JP5358085B2 - 燃料電池システム及び燃料電池の低温下起動方法 - Google Patents

燃料電池システム及び燃料電池の低温下起動方法 Download PDF

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Description

この発明は、燃料電池を、水の氷点以下の温度で正常に起動させる燃料電池システム及び燃料電池の低温下起動方法に関する。
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード電極(燃料極)及びカソード電極(酸化剤極)を設けた電解質膜・電極構造体を、セパレータによって挟んで保持している。この燃料電池は、通常、電解質膜・電極構造体及びセパレータからなるセルを所定数だけ交互に積層することにより、燃料電池スタックとして使用されている。
この燃料電池において、アノード電極に供給された燃料ガス、例えば、水素含有ガスは、電極触媒上で水素がイオン化され、電解質膜を介してカソード側電極側へと移動する。その間に生じた電子は外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用される。なお、カソード電極には、酸化剤ガス、例えば、空気等の酸素含有ガスが供給されているために、このカソード電極において、水素イオン、電子及び酸素が反応して水が生成される。
ところで、この種の燃料電池では、イオン導電性を維持するために、電解質膜を適度に加湿しておく必要がある。さらに、カソード電極では、上記のように反応による生成水が存在している。このため、燃料電池を氷点下(水の凍結温度以下)で起動させようとすると、前記燃料電池内の水分が凍結し易く、該燃料電池内で電気化学反応が行われ難いという不具合が指摘されている。
そこで、例えば、特許文献1には、Dupont社製のNAFION(登録商標)及びDow社製の実験用膜(商品番号XUX 13204.10)のような電解質膜は、−20[℃]の温度であっても十分にイオン的に伝導性を有して燃料電池内で電気化学反応が可能であることが開示されている。
しかしながら、上記の特許文献1では、作動開始後の約4分間、水素の流れる通路が水又は氷により塞がれてしまい、水素の流れが適切に行われていないという問題がある。さらに、4分後に50[A]の負荷に接続されると、約45[A]の出力が得られたものの、出力電流は約8秒で約15[A]まで低下してしまう。これは、生成水が凍結したからである。
このように、特許文献1では、氷点下以下であっても、燃料電池の起動が可能になるものの、氷や生成水の凍結によって所望の発電状態に迅速に移行することが困難であるという問題がある。
この問題を解決する技術が特許文献2に提案されている。
この特許文献2に提案された技術は、水点下の環境において、図11に示すように、特定電圧下で出力電流が両反応ガスのガス圧力によって変動し、セルの電圧降下を誘発することがなく、安定して最大電流を取り出すことができる因果関係を利用している。
すなわち、両反応ガスのガス圧力が高くなるのに比例して、取り出される出力電流が増加する。
さらに、特許文献2に提案された技術は、水の凍結温度以下の環境において、特定電圧下で、両反応ガスのガス圧力の高低と限界負荷とが、図12に示す関係を有し、特性αに示すように、前記ガス圧力が通常運転条件のガス圧力より高く設定されると、安定して取り出すことができる限界負荷(最大出力電流)が前記ガス圧力が通常運転の条件の場合の特定βに比較して、大きくなるという特質が得られるという因果関係を利用している。
すなわち、氷点下起動に際し、残留水が電極触媒やガス拡散層に凍結した状態で存在していると、電極反応面積が低下して反応ガスの拡散性が著しく低下する。そこで、氷点下起動の際に、上記特許文献2に係る従来の低温下起動技術では、供給する反応ガスのガス圧力を高めることにより、電極反応が起こる反応部位に反応ガスを確実に供給することができ、取り出し可能な出力電流が向上するものと考えられる。しかも、氷点下起動の環境において、反応ガスのガス圧力を高めることは、通常運転状態で反応ガスのガス圧力を高めるよりも、発電特性を向上させる効果が大きい。
ところで、氷点下での燃料電池システムの停止時に、イグニッションスイッチをオン状態として燃料電池システムを氷点下で起動したとき、燃料電池の暖機が不十分なまま、運転者等の操作者の都合等によりイグニッションスイッチがオフ状態にされる可能性がある。
このような、氷点下短時間発電後停止要求の操作(氷点下起動後に発電短時間にて燃料電池システムを停止させる操作、換言すれば、氷点下で燃料電池システムをちょっと起動した後すぐに停止させる操作、いわゆるチョイがけ操作)がなされてシステムが停止させられた後、再度、氷点下での起動(氷点下短時間発電後停止後再起動、換言すれば氷点下チョイがけ後の再起動)が行われた場合には、上述した特許文献2に記載された従来技術に係る氷点下起動制御技術により起動した場合であっても、図13に示すように、最初の氷点下起動時の電流・電圧特性に比較して、再起動時の氷点下起動時(氷点下短時間発電後停止後再起動時=氷点下チョイがけ後再起動時)の電流・電圧特性が悪化してしまうことが分かった。
この種の問題を解決する、氷点下短時間発電後停止後再起動時(氷点下チョイがけ後の再起動時)における電流・電圧特性を良化させる技術が特許文献3に提案されている。
この特許文献3に係る技術では、氷点下短時間発電後停止後再起動時(氷点下チョイがけ後の再起動時)に氷点下であった場合、アノード電極側反応ガスのガス圧力の増圧、カソード電極側反応ガスのガス圧力を増圧させて流量を増量することで、燃料電池の氷点下起動時の始動性、発電安定性を向上させている。
特表2000−512068号公報(図6) 特開2005−44795号公報(図4) 特開2007−213863号公報
この発明は、特許文献3に開示された技術に関連してなされたものであって、燃料電池に対する氷点下短時間発電後停止後再起動時(氷点下チョイがけ後の再起動時)における始動性及び発電安定性を格段に向上させることを可能とする燃料電池システム及び燃料電池の低温下起動方法を提供することを目的とする。
この発明に係る燃料電池システムは、供給される反応ガスにより発電を行う燃料電池を備える燃料電池システムにおいて、以下の特徴(1)〜(4)を有する。
(1)前記燃料電池の内部温度を検知する内部温度検知手段と、前記燃料電池の停止期間に、前記内部温度が氷点以下の温度になったことを記憶する氷点下経験記憶手段と、前記燃料電池の起動時に、この起動時前の停止期間に氷点下の温度になったことが前記氷点下経験記憶手段に記憶されていたとき、通常起動時に比較して前記反応ガスの置換量を増量して前記燃料電池を起動させる氷点下第1起動手段と、前記氷点下第1起動手段による起動後の停止時に、前記燃料電池の暖機が十分な状態で停止されたかどうかを判断する暖機状態判断手段と、暖機が十分な状態ではないと判断されて停止された後の前記燃料電池の再起動時に、この再起動時前の停止期間に氷点下の温度になったことが前記氷点下経験記憶手段に記憶されていたとき、前記氷点下第1起動手段による前記反応ガスの置換量の増量よりもさらに増量して前記燃料電池を起動させる氷点下第2起動手段とを備えることを特徴とする。
この特徴を有する発明によれば、燃料電池の起動時に、燃料電池が氷点下状態にあった場合、又は氷点下状態にある場合、氷点下第1起動手段により、通常起動時に比較して反応ガスの置換量を増量して前記燃料電池を起動し、前記氷点下第1起動手段による起動後、前記燃料電池の暖機が不十分な状態で発電が停止された後の燃料電池の再起動時(氷点下チョイがけ後の再起動時)に、燃料電池が氷点下状態にあった場合、又は氷点下状態にある場合、氷点下第2起動手段により、前記氷点下第1起動手段による前記反応ガスの置換量の増量よりもさらに増量して前記燃料電池を起動させるようにしているので、氷点下短時間発電後停止後再起動時(氷点下チョイがけ後の再起動時)における電流・電圧特性を良化させることができる。
より具体的に説明すると、氷点下チョイがけ後の再起動時には、燃料電池内部の触媒内で生成水が氷結し、セルの有効発電面積が減少してしまうという現象が発生している。この発明では、氷点下チョイがけ後の反応ガスの置換量をさらに増量させることによりセル内部の反応ガス濃度を上昇させ、少ない有効発電面積であっても電流・電圧特性の良化及びセルの発電安定性を向上させることができる。なお、反応ガスの燃料電池への供給圧力は基本的には変化させないため、置換量をさらに増量させた分、置換に要する時間が長くなり、起動にかかる時間が長くなるが、始動性及び起動時の発電安定性が格段に向上する。
(2)前記特徴(1)を有する発明において、さらに、前記氷点下第2起動手段による起動後に停止した時から、前記燃料電池の再再起動時までの経過時間を計時する計時手段を有し、前記経過時間が所定時間以内の場合には前記氷点下第1起動手段による前記置換量の増量を行わずに前記通常起動で前記燃料電池を起動させることを特徴とする。
氷点下チョイがけ後の所定時間以内での再起動の場合は、セル内部の反応ガス濃度が充分であるため、氷点下第1起動手段による反応ガスの置換量を増量する制御は不要である。よって、この特徴を有する発明によれば、置換量を無駄に増量させずに済み、燃費を向上させることができる。
(3)前記特徴(1)を有する発明において、前記氷点下第2起動手段による起動後に停止され、その後の前記燃料電池の再再起動時に、前記内部温度検知手段により検知した内部温度に応じて前記氷点下第1起動手段による前記置換量を変更して、前記燃料電池を起動させることを特徴とする。
内部温度に応じてセル内部の生成水の凍結量は変化する。よって、内部温度が低ければ生成水の凍結量も多くなるため、有効発電面積も減少してしまう。そこで、この特徴を有する発明によれば、内部温度に応じて前記氷点下第1起動手段による置換量を変更する。例えば内部温度が低い程、置換量を増量させることによりセル内部の反応ガス濃度をより高めることが可能になるため、有効発電面積が減少した状態においても、発電性能を充分に確保することができる。
(4)前記特徴(1)を有する発明において、さらに、前記氷点下第2起動手段により前記反応ガスの置換量をさらに増量させる際、前記燃料電池からの排出濃度値を基準濃度値以内に保持しながら前記燃料電池内の水素濃度を高くするために、起動時における前記燃料電池の開回路電圧状態での前記燃料電池の反応ガス出口からの前記反応ガスのパージ回数を、前記氷点下第1起動手段によるパージ回数より多い回数として増量させることを特徴とする。
この特徴を有する発明によれば、置換量を増量させる際に反応ガスの供給圧力を増加させる必要がないので、高圧力により燃料電池内の反応ガスが一気に大量に排出されることを防止することができる。
(5)この発明に係る燃料電池の低温下起動方法は、供給される反応ガスにより発電を行う燃料電池の低温下起動方法において、前記燃料電池の内部温度を検知する内部温度検知ステップと、前記燃料電池の停止期間に、前記内部温度が氷点以下の温度になったことを記憶する氷点下経験記憶ステップと、前記燃料電池の起動時に、この起動時前の停止期間に氷点下の温度になったことが前記氷点下経験記憶ステップで記憶されていたとき、通常起動時に比較して前記反応ガスの置換量を増量して前記燃料電池を起動させる氷点下第1起動ステップと、前記氷点下第1起動ステップによる起動後の停止時に、前記燃料電池の暖機が十分な状態で停止されたかどうかを判断する暖機状態判断ステップと、暖機が十分な状態ではないと判断されて停止された後の前記燃料電池の再起動時に、この再起動時前の停止期間に氷点下の温度になったことが前記氷点下経験記憶ステップで記憶されていたとき、前記氷点下第1起動ステップによる前記反応ガスの置換量の増量よりもさらに増量して前記燃料電池を起動させる氷点下第2起動ステップとを備えることを特徴とする。
この特徴を有する発明によれば、燃料電池の起動時に、燃料電池が氷点下状態にあった場合、又は氷点下状態にある場合に、氷点下第1起動ステップにより、通常起動時に比較して反応ガスの置換量を増量して前記燃料電池を起動させ、前記氷点下第1起動ステップによる起動後、前記燃料電池の暖機が不十分な状態で発電が停止された後の燃料電池の再起動時(氷点下チョイがけ後の再起動時)に、燃料電池が氷点下状態にあった場合、又は氷点下状態にある場合、氷点下第2起動ステップにより、前記氷点下第1起動ステップにおける前記反応ガスの置換量の増量よりもさらに増量して前記燃料電池を起動させるようにしているので、氷点下短時間発電後停止後再起動時(氷点下チョイがけ後の再起動時)における電流・電圧特性を良化させることができる。
この発明によれば、氷点下短時間発電後に停止された後の再起動時に、反応ガスの置換量を、前回の氷点下起動時おける反応ガスの置換量に比較して増加させるようにしているので、氷点下短時間発電後停止後再起動時(チョイがけ後の再起動時)における電流・電圧特性を良化させることができる。結果、始動性及び起動時の発電安定性を格段に向上させることができる。
なお、この実施形態において、上述した「氷点下短時間発電後停止」は、分かりやすさを考慮し、原則として「氷点下チョイがけ」という。
図1は、この発明の実施形態に係る燃料電池の低温下起動方法を実施するための燃料電池システム10を備える燃料電池車両11の概略構成説明図である。
この燃料電池車両11は、基本的には、燃料電池12(FC)と、この燃料電池12の出力を補助するとともに、この燃料電池12の発電電流並びに負荷18からの回生電流により充電される蓄電装置であるエネルギストレージ16と、走行用の駆動モータ、補機(エアコンディショナ、ランプ等)等の負荷18とから構成される。エネルギストレージとしては、バッテリ又はキャパシタを用いることができる。なお、負荷18と燃料電池12との間には主電源スイッチSW(負荷18を起動させるスイッチ)が設けられている。
燃料電池12は、固体高分子電解質膜の両側にアノード電極とカソード電極とを配置した電解質膜・電極構造体を反応ガス流路(燃料ガス流路98と酸化剤ガス流路96)が形成された一対のセパレータで挟んで保持して構成されるセル(燃料電池セル)を、複数積層させて一体化させたスタック構造になっている。
燃料電池12には、一方の反応ガスである燃料ガス、ここでは水素ガスを供給するための水素供給口20と、燃料電池12から排出される未使用の水素ガスを含む排ガスを排出するための水素排出口22と、燃料電池12に、他方の反応ガスである酸化剤ガス、ここでは空気を供給するための空気供給口24と、未使用の酸素を含む空気を燃料電池12から排出するための空気排出口26とが設けられている。
水素供給口20には、水素供給流路28が連通される。この水素供給流路28には、エゼクタ40が設けられ、このエゼクタ40は、高圧水素を貯留する水素タンク42から、高圧水素を遮断又は開放する遮断弁37及び水素ガスの出口圧力を調整する圧力調整弁38(反応ガス圧力調整手段)を通じて供給された水素ガスを燃料電池12に供給するとともに、水素循環流路46から排ガスを吸引して燃料電池12に再供給する。
水素循環流路46には、アノード電極に溜まった水やカソード電極から電解質膜を透過してアノード電極に混入した窒素ガスを含む燃料ガスを水素パージ流路32、希釈ボックス90及び排出流路94を介して外部(外気・大気)に排出して発電安定性を確保するため適宜開放されるパージ弁30が設けられる他、アノード電極やセパレータに留まる水や残留燃料ガスをシステム停止後、一定時間、例えば数時間経過後に実施されるアノード側空気掃気処理時に開放される空気導入弁54を通じて水素供給口20から燃料ガス流路98に取り入れた加圧空気とともに水素排出口22から空気排出流路59、希釈ボックス90及び排出流路94を通じて外気に排出するために開放される空気排出弁56が設けられている。なお、空気導入弁54は、空気供給流路34に連通する空気導入流路53と水素供給流路28との間に設けられる。
なお、空気排出弁56、空気導入弁54、パージ弁30、遮断弁37は、それぞれオンオフ弁である。
一方、空気供給口24には、空気供給流路34が連通され、この空気供給流路34には、大気からの空気を圧縮し加圧空気として供給するエアコンプレッサ用モータと一体となったエアコンプレッサ36が接続される。
また、空気排出口26には、エアコンプレッサ36から空気供給流路34及び空気供給口24を通じて燃料電池12の酸化剤ガス流路96に供給される空気の圧力を調整するための背圧調整弁58が設けられ、燃料電池12の空気排出口26は、この背圧調整弁58、空気排出流路41を介し希釈ボックス90及び排出流路94を通じて大気に連通している。
希釈ボックス90は、水素パージ流路32及び空気排出流路59を通じて供給される燃料ガス(排ガス)を空気排出流路41から供給される酸化剤ガスにより希釈し、排出流路94を通じて外部に排出する機能を有する。排出流路94には、排出ガス中の水素濃度(水素排出濃度)Dhを検出(測定)する水素濃度センサ93が設けられている。
燃料電池12には、燃料電池12の内部温度(パワープラント内温度ともいう。)Tpp[℃]を検知する温度センサ64(内部温度検出手段)が設けられる。燃料電池12の内部温度Tppは、燃料電池12を冷却する冷却媒体の温度、空気出口温度、水素ガス入口温度、水素ガス出口温度、燃料電池12の筐体温度、のいずれかを使用でき、状況に応じて2つ以上使用してもよい。
さらに、燃料電池システム10及びこの燃料電池システム10を搭載する燃料電池車両11には、制御装置70が設けられ、この制御装置70により、燃料電池システム10及び燃料電池車両11の全ての動作が制御される。燃料電池12の内部温度Tppは、燃料電池システム10の発電中及び停止中のいずれの期間においても、所定時間毎に測定され、制御装置70の記憶手段であるメモリ61(氷点下経験記憶手段)に時刻順に、燃料電池の動作状態、停止状態とともに連続的に記憶される。メモリ61には、ROM、RAM、EEPROMが含まれ、メモリ61のEEPROMが、氷点下経験記憶手段として機能する。
制御装置70は、コンピュータにより構成され、各種入力に基づきメモリに記憶されているプログラムを実行することで各種の機能を実現する機能部並びに機能手段としても動作する。この実施形態において、制御装置70は、チョイがけ判断部、発電前に燃料電池12内の燃料ガス流路98内のガスを置換する反応ガス置換部、デバイス制御部、氷点下経験記憶手段、氷点下第1起動手段、暖機状態判断手段、氷点下第2起動手段、計時手段、氷点下第3起動手段、氷点下第4起動手段、並びに計時手段(タイマ62)等として動作する。
制御装置70には、さらに、燃料電池車両11及び燃料電池システム10の起動信号(起動指示信号)IGon(オフ状態からオン状態に遷移し、オン状態を保持する信号)及び発電停止信号(発電停止指示信号)IGoff(オン状態からオフ状態に遷移し、オフ状態を保持する信号)を出力するイグニッションスイッチ(IGスイッチ)76が接続されている。
なお、図1において、太い実線は電力線を示し、点線は制御線等の信号線を示す。また、二重線は、配管を示している。
このように構成される燃料電池車両11に搭載された燃料電池システム10の動作について、図2、図3に示すフローチャート、及び図4に示す氷点下チョイがけ経験有りの場合のタイムチャート、図5に示す氷点下チョイがけ経験無しの場合のタイムチャートを参照して説明する。
図4、図5のタイムチャート中、それぞれ時点t0、t10まで、燃料電池システム10が常温(内部温度Tppが0[℃]以上)で発電を行い、その時点t0、t10でイグニッションスイッチ76がオン状態からオフ状態にされ、さらに時点t1〜t2の間及び時点t11〜t12の間で初回氷点下起動された後の燃料電池システム10の停止中、いわゆるソーク中(燃料電池12の停止期間中)に、時点t3、t13に示すように、ステップS1において、イグニッションスイッチ76がオフ状態からオン状態になったことが検知されると(燃料電池12の起動指示の受領時に)、ステップS2において、燃料電池12の燃料ガス流路98の水素ガスへのガス置換が開始される。なお上述したように、アノード側空気掃気処理は、発電停止後一定時間経過後、例えば数時間後に行われるので、発電停止後の短い期間、例えば数十分間では燃料電池12の燃料ガス流路98には水素ガスが残留している状態となっている。
発電停止後一定時間経過後に行われるアノード側空気掃気処理とは、遮断弁37を閉弁した状態で空気導入弁54を開弁し、さらに空気排出弁56を開弁した状態においてエアコンプレッサ36を作動させ、加圧空気を空気供給口24を通じて燃料電池12の酸化剤ガス流路96に供給するとともに、空気導入弁54及び水素供給口20を通じて燃料電池12内の燃料ガス流路98に供給する。燃料電池12内に導入された空気は、水素排出口22及び空気排出弁56を通じて希釈ボックス90に導かれるとともに空気排出口26を通じて希釈ボックス90に導かれ、希釈ボックス90を通じて外気へ排出される。これにより燃料ガス流路98に滞留している水素ガス及び生成水並びに酸化剤ガス流路96に滞留している生成水を排出することができる。この処理により、燃料ガス流路98内が空気により置換される。
図4の時点t3又は図5の時点t13において、イグニッションスイッチ76のオン状態への遷移を検知すると、空気導入弁54、空気排出弁56が閉弁されている状態で遮断弁37が開弁されるとともにパージ弁30が開弁されることで、水素ガスが、水素タンク42から遮断弁37、圧力調整弁38、エゼクタ40、水素供給口20、燃料ガス流路98、水素排出口22、パージ弁30、水素パージ流路32、希釈ボックス90、排出流路94を通じて流れることで、燃料電池12の燃料ガス流路98内への高濃度の水素ガスの置換が開始される。
次いで、ステップS3において、燃料電池12の氷点下起動制御が必要かどうかが判断される。
このステップS3の判断は、時点t2〜t3、又は時点t12〜t13のソーク中に、温度センサ64により測定されている燃料電池12の内部温度Tppが氷点下以下の温度(Tpp<0℃)になった経験があるかどうか、又は時点t3、t13での内部温度Tpp{発電開始時の内部温度Tppsという。}が氷点下以下の温度(Tpps<0℃)であるかどうかにより判断される。
ステップS3の判断が成立しないときには、すなわち、ソーク中に内部温度Tppが氷点下以下の温度にならなかったときには氷点下起動制御が不要とされ、ステップS4において、通常の反応ガス置換制御及び起動制御が行われる。通常の反応ガス置換制御及び起動制御とは、主電源スイッチSWの投入に先立ち、圧力調整弁38の水素ガスの圧力制御による燃料電池12内のアノード電極の作動圧(水素ガスの圧力)を通常、背圧調整弁58の背圧制御による燃料電池12内のカソード電極の作動圧(空気の圧力)を通常と、それぞれが通常の状態で制御されることをいう。実際上、主電源スイッチSWの投入(事実上の燃料電池12の起動)前に、ステップS2において一部説明したように、イグニッションスイッチ76のオフ状態からオン状態への遷移を検知すると、制御装置70は、遮断弁37を開放し、圧力調整弁38及び背圧調整弁58を通常状態に設定するとともにエアコンプレッサ36を始動させる。この状態で、パージ弁30が所定期間開放されることで燃料電池12内の水素濃度が所定濃度とされることでガス置換されステップS5においてガス置換が完了とされて発電が開始される。この後に、主電源スイッチSWが投入され、燃料電池車両11が走行可能状態となる。なお、ガス置換完了前に発電を開始してもよい。
ステップS3の判断において、氷点下起動制御が必要(ソーク中Tpp<0[℃]又はイグニッションスイッチ76のオン時のTpps<0[℃])と判断された場合、ステップS6において、図6に示す氷点下チョイがけ経験有無判定マップ{氷点下短時間発電後停止後再起動(氷点下チョイがけ後の再起動)であるかどうかを判定する判定表}100を参照して、氷点下チョイがけ後の再起動の指示であるかどうかが判定される。なお、図6に示す氷点下チョイがけ経験有無判定マップ100は、特開2007−213863号公報にも開示している。
氷点下チョイがけ経験の有無は、燃料電池システム10(燃料電池12)の氷点下起動(氷点下第1起動手段又は氷点下第2起動手段による起動)後、燃料電池12の暖機が十分な状態となった後にイグニッションスイッチ76がオフ状態とされて燃料電池システム10(燃料電池12)が停止されたかどうかにより判断される。
実際上、この暖機状態判断は、図6に示した、氷点下起動制御における発電開始時の内部温度Tppsと発電終了時の内部温度Tppeに基づき予め設定されている氷点下チョイがけ経験有無判定マップ100が参照されて自動的に行われる。
氷点下チョイがけ経験有無判定マップ100は、氷点下チョイがけ経験が有りと判断される範囲(暖機不十分範囲)102と氷点下チョイがけ経験が無いと判断される範囲(暖機十分範囲)104とに範囲が分かれており、燃料電池12の起動が可能な最低内部温度(起動可能最低内部温度)Tcold(おおよそ、−20℃〜−10℃)と、氷点下起動制御を行う最高内部温度すなわちTpp=0℃と、起動可能最低温度Tcoldにおける発電終了時の暖機十分の有無を判断する発電終了時最低内部温度Temin(この実施形態ではTemin=30[℃])との3点で囲まれる三角形の範囲が、氷点下チョイがけ経験有範囲102とされる。
したがって、温度センサ64により測定される前回の発電開始時(例えば、時点t1又は時点t11)における発電開始時内部温度Tppsと、発電終了時(この場合、時点t2又は時点t12)における発電終了時内部温度Tppeとによる座標点(Tpps,Tppe)をプロットすることで氷点下チョイがけ経験の有無を簡単に判断することができる。
なお、縦軸の発電終了時内部温度Tppeの代わりに前回発電時{氷点下起動時(初回:図4中、時点t1〜t2間、図5中、時点t11〜t12間)}の発電量の積算値又は電流の積算値を用いてもよい。
ステップS7(時点t13)において、図5のイグニッションスイッチ76のオン時点t11の氷点下起動時(初回)における発電開始時の内部温度Tppsが0℃を下回る温度(Tpps<0℃)であって、時点t12のイグニッションスイッチ76のオフ時の発電終了時の内部温度Tppeが閾値温度Tthを上回る温度(Tppe>Tth)であった場合には、氷点下チョイがけ経験無範囲(暖機十分範囲)104内と判断する。発電終了時最低内部温度Teminを、Temin=30[℃]としているので、時点t12における発電終了時最低内部温度TppeがTppe>30[℃]の場合には、氷点下チョイがけ経験無範囲(暖機十分範囲)104内と判断される。
この場合、ステップS8において、ガス置換氷点下起動制御(初回:氷点下第1起動手段による起動)が行われる。
一方、ステップS7(時点t3)において、図4のイグニッションスイッチ76のオン時点t1の氷点下起動時(初回)における発電開始時の内部温度Tppsが0℃を下回る温度であって(Tpps<0℃)、時点t2のイグニッションスイッチ76のオフ時の発電終了時の内部温度Tppeが閾値温度Tthを下回る温度であった場合には(Tppe<Tth、例えば、Tppe<<30[℃])、氷点下チョイがけ経験有範囲(暖機不十分範囲)102内と判断する。
この場合、ステップS9において、ガス置換氷点下チョイがけ後氷点下起動制御(再起動)が行われる。
そこで、ステップS3の氷点下起動判断が成立していて(時点t3又は時点t13で発電開始時の内部温度Tppsが0[℃]以下)、ステップS7の判定において、前回氷点下チョイがけ経験無しの場合には、ステップS8における氷点下第1起動手段によるガス置換氷点下起動制御が行われる。この氷点下第1起動手段によるガス置換氷点下起動制御について図7の波形図をも参照して説明する。
このステップS8の氷点下第1起動手段によるガス置換氷点下起動制御{氷点下起動制御(初回)}では、図5の時点t13(図5の時点t11、図4の時点1も同じ)に対応する図7の時点t21おいて、制御装置70がイグニッションスイッチ76のオフ状態からオン状態への遷移を検知すると、制御装置70は、遮断弁37を開弁し、圧力調整弁38及び背圧調整弁58を通常状態に設定するとともにエアコンプレッサ36を始動させる。同時に、パージ弁30を上述したガス置換通常起動制御(ステップS3)で開放される所定期間に比較してより長い所定期間開放することで燃料電池12内の水素濃度Dfcをガス置換通常起動制御での所定濃度に比較してより高い所定濃度にされる。すなわち、通常起動時に比較して反応ガスである水素ガスの置換量が増量され燃料電池12内の燃料ガス流路98がより高い水素濃度Dfcとされ、次いで、ステップS5において発電が開始される。
つまり、ステップS8では、図3に示すように、通常起動時に比較して、ステップS8aで水素総供給量が増量されて設定され、これに対応してステップS8bで水素総パージ量が増量制御される。この後に、図7の時点t23において主電源スイッチSWが投入され、燃料電池車両11が走行可能状態とされる。
なお、制御装置70は、パージ弁30を所定期間開放する際(図7例では、時点21〜t22)、水素ガスの排出濃度Dh(図7参照)を監視しながら開放し、水素ガスの排出濃度Dhが所定値以内となるようにパージする。水素ガスの排出濃度Dhが所定値を上回るおそれがあると判断される場合には、パージ期間を分割して、水素ガスの排出濃度Dhが所定値を上回らないようにして、燃料電池12内の燃料ガス流路98の水素濃度Dfcを所定濃度にする。
その一方、ステップS3の氷点下起動判断が成立していて(時点t3又は時点t13で発電開始時の内部温度Tppsが0[℃]以下)、ステップS7の判定において、前回氷点下チョイがけ経験有りと判定した場合には、ステップS9における氷点下第2起動手段による、ガス置換氷点下チョイがけ後氷点下起動制御が行われる。この氷点下第2起動手段によるガス置換氷点下チョイがけ後氷点下起動制御について図8の波形図をも参照して説明する。
このステップS9の氷点下第2起動手段によるガス置換氷点下チョイがけ後氷点下起動制御では、図4の時点t3に対応する図8の時点t31において、上述した氷点下第1起動手段による起動制御に比較して、出力電流がより大きくとれるように、制御装置70は、イグニッションスイッチ76のオフ状態からオン状態への遷移を検知すると、遮断弁37を開放し、圧力調整弁38及び背圧調整弁58を通常状態に設定するとともにエアコンプレッサ36を始動させる。同時に、パージ弁30を上述した氷点下第1起動手段によるガス置換氷点下起動制御(ステップS7)で開放される所定期間(時点t21〜t22の間の期間)に比較してより長い所定期間(時点t31〜t32の期間+時点t33〜t34の期間+時点t35〜t36の期間)開放することで燃料電池12内の水素濃度Dfcを氷点下第1起動手段によるガス置換氷点下起動制御の所定濃度に比較してより高い所定濃度にする。すなわち、氷点下第1起動手段による氷点下起動時に比較して反応ガスである水素ガスの置換量をさらに増量することにより一層高い水素濃度Dfcで、ステップS5において発電を開始することができる。
つまり、ステップS9では、図3に示すように、初回の氷点下起動時に比較して、ステップS9aで水素総供給量をさらに増量設定し、これに対応してステップS9bで水素総パージ量のさらなる増量制御が行われる。この後に、図8の時点t37において主電源スイッチSWが投入され、燃料電池車両11が走行可能状態とされる。
ここで、制御装置70は、図8に示すように、より長い所定期間パージ弁30を開放する際、水素ガスの排出濃度Dhが所定値以内となるように監視しながら、時点t31〜t32、時点t33〜t34、及び時点t35〜t36のようにパージ期間を分割してパージしている。
このように、上述した実施形態によれば、図9にまとめて示すように、常温における通常時起動制御に比較して、氷点下起動制御、氷点下チョイがけ後の氷点下起動制御では、イグニッションスイッチ76がオン状態とされたとき、主電源スイッチSWを閉じる前の燃料電池12の開回路電圧(open circuit voltage)状態での水素パージ量Pocv[L]を高めることで、燃料電池12の燃料ガス流路98内の水素濃度Dfcを高めている。
この結果、図10に示すように、燃料電池システム10で、氷点下チョイがけ後の再起動時に氷点下の場合、氷点下チョイがけ後氷点下起動制御(第2氷点下起動手段による再起動時の氷点下制御)を用いることで、従来の氷点下チョイがけ後氷点下起動制御(特開2007−213863号公報に係る技術)よりも起動性能が向上し、電流・電圧特性が、電流・電圧特性106から電流・電圧特性108に良化し、始動性並びに起動時における発電安定性が格段に改善される。
以上説明したように上述した実施形態によれば、供給される反応ガスである水素ガスと酸化剤ガスにより発電を行う燃料電池12を備える燃料電池システム10において、燃料電池12の内部温度Tppを検知する温度センサ64(内部温度検知手段)と、燃料電池12の停止期間に、内部温度Tppが氷点以下の温度になったことを記憶するメモリ61(氷点下経験記憶手段)と、燃料電池12の起動指示の受領時(ステップS1)に、この起動指示の受領時前の停止期間に氷点下の温度になったことがメモリ61に記憶されていたとき、通常起動時に比較して前記反応ガスの置換量を増量して燃料電池12を起動させる氷点下第1起動手段(制御装置70、ステップS8)と、前記氷点下第1起動手段による起動後の停止時に、燃料電池12の暖機が十分な状態で停止されたかどうかを判断する暖機状態判断手段(制御装置70、ステップS6、S7)と、暖機が十分な状態ではないと判断されて(ステップS7:NO)停止された後の燃料電池12の再起動指示の受領時に、この再起動指示の受領時前の停止期間に氷点下の温度になったことがメモリ61に記憶されていたとき、前記氷点下第1起動手段による前記反応ガスの置換量をさらに増量して燃料電池12を起動させる氷点下第2起動手段(制御装置70、ステップS9)とを備えることを特徴とする。
この特徴によれば、燃料電池12の起動指示の受領時に、燃料電池12が氷点下状態にあった場合、又は氷点下状態にある場合、氷点下第1起動手段により、通常起動時に比較して反応ガスである水素の置換量を増量して燃料電池12を起動し、前記氷点下第1起動手段による起動後、燃料電池12の暖機が不十分な状態で発電が停止された後の燃料電池12の再起動時(氷点下チョイがけ後の再起動時)に、燃料電池12が氷点下状態にあった場合、又は氷点下状態にある場合、氷点下第2起動手段により、前記氷点下第1起動手段による水素の置換量をさらに増量して燃料電池12を起動させるようにしているので、氷点下短時間発電後停止後再起動時(氷点下チョイがけ後の再起動時)における電流・電圧特性を良化させることができる。
より具体的に説明すると、氷点下チョイがけ後の氷点下再起動時には、燃料電池12内部の触媒内で生成水が氷結し、セルの有効発電面積が減少してしまうという現象が発生している。このため、氷点下チョイがけ後の水素ガスの置換量をさらに増量させることによりセル内部の水素ガス濃度を上昇させ、少ない有効発電面積であっても電流・電圧特性の良化及びセルの発電安定性を向上させることができる。なお、置換量をさらに増量させた分、置換に要する時間が長くなり起動にかかる時間も長くなるが、始動性及び起動時の発電安定性が格段に向上する。
なお、特開2007−213863号公報に開示された技術との違いを述べると、特開2007−21863号公報には、反応ガス圧力、及び反応ガスの時間当たりの流量を増加することが開示されているが、置換量の総量(総置換量)を増量する点については開示されていない。
すなわち、反応ガス圧力及び時間当たりの流量が増加しても、解氷された生成水を燃料電池12から外部に排出できるだけである。
例えば、燃料電池12内部の反応ガスである水素の容量が50[L]であるとき、通常、10[L]置換するとして、氷点下チョイがけ後に反応ガスの圧力や時間当たりの流量を増加しても供給される反応ガスの総量(総置換量)は10[L]であり、燃料電池12内部の水素濃度Dfcは変化しない。内部の生成水を排出できたとしても、有効発電面積は凍結等により減少したままであるため、水素不足により所定以上の発電性能を確保することは難しい。また、水素の圧力を上げた状態で水素排出を大量に行うと、希釈ボックス90内での排出水素濃度Dhが上昇してしまうため、圧力を上げたとしても排出水素量は変更できない(特開2007−21863号公報に開示された技術では、水素濃度Dfcを高くするよりも生成水排出を行うことで発電性能を確保し、起動時間短縮のため10[L]以上は供給しなくてもよいという技術を採用している。)。
これに対して、この実施形態では、ガス容量50[L]のところ、例えば30[L]を置換するため確実に水素濃度Dfcを上昇させることが可能となる。その代わり、圧力や時間あたりの供給量を変更しないため、置換のための時間が通常起動制御や氷点下起動制御時の約3倍かかるが、希釈ボックス90内の排出水素濃度Dhを所定値以下に維持することが可能である。よって、有効発電面積が減少している場合でも、残りの面で消費される水素ガス量を確保することが可能となるため、特開2007−21386号公報に開示された技術に比較して発電性能を格段に向上させることができる。
なお、前記氷点下第2起動手段による起動後に停止した時(時点t4)から、燃料電池12の再再起動時までの経過時間を計時手段であるタイマ62により計時し、前記経過時間が所定時間以内、例えば、数十分以内で、かつアノード側空気掃気処理を行う前の場合には、前記氷点下第1起動手段による前記置換量の増量を行わずに前記通常起動制御で燃料電池12を起動させるようにしてもよい。
このように、氷点下チョイがけ後の所定時間以内での再起動の場合は、燃料電池12の燃料ガス流路98内部の水素濃度Dfcが充分であるため、氷点下第1起動手段による水素の置換量を増量する制御は不要である。よって、この場合には、置換量を無駄に増量させずに済み、燃費を向上させることができる。
また、前記氷点下第2起動手段による起動後に停止(時点t4)され、その後の燃料電池12の再再起動時に、温度センサ64により検知した内部温度Tppに応じて前記氷点下第1起動手段による前記置換量を変更して、燃料電池12を起動させることが好ましい。
内部温度Tppに応じてセル内部の生成水の凍結量は変化する。よって、内部温度が低ければ生成水の凍結量も多くなるため、有効発電面積も減少してしまう。そこで、内部温度Tppに応じて前記氷点下第1起動手段による置換量を変更する。例えば内部温度Tppが低い程、置換量を増量させることにより燃料電池12の燃料ガス流路98内部の水素濃度Dfcをより高めることが可能になるため、有効発電面積が減少した状態においても、発電性能を充分に確保することができる。
なお、前記氷点下第2起動手段により水素の置換量をさらに増量させる際、燃料電池12からの排出濃度Dhを基準濃度値以内に保持しながら燃料電池12内の水素濃度Dfcを高くするため、起動時における燃料電池12の開回路電圧状態での燃料電池12の反応ガス出口である水素パージ流路32からの水素のパージ回数を、氷点下第1起動手段によるパージ回数より多い回数とすることで、置換量を増量させる際に水素の供給圧力を増加させる必要がないので、高い圧力により燃料電池12内の水素が一気に大量に排出されることを防止できる。
この発明の実施形態に係る燃料電池の低温下起動方法を実施するための燃料電池システムの概略構成説明図である。 前記低温下起動方法のフローチャートである。 図2中、ガス置換氷点下起動制御又はガス置換氷点下チョイがけ後氷点下起動制御の説明に供されるフローチャートである。 ガス置換氷点下チョイがけ後氷点下起動制御の説明に供されるタイムチャートである。 ガス置換氷点下チョイがけ後氷点下起動制御の説明に供されるタイムチャートである。 氷点下チョイがけ経験有無マップの説明図である。 ガス置換氷点下起動制御の説明に供される波形図である。 ガス置換氷点下チョイがけ後氷点下起動制御の説明に供される波形図である。 ガス置換通常起動制御、ガス置換氷点下起動制御、及びガス置換氷点下チョイがけ後の氷点下起動制御における燃料電池開回路電圧状態での水素パージ量と水素ガス濃度との関係を示す説明図である。 チョイがけ後の再起動時における従来の氷点下起動制御後の電流・電圧特性とチョイがけ後氷点下起動制御後の電流・電圧特性との比較図である。 水の凍結温度以下の環境における出力電流とガス圧力との関係図である。 水の凍結温度以下の環境におけるガス圧力の高低と限界負荷との関係図である。 従来の氷点下起動制御での起動時における電流・電圧特性と従来の氷点下起動制御でのチョイがけ後の再起動時の電流・電圧特性との比較図である。
符号の説明
10…燃料電池システム 12…燃料電池
60…CPU 61…メモリ
64…温度センサ 100…氷点下チョイがけ経験有無判定マップ
102…暖機不十分範囲 104…暖機十分範囲

Claims (3)

  1. 供給される反応ガスにより発電を行う燃料電池を備える燃料電池システムにおいて、
    前記燃料電池の内部温度を検知する内部温度検知手段と、
    前記燃料電池の停止期間に、前記内部温度が氷点以下の温度になったことを記憶する氷点下経験記憶手段と、
    前記燃料電池の起動時に、この起動時前の停止期間に氷点下の温度になったことが前記氷点下経験記憶手段に記憶されていたとき、当該氷点下起動時における前記燃料電池内の水素濃度を高くするために、通常起動時の前記反応ガスの圧力下に前記反応ガスの水素排出濃度値を基準濃度値以下に保持しながら前記燃料電池の開回路電圧状態で前記燃料電池の反応ガス出口からの前記反応ガスのパージを行うことで、前記通常起動時に比較して前記反応ガスの置換量を増量して前記燃料電池を起動させる氷点下第1起動手段と、
    前記氷点下第1起動手段による起動後の停止時に、前記燃料電池の暖機が十分な状態で停止されたかどうかを判断する暖機状態判断手段と、
    暖機が十分な状態ではないと判断されて停止された後の前記燃料電池の再起動時に、この再起動時前の停止期間に氷点下の温度になったことが前記氷点下経験記憶手段に記憶されていたとき、当該氷点下短時間発電後停止後の再起動時における前記燃料電池内の水素濃度をさらに高くして、氷結により有効発電面積が減少した状態での発電安定性を向上させるために、通常起動時の前記反応ガスの圧力下に前記反応ガスの水素排出濃度値を基準濃度値以下に保持しながら前記燃料電池の開回路電圧状態で前記燃料電池の前記反応ガス出口からの前記反応ガスのパージ回数を、前記氷点下第1起動手段によるパージ回数より多い回数にすることで、前記氷点下第1起動手段による前記反応ガスの置換量の増量よりもさらに増量して前記燃料電池を起動させる氷点下第2起動手段と
    を備えることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
    さらに、
    前記氷点下第2起動手段による起動後に停止した時から、前記燃料電池の再再起動時までの経過時間を計時する計時手段を有し、
    前記経過時間が所定時間以内の場合には前記氷点下第1起動手段による前記置換量の増量を行わずに前記通常起動で前記燃料電池を起動させる
    ことを特徴とする燃料電池システム。
  3. 供給される反応ガスにより発電を行う燃料電池の低温下起動方法において、
    前記燃料電池の内部温度を検知する内部温度検知ステップと、
    前記燃料電池の停止期間に、前記内部温度が氷点以下の温度になったことを記憶する氷点下経験記憶ステップと、
    前記燃料電池の起動時に、この起動時前の停止期間に氷点下の温度になったことが前記氷点下経験記憶ステップで記憶されていたとき、当該氷点下起動時における前記燃料電池内の水素濃度を高くするために、通常起動時の前記反応ガスの圧力下に前記反応ガスの水素排出濃度値を基準濃度値以下に保持しながら前記燃料電池の開回路電圧状態で前記燃料電池の反応ガス出口からの前記反応ガスのパージを行うことで、前記通常起動時に比較して前記反応ガスの置換量を増量して前記燃料電池を起動させる氷点下第1起動ステップと、
    前記氷点下第1起動ステップによる起動後の停止時に、前記燃料電池の暖機が十分な状態で停止されたかどうかを判断する暖機状態判断ステップと、
    暖機が十分な状態ではないと判断されて停止された後の前記燃料電池の再起動時に、この再起動時前の停止期間に氷点下の温度になったことが前記氷点下経験記憶ステップで記憶されていたとき、当該氷点下短時間発電後停止後の再起動時における前記燃料電池内の水素濃度をさらに高くして、氷結により有効発電面積が減少した状態での発電安定性を向上させるために、通常起動時の前記反応ガスの圧力下に前記反応ガスの水素排出濃度値を基準濃度値以下に保持しながら前記燃料電池の開回路電圧状態で前記燃料電池の前記反応ガス出口からの前記反応ガスのパージ回数を、前記氷点下第1起動ステップによるパージ回数より多い回数にすることで、前記氷点下第1起動ステップによる前記反応ガスの置換量の増量よりもさらに増量して前記燃料電池を起動させる氷点下第2起動ステップと
    を備えることを特徴とする燃料電池の低温下起動方法。
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