以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
図1は、実施形態における残留輝度測定システムの構成を示す図である。本実施形態の残留輝度測定システムSは、りん光を放射することができる蓄光部材が遮光された場合に、遮光開始から所定の時間が経過した後における前記蓄光部材から放射される光(りん光)の輝度(残留輝度)を測定するものである。このような残留輝度測定システムSは、例えば、図1に示すように、遮光ユニット1と、測定ユニット2と、収集処理ユニット3と、読取ユニット4とを備えて構成される。なお、図1において、遮光ユニット1が遮光ユニット1Aである場合について図示されており、そして、遮光ユニット1Aと、測定ユニット2とは、図2(B)に示すI−I線における断面で示されている。
まず、遮光ユニット1について説明する。図2は、実施形態の残留輝度測定システムにおける遮光ユニットの第1態様の構成を示す図である。図3は、実施形態の残留輝度測定システムにおける遮光ユニットの第2態様の構成を示す図である。
遮光ユニット1は、測定対象の蓄光部材MKを遮光するための部材であり、蓄光部材MKに対し脱着可能に構成される。蓄光部材MKは、りん光を放射することができるものであれば任意の部材であってよい。上述のように、日本工業規格Z9107によって、遮光から20分間経過した場合のりん光輝度が規定されていることから、本実施形態の残留輝度測定システムSは、蓄光部材MKが図14を用いて説明した上述の蓄光標識MKである場合に、好適に用いられ、本実施形態では、蓄光部材MKは、蓄光標識MKである。
遮光ユニット1は、蓄光標識MKのりん光を放射する放射面に配置された場合に、蓄光標識MKを外光から遮光するとともに、蓄光標識MKから放射される光(りん光)を測定ユニット2によって測定するために貫通開口(受光開口、測定用開口)が形成された遮光本体部と、前記貫通開口を開閉するための蓋部とを備えて構成される。このような遮光ユニット1は、例えば、図2に示す遮光ユニット1Aであってよく、また例えば、図3に示す遮光ユニット1Bであってよい。
遮光ユニット1Aは、図2に示すように、蓄光標識MKが蓄光可能な光の波長に対し遮光可能な材料から形成された円板状の遮光本体部11Aを備えている。遮光本体部11Aには、略中心位置に、その一方表面から他方表面までに至る貫通開口111Aが所定の直径で形成されている。そして、遮光本体部11Aには、所定の位置に、RFID(Radio Frequency Identification)システムのRFタグ112Aが埋め込まれている。このRFタグ112Aは、当該遮光ユニット1Aを特定し、他の遮光ユニット1Aから識別するための識別子IDを記憶するともに、ショートレンジの無線通信を行うICチップを備えたパッシブタイプのICタグを備えて構成されている。そして、遮光ユニット1Aは、前記貫通開口111Aを開閉するための蓋部12Aを備えている。この蓋部12Aは、蓄光標識MKが蓄光可能な光の波長に対し遮光可能な材料から形成され、四隅を面取りされた矩形板状であり、前記貫通開口111Aを開閉可能な所定の位置で蝶番(ヒンジ)121Aによって遮光本体部11Aの一方表面に配設されている。
このような構成の遮光ユニット1Aでは、図2(A)に示すように、蓋部12Aが遮光本体部11Aの表面から離間され、蓋部12Aが開状態である場合には、蓄光標識MKに遮光ユニット1Aを取り付ける際に、ユーザ(操作者、測定者)は、貫通開口111Aが視認でき、貫通開口111Aが蓄光標識MKの発光域にくるように、遮光ユニット1Aを位置決めすることができる。そして、この蓋部12Aが開状態である場合において、貫通開口111Aに測定ユニット2がセットされ、蓄光標識MKから放射されるりん光の強度が測定ユニット2によって測定される。そして、このような構成の遮光ユニット1Aでは、図2(B)に示すように、蓋部12Aが遮光本体部11Aの表面に密着され、蓋部12Aが閉状態である場合には、貫通開口111Aに対応する蓄光標識MKの領域(測定域)が遮光される。
また、遮光ユニット1Bは、図3に示すように、蓄光標識MKが蓄光可能な光の波長に対し遮光可能な材料から形成された円板状の遮光本体部11Bと、蓄光標識MKが蓄光可能な光の波長に対し遮光可能な材料から形成され、四隅を面取りされた矩形板状の蓋部12Bとを備えている。遮光本体部11Bには、蓋部12Bを装着可能な略長方形の凹部(装着凹部)113Bが遮光本体部11Bの中心から径方向に延びるように形成されている。この装着凹部113Bの底には遮光板114Bが設けられている。この遮光板114Bには、所定位置(図3に示す例では中央よりやや左に寄った位置)にその一方表面から他方表面までに至る貫通開口111Bが所定の直径で形成されている。蓋部12Bは、この貫通開口111Bを開閉するための部材である。このため、図3(A)に示すように、蓋部12Bが遮光本体部11Bに対し相対移動する方向である図3(A)に示す矢符ab方向(a←→b)に平行する装着凹部113Bの側壁は、蓋部12Bを前記矢符ab方向にスライドさせて開位置と閉位置との間を相互に案内するガイドとしても機能する。より具体的には、装着凹部113Bの前記側壁には、線条のガイド115Bが凸設されると共に、ガイド115Bに対応する蓋部12Bの外側面の所定位置に、ガイド115Bの形状と対をなす形状を有するガイド溝121Bが設けられている。ガイド115Bがガイド溝121Bに内側から嵌め込まれることで、前記矢符ab方向に移動可能となるように、蓋部12Bは、遮光本体部11Bに取り付けられる。そして、遮光本体部11Bには、所定の位置に、RFタグ112Aと同様な、RFID(Radio Frequency Identification)システムのRFタグ112Bが埋め込まれている。
このような構成の遮光ユニット1Bでは、図3(A)に示すように、蓋部12Bが装着凹部113B内で矢符a方向にスライド(移動)され、蓋部12Bが開状態である場合には、蓄光標識MKに遮光ユニット1Bを取り付ける際に、ユーザ(操作者、測定者)は、貫通開口111Bが視認でき、貫通開口111Bが蓄光標識MKの発光域にくるように、遮光ユニット1Bを位置決めすることができる。そして、この蓋部12Bが開状態である場合において、貫通開口111Bに測定ユニット2がセットされ、蓄光標識MKから放射されるりん光の強度が測定ユニット2によって測定される。そして、このような構成の遮光ユニット1Bでは、図3(B)に示すように、蓋部12Bが装着凹部113Bを矢符b方向にスライド(移動)され、蓋部12Bが閉状態である場合には、貫通開口111Bに対応する蓄光標識MKの領域(測定域)が遮光される。
上記構成の遮光ユニット1A、1Bは、いずれも厚さ10mm以下と薄いので、蓄光標識MKに貼り付けられても、その上を歩行者が通る場合に、邪魔にならず、歩行者の通行に干渉する虞がない。
次に、測定ユニット2について説明する。図4は、実施形態の残留輝度測定システムにおける測定ユニットの構成を示す図である。図5は、実施形態の残留輝度測定システムの測定ユニットにおける受光部の第1態様の構成を示す断面図である。図6は、代表的な蓄光材料における放射光の相対分光分布と相対分光視感効率とを示すグラフである。図7は、実施形態の残留輝度測定システムの測定ユニットにおける受光部の第2態様の構成を示す断面図である。
測定ユニット2は、遮光ユニット1によって遮光された遮光域における所定の領域を測定域としてこの測定域から放射されるりん光の強度を測定する装置である。測定ユニット2は、収集処理ユニット3からケーブルCB1を介して給電および操作指示を受けて前記りん光の強度を測定し、この想定結果をケーブルCB1を介して収集処理ユニット3へ出力する。前記所定の領域は、本実施形態では、測定ユニット2は、測定の際に、遮光ユニット1(1A、1B)の前記貫通開口(111A、111B)に装着されることから、蓄光標識MKにおける貫通開口(111A、111B)に対応する領域となる。測定ユニット2は、例えば、図4および図5に示すように、受光部21と、制御部22と、記憶部23と、インタフェース部(IF部24)とを備えて構成される。
受光部21は、蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光を受光し、この受光したりん光を、その強度に応じたレベルの電気信号に変換して出力する回路ものである。受光部21は、例えば、光電変換素子であるシリコンフォトダイオード(SPD)223と、SPD223で受光される光を、人間の眼に対する強度である輝度に変換するために、SPD223の上流(入射光の受光に対し)に設けられたVλフィルタ(分光感度補正フィルタ)222と、蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光に対するSPD223の受光角を規制する受光角規制筒221と、SPD223の出力電流を電圧に変換(IV変換)してアナログ信号をディジタル信号に変換する処理回路224とを備えている。Vλフィルタ222は、SPD223の分光感度との合成分光感度が、図6の点線で示すような人間の眼の相対分光視感効率Vλに近似するような分光透過率(SPD223との組合せが図6に点線で示す相対分光視感効率Vλに近似するような分光透過率)を持ち、例えば、吸収フィルタの組み合わせや多層膜等で構成される。受光角規制筒221は、筒体であり、その一方端にはVλフィルタ222およびSPD223が配設されており、その他方端は、蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光が入射する測定開口221Aとなっている。受光角規制筒221は、図1に示すように、遮光ユニット1(1A、1B)の貫通開口(111A、111B)に嵌め込まれて装着することができるように、少なくとも前記他方端の外直径が貫通開口(111A、111B)の直径に応じた大きさとなっており、そして、図1に示すように、前記他方端が測定ユニット2の筐体(ハウジング)の外部へ突き出ている。
受光角規制筒221の前記他方端における測定開口221Aから入射した光は、Vλフィルタ222を介してSPD223で受光され、SPD223で光電変換され、処理回路224でIV変換およびアナログ−ディジタル変換(AD変換)され、蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光の強度に応じたディジタル信号となって制御部22へ出力される。ここで、Vλフィルタ222を介してSPD223に入射される光は、図5に示すように、受光角規制筒221の測定開口221Aによって規制され、SPD223が測定対象の前記測定域を見込む角度A1が一定となり、前記測定対象の前記測定域が前記角度をカバーする限りその実際の大きさにSPD223の出力が依存しなくなる。
なお、受光部21は、図7に示すように、受光角をさらに規制する対物レンズ225を、Vλフィルタ222の上流側となる前記他方端にさらに配設するように構成されてもよい。このような構成の受光部21では、図7に示す受光角A2と測定域MA2を、図5に示す受光角A1と測定域MA1よりも小さくすることができる。
IF部24は、収集処理ユニット3とケーブルCB1で接続され、制御部22の制御に従って、収集処理ユニット3との間でケーブルCB1を介してデータの入出力を行うインタフェース回路である。
記憶部23は、データやプログラムを記憶する例えばROM(Read Only Memory)およびEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性の記憶素子を備えるとともに、制御部22が実行する制御プログラム等の実行中における各データを一時的に記憶するいわゆるワーキングメモリとなる例えば揮発性の記憶素子であるRAM(Random Access Memory)を備えて構成される。記憶部23は、機能的に、校正係数を記憶する校正係数記憶部231を備えている。校正係数は、少なくとも蓄光標識MK等のランベルト光源とみなせる一様な面光源について測定値を輝度に変換する係数であり、測定ユニット2を基準光源で予め感度校正して求めた数値である。
制御部22は、例えば、マイクロプロセッサおよびその周辺回路等を備えて構成され、制御プログラムに従い記憶部23およびIF部24を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって測定ユニット2全体の制御を司るものである。
このような構成の測定ユニット2は、収集処理ユニット3からケーブルCB1を介して給電され、収集処理ユニット3からケーブルCB1を介して操作指示を受け付けると、制御部22によって、受光部21に、蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光の強度を測定させるとともに、IF部24に、受光部21で測定された前記りん光の強度および校正係数記憶部231に記憶されている校正係数をケーブルCB1を介して収集処理ユニット3へ出力させる。
次に、読み取りユニット4について説明する。読取ユニット4は、遮光ユニット1に備えられている当該遮光ユニット1の識別子IDを読み取る装置である。本実施形態では、遮光ユニット1の識別子IDは、上述したように、ICタグのRFタグ112A、112Bに備えられているので、読取ユニット4は、RFIDシステムのリーダあるいはリーダライタである。読取ユニット4は、ケーブルCB2で収集処理ユニット3と接続されており、遮光ユニット1から読み取った識別子IDをケーブルCB2を介して収集処理ユニット3へ出力する。
次に、収集処理ユニット3について説明する。図8は、実施形態の残留輝度測定システムにおける収集処理ユニットの構成を示す図である。
収集処理ユニット3は、遮光ユニット1による遮光時間を管理し、所定の第1時間経過後に測定ユニット2によって測定された蓄光標識MKの前記測定域からのりん光の強度の測定結果を収集し、そして、この収集した測定結果に基づいて蓄光標識MKの前記測定域の前記りん光による残留輝度を求めるものである。収集処理ユニット3は、例えば、図8に示すように、演算制御部31と、記憶部32と、操作入力部33と、提示部34と、測定ユニット用インタフェース部(測定ユニット用IF部)35と、読取ユニット用インタフェース部(読取ユニット用IF部)36とを備えて構成される。
操作入力部33は、例えば、起動等を指示するコマンドや蓄光標識の情報等のデータを入力するための装置であり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネル、キーボードおよびマウス等である。提示部34は、制御部31の制御に従って、蓄光標識MKの配置位置、当該蓄光標識MKに対応する後述の計時部311によって計時されている経過時間、当該蓄光標識MKに対応する読取ユニット4によって読み取られ受け取った識別子IDおよび当該蓄光標識MKの残留輝度等を提示する装置である。提示部34は、例えば、CRTディスプレイ、LCD(液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
測定ユニット用IF部35は、測定ユニット2とケーブルCB1で接続され、制御部31の制御に従って、測定ユニット2との間でケーブルCB1を介してデータの入出力を行うインタフェース回路である。読取ユニット用IF部36は、読取ユニット4とケーブルCB2で接続され、制御部31の制御に従って、読取ユニット4との間でケーブルCB2を介してデータの入出力を行うインタフェース回路である。
記憶部32は、データやプログラムを記憶する例えばROMおよびEEPROM等の不揮発性の記憶素子を備えるとともに、制御部31が実行する残留輝度演算プログラムや制御プログラム等の実行中における各データを一時的に記憶するいわゆるワーキングメモリとなる例えば揮発性の記憶素子であるRAMを備えて構成される。記憶部32は、機能的に、位置データを記憶する位置データ記憶部321を備えている。位置データは、蓄光標識MKの配置位置を示すデータであり、例えば、「ホーム1号階段付近」等のテキストデータであってよく、また例えば、構造物の見取り図や設計平面図等に蓄光標識MKの配置位置が所定の符号で表示された画像データ(配置図データ)であってもよい。
演算制御部31は、例えば、マイクロプロセッサおよびその周辺回路等を備えて構成され、制御プログラムに従い記憶部32、操作入力部33、提示部34、測定ユニット用IF部35および読取ユニット用IF部36を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって収集処理ユニット3全体の制御を司るものである。演算制御部31は、残留輝度演算プログラムの実行により、機能的に、計時部311、迷光補正値演算部312および残留輝度演算部313を備える。
計時部311は、遮光ユニット1による蓄光標識MKの遮光開始からの計時を行うものである。計時部311は、ハードウェアによって構成されてもよいが、本実施形態では、任意の個数の遮光ユニット1に対応するべく、ソフトウェアによって構成されている。すなわち、計時部311は、遮光ユニット1による蓄光標識MKの遮光開始から行われる前記計時を遮光ユニット1の識別子IDによって複数の遮光ユニット1ごとに管理するものである。より具体的には、計時部311は、遮光ユニット1の識別子IDに対応付けて前記計時を行うことによって、前記計時を複数の遮光ユニット1ごとに並行的に行う。そして、演算制御部31は、遮光ユニット1(遮光ユニット1の識別子ID)ごとに、遮光開始後の経過時間が所定の第1時間に達したか否かを判断し、この判断の結果、計時部311によって計時された経過時間が所定の第1時間に達した場合には、前記所定の第1時間が経過した旨を提示部34に表示し、外部に提示する。
迷光補正値演算部312は、互いに異なるタイミングで測定ユニット2によってそれぞれ測定された蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光の強度の複数の測定結果に基づいて、前記各測定結果に含まれる、前記遮光域の外部からの迷光の強度を迷光補正値として求めるものである。
残留輝度演算部313は、測定ユニット2によって測定された蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光強度の測定結果に基づいて前記測定域の前記りん光による残留輝度を求めるものである。前記所定の第1時間を、残留輝度を求めたい遮光開始からの経過時間とし、前記所定の第1時間が経過後直ちに測定ユニット2によって測定することによって、直接的に残留輝度を求めてもよいが、そうしたタイミングで測定することは困難なので、本実施形態では、残留輝度演算部313は、互いに異なるタイミングで測定ユニット2によってそれぞれ測定された蓄光標識MKの前記測定域から放射されたりん光強度の複数の測定結果に基づいて、遮光開始から所定の第2時間の経過後における蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光による残留輝度を求めるものである。より具体的には、残留輝度演算部313は、互いに異なるタイミングで測定ユニット2によってそれぞれ測定された蓄光標識MKの前記測定域から放射されたりん光の強度の複数の測定結果を用いて、経過時間に対するりん光強度を表す関数式を求め、この求めた関数式を用いて、求めた遮光開始から所定の第2時間の経過後におけるりん光強度を、測定ユニット2からケーブルCB1を介して収集した校正係数を用いて、蓄光標識MKの前記測定域のりん光による残留輝度に変換するものである。そして、さらに、本実施形態では、精度を向上させるべく迷光による誤差を低減するために、残留輝度演算部313は、上述の前記残留輝度を求める前記各測定結果に代え、迷光補正値演算部312で求められた迷光補正値で補正された各測定結果を用いるものである。
次に、本実施形態の残留輝度測定システムSの動作について説明する。図9は、実施形態の残留輝度測定システムによる複数の蓄光標識の測定手順を説明するための図である。図10は、実施形態の残留輝度測定システムの収集処理ユニットにおける蓄光標識の配置位置、識別子、経過時間および残留輝度の第1態様の提示形式を説明するための図である。図11は、実施形態の残留輝度測定システムの収集処理ユニットにおける蓄光標識の配置位置、識別子、経過時間および残留輝度の第2態様の提示形式を説明するための図である。図12は、リニア表示による代表的な蓄光材料における残留輝度の減衰特性を示すグラフである。図12の横軸は、分単位で表す遮光後の経過時間であり、その縦軸は、相対輝度であり、各軸は、リニアスケールである。図13は、両対数表示による代表的な蓄光材料における残留輝度の減衰特性を示すグラフである。図11の横軸は、分(Min)単位で示す時間であり、その縦軸は、Cd/m2単位で示す輝度であり、各軸は、対数スケールである。すなわち、図13は、両対数表示である。
まず、複数N個の蓄光標識MK−k(k=1〜Nの整数)のそれぞれを測定すべく、複数N個の遮光ユニット1A(1B)が用意される。次に、ユーザによって残留輝度測定システムSが起動される。残留輝度測定システムSの収集処理ユニット3の演算制御部31は、記憶部32の位置データ記憶部321に格納されている位置データを取り出し、位置データを提示部34に提示する。これによって提示部34には、蓄光標識MKの配置位置が表示され、提示される。
この蓄光標識MKの配置位置は、例えば、図10に示すように、テーブル形式で表示されてよい。この図10に示す蓄光標識情報テーブル60は、蓄光標識MKの配置位置を説明する文章を表示する配置位置フィールド601と、配置位置フィールド601に示される蓄光標識MKを遮光するべく当該蓄光標識MKに装着される遮光ユニット1A(1B)の識別子IDを表示する識別子フィールド602と、配置位置フィールド601に示される蓄光標識MKを遮光するべく当該蓄光標識MKに装着される遮光ユニット1A(1B)による遮光経過時間を表示する経過時間フィールド603と最終的に求められる残留輝度を表示する残留輝度フィールド604とを備え、蓄光標識MKごとにレコードを持つ。なお、図10では、各フィールド601、602、603に、データが表示されているが、この起動の段階では、配置位置フィールド601にのみそのデータ内容が表示され、識別子フィールド602、経過時間フィールド603および残留輝度フィールド604には、そのデータ内容は、表示されていない。
また、この蓄光標識MKの配置位置は、例えば、図11に示すように、グラフィック形式で表示されてよい。この図11に示す蓄光標識情報図70は、蓄光標識MKの配置位置を所定の符号、例えば○701で表示した構造物の見取り図や設計平面図等であり、蓄光標識MKの配置図である。蓄光標識MKの配置位置を示す所定の符号(配置マーカ、図11に示す例では○)701の近傍には、この配置マーカ○701の蓄光標識MKに装着される遮光ユニット1A(1B)の識別子IDを表示する識別子表示欄(識別子表示ウィンドウ)702が設けられているとともに、この配置マーカ○701の蓄光標識MKに装着される遮光ユニット1A(1B)による遮光経過時間を表示する経過時間表示欄(経過時間表示ウィンドウ)703と最終的に求められる残留輝度を表示する残留輝度表示欄704とが設けられている。なお、図11には、識別子表示欄702および経過時間表示欄703には、データが表示されているが、残留輝度表示欄704にはデータが表示されていない。また、この起動の段階では、配置マーカ○701のみ表示され、識別子表示欄702および経過時間表示欄703にも、そのデータ内容は、表示されていない。
次に、遮光ユニット1A(1B)が蓄光標識MK−kに装着される。例えば、ユーザは、提示部34に提示された蓄光標識MK−kの配置位置を参照しながら、遮光ユニット1を蓄光標識MK−kに装着する。この装着は、例えば、図1および図9に示すように、遮光ユニット1A(1B)の遮光本体部111A(111B)に固定手段としての粘着テープTPによって行われる。蓄光標識MK−kに遮光ユニット1A(1B)を取り付ける場合に、ユーザは、遮光ユニット1A(1B)の貫通開口112A(112B)を視認することができ、この貫通開口112A(112B)が蓄光標識MK−kの測定域に配置されるように、遮光ユニット1A(1B)を位置決めすることができる。
次に、遮光ユニット1A(1B)が蓄光標識MK−kに装着されると、読取ユニット4が遮光ユニット1A(1B)に近づけられ、遮光ユニット1A(1B)を装着した蓄光標識MK−kを特定するべく、ユーザによって操作入力部33が操作される。例えば、図10に示す蓄光標識情報テーブル60の場合では、遮光ユニット1A(1B)を装着した蓄光標識MK−kに対応する配置位置フィールド601(または識別子フィールド602)がユーザによって操作入力部33で操作選択される。より具体的には、カーソルが前記配置位置フィールド601(または前記識別子フィールド602)へ移動され、前記配置位置フィールド601(または前記識別子フィールド602)に重ねられ、キーボードのリターンキーやマウスのマウスボタンが操作入力される。また例えば、図11に示す蓄光標識情報図70の場合では、遮光ユニット1A(1B)を装着した蓄光標識MK−kに対応する配置マーカ○701がユーザによって操作入力部33で操作選択される。より具体的には、カーソルが前記配置マーカ○701へ移動され、前記配置マーカ○701に重ねられ、キーボードのリターンキーやマウスのマウスボタンが操作入力される。読取ユニット4は、遮光ユニット1A(1B)のRFタグ112A(112B)から当該遮光ユニット1A(1B)の識別子IDを読み取り、この読み取った識別子IDをケーブルCB2を介して収集処理ユニット3へ出力する。
前記操作入力を受け付けると、収集処理ユニット3の演算制御部31は、読取ユニット4からケーブルCB2および読取ユニット用IF部36を介して入力された識別子IDを、前記選択された蓄光標識MK−kの配置位置と対応付け、この対応関係を記憶部32に記憶する。この対応付けが行われると、提示部34には、この対応関係に従って識別子IDが表示され、提示される。例えば、図10に示す蓄光標識情報テーブル60の場合では、前記選択された配置位置フィールド601のレコードにおける識別子フィールド602に、読取ユニット4から入力された識別子IDが表示される。また例えば、図11に示す蓄光標識情報図70の場合では、前記選択された配置マーカ○701に対応する識別子表示欄702に、読取ユニット4から入力された識別子IDが表示される。
次に、遮光ユニット1A(1B)の蓋部12A(12B)がユーザによって閉じられ、遮光が開始される。ユーザは、この遮光ユニット1A(1B)の蓋部12A(12B)を閉状態とすると、直ちに、操作入力部33から遮光開始を操作入力する。例えば、図10に示す蓄光標識情報テーブル60の場合では、遮光を開始した遮光ユニット1A(1B)を装着した蓄光標識MK−kに対応する前記配置位置フィールド601のレコードがユーザによって操作入力部33で操作される。より具体的には、前記配置位置フィールド601のレコードが選択され、識別子フィールド602に識別子IDが表示された状態で、キーボードのリターンキーやマウスのマウスボタンが操作入力される。また例えば、図11に示す蓄光標識情報図70の場合では、遮光を開始した遮光ユニット1A(1B)を装着した蓄光標識MK−kに対応する配置マーカ○701がユーザによって操作入力部33で操作される。より具体的には、前記配置マーカ○701が選択され、識別子表示欄702に識別子IDが表示された状態で、キーボードのリターンキーやマウスのマウスボタンが操作入力される。
前記遮光開始を受け付けると、演算制御部31の計時部311は、前記遮光開始を受け付けた遮光ユニット1A(1B)を装着した蓄光標識MK−kに対応する識別子IDと遮光開始時刻(より具体的には前記遮光開始を受け付けた時刻)とを対応付けて計時を開始する。この計時が開始されると、提示部34には、計時部311によって計時された経過時間が表示され、提示される。例えば、図10に示す蓄光標識情報テーブル60の場合では、前記選択された配置位置フィールド601のレコードの経過時間フィールド603に、計時部311によって計時された経過時間が表示される。また例えば、図11に示す蓄光標識情報図70の場合では、前記選択された配置マーカ○701に対応する経過時間表示欄703に、計時部311によって計時された経過時間が表示される。
次に、演算制御部31は、遮光ユニット1(遮光ユニット1の識別子ID)ごとに、遮光開始後の経過時間が所定の第1時間に達したか否かを判断し、この判断の結果、計時部311によって計時された経過時間が所定の第1時間に達した場合には、前記所定の第1時間が経過した旨を提示部34に表示し、外部に提示する。例えば、この所定の第1時間が経過した旨の表示は、図10に示す蓄光標識情報テーブル60の場合では、経過時間が前記所定の第1時間に達した経過時間フィールド603またその経過時間表示を点滅させることによって行われ、図11に示す蓄光標識情報図70の場合では、経過時間が前記所定の第1時間に達した経過時間表示欄703の経過時間表示またはこの経過時間表示欄703に対応する配置マーカ○701を点滅させることによって行われる。なお、計時部311は、前記所定の第1時間が経過した旨が提示部34に表示された後も、計時を続行する。
蓄光材料は、遮光後も、りん光を放射するが、そのりん光の輝度は、図12に示すように、遮光後5分間は、急激に減衰し、その後は、比較的緩やかに減衰する。すなわち、遮光後5分間は、単位時間当たりに減衰する輝度変化率は、比較的大きく変化し、10分経過後では、前記遮光初期に較べてその変化が小さい。したがって、前記所定の第1時間は、少なくとも遮光から10分を越えた経過時間である。そして、後述するように、前記所定の第1時間経過後に測定ユニット2によって蓄光標識MK−kの前記測定域におけるりん光が測定され、前記所定の第2時間経過後の残留輝度が求められることから、前記所定の第1時間は、残留輝度を求めたい前記第2時間近くであることが好ましい。また、例えば、測定対象が蓄光標識MKであることから、前記日本工業規格Z9107に従って遮光から20分近くに設定されることがより好ましい。この遮光後20分前後では、図12に示すように、特に、単位時間当たりに減衰する輝度変化率が略一定で安定的であり、この観点からも好ましい。
次に、ユーザは、前記所定の第1時間が経過した旨の表示を参照し、これに対応する遮光ユニット1A(1B)の貫通開口111A(111B)に、遮光を実質的に継続しつつ測定ユニット2を装着する。より具体的には、ユーザは、前記所定の第1時間が経過した旨の表示を参照し、これに対応する遮光ユニット1A(1B)の蓋部12A(12B)を開いて開状態とした後、すみやかに、測定ユニット2の受光角規制筒221をこの遮光ユニット1A(1B)の貫通開口111A(111B)に嵌め込むことによって、遮光を実質的に継続させるように、測定ユニット2を遮光ユニット1A(1B)の貫通開口111A(111B)に装着し、測定ユニット2によって測定する蓄光標識MK−kを特定するべく、収集処理ユニット3の操作入力部33を操作し、そして、操作入力部33から測定開始を指示し、入力する。このように遮光ユニット1を蓄光標識MKに装着後は、前記所定の第1時間まで放置可能であるので、本実施形態の残留輝度測定システムSは、ユーザの負担を軽減することができる。
この測定開始の指示を受け付けると、収集処理ユニット3の演算制御部31は、測定ユニット用IF部35およびケーブルCB1を介して測定ユニット2へ測定開始を指示する。この測定開始の指示を受け付けると、測定ユニット2は、蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光の強度を測定する。この測定は、所定の時間間隔(例えば約30秒間隔)で複数回(例えば3回)実行される。測定ユニット2は、蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光の強度を測定すると、この測定結果を校正係数とともに、IF部24およびケーブルCB1を介して収集処理ユニット3へ出力する。この測定結果および校正係数を受け付けると、収集処理ユニット3は、前記特定された蓄光標識MK−kに対応する遮光ユニット1の識別子IDに対応付けて測定結果、校正係数および受付時刻を記憶部32に記憶する。そして、収集処理ユニット3の演算制御部31は、この蓄光標識MK−kの残留輝度を求める。
より具体的には、まず、迷光補正値演算部312は、互いに異なるタイミング(上述の例では約30秒間隔)で測定ユニット2によってそれぞれ測定された蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光の強度の複数の測定結果に基づいて、前記各測定結果に含まれる、前記遮光域の外部からの迷光の強度を迷光補正値として求める。次に、残留輝度演算部313は、迷光補正値演算部312によって求められた迷光補正値で、互いに異なるタイミングで測定ユニット2によってそれぞれ測定された蓄光標識MKの前記測定域から放射されたりん光の強度の複数の測定結果を補正し、この補正後の前記各測定結果を用いて、経過時間に対するりん光強度を表す関数式を求め、この求めた関数式を用いて求めた遮光開始から所定の第2時間の経過後におけるりん光強度を、測定ユニット2からケーブルCB1を介して収集した校正係数を用いて、蓄光標識MKの前記測定域から放射されたりん光による残留輝度に変換する。そして、演算制御部31は、残留輝度演算部313で求めた所定の第2時間経過後の残留輝度を提示部34へ出力し、提示部34に表示させ、提示させる。
より具体的には、例えば、次のように残留輝度が求められる。蓄光標識MKに用いられる比較的高性能な蓄光材料の放射光強度(りん光強度)ILの減衰特性は、遮光経過時間をTとすると、一般的に、図13に示すように、Log(IL)がLog(T)に対し略直線的であり、式1によって直線近似することができる。
Log(IL)=γ×Log(T)+b ・・・(1)
ここで、γは、前記直線近似した減衰特性の傾き(減衰係数)であり、bは、前記直線近似した減衰特性の切片(測定ユニット1による測定開始時の測定値)である。
この式1は、b=Log(B)とすると、式2によって表される。なお、傾きγおよび切片b(=Log(B))は、蓄光標識MKに固有な定数である。
IL=B×Tγ ・・・(2)
そして、実測される放射光強度Mには、迷光成分(迷光による輝度)ISが含まれ(M=IL+IS)、式2は、受光強度Mについて式3のように表される。
M−IS=B×Tγ ・・・(3)
ここで、遮光時間として複数の時間、例えば、前記所定の第1時間T1(=18分)、T2=1.025×T1およびT3=1.0252×T1とし(これは、上述の遮光後18分後、その27秒後およびさらにその28秒後にそれぞれ対応する)、その放射光強度の測定値をM1、M2およびM3とすると、式3より、式4(式4−1〜式4−3)が得られる。
M1−IS=B×T1γ ・・・(4−1)
M2−IS=B×T2γ=B×(1.025×T1)γ ・・・(4−2)
M3−IS=B×T3γ=B×(1.0252×T1)γ ・・・(4−3)
ここで、(式4−2)/(式4−1)および(式4−3)/(式4−2)をそれぞれ求めると、式5(式5−1および式5−2)が得られる。
(M2−IS)/(M1−IS)=1.025γ ・・・(5−1)
(M3−IS)/(M2−IS)=1.025γ ・・・(5−2)
したがって、式5より、式6が得られ、これを迷光強度ISについて解くと、式7が得られる。
(M2−IS)/(M1−IS)=(M3−IS)/(M2−IS) ・・・(6)
IS=(M2×M2−M1×M3)/(2×M2−M1−M3) ・・・(7)
この迷光補正値ISを式5−1に代入すると、γを与える式8が得られ、ISとγを式4−1に代入すると、Bを与える式9が得られ、得られたIS、γ、Bによって式3が確定される。
γ=Log((M2−IS)/(M1−IS))/Log(1.05) ・・・(8)
B=(M1−IS)/T1γ ・・・(9)
よって、迷光補正値演算部312は、式7により迷光成分ISを求め、迷光補正値ISとする。残留輝度演算部313は、確定した式2に前記所定の第2時間(T=20分)を代入して、前記第2時間経過後の放射光強度を求め、求められた第2時間経過後の放射光強度を残留輝度に変換すればよい。
このように本実施形態における残留輝度測定システムSでは、遮光から少なくとも10分、好ましくは所定の第2時間近くの所定の第1時間以後に測定ユニット2によって測定された蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光の強度の複数の測定結果に基づいて前記所定の第2時間経過後の前記測定域からの前記りん光による残留輝度が求められる。したがって、このような構成の残留輝度測定システムSは、単位時間当たりに減衰する輝度変化率が遮光初期に較べてはるかに小さくなった後に、蓄光標識MKの前記測定域から放射されるりん光の強度に基づいて残留輝度を推定するので、蓄光標識MKの残留輝度をより高精度に求めることができる。
また、本実施形態の残留輝度測定システムSでは、互いに異なるタイミングで測定ユニット2によってそれぞれ測定された前記測定域からのりん光の強度の複数の測定結果に基づいて前記残留輝度が求められる。このため、本実施形態の残留輝度測定システムSは、より高精度に測定するべく、前記所定の第1時間を必ずしも残留輝度を求めたい遮光後の経過時間(第2時間)に設定する必要がなく、前記関数式2の時間Tを残留輝度を求めたい遮光後の経過時間に設定することによって、所望の遮光後の経過時間における残留輝度を求めることができる。
また、本実施形態の残留輝度測定システムSでは、迷光補正値演算部312によって、前記遮光域の外部からの迷光における光強度が迷光補正値ISとして求められ、残留輝度演算部313によって、迷光補正値演算部312で求められた迷光補正値ISで補正された前記各測定結果に基づいて前記残留輝度が求められる。このため、このような構成の残留輝度測定システムSは、迷光によるノイズを迷光補正することによって、求められた残留輝度に含まれる迷光による誤差を低減することができ、より精度よく残留輝度を測定することができる。
また、本実施形態の残留輝度測定システムSでは、遮光ユニット1が複数有り、計時部311による計時が前記複数の遮光ユニット1ごとに管理される。このため、複数の蓄光標識MKにおける残留輝度を測定する場合に、これら複数の蓄光標識MKのそれぞれに遮光ユニット1をセットすることができ、これら複数の蓄光標識MKに対し、並列的に残留輝度を測定することが可能となる。したがって、本実施形態の残留輝度測定システムSは、蓄光標識MK1個あたりの実質的な測定時間を短縮することが可能となる。例えば、10個の遮光ユニット1を用意し、100個の蓄光標識MKの20分後の残留輝度を10個ずつほぼ同時に並列的に遮光して測定する場合では、蓄光標識MKの1個あたりの実質的な測定時間は、2分程度となる。そして、このために複数必要な遮光ユニット1は、測定手段を備えないので、比較的低コストで実現することができ、本実施形態の残留輝度測定システムSを比較的低コストで実現することが可能である。しかもRFタグ112A(112B)は、パッシブ方式のICタグなので、遮光ユニット1は、電池等の電源も備える必要がなく、堅牢であり、メンテナンスコストを含むコストの低減化が可能である。さらに、遮光ユニット1は、上述したように、蓄光標識MKに装着後、前記所定の第1時間を経過するまで、放置され、損傷等の可能性があるので、遮光ユニット1の堅牢化、低コスト化は、有利である。
また、本実施形態の残留輝度測定システムSでは、遮光ユニット1の識別子IDによって遮光ユニット1およびその遮光経過時間を管理することができる。
また、本実施形態の残留輝度測定システムSでは、識別子IDが遮光ユニット1から読取ユニット4で読み取られて収集処理ユニット3に取り込まれる。このため、本実施形態の残留輝度測定システムSは、識別子IDを収集処理ユニット3に直接入力する手間が省け、また、その入力ミスも防止される。
また、本実施形態の残留輝度測定システムSでは、蓄光標識MKの配置位置と、その計時部311の計時による経過時間と、当該蓄光標識MKに装着された遮光ユニット1の識別子IDとが提示部34に提示される。このため、本実施形態の残留輝度測定システムSは、蓄光標識MKごとに、その配置位置とその経過時間とを提示することができ、ユーザは、この提示を参照することによって、蓄光標識MKごとに、その配置位置とその経過時間とを容易に認識することができ、作業効率の向上が可能となる。
また、本実施形態の残留輝度測定システムSは、図11に示すように蓄光標識MKの配置位置を画像によって表示し、提示することもでき、この場合では、ユーザは、この画像表示を参照することによって蓄光標識MKの配置位置を容易に認識することができ、作業効率のさらなる向上が可能となる。
なお、上述の実施形態では、遮光ユニット1A、1Bの識別子IDは、RFIDシステムのRFタグ112A、112Bに記憶され、RFIDシステムのリーダである読取ユニット4によって読み込まれたが、バーコードによって表示され、このバーコードが遮光ユニット1A、1Bの遮光本体部111A、111Bに貼り付けられてもよい。この場合には、読取ユニット4は、バーコードリーダとされる。
また、上述の実施形態の残留輝度測定システムSは、収集処理ユニット3が、測定ユニット2から収集した校正係数を用いて、測定ユニット2から収集した蓄光標識MKの前記測定域からのりん光の強度を輝度に変換するように構成されたが、測定ユニット2の制御部22が、校正係数記憶部231に記憶されている校正係数を用いて、受光部21で測定した蓄光標識MKの前記測定域からのりん光の強度を輝度に変換し、輝度を収集処理ユニット3へ出力するように構成されてもよい。
また、上述の実施形態の残留輝度測定システムSは、収集処理ユニット3が計時部と提示部とを備えているが、遮光ユニット1が収集処理ユニット3に代わって、計時部と、前記計時部によって計時された経過時間が所定の第1時間に達した場合にその旨を外部に提示する提示部とを備えてもよい。このように構成することによって、ユーザは、蓄光標識MKに装着された遮光ユニット1から第1時間の経過を認識することができ、読取ユニット4と読取操作が不要になるので、残留輝度の測定が容易になる。さらに、測定ユニット2が収集処理ユニット3に代わって迷光補正値演算部と残留輝度測定部と提示部とを備えることで、収集処理ユニット3を省略することができ、携行するユニット点数が低減され、残留輝度測定システムSの携行が容易となる。
また、上述の実施形態の残留輝度測定システムSは、求めた残量輝度を提示部34に提示したが、この求めた残留輝度を所定の基準によって評価し、この評価結果も提示部34に提示するように構成されてもよい。例えば、上述した日本工業規格Z9107の輝度24mcd/m2が基準値(閾値)とされ、この求めた残留輝度がこの基準値以上である場合には、適合とされ、例えば、図11に示す蓄光標識情報図70の配置マーカ○701が青色や緑色で表示され、そして、この求めた残留輝度がこの基準値未満である場合には、不適合とされ、例えば、図11に示す蓄光標識情報図70の配置マーカ○701が赤色や黄色で表示される。
また、上述の実施形態では、T2/T1=T3/T2=1.025としたが、この比は、1.025に限定されず、任意の値であってよく、この場合においても、式7、式8および式9は、同様に、導出可能である。
また、上述の実施形態では、T2/T1=T3/T2=1.025としたが、これらの比は、必ずしも等しい必要はない。この比が等しくない場合でも、式7、式8および式9は、同様に、導出可能である。
また、上述の実施形態では、式8で減衰係数γを求めたが、この減衰係数γを、所与の一定値(例えばγ=−1)とし、γ=−1とした式3に、互いに異なる2つの遮光時間と各遮光時間での放射光強度とを代入した2つの式から定数Bおよび迷光補正値ISを求めるように構成されてもよい。このように構成することによって、残留輝度測定システムSは、2つの第1時間経過後での前記測定域からの放射光の強度に基づいて定数Bおよび迷光補正値ISを求めることができ、より簡単に残留輝度を求めることができる。
また、同様に、遮光が充分である場合には、迷光補正値Isを0として、Is=0とした式3に、互いに異なる2つの遮光時間と各遮光時間での放射光強度とを代入した2つの式から定数Bおよび減衰係数γを求めるように構成されてもよい。このように構成することによっても、残留輝度測定システムSは、2つの第1時間経過後での前記測定域からの放射光の強度に基づいて定数Bおよび減衰係数γを求めることができ、より簡単に残留輝度を求めることができる。さらに、この場合に、減衰係数γを、所与の一定値(例えばγ=−1)とし、γ=0およびIs=0とした式3に、1つの遮光時間とその遮光時間での放射光強度を代入して定数Bを求めるように構成されてもよい。
また、上述の実施形態では、互いに異なる3つの遮光時間から式3を同定したが、互いに異なる4つ以上の遮光時間と各遮光時間での放射光強度とから例えば最小二乗法等を用いることによって式3を同定してもよい。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。