JP5354220B2 - 原子位置固定装置、原子位置固定方法及び原子操作方法 - Google Patents

原子位置固定装置、原子位置固定方法及び原子操作方法 Download PDF

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Description

本発明は、原子位置固定装置、原子位置固定方法及び原子操作方法に関し、より具体的には、熱ドリフト及びクリープの影響による探針と試料原子との相対位置の変化を抑制することができる原子位置固定装置及び原子位置固定方法、並びに、該原子位置固定装置を用いて試料表面の原子を操作する原子操作方法に関する。
走査型プローブ顕微鏡は、数nm〜原子レベルの分解能を有しており、試料表面の特性(凹凸や磁性、表面ポテンシャルなど)を測定することが可能である。また、走査型プローブ顕微鏡を用いることによって、鋭利に研磨した電極針を非常に微細な隙間を残して被加工物体の表面に接近させ、電極針と被加工物体との間に電圧を印加したときにそれらの間に流れるトンネル電流によって被加工物体の微細加工を行うことが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
走査型プローブ顕微鏡は、先鋭な探針を試料表面に近づけた場合に探針と試料との間に作用する相互作用(トンネル電流、力、キャパシタ、近接場光など)を検出し、2次元的にマッピングした画像として出力することができる。また、探針を試料表面上(例えば原子上)に配置させ、試料表面からの探針の距離を変化させたり、試料への印加電圧を変化させることで、探針と試料との間に作用する相互作用の変化を検出する分光測定(スペクトロスコピー)なる測定方法が考案されている。
特開平6−215722号公報
しかしながら、探針を原子上に配置することによって、該原子の原子レベルでの物性を測定することが可能であるが、熱ドリフト及びクリープの影響によって、測定中に探針と試料原子との相対位置が変化してしまうという問題があった。熱ドリフト及びクリープの影響は測定に要する時間に依存することから、測定を高速化することによって熱ドリフト及びクリープの影響を減少することができるが、S/N比が悪化して測定精度が低下してしまう。
また、原子を操作する場合には、操作しようとする原子の位置に探針を精度良く配置する必要があり、熱ドリフト及びクリープの影響を受けずに、探針を試料上の所望の位置に固定(維持)できるようにする必要があった。なお、熱ドリフト及びクリープは環境温度にも依存しており、極低温環境下ではこれらの影響は少ないが、室温環境下ではこれらの影響をなくすことは原理的に困難であると考えられてきた。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、探針又は試料表面の原子を試料表面と平行な平面で回転させて、原子間力に基づく探針の振動周波数の変化量を検出し、検出した振動周波数の変化量に含まれる回転に同期した周波数成分、つまり回転させた平面と平行な方向の周波数成分がゼロとなるように探針又は原子の試料表面と平行な面における位置を制御することにより、熱ドリフト及びクリープの影響による探針と試料原子との相対位置のずれを抑制することができる原子位置固定装置及び原子位置固定方法の提供を目的とする。
また本発明は、探針又は試料表面の原子を試料表面と平行な2方向に振動させて、原子間力に基づく探針の振動周波数の変化量を検出し、検出した振動周波数の変化量に含まれる2方向の振動に同期した周波数成分、つまり振動させた2方向の周波数成分がゼロとなるように探針又は原子のその2方向の位置を制御することにより、熱ドリフト及びクリープの影響による探針と試料原子との相対位置のずれを抑制することができる原子位置固定装置及び原子位置固定方法の提供を目的とする。
また本発明は、試料表面の原子と探針との相対位置を固定し、所定の原子間力が作用した状態で探針を試料表面と水平方向又は垂直方向に走査させて、試料表面の原子を操作することができる原子操作方法の提供を目的とする。
第1発明に係る原子位置固定装置は、試料表面の原子と、該原子に原子間力が作用する探針との相対位置を固定する原子位置固定装置において、探針又は原子を前記試料表面と平行な平面で回転させる回転手段と、該回転手段にて探針又は原子が回転されている状態で、前記試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出する検出手段と、検出した振動周波数の変化量に含まれる回転に同期した周波数成分がゼロとなるように前記探針又は前記原子の前記平面における位置を制御する位置制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、回転手段によって探針又は試料表面の原子を試料表面と平行な平面で回転させ、試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した探針と原子との間に作用する原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出手段にて検出する。そして、検出した振動周波数の変化量に含まれる回転に同期した周波数成分、つまり回転させた平面と平行な方向の周波数成分がゼロとなるように探針又は原子の平面における位置を制御する。これにより、熱ドリフトやクリープ現象によって平面方向に試料が移動しても、探針が追従して所定の原子位置に固定される。つまり、探針と原子との相対位置を維持することができ、探針の原子に対する相対位置を長時間かつ安定に固定することができる。ここで、原子間力とは、探針と試料表面の原子との間に作用するすべての力、具体的には、化学的な結合力、ファン・デル・ワールス力、共有結合力、イオン結合力、金属結合力、静電気力、磁気力、交換力などを示す。
第2発明に係る原子位置固定装置は、前記位置制御手段が、探針と原子との相対位置を周期的に変化させるための信号を発生する発信手段と、前記発信手段によって発生した信号又は該信号の高調波信号に同期して、前記検出手段の出力から位相が異なる2つの周波数成分の信号を検波する検波手段と、該検波手段が検波した2つの周波数成分の信号に基づいて、探針又は原子の2つの周波数成分に対応する2方向の位置を調整するための信号を出力する位置調整手段と、前記発信手段及び前記位置調整手段が出力する各信号を加算する加算手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、発信手段によって探針と原子との相対位置を周期的に変化させるための信号を発生させ、発生した信号又は該信号の高調波信号に同期して、検出手段の出力から位相が異なる2つの周波数成分の信号を検波する。そして、検波手段が検波した2つの周波数成分の信号に基づいて、探針又は原子の2つの周波数成分に対応する2方向の位置を調整するための信号を出力し、発信手段が出力した信号と加算する。これにより、振動周波数の変化量に含まれる回転に同期した周波数成分、つまり回転させた平面と平行な方向の周波数成分がゼロとなるように探針又は原子の位置を制御することができる。
第3発明に係る原子位置固定装置は、前記検波手段が、前記検出手段の出力から位相が90°異なる2つの周波数成分の信号を検波するようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、発信手段によって発生した信号又は該信号の高調波信号に同期して、検出手段の出力から互いの位相が90°異なる2つの周波数成分の信号を検波する。これにより、振動周波数の変化量の回転させた平面と平行な直交する2方向の周波数成分がゼロとなるように探針又は原子の直交する2方向の位置を制御する。
第4発明に係る原子位置固定装置は、試料表面の原子と、該原子に原子間力が作用する探針との相対位置を固定する原子位置固定装置において、探針又は原子を前記試料表面と平行な2方向に振動させる振動手段と、該振動手段にて探針又は原子が振動されている状態で、前記試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出する検出手段と、検出した振動周波数の変化量に含まれる前記2方向の振動に同期した周波数成分がゼロとなるように前記探針又は前記原子の前記2方向の位置を制御する位置制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、振動手段によって探針又は試料表面の原子を試料表面と平行な2方向に振動させ、試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した探針と原子との間に作用する原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出手段にて検出する。そして、検出した振動周波数の変化量に含まれる2方向の振動に同期した周波数成分、つまり振動させた2方向の周波数成分がゼロとなるように探針又は原子の2方向の位置を制御する。これにより、熱ドリフトやクリープ現象によって平面方向に試料が移動しても、探針が追従して所定の原子位置に固定される。つまり、探針と原子との相対位置を維持することができ、探針の原子に対する相対位置を長時間かつ安定に固定することができる。
第5発明に係る原子位置固定装置は、前記位置制御手段が、前記2方向の周波数成分のそれぞれに対して、探針と原子との各方向の相対位置を周期的に変化させるための信号を発生する発信手段と、前記発信手段によって発生した信号又は該信号の高調波信号に同期して、前記検出手段の出力から各方向の周波数成分の信号を検波する検波手段と、該検波手段が検波した各方向の周波数成分の信号に基づいて、探針又は原子の各方向の位置を調整するための信号を出力する位置調整手段と、前記発信手段及び前記位置調整手段が出力する各信号を加算する加算手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、試料表面と平行な2方向の周波数成分のそれぞれに対して、探針と原子との相対位置を周期的に変化させるための信号を発生させ、発生した信号又は該信号の高調波信号に同期して、検出手段の出力から各方向の周波数成分の信号を検波する。そして、検波手段が検波した各方向の周波数成分の信号に基づいて、探針又は原子の各方向の位置を調整するための信号を出力し、発信手段が出力した信号と加算する。これにより、振動周波数の変化量に含まれる2方向の振動に同期した周波数成分、つまり振動させた2方向の周波数成分がゼロとなるように探針又は原子の位置を制御することができる。
第6発明に係る原子位置固定装置は、前記2方向が、直交する方向であることを特徴とする。
本発明にあっては、振動手段によって探針又は試料表面の原子を試料表面と平行な直交する2方向に振動させる。これにより、振動周波数の変化量に含まれる直交2方向の振動に同期した周波数成分がゼロとなるように探針又は原子の直交する2方向の位置を制御する。
第7発明に係る原子位置固定装置は、前記位置調整手段が、前記探針を固定する原子位置を決定する固定位置決定手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、固定位置決定手段によって決定した原子位置に探針を固定する。これにより、原子の頂点、空欠陥や表面再構成によってできたホール、及び原子間の谷などの位置に探針を固定して力学的分光測定及び原子操作などの様々な用途に適用することができる。
第8発明に係る原子位置固定装置は、前記位置調整手段が、前記固定位置決定手段にて決定された原子位置を微調整する位置微調整手段をさらに備えることを特徴とする。
本発明にあっては、固定位置決定手段にて決定された原子位置を位置微調整手段で微調整する。これにより、原子の頂点、及び原子間の谷などから少しずれた所望の位置に探針を固定して力学的分光測定及び原子操作などの様々な用途に適用することができる。
第9発明に係る原子位置固定装置は、前記位置微調整手段が、原子の頂点または空欠陥の底点から所定距離だけ離隔した位置で探針を固定するように構成してあることを特徴とする。
本発明にあっては、位置微調整手段にて、原子の頂点または空欠陥の底点から所定距離だけ離隔した位置で探針を固定する。これにより、原子に対してユーザが所望する任意の位置に探針を固定することができる。
第10発明に係る原子位置固定装置は、探針又は原子の前記試料表面と垂直な方向の位置を制御する第2位置制御手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、探針又は原子の試料表面と垂直な方向の位置を制御して、探針と原子との相対位置を3次元的に長時間かつ安定に固定する。
第11発明に係る原子位置固定装置は、前記位置制御手段の出力を前記第2位置制御手段にフィードバックするようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、位置制御手段の出力を第2位置制御手段にフィードバックする。実際の測定では、試料が傾いている場合があり、試料表面と平行な2方向のうちの少なくとも1方向の探針の位置制御によって垂直な方向の位置が変化する虞がある。そこで、位置制御手段の出力を第2位置制御手段にフィードバックすることによって、垂直方向の変位を調整して試料の傾きを補正する。
第12発明に係る原子位置固定装置は、前記探針が配されたカンチレバーを備え、カンチレバーに振動を与えることによって前記探針を振動させるようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、カンチレバーに振動を与えることによって探針を振動させる。これにより、共振周波数は、カンチレバーのバネ定数及び探針の質量によって概略決定されるので、用いる用途によって探針の周波数のレベルを適宜設定する。
第13発明に係る原子位置固定方法は、試料表面の原子と、該原子に原子間力が作用する探針との相対位置を固定する原子位置固定方法において、探針又は原子を前記試料表面と平行な平面で回転させて、探針又は原子が回転されている状態で、前記試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出し、検出した振動周波数の変化量に含まれる回転に同期した周波数成分がゼロとなるように前記探針又は前記原子の前記平面における位置を制御することを特徴とする。
本発明にあっては、探針又は試料表面の原子を試料表面と平行な平面で回転させ、試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因して探針と原子との間に作用する原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出する。そして、検出した振動周波数の変化量に含まれる回転に同期した周波数成分がゼロとなるように探針又は原子の平面における位置を制御する。これにより、探針と原子との相対位置を維持することができ、探針の原子に対する相対位置を長時間かつ安定に固定することができる。
第14発明に係る原子位置固定方法は、試料表面の原子と、該原子に原子間力が作用する探針との相対位置を固定する原子位置固定方法において、探針又は原子を前記試料表面と平行な2方向に振動させて、探針又は原子が振動されている状態で、前記試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出し、検出した振動周波数の変化量に含まれる前記2方向の振動に同期した周波数成分がゼロとなるように前記探針又は前記原子の前記2方向の位置を制御することを特徴とする。
本発明にあっては、探針又は試料表面の原子を試料表面と平行な2方向に振動させ、試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因して探針と原子との間に作用する原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出する。そして、検出した振動周波数の変化量に含まれる2方向の振動に同期した周波数成分がゼロとなるように探針又は原子の2方向の位置を制御する。これにより、探針と原子との相対位置を維持することができ、探針の原子に対する相対位置を長時間かつ安定に固定することができる。
第15発明に係る原子操作方法は、原子間力が作用する探針を用いて試料表面の原子を操作する原子操作方法において、上述した各原子位置固定装置を用いて、試料表面の原子と前記探針との相対位置を固定し、所定の原子間力が作用した状態で前記探針を前記試料表面と水平方向又は垂直方向に走査させて、前記試料表面の原子を操作することを特徴とする。
本発明にあっては、試料表面の原子と探針との相対位置を上述したようにして固定し、所定の原子間力が作用した状態で探針を試料表面と水平方向又は垂直方向に走査させて試料表面の原子を操作する。探針と原子との相対位置が維持されていることから、目的の原子を確実に操作することができる。
本発明によれば、探針又は試料表面の原子を試料表面と平行な平面で回転させて、試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出し、検出した振動周波数の変化量に含まれる回転に同期した周波数成分、つまり回転させた平面と平行な方向の周波数成分がゼロとなるように探針又は原子の試料表面と平行な面における位置を制御することとしたので、熱ドリフト及びクリープの影響による探針と試料原子との相対位置のずれを抑制することができ、探針の原子に対する相対位置を長時間かつ安定に固定することができる。もちろん、対象の試料、すなわち原子には導電性が要求されるものではなく、その種類に関係なく位置の固定が原子レベルで可能となる。また、室温環境でも実施が可能であり、真空中、空気中、液中に関係なく本発明を適用することができる。
本発明によれば、探針又は試料表面の原子を試料表面と平行な2方向に振動させて、試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出し、検出した振動周波数の変化量に含まれる2方向の振動に同期した周波数成分、つまり振動させた2方向の周波数成分がゼロとなるように探針又は原子のその2方向の位置を制御することとしたので、熱ドリフト及びクリープの影響による探針と試料原子との相対位置のずれを抑制することができ、探針の原子に対する相対位置を長時間かつ安定に固定することができる。
したがって、力学的分光測定では、複数のデータを連続で測定した場合、従来の方法では、それぞれの形が異なっていたが、本発明を適用することで、測定したすべてのデータが重なり、得られたデータを平均化することで、低ノイズで測定することができ、その結果、個々の原子間での微妙な結合力の違いを明らかにすることができる。
本発明によれば、試料表面の原子と探針との相対位置を固定し、所定の原子間力が作用した状態で探針を試料表面と水平方向又は垂直方向に走査させて、試料表面の目的の原子を確実に操作することができる。もちろん、原子の頂点の位置だけでなく、欠陥やホールといった穴が存在する位置、サドルポイントなど、あらゆる位置での位置固定が可能となる等、優れた効果を奏する。
本発明による原子位置固定方法の原理を示す原理図である。 周波数検出方式を用いた非接触原子間力顕微鏡の共振周波数と振動振幅との関係を説明するための説明図である。 本発明に係る原子位置固定装置の構成例を示すブロック図である。 水平位置制御部の構成例を示すブロック図である。 水平位置制御部の別の構成例を示すブロック図である。 固定位置決定部の機能を説明するための説明図である。 位置微調整部の機能を説明するための説明図である。 固定位置の例を説明するための説明図である。 ラインプロファイルの例を説明するための説明図である。 位置固定の前後におけるSi(111)7×7表面の画像である。 Si(111)7×7表面での位置固定の例を説明するための説明図である。 力学的分光測定(距離依存性測定)の概念図である。 力学的分光測定(距離依存性測定)の一例を説明するための説明図である。 力学的分光測定(距離依存性測定)の一例を示すフローチャートである。 水平位置制御の一例を示すフローチャートである。 水平位置制御の他の一例を示すフローチャートである。 力学的分光測定(距離依存性測定)の他の一例を示すフローチャートである。 力学的分光測定(電圧依存性測定)の一例を説明するための説明図である。 力学的分光測定(電圧依存性測定)の一例を示すフローチャートである。 力学的分光測定(電圧依存性測定)の他の一例を示すフローチャートである。 原子操作方法の概念図である。 本発明に係る原子操作方法(垂直操作)の一例を示す説明図である。 本発明に係る原子操作方法(垂直操作)の他の一例を示す説明図である。 本発明に係る原子操作方法のフローチャートである。 本発明に係る原子操作方法(水平操作)の一例を示す説明図である。 本発明に係る原子操作方法(水平操作)の他の一例を示す説明図である。 本発明に係る原子操作方法(水平操作)の他の一例を示す説明図である。 本発明に係る原子操作方法(水平操作)の他の一例を示す説明図である。 本発明に係る原子位置固定装置の他の構成例を示すブロック図である。 本発明に係る原子位置固定装置の他の構成例を示すブロック図である。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は本発明による原子位置固定方法の原理を示す原理図である。本発明による原子位置固定方法は2つに大別することができる。
(第1の方法)
探針10を試料表面の原子50に近づけると、探針10と原子50との間に作用する力学的な相互作用(原子間力)が大きくなることから、探針10又は原子50の一方を、試料表面の法線と直交する2方向(ここではX方向及びY方向)に振動させる(図1(a))。このようにすれば、探針10に作用する原子間力に基づいて、探針10を取り付けたカンチレバー(後述する)の共振周波数が変化する(周波数シフト)。周波数シフトは、作用している原子間力を反映しており、周波数シフトに係る信号及びその信号に所定の信号処理を行った信号には、X方向の周波数f1 及びY方向の周波数f2 の2つの成分、さらにはそれらの高調波成分が含まれている。これが、原子間力に基づく探針の振動周波数の変化量である。したがって、この2つの周波数成分がゼロとなるように、探針10又は原子50の水平位置、すなわちX方向及びY方向の位置を制御することにより、熱ドリフトやクリープ現象によって平面方向に試料が移動しても、探針10が追従して所定の原子位置に固定されるので、探針10と原子50との相対位置を維持することができ、探針10の原子50に対する相対位置を長時間かつ安定に固定することができる。探針10に作用する原子間力を反映した周波数シフトに係る信号を検出し、その信号のうちの周波数成分f1 ,f2 を検出することによって探針10と原子50との相対位置を制御することから、原子50に要求される制約(例えば導電性)がなく、いかなる原子50で試料が構成されていても探針10の原子に対する位置を固定することができ、その適用範囲は極めて広い。以下、説明の簡略化のため、X方向とY方向とが直交する直交座標系について説明するが、2方向が交差した座標系において2つの周波数成分がゼロとなる場合は、直交座標系における2つの周波数成分がゼロとなることと等価であることから、X方向とY方向とが直交している必要はない。
(第2の方法)
X方向における周波数f1 とY方向における周波数f2 とは若干程度の異なる値が必要となるが、直交する2方向に同じ周波数で位相が90度ずれている信号(例えば、周波数f1 =f2 =f0 としたとき、Rsin(2πf0 T)とRcos(2πf0 T)、Rは振幅)を印加して、探針10(又は原子50)を回転(円運動)させる(図1(b))。この場合も第1の方法と同様に、探針10を取り付けたカンチレバーの共振周波数が変化する。周波数シフトに係る信号及びその信号に所定の信号処理を行った信号には、X方向及びY方向に相当する周波数成分、さらにはそれらの高調波成分が含まれている。これが、原子間力に基づく探針の振動周波数の変化量である。したがって、周波数成分がゼロとなるように、探針10又は原子50の水平位置、すなわちX方向及びY方向の位置を制御することにより、熱ドリフトやクリープ現象によって平面方向に試料が移動しても、探針10が追従して所定の原子位置に固定されるので、探針10と原子50との相対位置を維持することができ、探針10の原子50に対する相対位置を長時間かつ安定に固定することができる。探針10には、長さが10μm、先端が数nmφの弧状のシリコンを用いることができる。このような微細な探針10は半導体の微細加工技術によって得ることができる。なお、探針10の材料については限定されるものではないが、例えば、表面観察用のシリコン製探針を用いる場合、探針の表面に被覆されている酸化物及びゴミなどを除去することにより、より原子間力の感度を高めて分解能を向上させることが好ましい。
図2は周波数検出方式を用いた非接触原子間力顕微鏡(Noncontact Atomic Force Microscopy)の共振周波数と振動振幅との関係を説明するための説明図である。
NC−AFMは、その長さが例えば100〜200μmの微小な板バネのようなカンチレバー11の先端に探針10が配置されており、カンチレバー11の国有の振動数(共振周波数)frにて振動する。共振周波数frは、概略、カンチレバー11のバネ定数k,探針10の質量mを用いると、fr=1/2π×√(k/m)である。周波数変調方式では、共振周波数fr及び所定の振幅Rで探針10を振動させ、試料表面(原子50)に近づける(図2(a))。探針10が原子50の表面に近づいたとき、探針10と原子50との間に力学的相互作用が作用する。このとき、カンチレバー11の共振周波数frが変化する(周波数シフトΔf)。周波数シフトΔfは、探針10と原子50との間に引力が作用したときには負の値(一点鎖線)となり、斥力が作用したときには正の値(二点鎖線)となる(図2(b))。通常のNC−AFMでは、引力領域、つまり探針10が原子50に接触していない状態で各種の測定を行う。
NC−AFMを用いて試料表面の状態を検出して資料表面の状態を画像化(可視化)する場合、探針10(又は試料)を、試料表面の法線と直交する2方向、例えばテレビジョンの走査線のように走査させ、各点における周波数シフトΔfに基づく変化量をマッピングする。なお、探針10と試料との相対位置が変化するように走査すればよく、探針10又は試料のいずれを走査するかについては、用いる装置構成によって異なることは言うまでもない。
ところで、画像化の方法には、探針10を走査することによって変化する周波数シフトΔfの変化に基づいて画像化する方法(周波数変化像)と、走査中に周波数シフトΔfが一定になるように探針10の距離を制御しながら、その距離変化に基づいて画像化する方法(周波数一定像)とがある。後者の方法では、試料表面の凹凸に対応した画像が得られると考えられており、走査速度に対応するために探針と試料との間の距離をフィードバック制御する必要がある。一方、前者の方法では、原理的には、距離のフィードバック制御をする必要はないが、熱ドリフトや装置のクリープ現象の影響によって、探針と試料との距離が徐々に変化してしまうことから、極めて応答の遅い積分フィードバックをかけながら、熱ドリフトやクリープ現象による遅い距離変化だけに追従させる必要がある。
図3は本発明に係る原子位置固定装置の構成例を示すブロック図である。
本発明に係る原子位置固定装置1は、カンチレバー11、カンチレバー11の一端に取り付けられた探針10、及びカンチレバー11の他端に取り付けられた圧電素子のような加振部12から構成される走査ユニットと、対象である試料Sを載置するための試料支持部21、試料支持部21を3次元方向に操作するための垂直位置走査部21、及び水平位置走査部22から構成される位置走査ユニットと、変位検出部13、加振制御部14、周波数検出部15、垂直位置制御部16、及び水平位置制御部17から構成される制御ユニットとを備えている。なお、制御ユニットの各部は、図示しないPCのようなコンピュータに制御されるようになっている。
加振部12は、カンチレバー11に振動を与えて探針10を振動させるためのもので、例えば、電圧を印加することで変位が生じる圧電体によって構成される。なお、カンチレバーの探針取り付け部には探針支持部が配されており、消耗品である探針10を容易に取り付ける(取り替える)ことができるようになっている。
変位検出部13は、探針10の変位を信号として検出するものであり、例えば、光源と分割された光検出器から構成され市販のAFMに利用されている光テコ方式(森田清三編著、「走査型プローブ顕微鏡:基礎と未来予測」丸善)、光ファイバーの干渉を利用する光干渉方式(D.Ruger et. al, Applied Physics Letters, Vol.55, p2588(1989))、探針に水晶が配され水晶の微小な電流変化を電圧に変換するチューニング方式(P.Guthneret al, Applied Physics B, Vol.48, p.89(1989))、Qパルスセンサー方式(F.J.Giessibl, Applied Physics Letters, Vol.73)、探針の変位が抵抗変化としてとらえられるピエゾ抵抗方式(F.J.Giessibl, Science, Vol.267, p68(1995))、探針の変位が電圧変化として検出できるピエゾ圧電方式(J.Rychen et al, Review of Scientific Instrumrnts, Vol.70,p2765(1999))などがあげられる。
周波数検出部15は、探針10に作用した力学的相互作用によって生じる共振周波数の変化(周波数シフトΔf)を検出する。周波数検出部15は、例えば位相同期ループ(PLL)、インダタタとキャパシタとを用いた共振回路、各種フィルタなどを用いて構成する。
探針10を試料Sに接近させた場合、探針10と試料Sとに作用する力学的な相互作用によって、カンチレバー11の実効的なばね定数が変化して共振周波数が変化する。そこで、変位検出部13にて、探針10(カンチレバー11の一端側)の変位量を検出し、検出された変位量に基づいて、探針10と試料Sと相互作用によるカンチレバー11の共振周波数の変化量(周波数シフトΔf)を周波数検出部15にて検出する。FM復調部25は、検出した機械的共振周波数の変化量に係る信号を制御部10へ出力する。
加振制御部14は、探針10の振動を制御するものであり、探針10の振動振幅を一定にするモード(振動振幅一定モード)と、加振部12に与える信号の振幅を一定にするモード(加振一定モード)とがある。効率良く探針10を加振するために移相器を用いるようにしてもよい。振動振幅の信号に利得(ゲイン)をかけ、加振部12に信号を与える方法、周波数検出部15と併用してPLLの発信器の信号を利用する方式などがあげられる。
垂直位置走査部19は、探針10と試料Sとの垂直方向の位置、つまり試料表面に対して垂直方向の探針10−試料S間の相対位置を変化させるためのものであり、例えば、電圧を印加することで変位が生じる圧電体からなる。
水平位置走査部20は、探針10と試料Sの水平方向の位置、つまり試料表面に対して水平方向の探針10−試料S間の相対位置を変化させるためのものであり、垂直位置走査部19と同様に圧電体からなる。圧電体の形態は、例えば、円筒形状のチューブスキャナ型、圧電体を一層又は複数層を重ね合わせたものである。
本例では、試料支持部21に垂直位置走査部19と水平位置走査部20とが配置されているが、それぞれの方向で探針10と試料Sとの相対位置を変化させることができるならば、いずれか一方又は両方を探針10側に配置していてもかまわない。また、垂直位置走査部19と水平位置走査部20とが一体になっているが別体であってもよい。さらに、チューブスキャナ型では、水平走査信号に垂直走査信号を加算して水平位置走査部20に与えることで、水平位置走査部20を垂直位置走査部19として利用してもよい。さらにまた、加振部12を垂直位置走査部19として利用してもよい。
垂直位置制御部16は、設定した周波数シフトΔfが一定になるように探針10−試料S間の距離ΔZを制御し、上述した周波数変化像及び周波数一定像の両方の測定に対応している。基本的には、フィードバック回路から構成され、比例制御、積分制御及び微分制御のうちの少なくとも1つ以上の組み合わせをアナログ回路又はデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)のようなデジタル演算で行う場合もある。
特に、DSPを使用する場合は、上述した制御以外のデジタル制御独自のフィルタを用いることがきる。距離制御はその制御を行うこと(RUN)、一時的に制御を停止すること(HOLD)、制御信号をゼロにすること(RESET)が可能であり、手動又はコンピュータのソフトウェアからそれらを行うことが可能である。
水平位置制御部17は、熱ドリフトやクリープ現象による探針10と試料Sとの相対位置変化のうち、試料Sと平行方向の動きX,ΔX及びY,ΔYを補正し、探針10の先端を所定(目標)の原子位置に長時間固定するために用いられる。実際に探針10の先端を所定の原子位置に長時間固定するためには、水平位置制御部17から所定の信号を出力し、図1で示したような探針10(又は試料)の走査を行い、その信号に対応した周波数検出部15の出力信号を水平位置制御部17に与えてフィードバック制御を行う。具体的には、周波数検出部15にて検出した周波数f1 ,f2 (又はf0 )成分がゼロになるように水平位置のフィードバック制御を行うことで、所定の原子位置(例えば原子の頂上)に探針10を長時間固定することできる。
次に、本発明に特徴的な水平位置制御部17について説明する。図4は水平位置制御部の構成例を示すブロック図である。水平位置制御部17は、第1方向であるX方向と第2方向であるY方向とを独立して制御できるように、X方向の制御用に、第1発振回路31a、第1同期検波部32a、第1水平位置調整部33a及び第1加算部34aを、Y方向の制御用に、第2発振回路31b、第2同期検波部32b、第2水平位置調整部33b及び第2加算部34bを、それぞれ備えている。
第1発振回路31a(第2発振回路31b)は、探針10と試料(原子50)のX方向(Y方向)の相対位置を周期的(f1 (f2 ))に変化させるものであり、出力信号を第1同期検波部32a(第2同期検波部32b)及び第1加算部34a(第2加算部34b)へ出力する。
第1同期検波部32a(第2同期検波部32b)は、周波数検出部15から出力された周波数シフトΔfを第1発振回路31a(第2発振回路31b)から出力される信号(つまり、発振回路が出力する信号の周波数)又はその高調波信号(つまり、発振回路が出力する信号の整数倍の周波数)で同期検波して、第1水平位置調整部33a(第2水平位置調整部33b)へ出力する。
第1水平位置調整部33a(第2水平位置調整部33b)は、詳細は後述する第1固定位置決定部(第2固定位置決定部)及び第1位置微調整部(第2位置微調整部)を備え、探針10又は試料(原子50)のX方向(Y方向)の位置を調整する信号に変換して、第1加算部34a(第2加算部34b)へ出力する。
第1加算部34a(第2加算部34b)は、第1発振回路31a及び第1水平位置調整部33aから出力された信号、さらに第1走査信号(第2走査信号)を加算して水平位置走査部20へ出力する。なお、発振回路から各同期検波部へ出力される信号は、同期検波を行うための参照信号であるが、必要に応じて利得(ゲイン)を適宜かけるようにしてもよい。
図5は水平位置制御部の別の構成例を示すブロック図であり、直交する2方向に同じ周波数で位相が90度ずれている信号を利用する場合(図1(b)参照)に好適な構成である。水平位置制御部17は、発振回路31、同期検波部32、第1水平位置調整部33a及び第1加算部34a、並びに、第2水平位置調整部33b及び第2加算部34bを備えている。
発振回路31は、探針10と試料(原子50)の相対位置を周期的(f0 )に変化させるものであり、互いに同期している位相が異なる2つの信号を発振する。ここでは、位相が90°異なる信号(0°、90°の信号)を出力し、位相が0°の信号を第1加算部34aへ、位相が90°の信号を第2加算部34bへ出力する。また、同期検波部32へも出力することで、同期検波部32でX方向及びY方向の成分を分離して抽出できる。
同期検波部32は、周波数検出部15から出力された周波数シフトΔfを発振回路31から出力される信号又はその高調波信号に同期して、位相が異なる2つの信号(ここでは、位相0°,90°の2つとする)を検波して、第1水平位置調整部33a及び第2水平位置調整部33bへ出力する。その他の構成は図4と同様である。
このようにすれば、同期検波部を2つ使用する必要がなくなり構成を簡略化することができる。また、図4の構成では、周波数f1 ,f2 を同期検波部の性能に合わせて、周波数差|f1 −f2 |をある程度大きくする必要があるが、本例ではその必要がはない。ただし、同期検波部32は、2位相の検波が可能であって、発振回路31の2つの出力の位相が固定されている必要があり、実際の測定においては、信号は様々な回路を通るため、X方向又はY方向のいずれか一方に信号を与えて位相合わせを行う必要がある。
図6は固定位置決定部の機能を説明するための説明図である。
固定位置決定部は、探針10を固定する原子位置を決めるものであって、水平位置調整部33a,33b,33(制御部として機能)をHOLDモードにして、水平位置調整部33a,33b,33の出力信号に所定の電圧を加算することで探針と原子の相対位置を変える。走査信号に固定位置決定部と同等の信号を含ませるようにしてもよい。位置の決定は、アナログ回路を用いたオフセット回路と加算器とで構成してもよいが、コンピュータのソフトウェアから行うことも可能である。固定したい位置近傍に探針10を配置すれば、制御部(水平位置調整部33a,33b,33)をRUNモードにすることで目標位置に探針10が固定される。
図7は位置微調整部の機能を説明するための説明図である。
位置微調整部は、フィードバック制御における所謂セットポイントを調整する箇所であり、水平制御の位置を適宜微調整するものである。位置微調整部がない場合、凸部分の頂点、凹部分の最下点、サドルポイントで位置の固定が可能である。一方、位置微調整部を導入した場合、制御部の入力信号にオフセットをかける、つまりセットポイントに対応する信号を加算又は減算することで、原子50の頂上からΔx離隔した位置で探針を固定することが可能となる。具体的には、原子50の頂点(図7(a))や空欠陥の底点(図7(b))では、位置微調整部が加算する電圧をゼロとする。そうすることで制御部は入力信号、つまり同期検波部の出力がゼロになるように、探針10と試料(原子50)との相対位置を微調整する。位置微調整部が加算する電圧がゼロでない場合、同期検波器の出力値がその値を反映した値を出力して、水平位置が変化する。
図8は固定位置の例を説明するための説明図である。
探針10の位置を固定するには、試料表面に対して直交する2軸(X軸及びY軸)を決定し、それぞれの方向において独立に水平位置の制御を行う。例えば、原子50の頂点で探針10の位置を固定する場合(図8(a))、空欠陥や表面再構成によってできたホールで探針10の位置を固定する場合(図8(b))、原子50,50間の谷で探針10の位置を固定する場合(図8(c))、一方向には頂上であるが、直交する方向には谷になっている部分に探針10の位置を固定する場合(図8(d))などがあげられる。なお、図8においては、白丸が原子50を示しているが、必ずしも原子50の位置が高く画像化させるとは限らない。探針10の先端と試料表面の原子50とを取り巻く電子の相互作用によって、実際の凹凸と見かけ上異なる画像が得られることがあるが、その場合は高い位置に原子50があると見なしてよい。
図9はラインプロファイルの例を説明するための説明図である。
直交する2軸で独立にフィードバックを行えばよいので、考えられるラインプロファイルは、ラインプロファイルの頂点の部分(図9(a))、ラインプロファイルの底の部分(図9(b))、ラインプロファイルの谷の部分(図9(c))、ラインプロファイルの底だが下地又は2層目の原子が少し見られる部分(図9(d))などがある。図9(a)では、発振回路から出力される信号の振幅Rは原子間距離dの1/2よりも小さく(R<d/2)、発振回路からの周波数f0 (f1 、f2 )で同期検波部において同期検波する。図9(b),(c)では、水平位置制御部の出力を反転することで、底の位置で探針を固定することができる。図9(d)では、下地又は2層目の原子がトラッキング可能なくらいの信号を検出できるならば、上述と同様に行えばよいが、そうでない場合は、振幅Rが原子間距離dよりも大きい(R>d)信号を用い、周波数2f0 (2f1 、2f2 )で同期検波して、その値が最大になるように制御部にてフィードバック制御を行うようにする。このように、発振回路が出力する信号の周波数のみならず、その高調波信号(つまり発振回路が出力する信号の整数倍の周波数)で同期検波してもよい。
次に本発明に係る原子位置固定装置を用いて原子位置固定について評価した。図10は位置固定の前後におけるSi(111)7×7表面の画像であり、図11はSi(111)7×7表面での位置固定の例を説明するための説明図である。
図10(a)の画像を取得した後、すばやく探針を矢印の位置に移動させ、本発明の原子位置の固定(RUN)を実施した。61分後、HOLDにして画像を取得した(図10(b))。61分経過した後であっても、同じ画像を取得することができていることを、両図の上方に見られる付着物Pにより確認した。つまり、熱ドリフトが生じた場合であっても、探針を常に所定の原子の位置に移動させることができることを確認した。図11(a)に示すように、61分の間に約135ÅのXY方向の移動があった。つまり、本発明の原子位置固定装置を用いなかった場合、探針10の位置が約135Åずれることになるが、本発明の原子位置固定装置を用いることによって、探針10と原子50との相対位置を維持することができ、探針10の原子50に対する相対位置を長時間かつ安定に固定することができる。また、図11(b)に示すように、ノイズレベルは0.2Åであり、原子間距離(ここでは7.5Å)に比べて無視できる程度であることがわかる。
次に本発明の応用例について説明する。図12は力学的分光測定(距離依存性測定)の概念図である。
探針10を試料に近づけた場合、周波数シフトΔfが負の方向に大きくなることから、例えば、探針10を狙った原子50の位置で探針10を近づけると、その原子と探針との周波数シフトΔf−距離Z曲線を測定することができ、周波数シフトΔfを力に変換するアルゴリズムを用いれば、原子の結合力を測定することが可能となる。従来、室温環境下では、熱ドリフトやクリープ現象の影響のため、探針10と試料との位置が時間とともに変化するために、所定の原子位置で分光測定をすることが困難であったが、本発明の原子位置固定方法を用いることによって、探針10を所望の原子50の位置に固定することができるので、たとえ室温環境下であっても、原子50の結合力を測定することが可能となる。
図13は力学的分光測定(距離依存性測定)の一例を説明するための説明図である。
まず、試料表面の原子50,50,…のうちから距離依存性測定を行う原子50aを選択する(図13(a))。次に、選択した原子50aの位置に探針10を移動させる(図13(b))。このとき、探針10は原子50aの真上になく、また熱ドリフトによって常に相対位置が変化している。次に本発明の原子位置固定方法によって探針10の原子50aに対する水平位置を固定する(図13(c))。そして、探針10の原子50aに対する垂直位置を変化させて距離依存性測定を行う(図13(d))。もちろん、位置微調整部の機能を用いて、考えられるラインプロファイルの原子固定位置から少しずらした位置に探針10を移動して距離依存性測定を行うことが可能である(図13(d´))。
図14は力学的分光測定(距離依存性測定)の一例を示すフローチャートである。
まず、走査型プローブ顕微鏡を用い、試料表面を走査して試料表面の原子50,50,…を画像化する(ステップS1)。次に、画像化された試料表面の原子50,50,…のうちから距離依存性測定を行う原子50aを選択する(ステップS2)。そして、探針10を固定位置に移動させ(ステップS3)、水平位置の制御を行う(ステップS4)。そして、周波数シフトΔfを測定しながら、探針10−試料(原子50a)間距離を変更することによって、距離依存性測定を行う(ステップS5)。そして、距離依存性測定が終了したか否かを判断し(ステップS6)、距離依存性測定が終了したと判断した場合(S6:YES)、処理を終了する。一方、距離依存性測定が終了していないと判断した場合(S6:NO)、処理をS4に戻して水平位置の制御を行って、距離依存性測定を継続する。
水平位置制御はサブルーチンとして組み込まれている。図15は水平位置制御の一例を示すフローチャートである。発振回路(第1発振回路31a,第2発振回路31b(発振回路31))から信号が出力されており(ステップS11)、制御部としての水平位置制御部17をRUNモードに設定する(ステップS12)。そして、位置の微調整が必要であるか否かを判断し(ステップS13)、位置の微調整が必要であると判断した場合(S13:YES)、位置の微調整を行って(ステップS14)、水平位置制御部17をHOLDモードに設定し(ステップS15)、サブルーチン処理を終了する。一方、位置の微調整が必要ないと判断した場合(S13:NO)、位置の微調整を行うことなく、S15に移行して水平位置制御部17をHOLDモードに設定してサブルーチン処理を終了する。
なお、サブルーチンとしての水平位置制御は上述したフローに限定されるものではなく、水平位置制御部17をHOLDモードにした後に、位置の微調整を行ってもよい。図16は水平位置制御の他の一例を示すフローチャートである。発振回路(第1発振回路31a,第2発振回路31b(発振回路31))から信号が出力されており(ステップS21)、水平位置制御部17をRUNモードに設定する(ステップS22)。そして、水平位置制御部17をHOLDモードに設定する(ステップS23)。そして、位置の微調整が必要であるか否かを判断し(ステップS24)、位置の微調整が必要であると判断した場合(S24:YES)、位置の微調整を行って(ステップS25)、サブルーチン処理を終了する。一方、位置の微調整が必要ないと判断した場合(S24:NO)、位置の微調整を行うことなく、サブルーチン処理を終了する。
図14では距離依存性測定毎に探針10の水平位置の制御を行うようにしたが、熱ドリフトが非常に小さい場合など、用途によっては水平位置の制御が不要となる場合があるので、図17に示すように、距離依存性測定が終了していないと判断した場合(S6:NO)、水平位置制御が必要であるか否かを判断し(ステップS7)、水平位置制御が必要であると判断したとき(S7:YES)、処理をS4に戻して水平位置の制御を行って距離依存性測定を継続し、水平位置制御が必要ないと判断したとき(S7:NO)、処理をS5に戻して水平位置の制御を行うことなく距離依存性測定を継続するようにしてもよい。その他の処理手順は、図14と同様であるので、対応する部分には同一のステップ番号を付してその詳細な説明を省略する。
上述したように、力学的分光測定では、複数のデータを連続で測定した場合、従来の方法では、それぞれの形が異なっていたが、本発明を適用することで、測定したすべてのデータが測定誤差範囲内で良く重なり、得られたデータを平均化することで、低ノイズな測定データを得ることができ、その結果、個々の原子間での微妙な結合力の違いを明らかにすることが可能である。
図18は力学的分光測定(電圧依存性測定)の一例を説明するための説明図である。
まず、試料表面の原子50,50,…のうちから電圧依存性測定を行う原子50aを選択する(図18(a))。次に、選択した原子50aの位置に探針10を移動させる(図18(b))。次に本発明の原子位置固定方法によって探針10の原子50aに対する水平位置を固定する(図18(c))。そして、探針10と原子50aとの間に電圧を印加して電圧依存性測定を行う(図18(d))。もちろん、位置微調整部の機能を用いて、考えられるラインプロファイルの原子固定位置から少しずらした位置に探針10を移動して電圧依存性測定を行うことが可能である(図18(d´))。
図19は力学的分光測定(電圧依存性測定)の一例を示すフローチャートである。
まず、走査型プローブ顕微鏡を用い、試料表面を走査して試料表面の原子50,50,…を画像化する(ステップS31)。次に、画像化された試料表面の原子50,50,…のうちから電圧依存性測定を行う原子50aを選択する(ステップS32)。そして、探針10を固定位置に移動させ(ステップS33)、水平位置の制御を行う(ステップS34)。そして、周波数シフトΔfを測定しながら、探針10−試料(原子50a)間電圧を変更することによって、電圧依存性測定を行う(ステップS35)。そして、電圧依存性測定が終了したか否かを判断し(ステップS36)、電圧依存性測定が終了したと判断した場合(S36:YES)、処理を終了する。一方、電圧依存性測定が終了していないと判断した場合(S36:NO)、処理をS34に戻して水平位置の制御を行って、電圧依存性測定を継続する。なお、水平位置制御(S34)は、上述した図15又は図16と同様である。
図19では電圧依存性測定毎に探針10の水平位置の制御を行うようにしたが、用途によっては水平位置の制御が不要となる場合があるので、図20に示すように、電圧依存性測定が終了していないと判断した場合(S36:NO)、水平位置制御が必要であるか否かを判断し(ステップS37)、水平位置制御が必要であると判断したとき(S37:YES)、処理をS34に戻して水平位置の制御を行って電圧依存性測定を継続し、水平位置制御が必要ないと判断したとき(S37:NO)、処理をS35に戻して水平位置の制御を行うことなく電圧依存性測定を継続するようにしてもよい。その他の処理手順は、図19と同様であるので、対応する部分には同一のステップ番号を付してその詳細な説明を省略する。
次に本発明の他の応用例である原子の位置を操作する原子操作方法について説明する。図21は原子操作方法の概念図である。
探針10を試料に近づけた場合、探針10に作用する引力によって、周波数シフトΔfが負の方向にしだいに大きくなるが、周波数シフトΔfが不連続的に変化する場合がある。例えば、探針10と試料表面の原子50との間に作用する原子間力が急激に大きくなる場合などである。この場合には、周波数シフトΔfを監視しておき、周波数シフトΔfにとびが発生した場合は、探針10に所定の原子間力が作用した状態であると判断して、探針10を試料表面と水平方向又は垂直方向に走査させて、試料表面の原子を操作することができる。従来、室温環境下では、熱ドリフトやクリープ現象の影響のため、探針10と試料との位置が時間とともに変化するために、所定の原子位置に高精度に探針10を配置することが困難であったが、本発明の原子位置固定方法を用いることによって、探針10を所望の原子50の位置に固定することができるので、たとえ室温環境下であっても原子50を操作することが容易となる。
図22は本発明に係る原子操作方法(垂直操作)の一例を示す説明図である。
まず、試料表面の原子50,50,…のうちから原子操作を行う原子50aを選択する(図22(a))。次に、選択した原子50aの位置に探針10を移動させる(図22(b))。次に本発明の原子位置固定方法によって探針10の原子50aに対する水平位置を固定する(図22(c))。そして、探針10に所定の原子間力が作用するまで原子50aに近づける(図22(d))。周波数シフトΔfにとびが発生した場合は、探針10に所定の原子間力が作用した状態であると判断して、探針10を試料表面から遠ざける。このとき、探針10と原子50aには所定の原子間力が作用しているので、原子50aを試料表面から抜き出すことができる(図22(e))。なお、図22(e)では、探針10の先端に原子50aがついているが、探針10から離れてしまう場合もある。
図23は本発明に係る原子操作方法(垂直操作)の他の一例を示す説明図である。
図23(a)〜図23(c)は上述の図22(a)〜図22(c)と同様であり、本例では、位置微調整部の機能を用いて、考えられるラインプロファイルの原子固定位置から少しずらした位置に探針10を移動した後に、探針10に所定の原子間力が作用するまで原子50aに近づける(図23(d))。そして、周波数シフトΔfにとびが発生した場合は、探針10に所定の原子間力が作用した状態であると判断して、探針10を試料表面から遠ざける。このとき、探針10と原子50aには所定の原子間力が作用しているので、原子50aを試料表面から抜き出すことができる(図23(e))。このように、探針10と原子50aの相対位置を微調整しながら原子を操作することが可能である。なお、図23(e)では、原子50aが探針10から離れてしまっているが、探針10の先端についている状態も考えられる。
図24は本発明に係る原子操作方法のフローチャートである。
まず、走査型プローブ顕微鏡を用い、試料表面を走査して試料表面の原子50,50,…を画像化する(ステップS41)。次に、画像化された試料表面の原子50,50,…のうちから操作を行う原子50aを選択する(ステップS42)。そして、探針10を固定位置に移動させ(ステップS43)、水平位置の制御を行う(ステップS44)。そして、周波数シフトΔfを測定しながら、探針10を試料(原子50a)に近づける(ステップS45)。そして、周波数シフトΔfにとびが発生したか否かを判断し(ステップS46)、周波数シフトΔfにとびが発生したと判断した場合(S46:YES)、探針10に所定の原子間力が作用していると判断して、探針10を試料表面から遠ざける(ステップS47)。一方、周波数シフトΔfにとびが発生していないと判断した場合(S46:NO)、処理をS44に戻して水平位置の制御を行って、さらに探針10を試料(原子50a)に近づける。なお、水平位置制御(S44)は、上述した図15又は図16と同様である。
上述した原子操作方法では探針10を試料表面と垂直方向に走査させて原子50aを操作するような場合について説明したが、探針10を試料表面と水平方向に走査させて原子50aを操作することもできる。図25は本発明に係る原子操作方法(水平操作)の一例を示す説明図である。試料表面の原子50,50,…の上に原子50aが配置されている場合(図25(a))、まず、原子50aの位置に探針10を移動させる(図25(b))。次に本発明の原子位置固定方法によって探針10の原子50aに対する水平位置を固定する(図25(c))。そして、探針10に所定の原子間力が作用するまで原子50aに近づける(図25(d))。探針10に所定の原子間力が作用した状態のとき、探針10を水平方向に移動させる。このとき、探針10と原子50aには所定の原子間力が作用しているので、原子50aが探針10の移動に追従して、試料表面の隣り合う原子の上に移動することができる(図25(e))。また、図26に示すように、垂直操作と同様に、位置微調整部の機能を用いて、考えられるラインプロファイルの原子固定位置から少しずらした位置に探針10を移動した後に、探針10に所定の原子間力が作用するまで原子50aに近づける(図26(d))。そして、探針10に所定の原子間力が作用した状態のとき、探針10を水平方向に移動させる。探針10と原子50aには所定の原子間力が作用しているので、原子50aが探針10の移動に追従して、試料表面の隣り合う原子の上に移動することができる(図26(e))。このように、探針10と原子50aの相対位置を微調整しながら原子を操作することが可能である。なお図26(a)〜図26(c)は図25(a)〜図25(c)と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
図27は本発明に係る原子操作方法(水平操作)の他の一例を示す説明図である。試料表面の原子(例えばGe原子)50,50,…の上に原子(例えばSn原子)50aが配置されている場合(図27(a))、まず、原子50aの位置に探針10を移動させる(図27(b))。次に本発明の原子位置固定方法によって探針10の原子50aに対する水平位置を固定する(図27(c))。そして、探針10に所定の原子間力が作用するまで原子50aに近づける(図27(d))。探針10に所定の原子間力が作用した状態のとき、探針10のZ方向の位置を固定し、探針10を原子50aの隣の原子50(50bとする)の位置に水平方向に移動させる(図27(e))。このとき、探針10の先端と原子50a及び50bとの間に作用した原子間力によって、原子50aと原子50bとの位置が交換される。
また、探針10を原子50aから原子50bに走査させるのではなく、探針10を原子50bから原子50aに走査させることによって2つの原子の位置の交換が生じやすい場合があり、その場合には、図28に示すように、試料表面の原子50,50,…の上に原子50aが配置されている場合(図28(a))、まず、目的の原子50aの隣の原子50bの位置に探針10を移動させ(図28(b))、本発明の原子位置固定方法によって探針10の原子50bに対する水平位置を固定する(図28(c))。そして、探針10に所定の原子間力が作用するまで原子50bに近づける(図28(d))。探針10に所定の原子間力が作用した状態のとき、探針10のZ方向の位置を固定し、探針10を目的の原子50aの位置に水平方向に移動させる(図28(e))。このとき、探針10の先端と原子50a及び50bとの間に作用した原子間力によって、原子50aと原子50bとの位置が交換される。
なお、本実施の形態では、周波数検出部15によって検出された共振周波数の変化(周波数シフトΔf)を水平位置調整部17に出力し、周波数シフトΔfの信号に含まれる周波数f1 ,f2 (又はf0 )成分がゼロになるように水平位置のフィードバック制御を行う(図3参照)ようにしたが、図29に示すように、垂直位置制御部16の出力信号ΔZに基づいて、水平位置制御部17´が水平方向の位置制御を行うことも可能である。水平位置制御部17と水平位置制御部17´との相違は、垂直位置制御部16の帯域とf1 及びf2 との関係が異なる点にある。具体的には、垂直位置制御部16のフィードバック制御はいくつかのフィルタを組み合わせたものであり、厳密に帯域を決めることはできないが、垂直位置制御部の帯域をfFBとすると、f1 、f2 >fFBの場合には図3の構成、f1 、f2 <fFBの場合には図29の構成を用いることが好ましい。
また、実際の測定では試料が傾いている場合があり、X方向、Y方向又は両方向の走査において垂直距離が変化する場合があることから、そこで、図3の構成の場合には、傾き補正部18を設け、水平位置制御部17の出力(X,ΔX,Y,ΔY)に基づいて、垂直方向の変位補正量ΔZ´を生成し、垂直位置制御部16の出力信号ΔZに加えることで、垂直方向の変位ΔZを調整して試料の傾きを補正するようにしてもよい(図30(a))。同様に、図29の構成の場合には、傾き補正部18を設け、水平位置制御部17´の出力(X,ΔX,Y,ΔY)に基づいて、垂直方向の変位補正量ΔZ´を生成し、垂直位置制御部16にフィードバックして、垂直方向の変位ΔZを調整して試料の傾きを補正するようにしてもよい(図30(b))。この場合、垂直位置制御部16は、自身の出力信号ΔZと傾き補正部18から入力した信号ΔZ´を加算した信号を垂直位置走査部19に与えるようにすればよい。
さらに、本実施の形態では、探針10と試料(原子50)の3次元の相対位置の変化に関して、「探針10を動かす」場合について説明したが、試料(原子50)を動かす場合、探針10及び試料(原子50)を動かす場合があげられ、その場合についても本発明を適用できることはいうまでもない。
1 原子固定装置
10 探針
11 カンチレバー
12 加振部
13 変位検出部
14 加振制御部
15 周波数検出部
16 垂直位置制御部
17,17´ 水平位置制御部
18 傾き補正部
19 垂直位置走査部
20 水平位置走査部
21 試料支持部
31 発振回路
31a 第1発振回路
31a 第2発振回路
32 同期検波部
32a 第1同期検波部
32b 第1同期検波部
33a 第1水平位置調整部
33b 第1水平位置調整部
34a 第1加算部
34b 第2加算部
50,50a,50b 原子

Claims (15)

  1. 試料表面の原子と、該原子に原子間力が作用する探針との相対位置を固定する原子位置固定装置において、
    探針又は原子を前記試料表面と平行な平面で回転させる回転手段と、
    該回転手段にて探針又は原子が回転されている状態で、前記試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出する検出手段と、
    検出した振動周波数の変化量に含まれる回転に同期した周波数成分がゼロとなるように前記探針又は前記原子の前記平面における位置を制御する位置制御手段と
    を備えることを特徴とする原子位置固定装置。
  2. 前記位置制御手段は、
    探針と原子との相対位置を周期的に変化させるための信号を発生する発信手段と、
    前記発信手段によって発生した信号又は該信号の高調波信号に同期して、前記検出手段の出力から位相が異なる2つの周波数成分の信号を検波する検波手段と、
    該検波手段が検波した2つの周波数成分の信号に基づいて、探針又は原子の2つの周波数成分に対応する2方向の位置を調整するための信号を出力する位置調整手段と、
    前記発信手段及び前記位置調整手段が出力する各信号を加算する加算手段と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の原子位置固定装置。
  3. 前記検波手段は、
    前記検出手段の出力から位相が90°異なる2つの周波数成分の信号を検波するようにしてあること
    を特徴とする請求項2に記載の原子位置固定装置。
  4. 試料表面の原子と、該原子に原子間力が作用する探針との相対位置を固定する原子位置固定装置において、
    探針又は原子を前記試料表面と平行な2方向に振動させる振動手段と、
    該振動手段にて探針又は原子が振動されている状態で、前記試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出する検出手段と、
    検出した振動周波数の変化量に含まれる前記2方向の振動に同期した周波数成分がゼロとなるように前記探針又は前記原子の前記2方向の位置を制御する位置制御手段と
    を備えることを特徴とする原子位置固定装置。
  5. 前記位置制御手段は、
    前記2方向の周波数成分のそれぞれに対して、
    探針と原子との各方向の相対位置を周期的に変化させるための信号を発生する発信手段と、
    前記発信手段によって発生した信号又は該信号の高調波信号に同期して、前記検出手段の出力から各方向の周波数成分の信号を検波する検波手段と、
    該検波手段が検波した各方向の周波数成分の信号に基づいて、探針又は原子の各方向の位置を調整するための信号を出力する位置調整手段と、
    前記発信手段及び前記位置調整手段が出力する各信号を加算する加算手段と
    を備えることを特徴とする請求項4に記載の原子位置固定装置。
  6. 前記2方向は、直交する方向であること
    を特徴とする請求項5に記載の原子位置固定装置。
  7. 前記位置調整手段は、
    前記探針を固定する原子位置を決定する固定位置決定手段を備えること
    を特徴とする請求項2、請求項3、請求項5又は請求項6に記載の原子位置固定装置。
  8. 前記位置調整手段は、
    前記固定位置決定手段にて決定された原子位置を微調整する位置微調整手段をさらに備えること
    を特徴とする請求項7に記載の原子位置固定装置。
  9. 前記位置微調整手段は、原子の頂点または空欠陥の底点から所定距離だけ離隔した位置で探針を固定するように構成してあること
    を特徴とする請求項8に記載の原子位置固定装置。
  10. 探針又は原子の前記試料表面と垂直な方向の位置を制御する第2位置制御手段を備えること
    を特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の原子位置固定装置。
  11. 前記位置制御手段の出力を前記第2位置制御手段にフィードバックするようにしてあること
    を特徴とする請求項10に記載の原子位置固定装置。
  12. 前記探針が配されたカンチレバーを備え、カンチレバーに振動を与えることによって前記探針を振動させるようにしてあること
    を特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の原子位置固定装置。
  13. 試料表面の原子と、該原子に原子間力が作用する探針との相対位置を固定する原子位置固定方法において、
    探針又は原子を前記試料表面と平行な平面で回転させて、探針又は原子が回転されている状態で、前記試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出し、検出した振動周波数の変化量に含まれる回転に同期した周波数成分がゼロとなるように前記探針又は前記原子の前記平面における位置を制御すること
    を特徴とする原子位置固定方法。
  14. 試料表面の原子と、該原子に原子間力が作用する探針との相対位置を固定する原子位置固定方法において、
    探針又は原子を前記試料表面と平行な2方向に振動させて、探針又は原子が振動されている状態で、前記試料表面と垂直な方向の探針の振動に起因した原子間力の変化に基づく探針の振動周波数の変化量を検出し、検出した振動周波数の変化量に含まれる前記2方向の振動に同期した周波数成分がゼロとなるように前記探針又は前記原子の前記2方向の位置を制御すること
    を特徴とする原子位置固定方法。
  15. 原子間力が作用する探針を用いて試料表面の原子を操作する原子操作方法において、
    請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の原子位置固定装置を用いて、試料表面の原子と前記探針との相対位置を固定し、所定の原子間力が作用した状態で前記探針を前記試料表面と水平方向又は垂直方向に走査させて、前記試料表面の原子を操作すること
    を特徴とする原子操作方法。
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