JP5354530B2 - 燃料用混合物及びその使用方法 - Google Patents

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Description

本発明は、バイオディーゼル燃料油製造過程で得られるグリセリンを有効利用する燃料用混合物及びその混合物を燃料の原料として使用する使用方法に関する。
近年、地球環境浄化、炭酸ガス排出削減の観点から、バイオマスエネルギーの積極的利用の機運が高まってきている。植物物系油脂等から得られるバイオディーゼル燃料(BDF)はカーボンニュートラルな軽油代替として注目されつつあるが、その製造時に製造法等の違いにより原料油脂の10〜20%程度の(粗製)グリセリンが副生する。この(粗製)グリセリンには、触媒や未反応脂肪酸が混入しており、また、常温で容易に固化するためにその処理が非常に困難な状況にある。この(粗製)グリセリンを如何に有効に処理するかが課題となっている。
従来より、油脂とアルコールを均一系アルカリ触媒の存在下でエステル交換反応することにより脂肪酸アルキルエステルを主たる成分とするバイオディーゼル燃料油を製造する過程で得られる副産物のグリセリンは、燃料の原料として用いられている。
しかしながら、この製造過程で得られるグリセリンは、均一系アルカリ触媒が存在するため、アルカリ性である。その結果、燃料の原料として燃焼炉に投入した場合、燃焼炉の壁材を損ね、燃焼炉の耐久性が乏しいという課題がある。さらに、例えば、苛性カリをアルカリ触媒として用いたときには、Kが発生し、Kは空気中でKOHに変わるので、取扱い上、危険が伴うものである。
一方、バイオディーゼル燃料油を製造する過程で得られる副産物のグリセリンの燃料以外の処理方法等としては、例えば、(1)油脂とメタノールのエステル交換反応によりデイーゼル燃料用脂肪酸メチルエステルを製造するプロセスであって、副生するグリセリンをメタノールに変換する工程が付加され、そこで得たメタノールを前記エステル交換反応の原料として使用することを特徴とする油脂からのデイーゼル燃料油製造プロセス(例えば、特許文献1参照)、(2)アルカリ触媒法により、廃食用油及びアルコールを原料とするバイオディーゼル燃料の製造時に、製品となる脂肪酸のアルキルエステルと共に副生される粗製グリセリンを、微生物を利用して分解する処理方法であって、前記微生物を有する有機性廃棄物と前記粗製グリセリンを混合する第1の工程と、前記第1の工程で得られる混合物に対して切り返しを行う第2の工程とからなることを特徴とする粗製グリセリンの処理方法(例えば、特許文献2参照)、(3)バイオディーゼル燃料(BDF)製造の際、副生するグリセリンに加水・加温して輸送可能とした上で、改質反応器においてスチームを発生させ、水素を含む改質ガスを発生させることを特徴とする、グリセリンからの水素製造を実施する処理方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
これらの技術は、副産物のグリセリンの有効利用に寄与するものであるが、更なる処理装置の設置、コスト高を生じ、汎用でない点で未だ課題があり、必要以上の処理コストを要せずに、効率的に、副産物のグリセリンを有効利用する技術が切望されているのが現状である。
特開2005−154647号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2008−23426号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2009−13041号公報(特許請求の範囲、実施例等)
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、バイオディーゼル燃料(BDF)製造の際、副生するグリセリンを必要以上の処理コストを要せずに、効率的に、有効利用する技術を提供することを目的とする。
本発明者は、油脂とアルコールを均一系アルカリ触媒存在下でエステル交換反応することによりバイオディーゼル燃料油を製造する過程で用いられた活性白土には、油脂が吸着されているので燃料としても使える上、油脂を中和させるべく、もともと酸性であり、油脂を中和する過程で活性白土も中和に向かうが、油脂は中和されても活性白土は、なお酸性を保持したままであることに着眼し、バイオディーゼル燃料油を製造する過程で副生するグリセリンと混合することで、グリセリンのアルカリ性が緩和されることを知見し、試験評価等することにより、本発明を完成することに至ったものである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)に存する。
(1) 油脂とアルコールを均一系アルカリ触媒存在下でエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料油を製造する過程で得られるグリセリンと、この製造過程で用いられた活性白土とを含有し、pHを6〜8とすることを特徴とする燃料用混合物。
(2) グリセリンと、活性白土との混合比率は、質量比で10:1〜17:1であることを特徴とする請求項1記載の燃料用混合物。
(3) 油脂とアルコールを均一系アルカリ触媒存在下でエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料油を製造する過程で得られるグリセリンと、この製造過程で用いられた活性白土とを含有し、pHを6〜8となる混合物を燃料の原料として使用することを特徴とする使用方法。
本発明によれば、従来のバイオディーゼル燃料油を製造する過程で副生する均一性アルカリ触媒が含まれているグリセリン単独を燃料に用いたものと比較して、焼却炉の寿命が倍程度に延び、強い酸化力を有するKなどの発生もなく、安心して使用が可能となるため、バイオディーゼル燃料(BDF)製造の際、副生するグリセリンを必要以上の処理コストを要せずに、効率的に、有効利用することができる燃料用混合物及びその使用方法が提供される。
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の燃料用混合物は、油脂とアルコールを均一系アルカリ触媒存在下でエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料油を製造する過程で得られるグリセリンと、この製造過程で用いられた活性白土とを含有し、pHを6〜8とすることを特徴とするものである。
本発明に用いる油脂としては、特に限定されず、従来、バイオディーゼル燃料の原料として使用されているものが挙げられ、例えば、植物性油脂、動物性油脂など、原料の動植物から直接採取したもの、またいは、これらを、食用油製造過程で排出されるもの、あるいは、食用として使用した後の廃棄されたものが使用可能である。
これらの中でも、植物性油脂およびその廃食用油が好適に使用される。油脂が液体状でないときには、加温して液状にする。上記油脂中には、遊離脂肪酸、水分、固形分などの不純物が含まれていてもよい。
用いることができるアルコールとしては、その化学式、「R−OH」で示すと、Rは、炭素数1〜24の飽和または不飽和の脂肪族基であり、例えば、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。Rがアルキル基であるアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノールなどが例示され、Rがアラルキル基であるアルコールとしては、ベンジルアルコール、α−フェニチルアルコール、β−フェネチルアルコールが例示され、Rがアルケニル基であるアルコールとしては、アリルアルコール、1−メチルアリルアルコール、2−メチルアリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オールなどが例示され、Rがアルキニル基であるアルコールとしては、2−プロピン−1−オール、2−ブチン−1−オール、3−ブチン−1−オール、3−ブチン−2−オールなどが例示される。これらの中で、アルコールとしては、Rが炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、より好ましくはRが炭素数1〜4のアルキル基のアルコールであり、特に好ましいのはメタノール、エタノールであり、最も好ましいのはメタノールである。
均一系アルカリ触媒としては、例えば、苛性カリ、苛性ソーダが挙げられる。アルカリ触媒は原料油脂に対し、0.3〜3質量%、好ましくは0.4〜2質量%用いられ、これらアルカリ触媒のいずれかを用いて、アルコールの沸点より低い温度でエステル交換反応がなされる。その後、通常はグリセリンを主とする重液と脂肪酸アルキルエステルを主成分とする軽液に比重分離される。この重液が本発明の燃料用混合物を構成する一つの成分として用いられる。
この重液中には、グリセリンが主成分であるが、アルカリ触媒その他の不純物が含まれている。そのため、重液はアルカリ性である。
本発明の燃料用混合物を構成するもう一つの成分は、同じく、油脂とアルコールを均一系アルカリ触媒存在下でエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料油を製造する過程で用いられる、活性白土である。
活性白土は、天然の酸性白土を硫酸で処理し、吸着脱色能を増大させた白土である。均一系アルカリ触媒の存在下でエステル交換反応をさせた後の反応系は当然のことながらアルカリ性であるから、この中和をする必要があるが、その中和の手段を兼ねながら、バイオディーゼル燃料となるべき脂肪酸アルキルエステルの精製をも兼ねて活性白土を含有する吸着剤が用いられる。吸着剤の量は軽液の0.5〜2質量%用いられる。
この吸着剤は、軽液を流下させる過程で、中和されるが、なお、酸性を保持している。この酸性を保持していることを利用して、本発明では、上記のアルカリ性の重液と混合することで重液の有するアルカリ性を緩和させつつ燃焼することができ、燃焼炉への悪影響を避けることができる。
これらの吸着剤である活性白土とグリセリンとの混合比率は、混合物のpHが6〜8になるような比率でなされる。具体的には、バイオディーゼル燃料油を製造する過程で副生するグリセリン量(A)と、この製造過程で用いられた廃棄する活性白土の量(B)との混合比率(A:B)は、反応系で用いられるアルカリの量、ひいては、グリセリン中に含まれるアルカリ量に依存するが、好ましくは、質量比で10:1〜17:1、より好ましくは12:1〜16:1、特に好ましくは14:1〜16:1が用いられる。
この混合物のpHが6未満であると、焼却炉中では熱濃硫酸による強い酸化力で壁材を損ない、一方、混合物のpHが8を越えても、焼却炉の壁部材を損ない、強い酸化力を有するKなどの発生を招き、好ましくない。
本発明の燃料用混合物は、上記の混合比率の範囲では、二成分のみであれば、懸濁液状となるものであるが、本発明の燃料用混合物には、本発明の効果を損なわない範囲で、第三成分が含まれていてもよい。第三成分としては、例えば、上記活性白土以外のバイオディーゼル燃料油を製造する過程で副生する他の吸着剤、或いは、例えば、木炭、木質ペレット、ゼオライトなどのグリセリンを吸着する能力のある固形物などが挙げられる。このような固形の第三成分を混合することで、取扱性、運搬性に優れたものにすることができる。また、混合方法は、特に限定されないが、混練機などを用いてできるだけ均一混合されたものが好ましい。
このように構成される本発明の燃料用混合物は、油脂とアルコールを均一系アルカリ触媒存在下でエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料油を製造する過程で得られるグリセリンと、この製造過程で用いられた活性白土とを含有し、pHを6〜8とするものであり、この混合物を各種の燃焼炉、例えば、ボイラーやハウス栽培の燃焼炉などの燃料の原料として好適に使用することができる。
本発明では、バイオディーゼル燃料油を製造する過程で用いられた活性白土には、油脂が吸着されているので燃料としても使える上、油脂を中和させるべく、もともと酸性であり、油脂を中和する過程で活性白土も中和に向かうが、油脂は中和されても活性白土は、なお酸性を保持したままであり、これをバイオディーゼル燃料油を製造する過程で副生するグリセリンと混合することで、グリセリンのアルカリ性が緩和されて中性付近(pH6〜8)に保持されることにより、この燃料用混合物を燃焼炉の燃料として用いた場合にも、燃焼炉の壁材を損なうことなく、燃焼炉等の燃料として有効利用することができ、しかも、Kなどの発生もなく、取扱い上も、安全となる燃料用混合物及び該混合物を燃料の原料として有効に使用することができる使用方法が得られるものとなる。
次に、本発明を実施例及び比較例により更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
原料油は、レストランから廃棄された廃食油(酸価5.2mg-KOH/g、ヨウ素価108、引火点230℃、水分1.1%)を8時間自然沈降させた後の上澄み液200リットルであり、これを5mgHgの減圧下で脱水、脱臭、脱酸し、酸価3.1mgKOH/gのものとした上で、平均粒径0.1mmの活性アルミナを充填するカラム中に通した。活性アルミナは、通過原料油に対して1質量%用いた。通過速度は、25kg/分、通過時の原料油の温度は80℃で行なった。この時点での酸価は0.6mg-KOH/gであった。送液ポンプで質量を確認しながら50kgを攪拌反応槽に送り込んだ。他方、もう一つの原料である、触媒含有アルコール溶液は、触媒として水酸化カリウム(純度90%)を用い、メチルアルコール(純度99.8%)100質量部に対して、水酸化カリウム8.3質量部の割合で溶解させた。64℃に保持した原料油中に触媒含有アルコール溶液2.72kgを15分間に渡り滴下し、滴下終了後、反応液を15分間攪拌した。攪拌速度は360rpmであった。
攪拌15分後に静置分離槽に移し、4時間静置し、生じた界面の下部、即ちグリセリン主成分の重液を取り出した。生成したグリセリン廃液量は、50リットル(52.5kg;比重は、1.05g/cm3)であった。またこのグリセリンの酸性度を測定したところ、pH9.5であった。一方、脂肪酸アルキルエステルを主成分とする軽液を、活性白土を充填したカラムに通した。活性白土は、軽液の1%であり、通過速度は20L/分であった。生成した脂肪酸メチルエステルの精製に使用した活性白土の量は、2.8kgであった。精製後の活性白土の量は、3.5kgであった。精製後の活性白土3.5kgを、グリセリン廃液50リットルに均一に懸濁させた。このときのグリセリン液は、pH7.8であった。
この懸濁液の熱量を測定したところ、6200kcal/kgであった。これを、灰分分離機能のついたボイラーで燃焼試験を行ったところ、通常の重油燃料を使用した場合とほとんど同様に燃焼した。また燃焼後の灰分は、白土成分および硫酸カリ成分であった。
〔比較例1〕
実施例1で得られたグリセリン廃液52.5kgの一部を、活性白土と混ぜることなく、そのまま、実施例1で使用したボイラーに投入し燃焼実験を行ったところ、燃焼ガスから、塩基性のK灰が異常に発生した。
上記実施例1及び比較例1の結果から明らかなように、従来のバイオディーゼル燃料油を製造する過程で副生する均一性アルカリ触媒が含まれているグリセリン単独を燃料に用いたものと比較して、焼却炉の壁部材を損なうことなく、かつ、強い酸化力を有するKなどの発生もなく、安心して燃料の原料として使用できることが判った。

Claims (3)

  1. 油脂とアルコールを均一系アルカリ触媒存在下でエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料油を製造する過程で得られるグリセリンと、上記エステル交換反応により得られる脂肪酸アルキルエステルを主成分とする軽液を、活性白土を充填したカラムに通した後の活性白土とを含有し、pHを6〜8とすることを特徴とする燃料用混合物。
  2. グリセリンと、活性白土との混合比率は、質量比で10:1〜17:1であることを特徴とする請求項1記載の燃料用混合物。
  3. 油脂とアルコールを均一系アルカリ触媒存在下でエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料油を製造する過程で得られるグリセリンと、上記エステル交換反応により得られる脂肪酸アルキルエステルを主成分とする軽液を、活性白土を充填したカラムに通した後の活性白土とを含有し、pHを6〜8となる混合物を燃料の原料として使用することを特徴とする使用方法。
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