本発明は、ワークの穴にグリップ部材のグリップ爪を係合させて着座面に引き付けてクランプするクランプ装置に関し、特に着座面をクリーニングするクリーニング用加圧エアのエア通路と、クランプ動作確認用エア通路を設けたクランプ装置に関する。
ワークの上面や、ワークの外周部の上面を機械加工するような場合、ワークの端部を上方から押圧具で押圧する形式のクランプ装置を採用することはできないため、上記のようなクランプ装置(所謂、ホールクランプ)が採用される。このクランプ装置では、クランプ本体にクランプ対象のワークを着座させる着座面が形成され、ワーク投入時にワークを着座面に搭載して支持し、ワークの穴にグリップ部材と、このグリップ部材に挿入されたテーパ軸部を有するクランプロッドを挿入し、クランプロッドを着座面側へ引き付けることで、テーパ軸部によりグリップ爪を拡径させて穴の内周面に係合させてから、そのグリップ部材を更に着座面側へ引き着付けることで、ワークを着座面に固定する。
この種のクランプ装置が特許文献1,2に記載されている。
上記のクランプ装置において、着座面に切粉が付着しやすいため、着座面をエアブローしてクリーニングするクリーニング機構が設けられる。このクリーニング機構は、クランプ本体にグリップ部材の先端側まで加圧エアを導くクリーニング用エア通路と、このクリーニング用エア通路に加圧エアを供給する加圧エア供給手段とで構成される。
一方、ワークが着座面に着座したか否かを加圧エアを介して動作確認する着座センサが実用に供されている。この着座センサは、着座面に形成したエア噴出孔から加圧エアを噴出させ、ワークの着座によりエア噴出孔に連通したエア通路のエア圧が上昇したことを圧力スイッチで検出することにより、ワークの着座を検出する。
クリーニング用エア通路の一部と、着座センサ用のエア通路の一部を兼用する場合が少なくない。
この場合、ワークの穴が上端閉塞状の袋状の穴である場合に、クリーニング用エアの逃し通路が設けられてないと、ワークの着座が不完全であっても、エア通路のエア圧が上昇してワークの着座正常と判定してしまう。そこで、着座面には周方向複数箇所にエア逃し溝が形成され、着座面は複数の円弧形の分割着座面で構成されている。
他方、グリップ爪がワークの穴の周面に対してスリップすることなく正常にクランプしたか否かを加圧エアを介して確認するスリップ検知機構を設けることも考えられる。
特許第3550010号公報
ドイツ特許第4020981号公報
前記着座センサにより、ワークの着座面への着座が検出されたとしても、グリップ爪がワークの穴の内周面に対してスリップした場合、ワークを着座面にクランプするクランプ力が所期のクランプ力よりも低下するためクランプ不良となる。このクランプ不良のままワークの機械加工を実行すると、ワークがズレ動いて不良品が発生したり、加工中の振動量が大きくなって加工精度が低下したりする。そこで、クランプ動作時のグリップ爪のスリップを検知可能にすることが望ましい。
前記のように、着座面にエア逃し溝を形成して着座面を複数の円弧形の分割着座面で構成する場合、通常、ワークの加工中にエア逃し溝から切粉が侵入するおそれがあるので、ワークの機械加工中には常時クリーニング用加圧エアを供給し続ける。この場合、加圧エアの消費量が多くなり、ランニングコストが高くなる。そこで、着座面のエア逃し溝を省略し、環状の着座面に形成することが考えられる。
環状の着座面に形成すると、ワークの着座後には、着座面を通って加圧エアが流出しなくなるため、クランプ本体に形成されたクリーニング用エア通路内のエア圧が高い圧力に維持される。そのため、グリップ爪のスリップ等のクランプ不良を加圧エアを介して検出する動作確認機構のエア通路を設ける場合に、動作確認用エア通路をクリーニング用エア通路とは独立のエア通路に形成しなければならない。そのため、動作確認用エア通路を形成するのが困難になったり、エア通路の形成の為にクランプ本体が複雑化したり、大型化する等の問題がある。
本発明の目的は、クリーニング用エア通路の下流部分に下流部が連通された動作確認用エア通路を採用しながらも、その動作確認用エア通路を介して動作確認可能にしたクランプ装置を提供することである。
請求項1のクランプ装置は、クランプ本体と、ワークをクランプする為のクランプ部材と、このクランプ部材を進退駆動可能な流体圧シリンダと、前記クランプ本体のワーク着座面をクリーニング可能な加圧エアを供給する為にクランプ本体に設けたクリーニング用エア通路とを備えたクランプ装置において、動作確認用の加圧エアを供給する為にクランプ本体に設けられ且つ下流部が前記クリーニング用エア通路の下流部分に連通された動作確認用エア通路と、前記クリーニング用エア通路に加圧エアを供給する供給位置と、そのクリーニング用エア通路を大気開放する開放位置とに亙って切換可能な切換弁手段とを備え、前記動作確認用加圧エアを介して行う動作確認を前記クリーニング用加圧エアで妨げないように、少なくともクランプ動作と関連付けて前記切換弁手段を切換えることを特徴としている。
請求項2のクランプ装置は、請求項1の発明において、前記クランプ部材は、ワークの穴に挿入されて穴の内周面をグリップ可能な環状のグリップ部材と、このグリップ部材に内嵌係合させたテーパ軸部を有するクランプロッドを備え、前記ワーク着座面は、前記グリップ部材の外周側近傍において前記クランプ本体の上端部に環状に形成されたことを特徴としている。
請求項3のクランプ装置は、請求項2の発明において、前記切換弁手段は電磁方向切換弁で構成され、少なくともクランプ動作と関連付けて前記電磁方向切換弁を切換えるようにこの電磁方向切換弁を制御する弁制御手段であって、前記流体圧シリンダのクランプ動作開始前から前記電磁方向切換弁を供給位置に切換え、クランプ動作開始後の所定時期に前記電磁方向切換弁を開放位置に切換える弁制御手段を設けたことを特徴としている。
請求項4のクランプ装置は、請求項2又は3の発明において、前記クランプ部材と一体的に流体圧シリンダの軸心方向へ移動する連動部材を設け、前記クランプ部材がクランプ動作時のクランプ不良によりクランプ方向限界位置又はその近傍位置まで移動したときに、前記連動部材により開弁操作される弁機構を、前記動作確認用エア通路に設けたことを特徴としている。
請求項5のクランプ装置は、請求項2又は3の発明において、前記クランプ部材と一体的に流体圧シリンダの軸心方向へ移動する連動部材を設け、前記クランプ部材がクランプ動作時のクランプ不良によりクランプ方向限界位置又はその近傍位置まで移動したときに、前記連動部材により閉弁操作される弁機構を、前記動作確認用エア通路に設けたことを特徴としている。
請求項6のクランプ装置は、請求項4又は5の発明において、前記ワーク着座面に開口された着座センサ用加圧エア噴出口と、この着座センサ用加圧エア噴出口を前記動作確認用エア通路に連通する連通路とを設けたことを特徴としている。
請求項7のクランプ装置は、請求項2又は3の発明において、前記クランプ本体の上部の中心部に上方へ突出する円筒状の本体筒部を設け、アンクランプ状態のとき、前記グリップ部材の上半部とクランプロッドのテーパ軸部が前記本体筒部の上端外へ突出するように構成したことを特徴としている。
請求項8のクランプ装置は、請求項7の発明において、前記流体圧シリンダのピストン部材を構成するピストン部及びこのピストン部から上方へ本体筒部内まで延びるロッド部と、前記ロッド部に外嵌され流体圧で上方へ付勢された環状受圧部材と、前記クランプ動作時にグリップ部材を拡径させる際にグリップ部材を流体圧を介して下方から支持するサポート機構とを設けたことを特徴としている。
請求項9のクランプ装置は、請求項2又は3の発明において、前記クランプ動作時にグリップ部材を拡径させる際にグリップ部材を流体圧を介して下方から支持するサポート機構を設け、前記グリップ部材とクランプロッドとサポート機構をクランプ本体の一端近傍部に配設し、前記グリップ部材とクランプロッドの軸心を前記流体圧シリンダの軸心から前記クランプロッドと直交方向へオフセットさせたことを特徴としている。
請求項10のクランプ装置は、請求項9の発明において、前記クランプロッドと前記流体圧シリンダのピストン部材を連動連結するL形のL形連結部材を設けたことを特徴としている。
請求項1の発明によれば、動作確認用エア通路の下流部をクリーニング用エア通路の下流部分に連通したため、動作確認用エア通路の下流部をクリーニング用エア通路の下流部分と共用可能となるから、動作確認用エア通路の構造を簡単化できる。また、クリーニング用エア通路に加圧エアを供給する供給位置と、大気開放する開放位置とに亙って切換可能な切換弁手段を設け、動作確認用加圧エアを介して行う動作確認を前記クリーニング用加圧エアで妨げないように、少なくともクランプ動作と関連付けて切換弁手段を切換えるため、動作確認用加圧エアを介してクランプ装置の動作確認を行うことができる。
請求項2の発明によれば、クランプ装置がワークの穴をグリップする形式の且つ環状の着座面を有するクランプ装置である。ワークの穴が上端閉塞型の袋状の穴であるような場合、クランプ時の動作確認の際には切換弁手段を開放位置に切換えることで、確認用エア通路の下流部のエア圧を大気圧に切換えて動作確認を確実に行うことができる。そして、環状の着座面で切粉の侵入のおそれがないため、ワークの機械加工中には、クリーニング用加圧エアを供給するのを停止して、加圧エアの消費量を節減することができる。
請求項3の発明によれば、切換弁手段が電磁方向切換弁であり、この電磁方向切換弁を制御する弁制御手段は、クランプ部材を進退駆動する流体圧シリンダのクランプ動作開始前から電磁方向切換弁を供給位置に切換え、クランプ動作開始後の所定時期に電磁方向切換弁を開放位置に切換えるため、クリーニング用加圧エアによるクリーニングを確実に実行しつつ、前記所定時期に電磁方向切換弁を開放位置に切換えることで、動作確認用エア通路のエア圧を介して動作確認を確実に行うことができる。
請求項4の発明によれば、クランプ動作時に、グリップ部材がワークの穴の内周面に対してスリップして、クランプ部材がクランプ方向限界位置又はその近傍位置まで移動したことを検知することができる。
請求項5の発明によれば、請求項4と同様の効果が得られる。
請求項6の発明によれば、着座センサ用加圧エア噴出口を動作確認用エア通路に連通する連通路を設けるため、着座センサ用エア通路の一部を動作確認用エア通路の一部として兼用することができる。
請求項7の発明によれば、クランプ本体の中心部に上方へ突出する本体筒部を設け、この本体筒部にグリップ部材とクランプロッドとを組み込んだため、例えば、ワークの穴がリブとリブの間に配置されている場合にも確実にクランプ可能になり、クランプ装置の汎用性が高まる。
請求項8の発明によれば、本体筒部が小径で上方へ延びているが、流体圧によりサポート機構を介してグリップ部材を支持し、グリップ部材を拡径させてワークの穴の内面に係合させることができる。
請求項9の発明によれば、グリップ部材とクランプロッドとサポート機構をクランプ本体の一端近傍部に配設し、グリップ部材とクランプロッドの軸心を、クランプ用の流体圧シリンダの軸心からクランプロッドと直交方向へオフセットさせたため、ワークのフランジ部の穴をクランプするような場合に、クランプ本体とワーク本体との干渉を避けることができ、クランプ装置の汎用性が高まる。
請求項10の発明によれば、請求項9の発明において、クランプロッドと流体圧シリンダのピストン部材を連動連結するL形連結部材を設けたため、流体圧シリンダの駆動力をL形連結部材を介してクランプロッドに伝達することができる。
本発明の実施例1に係るクランプ装置の平面図である。
図1のクランプ装置(ワーク投入状態)の縦断面図である。
図1のクランプ装置(クランプ状態)の縦断面図である。
図1のクランプ装置の部分縦断面図である。
図1のクランプ装置(クランプ不良状態)の縦断面図である。
図5のクランプ装置のクランプ不良検出機構の要部拡大縦断面図である。
図1のクランプ装置の動作タイムチャートである。
実施例2に係るクランプ装置の部分縦断面図である。
実施例3に係るクランプ装置の部分縦断面図である。
実施例4に係るクランプ装置の平面図である。
図10のXI−XI線断面図(ワーク投入状態のクランプ装置)である。
図10のクランプ装置(クランプ正常)の部分縦断面図である。
図10のクランプ装置(クランプ不良)の縦断面図である。
図10のクランプ装置の下部本体部材とピストン部材とクランプロッドの分解斜視図である。
図15のXV−XVI 線断面図である。
図10のA−A線断面図である。
図10のB−B線断面図である。
実施例5に係るクランプ装置斜視図である。
図19のクランプ装置の平面図である。
図19のクランプ装置の縦断面図である。
図19のクランプ装置の横断面図である。
図19のクランプ装置の部分縦断面図である。
図19のクランプ装置の部分縦断面図である。
図19のクランプ装置でワークをクランプした状態を示す縦断面図である。
クランプ異常発生例を説明する為の要部断面図である。
別のクランプ異常発生例を説明する為の要部断面図である。
サポート用油圧シリンダのピストン部の封止用鍔部でエア噴出口を塞いだ状態を示す要部断面図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、このクランプ装置Cは、クランプ本体1と、ワークWを固定するためのクランプ部材としてのグリップ部材2およびクランプロッド3と、グリップ部材2とクランプロッド3を軸心方向(上下方向)に駆動可能な油圧シリンダ4と、油圧シリンダ4に含まれる環状受圧部材5とを備えている。前記クランプ本体1は、 上部本体部材11と下部本体部材12とで構成され、クランプ本体1が基部本体部材13に組み付けられる。
上部本体部材11は平面視にてほぼ長円形であり、この上部本体部材11は4つのボルト穴14に挿入される4つのボルトで基部本体部材13に固定される。下部本体部材12はシリンダ穴41を形成する筒状部材であり、この下部本体部材12の上端部が上部本体部材11の下面側の凹部15に嵌合され、4つのボルト16により上部本体部材11に固定されている。
図1〜図3に示すように、グリップ部材2は、上部本体部材11の中心部分の開口穴17を上下に貫通している。グリップ部材2の外周側近傍部において、上部本体部材11の上端部には環状のワーク着座面18が形成されている。この着座面18にワークWを着座させ、ワークWをクランプ状態にする。前記のワーク着座面18を除き、上部本体部材11の上面は、緩い傾斜角の部分円錐面に形成されている。
環状のグリップ部材2はワークWの穴Hに挿入されて穴Hの内周面をグリップ可能なものである。このグリップ部材2は、ロッド挿通孔21と、グリップ部材2が進出位置(上限位置)にあるときに着座面18よりも進出側(上側)の位置でワークWを受け止め可能なワーク搭載面22と、このワーク搭載面22を形成する環状鍔部23と、この環状鍔部23から上側へ延びるグリップ爪部24と、基端鍔部26と、環状鍔部23と基端鍔部26の間の環状溝25とを備えている。グリップ部材2は、拡径と縮径を可能とし、分解可能とする為に、4つのスリット27により4等分に分割され、Oリング29で束ねられている。
金属製のグリップ部材2のグリップ爪部24の外周面には、ワークWに下面から凹設された上端閉塞形の袋状の穴Hの内周面をグリップし易くする3段の歯24aが形成されている。グリップ部材2には、クランプロッド3を挿通させるロッド挿通孔21が形成され、このロッド挿通孔21のうちのグリップ爪部対応部分は、クランプロッド3のテーパ軸部31が密着状に係合するテーパ孔部21aに形成されている。
図1〜図3に示すように、上部本体部材11の開口穴17にはグリップ部材2の環状鍔部23の外周面に摺接するゴムや合成樹脂等の弾性材料製のスレクーパ28が装着されている。グリップ部材2の環状溝25には分割されたグリップ爪部24と環状鍔部23を縮径方向へ付勢するOリング29が装着されている。
グリップ部材2の基端鍔部26は、上部本体部材11の円形凹部6に収容され、円形凹部6の上壁部と環状受圧部材5の水平板部62との間に可動に挟着されている。グリップ部材2は、環状受圧部材5と一体的に昇降可能であり、円形凹部6の外周部の環状隙間7とスクレーパ28の弾性変形を介して、油圧シリンダ4の軸心と直交する水平方向へ移動可能に装着されている。
クランプロッド3は、テーパ軸部31と小径ロッド部32と大径ロッド部33と大径鍔部34とを一体形成したものである。テーパ軸部31と小径ロッド部32とがグリップ部材2のロッド孔挿通21に挿通されている。上記テーパ軸部31は、上方程大径化するようにクランプロッド3の上端部分に形成され、テーパ軸部31がグリップ部材2のテーパ孔部21aに内嵌係合している。
図1〜図3に示すように、油圧シリンダ4は、グリップ部材2とクランプロッド3とを軸心方向へ進退駆動する為のものである。この油圧シリンダ4は、下部本体部材12と基部本体部材13とで形成された立向きのシリンダ穴41と、このシリンダ穴41に装着されたピストン部材42(ピストン部43とこのピストン部43から上方へ延びる筒状ピストンロッド44とを含む)と、ピストン部43の上側のクランプ用油室45及びピストン部43の下側のアンクランプ用油室46と、環状受圧部材5とを備えている。
シリンダ穴41の底面は基部本体部材13で塞がれ、シリンダ穴41の下端近傍部の環状溝には、ピストン部材42の下方移動を規制するストップリング47が装着されている。ピストン部材42はストップリング47で受け止められて下限位置になる。ピストン部材42には、上部の小径孔48と、中段部の中径孔49と、下部の大径孔50とが形成されている。この大径孔50には封鎖部材51が装着され、ストップリング52で抜け止めされている。
前記クランプロッド3の大径ロッド部33が小径孔48内に位置し、大径鍔部34が中径孔49内に位置している。大径ロッド部33と小径孔48の内周面との間には約2mmの環状隙間51が形成され、大径ロッド部33の外周の環状溝に太いOリング52(弾性リング部材)が装着され、このOリング52は大径ロッド部33と筒状ピストンロッド44の間に僅かに圧縮させた状態に装着されている。
大径鍔部34の厚さは中径孔49の厚さとほぼ等しい。大径鍔部34の外周面と中径孔49の内周面との間には僅かな隙間がある。それ故、クランプロッド3は、ピストン部材42と一体的に昇降移動するが、ピストン部材42に対して相対的に軸心と直交する水平方向へ移動可能である。グリップ部材2はクランプロッド3と一体的に上記軸心と直交する水平方向へ移動可能である。尚、スクレーパ28とOリング52が、グリップ部材2とクランプロッド3の軸心を油圧シリンダ4の軸心に一致させるように、グリップ部材2とクランプロッド3を弾性付勢している。
図1〜図3に示すように、環状受圧部材5は、受圧筒部61と、この受圧筒部61の上端に連なる水平板部62とを有し、この水平板部62の上面にグリップ部材2の基端鍔部26が載置されてグリップ部材2の基端面が支持されている。水平板部62の中心部の円形穴63に、クランプロッド3の大径ロッド部33が遊嵌状に挿通しており、水平板部62の外周部には、受圧筒部61よりも僅かに大径の係止鍔62aが形成されている。下部本体部材12には、シリンダ穴41の上端に連なる上部シリンダ穴64が形成されている。尚、環状受圧部材5が前記グリップ部材2と一体的に油圧シリンダ4の軸心方向へ移動する「連動部材」に相当する。
上部本体部材11には、上部シリンダ穴64の上端に連なる収容穴65が形成されている。この収容穴65の厚さは水平板部62の厚さよりも例えば 1.2〜 2.0mm位大きい。 環状受圧部材5の受圧筒部61は、上部シリンダ穴64の内周面と筒状ピストンロッド44の間の環状穴に油密に且つ上下方向に摺動自在に装着され、受圧筒部61はその下端にクランプ用油圧室45の油圧を受圧する。水平板部62は、収容穴65に上下方向に摺動自在に装着されている。環状受圧部材58が、その下端に油圧を受圧してグリップ部材2を支持するサポート機構を構成している。油室からの油圧の油のリークを防止する為の複数のシール部材(符号省略)が設けられている。
クランプ用油室45は、油路66〜69を介して油圧供給源に接続され、油路69の油圧を検出する油圧検出センサ70が設けられている。アンクランプ用油室46は、油路71,72を介して油圧供給源に接続され、油路72の油圧を検出する油圧検出センサ73も設けられている。環状受圧部材5は、グリップ部材2のワーク搭載面22が着座面18よりも上方へ進出した位置になる第1位置と、ワーク搭載面22が着座面18より下降した位置となる第2位置とに亙って軸心方向に所定ストローク移動可能になっている。
図1〜図4に示すように、ワークWをクランプした状態で、ワークWの下面が着座面18に密着したことを検出する着座センサ80が設けられている。この着座センサ80は、着座面18に開口された加圧エア噴出孔81と、この加圧エア噴出孔81に連通するように上部本体部材11内に形成されたエア通路82及び基部本体部材13内に形成されたエア通路83と、このエア通路83に加圧エアを供給する加圧エア供給源と、エア通路83内の加圧エアの圧力が設定圧以上に昇圧したことを検出する圧力スイッチ84などで構成されている。
図1に示すように、上部本体部材11には、エア通路82と同様のエア通路90であって円形凹部6に連なるエア通路90が形成され、基部本体部材13にはエア通路90に連なるエア通路91が形成されている。上記エア通路91と、エア通路90と、収容穴65と、円形凹部6と、グリップ部材2の4つのスリット27とで、着座面18をクリーニングする為の加圧エアを供給するクリーニング用エア通路92が形成されている。このクリーニング用エア通路92を加圧エア供給源93に接続するエア通路94には、電磁方向切換弁95(切換弁手段)が介装されている。
この電磁方向切換弁95はクリーニング用エア通路92に加圧エアを供給する供給位置と、クリーニング用エア通路92を大気開放する開放位置とに切換え可能に構成されている。この電磁方向切換弁95は制御ユニット96に接続されている。図2に示すように、ワークWを投入してワーク搭載面22に支持させる際に、上記のクリーニング用エア通路92に加圧エアを供給すると、その加圧エアは着座面18をエアブローして着座面18をクリーンにする。
次に、クランプ正常な否かを確認するクランプ動作確認機構100について説明する。 図4〜図6に示すように、エア通路82の下方において下部本体部材12の上端部に浅い円形凹部101が形成され、上部本体部材11の下面には円形凹部101に対向する非常に浅い円形凹部101aが形成されている。この円形凹部101,101aにエア通路104を開閉する円形の弁板102が装着され、この弁板102の下面側には弁板102を上方へエア通路104を閉じる位置に付勢するOリング103が装着されている。エア通路82から延びるエア通路104が形成され、弁板102の上面側に加圧エアが供給される。
円形凹部101は、収容穴65と円形凹部6とグリップ部材2の4つのスリット27に連通している。エア通路82とエア通路104と円形凹部101a,101と収容穴65と円形凹部6とスリット27が、クランプ動作等の動作確認用の加圧エアを供給する為にクランプ本体1(上部本体部材11と下部本体部材12)に設けられ且つ下流部が前記クリーニング用エア通路92の下流部分に連通された動作確認用エア通路97に相当する。この動作確認用エア通路97の途中部に、弁板102とOリング103を含む弁機構105が介装されている。
円形凹部101aを形成してあるため、油圧シリンダ4のクランプ動作時のクランプ不良により、グリップ部材2が下限位置(クランプ方向限界位置)まで退入し、環状受圧部材5が下限位置まで下降したときには、環状受圧部材5の係止鍔62aが弁板102に当接して弁板102を下方へ押動し、弁機構105を開弁させるようになっている(図6参照)。クランプ正常で、環状受圧部材5が下限位置まで下降しない状態では、エア通路104の下端が弁機構105により閉止状態に維持されるため、着座センサ80が正常に作動する。しかし、後述のようなクランプ不良により、環状受圧部材5が最大限下降して係止鍔62aが弁板102を下方へ押した場合には、弁機構105が開弁して、エア通路104の加圧エアが収容穴65と円形凹部6へリークし、円形凹部6からグリップ部材2のスリット27へリークするため、エア通路82,104のエア圧が上昇しない。
こうして、クランプ作動後にも着座センサ80がワークWの着座を検出しないことを、圧力スイッチ84の検出信号から検知することで、後述のようなクランプ不良を検出することができる。尚、前記弁機構105は、グリップ部材2がクランプ方向限界位置の近傍位置まで退入し、環状受圧部材5が下限位置の近傍位置まで下降したときに、開弁するように構成してもよい。ここで、油圧供給源、エア供給源、油圧検出センサ70,73及び圧力スイッチ84は制御ユニット96に電気的に接続されており、その制御ユニット96により制御される。尚、クランプ動作確認機構100を機能させないようにしたい場合、円形凹部101,101aに弁板102とOリング103を上下逆に装着すればよい。
次に、ワークWをクランプする際の動作タイムチャートの一例について説明する。
図7に示すように、ワークWの投入前から電磁方向切換弁95のソレノイドをオンにして電磁方向切換弁95を供給位置に切換え、クリーニング用エア通路92にクリーニング用加圧エアを供給状態にする。ワークWの投入前から油圧シリンダ4のクランプ用油室45とアンクランプ用油室46には所定圧の油圧を供給しておく。ワークWの投入後、アンクランプ油室46の油圧を低圧に切換えて、クランプ装置Cをクランプ状態に切換える。
その結果、ワークWが着座面18に正常に着座すると、弁機構105が開弁しなくとも、開弁しても、動作確認用エア通路97におけるエア圧が高くなり、圧力スイッチ84がオンになる。そこで、クランプ動作確認機構100によるクランプ正常か不良かを検知する動作確認をクリーニング用加圧エアで妨げないように、クランプ動作開始後の所定時期に、電磁方向切換弁95のソレノイドをオフに切換えて、クリーニング用エア通路92を大気開放する。すると、クランプ正常の場合には、弁機構105が閉弁状態を維持するため、圧力スイッチ84がオン状態を維持する。しかし、クランプ不良の場合には、弁機構105が開弁するため、動作確認用エア通路97のエア圧も大気圧まで低下し、圧力スイッチ84がオフに切換わる。こうして、制御ユニット96において、圧力スイッチ84の検出信号からクランプ正常かクランプ不良かを確認できる。尚、制御ユニット96には、図7に示すように、電磁方向切換弁95を制御したり、クランプ油室45とアンクランプ油室46の油圧等を制御する制御プログラムが予め格納されている。
以上のクランプ装置Cの作用、効果について説明する。
クランプ装置CによりワークWを着座面18に固定する場合次のように行う。
最初に、クランプ用油室45とアンクランプ用油室46にほぼ同圧の油圧を供給する。 すると、ピストン部材42におけるクランプ用油室45の受圧面積よりもアンクランプ用油室46の受圧面積の方が大きいため、図2に示すように、ピストン部材42は上限位置まで上昇して停止状態となる。クランプ用油室45の油圧を受圧する環状受圧部材5は上限位置を保持し、グリップ部材2も上限位置を保持し、ワーク搭載面22が着座面18よりも僅かに高い位置を維持する。
この状態でワークWを投入し、図2に示すように、ワークWの穴Hにグリップ部材2とクランプロッド3とを挿入し、ワークWをワーク搭載面22で仮支持する。このように、最初はワークWを着座面18よりも高い位置にあるワーク搭載面22で仮支持し、その後クランプ状態ではワークを着座面18で支持するので、ワーク投入時に着座面18がワークWで傷つけられることを防止でき、また、クランプ前から着座センサ80が作動することがなく、ワークWが着座面18に着座し所期のクランプ力で固定されたときに着座センサ80が作動するようになるため、着座センサ80の信頼性を高めることができる。
次に、アンクランプ用油室46の油圧をクランプ用油室45の油圧よりも低い所定の油圧に切換え、ピストン部材42に下方向きの所定の強い油圧力を作用させる。すると、クランプ用油室45の油圧を受圧する環状受圧部材5は、前記と同様に上限位置を保持し、グリップ部材2も上限位置を保持するが、ピストン部材42には下方向きの油圧力が作用し、ピストン部材42が下方へ駆動されるため、グリップ部材2に対して相対的に下方へ移動する。
その結果、クランプロッド3のテーパ軸部31によりグリップ部材2のグリップ爪部24が拡径駆動されて、ワークWの穴Hの内周面に食いついて係合状態になる。この状態で、アンクランプ用油室46の油圧を更に低下させると、ピストン部材42には下方向きの大きな油圧力が作用し、グリップ部材2とクランプロッド3とは相対移動不能であるため、図3に示すように、ピストン部材42とグリップ部材2とクランプロッド3と環状受圧部材5は一体的に下方へ駆動され、ワークWが着座面18に着座し、強く押圧されたクランプ状態になって停止する。
このとき、図3に示すように、環状受圧部材5の係止鍔部62aと下部本体部材12との間には隙間が残っているため、クランプ動作確認機構100の弁機構105は閉弁状態を維持する。それ故、着座センサ80によりワークWが所期のクランプ力でクランプされて着座面18に着座し、クランプが正常であることを確認できる。
ところで、ワークWが鋳造品で、その穴Hの直径が一定でなく、下方程大径化するような穴Hである場合、また、ワークWが硬い金属材料製である場合など、アンクランプ用油室46の油圧を低圧にして、ピストン部材42等を下降駆動させ始めた時に、グリップ爪部24が穴Hの内周面に対し相対的に下方へスリップすることがある。
この場合、図5,図6に示すように、ワークWが着座面18に着座するものの、環状受圧部材5が下限位置まで下降するため、クランプ動作確認機構100の弁機構105が開弁状態になる。そして、クランプ動作後の所定時期に電磁方向切換弁95が開放位置に切換えるため、弁機構105が開弁すると、エア通路82,104のエア圧が上昇せず、着座センサ80の圧力スイッチ84がオンしないため、クランプ不良を検知できる。このとき、ワークWは不完全なクランプ状態で、十分なクランプ力が発生していない。
一方、ワークWを投入したときワークWとワーク搭載面22の間に隙間がある状態のまま、クランプ動作させた場合にも、ワークWが着座面18に着座するまでに移動するグリップ部材2の移動量が大きくなって、前記と同様に、クランプ不良検出機構100の弁機構105が開弁状態になるからそのクランプ不良を検知することができる。尚、ワーク搭載面22とワークWとの間に異物が挟まっている状態のままクランプした場合にも、前記同様にクランプ不良(着座不良)を検知することができる。
クランプ動作確認機構100のエア供給系を着座センサ80のエア供給系と共通に構成したため、エア供給系が簡単になる。クランプ動作開始後の所定時期以降は、クリーニング用エアの供給を行わないため、ワークの機械加工中にクリーニング用エアを消費しなくなるから、ランニングコストを低減できる。しかも、動作確認用エア通路97の下流部をクリーニング用エア通路92の下流部分に連通させたため、クリーニング用エア通路92と電磁方向切換弁95を有効活用して動作確認用エア通路97の下流部を大気開放することができるため、また、エア通路92の下流部分を動作確認用エア通路97の下流部として兼用できるため、動作確認用エア通路97の構成を簡単化することができる。
複数のクランプ装置CでワークWをクランプするような場合、個々のワークWの製作誤差によりワークWの穴Hの中心の位置が僅かにズレている場合には、クランプロッド3とグリップ部材2を穴Hに挿入したとき、又はクランプしたとき、スクレーパ28とOリング52の弾性変形を介して、クランプロッド3とグリップ部材2の軸心が、油圧シリンダ4の軸心からズレることなる。
しかし、ワークWの機械加工後に、クランプ装置Cをアンクランプ状態に復帰させると、スクレーパ28とOリング52の弾性力により、クランプロッド3とグリップ部材2の軸心が、油圧シリンダ4の軸心と一致するように自動的に復帰する。この場合、クランプロッド3に上下2箇所で弾性力を付与して復帰させるため、クランプロッド3をガタなくスムーズに復帰させることが可能になり、それ故、アンクランプ状態になる毎に、それら両軸心を一致させる復帰作業を手動操作で行う必要がないので、ワークをクランプする作業の作業能率を高めることができる。しかも、Oリング52により、クランプロッド3の大径鍔部34と筒状ピストンロッド44の中径孔49との摺動部分に切粉等の異物が侵入することを確実に防いで、クランプロッド3の軸心方向と直交する方向へ円滑なスライド移動を確実に確保できる。
実施例2について図8に基づいて説明する。
前記実施例1のクランプ装置Cと同様の構成に同一符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。このクランプ装置CAには、前記クランプ動作確認機構100とは異なる構成のクランプ動作確認機構100Aを設けてある。このクランプ装置CAにおいては、下部本体部材12の上端部には、環状受圧部材5の係止鍔62aに対向する部分に開口する加圧エア噴出孔120と、この加圧エア噴出孔120に接続されたエア通路121とが形成されている。
上部本体部材11には着座センサ80の為の前記エア通路82とは異なるエア通路122,123であってエア通路121に接続されたエア通路122,123が形成されている。基部本体部材13にはエア通路123に接続されたエア通路124が形成され、このエア通路124は加圧エア供給源に接続され、エア通路124内の加圧エアのエア圧が設定圧以上になったことを検出する圧力スイッチ125も設けられる。
エア通路121〜124と、加圧エア噴出孔120と、収容凹部65と、円形凹部6と、グリップ部材2のスリット27とが確認用エア通路を構成している。この確認用エア通路に、クランプ部材(グリップ部材2とクランプロッド3)がクランプ方向限界位置まで移動したときに、連動部材である環状受圧部材5により閉弁操作される弁機構105Aが、環状受圧部材5の係止鍔62aでもって構成されている。
クランプ不良により、環状受圧部材5が下限位置まで下降したとき、係止鍔62aにより加圧エア噴出孔120が閉じられるため、その加圧エアの圧力上昇を圧力スイッチ125によって検出し、クランプ不良を検知することができる。前記弁板102を省略したため、簡単な構成のクランプ不良検出機構100Aとなる。
実施例3について図9に基づいて説明する。
前記実施例1のクランプ装置Cと同様の構成に同一符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。このクランプ装置CBでは、クランプ動作確認機構100とは異なる構成のクランプ動作確認機構100Bを設けてある。このクランプ装置CBでは、前記弁機構105の代わりに、上部本体部材11には、円形凹部6の周壁部の下端部に形成された加圧エア噴出孔130と、エア通路131,132とが形成されている。
基部本体部材13にはエア通路132に接続されたエア通路133が形成され、このエア通路133は加圧エア供給源に接続され、エア通路133内の加圧エアのエア圧が設定圧以上になったことを検出する圧力スイッチ134も設けられる。
エア通路131〜133と、加圧エア噴出孔130と、収容凹部65と、円形凹部6と、グリップ部材2のスリット27とが確認用エア通路を構成している。この確認用エア通路に、クランプ部材(グリップ部材2とクランプロッド3)がクランプ方向限界位置まで移動したときに、連動部材である環状受圧部材5により閉弁操作される弁機構105Bが、環状受圧部材5の係止鍔62aでもって構成されている。
クランプ不良により、環状受圧部材5が下限位置まで下降したとき、係止鍔62aにより加圧エア噴出孔130が閉じられるため、その加圧エアの圧力上昇を圧力スイッチ134によって検出し、クランプ不良を検知することができる。前記弁板102を省略したため、簡単な構成のクランプ動作確認機構100Bとなる。尚、環状受圧部材5が下限位置の近傍位置までに下降したときに、加圧エア噴出孔130が閉じられるように構成してもよい。尚、加圧エア噴出孔130の位置を図示のものよりも上方へ僅かに移動させ、クランプ部材(グリップ部材2とクランプロッド3)がクランプ方向限界位置の近傍位置に移動したときに、弁機構105Bが閉弁されるように構成してもよい。
実施例4のクランプ装置CCについて、図10〜図17に基づいて説明する。
図10〜図12に示すように、このクランプ装置CCは、クランプ本体201と、ワークWを固定するためグリップ部材202と、クランプロッド203と、グリップ部材202とクランプロッド203を軸心方向(上下方向)に駆動可能な油圧シリンダ204と、油圧シリンダ204に含まれる環状受圧部材205及びサポート部材206とを備えている。前記クランプ本体201は、 上部本体部材211と下部本体部材212を備え、このクランプ装置CCは、基部本体部材213に組付けられて使用される。尚、グリップ部材202とクランプロッド203とがクランプ部材に相当する。
クランプ本体201は平面視にてほぼ長円形であり、この上部本体部材211は4つのボルト穴214に挿入される4つのボルトで基部本体部材213に固定される。下部本体部材212はシリンダ穴244を形成する筒状部材であり、この下部本体部材212の上端部が上部本体部材211の下面側の凹部215に嵌合され、4つのボルト216により上部本体部材211に固定されている。
前記クランプ本体201の上半部の中心部に上方へ突出する円筒状の本体筒部211aであって、アンクランプ状態のときのグリップ部材202の外径の3倍以下の外径を有する本体筒部211aが設けられている。アンクランプ状態のとき、グリップ部材202の上半部とクランプロッド203のテーパ軸部231が本体筒部211aの上端外へ突出している。本体筒部211aの外径は、アンクランプ状態のときのグリップ部材202の外径の1.8〜3.0倍の範囲に設定することが望ましく、本実施例では、本体筒部211aの外径は、アンクランプ状態のグリップ部材202の外径の2.6倍に設定してある。
図10〜図12に示すように、グリップ部材202は、本体筒部211aの上端部の中心部分の開口穴217を上下に貫通している。グリップ部材202の外周側近傍部において、本体筒部211aの上端部には環状の着座面218が形成され、これら着座面218にワークWを着座させた状態で、ワークWをクランプすることができる。
グリップ部材202は、ワークWの穴Hに挿入されて穴Hの内周面をグリップ可能なものである。このグリップ部材202は、ロッド挿通孔221と、グリップ爪部222と、基端鍔部223とを備えている。グリップ部材202は、4つのスリット( 図示略) により4等分に分割され、4つの分割体により環状に形成されている。
金属製のグリップ部材202におけるグリップ爪部222の外周面には、ワークWの穴Hの内周面をグリップし易くする3段の歯222aが形成されている。グリップ部材202のロッド挿通孔221にはクランプロッド203が挿通されている。このロッド挿通孔221のうちのグリップ爪部対応部分は、クランプロッド203のテーパ軸部231が密着状に係合するテーパ孔部221aに形成されている。
図10〜図12に示すように、本体筒部211aの上端の開口穴217にはグリップ部材202の外周面に摺接する弾性材料(ゴムや合成樹脂)製のスクレーパ228が装着されている。このスクレーパ228は、異物の侵入を防止する機能と、アンクランプ状態のときグリップ部材202とクランプロッド203の軸心が油圧シリンダ204の軸心と一致するようにセンタリングする機能とを得る為のものである。また、グリップ部材202の下部には4つの分割体を縮径方向へ付勢するOリング229が装着されている。
グリップ部材202の基端鍔部223は本体筒部211aの円形凹部225に収容され、基端鍔部223の外周側には隙間226が形成されている。基端鍔部223は、円形凹部225の上壁部とサポート部材206の水平板部262との間に水平方向へ可動に挟着され、サポート部材206で支持されている。グリップ部材202は、サポート部材206及び環状受圧部材205と一体的に昇降可能であると共に、円形凹部225の外周部の環状隙間226とスクレーパ228の弾性変形を介して、油圧シリンダ204の軸心と直交する水平方向へ移動可能に装着されている。それ故、ワークWをクランプする際、クランプ対象の穴Hの軸心がクランプ装置Cの軸心(油圧シリンダ204の軸心)からズレている場合に、そのズレを吸収してクランプすることができる。
クランプロッド203は、テーパ軸部231と、このテーパ軸部231の下端に連なる小径ロッド部232と、この小径ロッド部232の下端に連なるT形係合部233とで構成されている。テーパ軸部231と小径ロッド部232とがグリップ部材202のロッド挿通孔221に挿通されている。上記テーパ軸部231は上方程大径化するようにクランプロッド203の上端部分に形成され、テーパ軸部231がグリップ部材202のテーパ孔部221aに可動に内嵌係合されている。
図11〜図16に示すように、油圧シリンダ204は、グリップ部材202とクランプロッド203とを軸心方向へ進退駆動する為のものである。この油圧シリンダ204は、ピストン部材241と、クランプ用油室242と、アンクランプ用油室243と、環状受圧部材205などを備えている。ピストン部材241は、立向きのシリンダ穴244に昇降自在に装着されたピストン部245と、このピストン部245の上端から上方へ本体筒部211a内まで延びるロッド部246とを有する。ピストン部245にはシール部材245aが装着されている。ロッド部246の上端部分には、クランプロッド203のT形係合部233が水平方向側方から係合可能なT形係合凹部247が形成されている。
ロッド部241の上半部の上端部分と外周側部分はT形係合凹部247を形成する外周側分割体248に形成され、ロッド部246の上半部の中心側部分にネジ軸部249が形成され、外周側分割体248の下半部がネジ軸部249に螺合されている。外周側分割体248の外径は、ロッド部246の下部の外径よりも僅かに大きく形成され、外周側分割体248の下端には、環状受圧部材205の後述する薄肉スリーブ253の上端で係止される被係止部248aが形成されている。
前記クランプロッド203のT形係合部233をT形係合凹部247に装着するとき、図14に示すように、外周側分割体248のネジ軸部249に対する螺合を例えば約2〜3mmだけ上方へ緩めた状態にして、水平方向側方からT形係合部233をT形係合凹部247に装着し、その後外周側分割体248をネジ軸部249に対して完全に螺合させると、図11に示す状態になる。この状態では、ピストン部材241とクランプロッド203とが一体的に昇降移動する。
ここで、T形係合部233と外周側分割体248の間には、例えば約0.5〜1mm位の隙間が形成されていて、クランプロッド203は、T形係合凹部247に対して相対的に水平方向へ上記の隙間の分だけ移動可能である。尚、外周側分割体248の上端の開口部247aの幅は、クランプロッド203のテーパ軸部231よりも小さい。クランプ用油室242はピストン部245の上側に形成され、アンクランプ用油室243はピストン部245の下側に下部本体部材212と基部本体部材213とで形成されている。
環状受圧部材205は、筒状ピストン251と、この筒状ピストン251の上端部の係止鍔部252と、この係止鍔部252の上端の内周部から上方へ所定長さ延びる薄肉スリーブ253とで構成されている。環状受圧部材205の筒状ピストン251はロッド部246に摺動自在に外嵌され且つ下部本体部材212の円筒穴212aに摺動自在に内嵌されている。環状受圧部材205とロッド部246の間はシール部材205aでシールされ、筒状ピストン251の外周部にはシール部材205bが装着されている。
図11に示すアンクランプ状態において、薄肉スリーブ253の上端と外周側分割体248の被係止部248aとの間には、例えば約3〜4mmの隙間G1が、「グリップ部材拡径用ストローク」として形成されている。
環状受圧部材205の係止鍔部252は、上部本体部材211と下部本体部材212とで形成された収容穴264に上下方向へ例えば約2mm昇降可能に装着されている。係止鍔部252を収容穴264の下端壁264bで係止することで環状受圧部材205の下限位置が規定され、係止鍔部52を収容穴264の上端壁264aで係止することで環状受圧部材205の上限位置が規定される。上記の約2mmの隙間G2がクランプの為の最大「引き込みストローク」である。但し、クランプ時の実際の引き込みストロークは約0.5〜1.0mm位である。
前記サポート部材206は、薄肉スリーブ253とロッド部246に外嵌された薄肉筒部261と、この薄肉筒部261の上端の水平板部262とで構成されている。クランプロッド203は水平板部262の穴263を貫通しているが、この穴263はクランプロッド203を通過可能な大きさに形成されている。サポート部材206の上端の水平板部262がグリップ部材202の基端鍔部223の下面に当接して支持し、薄肉筒部261の下端は環状受圧部材205の筒状ピストン251の上端に当接して支持され、サポート部材206は環状受圧部材205と一体的に昇降するようになっている。
上記環状受圧部材205の下端は、クランプ用油圧室242に臨んでその油圧を受圧する。クランプ用油室242は、油路270〜273を介して油圧供給源に接続され、油路273の油圧を検出する油圧検出センサ274も設けられている。アンクランプ用油室243は、油路275を介して油圧供給源に接続され、油路275の油圧を検出する油圧検出センサ276も設けられている。尚、環状受圧部材205とサポート部材206等が、クランプ動作時にグリップ部材202を拡径させる際にグリップ部材202を油圧力で支持するサポート機構200を構成している。
図10〜図12に示すように、ワークWをクランプした状態で、ワークWの下面が着座面218に密着したことを検出する実施例1と同様の着座センサも設けられている。この着座センサは、着座面218に開口された加圧エア噴出孔218aと、この加圧エア噴出孔218aに連通するようにクランプ本体201や基部本体部材213に形成されたエア通路と、このエア通路を加圧エア供給源に接続するエア通路と、このエア通路内の加圧エアの圧力が設定圧以上に昇圧したことを検出する圧力スイッチなどで構成されている。
図16に示すように、着座面218をクリーニングする為のクリーニング用の加圧エアを供給する為に、基部本体部材213に形成されたエア通路277と、上部本体部材211に形成されたエア通路278と、本体筒部211aとサポート部材206の間のエア通路279とが形成され、エア通路277はエア通路281にて加圧エア供給源282に接続され、このエア通路281には電磁方向切換弁283が介装され、この電磁方向切換弁283は制御ユニット280により制御される。エア通路277,278,279と、エア通路279に連通したグリップ部材202の基端鍔部223の外周側の隙間226と、この隙間226に連通したグリップ部材202の4つのスリット(図示略)とがクリーニング用エア通路284に相当する。
電磁方向切換弁283は、クリーニング用エア通路284に加圧エアを供給する位置と、そのクリーニング用エア通路284を大気開放する開放位置とに切換え可能である。 ワークWを投入する際には、投入前から切換弁283を供給位置に切換えると、クリーニング用エア通路284に加圧エアが供給され、着座面218とワークWの間をエアブローして、着座面218をクリーニングする。
電磁方向切換弁283の動作(切換制御)については、実施例1と同様であり、後述する動作確認機構290により動作確認用加圧エアを介して行う確認動作を、クリーニング用加圧エアで妨げないように、少なくともクランプ動作と関連付けて電磁方向切換弁283を切換える。クリーニング用加圧エアの供給、開放のパターンは、実施例1と同様であり、クランプ動作開始前から切換弁283を供給位置にし、クランプ動作開始後の所定時期に切換弁283を開放位置に切換える。
次に、クランプ正常か否かを確認するクランプ動作確認機構290について説明する。 図17に示すように、このクランプ動作確認機構290は、加圧エアを供給可能な動作確認用エア通路291と、この動作確認用エア通路291の途中部に設けられてエア通路291を開閉する弁機構292と、圧力スイッチ298を有する。動作確認用エア通路291は、収容室264の下端壁264bに係止鍔部252に対向状に開口されたエア噴出孔293と、このエア噴出孔293に加圧エアを供給する為のエア通路294〜297と、係止鍔部252が収容されている収容穴264と、この収容穴264に連通した前述のエア通路279と、隙間226と、グリップ部材202に形成された4つのスリットとを有する。
この動作確認用エア通路291の下流部は、クリーニング用エア通路284の下流部分に連通されている。弁機構292は、環状受圧部材205の係止鍔部252と、上端壁264aと、下端壁264bとで構成されている。前記エア通路297は、少なくともクランプ動作の前後の所定期間の間は図17に示す加圧エア供給源282に接続されて加圧エアが供給される。圧力スイッチ298はエア通路297内のエア圧が所定圧以上になったことを検出可能であり、制御ユニット280に接続されている。エア通路294は下部本体部材212に形成されてエア噴出孔293に連通している。エア通路295,296は上部本体部材211に形成されてエア通路294に連通している。エア通路297は基部本体部材213に形成されてエア通路296に連通している。
図13に示すように、ピストン部材241と環状受圧部材205とが下限位置にあるとき、係止鍔部252が下端壁264bに当接してエア噴出孔293を塞ぎ、弁機構292が閉弁するため、圧力スイッチ298がオンとなる。図13に示すように、係止鍔部252が下端壁264bにも上端壁264aにも当接しておらず、弁機構292が開弁している状態では、エア噴出孔293から収容室264に供給された加圧エアは係止鍔部252の外周側の隙間を通ってエア通路279へリークするため、圧力スイッチ296がオフを維持する。図11に示すように、ピストン部材241と環状受圧部材205とが上限位置にあるとき、係止鍔部252が上端壁264aに当接して弁機構292が閉弁するため圧力スイッチ296がオンになる。尚、油圧供給源、エア供給源282、油圧センサ274、圧力スイッチ298等は制御ユニット280に電気的に接続され、制御ユニット280で制御される。
以上のクランプ装置CCの作用、効果について説明する。
このクランプ装置CCは、本体筒部211aを細長く形成し、環状受圧部材205で支持されるサポート部材206を設けた点で、実施例1のクランプ装置Cと相違するものの、基本的な構造はクランプ装置Cと同様であるので、ワークWをクランプする際の動作についてはクランプ装置Cと基本的に、同様である。
上記のように本体筒部211aを本体部材1の上半部の中央部に形成し、本体筒部211aの上下方向の長さを本体部材201の全高の約半分の大きさに長く形成し、上記のように本体筒部211aの外径DをD=(1.8〜3.0)×dの範囲に設定するため、クランプ装置CCの使い勝手が改善され、クランプ装置CCの汎用性を高めることができる。クランプロッド203の下端部分にT形係合部233を形成し、このT形係合部233をロッド部246の上端部分のT形係合凹部247に水平方向側方から係合可能に構成したため、油圧シリンダ204のピストン部材241のロッド部246を小径化して、本体筒部211aを小径化することが可能になる。
ロッド部246の上半部の上端部分と外周側部分はT形係合凹部247を形成する外周側分割体248に形成され、ロッド部246の上半部の中心側部分にネジ軸部249が形成され、外周側分割体248の下半部がネジ軸部249に螺合されたため、T形係合凹部247の製作と、クランプロッド203のT形係合部233のT形係合凹部247への組付けの面で有利である。
サポート部材206を環状受圧部材205から分割した形に構成したため、前記のように外周側分割体248の下端の被係止部248aを環状受圧部材205の薄肉スリーブ253で受け止めて下限位置を規定することが可能になった。
グリップ部材202とクランプロッド203が本体筒部211a及びピストン部材241に対して水平方向へ可動であるため、ワークWの穴Hの位置に製作誤差がある場合にも、グリップ部材202を穴Hの壁面に食い付かせることができる。アンクランプ状態のとき、スクレーパ228により、グリップ部材202とクランプロッド203の軸心が油圧シリンダ204の軸心に一致させることができる。
クランプ動作の際、油圧を受圧する環状受圧部材205とサポート部材206を介してグリップ部材202が上限位置に保持され、この状態でワークWをクランプする為にアンクランプ油室243の油圧を低圧に切換えると、クランプロッド203がグリップ部材202に対して相対的に僅かに下降して、グリップ部材202が拡径して穴Hの周壁にグリップし、そのグリップ状態でクランプロッド203とグリップ部材202とが一体的に僅かに下降するため、図12の状態になり、クランプ動作確認機構290の弁機構292が開弁し、電磁方向切換弁283を開放位置に切換後には、圧力スイッチ298がオンからオフに変化するため、クランプ正常を確認することができる。
一方、クランプロッド203がグリップ部材202に対して下降させる際に、グリップ部材202が穴Hの周壁に対してスリップした場合には、係止鍔部252が図14に示すように、下限位置まで下降するため、弁機構292が閉弁し、電磁方向切換弁283を開放位置に切換後も圧力スイッチ298がオンを維持するため、クランプ不良を確認することができる。
ワークWの穴Hが上端閉塞状の袋状の穴である場合、ワークWの着座後にはクリーニング用加圧エアがクランプ装置CCの内部に残留するため、クランプ動作確認機構290による動作確認が妨げられる虞がある。しかし、実施例1と同様に、クランプ動作開始後の所定時期に、電磁方向切換弁283を開放位置に切換えて、クリーニング用エア通路284を大気圧にするため、クランプ動作確認機構290により、加圧エアを介してクランプ正常、不良の確認が可能になる。
実施例5に係るクランプ装置CDについて、図18〜図27に基づいて説明する。
図18〜図22に示すように、このクランプ装置CDは、クランプ本体310と、環状のグリップ部材320と、テーパ軸部331を有するクランプロッド330と、サポート機構340と、クランプ用油圧シリンダ360などを備えている。尚、グリップ部材320とクランプロッド330とがクランプ部材に相当する。グリップ部材320とクランプロッド330とサポート機構340は共通の鉛直な軸心Aを有する。
クランプ本体310は、グリップ部材320とクランプロッド330とサポート機構340とクランプ用油圧シリンダ360とを組み込む為のものである。クランプ本体310は、下部本体部材311と、この下部本体部材311の上に固定される上部本体部材312とからなり、上部本体部材312は3本のボルト313で下部本体部材311に固定されている。
クランプ本体310は、平面視において5角形に近い形状である。図19の状態を基準として、クランプ本体310において、前面314と後面315は平面に形成され、右側面316は部分円筒面に形成され、左側面317は鉛直な折線を有する前後に対称な折面に形成され、その折面の間の角度は例えば110°である。上部本体部材312の上端部の左端近傍部には、上方へ突出する円筒状の本体筒部318が形成され、図19に示す平面図では、本体筒部318に左側面317(折面)が外接状に接近している。尚、クランプ本体310には、クランプ装置CDを取り付け台に固定する為の4つのボルト穴319が形成されている。
図19〜図22に示すように、グリップ部材320と、クランプロッド330と、サポート機構340は、クランプ本体310の左端近傍部に設けられ、これらグリップ部材320と、クランプロッド330と、サポート機構340のサポート部材341は、本体筒部318の内部に同心状に組み込まれている。クランプ用油圧シリンダ360は、グリップ部材320とクランプロッド330を軸心方向(上下方向)へ進退駆動する為のものであり、クランプ本体310の中央部の下部の内部に配設されている。そのため、グリップ部材320とクランプロッド330の軸心Aが油圧シリンダ360の軸心Bからクランプロッド330と直交方向に所定距離だけオフセットしている。尚、油圧シリンダ360については後述する。
図19〜図22に示すように、グリップ部材320は、ワークWの穴Hに挿入されて穴Hの内周面をグリップ可能な環状のグリップ爪部321と、このグリップ爪部321の下端部に連なる筒状部322と、この筒状部322の下端に連なる下端鍔部323とを有する。グリップ部材320は、4つのスリット324(図18参照)により周方向に4等分された4つのグリップ分割体で構成され、径方向に拡大、縮小可能に構成されている。グリップ爪部221には複数段の爪が形成されている。グリップ部材320には、上部のテーパ穴325と、下部の円筒穴326とが形成されている。テーパ穴325の水平断面形状は正方形である。
クランプロッド330は、グリップ部材320のテーパ穴325に内嵌係合させたテーパ軸部331であって上方程大径化したテーパ軸部331と、このテーパ軸部331の下端から下方へ延びて円筒穴326に内嵌された上軸部332と、この上軸部332の下端から下方へ延び上軸部332よりも幾分大径の下軸部333と、この下軸部333の下端に連なる鍔状の下端係合部334とを有する。テーパ軸部331の水平断面形状は正方形である。
グリップ部材320とクランプロッド330は本体筒部318の頂部壁の開口穴318aを挿通し、グリップ部材320の上部とクランプロッド330の上端部分は本体筒部318の頂部壁より上方へ突出している。本体筒部318の頂部壁には、グリップ部材320に外嵌された環状の弾性のある合成樹脂製のスクレーパ309が装着され、グリップ部材320にはそれを縮径させる為のOリング308が装着されている。グリップ部材320の外周近傍部において、本体筒部318の上端部には、ワークWを着座させる為の環状の着座面307が形成されている。
次に、サポート機構340と、クランプ用油圧シリンダ360と、L形連結部材380について説明する。サポート機構340は、グリップ部材320を拡径させる際に油圧力でグリップ部材320を支持する為のものである。このサポート機構340は、サポート部材341と、このサポート部材341を支持するサポート用油圧シリンダ342とを備えている。
サポート部材341は、グリップ部材320の下端鍔部323の下端面(基端面)を支持する円形の支持壁部341aと、この支持壁部341aからグリップ部材320と反対方向(下方)へ延びる筒壁部341bとを有する。支持壁部341aにはクランプロッド330が遊嵌状に挿通する通過穴341cが形成されている。尚、この通過穴341cは、クランプ装置CDの組み立て時に、クランプロッド330のテーパ軸部331も通過可能に形成されている。筒壁部341bは、本体筒部318内に上下動可能に装着されている。
図19〜図22に示すように、クランプロッド330とクランプ用油圧シリンダ360のピストン部材362を連動連結するL形のL形連結部材380が設けられている。このL形連結部材380は、油圧シリンダ360のピストン部材362にボルト381により固定された第1縦軸部382と、この第1縦軸部382の上端部から水平に延びる水平軸部383と、この水平軸部383の端部から上方へ延びる第2縦軸部384とを有する。 第2縦軸部384は前記軸心Aと共通の軸心を有し、第2縦軸部384の上部がサポート部材341の筒壁部341bに摺動自在に内嵌されている。第2縦軸部384の上端部分には逆T形の水平なT溝385が形成され、このT溝385にクランプロッド330の下端係合部334が係合されている。こうして、クランプロッド330とL形連結部材380とが一体的に上下移動するようになっている。
クランプロッド330の下端係合部334とT溝385の縦壁面との間には、約1〜2mmの隙間が形成され、グリップ部材320の下端鍔部323の外周側にも環状隙間379が形成され、クランプロッド330と通過穴341cの縦壁面との間にも隙間が形成されている。それ故、グリップ部材320とクランプロッド330は、クランプ本体310の本体筒部318に対して相対的に、クランプロッド330と直交する水平方向の全方向へ約1〜2mm移動可能に構成されている。ワークWに形成される穴Hの位置が製作誤差により変動してもクランプ可能である。
サポート用油圧シリンダ342は、クランプ本体310に形成されたシリンダ孔343と、このシリンダ孔343の一端部の油室344と、この油室344の油圧を受圧するピストン部材345とを備えている。ピストン部材345は、ピストン部345cと、このピストン部345cからグリップ部材320の方へ延びてサポート部材341の基端(下端)を支持する水平断面が半円形又はU形のピストンロッド345dとを備えている。ピストンロッド345dはL形連結部材380の第2縦軸部384の下部の外面に上下方向へ摺動自在に係合している。
前記油室344は、クランプ用油圧シリンダ360のクランプ用油室363に連通しているため、クランプの際には油室344にも油圧が供給され、クランプ動作の初期にはピストン部材345によりサポート部材341とグリップ部材320が上限位置に保持される。
図20〜図22に示すように、クランプ用油圧シリンダ360は、クランプ本体310内に形成されたシリンダ孔361と、このシリンダ孔361に装着されたピストン部材362と、このピストン部材362の上側のクランプ用油室363と、ピストン部材362の下側のクランプ解除油室364と、クランプ解除油室364の下端を塞ぐ塞ぎ部材365とを備えている。L形連結部材380の第1縦軸部382は油圧シリンダ360と同軸状に位置し、ピストン部材362に一体的に連結されている。尚、塞ぎ部材365はクランプ本体310に螺合されている。
クランプ用油室363とサポート用油圧シリンダ342の油室344に油圧を供給する為に、図22に示すように、クランプ本体310には、油路366,367と油圧供給ポート368が形成され、この油圧供給ポート368は、油圧配管又は油圧ホースを介して油圧供給源に接続される。塞ぎ部材365には、クランプ解除油室364に油圧を供給する為の油路369と油圧供給ポート370が形成され、この油圧供給ポート370は、油圧配管又は油圧ホースを介して油圧供給源に接続される。
図23に示すように、着座面307とグリップ部材320の周辺をエアブローする為のクリーニング用加圧エアを供給する為に、クランプ本体310には、エア通路370,371,372と、エア供給ポート373が形成されている。エア通路372を加圧エア供給源375に接続するエア通路374には、電磁方向切換弁376が介装されている。電磁方向切換弁376は制御ユニット377に接続され制御ユニット377で制御される。
エア通路370〜372に供給された加圧エアは、L形連結部材380が収容された内部空間305、本体筒部318とサポート部材341の隙間378、下端鍔部323の外周側の環状隙間379、グリップ部材320を分割するスリット324の順に流れ、ワークWの穴Hの内部と、ワークWと環状の着座面307との間をエアブローして、環状の着座面307をクリーニングする。つまり、エア通路370〜372と、内部空間305と、隙間378と、環状隙間379と、スリット324とで、クリーニング用エア通路300が形成されている。電磁方向切換弁376は、クリーニング用エア通路300に加圧エアを供給する供給位置と、クリーニング用エア通路300を大気開放する開放位置とに切換え可能に構成されている。電磁方向切換弁376の動作(切換制御)は、実施例1と同様である。
尚、図示省略したが、実施例1のクランプ装置Cと同様に、着座面307へのワークWの着座を検出する為、着座面307に加圧エア噴出孔307aが形成され、この加圧エア噴出孔307aに加圧エアを供給するエア供給系と、エア供給系のエア圧を検出する圧力スイッチも設けられている。
次に、クランプ正常か否か確認するクランプ動作確認機構について説明する。
図20に示すように、サポート用油圧シリンダ342のピストン部材345のピストン部345cの上端部には封止用鍔部345zが形成されている。下部本体部材311のうちの封止用鍔部345zに下方から対向する対向壁部には、細いエア噴出口391が形成され、エア噴出口391を開閉する弁機構390が封止用鍔部345zにより構成されている。このエア噴出口391に連通したエア通路392が下部本体部材311内に形成されている。このエア通路392はエア通路393により加圧エア供給源394に接続され、このエア通路393には圧力スイッチ395が接続されている。圧力スイッチ395は制御ユニット377に接続されている。
弁機構390が開弁状態のとき、エア噴出口391から噴出した加圧エアは、前記の内部空間305、隙間378、環状隙間379、グリップ部材320を分割するスリット324の順に流れる。つまり、エア通路392と、エア噴出口391と、内部空間305、隙間378、環状隙間379、グリップ部材320を分割するスリット324とで、動作確認用エア通路301が形成され、この動作確認用エア通路301の下流部がクリーニング用エア通路300の下流部分に接続されている。
図25に示すように、ワークWを着座面307から浮上した着座不良状態にセットしてクランプ用油圧シリンダ360を作動させた場合には、グリップ部材320のグリップ爪部321がワークWの穴Hの内周面をグリップしたとしても、クランプ用油圧シリンダ360のピストン部材362の下降と並行して、サポート用油圧シリンダ342のピストン部材345が異常に下降し、ピストン部材345が下限位置まで下降し、不完全なクランプ状態になる。このとき、封止用鍔部345zがエア噴出口391を塞ぎ、弁機構390が閉弁するため、エア通路392のエア圧が上昇し、圧力スイッチ394がオンとなり、制御ユニット377においてクランプ異常を検知することができる。
ワークWを正常に着座させた状態にセットし、クランプ用油圧シリンダ360を作動させた場合には、グリップ爪部321がワークの穴Hの内周面をグリップした状態になり、ワークWの下降移動が着座面307で規制されるため、ピストン部345cの封止用鍔部345zがエア噴出口391を塞ぐことはなく、弁機構390が開弁状態を維持する。
ワークWの穴Hが袋状の穴である場合には、ワークWが着座面307に着座後には、クリーニング用加圧エアがクランプ本体310内に残るため、その残留エアにより動作確認が妨げられる虞がある。
しかし、クランプ動作開始後の所定時期に、電磁方向切換弁376を開放位置に切換えるため、弁機構390が開弁状態である限り、エア噴出口391からエアが噴出し続け、そのエアは内部空間305、隙間378、環状隙間379の方へ流れるものの、クリーニング用エア通路300を介して大気開放されるため動作確認用エア通路301内のエア圧が上昇することはない。そのため、圧力スイッチ395はオフを維持し、制御ユニット377において圧力スイッチ395からの検出信号に基づいてクランプ正常を検知することができる。
図26に示すように、ワークWを着座面307に着座させた状態で、クランプ用油圧シリンダ360を作動させた場合に、グリップ爪部321が穴Hの内周面に対して小距離Sだけスリップした場合には、図25の場合と同様に、サポート用油圧シリンダ342のピストン部材345が異常に下降し、エア噴出口391が塞がれ、弁機構390が閉弁するため、圧力スイッチ394がオンとなるから、制御ユニット377において圧力スイッチ394からの検出信号に基づいてクランプ異常を検知することができる。
また、図示してないが、ワークWの穴Hが大きいため、グリップ爪部321が穴Hの内周面を正常にグリップできない場合にも、上記のクランプ動作確認機構により、クランプ異常を検知することができる。
以上説明したクランプ装置CDの作用、効果について説明する。
このクランプ装置CDは、本体筒部318を細長く形成してクランプ本体310の一端近傍部に配置し、環状受圧部材305で支持されるサポート部材306を設けた点で、実施例1のクランプ装置Cと相違するものの、基本構造はクランプ装置Cと同様であるので、ワークWをクランプする際の動作についてはクランプ装置Cと基本的に、同様である。 クリーニング動作開始後の所定時期に、電磁方向切換弁376を開放に切換えるため、ワークWの穴Hが袋状の穴であっても、クランプ動作確認機構により、クランプ正常か否かを確認することができる。
このクランプ装置CDによれば、グリップ部材320とクランプロッド330とサポート機構340がクランプ本体310の一端近傍部に配設され、グリップ部材320とクランプロッド330の軸心Aがクランプ用油圧シリンダ360の軸心Bから水平方向へ所定距離オフセットしているため、図24に示すように、クランプ本体310の一端近傍部のみがワークWの穴Hに対応するようにクランプ装置CDを配置してクランプ本体310とワークWとの干渉を避けながらワークWをクランプすることができる。
特に、クランプ本体310の一端近傍部に上方へ突出する本体筒部318を形成し、この本体筒部318にグリップ部材320とクランプロッド330とサポート機構340を同軸状に組み込むため、ワークWのフランジ部Fに円筒部318の高さよりも低い複数のリブが形成されているような場合に、複数のリブの間に本体筒部318を挿入状に配置してワークWをクランプすることもできる。尚、平板状のワークについても、 従来のクランプ装置と同様にクランプすることができる。こうして、種々の形状や構造のワークをクランプ可能な汎用性に優れるクランプ装置CDとなる。
グリップ部材320とクランプロッド330はクランプロッド330と直交方向へ可動に構成されたことによる作用、効果は、実施例1のクランプ装置Cと同様である。
クランプロッド330とクランプ用油圧シリンダ360のピストン部材362を連動連結するL形のL形連結部材380を設けたため、油圧シリンダ360の駆動力をクランプロッド330に確実に伝達することができる。サポート用油圧シリンダ342によりサポート部材341を介してグリップ部材320を支持することができ、簡単な構造のサポート機構340となる。
以上説明した実施例を部分的に変更する例について説明する。
1]実施例中に記載した種々の数値は、例示であるからそれらの数値に限定されるものではない。
2]油圧シリンダによりクランプ力を発生するクランプ装置を例として説明したが、加圧エアのエア力でクランプ力を発生するクランプ装置にも本発明を適用可能である。
3]実施例に記載したクランプ動作確認機構に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を付加した形態で実施可能である。
4]実施例に記載したグリップ部材やクランプロッド等の構造は、例示であるから、それに限定されるものではない。その他、当業者であれば、前記実施例に種々の変更を付加した形で実施可能である。
例えば、ワークの穴をクランプし、ワークの上面の全面又は外周部分の機械加工に供するのに好適のクランプ装置を提供する。
W ワーク
H 穴
C,CA,CB,CC,CD クランプ装置
1,201,310 クランプ本体
2,202,320 グリップ部材
3,203,330 クランプロッド
4,204,360 油圧シリンダ
5,205 環状受圧部材
18,218,307 着座面
241 ピストン部材
92,284,300 クリーニング用エア通路
97,291,301 動作確認用エア通路
95,283,376 電磁方向切換弁
100,100A,100B,290 クランプ動作確認機構
96,280,377 制御ユニット
105,292,390 弁機構
81,218a,307a 加圧エア噴出孔
200,340 サポート機構
206 サポート部材
211a 本体筒部
241 ピストン部材
245 ピストン部
246 ロッド部
380 L形連結部材