JP5358806B2 - ドリル - Google Patents
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Description
上記問題点を解決せんとして、従来、ドリル本体の外径を変化させるバックテーパ部を形成し、捩れリード溝のリード角に対して先端角を二段変化させる改良(特許文献1)、あるいは、センタリング切刃を中心としてその両側円周面に先端が被穿孔面に対し弧状をなす略三日月形の主切刃を形成し、前記センタリング切刃と主切刃間には切込み刃を形成して、それらが正面から見て略M字形状の刃先形状となるような改良(特許文献2)などがみられた。
この先願ドリルの基本構造は、ドリル本体の先端部分に、先端角により形成される一対の切り刃および逃げ面が形成されるが、その逃げ面の外周肩部をR面取りした湾曲面とし、切り刃および前記肩部近傍の捩れリード溝に掬い部を設け、かつ切り刃の稜線を先端部から外周端に向けた凹曲線状とそれに続く湾曲状にし、全体として切り刃を側面視S字曲線からなる鋭利な刃先形状としたものであり、それにより、表面層の捲れ上がり、孔内の髭残りや裏面層の下バリ発生を防止するものである。
また、本発明の他の目的は、ドリル本体の先端ヘッド部分の構造や材質の改良によりドリルの製作性および耐久性を向上させることにある。
また、ドリル本体に設けた冷媒路を通してエアーなどの冷媒を、先端ヘッド部分における捩れリード溝内から切り刃稜線に向けて直接に噴射することにより、切り刃の高い冷却効果が得られてドリルの耐久性を向上させることができるとともにリード溝内の先端で反転する冷媒流により切屑の排出効果が一段と向上する。
しかも、刃先交換方式により先端ヘッド部分を型成形することもできるので、従来の研削・研磨加工では得られない複雑な構造・形状の先端ヘッドが得られ、これまで以上に機能的なドリルを提供することができる。
また、先端ヘッド部分をセラミックス成形体とすることにより当該部分の強靭性を高めることができ、さらに、ダイヤモンド被覆層を形成することによって耐摩耗性を向上させて特にCFRPなど難削性材料に好適なドリルを提供することができる。
ドリル本体1は、超硬合金や高速度鋼など超硬質材料製であって、軸線回りに回転される略円柱状の一側(後方側)にシャンク2を備え、先方側には切屑排出用の3条の捩れリード溝3,3,3を形成したランド部4を設けており、先端のヘッド部分10には、先端角αにより形成される切り刃5,5,5と、各切り刃から円周方向へ連なる逃げ面6および切屑を排出しやすくするためのシンニング7と、シンニングにより形成されるチゼルエッジ8を備えている。
また、ドリル本体1は、前記シャンク2の端面から先端ヘッド部分10に向けた軸中心に冷媒路9を開孔している。
なお、上記先端リード角βaは、前記5°に限定されるものではなく、捩れリード溝3のリード角やワークの材質等に対応して−10°〜+10°の範囲の一定値で有効である(図4参照)。すなわち、リード角βaが10°を超えると捲れ上がりPを防止する機能が達成できず、−10°未満になると切削性自体が低下することになるからである。さらに先端リード角βaの好ましい範囲は−5°〜+5°である。
この外周掬い角θは、外周刃部5aの切削性および刃先強度を考慮して20°〜40°、好ましくは30°〜40°の中の一定値に設定する。外周掬い角θが20°未満では所望の切削性が得られず、40°を超えると刃先強度が低く耐久性が得られないからである。
この切り刃稜線の凹曲線形状は、外周掬い角θが同じ場合では前記先端角αにより変化する。具体的には、標準的な先端角αは118°〜130°であるので、図1においては先端角αが120°の場合を例示するが、図5のように先端角αを140°にすると、切り刃稜線の凹曲深さが図1の場合よりも大きく、すなわち、先端角αが大きい場合ほど凹曲線深さが深くなる。
なお、CFRP材料Wの加工においては、切屑が非常に硬く粉状になるため大容量の切屑を迅速に排出することが重要であることを考慮すると、前記切り刃稜線の凹曲線深さは深いことが好ましい。
なお、切削抵抗をより軽減させるためには、上記の先端角140°〜150°の範囲であっても、先端角を二段変化、つまり中央部の先端角を120°前後にし、その外周先端角を140°〜150°の範囲に設定すればよい(図14)。なお、図14においては、刃先交換式の先端ヘッド20について図示するが、前記先端ヘッド部分10に適用できること勿論である。
各冷却孔9aには、ドリルの穿孔加工時に冷媒路9を介して冷媒が供給されるが、その冷媒が捩れリード溝3内から先端切り刃5の稜線に向けて、より好ましくは切り刃5の外周刃部5aおよび先端リード部3aに向けて噴射し該部分を冷却するとともに切削された切屑を捩れリード溝3内後方へ排出するようにする。
先ず、冷媒路9にエアーを供給しながらドリルAを高速回転させてCFRP材料Wに穿孔加工を開始するが、その初期には、先端ヘッド部分10の中心が当接し各チゼルエッジ8により切削して芯出しがなされ、その直後から鋭利な外周刃部5aがCFRP材料Wの表面を先端リード部3aで押し下げながら切り込みを開始する(図6(1)参照)。この切り込み初期において、外周刃部5aが円形を描きながら切り込むとともに、外周刃部5aに続く先端リード部3aの先端リード角βaの設定により,先端リード部3aのラジアル方向に作用する力成分がスラスト方向寄りの向き、すなわち外周刃部5aによる炭素繊維の切削力がドリルの進行方向に対して上向きに作用するのでなく下向きに作用する。それによって、図16に示したような表面の捲れ上がりPを防止することができる。
なお、上記穿孔加工中に冷媒路9に供給されたエアーにより、切屑が捩れリード溝3を通して後方へ排出され、また先端切り刃5の外周刃部5aおよび先端リード部3aに向けて噴射され冷却作用を及ぼすことは勿論である。特に、冷媒としてエアーの供給、切り刃稜線の凹曲線深さにより、CFRP材料Wの加工において、大容量の切屑を迅速に排出することが可能なことは前述のとおりである。
ドリル本体11が、3条の捩れリード溝13,13,13、ランド部14,14,14を有することや材質を超硬合金等にすることは前示ドリル本体1と同様である。
ドリル本体11は、その軸心部を貫通する冷媒路19を形成し、先端面すなわち先端ヘッド20を接合させる端面には、中心から各ランド部4へ放射状に延びる取付溝21を形成し、各取付溝21に先端ヘッド20の係合突起22を嵌め合ようにする。
また、ドリル本体11には、前記冷媒路19の先端外周面に各捩れリード溝3に冷却孔口19aを開口し、冷媒路19へ供給される冷媒(エアー)が先端ヘッド20の切れ刃15へ向けて噴射するようにする。
この図7の先端リード部13aは、前記外周刃部15aから先端ヘッド20の裏面つまり後面に至る区域に形成され、すなわち、その区域が一定の先端リード角βaに形成され、その後端においてドリル本体11の捩れリード溝13に接続、つまりリード角βに変位する場合を例示している。なお、その変位点においては、製作性および耐久性を高めるために滑らかな角度変化となるようにR接続にする。
なお、この刃先交換式のドリルを使用することにより、捲れ上がりPおよび髭バリQを防止する前述した作用が得られることは容易に理解されるので、説明の便宜上詳細は省略する。
図14の先端ヘッド20aは、前述したとおり、先端角αを二段変化、具体的には中央部を120°、その外周部を140°に設定した場合である。それにより、先端ヘッド20による切り込み時における切削抵抗を軽減させるとともに切り刃稜線の凹曲線深さを確保させて、CFRP材料Wの捲れ上がりPおよび髭バリQの発生を一層確実に防止させる構造としたものである。
具体的には、先端リード部13aは、外周刃部15aから先端ヘッド20bの裏面までの区域の略1/5程度の長さに形成し、その後方に捩れリード溝13と同一のリード角βを有する繋ぎリード部13bを介在させたものである。この先端ヘッド20bによれば、先端リード部13aの長さが短いので、刃先部分を再研磨する場合にその加工作業が容易になる。
上記繋ぎリード部13bは、その後方の捩れリード溝13のリード角βと同一のリード角とした場合を説明したが、先端リード部13aの先端リード角βaと捩れリード溝13のリード角βとの角度差が大きい場合には、繋ぎリード部13bのリード角を、前記先端リード角βaより大きく捩れリード溝13のリード角βよりも小さくすること、すなわち、繋ぎリード部13bの介在により、先端リード部13aから捩れリード溝13を滑らかに接続するようにしてもよい。
なお、上記先端ヘッド20bの構成を前記図1の先端ヘッド部分10に適用することができることも勿論である。
先端ヘッド20または20a,20bの成形には、ドリル本体11と同様に回転砥石を用いた研削・研磨加工とすることもよいが、好ましくは、ダイヤモンド粉末や超硬材料などの高密度粉末を素材として型成形する方法、具体的には、それら粉末素材を超高圧および高温で型成形することにより、又はそれに加えて放電加工や研削加工などの追加工を施すことにより先端ヘッド20全体を焼結成形体とすることがよい。
この型成形法によれば、砥石が干渉して成形し得ない複雑、緻密な掬い部や先端リード溝などの形状を作製すること可能となり、また、特にダイヤモンド粉末を素材として使用すれば刃先部分の強度を高めて耐久性(寿命)の高いドリルが得られる。
さらに、上記セラミックス成形体の表面にダイヤモンド被覆層を形成すること、好ましくはダイヤモンドのナノ粒子を用いた被覆層とすることがよい。そして、ダイヤモンド被覆層を形成する場合には、ダイヤモンド被覆層の密着強度を高めるために、セラミックス成形体とダイヤモンド被覆層との間に両材料に相互に馴染む中間層を形成することが好ましい。
各部寸法の具体値を例示すれば、ドリル径は1/8〜1インチ(約3.175〜25.4mm)で、図示例のドリルAでは約6mm、先端リード部3aの長さはCFRP材料Wなど被削材の厚さの50%以下(図示例で1〜1.5mm)である。
また、図9〜図11における溝幅比、芯厚、軸溝比を例示すれば表1のとおりである。
3a:先端リード部 5:先端切り刃
5a:外周刃部 9:冷媒路
9a:冷却孔 10:先端ヘッド部分
β:捩れリード溝のリード角 βa:先端リード角
θ:外周掬い角 11:ドリル本体
13:捩れリード溝 13a:先端リード部
15:先端切り刃 15a:外周刃部
19:冷媒路 19a:冷却孔口
20:先端ヘッド 20a:先端ヘッド
20b:先端ヘッド 21:取付溝
22:係合突起 23:ボルト止め
Claims (7)
- ドリル本体の外周面に所定のリード角βをもつ捩れリード溝を形成し、先端面に先端角により形成される切り刃を有するドリルにおいて、そのドリル本体の先端ヘッド部分に、前記捩れリード溝の先端リード角βaを前記リード角βより小さな角度−10°〜+10°の範囲の一定値に設定した先端リード部を形成し、外周掬い角の設定により前記切り刃に刃先形状を鋭利にした外周刃部を形成するとともに切り刃の稜線を凹曲線状とし、
かつ、前記先端ヘッド部分に相当する先端ヘッドを前記ドリル本体と別体に形成し、
前記ドリル本体は、その軸中心を貫通する冷媒路を形成し、前記先端ヘッドを接合させる端面には中心から放射状に延びる略V形の取付溝を形成するとともに前記冷媒路の先端外周面に各捩れリード溝に冷却口を開口し、前記冷媒路へ供給される冷媒が先端切り刃の稜線に向けて噴射するようにし、前記先端ヘッドは、その裏面に前記ドリル本体の各取付溝に嵌め合う略V形の係合突起を形成し、各係合突起を前記ドリル本体の前記取付溝に嵌め合い位置決めしてボルト止めする刃先交換式であり、さらに、前記先端ヘッドが粉末材料を型成形により形成した焼結成形体であることを特徴とするドリル。 - 前記外周掬い角が20°〜40°であることを特徴とする請求項1記載のドリル。
- 前記先端切り刃が、3条の捩れリード溝により中心角120°毎に配置される三枚刃であることを特徴とする請求項1または2記載のドリル。
- 前記先端ヘッド部分の先端角を140°〜150°としたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のドリル。
- 前記先端角が、先端中央部を約120°とし、その外周を140°〜150°としたことを特徴とする請求項4記載のドリル。
- 前記先端ヘッド部分が炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナなどのセラミックス成形体であることを特徴とする請求項5記載のドリル。
- 前記先端ヘッド部分がセラミックス成形体の表面にダイヤモンド被覆層を形成していることを特徴とする請求項6記載のドリル。
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