JP5359160B2 - 耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材の製造方法 - Google Patents

耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、構造安全性が強く求められる、橋梁、船舶、建築物、海洋構造物、タンク、パイプなどの溶接構造物や、建設、輸送、採掘、掘削などに使用する機械、機器等に用いて好適な、厚鋼材の製造方法に係り、とくに、耐疲労き裂発生特性の改善に関する。なお、ここでいう「厚鋼材」は、肉厚:6mm以上の厚鋼板、形鋼等を含むものとする。
橋梁、船舶、建築物、海洋構造物、タンク、パイプなどの溶接構造物や、建設、輸送、採掘、掘削などに使用する機械、機器に使用される鋼材は、強度、靭性などの機械的性質や溶接性に優れていることはもちろんであるが、稼動時における定常の繰返し荷重や、風、地震等の震動に起因する非定常の繰返し荷重に対しても、構造物の構造安全性を確保できる特性を有することが要求される。
繰返し荷重に対しては、耐疲労特性に優れていることが要求される。一般的に、溶接構造物においては、定常あるいは非定常の繰返し荷重により、溶接止端部やスカラップなどの局所的な応力集中部から、多数の微小疲労き裂(数μm〜数100μm)が発生し、それらが連結して大きな疲労き裂となり、鋼材全体へと進展して、部材の終局的な破断に至ることが知られている。
疲労き裂の発生の抑制には、応力集中の低減が重要であり、そのような手法としてはTIG溶接等によるドレッシングや、ピーニング処理などが効果的であることが広く知られている。しかし、溶接構造物には、規模に応じて、数百あるいは数千もの応力集中個所が存在するため、このような処理を工業的な規模で実施することは、施工時間や施工コストの観点からも、非現実的であると言える。
新設された溶接構造物では、定期的に検査が行われるため、現状では、目視で識別できる大きさの疲労き裂(数mm〜数10mm)が検出された際には、補修を繰返して、構造物の安全性を保持していくことが行われている。しかし、このような検査や補修は、莫大な費用と手間を必要とする。このため、微小疲労き裂が発生したとしても、それが大きな疲労き裂に成長しないように、鋼材に疲労き裂発生抑制効果を持たせることが重要となる。
例えば、特許文献1には、疲労き裂が進展しにくい性質を有する鋼板が記載されている。特許文献1に記載された鋼板は、硬質部の素地とこの素地に分散した軟質部とからなる組織を有し、これら硬質部と軟質部の硬度差がビッカース硬さで150HV以上である鋼板である。この鋼板は、中程度のΔK領域において疲労き裂進展抑制特性に優れており、例えば溶接部から発生した疲労き裂の進展抑制効果を有し、この鋼板を使用した溶接構造物では、疲労寿命の延長が期待できるとしている。なお、特許文献1に記載された鋼板は、鋼材組成と圧延後の熱処理条件を適正に組合せる方法で製造できるとしている。
また、特許文献2には、耐疲労き裂伝播特性に優れた厚鋼材が記載されている。特許文献2に記載された厚鋼材は、軟質相と該軟質相を網目状に囲む硬質第二相からなる二相組織を有し、軟質相が、フェライト、焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトの1種または2種以上から構成されかつ平均ビッカース硬さが150HV以下、かつ硬質第二相がベイナイト、マルテンサイト、焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトの1種または2種以上から構成され、かつ平均ビッカース硬さが250HV以上、かつ硬質第二相の粒界占有率(硬質第二相が占めている粒界長さの総和/総粒界長さ)が0.5以上を、満足する厚鋼材であり、母材の疲労き裂進展速度を、いずれのき裂進展方向においても顕著に抑制できるとしている。なお、特許文献2に記載された厚鋼材は、予め鋼片に1200〜1350℃で2〜100hの拡散熱処理を施したのち、AC3変態点〜1250℃に加熱し、圧延後にAr3変態点以上から400℃以下まで加速冷却する熱間圧延を施し、さらに二相域に加熱した後400℃以下まで加速冷却する処理を施すか、鋼片を熱間圧延したのち、1150〜1250℃で2〜100hの加熱後、加速冷却する拡散熱処理を施し、さらに二相域に加熱した後400℃以下まで加速冷却する処理を施すことにより、製造できるとしている。
また、特許文献3には、「疲労強度に優れた厚鋼板」が記載されている。特許文献3に記載された厚鋼板は、フェライトと硬質第二相とを含む組織を有し、かつ、表面に平行な断面組織において、硬質第二相が、分率:20〜80%、平均ビッカース硬さ:250〜800HV、硬質第二相の平均円相当径:10〜200μm、硬質第二相間の最大間隔:500μm以下を満足し、硬質第二相の組織がベイナイト、マルテンサイトのいずれか又は両者の混合である鋼板であり、疲労き裂の進展抑制効果を有するとしている。なお、特許文献3に記載された厚鋼板は、1150〜1300℃で1〜100h保持する拡散熱処理を施したのち、AC3変態点〜1250℃に加熱し、圧下比が2以上の熱間圧延を行い、熱間圧延後、0.1〜2℃/sの冷却速度でフェライト分率が10%以上となる温度まで冷却し、さらに500℃以下まで5〜100℃/sで急冷する方法で製造できるとしている。
また、疲労き裂伝播挙動に及ぼす微視組織の影響については、例えば非特許文献1に報告がある。非特許文献1に記載された報告では、低炭素鋼を用いて、特殊な熱処理を繰り返して特殊な微視組織を得て、疲労き裂伝播特性を調査している。使用した組織は、ビッカース硬さが148HVの軟質相(フェライト相)中に、平均サイズ:149μmで、ビッカース硬さ565HVの硬質相(マルテンサイト相)を分率:36.4%で均一分散させた組織(鋼A)と、ビッカース硬さが546HVの硬質相(マルテンサイト相:分率:39.2%)が、ビッカース硬さが149HVの軟質相(フェライト相)を網目状に取り囲んだ組織(鋼B)と、の2種の鋼材について疲労き裂伝播特性を調査している。その結果、鋼Aより、鋼Bのほうが、疲労き裂伝播速度が低減するとしている。
また、特許文献4には、C:0.01〜0.10%、Si:0.04〜0.6%、Mn:0.50〜2.0%、Al:0.003〜0.06%、さらにTi:0.001〜0.10%を含み、炭素当量Ceq値が0.28〜0.65%で、鋼板表面から板厚方向に2mmの深さまでの領域の清浄度が0.005〜0.1%であることを特徴とする継手疲労強度に優れた溶接用耐疲労亀裂鋼板が記載されている。特許文献4に記載された技術は、表層の介在物と疲労特性とが相関があることを見出したことに基づいており、連続鋳造鋳型内の溶鋼流動を適正な状態に維持するか、適正な組成のモールドフラックスを用いることにより達成できるとしている。
特許2962134号 特許3785392号 特許3860763号 特開2007−182611号公報 H.SUZUKI and A.J.McEVILY:Metallurgical Transactions, Vol.10A(1979), p475〜481.
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、上記した組織の鋼板を製造するために、圧延後、組成に応じて、直接焼入れ、再加熱焼入れ処理、あるいは二相域加熱焼入れ、さらには焼戻し等の特別な熱処理を必要とし、製造工程が複雑となり、工業的な製造においては問題を残していた。
また、特許文献2に記載された技術では、長時間の拡散熱処理、二相温度域での加熱・冷却処理等、製造工程が複雑となり、工業的製造においては問題を残していた。
また、特許文献3に記載された技術では、特許文献3の実施例に記載されているように、鋼材の板厚方向への疲労き裂の進展は抑制する場合があると考えられるが、鋼材の長手方向や幅方向での耐疲労き裂伝播特性の劣化が懸念される。また、特許文献3に示された組織分率や硬さの組み合わせでは、疲労き裂進展抑制効果が全くみられない場合があることも本発明者らは確認している。
また、非特許文献1に記載された技術では、所望の組織を得るために、5段階にわたる特殊な熱処理を必要とし、工業的規模での生産に適した技術とは言えない。また、特許文献4に記載された技術は、実施例に記載されているように、同じ条件で処理しても、表層の介在物分布を適正な範囲内に調整できない場合が生じ、安定性に欠けるという問題がある。
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み、微小な疲労き裂(数μm〜数100μm)の発生を抑制できる、耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材の製造方法を提供することを目的とする。なお、ここでいう「微小な疲労き裂」とは、非特許文献2(田中ら:材料、第31巻、第343号、p.376〜382(1982).)に示されているような、結晶粒界と相互作用をもたらすような微小な疲労き裂(表面長さで数μm〜数100μm)をいうものとする。
また、ここでいう「耐疲労き裂発生特性に優れた」とは、応力比が0を超え0.50以下の高サイクル疲労試験における、繰返し回数が200万回で破断しなかった最大の応力振幅での最大応力σWmaxが、静的引張試験の0.2%耐力σ0.2の0.8倍以上である場合をいうものとする。
なお、本発明が目的とする厚鋼材は、耐疲労き裂発生特性に優れるとともに、構造物用鋼材として、引張強さTS:490MPa以上の強度と、シャルピー衝撃試験(JIS Z 2242の規定に準拠)の破面遷移温度vTrsが0℃以下の高靭性を有する。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、微小な疲労き裂の発生に及ぼす微視組織の影響について鋭意研究を行った。その結果、表層近傍の領域(表面から板厚の1/10までの領域)において、硬質相からなる基地中に軟質相を分散させた組織を含み、かつ硬質相と軟質相とのビッカース硬さの差ΔHV(=(硬質相のビッカース硬さHV)−(軟質相のビッカース硬さHV))と軟質相の平均粒径d(μm)とが特定の関係を満足する組織とすることにより、厚鋼材の耐疲労き裂発生特性が顕著に向上することを新規に見出した。
そして、本発明者らの更なる検討により、上記した微細組織を有する厚鋼材は、圧延後の冷却・再加熱を適正に施すことにより、工業的規模でも製造が十分可能であるという知見を得た。
まず、本発明者らが行った、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
種々の組成および製造方法で作成した種々の鋼材について、JIS Z 2273の規定に準拠して、応力比:0.1で、大気中、周波数:10Hzとするsine波形の応力を付加する高サイクル疲労試験を実施した。そして、疲労試験における、繰返し回数が200万回で破断しなかった最大の応力振幅での最大応力σWmaxを疲労強度(200万回疲労強度)として求めた。そして、得られた疲労強度σwmaxと、静的引張試験時の0.2%耐力σ0.2との比、σwmax/σ0.2を算出した。また、使用した鋼材について、組織を観察して、軟質相の平均粒径d(μm)を測定するとともに、硬質相および軟質相のビッカース硬さをそれぞれ測定し、硬質相と軟質相との硬さ差ΔHVを算出した。
得られた結果を、σwmax/σ0.2と(ΔHV)/dとの関係で、図1に示す。
図1から、(ΔHV)/dが400以上となる場合に、σwmax/σ0.2が0.8以上となり、耐疲労き裂発生特性が向上することがわかる。
また、本発明者らのさらなる研究により、このような組織は、圧延後の冷却条件までを考慮した適正な熱間圧延と、二相温度域への再加熱処理とを組み合わせることにより、確保できることを新規に見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)質量%で、C:0.02〜0.4%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.2%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.1%以下、T.N:0.005%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材に、熱間圧延工程、再加熱処理工程を順次施して、所定寸法の厚鋼材とする厚鋼材の製造方法であって、前記熱間圧延工程が、前記鋼素材に(Ac3変態点+100℃)以上の温度に再加熱し、Ac3変態点を超える温度域における累積圧下率が50%以上となる熱間圧延を施して厚鋼材とした後、Ms点以下の温度まで空冷する工程であり、前記再加熱処理工程が、前記熱間圧延工程を経た厚鋼材に、0.9℃/s以上の加熱速度で、Ac3変態点〜Ac1変態点の温度域の温度まで再加熱した後、24℃/s以上の冷却速度でM点以下の温度まで冷却する再加熱冷却処理を施す工程であり、前記所定寸法の厚鋼材が、表面から板厚方向に板厚の1/10までの領域において、硬質相からなる基地中に軟質相が分散した組織を含み、該軟質相の平均粒径d(μm)と前記硬質相のビッカース硬さと前記軟質相のビッカース硬さとの差ΔHVとが次(1)式
(ΔHV) /d ≧ 400 ‥‥‥(1)
(ここで、ΔHV:硬質相のビッカース硬さと前記軟質相のビッカース硬さとの差、d:軟質相の平均粒径d(μm))
を満足する組織を有する厚鋼材である、ことを特徴とする耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材の製造方法。
(2)(1)において、前記再加熱処理工程を経た前記厚鋼材に、さらにAc1変態点未満の温度で焼戻しする焼戻処理を施すことを特徴とする厚鋼材の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼材の製造方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.01〜10.0%を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼材の製造方法。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする厚鋼材の製造方法。
(6)(1)ないし(5)のいずれかに記載の厚鋼材の製造方法で製造されてなる耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材。
本発明によれば、微小な疲労き裂(数μm〜数100μm)の発生を抑制できる、耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼板を、現状の製造条件を最適化することで、容易にしかも安定して製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、仮に応力集中部に微小疲労き裂が発生しても、それが大きな疲労き裂(数mm〜数十mm)となることを抑制でき、鋼構造物や機械・機器等の寿命延長や補修工程の省力化に繋がるという効果もある。
本発明の厚鋼材の製造方法では、鋼素材に、熱間圧延工程と、再加熱処理工程、あるいはさらに焼戻工程とを順次施す。
本発明で使用する鋼素材の製造方法は、とくに限定する必要はないが、溶鋼を、転炉等の常用の溶製法で溶製し、所定の組成に調整したのち、さらに連続鋳造法等の常用の鋳造方法でスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。
まず、本発明で使用する鋼素材の組成限定理由について説明する。なお、以下、とくに断わらない限り質量%は、単に%で記す。
C:0.02〜0.4%
Cは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素であり、本発明ではとくに硬質相の強度増加に寄与し、疲労強度を顕著に増加させる作用を有する。このような効果を得るためには、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.4%を超えて含有すると、延性や曲げ加工性が低下するとともに、溶接性が低下する。このため、Cは0.02〜0.4%の範囲に限定した。
Si:0.01〜0.55%
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶して鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.55%を超える含有は、靭性を低下させるとともに、溶接性を低下させる。このため、Siは0.01〜0.55%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.45%である。
Mn:0.1〜3.0%
Mnは、焼入れ性の向上を介し、鋼の強度を増加させるとともに、靭性を向上させる作用を有する。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Mnは0.1〜3.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.5〜3.0%である。
P:0.2%以下
Pは、耐候性を向上させる元素であるが、Pの多量含有は、靭性の劣化に繋がる。そのため、できるだけ低減することが望ましいが、0.2%までは許容できる。このようなことから、Pは、0.2%以下に限定した。なお、好ましくは0.1%以下である。
S:0.05%以下
Sは、鋼中では、介在物として存在し延性、靭性等を劣化させるため、できるだけ低減することが望ましいが、0.05%までは許容できる。このようなことから、Sは0.05%を上限とした。なお、好ましくは0.03%以下である。
Sol.Al:0.1%以下
Sol.Alは、脱酸剤として作用するとともに、結晶粒の微細化にも寄与する元素であるが、0.1%を超える過剰の含有は、靭性の低下に繋がる。このため、Sol.Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.05%以下である。
T.N:0.005%以下
T.N(全N量)は、Cと同様に、固溶強化により鋼の強度を増加させる元素であるが、過剰な含有は靭性の低下を招く。このため、本発明ではT.Nは0.005%以下に限定した。
上記した成分が基本の成分であるが、本発明では上記した基本の組成に加えてさらに、必要に応じて、Cu:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ni:0.01〜10.0%、および/または、Ca:0.01%以下、REM:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有してもよい。
Cu:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Cr、Mo、Nb、V、Ti、Bはいずれも、強度を増加させる作用を有する元素であり、必要に応じて、選択して含有できる。
Cuは、固溶強化を介して鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果を確保するためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超える含有は、溶接性が低下するとともに、鋼材製造時に疵が生じやすくなる。このため、含有する場合には、Cuは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.01〜1.0%である。
Crは、焼入れ性の向上や焼戻軟化抵抗の増加を介して鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果は、0.01%以上の含有で認められる。一方、3.0%を超える含有は、溶接性と靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Crは0.01〜3.0%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.01〜2.5%である。
Moは、焼入れ性の向上や焼戻軟化抵抗の増加を介して鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。このような効果は、0.01%以上の含有で認められる。一方、2.0%を超える含有は、溶接性と靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Moは0.01〜2.0%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.01〜1.0%である。
Nbは、焼戻時に炭化物として析出し、析出強化を介して鋼の強度を増加させる元素である。また、Nbは圧延・焼入れ時のオーステナイト粒を細粒化する作用も有するが、0.1%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Nbは0.1%以下に限定することが好ましい。なおより好ましくは0.05%以下である。
Vは、焼戻時に炭化物として析出し、析出強化を介して鋼の強度を増加させる元素である。また、Vは、圧延・焼入れ時のオーステナイト粒を細粒化する作用も有するが、0.1%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Vは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05%以下である。
Tiは、焼戻時に炭化物として析出し、析出強化を介し、鋼の強度を増加させるとともに、TiNが溶接熱影響部における旧オーステナイト粒を微細化し靭性を向上させる。しかし、0.1%を超える含有は、溶接熱影響部靭性を低下させるとともに、鋼材コストの高騰を招く。このため、Tiは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05%以下である。
Bは、少量の含有で焼入れ性を向上させ、焼入れ性の向上を介して鋼の強度を増加させる作用を有する元素であるが、0.01%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、含有する場合には、Bは0.01%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.005%以下である。
Ni:0.01〜10.0%
Niは、低温靭性を向上させる作用を有するとともに、Cu含有時にCuによる熱間脆性の発生を防止する作用を有する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果は0.01%以上の含有で認められるが、10.0%を超える含有は、鋼材コストの高騰を招くとともに、溶接性が低下する。このため、Niは含有する場合には0.01〜10.0%に限定することが好ましい。
Ca:0.01%以下、REM:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種
Ca、REMはいずれも、溶接熱影響部靭性を向上させる元素であり、必要に応じて選択して1種または2種を含有できる。
Caは、溶接熱影響部靭性を向上させる元素であるが、0.01%を超える含有は、CaS介在物が増加し靭性を低下させる悪影響を及ぼす。このため、含有する場合は0.01%以下に限定することが好ましい。
REMは、含有元素との相互作用で、溶接熱影響部靭性を向上させる元素であるが、0.1%を超えて含有すると靭性が低下する。このため、REMは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、ここではREMは、希土類元素であるY、Ce等の総称で、ここでいう含有量はこれら元素の総量を意味する。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
本発明では、上記した組成の鋼素材に、まず、熱間圧延工程を施す。
熱間圧延工程では、鋼素材を(Ac3変態点+100℃)以上の温度に再加熱し、Ac3変態点を超える温度域における累積圧下率が50%以上となる熱間圧延を施して厚鋼材とした後、Ms点以下の温度まで空冷する。
熱間圧延のための再加熱温度が、(Ac3変態点+100℃)未満では、鋼素材に、所望の累積圧下率を付与する熱間圧延を施すことができなくなる。また、Ac3変態点を超える温度域における累積圧下率が50%未満では、所望の強度、靭性を確保できなくなる。このため、鋼素材に施す熱間圧延は、(Ac3変態点+100℃)以上の温度に再加熱し、Ac3変態点を超える温度域における累積圧下率が50%以上となる熱間圧延とすることが好ましい。
なお、Ac3変態点は、各成分の含有量に基づいて、次式で算出できる。
c3変態点(℃)=854−180C+44Si−14Mn−17.8Ni−1.7Cr、
ここで、C、Si、Mn、Ni、Crは各元素の含有量(質量%)である。
熱間圧延工程では、上記した熱間圧延後、Ms点以下の温度まで空冷する。これにより、フェライトに代表される軟質相中にパーライトに代表される硬質相が分散した組織を有する厚鋼材となる。
熱間圧延工程を経た厚鋼材は、ついで再加熱処理工程を施される。
再加熱処理工程では、0.9℃/s以上の加熱速度で、Ac3変態点〜Ac1変態点の温度域(二相温度域)の温度まで再加熱し、しかるのちに、24℃/s以上の冷却速度でM点以下の温度まで冷却する再加熱冷却処理を施す。
軟質相中に硬質相が分散した組織を有する厚鋼材を、上記した二相温度域の温度に加熱することにより、硬質相部分や、軟質相界面が順次オーステナイトに変態する。二相温度域への加熱速度が0.9℃/s未満と遅い加熱では、オーステナイト化しない硬質相が軟化しすぎて、耐疲労き裂発生特性が低下する。
二相温度域の所定の温度に加熱され、必要に応じて所定の時間保持された厚鋼材は、ついで、24℃/s以上の冷却速度でM点以下の温度(冷却停止温度)まで冷却される。これにより、オーステナイトに変態した部分がマルテンサイト、ベイナイトなどのより硬い硬質相に変態し、軟質相と硬質相との硬さ差ΔHVが大きくなり、耐疲労き裂発生特性が向上する。なお、冷却停止温度がM点を超える場合や、冷却速度が24℃/s未満の場合には、硬さが低い硬質相が生成し、ΔHVが小さくなる。
なお、Ac1変態点、M点は、各成分の含有量に基づいて、次各式で算出できる。
c1変態点(℃)=723−14Mn+22Si−14.4Ni+23.3Cr、
点(℃)=517−300C−33Mn−22Cr−17Ni−11Mo−11Si
(ここで、C、Si、Mn、Ni、Cr、Moは各元素の含有量(質量%))
なお、本発明では、上記した再加熱処理工程後にさらに焼戻工程を行ってもよい。
焼戻工程では、Ac1変態点未満の温度で焼戻する焼戻処理を施す。焼戻処理を施すことにより、延性、靭性が向上し、所望の強度および靭性に調整することができる。なお、焼戻温度がAc1変態点以上では、島状マルテンサイトが生成し靭性が低下する。
上記した本発明の製造方法で得られた厚鋼材は、上記した組成を有し、さらに表面から板厚方向に板厚の1/10までの領域において、硬質相からなる基地中に軟質相が分散した組織を含み、軟質相の平均粒径d(μm)と硬質相と軟質相の硬さの差ΔHVとが特定の関係式を満足する組織を有する。
ここでいう「表面」とは、図2に示す鋼材の表面に生成された酸化膜(いわゆるスケール)下の地鉄(鋼材)表面を意味する。ここでいう「硬質相」とは、ベイナイト、焼戻ベイナイト、焼戻マルテンサイト、マルテンサイトのうちの1種または2種以上をいうものとする。また、軟質相は、フェライト、ベイナイト、焼戻ベイナイトのうちの1種または2種以上をいうものとする。なお、硬質相からなる基地中に軟質相が分散した組織は、スケール直下の領域に存在することがより好ましい。
そして、上記した硬質相からなる基地中に軟質相が分散した組織は、軟質相の平均粒径d(μm)と、硬質相と軟質相の硬さの差ΔHV(=(硬質相のビッカース硬さHV)−(軟質相のビッカース硬さHV))とが下記(1)式
(ΔHV)/d ≧ 400 ‥‥‥(1)
(ここで、ΔHV:硬質相のビッカース硬さと軟質相のビッカース硬さとの差、d:軟質相の平均粒径d(μm))
を満足する組織である。
dとΔHVとが、(1)式を満足することにより、σwmax/σ0.2が0.8以上となる、所望の耐疲労き裂発生特性を確保することができる。これは、軟質相に発生するき裂の長さが軟質相の微細化にともない小さくなること、および、軟質相と硬質相の硬さ差ΔHVが大きくなるとともに、軟質相に発生したき裂が硬質相に進展しにくくなることによるためと考えられる。dとΔHVとが、(1)式を満足しない場合には、所望の耐疲労き裂発生特性を確保することができなくなる。
なお、軟質相の硬さ、硬質相の硬さは、ビッカース硬さ試験に際し使用する荷重により変化するため、図3に示すように、軟質相内または硬質相内で、圧痕が、K>Hとなるように、荷重を選択して測定するものとする。
以下、実施例に基づいてさらに本発明を詳細に説明する。
表1に示す組成の鋼素材に、表2に示す条件で熱間圧延工程、再加熱処理工程、あるいはさらに焼戻工程を施し、板厚13〜100mmの厚鋼板(厚鋼材)とした。これら厚鋼板について、組織観察、硬さ試験、引張試験、靭性試験、疲労試験を実施した。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)組織観察
得られた厚鋼板から、表面から板厚方向に少なくとも板厚の1/10までの領域を含むように組織観察用試験片を採取した。組織観察用試験片の、圧延方向に平行な断面を観察面として鏡面研磨し、3%ナイタール腐食液によりエッチングし、金属組織を観察し、組織の同定を行った。なお、金属組織の観察は、光学顕微鏡(倍率:50〜400倍)を用いて、ランダムに視野数:20視野で行った。そして、各視野で、JIS G 0551(2005)の規定に準拠した線分法(切断法)を用いて、軟質相の粒径dを圧延方向と板厚方向についてそれぞれ測定し、それらの平均値を該厚鋼板の各視野における粒径とし、さらに、これら各視野における値の算術平均をその厚鋼板の軟質相の平均粒径dとした。
また、上記した組織観察の各視野で、JIS G 0551(2005)の規定に準拠した線分法を用いて、軟質相と硬質相の境界数Bshと全境界数Btとを測定し、BshとBtとの比、Bsh/Bt、を算出した。そして、Bsh/Btが0.70以上である視野が1つ以上存在する場合を硬質相(基地)中に軟質相が分散している組織を含む組織となっていると判定した。なお、表中には、得られたBsh/Btの最大値を示した。Bsh/Btが0.70未満では、総境界数中に占める軟質相/軟質相の境界相が多くなるため、軟質相が分散しているのではなく、基地として存在すると判定した。
(2)硬さ試験
得られた厚鋼板から、表面から板厚方向に少なくとも板厚の1/10までの領域を含むように硬さ測定用試験片を採取した。硬さ測定用試験片の、圧延方向に平行な断面を測定面として鏡面研磨し、ビッカース硬さ計を用いて、硬質相と軟質相の硬さをそれぞれ測定した。なお、軟質相と硬質相の硬さ測定に当たっては、図3に示すように、K>Hとなるように、各試験片ごとに、荷重を選択して測定した。硬さ測定は、各厚鋼材について前記Bsh/Btが最大値を示した位置で、硬質相、軟質相を各10ヶ所行い、それらの値の算術平均を、各厚鋼材の軟質相の硬さ(HVs)および硬質相の硬さ(HVh)とした。そして、各厚鋼材における、硬質相と軟質相の硬さの差ΔHV(=HVh−HVs)を算出した。
(3)引張試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2201(1998)の規定に準拠して、引張方向が鋼板の圧延方向と直角方向となるように、全厚のJIS 5号引張試験片を採取した。引張試験は、JIS Z 2241(1998)に準拠して行い、0.2%耐力σ0.2、引張強さσTSを求め、静的引張時の引張特性を評価した。
(4)靭性試験
得られた厚鋼板から、JIS Z 2242(2005)の規定に準拠して、長手方向が圧延方向に平行方向となるように、Vノッチ試験片を採取し、破面遷移温度vTrsを求め、靭性を評価した。なお、試験片は、板厚が20mm以上の場合は、T/4位置、板厚が20mm未満の場合はT/2位置から採取した。
(5)疲労試験
得られた厚鋼板から、長手方向が圧延方向に直角方向となるように、JIS Z 2201(1998)の規定に準拠して全厚のJIS 5号引張試験片を採取した。これら試験片を用いて、JIS Z 2273(1978)の規定に準拠して疲労試験を実施し、疲労強度を求めた。疲労試験は、大気中にて応力比:0.1で、周波数10Hzのsine波形の応力を負荷して行い、繰返し数が200万回で破断しなかった最大の応力振幅での最大応力σwmaxを求め、疲労強度とした。図4に、負荷した応力の波形を模式的に示す。
得られた結果を表3に示す。
本発明例はいずれも、表面から板厚方向に板厚の1/10までの領域に、所望の組織が含まれ、σWmax/σ0.2が0.8以上で、耐疲労き裂発生特性に優れ、しかも、引張強さTS:490MPa以上の強度と、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度vTrsが0℃以下の高靭性を有する厚鋼板となっている。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、σWmax/σ0.2が0.8未満で耐疲労き裂発生特性が低下しているか、強度が不足しているか、あるいは靭性が低下しているか、あるいは両者とも劣化している。
C含有量が本発明範囲を低く外れる厚鋼板No.11は、強度が不足し、さらに(1)式を満足せず、σWmax/σ0.2が0.8未満と、耐疲労き裂発生特性が低下している。また、C、P、S含有量が本発明範囲を高く外れる厚鋼板No.12は、靭性が低下している。
また、熱間圧延条件のうち、再加熱温度、圧下率が本発明の範囲外となる厚鋼板No.13は強度が不足し、靭性が低下している。また、熱間圧延終了後の冷却が本発明の範囲外となる厚鋼板No.14は、Bsh/Btが0.70未満となり、硬質相中に軟質相が分散した所望の組織となっていないため、(1)式を満足せず耐疲労き裂発生特性が低下している。
また、再加熱処理工程における加熱速度が本発明の範囲外となる厚鋼板No.15は、(1)式が満足されず、耐疲労き裂発生特性が低下している。また、再加熱処理工程における加熱温度が本発明の範囲を高く外れる厚鋼板No.16は、軟質相が生成せず、ベイナイト単相組織となり、所望の組織となっていないため、耐疲労き裂発生特性が低下している。また、再加熱処理工程における加熱温度が本発明の範囲を低く外れる厚鋼板No.17は、強度が不足し、さらに(1)式を満足せず、耐疲労き裂発生特性が低下している。
また、再加熱処理工程における加熱後の冷却速度が、本発明の範囲を低く外れる厚鋼板No.18は、強度が不足し、さらに(1)式を満足せず、耐疲労き裂発生特性が低下している。また、再加熱処理工程における加熱後の冷却停止温度が、本発明の範囲を高く外れる厚鋼板No.19は、強度が不足し、さらに(1)式を満足せず、耐疲労き裂発生特性が低下している。
また、焼戻温度が本発明の好適範囲を高く外れる厚鋼板No.20は、靭性が低下している。
200万回疲労強度σWmaxと静的引張時の0.2%耐力σ0.2との比と、(ΔHV)/dとの関係を示すグラフである。 本発明で定義する鋼材表面の位置を示す写真である。 軟質相または硬質相の硬さ測定方法を模式的に示す説明図である。 実施例で使用した疲労試験時の負荷応力の波形を模式的に示す説明図である。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.02〜0.4%、 Si:0.01〜0.55%、
    Mn:0.1〜3.0%、 P:0.2%以下、
    S:0.05%以下 Sol.Al:0.1%以下、
    T.N:0.005%以下
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材に、熱間圧延工程、再加熱処理工程を順次施して、所定寸法の厚鋼材とする厚鋼材の製造方法であって、
    前記熱間圧延工程が、前記鋼素材に(Ac3変態点+100℃)以上の温度に再加熱し、Ac3変態点を超える温度域における累積圧下率が50%以上となる熱間圧延を施し、厚鋼材とした後、Ms点以下の温度まで空冷する工程であり、
    前記再加熱処理工程が、前記熱間圧延工程を経た厚鋼材に、0.9℃/s以上の加熱速度で、Ac3変態点〜Ac1変態点の温度域の温度まで再加熱した後、24℃/s以上の冷却速度でM点以下の温度まで冷却する再加熱冷却処理を施す工程であり、
    前記所定寸法の厚鋼材が、表面から板厚方向に板厚の1/10までの領域において、硬質相からなる基地中に軟質相が分散した組織を含み、該軟質相の平均粒径d(μm)と前記硬質相のビッカース硬さと前記軟質相のビッカース硬さとの差ΔHVとが下記(1)式を満足する組織を有する厚鋼材である、
    ことを特徴とする耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材の製造方法。

    (ΔHV) /d ≧ 400 ‥‥‥(1)
    ここで、ΔHV:硬質相のビッカース硬さと軟質相のビッカース硬さとの差
    d:軟質相の平均粒径d(μm)
  2. 前記再加熱処理工程を経た前記厚鋼材に、さらにAc1変態点未満の温度で焼戻しする焼戻工程を施すことを特徴とする請求項1に記載の厚鋼材の製造方法。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.01〜2.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜2.0%、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の厚鋼材の製造方法。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.01〜10.0%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の厚鋼材の製造方法。
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.1%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の厚鋼材の製造方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の厚鋼材の製造方法で製造されてなる耐疲労き裂発生特性に優れた厚鋼材
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