JP5357830B2 - ウナギ仔魚飼料 - Google Patents
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Description
本発明は、以下の(1)ないし(6)のウナギ仔魚飼料及びこれらを用いたウナギ仔魚の飼育方法を要旨とする。
(1)プロテアーゼ活性を低下させた魚卵内容物を含むウナギ仔魚飼料。
(2)プロテアーゼ活性の低下が加熱処理によるものである(1)のウナギ仔魚飼料。
(3)加熱処理の程度が凝集物を形成させない程度である(2)のウナギ仔魚飼料。
(4)プロテアーゼ活性の低下がプロテアーゼインヒビターの添加によるものである(1)のウナギ仔魚飼料。
(5)ノレソレ酵素分解物を加えた(1)ないし(4)のウナギ仔魚飼料。
(6)上記(1)ないし(5)のウナギ仔魚飼料を用いたウナギ仔魚の飼育方法。
魚卵は、卵膜と卵膜に包まれた内容物とからなる。魚卵は、卵原細胞の増殖期を終えると卵母細胞となり、卵膜形成及び油球や卵黄の蓄積が開始される成長期を経てから成熟期へと入る。その後排卵されることで体外に放出されるが、それまでは魚の卵巣内に蓄積される。このうち飼料に用いるためには栄養成分が豊富な、卵成熟期から産卵前の段階にある魚卵内容物を用いることが好ましい。特に、タンパク質などの栄養成分である卵黄が蓄積しているという点で、成長期のうちでも少なくとも卵黄形成を既に開始した卵黄形成期以降にあたるものが好ましい。
本発明で用いる魚卵内容物は、飼料成分として十分な成長性を与えるためには、魚卵内容物の栄養成分が劣化せずに飼料に混合されることが望ましい。魚卵内容物の栄養成分が劣化せずに飼料に混合されるためには、用いる魚卵は生のもの又は塩蔵若しくは冷凍して1年以内に用いることが好ましい。
本発明の飼料は、飼育水槽中でウナギ仔魚が接餌しやすい形状にするためには、上記魚卵内容物を、飼料重量の3〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは20〜30重量%の範囲になるように水と混ぜて使用することが好ましい。
本発明で用いる魚卵内容物のプロテアーゼ活性を加熱により低下させるためには、加熱温度は45℃以上、より好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上で行うことが望ましい。加熱時間は10分以上、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上行うことが望ましい。
また、魚卵のようなタンパク質量の多い組成物を加熱すると、タンパク質が凝固して、加熱温度と加熱時間に比例して大きな凝集物を形成する。このような凝集物が生じるとウナギ仔魚の飼料となりにくくなり、結果として成長は低下する。ウナギ仔魚の成長を阻害する凝集物を形成させないためには、加熱温度は75℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下で行うことが望ましい。加熱時間は60分以下、好ましくは45分以下、より好ましくは30分以下で行うことが望ましい。
本発明で用いる魚卵内容物のプロテアーゼ活性をこれらの物質の添加により阻害する場合、水を含んだ飼料全体の重量に対し、卵白は0.01〜3重量%、好ましくは、0.1〜1重量%以上添加することが望ましい。動物乳清を添加する場合には、水を含んだ飼料全体の重量に対し、0.01〜3重量%、好ましくは0.4〜1重量%添加することが望ましい。動物血漿を添加する場合には、水を含んだ飼料全体の重量に対し、0.01〜1.5重量%、好ましくは0.1〜0.4重量%添加することが望ましい。
本発明の卵白、動物乳性及び動物血漿は、プロテアーゼインヒビターの活性があるものであれば生のもの、乾燥したものなどどのようなものでもかまわない。本発明の卵白は、鳥類の卵、中でも鶏卵が入手しやすさ、価格の安さの面で好ましい。また保存性が良く、効果にぶれがないことから、乾燥したものを用いることが特に好ましい。
また、プロテアーゼの選択及び処理条件の設定については、プロテアーゼを加熱により失活させた後のノレソレ分解物の状態を調べながら調べるとよい。ノレソレをプロテアーゼの処理した後、加熱によりプロテアーゼを失活させる過程において、加熱温度に比例して溶液に含まれるプロテアーゼなどのタンパク質が変性凝固して大きな凝集物を形成する。このような凝集物が生じると仔魚の飼料となりにくくなるばかりか、結果として濾過除去による分解物収量の低下を招く。このため、凝集物を発生させない程度の加熱で失活するプロテアーゼを選び、そのような条件で処理を行うことが好ましい。凝集物を生成させず、収量の高いノレソレ分解物を作製するためには、好ましくは75℃以下、特に好ましくは70℃以下で活性が阻害されるプロテアーゼを選定することが望ましい。
本発明の飼料は、上記魚卵内容物と上記ノレソレ分解物を組み合わせて使用する場合には、組み合わせたものの重量として、飼料重量の3〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは20〜30重量%の範囲で使用することが好ましい。また組み合わせる比率としては、重量比で3:1から1:3の範囲で、より好ましくは2:1から1:2の範囲で、さらに好ましくは略1:1の範囲で組み合わせて使用することが好ましい。
マダラ卵巣卵を飼料原料とし、加熱処理の有無によるウナギ仔魚の成長・生残の比較を行なった。非特許文献1に記載の方法により得られた7日齢の仔魚約300尾を10L容丸底水槽に収容し、試験魚とした。仔魚の飼育方法は非特許文献1に従い行った。水槽は5基設置し、8日齢より各水槽にそれぞれ該当する飼料を給餌した。給餌回数は1日3回、飼育水温は24℃とした。18日齢まで飼育した時点で全長と、生残数を計測し、成長と生育の評価を行った。
マダラ卵巣卵の加熱処理温度の違いによる成長及び生残の比較を行なった。加熱工程の温度設定及び飼料組成を除き、手順は実施例1と同様とした。実施例1の加熱工程のうち、65℃に保温したウォーターバス内に30分間静置、という部分を45℃で30分にしたものを飼料aとし、飼料aで飼育した仔魚群を「45℃-30分加熱区」とした。以下同様に、55℃で30分にしたものを飼料bとし、飼料bで飼育した仔魚群を「55℃-30分加熱区」と、75℃で30分にしたものを飼料dとし、飼料dで飼育した仔魚群を「75℃-30分加熱区」とした。実施例1の飼料Bと同様に65℃で30分にしたものを飼料cとし、飼料cで飼育した仔魚群を「65℃-30分加熱区」とした。それぞれの飼料組成と加熱温度を表4に示す。
実施例1と同じ条件で、ウナギ仔魚の成長・生残の比較を行なった。用いた飼料を表6に示す。
スケトウダラ卵は以下のように作製した。すなわちスケトウダラ卵巣卵に等量程度の蒸留水を加水し、破砕後、目合約400μmのメッシュで濾過し、さらに100μmのメッシュで濾過して卵膜等を除去した内容物を回収した。一連の作業は氷冷下で実施した。更にこの成分を冷凍後、凍結乾燥によって粉末化させて、飼料原料であるスケトウダラ卵巣卵粉末とした。
ノレソレの酵素分解物を作製し、マダラ卵巣卵加熱処理物との併用効果の検討を行なった。ノレソレ分解物の製造工程を以下に示した。包丁を用いて細かく裁断した冷凍ノレソレ約200gを50℃に加温し、達温後、プロテアーゼA「アマノ」SD(アマノエンザイム社製)0.09g添加して1時間反応させた。反応後、65℃で1時間保温して酵素を失活させた。更に反応液を目合100μmのナイロンメッシュで濾過後、凍結乾燥によって粉末化した。得られた粉末をノレソレ分解物とした。
サメ卵とオキアミ分解物、マダラ卵巣卵加熱処理物を用いた飼料作成及び飼育条件は実施例1のサメ卵+オキアミ分解物区、マダラ卵卵巣加熱処理区と同様とし、20日齢で全長、体高の測定及び生残数を計数した。
飼料1を「マダラ卵巣卵加熱処理物」、飼料2を「ノレソレ分解物」、飼料3を「マダラ卵巣卵加熱処理物+ノレソレ分解物」、飼料4「サメ卵+オキアミ分解物」とした。飼料1〜3の組成を下表7に示した。飼料1は実施例1の飼料Bと同一の飼料であり、65℃で30分の加熱処理を施した。飼料3は飼料1と飼料2の固形物換算での等量混合物飼料とした。それぞれの飼料の組成を表7に示す。飼料4は実施例1中の飼料Cと同一組成とした。20日齢における生残個体数を数えて、生残率を百分率で算出した。また、開始時である7日齢及び20日齢における全長、体高の平均値と標準偏差を表8に示す。
仔魚全長ではいずれの飼料を給餌した区においても開始と比較して有意に伸長がみられた(dunn、P<0.05)。マダラ卵巣卵加熱処理物及びノレソレ分解物を単独給餌した飼料1、飼料2給餌区ではそれぞれ7.96 ± 0.48mm、7.95 ± 0.69mmであったのに対し、混合した飼料3では8.24 ± 0.61mmであった。各飼料間で有意差は検出されなかったものの、この値は飼料4「サメ卵+オキアミ分解物」の8.21 ± 0.64mmと同等の水準にあった。
仔魚体高ではいずれの飼料も有意差は検出されなかったが、開始時と比較して伸長がみられた。飼料1で0.63 ± 0.07mm、飼料2で0.67 ± 0.11mmであった。これに対して飼料3では0.70 ± 0.11mmと、マダラ卵巣卵加熱処理物、ノレソレ分解物の単独給餌区よりも大きな値を示した。また、この値は飼料4「サメ卵+オキアミ分解物」の0.67 ± 0.11mmと同等以上の水準にあった。
このように、マダラ卵巣卵加熱処理物にノレソレ分解物を併用することで、少なくとも成長では従来のサメ卵を用いた飼料と同等の性能を示した。
Claims (6)
- プロテアーゼ活性を低下させた魚卵内容物を含むウナギ仔魚飼料。
- プロテアーゼ活性の低下が加熱処理によるものである請求項1のウナギ仔魚飼料。
- 加熱処理の程度が凝集物を形成させない程度である請求項2のウナギ仔魚飼料。
- プロテアーゼ活性の低下がプロテアーゼインヒビターの添加によるものである請求項1のウナギ仔魚飼料。
- ノレソレ分解物を加えた請求項1ないし4のウナギ仔魚飼料。
- 請求項1ないし5のウナギ仔魚飼料を用いたウナギ仔魚の飼育方法。
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