以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
本実施形態の残留輝度測定装置は、遮光された蓄光標識の残留輝度を測定する残留輝度測定装置であって、前記蓄光標識を遮光する遮光部と、前記遮光部によって遮光された遮光域における所定の領域を測定域として前記測定域からの放射光を受光する受光部と、遮光開始から互いに異なる複数の第1時間経過後に前記受光部でそれぞれ受光された前記測定域からの複数の放射光の強度に基づいて、前記放射光に含まれる、前記遮光域の外部からの迷光の強度を迷光補正値として求める迷光補正値演算部と、前記受光部で受光された前記測定域からの放射光の強度を前記迷光補正値演算部で求められた迷光補正値で補正して、前記迷光補正された強度に基づいて遮光開始から第2時間経過後における前記測定域の前記残留輝度を求める残留輝度演算部とを備えている。このような残留輝度測定装置は、前記各部を備えて一体に構成されてもよいが、本実施形態では、基準測定ユニットと、複数の測定ユニットと、収集処理ユニットとを備え、遮光された複数の蓄光標識の残留輝度を測定する残留輝度測定システムとされている。すなわち、前記測定ユニットは、前記遮光部および前記受光部を少なくとも含んで構成され、前記基準測定ユニットは、前記測定ユニットでの遮光開始前に、前記蓄光標識の前記測定域における初期輝度を測定するものであり、前記収集処理ユニットは、前記測定ユニットによって測定されたデータおよび前記基準測定ユニットによって測定されたデータを収集するとともに、前記迷光補正値演算部および前記残留輝度演算部を少なくとも含んで構成される。
以下、より具体的に、本実施形態にかかる残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)について説明する。
図1は、実施形態にかかる残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)を説明するための概念図である。
図1において、実施形態にかかる残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、遮光された複数の蓄光標識MK(MK−1、MK−2、・・・、MK−N)の残留輝度を測定するシステムであって、測定ユニット1と、基準測定ユニット2と、収集処理ユニット3とを備えて構成されている。
本実施形態にかかる残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sの主たる特徴は、以下の4点である。
第1に、遮光初期の減衰特性から所定時間後の残留輝度を予測する方式は、信頼性に欠けるため、本実施形態にかかる残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sでは、遮光開始から所定時間経った後の残留輝度を実測する方式が採用されている。この遮光開始から所定時間経った後の残留輝度は、測定ユニット1によって測定される。ここで、複数の蓄光標識MKについて、複数の測定ユニット1を用いて並列的に測定することによって、蓄光標識MKの1個あたりの測定時間を短縮することが可能である。例えば、図1に示すように、10個の測定ユニット1(1−1〜1−10)を用意し、100個の蓄光標識MK−N(Nは100以下の整数)の20分後の残留輝度を10個ずつほぼ同時に並列的に測定する場合では、蓄光標識MKの1個あたりの実質的な測定時間は、2分程度となる。
第2に、本実施形態にかかる残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、残留輝度を遮光初期の輝度と放射光強度の遮光初期からの変化率とから求めている。すなわち、図1に示すように、蓄光標識MKの初期輝度は、相対分光視感効率Vλに近似する分光感度を持つ、輝度計として校正された1台の前記基準測定ユニット2によって順次に測定される。基準測定ユニット2は、複数の蓄光標識MKに対し、共通に用いられる。そして、測定に所定時間を要する、前記放射光強度における遮光初期からの変化率は、複数の測定ユニット1によって複数の蓄光標識MKにおける各測定域をそれぞれ遮光しつつ、前記複数の測定ユニット1で各測定域からの各放射光を並列的にそれぞれ測定することによって求められる。測定ユニット1の受光部12Bは、蓄光標識MKの測定域からの放射光の分光分布が、減衰中、殆ど変化しないことから、基準測定ユニット2のように相対分光視感効率Vλに近似する分光感度を持つ必要はなく、輝度計としての光学系も校正も必要としないため、測定ユニット1は、軽量小型で、かつ、低コストで実現することが可能である。
第3に、測定ユニット1における測定部1Bが取り付けられた遮光部1Aは、扁平、軽量および小型であるため、例えば床や壁のさまざまな位置に設置された個々の蓄光標識MKに粘着テープ4等で容易に取り付けられ、除去することができる。取り付け後は、所定時間が経過するまで放置して、安定に遮光と測定ができるので、操作者の負担が少ない。
そして、第4に、放射光に含まれる、前記遮光域の外部からの迷光の強度が迷光補正値として求められ、前記測定域からの放射光の強度がこの迷光補正値で補正され、前記測定域からの前記放射光の補正後の強度によって前記残留輝度が求められる。このため、より精度よく残留輝度を測定することが可能である。
このような一特徴を持つ残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sにおける各ユニットについて、以下に、説明する。
まず、測定ユニット1について説明する。図2は、図1に示す残留輝度測定システムにおける測定ユニットの外観を示す正面図である。図2(a)は、測定部1Bが退避位置にある場合における測定ユニットを示し、図2(b)は、測定ユニットが測定位置にある場合を示す。図3(a)は、図2(b)のI―I線断面図であり、図3(b)は、図2(b)のII―II線断面図である。図3は、図1に示す残留輝度測定システムにおける測定ユニットの断面図である。図4は、図1に示す残留輝度測定システムにおける測定ユニットの電気的な構成を示すブロック図である。
測定ユニット1は、蓄光標識MKを遮光して、遮光開始から所定時間経った後に、遮光域における所定の領域を測定域としてこの測定域からの放射光の強度を測定するものであり、例えば、図2ないし図4に示すように、蓄光標識MKに対し脱着可能に固定可能であって、この蓄光標識MKを遮光する遮光部1Aと、遮光部1Aによって遮光された遮光域における所定の領域を測定域としてこの測定域からの放射光強度を測定する測定部1Bとを備えて構成される。前記遮光開始からの所定時間は、互いに異なる前記複数の第1時間を少なくとも含み、好ましくは、前記第2時間を含む。この第2時間は、光を受けなくなった場合でも蓄光標識MKが標識として機能するべき時間であり、例えば、前記日本工業規格Z9107に従えば20分間である。
測定部1Bは、例えば、図2ないし図4に示すように、スイッチ11Bと、受光部12Bと、制御部13Bと、電源部14Bと、IrDA通信部15Bと、LED16Bと、ソーラセル(太陽電池)17Bとを備え、これらスイッチ11B、受光部12B、制御部13B、電源部14B、IrDA通信部15B、LED16Bおよびソーラセル17Bは、図2に示すように平面視にて四隅を面取りされた略四角形であって、図3に示すように側面視にて扁平な略長方形である、直方体形状の筐体に収容されている。
前記筐体の両側面には、図3(b)に示すように、遮光部1Aにこの測定部1Bを取り付けるための長尺な溝1BRが長手方向に沿って形成されている。この溝1BRに、遮光部1Aにおける後述のガイド1AUが嵌め込まれることで、測定部1Bは、遮光部1Aに取り付けられて保持される。
スイッチ11Bは、制御部13Bのオンオフを行う被押圧面を有するスイッチ素子である。このスイッチ11Bは、前記被押圧面が前記筐体の一方側面に形成された溝1BRに臨むように配設され、測定部1Bが後述の退避位置から測定位置へ前記溝1BRおよび前記ガイド1AUによって案内されることによって、前記ガイド1AUによって前記被押圧面が押し込まれる(押圧操作される)ことで、オンされる。そして、これによってスイッチ11Bは、制御部13Bをオンし、測定部1Bを起動する。
ソーラセル(太陽電池セル)17Bは、光エネルギーを電気エネルギーへ変換する電力生成素子であり、制御部13B等の測定ユニット1における電力の必要な各部へ給電する電源である。電源部14Bは、ソーラセル17Bから供給された電力を所定の電圧レベルで安定的に出力する回路であり、前記所定の電圧レベルの電力を、測定ユニット1における電力の必要な各部へ出力する。
IrDA通信部15Bは、制御部13Bから出力された送信データをIrDA方式でデータ通信を行うためにLED16Bを駆動させる駆動信号を生成する通信回路である。LED16Bは、例えば、赤色の発光ダイオードであり、IrDA方式でショートレンジ通信を行うべく、IrDA通信部15Bからの前記駆動信号によって駆動され、発光される。
測定部1Bの前記筐体の正面には、当該筐体の内外で光を通過可能とするべく、略矩形状の窓部1BWが開口形成されており、ソーラセル17BおよびLED16Bは、この窓部1BWに臨むように配設される。そして、この窓部1BWを通して周囲光がソーラセル17Bに入射するとともに、この窓部1BWを通してLED16Bの発光が放射される。
受光部12Bは、受光した光を、その光強度に応じたレベルの電気信号に変換して出力する回路であり、例えば、光電変換素子である図略のシリコンフォトダイオード(SPD)121Bを備えて構成される。測定部1Bの前記筐体の背面には、遮光部1Aによって遮光された蓄光標識MKの遮光域における所定の領域を測定域として、この測定域からの放射光を通すための開口部(不図示)が形成されており、受光部12BのSPD121Bは、その受光面がこの開口部に臨むように配設される。
制御部13Bは、受光部12BおよびIrDA通信部15B等の測定部1Bの各部を当該機能に応じてそれぞれ制御し、測定部1Bの全体制御を司る回路である。制御部13Bには、所定のデータを記憶する記憶部131Bが内蔵されている。制御部13Bは、遮光開始から互いに異なる複数の所定時間経過後に受光部12Bでそれぞれ受光した蓄光標識MKの前記測定域からの放射光の複数の強度を記憶部131Bに記憶させるとともに、所定のタイミングで記憶部131Bに記憶した前記複数の光強度をIrDA通信部15Bに出力させる。
ここで、上述のように、受光部12Bは、SPD121Bを備えるので、測定部1Bにおける受光部12Bの分光感度は、本実施形態では、このSPD121Bの分光感度となる。図5は、代表的な2種類の蓄光材料における放射光の減衰時の相対分光分布を示すグラフである。図5の横軸は、nm単位で示す波長であり、その縦軸は、相対強度である。図5に示す曲線は、遮光直後(実線)、2分後(破線)、10分後(一点鎖線)、20分後(二点鎖線)における蓄光材料の放射光の分光分布である。図5(a)および(b)から理解されるように、この各時間経過後における蓄光材料の各放射光は、その強度が減衰するものの、その相対的な分光分布のプロファイルは、殆ど変化しない。このため、測定部1Bの分光感度に関わりなく、遮光開始からの輝度変化率は、受光量の変化率(受光量変化率)とみなすことができるので、本実施形態のようにSPD121Bそのものの分光感度でも測定することができる。そして、測定部1Bの受光部12Bが例えばフィルタ等の光減衰要素を伴わないSPD121Bで構成されるので、光束の利用効率が高く、高感度、したがって高精度とすることができる。
上述では、受光部12Bは、相対分光感度を修飾する光学要素(フィルタ)を伴うことなく直接的に受光するSPD121Bを備えて構成されたが、受光部12Bは、分光感度の波長依存性を軽減するフィルタを受光部12BのSPD121Bの上流側(受光放射光に対し)にさらに備え、このフィルタを介して受光部12BのSPD121Bで蓄光標識MKにおける前記測定域からの放射光を受光するように構成されてもよい。図6は、図1に示す残留輝度測定システムにおけるSPDの分光感度および補正用フィルタの分光透過率を示すグラフである。図6の横軸は、nm単位で示す波長であり、その右縦軸は、透過率であり、そして、その左縦軸は、相対感度である。より具体的には、分光分布にわずかでも変化があった場合、その影響は、測定部1Bの分光感度が平坦であるほど小さいので、図6の実線に示す受光部12BのSPD121Bの分光感度の波長依存性を相殺するような、例えば、図6の破線で示す分光透過率を持つフィルタと組み合わせて、合成分光感度を平坦化する。すなわち、前記フィルタは、受光部12BのSPD121Bの分光感度と合成した合成分光感度が略平坦となる分光透過率を持つ。このように、受光部12BにおけるSPD121Bの分光感度の波長依存性を軽減するフィルタを受光部12BのSPD121Bの上流にさらに備えることによって、蓄光標識MKの放射光の分光分布が減衰中に多少変化することがあっても、その影響を受け難くすることができ、測定精度の向上を図ることができる。
図2および図3に戻って、遮光部1Aは、例えば、中央に向かって盛り上がった扁平な円盤状、すなわち比較的低高の円錐台形状であり、例えば、床上の蓄光標識MKに取り付けられても、歩行者等に危険を及ぼす可能性が低い形状とされている。
遮光部1Aの周縁部(前記円錐台の側面)における所定の位置には、蓄光標識MKの前記測定域が周囲光から遮光されるように蓄光標識MKに脱着可能に固定するための固定手段を装着するための固定部が設けられている。図2および図3に示す例では、前記固定部は、前記固定手段としての粘着テープ4を装着するための領域(固定領域)1ASである。この固定領域1ASには、例えば、この固定領域1ASが固定部であることを明示するために所定の表示が施されている。この所定の表示は、例えば、着色、文字、記号(マーク)等である。この固定領域1ASは、1または複数であってよく、例えば、約180度間隔の2箇所、約120度間隔の3箇所および約90度間隔の4箇所等である。
そして、遮光部1Aの中央部には、図2および図3に示すように、測定部1Bを装着可能な略長方形の凹部(装着凹部)1ACが遮光部1Aの中心から径方向に延びるように形成されている。この装着凹部1ACの底には遮光板1APが設けられている。この遮光板1APには、所定位置(図2に示す例では中央よりやや左に寄った位置)に受光開口1AHが貫通開口されている。さらに、図3(b)に示すように、測定部1Bが遮光部1Aに対し相対移動する方向である図2に示す矢符A方向(a←→b)に平行な装着凹部1ACの側壁は、測定部1Bを前記矢符A方向にスライドさせて後述の退避位置から測定位置へ相互に案内するガイドとしても機能する。より具体的には、装着凹部1ACの前記側壁には、線条のガイド1AUが凸設されると共に、ガイド1AUに対応する測定部1Bの外側面の所定位置に、ガイド1AUの形状と対をなす形状を有する前記溝1BRが設けられている。ガイド1AUが溝1BRに内側から嵌め込まれることで、前記矢符A方向に移動可能となるように、測定部1Bは、遮光部1Aに取り付けられる。測定部1Bは、ガイド1AUに沿って前記矢符A方向に移動し、図2(b)に示すように、測定部1Bが装着凹部1ACの一方端部内に収納されるように位置し、受光部12Bの前記開口部を介してそのSPDの受光面が受光開口1AHに臨み、受光部12BのSPDの前記受光面が前記開口部および受光開口1AHを介して蓄光標識MKの測定域に対向する測定位置と、図2(a)に示すように、測定部1Bが装着凹部1ACの他方端部に収納されるように位置する退避位置と、を取ることが可能である。測定部1Bの待避位置から測定位置への移動によって測定域の遮光が開始され、さらに移動に伴って、ガイド1AUの特定の部位がスイッチ11Bの被押圧面を押圧するように、スイッチ11Bの配設位置が設定されている。蓄光標識MKに固定された遮光部1Aへ測定部1Bを取り付ける際には、測定部1Bは、前記退避位置にあり、ユーザ(操作者、測定者)は、装着凹部1ACの底部の遮光板1APに空けられた受光開口1AHが視認でき、受光開口1AHが蓄光標識MKの発光域101に来るように、遮光部1Aを位置決めすることができる。
このように図2および図3に示す例の遮光部1Aは、遮光性を有する遮光板1AP(所定面)に設けられた受光開口1AHに受光部12BのSPDを臨ませるように、この受光部12Bと制御部13B(記憶部131Bを含む)を納める測定部1Bを取り付け可能に構成されている。さらに、遮光部1Aは、受光開口1AHが蓄光標識MKの測定域に対向し、測定域が、少なくとも所定の第2時間、周囲光から遮光されるように、蓄光標識MKに脱着可能に固定するための粘着テープ4を装着するための固定領域1ASを有している。ユーザは、測定ユニット1を粘着テープ4によって少なくとも遮光開始からの所定時間、容易に固定することができる。このため、測定ユニット1の固定後は、ユーザの手を煩わせることなく、本実施形態の残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、遮光開始から所定時間後までの残留輝度を測定することができる。
なお、上述では、測定ユニット1は、遮光部1Aと測定部1Bとの組で構成されたが、遮光部1Aと測定部1Bとが一体に形成されてもよい。また、遮光板1APの蓄光標識MKと接する外面(外底面)1ABには、遮光性を有する部材(羅紗紙など)が貼り付けられてもよい。また、遮光部1Aの外周にフランジ(鍔部)をさらに備え、このフランジに固定部の固定領域1ASが配置されてもよい。
次に、基準測定ユニット2について説明する。図7は、図1に示す残留輝度測定システムにおける基準測定ユニットの断面図である。なお、図7には、基準測定ユニット2と収集処理ユニット3との接続状況や、収集処理ユニット3の概略外観構成も示されている。図8は、図1に示す残留輝度測定システムにおける基準測定ユニットの電気的な構成を示すブロック図である。図9は、代表的な蓄光材料における放射光の相対分光分布と相対分光視感効率とを示すグラフである。図9の横軸は、nm単位で示す波長nmであり、その縦軸は、強度あるいは視感効率を示す。
基準測定ユニット2は、測定ユニット1の遮光開始前に蓄光標識MKの前記測定域における初期輝度を測定するものであり、例えば、図7および図8に示すように、受光部21と、制御部22と、通信インタフェース部(通信IF部)23とを備えて構成される。
受光部21は、蓄光標識MKの前記測定域における初期輝度を測定するものであり、例えば、図7に示すように、光電変換素子であるシリコンフォトダイオード(SPD)211と、測光量を人間の眼に対する強度である輝度に変換するために、SPD211の上流(入射光の受光に対し)に設けられたVλフィルタ212と、SPD211の受光角を規制する受光角規制筒213とを備えている。これらSPD211、Vλフィルタ212および受光角規制筒213は、制御部22および通信IF部23とともに、測定ユニット1における遮光部1Aに取り付け可能な測定部1Bの前記筐体と同様な筐体に収納されている。受光角規制筒213は、筒体であり、その一方端にはVλフィルタ212およびSPD211が配設されており、その他方端の測定開口213Aから入射した光は、Vλフィルタ212を介してSPD211で受光される。
受光角規制筒213の測定開口213Aは、後述するように、前記測定位置では受光開口1AHに対向し、蓄光標識MKの前記測定域からの放射光に対するSPD211の受光角を規制する。これによってSPD211が測定対象の前記測定域を見込む角度が一定となり、前記受光開口1AHおよび前記測定対象の前記測定域が前記角度をカバーする限りその実際の大きさにSPD211のセンサ出力が依存しなくなる。
Vλフィルタ212は、SPD211の分光感度との合成分光感度が、図9の点線で示すような人間の眼の相対分光視感効率Vλに近似するような分光透過率(SPD211との組合せが図9に点線で示す相対分光視感効率Vλに近似するような分光透過率)を持ち、例えば吸収フィルタの組み合わせや多層膜等で構成される。
通信IF部23は、収集処理ユニット3との間でケーブル5を介してデータの入出力を行うインタフェース回路である。通信IF部23は、制御部22から出力されたデータ(初期輝度の測定値)をケーブル5を介して収集処理ユニット3へ送信する。
制御部22は、受光部21および通信IF部23等の基準測定ユニット2の各部を当該機能に応じてそれぞれ制御し、基準測定ユニット2の全体制御を司る回路である。制御部22は、受光部21に、蓄光標識MKの初期輝度を測定させるとともに、通信IF部23に、受光部21で測定された前記初期輝度をケーブル5を介して収集処理ユニット3へ出力させる。
このような構成の基準測定ユニット2は、基準光源で予め校正され、少なくとも蓄光標識MK等のランベルト光源とみなせる一様な面光源に対する輝度計として機能する。
そして、このような構成の基準測定ユニット2は、上述したように、測定ユニット1の測定部1Bの筐体と同様の外形を持ち、遮光部1Aの装着凹部1ACに取り付けることができる。基準測定ユニット2を遮光部1Aの測定位置に取り付けた場合に、測定開口213Aが受光開口1AHに対向するように、測定開口213Aは、受光開口1AHに対応する基準測定ユニット2の所定位置に設けられる。基準測定ユニット2が遮光部1Aに挿入され前記測定位置に位置されると、測定開口213Aは、遮光部1Aの受光開口1AHに対向し、蓄光標識MKの前記測定域と受光部21のSPD221とは、外光から遮光される。
初期輝度の測定中は、蓄光標識MKと基準測定ユニット2とが正しい位置関係にあって充分な遮光が維持される必要があり、そのために押し付けるなどユーザの補助が必要であっても、初期輝度の測定時間は、約1s以下なので、ユーザの負担は、小さい。基準測定ユニット2は、収集処理ユニット3とケーブル5で接続され、収集処理ユニット3から給電されるとともに、収集処理ユニット3のスイッチを用いて操作される。基準測定ユニット2で測光された初期輝度は、収集処理ユニット3に出力され、収集処理ユニット3によって蓄光標識MK−1〜MK−Nごとに記憶される。
なお、本実施形態の基準測定ユニット2は、上述のように、前記ケーブル5を介して、収集処理ユニット3から給電され、収集処理ユニット3に設けられた図略の操作スイッチによって操作されるように構成されるが、図2ないし図4に示す測定ユニット1と同様に、基準測定ユニット2で給電するべくソーラセル等が設けられてもよいし、基準測定ユニット2で操作するべく操作スイッチ等が設けられてもよい。
次に、収集処理ユニット3について説明する。図10は、図1に示す残留輝度測定システムにおける収集処理ユニットの電気的な構成を示すブロック図である。図11は、代表的な蓄光材料における残留輝度の減衰特性を示すグラフである。図11は、両対数表示であり、その横軸は、分(Min)単位で示す時間であり、その縦軸は、Cd/m2単位で示す輝度である。
収集処理ユニット3は、遮光開始から互いに異なる複数の第1時間経過後に測定ユニット1でそれぞれ測定された前記測定域からの放射光の複数の強度に基づいて、前記放射光に含まれる、前記遮光域の外部からの迷光の強度を迷光補正値として求め、測定ユニット1で測定された前記測定域からの放射光の強度を前記迷光補正値で補正して、前記迷光補正後の前記測定域からの放射光の強度に基づいて、遮光開始から第2時間経過後までの受光量変化率を求め、この求めた受光量変化率と基準測定ユニット2で測定された初期輝度とに基づいて、前記遮光開始から第2時間経過後における前記測定域の残留輝度を求めるものである。
より具体的には、収集処理ユニット3は、図10に示すように、所定の表示を行う表示部32と、測定ユニット1との間でIrDA方式でデータ通信を行うIrDA通信部33と、基準測定ユニット2との間でケーブル5を介してデータの入出力を行う通信インタフェース部(通信IF部)34と、これら表示部32、IrDA通信部33および通信IF部34を当該機能に応じてそれぞれ制御し、収集処理ユニット3の全体制御を司る制御部31とを備えて構成される。
そして、制御部31は、機能的に、遮光開始から互いに異なる複数の第1時間経過後に測定ユニット1でそれぞれ測定された前記測定域からの放射光の複数の強度に基づいて、前記放射光に含まれる、前記遮光域の外部からの迷光の強度を迷光補正値として求める迷光補正値演算部311と、測定ユニット1で測定された前記測定域からの放射光の光強度を迷光補正値演算部311で求めた前記迷光補正値で補正し、この迷光補正後の前記測定域からの放射光の各強度に基づいて、遮光開始から第2時間経過後までの受光量変化率を求める受光量変化率演算部312と、受光量変化率演算部312で求めた受光量変化率と基準測定ユニット2で測定された初期輝度とに基づいて、前記遮光開始から第2時間経過後における前記測定域の残留輝度を求める残留輝度演算部313とを備えている。さらに、制御部31は、残留輝度演算部313で求めた所定の第2時間経過後の残留輝度を表示部32へ出力し、表示部32に表示させる。
以下、複数N(例えば10個)の蓄光標識MKについて、蓄光標識MKそれぞれの測定域の残留輝度を残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sで測定する場合における、測定の手順について説明する。
<蓄光標識MKに対する測定ユニット1の遮光部1Aの取り付け>
まず、ユーザは、例えば10個の蓄光標識MK(MK−1〜MK−10)のそれぞれを測定すべく、10個の測定ユニット1を用意する。次に、これら各測定ユニット1の各遮光部1Aは、ユーザによって、図1に示すように、個々の蓄光標識MK−k(k=1〜10の整数)に固定部としての固定領域1ASにおいて粘着テープ4によってそれぞれ取り付けられる。この場合において、ユーザは、装着凹部1ACの底にあって蓄光標識MK−kに接する遮光板1APに空けられた受光開口1AHから測定域が視認でき、受光開口1AHが蓄光標識MK−kの測定域に配置されるように、遮光部1Aを位置決めすることができる。
<基準測定ユニット2による測定>
次に、基準測定ユニット2は、収集処理ユニット3にケーブル5を介して接続される。なお、基準測定ユニット2は、予め、基準光源を用いて校正されている。次に、基準測定ユニット2は、ユーザによって遮光部1Aの装着凹部1ACに挿入され、図2(b)に示す測定位置に移動され、測定開口213Aが受光開口1AHに対向する。次に、基準測定ユニット2は、収集処理ユニット3からの操作によって、この受光開口1AHに対向する蓄光標識MK−kの測定域からの放射光量を測定する。なお、基準測定ユニット2が遮光部1Aに取り付けられても、基準測定ユニット2を図2(a)に示す退避位置に位置させることで、ユーザは、装着凹部1ACの遮光板1APに空けられた受光開口1AHから測定域を視認することができ、受光開口1AHが蓄光標識MK−kの測定域に配置されるように、遮光部1Aを位置決めすることができ、これによって基準測定ユニット2は、蓄光標識MK−kの測定域から放射される光を受光することができ、基準測定ユニット2によって蓄光標識MK−kの測定域における初期輝度の測定が可能となる。そして、基準測定ユニット2の制御部22は、基準測定ユニット2の受光部21で測定された測光量を、人間の眼に対する強度である輝度に変換し、収集処理ユニット3に出力する。収集処理ユニット3は、受信した初期輝度を蓄光標識MK−kに対応させて(例えば蓄光標識MK−kの識別子IDに対応させて)、蓄光標識MK−kごとに記憶する。
<測定ユニット1の測定部1Bによる測定>
次に、基準測定ユニット2による初期輝度の測定が終了すると、ユーザによって、基準測定ユニット2が蓄光標識MK−kの遮光部1Aから取り外され、代わりに、遮光部1Aに測定部1Bが取り付けられる。なお、測定部1Bが遮光部1Aに取り付けられても、測定部1Bを図2(a)に示す退避位置に位置させることで、上述したように、ユーザは、装着凹部1ACの遮光板1APに空けられた受光開口1AHから測定域を視認することができ、受光開口1AHが蓄光標識MK−kの測定域に配置されるように、遮光部1Aを位置決めすることができ、これによって測定ユニット1は、蓄光標識MK−kの測定域から放射される光を受光することができ、測定ユニット1によって蓄光標識MK−kの測定域における放射光の測定が可能となる。次に、測定部1Bは、ユーザによって、図2(b)に示す測定位置に移動される。測定部1Bの受光部12Bは、測定位置で遮光部1Aの受光開口1AHに対向する。移動の初期にスイッチ11Bがガイド1AUに当たってオンされ、測定部1Bが自動的に起動する。これによりユーザは、起動の手間が省け、測定部1Bは、ユーザの負担をより軽減することができる。測定部1Bの制御部13Bは、計時をスタートして所定の時間間隔で、SPD21のみで構成される受光部12Bによる受光量の測定と測定値の制御部13Bの前記記憶部131Bへの保存を繰り返す。測定間隔は、初期では例えば0.1秒程度と短く、測定終了近くでは数秒程度まで長くなる。また、起動後1秒間程度の測定部1Bの移動中、測定部1Bにおける受光部12BのSPD121Bは、遮光部1Aの遮光板1APに対向して入射光が阻止され、この間の受光量がオフセット信号(暗電流値に対応する信号)となる。測定部1Bが測定位置に到達すると、測定部1Bにおける受光部12Bの前記SPDが遮光部1Aの受光開口1AHに臨むように位置するので、受光量が急激に増大するが、制御部13Bは、これを検出して遮光の開始とすることができる。制御部13Bは、所定の遮光時間が経過すると測定を中止し、IrDA通信部15BおよびLED16BによるIrDA方式の通信によって、記憶部131Bに記憶された全データを繰り返し窓部1BWを介して外部へ送信する。このLED16Bの点灯は、窓部1BWを通してユーザに確認され、測定の終了がユーザに認識される。
<複数の蓄光標識MK−kの測定>
上述の「蓄光標識MKに対する測定ユニット1における遮光部1Aの取り付け」、「基準測定ユニット2による測定」および「測定ユニット1の測定部1Bによる測定」の各処理が、例えば、10個の蓄光標識MK−k(k=1〜10の整数)について行われる。これによって各蓄光標識MK−kに対し、測定ユニット1の遮光部1Aが取り付けられ、その初期輝度が基準測定ユニット2によって測定および記憶され、そして、その各所定時間経過後の放射光が測定ユニット1によって測定され、記憶され、外部に送信される。
<測定データの読み出し、迷光補正値の算出および残留輝度の算出>
次に、収集処理ユニット3は、基準測定ユニット2から複数の蓄光標識MK−kにおける各初期輝度の各測定データをケーブル5を介して読み出し、そして、複数の蓄光標識MK−kに取り付けられた測定ユニット1の測定部1Bから複数の所定の第1時間経過後の各測定データを読み出し、そして、これら測定データに基づいて残留輝度を算出する。例えば、ユーザは、収集処理ユニット3によって、基準測定ユニット2から10個の蓄光標識MK−kについての初期輝度の各測定データを読み出し、10個の蓄光標識MK−kについて、測定部1BのLED16Bが点灯した測定ユニット1の測定部1Bから順次に、収集処理ユニット3によって、制御部13Bの記憶部131Bに記憶された複数の所定の第1時間経過後の各測定データを読み出す。より具体的には、測定部1Bの窓部1BWに収集処理ユニット3のIrDA通信部33を密着させることで、IrDA通信部33は、LED16Bが発信する情報を読み込む。
次に、収集処理ユニット3の制御部31は、これら読み出された複数の所定の第1時間経過後の各測定データから、オフセット信号を識別し、これによって、これら読み出された複数の所定の第1時間経過後の各測定データ全てをオフセット補正する。
次に、収集処理ユニット3における制御部31の迷光補正値演算部311は、遮光開始から互いに異なる複数の第1時間経過後に測定ユニット1でそれぞれ測定された前記測定域からの放射光の複数の強度であって前記オフセット補正された各強度に基づいて、前記放射光に含まれる、前記遮光域の外部からの迷光の強度を迷光補正値として求める。次に、収集処理ユニット3における制御部31の受光量変化率演算部312は、前記オフセット補正された前記各光強度を、迷光補正値演算部311で求められた前記迷光補正値で補正して、前記迷光補正後の各強度に基づいて、遮光開始から第2時間経過後までの受光量変化率を求める。次に、収集処理ユニット3における制御部31の残留輝度演算部313は、受光量変化率演算部312で求めた受光量変化率と基準測定ユニット2で測定された初期輝度とに基づいて、前記遮光開始から第2時間経過後における前記測定域の残留輝度を求める。そして、制御部31は、残留輝度演算部313で求めた所定の第2時間経過後の残留輝度を表示部32へ出力し、表示部32に表示させる。
より具体的には、例えば、次のように残留輝度が求められる。蓄光標識MKに用いられる比較的高性能な蓄光材料の放射光強度ILの減衰特性は、遮光経過時間をTとすると、一般的に、図11に示すように、Log(IL)がLog(T)に対し略直線的であり、式1によって直線近似することができる。
Log(IL)=γ×Log(T)+b ・・・(1)
ここで、γは、前記直線近似した減衰特性の傾きであり、bは、前記直線近似した減衰特性の切片(測定ユニット1による遮光開始時の測定値)である。
この式1は、b=Log(B)とすると、式2によって表される。なお、傾きγおよび切片b(=Log(B))は、蓄光標識MKに固有な定数である。
IL=B×Tγ ・・・(2)
つまり、γは、放射光強度ILを近似的に与える遮光時間Tの指数関数の指数である。
そして、実測される受光強度(受光部12Bで受光した光の強度)Mには、迷光強度ISが含まれ(M=IL+IS)、式2は、受光強度Mについて式3のように表される。
M−IS=B×Tγ ・・・(3)
ここで、遮光時間としての複数の所定の第1時間として、第1ないし第4の第1時間をT1、T2、T3およびT4とし(T1>T2、T3>T4)、その受光光強度の測定値をM1、M2、M3およびM4とすると、式3より、式4(式4−1〜式4−4)が得られる。
M1−IS=B×T1 γ ・・・(4−1)
M2−IS=B×T2 γ ・・・(4−2)
M3−IS=B×T3 γ ・・・(4−3)
M4−IS=B×T4 γ ・・・(4−4)
ここで、第2の第1時間T2と第3の第1時間T3とが同じ時間であって、第4の第1時間T4に対する第2の第1時間T2の比と、第2の第1時間T2に対する第1の第1時間T1の比とが等しいとすると、より具体的には、例えば、本実施形態では、第1の第1時間T1が20分であり、第2の第1時間T2(第3の第1時間T3)が10分であり、そして、第4の第1時間T4が5分であるとすると、式4は、式5(式5−1〜式5−3)となる。
M1−IS=B×20γ ・・・(5−1)
M2−IS=B×10γ ・・・(5−2)
M4−IS=B×5γ ・・・(5−3)
そして、(式5−1)/(式5−2)および(式5−2)/(式5−3)をそれぞれ求めると、式6(式6−1、式6−2)が得られる。
(M1−IS)/(M2−IS)=2γ ・・・(6−1)
(M2−IS)/(M4−IS)=2γ ・・・(6−2)
したがって、式6より、式7が得られ、これを迷光強度ISについて解くと、式8が得られる。
(M1−IS)/(M2−IS)=(M2−IS)/(M4−IS) ・・・(7)
IS=(M2×M2−M1×M4)/(2×M2−M1−M4) ・・・(8)
よって、迷光補正値演算部311は、式8より迷光強度ISを求め、迷光補正値ISとすればよい。
そして、受光量変化率演算部312は、初期の遮光直後の受光強度M0と20分後の受光強度M1から、迷光補正値ISをそれぞれ減算し、迷光補正後の初期受光強度I0(=M0−IS)および迷光補正後の20分後の受光強度I1(=M1−IS)をそれぞれ求め、迷光補正された受光量変化率I1/I0を求める。
そして、残留輝度演算部313は、この迷光補正された受光量変化率I1/I0に基準測定ユニット2によって測定された初期輝度L0を乗算することによって、残留輝度(I1/I0×L0)を求める。
このように本実施形態における残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sでは、迷光補正値演算部311によって、前記遮光域の外部からの迷光の強度ISが迷光補正値ISとして求められ、残留輝度演算部313によって、前記測定域からの放射光の強度MTを迷光補正値演算部311で求められた迷光補正値ISで補正して、遮光開始から第2時間経過後における前記測定域の残留輝度が求められる。このため、このような構成の残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、迷光によるノイズを補正して、測定結果の残留輝度に含まれる迷光による誤差を低減することができ、より精度よく残留輝度を測定することができる。上述のように推定された迷光補正値ISには、通常、誤差が含まれてしまうが、誤差の影響は、実測された遮光後20分経過後の受光強度に含まれる迷光補正値の誤差に留まり、迷光補正後の放射光強度に対する影響は小さい。例えば、外光由来の迷光が残留輝度による放射光強度の20%であり、この推定された迷光補正値ISの誤差が20%であっても、迷光補正された残留輝度による放射光強度の誤差は、4%にとどまり、実用上問題がない。
また、本実施形態における残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sでは、第2の第1時間T2と第3の第1時間T3とが同じ時間であって、第4の第1時間T4に対する第2の第1時間T2の比と第2の第1時間T2に対する第1の第1時間T1の比とが等しくされている。このため、迷光補正値演算部311は、迷光補正値ISを(M2×M2−M1×M4)/(2×M2−M1−M4)によって求めることができる。したがって、このような構成の残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、第1時間に所定の関係がある3つの第1時間経過後での前記測定域からの放射光の各強度に基づいて迷光補正値ISを求めることができ、より簡単に迷光補正値ISを求めることができる。
また、本実施形態における残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sでは、20分後の残留輝度を求める際に、20分後の実測値が用いられている。すなわち、前記第2時間は、前記所定時間に含まれているため、前記迷光補正値には、前記第2時間経過時の迷光が反映されている。このため、このような構成の残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、より精度よく、前記残留輝度を求めることができる。
また、本実施形態における残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sでは、相対分光視感効率Vλに近似する分光感度を持ち、校正を必要とするため高コストの基準測定ユニット2を1台必要とするものの、複数の測定ユニット1における測定部1Bの各受光部12Bは、SPD121Bだけで構成でき、低コストである。このため、システム全体のコストパフォーマンスが高い。
また、本実施形態における残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、測定の間隔を初期の0.1sから20分後の数sまで、変化させるように構成されたが、残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、20分間0.1s間隔でデータを取得するように構成されてもよい。このような構成では、図11に見られるような連続的な減衰とは異なる、突発的な変化があった場合、これを測定ユニット1の取り付け状態の変化として変化分を測定データから減算することで補正してもよいし、測定データの信頼性に問題があることを警告するメッセージを表示部32に出力してもよい。
また、本実施形態における残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、測定間隔が変更されるものの、遮光開始から20分後まで連続的に前記測定域からの放射光強度を測定したが、上述のように、遮光開始時および所定の関係がある3つの第1時間経過後における各測定結果が必要とされるので、残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、遮光開始時および所定の関係がある3つの第1時間経過後にそれぞれ前記測定域からの放射光強度を測定するように構成されてもよく、さらに、この場合において、各測定時における前後数秒だけ所定の時間間隔で前記測定域からの放射光強度を測定するように構成されてもよい。
また、本実施形態における残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sでは、1台の基準測定ユニット2で順次に測定した初期輝度と、複数の測定ユニット1で並行測定した遮光開始から所定の第2時間経過までの変化率から残留輝度を求めているが、基準測定ユニット2に準じた受光部を持ち、輝度計として校正された複数の測定ユニット1で、直接、残留輝度を測定するように構成してもよい。
なお、上述の実施形態では、第2の第1時間T2と第3の第1時間T3とが同じ時間であって、第4の第1時間T4に対する第2の第1時間T2の比と、第2の第1時間T2に対する第1の第1時間T1の比とが2としたが(T2/T4=T1/T2=2)、この比は、2に限定されず、任意の値であってよく、この場合においても、式8は、成立する。
また、上述の実施形態では、第2の第1時間T2と第3の第1時間T3とが同じ時間であって、第4の第1時間T4に対する第2の第1時間T2の比と、第2の第1時間T2に対する第1の第1時間T1の比とが等しいとしたが(T2/T4=T1/T2)、第4の第1時間T4に対する第2の第1時間T2の比と、第2の第1時間T2に対する第1の第1時間T1の比とは、必ずしも等しい必要はない。この比が等しくない場合でも、式6−1および式6−2を連立させてこの連立方程式を解くことによって迷光補正値ISが求められる。
また、上述の実施形態では、第2の第1時間T2と第3の第1時間T3とが同じ時間であって、第4の第1時間T4に対する第2の第1時間T2の比と、第2の第1時間T2に対する第1の第1時間T1の比とが等しいとしたが(T2/T4=T1/T2)、上述の実施形態において、遮光開始から遮光時間(第1時間)までの減衰特性を表す式2の遮光時間Tの指数γを、所与の一定値(例えばγ=−1)とし、前記遮光開始から互いに異なる第1および第2の第1時間T1、T2経過後にそれぞれ測定された前記測定域からの第1および第2放射光の強度M1、M2に基づいて、迷光補正値ISを求めるように、迷光補正値演算部311が構成されてもよい。すなわち、迷光補正値演算部311は、式4−1および式4−2(あるいは式5−1および式5−2)に基づいて迷光補正値ISを求めるように構成されてもよい。このように構成することによって、残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、2つの第1時間経過後での前記測定域からの放射光の強度に基づいて迷光補正値ISを求めることができ、さらにより簡単に迷光補正値ISを求めることができる。
また、上述の実施形態では、第2の第1時間T2と第3の第1時間T3とが同じ時間であって、第4の第1時間T4に対する第2の第1時間T2の比と、第2の第1時間T2に対する第1の第1時間T1の比とが等しいとしたが(T2/T4=T1/T2)、上述の実施形態において、前記遮光開始から互いに異なる多数の第1時間経過後にそれぞれ受光された前記測定域からの放射光の強度に基づいて、前記遮光開始時の前記測定域からの放射光の強度(上述の例ではBまたはb)、遮光時間の指数(上述の例ではγ)および迷光補正値ISによって規定される関数であって、前記遮光開始から第1時間経過後における前記測定域からの前記放射光の強度を表す関数式(上述の例では式2または式1)を、例えば最小二乗法等の公知の同定手法で同定することによって、迷光補正値ISを求めるように、迷光補正値演算部311が構成されてもよい。このように構成することによって、残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、前記遮光開始から互いに異なる多数の第1時間経過後での前記測定域からの放射光の強度に基づいて前記関数式を同定することによって、前記迷光補正値が求められるので、個々の放射光強度の測定誤差の影響が軽減され、より高精度に迷光補正値ISを求めることができる。
また、上述の実施形態において、残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sは、迷光補正値ISが所定の閾値Thよりも大きい場合に、遮光部1Aによる前記遮光が不充分である旨の警告を行う警告部(不図示)をさらに備え、前記警告を表示部32に表示させるように構成されてもよい。このように構成することによって、ユーザは、この警告によって遮光が不充分であることを認識することができ、遮光を徹底する等の遮光対策を行った上で再度の測定を行うことができる。
また、上述の実施形態において、基準測定ユニット2は、蓄光標識MKにおける測定域からの放射光に対する、分光視感効率と受光部21におけるSPD211の分光感度との関係を予め記憶し、収集処理ユニット3は、この関係に基づいて、測定値を分光視感効率での値に変換するように、残留輝度測定システム(残留輝度測定装置)Sが構成されてもよい。より具体的には、測定対象の蓄光標識MKにおける放射光の分光分布が図5(a)および図5(b)の2種である場合、受光部21のVλフィルタ212を省略し、SPD211そのものの分光感度としても、これら2種の蓄光標識MKについて、測定ユニット1の測定値を輝度に変換することができる。つまり、相対分光視感効率Vλに近似する分光感度の輝度計でモニタされた前記2種のりん光光源を基準光源として、各々の変換係数を求め、収集処理ユニット3に予め各々の変換係数を記憶し、測定の場合には測定対象の蓄光標識MKに応じてユーザが変換係数を選択することで、収集処理ユニット3が、変換係数に基づいて、測定値を分光視感効率での値(輝度)に変換する。この構成を測定ユニット1の受光部12Bに適用すれば、受光部12BのSPDの分光感度を分光視感効率に近似させるためのフィルタを備える必要がなく、基準測定ユニット2も必要ないので、低コストで構成でき、効率的な測定のために多数個の測定ユニット1を使用しても大きなコスト増とならない。
また、上述の実施形態では、固定部は、固定手段の一例としての粘着テープ4を装着するための固定領域1ASであったが、これに限定されるものではない。例えば、前記固定部は、前記固定手段の一例としての吸盤を装着するための領域(領域10AS)であり、測定ユニット1の遮光部(遮光部10A)は、前記固定部に装着された吸盤をさらに備えて構成されてもよい。
図12は、図1に示す残留輝度測定システムにおける他の形態の断面図である。遮光部1Aに代わる、固定手段の他の一例としての吸盤6を備える測定ユニット1の遮光部10Aは、図12に示すように、遮光部10Aの筐体における底面には、吸盤6を装着するための複数の凹部10ASを有し、これら各凹部10AS内に、受光部12BのSPD121Bを蓄光標識MKにおける測定域に対向させてこの測定域を周囲光から遮光させるように、遮光部10Aを蓄光標識MKに脱着可能に固定するための吸盤6がそれぞれ設けられている。より具体的には、遮光部10Aは、遮光部1Aと同様に装着凹部1ACを有する低高の円錐台形状であり、その底面には、例えばその周縁部分に、例えば、2箇所、3箇所あるいは4箇所等の複数の凹部10ASが形成されており、これら各凹部10AS内に吸盤6がそれぞれ設けられている。また例えば、遮光部10Aは、例えば、上述と同様の装着凹部1ACを有する低高の円盤状であり、その底面には、例えばその周縁部分に、複数の凹部10ASが形成されており、これら各凹部10AS内に吸盤6がそれぞれ設けられている。また例えば、遮光部10Aは、例えば、上述と同様の装着凹部1ACを有する低高の円盤状であり、その上端部には、フランジを有し、そのフランジの下面に複数の吸盤6がそれぞれ設けられている。このような吸盤6は、粘着テープ4に較べて脱着の操作性がよく、この結果、操作者の負担がより軽減される。
また、測定部1Bは、遮光部1Aおよび遮光部10Aの双方に取り付け可能とされ、蓄光標識MKの設置状況に応じて、遮光部1Aおよび遮光部10Aが使い分けられてもよい。例えば、床面に配設された蓄光標識MKに対しては、遮光部1Aが用いられ、壁面に配設された蓄光標識MKに対しては、遮光部10Aが用いられる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。