JP5356153B2 - 工具ホルダ及び工具把持方法 - Google Patents

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Description

本発明は、機械加工等に用いる工具を把持し、所定の加工作業に供するための工具ホルダの構築技術に関するものである。
従来、機械加工等に用いる工具を把持する工具ホルダの構造が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、工具を把持する把持部材を直接的に加熱したり冷却することによって、工具を締め付けたり当該締め付けを解除するように構成された工具ホルダ、いわゆる焼き嵌め構造の工具ホルダが開示されている。ところで、焼き嵌め構造を利用して工具を把持するこの種の工具ホルダでは、小径工具に対応して把持部材を小径化した場合、把持部材の熱膨張量が低下するため、焼き嵌めに際してはこの熱膨張量の低下を補うべく当該把持部材の加熱温度を上げる必要があり、このような場合には把持部材の材料劣化が懸念される。
特開平11−235608号公報
そこで本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、焼き嵌め構造を利用して工具を把持する工具ホルダにおいて、小径工具を低温で焼き嵌めするのに有効な技術を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明が構成される。なお、本発明は、工具を把持する工具ホルダを対象とするものであって、ここでいう「工具」には、穴あけ加工、研削加工、研磨加工、締付け加工等に用いられる工具が広く包含される。
本発明にかかる工具ホルダは、工具を把持(「挟持」ないし「保持」ともいう)し、所定の加工作業に供するためのホルダとして構成され、ホルダ本体及び工具把持機構を少なくとも含む。ここでいう「所定の加工作業」として典型的には、穴あけ加工、研削加工、研磨加工、締付け加工等の作業が挙げられる。なお、工具ホルダによって把持される工具は、当該工具ホルダの一構成要素であってもよいし、或いは当該工具ホルダとは別の要素として構成されてもよい。すなわち、工具が把持された状態の工具ホルダのみならず、工具が把持される前の状態の工具ホルダも、本発明の「工具ホルダ」の範疇に含まれる。
ホルダ本体は、工具ホルダのハウジングを形成する。このハウジングは、工具ホルダ自体の外郭をなすハウジングとして構成されてもよいし、或いは工具が工具ホルダごと加工機に取り付けられた状態では、工具ホルダ自体の外郭をなすハウジングと加工機のハウジングとによって構成されてもよい。
工具把持機構は、工具を把持する機能を有する機構であり、把持スリーブ、工具把持空間、スライド部材、熱伸縮部材、締め付け部及び変換部を少なくとも含む構成とされる。
把持スリーブは、ホルダ本体に取り付けられる長尺筒状の部材として構成される。この把持スリーブ内に把持スリーブの長軸方向に沿って工具把持空間が形成される。工具把持空間は、工具が把持される空間部分、すなわち工具の把持を実質的に行なう把持領域として構成される。
スライド部材は、把持スリーブの長軸方向にスライド動作可能に設けられた部材として構成される。このスライド部材は、把持スリーブの長軸方向に関しスライド動作が可能であればよく、把持スリーブに摺接しつつスライド動作する構成であってもよいし、或いは把持スリーブ以外の要素に摺接しつつスライド動作する構成であってもよい。
熱伸縮部材は、ホルダ本体及びスライド部材の双方にわたって取り付けられ、加熱によって把持スリーブの長軸方向に沿って伸長(「膨張」ともいう)する一方、冷却(「除熱」ないし「減熱」という)によって把持スリーブの長軸方向に沿って収縮する部材として構成される。なお、ここでいう「冷却」に関しては、加熱時よりも温度が低下した状態を広く包含するものであり、当該冷却が自然放冷によって生じるものであってもよいし、或いは冷却手段による強制的な冷却操作によって生じるものであってもよい。
締め付け部は、工具把持空間に挿入された工具の長軸方向と交差する方向に関して当該工具を締め付ける機能を果たす。この締め付け部は、把持スリーブの一部分によって構成されてもよいし、或いは把持スリーブとは別に設けられた別体状の部材として構成されてもよい。
変換部は、熱伸縮部材の収縮によって生じるスライド部材のホルダ後端側へのスライド動作を、締め付け部の工具の長軸方向と交差する方向への締め付け動作に変換する。このときの締め付け動作の動作方向は、熱伸縮部材の収縮時のスライド部材のスライド動作方向と交差する。またこの変換部は、熱伸縮部材の伸長によって生じるスライド部材のホルダ先端側へのスライド動作を、締め付け動作の解除動作に変換する機能を果たす。ここでいう「ホルダ先端側」とは、典型的には工具ホルダの各部位のうち工具が把持される側、すなわち工具把持機構が取り付けられる側として規定される。
上記構成によれば、熱伸縮部材の加熱及び冷却の切り換えによって、スライド部材のスライド動作方向が切り換えられ、これにより工具の締め付け動作と、当該締め付け動作の解除動作(「工具締め付け解除動作」ともいう)との切り換えが可能とされる。工具締め付け解除動作が行なわれると、工具が把持スリーブの工具把持空間に着脱自在とされる。一方、工具の締め付け動作が行なわれると、工具が把持スリーブの工具把持空間にて把持される。すなわち、本発明の工具ホルダは、いわゆる焼き嵌め構造の工具ホルダとされる。本発明では特に、ホルダ本体及びスライド部材の双方にわたって取り付けられる熱伸縮部材を、工具を直接的に把持する把持スリーブとは別に設けるように構成している。従って、小径工具に対応して把持スリーブを小径化した場合であっても、熱伸縮部材の加熱温度を必要以上に上げることがなく、小径工具の焼き嵌めを低温で行なうことが可能となる。なお、本構成では、工具を小径化することなく把持する場合についても、当該工具の焼き嵌めを低温で行なうことが可能であるのは勿論である。
また、熱伸縮部材の収縮に伴うスライド部材のスライド動作を、このスライド動作方向と交差する方向の締め付け動作に変換することによって、工具を確実に把持することが可能となる。
また本発明にかかる更なる形態の工具ホルダでは、前記の締め付け部は、把持スリーブを用いて構成され、また前記の変換部は、把持スリーブの板厚をホルダ先端側に向けて傾斜状に縮小して形成される傾斜面と、スライド部材がホルダ先端側から傾斜面に係合する係合部とを含む構成であるのが好ましい。本構成では、締め付け部は、スライド部材のホルダ後端側へのスライド動作の際、係合部が係合した傾斜面にしたがって工具の長軸方向と交差する方向へ撓み動作する一方、スライド部材のホルダ先端側へのスライド動作の際、撓み動作が解除される。なお、変換部の係合部は、把持スリーブの傾斜面に係合する傾斜面として構成されてもよいし、或いは把持スリーブの傾斜面に係合する曲面ないし凸面として構成されてもよい。
このような構成によれば、熱伸縮部材の収縮に伴うスライド部材のホルダ後端側へのスライド動作によって締め付け部を撓ませて工具を締め付けて把持するモードと、熱伸縮部材の伸長に伴うスライド部材のホルダ先端側へのスライド動作によって締め付け部の撓みを解除させて工具の締め付けを解除するモードとを有する工具把持機構が提供される。
また本発明にかかる更なる形態の工具ホルダでは、前記の変換部の係合部は、スライド部材の板厚をホルダ先端側に向けて傾斜状に縮小して形成された第2の傾斜面からなり、当該第2の傾斜面が傾斜面に面接触で係合する構成であるのが好ましい。このような構成によれば、傾斜面同士の面接触によってスライド部材が締め付け部を効率よく押圧することが可能となる。
本発明にかかる工具把持方法は、工具ホルダにおいて工具を把持する方法であって、
更なる形態の工具ホルダは、第1〜第4のステップを少なくとも含む。
第1のステップは、前述の工具ホルダと実質的に同様の工具ホルダを準備するステップとされる。第2のステップは、第1のステップで準備した工具ホルダにおいて、熱伸縮部材を加熱して把持スリーブの長軸方向に沿って伸長させることによってスライド部材をホルダ先端側にスライド動作させるとともに、当該スライド動作を締め付け部による工具の締め付け動作の解除動作に変換するステップとされる。第3のステップは、第2のステップの後、把持スリーブの工具把持空間に工具を挿入するステップとされる。第4のステップは、第3のステップで工具把持空間に工具が挿入された後、熱伸縮部材を除熱して把持スリーブの長軸方向に沿って収縮させることによって弾性部材の弾性付勢力にしたがってスライド部材をホルダ後端側にスライド動作させるとともに、当該スライド動作を締め付け部による工具の締め付け動作に変換し、これにより工具把持空間に挿入された工具の長軸方向と交差する方向に関して当該工具を締め付けるステップとされる。
このような方法を用いれば、小径工具に対応して把持スリーブを小径化した場合であっても、熱伸縮部材の加熱温度を必要以上に上げることがなく、小径工具の焼き嵌めを低温で行なうことが可能となる。また、熱伸縮部材の収縮に伴うスライド部材のスライド動作を、このスライド動作方向と交差する方向の締め付け動作に変換することによって、工具を確実に把持することが可能となる。
以上のように、本発明によれば、焼き嵌め構造を利用して工具を把持する工具ホルダにおいて、小径工具を低温で焼き嵌めすることが可能となった。
以下に、本発明における一実施の形態の工具ホルダの具体的な構成及び作用効果を、図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の「工具ホルダ」にかかる一実施の形態の工具ホルダ100の縦断面構造が示されている。図1に示すように、本実施の形態の工具ホルダ100は、被加工物(図示省略)の所定の加工作業を行なう工具200(図中の二点鎖線参照)を把持(「挟持」ないし「保持」ともいう)するホルダであって、概してホルダ本体110及び工具把持機構120を含む。この工具ホルダ100は、工具200を把持して当該工具200ごと加工機(図示省略)に取り付けられる。ここでいう「所定の加工作業」として典型的には、穴あけ加工、研削加工、研磨加工、締付け加工等の作業が挙げられる。
ホルダ本体110は、工具ホルダ100のハウジングを形成する。このホルダ本体110は、ホルダ先端部110a内に工具把持機構120が設けられている。この工具ホルダ100は、全体として工具200の長軸状の工具端部(「被挿設部」ともいう)201の把持が可能とされた長尺状の金属製部材として構成される。ここでいう工具200が本発明における「工具」に相当し、この工具200として、典型的には穴あけ加工、研削加工、研磨加工、締付け加工等に用いられる工具が挙げられる。またここでいうホルダ本体110が、本発明における「ホルダ本体」に相当する。
なお、本明細書中では、工具ホルダ100の延在方向に関し工具200が把持される側、すなわち図1中に記号「FR」で示す図中右側を「ホルダ先端側」として規定し、その反対側、すなわち図中左側を「ホルダ後端側」として規定する。また工具ホルダ100の延在方向と交差する方向に関し工具200に向かう側を「ホルダ内方」として規定し、その反対側を「ホルダ外方」として規定する。
工具把持機構120は、ホルダ本体110のホルダ先端部110aに取り付けられ、工具200の長軸状の工具端部201を把持する機構であり、把持スリーブ130、工具把持空間131、スライドリング140及び熱伸縮部材143を含む構成とされる。ここでいう工具把持機構120が、本発明における「工具把持機構」に相当する。
把持スリーブ130は、ホルダ先端側に開口状の工具把持空間131を有する長尺筒状の金属製部材として構成され、ホルダ本体110に取り付けられる。この把持スリーブ130は、ホルダ本体110のホルダ先端側に一体状に設けられて、当該ホルダ本体110の一部を構成する。必要に応じては、この把持スリーブ130がホルダ本体110に別体として取り付けられるように構成してもよい。工具把持空間131は、把持スリーブ130の長軸方向(工具端部201の延在方向)に沿って把持スリーブ130内に形成されるとともに、その内径が把持スリーブ130の長軸方向に関し一様となるように構成される。この工具把持空間131は、工具200の長軸状の工具端部201が挿設されて、工具200が把持される空間部分、すなわち工具200の把持を実質的に行なう把持領域として構成される。従って、工具把持空間131の内径d1は、工具200の工具端部201の挿入が許容されるように、工具端部201の外径d2に微小のクリアランスを加えた大きさに設定されるのが好ましい。ここでいう把持スリーブ130が、本発明における「把持スリーブ」に相当し、またこの把持スリーブ130の工具把持空間131が、本発明における「工具把持空間」に相当する。
またこの把持スリーブ130は、その筒壁部分に工具把持空間131側への撓み動作が許容された被係合部134を備えている。具体的には、被係合部134は、把持スリーブ130の筒壁部分のうちホルダ先端側の開口縁部(「口元部」ともいう)135に設けられている。この被係合部134は、把持スリーブ130の板厚をホルダ先端側に向けて傾斜状に縮小させた傾斜面134aを有する部位(すなわちホルダ後側に向けて肉厚が徐々に減少するテーパー部)であり、把持スリーブ130の内径を変えることなく、把持スリーブ130の外径のみをホルダ先端側に向けて徐々に縮小することによって構成される。この被係合部134は、工具端部201の軸まわり全周を取り囲むように設けられている。ここでいう把持スリーブ130の被係合部134は、把持スリーブ130の工具把持空間131に挿入された工具200の長軸方向と交差する方向に関して当該工具200を締め付ける機能を果たすものであり、本発明における「締め付け部」に相当する。また、この被係合部134の傾斜面134aが、本発明における「傾斜面」に相当する。
また本実施の形態では、把持スリーブ130の筒壁部分のうちのスリーブ先端に、把持スリーブ130の長軸方向に延在する溝状のスリット136が設けられている。このスリット136は把持スリーブ130の筒壁まわりに複数設けられている。隣接するスリット136間に介在する(或いは複数のスリット136によって区画される)筒壁部分は、被係合部134としての機能を果たし、当該被係合部134の両側のスリット136のスリット底部136aの撓み支点を中心として、工具把持空間131側への撓み動作が許容される。
スライドリング140は、ホルダ本体110の開口縁部分、具体的にはホルダ本体110の内壁面と把持スリーブ130の外壁面との間において、把持スリーブ130の筒壁まわり全周を取り囲む筒状の金属製部材として構成されている。このスライドリング140は、把持スリーブ130の外壁面に摺接しつつ把持スリーブ130の長軸方向へのスライド動作が許容されたスライド部材として構成される。このスライドリング140の筒壁部分のうちのリング先端に係合部142が設けられている。この係合部142は、スライドリング140の板厚をホルダ先端側に向けて傾斜状に拡張させた傾斜面142aを有する部位(テーパー部)であり、スライドリング140の内径がホルダ先端側に向けて徐々に縮小されるようにホルダ内方に向けて張り出し状に形成される。この係合部142の傾斜面142aは、把持スリーブ130側に設けられた被係合部134の傾斜面134aに対し面接触によって当接状に係合している。ここでいうスライドリング140が、本発明における「スライド部材」に相当する。またこのスライドリング140において把持スリーブ130の被係合部134に係合する係合部142が、本発明における「係合部」に相当し、この係合部142の傾斜面142aが、本発明における「第2の傾斜面」に相当する。
熱伸縮部材143は、把持スリーブ130の長軸方向に沿って延在するとともに、スライドリング140まわり全周を取り囲む筒状部材とされる。この熱伸縮部材143は、筒内に設けられたネジ部143aを介してホルダ本体110及びスライドリング140の双方にわたって取り付けられる。この熱伸縮部材143は、加熱領域144の加熱によって把持スリーブ130の長軸方向に沿って伸長(「膨張」ともいう)する一方、冷却(「除熱」ないし「減熱」ともいう)によって把持スリーブ130の長軸方向に沿って収縮する機能を有する。なおこの場合の冷却は、加熱時よりも温度が低下した状態を広く包含するものであり、当該冷却が自然放冷を用いるものであってもよいし、或いは冷却手段による強制的な冷却操作を用いるものであってもよい。ここでいう熱伸縮部材143が、本発明における「熱伸縮部材」に相当する。
なお、この熱伸縮部材143の伸縮ストローク、すなわちホルダ本体110に対するスライドリング140のスライド動作のストロークは、典型的には熱伸縮部材143の加熱領域144の加熱温度、この加熱領域144の長さ(図1中の加熱領域144の把持スリーブ130の長軸方向に沿った長さL)、スライドリング140の係合部142に設けられた傾斜面142aの構造(傾斜角度、面粗度等)などによって定まる。
次に、上記構成の工具ホルダ100の作用効果を、図2及び図3を参照しつつ説明する。図2には、図1の部分拡大図であって工具200が工具ホルダ100に把持される前の様子が示され、図3には、図1の部分拡大図であって工具200が工具ホルダ100に把持された様子が示される。
工具200を工具ホルダ100に把持する場合には、上記構成の工具ホルダ100を準備する。このときの操作が、本発明における「第1のステップ」に相当する。その後、使用者によって把持スリーブ130の工具把持空間131に工具200の工具端部201が挿入される。なお、工具把持空間131に工具200の工具端部201を挿入する場合には、熱伸縮部材143の加熱領域144を加熱する操作を予め行なうことによって、図2に示すような準備状態に設定する必要がある。すなわち、本実施の形態の工具ホルダ100は、いわゆる焼き嵌め構造の工具ホルダとして構成される。
工具ホルダ100を図2に示す準備状態に設定するには、熱伸縮部材143が把持スリーブ130の長軸方向に沿って所定量伸長(「伸長」ともいう)するように、加熱領域144を加熱操作する。このときの操作が、本発明における「第2のステップ」に相当する。この加熱操作に伴って、熱伸縮部材143が徐々に伸長し、スライドリング140全体はこの熱伸縮部材143によってホルダ先端側へと引っ張り力を受ける。そして、引っ張り力を受けたこのスライドリング140は、係合部142の傾斜面142aにおいて被係合部134の傾斜面134aに面接触で係合した状態のまま、ホルダ先端側(図2中右側)へとスライド動作する。このとき、係合部142の傾斜面142aがホルダ先端側へと被係合部134の傾斜面134a上を摺動しつつ図2中右側にスライド動作するにつれて、係合部142による被係合部134の押圧が徐々に弱められ、被係合部134のホルダ内方への撓みが解除され、被係合部134がホルダ外方へと変位していく。
加熱領域144が予め設定された既定温度まで加熱されると、把持スリーブ130の被係合部134のホルダ内方への撓みが完全に解除され、工具把持空間131の内径が把持スリーブ130の長軸方向に関し一様となる。その後、加熱領域144の加熱が停止される。これにより工具把持空間131への工具の挿入、或いは工具把持空間131に既に把持された状態の工具の取り外しが可能となる。この準備状態において、工具ホルダ100の工具把持空間131に、所望の工具200の工具端部201が挿入される。このときの操作が、本発明における「第3のステップ」に相当する。この挿入状態では、図2に示すように、工具200の工具端部201の外表面と把持スリーブ130の内壁面との間の対向部分全体にわたって微小のクリアランス137が形成される。
その後、加熱領域144が自然放冷ないし強制冷却によって冷却される。このときの操作が、本発明における「第4のステップ」に相当する。加熱領域144の冷却に伴って、熱伸縮部材143が徐々に収縮し、スライドリング140全体がこの熱伸縮部材143によってホルダ後端側へと引っ張り力を受ける。このとき、スライドリング140は、径方向の変位が規制され把持スリーブ130の長軸方向のスライド動作のみが許容されている。従って、このスライドリング140は、熱伸縮部材143の引っ張り力にしたがってホルダ後端側(図4中左側)にスライド動作する。
このスライド動作では、係合部142の傾斜面142aがホルダ先端側へと被係合部134の傾斜面134a上を摺動しつつホルダ後端側へと移動するにつれて、係合部142が被係合部134をホルダ内方へ強く押圧する。この押圧力を受けた被係合部134は、その傾斜面134aにしたがってホルダ内方に撓む(収縮する)。すなわち、この被係合部134は、撓み支点(図1中のスリット底部136a近傍)を中心として、工具把持空間131側へと撓み動作(「締め付け動作」ないし「収縮動作」ともいう)する。
加熱領域144が初期温度まで冷却されるまで、スライドリング140がホルダ後端側へとスライド動作したときの被係合部134の撓み状態が図3に示され、またこのときの被係合部134の撓み方向が図3中の白抜き矢印で示される。従って、把持スリーブ130の撓み状態の被係合部134によって、工具端部201を把持(「締め付ける」ともいう)する把持力が生じる。
上述のように、係合部142の傾斜面142a及び被係合部134の傾斜面134aは、熱伸縮部材143の収縮によって生じるスライドリング140のホルダ後端側へのスライド動作を、被係合部134の工具200の長軸方向と交差する方向への締め付け動作に変換する一方、熱伸縮部材143の伸長によって生じるスライドリング140のホルダ先端側へのスライド動作を、締め付け動作の解除動作に変換する締め付け動作の解除動作に変換する機能を果たしており、本発明における「変換部」に相当する。
本実施の形態の工具ホルダ100では、熱伸縮部材143の加熱及び冷却の切り換えによって、スライドリング140のスライド動作方向が切り換えられ、これにより工具200の締め付け動作と、当該締め付け動作の解除動作(「工具締め付け解除動作」ともいう)との切り換えが可能とされる。工具締め付け解除動作が行なわれると、工具200が把持スリーブ130の工具把持空間131に着脱自在とされる。一方、工具の締め付け動作が行なわれると、把持スリーブ130の筒壁の各部位のうち、特に被係合部134がホルダ内方に撓むことによって、工具端部201を工具把持空間131にて確実に把持することが可能となる。
本実施の形態では特に、ホルダ本体110及びスライドリング140の双方にわたって取り付けられる熱伸縮部材143を、工具を直接的に把持する把持スリーブ130とは別に設けるように構成している。従って、小径工具に対応して把持スリーブ130を小径化した場合であっても、熱伸縮部材143の加熱温度を必要以上に上げることがなく、小径工具の焼き嵌めを低温で行なうことが可能となる。
なお、本構成では、工具を小径化することなく把持する場合についても、当該工具の焼き嵌めを低温で行なうことが可能であるのは勿論である。また、熱伸縮部材143の収縮に伴うスライドリング140のスライド動作を、このスライド動作方向と交差する方向の締め付け動作に変換することによって、工具を確実に把持することが可能となる。また、係合部142の傾斜面142aと被係合部134の傾斜面134aとの係合では、傾斜面同士の面接触によって係合部142が被係合部134を効率よく押圧することが可能となる。
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記実施の形態では、把持スリーブ130の一部が被係合部134を構成する場合について記載したが、本発明では、被係合部134の相当する部位を把持スリーブ130とは別体として構成することもできる。
また上記実施の形態では、把持スリーブ130のホルダ先端側の開口縁部135に被係合部134を設ける場合について記載したが、本発明では、被係合部134を設ける箇所や数等は必要に応じて適宜変更が可能である。例えば開口縁部135よりもホルダ後端側に離間した位置に被係合部134を設けてもよい。
また上記実施の形態では、被係合部134の傾斜面134aを、把持スリーブ130の板厚をホルダ先端側に向けて傾斜状に縮小させた構成とし、この傾斜面134aに対しホルダ後端側から係合部142の傾斜面142aが係合する場合について記載したが、本発明では、被係合部134や係合部142の構成については必要に応じて適宜変更が可能である。例えば、把持スリーブの板厚をホルダ先端側に向けて傾斜状に拡張させた傾斜面に対し、ホルダ後端側から係合部の傾斜面(板厚をホルダ先端側に向けて傾斜状に縮小させた傾斜面)が係合する構成を採用することもできる。
また上記実施の形態では、係合部142の傾斜面142aが被係合部134の傾斜面134aに係合する構成について記載したが、係合部142のうち被係合部134の傾斜面134aに係合する部位は傾斜面以外であってもよく、例えば凸面ないし曲面等を介して被係合部の傾斜面に係合する構成であってもよい。また、この係合部142は、把持スリーブ130の筒壁まわり全周を取り囲むように配置される構成以外に、把持スリーブ130の筒壁まわりに部分的に配置される構成であってもよい。
また上記実施の形態では、薄肉部132及び被係合部134は、いずれも工具端部201の軸まわり全周を取り囲むように配置される構成としたが、これら薄肉部132や被係合部134は、必要に応じて工具端部201の軸まわりに部分的に配置される構成であってもよい。
本発明の「工具ホルダ」にかかる一実施の形態の工具ホルダ100の縦断面構造を示す図である。 図1の部分拡大図であって工具200が工具ホルダ100に把持される前の様子を示す図である。 図1の部分拡大図であって工具200が工具ホルダ100に把持された様子を示す図である。
100…工具ホルダ
110…ホルダ本体
110a…ホルダ先端部
120…工具把持機構
130…把持スリーブ
131…工具把持空間
134…被係合部
134a…傾斜面
135…開口縁部
136…スリット
136a…スリット底部
137…クリアランス
140…スライドリング
142…係合部
142a…傾斜面
143…熱伸縮部材
143a…ネジ部
144…加熱領域
200…工具
201…工具端部

Claims (4)

  1. 工具を把持し、所定の加工作業に供するための工具ホルダであって、
    当該工具ホルダのハウジングを形成するホルダ本体と、
    前記工具を把持する工具把持機構と、
    を備え、
    前記工具把持機構は、
    前記ホルダ本体に取り付けられる長尺筒状の把持スリーブと、
    前記把持スリーブの長軸方向に沿って前記把持スリーブ内に形成され、前記工具が把持される工具把持空間と、
    前記把持スリーブの長軸方向にスライド動作可能に設けられたスライド部材と、
    前記ホルダ本体及び前記スライド部材の双方にわたって取り付けられ、加熱によって前記把持スリーブの長軸方向に沿って伸長する一方、冷却によって前記把持スリーブの長軸方向に沿って収縮する熱伸縮部材と、
    前記工具把持空間に挿入された前記工具の長軸方向と交差する方向に関して当該工具を締め付ける締め付け部と、
    前記熱伸縮部材の収縮によって生じる前記スライド部材のホルダ後端側へのスライド動作を、前記締め付け部の前記工具の長軸方向と交差する方向への締め付け動作に変換する一方、前記熱伸縮部材の伸長によって生じる前記スライド部材のホルダ先端側へのスライド動作を、前記締め付け動作の解除動作に変換する変換部と、
    を含む構成であることを特徴とする工具ホルダ。
  2. 請求項1に記載の工具ホルダであって、
    前記締め付け部は、前記把持スリーブを用いて構成され、
    前記変換部は、前記把持スリーブの板厚をホルダ先端側に向けて傾斜状に縮小して形成される傾斜面と、前記スライド部材がホルダ先端側から前記傾斜面に係合する係合部と、を含み、
    前記締め付け部は、前記スライド部材のホルダ後端側へのスライド動作の際、前記係合部が係合した前記傾斜面にしたがって前記工具の長軸方向と交差する方向へ撓み動作する一方、前記スライド部材のホルダ先端側へのスライド動作の際、前記撓み動作が解除されることを特徴とする工具ホルダ。
  3. 請求項2に記載の工具ホルダであって、
    前記変換部の前記係合部は、前記スライド部材の板厚をホルダ先端側に向けて傾斜状に拡張して形成された第2の傾斜面からなり、当該第2の傾斜面が前記傾斜面に面接触で係合する構成であることを特徴とする工具ホルダ。
  4. 工具ホルダにおいて工具を把持する工具把持方法であって、
    ホルダ本体に取り付けられる長尺筒状の把持スリーブと、
    前記把持スリーブの長軸方向に沿って前記把持スリーブ内に形成され、前記工具が把持される工具把持空間と、
    前記把持スリーブの長軸方向にスライド動作可能に設けられたスライド部材と、
    前記ホルダ本体及び前記スライド部材の双方にわたって取り付けられ、加熱によって前記把持スリーブの長軸方向に沿って伸長する一方、冷却によって前記把持スリーブの長軸方向に沿って収縮する熱伸縮部材と、
    前記工具把持空間に挿入された前記工具の長軸方向と交差する方向に関して当該工具を締め付ける締め付け部と、
    を有する工具ホルダを準備する第1のステップと、
    前記第1のステップで準備した前記工具ホルダにおいて、前記熱伸縮部材を加熱して前記把持スリーブの長軸方向に沿って伸長させることによって前記スライド部材をホルダ先端側にスライド動作させるとともに、当該スライド動作を締め付け部による工具の締め付け動作の解除動作に変換する第2のステップと、
    前記第2のステップの後、前記把持スリーブの前記工具把持空間に前記工具を挿入する第3のステップと、
    前記第3のステップで前記工具把持空間に前記工具が挿入された後、前記熱伸縮部材を冷却して前記把持スリーブの長軸方向に沿って収縮させることによって前記スライド部材をホルダ後端側にスライド動作させるとともに、当該スライド動作を前記締め付け部による工具の締め付け動作に変換し、これにより前記工具把持空間に挿入された前記工具の長軸方向と交差する方向に関して当該工具を締め付ける第4のステップと、
    を含むことを特徴とする工具把持方法。
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