在することを把握する。
ステップS18において、ブレーキECU2は、センサ値の設計公差を±βとし、このときのセンサ値をPV_SNSとすると、真値はPV_SNS±2β以内にあることを把握する。
さらに、ステップS19において、ステップS17で求めたPV_EST±2αと、PV_SNS±2βが例えば二次元座標上で交わっているか否かを判定し、肯定であれば、ステップS20においてERR_COT=0とし、否定であれば、ステップS21にすすみ、ERR_CNT=+として、つづいて、ステップS22において、ERR_CNTがN回未満であるか否かを判定し、否定であれば、STARTに戻り、肯定であれば、ステップS23にすすみ、ブレーキECU2はセンサ異常を検出する。
なお、上述した図12のフローチャートにおいて、運転者の動作等により推定ばらつきαを状態により可変としても良い。このことは、例えば、制動中においては、ブースタ3の作動により非制動中よりも推定誤差が大きくなる等の理由によるものである。
以上述べた本実施例2の負圧推定装置1によれば、固着、レンジずれのみでなく、センサの設計公差ずれすなわちゲイン異常を、センサを増加させることなく、インテークマニホールド6内の圧力Pi、大気圧Paとペダルストローク量に基づいた推定値と、実際の検出値とを比較して検出することができ、定圧室14内の圧力センサの故障検出精度を向上させることができる。
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
本発明は、倍力装置内の負圧推定装置に関するものであり、コストアップを招くことなく倍力装置内の負圧を推定することができるとともに、既存のパラメータを有効活用することにより、負圧維持処置の要否を正確に判定して、必要な場合のみにエンジンを駆動させることができるので、エネルギー効率の低下と燃費の悪化を招くことを防止することができる。このため、本発明は、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
1 負圧推定装置
2 ブレーキECU
2a ペダルストローク量検出手段
2b 体積算出手段
2c 負圧算出手段
3 ブースタ
4 ストロークセンサ
5 チェック弁
6 インテークマニホールド
7 エンジン
8 エンジンECU
9 ピストン
10 ロッド
11 シリンダ
12 プランジャ
13 変圧室
14 定圧室
15 スロットル弁
16 収納室
17 大気圧バルブ
18 負圧バルブ
19 配管
20 ブレーキペダル
21 マスターシリンダ

Claims (1)

  1. ブレーキペダルのペダルストローク量を検出するペダルストローク量検出手段と、前記ペダルストローク量に基づいて倍力装置内の変圧室内の単位制御周期前の体積と単位制御周期後の体積と単位制御周期前後の体積変化を算出する体積算出手段と、前記変圧室の前記体積が減少する場合に、単位制御周期前の定圧室の体積と圧力の積に前記体積変化に大気圧を乗じた値を加えた値を単位制御周期後の定圧室内の体積で除して単位制御周期後の定圧室内の圧力を算出して、前記圧力大気圧から減じて前記倍力装置内の負圧を算出する負圧算出手段を含む、ことを特徴とする負圧推定装置。
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