JP5352808B2 - 非平衡状態で合成される中空状炭酸カルシウム粒子及びその合成方法 - Google Patents
非平衡状態で合成される中空状炭酸カルシウム粒子及びその合成方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5352808B2 JP5352808B2 JP2006301117A JP2006301117A JP5352808B2 JP 5352808 B2 JP5352808 B2 JP 5352808B2 JP 2006301117 A JP2006301117 A JP 2006301117A JP 2006301117 A JP2006301117 A JP 2006301117A JP 5352808 B2 JP5352808 B2 JP 5352808B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- calcium carbonate
- carbon dioxide
- particles
- carbonate particles
- calcium
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)
Description
日本粉体工業技術協会編、「造粒ハンドブック」、オーム社、1991年3月
新規材料として有利に用いることが出来る中空構造を有する炭酸カルシウム粒子を提供することにあり、また、そのような中空構造を有する炭酸カルシウム粒子を簡便且つ低環境負荷な合成の操作条件により生産性および収率を向上した合成方法を提供することにある。
請求項2記載の発明の中空構造を有する炭酸カルシウム及びその合成方法は、請求項1記載の発明の中空構造を有する炭酸カルシウム及びその合成方法において、溶液、pH、温度及び炭酸ガス流量等から選ばれた少なくとも1種以上の操作条件を適宜設定及び制御することにより、中空構造を有する炭酸カルシウム粒子のサイズ及び/又は形態等を制御可能であることを特徴とする。
炭酸ガス流量および通気時間、原料濃度、反応温度、pH等といった操作条件を変化させることで、非平衡状態を制御することにより、合成される炭酸カルシウム粒子の形態・形状を制御すること、とりわけ、比較的高流量での炭酸ガス通気且つ高い初期pH条件において、高い割合で中空状の炭酸カルシウム粒子が合成可能であり、
請求項3記載の発明、すなわち、粒径が1〜10μm程度で、ナノサイズのバテライト微結晶で構成される殻を有する、リング状、略球状及び球状である中空構造を有する炭酸カルシウムを得ることが出来る。
また、特許文献5の方法に比べ、炭酸ガス微気泡発生の為の特殊な装置およびそれに係る操作無しに、中空状の炭酸カルシウム粒子を合成可能になり、合成プロセスの更なる簡便化を図ることが可能である。これにより中空状粒子合成の生産性および収率が向上出来るのである。
そして、適宜攪拌されたこの原料溶液に、炭酸ガスをボンベから流量計を介し一定流量で導入する。このとき、炭酸ガスは、気泡発生装置などを用いて微気泡にする必要はなく、各種材料のチューブから直接溶液へ吹き込む。炭酸ガスの導入流量は、原料溶液の容量によって異なってしかるべきであるが、例えば、1Lの原料溶液に対しては、炭酸ガス流量3 L/min程度と、比較的高流量である。
炭酸ガス導入を暫くの間継続すると、やがて反応溶液は目視においても白濁が認められるようになる。これは炭酸カルシウム粒子が生成したことを意味する。この時、溶液内で起こり得る一連の化学反応を以下に示す。
原料溶液に吹き込まれた炭酸ガスは一部溶存し(式1)、これは水と反応してH2CO3となり、これの解離により(式2)に示した通りの炭酸イオン平衡を右側にシフトさせ、結果として炭酸イオン(CO3 2-)の濃度が増加する。この炭酸イオンとカルシウムイオン(塩化カルシウムから解離)との反応により炭酸カルシウムが生成する(式3)。このとき、反応(式1)の炭酸ガスの溶存による炭酸イオンの増加の効果、および反応(式3)の炭酸カルシウム生成による炭酸イオンの消費の効果のバランスにより、この系全体としては一種の化学非平衡状態となる。
この事の証明として、反応溶液を光学フローセルに循環させることで、反応溶液の波長850nmの透過光強度(濁度)を経時的に計測した。反応溶液の温度が17℃の場合、炭酸ガス導入開始から430秒において透過光強度の急激な減少、すなわち炭酸カルシウムの生成が認められた。これに対し、反応温度が28℃の場合には、110秒で炭酸カルシウムの生成が認められた。
この事実は、導入される炭酸ガスが反応(式1)の溶存過程およびそれに伴う反応(式2)の炭酸イオン系平衡を右側にシフトさせる事による炭酸イオンの増加のみに寄与し、その結果として十分に炭酸イオンの濃度が上昇したところで初めて反応(式3)の炭酸カルシウム生成反応が進行することを意味する。また、反応溶液の温度により炭酸カルシウム生成開始までに要する炭酸ガス通気時間が異なった事実は、反応(式1)〜(式3)に示した各種反応の平衡定数の温度依存性によるものであり、この系全体が(式1)〜(式3)に示した一連の平衡反応の非平衡状態となっていることの傍証となり得る。
さて、この非平衡状態において合成される炭酸カルシウム粒子のサイズ・形態・結晶相等は、各種実験操作条件によって異なる。
たとえば、原料塩化カルシウム水溶液250mLに対して炭酸ガスを2mL/minという低流量で2時間通気させることによって生成した炭酸カルシウムは、鱗片形状の粒子が大多数であった。これに対して、例えば、1Lの原料溶液に対して炭酸ガス流量3 L/minなどと高流量にした場合、反応温度28℃に条件では数分にて溶液の白濁が認められ、得られた炭酸カルシウム粒子には、中空状のものが多く認められた。
この条件で、合成された炭酸カルシウム粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)画像の数例を図1〜3に示す。これらの粒子は、原料塩化カルシウム溶液の初期pHが10.30(図1)、10.00(図2)、9.55(図3)であり、これが0.15低下するまで炭酸ガスを通気することによって得られたものである。これらの図より、おおよそ粒径1μmの中空状の炭酸カルシウム粒子が形成されているのが分かる。ここでSEM画像により内部空隙が見受けられるということは、合成された中空粒子が実験操作上のいずれかの工程において破断された結果、乃至は中空構造の形成過程の状態であると考えられる。また、図1、2においてはチューブ状の中空粒子が多く、図3では略空状および球状の中空粒子が多く見受けられる。このことは、非平衡状態におけるpHを制御することで種々の形態を持つ中空炭酸カルシウム粒子を合成することが可能であることを示している。
なお、これらの炭酸ガスを高流量で通気した場合に得られた炭酸カルシウム粒子は、バテライト結晶相であったのに対し、前述の低流量通気の場合にはカルサイト結晶相も一部見受けられた。このことは非平衡状態の制御により得られる炭酸カルシウム粒子の結晶相を制御できる可能性を示している。
以上のように、本発明は、反応(式1)〜(式3)からなる化学非平衡状態を実験操作条件(炭酸ガス流量および通気時間、原料濃度、反応温度、pH等)を変化させることで制御することにより、合成される炭酸カルシウム粒子の形態・形状を制御すること、とりわけ、比較的高流量での炭酸ガス通気且つ高い初期pH条件において、高い割合で中空状の炭酸カルシウム粒子が合成可能であることを、骨子とするものである。
上記実施例において原料として、塩化カルシウム以外の水溶性の塩を用いることができる。例えば、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウムなどを用いることができる。
また、溶液pH、温度、炭酸ガス流量等の操作条件を適宜設定及び制御することにより、合成される中空状炭酸カルシウム粒子のサイズ・形態等を制御可能であり、上記実施例の原料である塩化カルシウム濃度を変化させ、pHを例えばpH8〜13、好ましくは10.30から9.40とすることが出来、また、反応温度は、17℃〜28℃の範囲の一定温度で行うことが出来る。 炭酸ガスの導入流量は、反応溶液1Lに対して3L/minのガス流量、もしくは、例えば、0.1 L/minから10 L/minのガス流量。また、この割合に類似したガス流量と反応溶液量の組み合わせを用いることが出来る。炭酸ガス導入チューブとして各種材質(金属、プラスチック等)を用いることが出来、その直径は例えば、数ミリから数センチである。
Claims (2)
- pHが8〜13、温度が17℃〜28℃の塩化カルシウム水溶液に、炭酸ガスを微気泡にすることなく、前記水溶液1Lに対して0.1L/min〜10L/minの流量にて直接的に導入することにより形成せしめられる炭酸イオン系非平衡条件下において合成する中空構造を有する炭酸カルシウムの合成方法。
- 粒径が1〜10μmで、ナノサイズのバテライト微結晶で構成される殻を有する、チューブ状、略球状または球状である請求項1記載の中空構造を有する炭酸カルシウムの合成方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006301117A JP5352808B2 (ja) | 2006-11-07 | 2006-11-07 | 非平衡状態で合成される中空状炭酸カルシウム粒子及びその合成方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006301117A JP5352808B2 (ja) | 2006-11-07 | 2006-11-07 | 非平衡状態で合成される中空状炭酸カルシウム粒子及びその合成方法 |
Publications (3)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008115053A JP2008115053A (ja) | 2008-05-22 |
JP2008115053A5 JP2008115053A5 (ja) | 2008-11-13 |
JP5352808B2 true JP5352808B2 (ja) | 2013-11-27 |
Family
ID=39501309
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2006301117A Active JP5352808B2 (ja) | 2006-11-07 | 2006-11-07 | 非平衡状態で合成される中空状炭酸カルシウム粒子及びその合成方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5352808B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008222533A (ja) * | 2007-03-15 | 2008-09-25 | Nagoya Institute Of Technology | 炭酸ガスバブリング法により形成した高純度のアラゴナイト組織を有する炭酸カルシウムの針状もしくは柱状粒子と其の製造方法 |
JP5967520B2 (ja) * | 2012-04-11 | 2016-08-10 | 国立大学法人 名古屋工業大学 | 炭酸カルシウム中空粒子およびその製造方法 |
TWI736397B (zh) * | 2020-08-20 | 2021-08-11 | 財團法人工業技術研究院 | 中空碳酸鈣微米球及其製備方法 |
CN115196661B (zh) * | 2022-07-13 | 2023-06-30 | 西安交通大学 | 一种金属氧化物或过氧化物掺杂的中空碳酸钙纳米球及制备方法和应用 |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS63103824A (ja) * | 1986-10-18 | 1988-05-09 | Kiyoshi Sugawara | バテライト系炭酸カルシウムの製造方法 |
JPH02153819A (ja) * | 1988-09-12 | 1990-06-13 | Sanyo Kokusaku Pulp Co Ltd | 中空・球状のバテライト型炭酸カルシウムの製造法及びその安定化法 |
JPH06102542B2 (ja) * | 1990-06-11 | 1994-12-14 | 矢橋工業株式会社 | 球状粒子炭酸カルシウムの製造方法 |
JP3340756B2 (ja) * | 1991-12-03 | 2002-11-05 | 丸尾カルシウム株式会社 | 形態制御された単分散バテライト型炭酸カルシウムの製造方法 |
JP4660745B2 (ja) * | 2004-03-29 | 2011-03-30 | 国立大学法人 名古屋工業大学 | 中空・球状炭酸カルシウム粒子及びその製造方法 |
-
2006
- 2006-11-07 JP JP2006301117A patent/JP5352808B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2008115053A (ja) | 2008-05-22 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Price et al. | Composition of calcium carbonate polymorphs precipitated using ultrasound | |
JP5352808B2 (ja) | 非平衡状態で合成される中空状炭酸カルシウム粒子及びその合成方法 | |
JP4660745B2 (ja) | 中空・球状炭酸カルシウム粒子及びその製造方法 | |
KR20070053337A (ko) | 세라믹입자군 및 그 제조방법 그리고 그 이용 | |
US10442696B2 (en) | Shape-controlled cement hydrate synthesis and self-assembly | |
JP2007063062A (ja) | 貝殻から球状の炭酸カルシウムを製造する方法 | |
JP2003306325A (ja) | 塩基性炭酸マグネシウム及びその製造方法、並びに該塩基性炭酸マグネシウムを含有する組成物又は構造体 | |
JP3910503B2 (ja) | 塩基性炭酸マグネシウムの製造方法 | |
JP2009067605A (ja) | 六角板状形態をしたアラゴナイト系炭酸カルシウムの製造方法 | |
Watanabe et al. | Effect of initial pH on formation of hollow calcium carbonate particles by continuous CO2 gas bubbling into CaCl2 aqueous solution | |
EP1422302B1 (en) | Foaming agent for manufacturing a foamed metal | |
US20240034631A1 (en) | Scalable synthesis of perimorphic carbons | |
CA2246208C (en) | Monosodium cyanuric acid slurry | |
JP2007204293A (ja) | 多孔質粒子およびその製造方法 | |
JP2008126144A (ja) | リチウム吸着剤を含有する成形体およびその製造方法 | |
JP2004345892A (ja) | アルミニウムケイ酸塩の管状構造体の製造方法 | |
KR101466095B1 (ko) | 중공형 나노 실리카 물질 합성방법. | |
JP2008222459A (ja) | 中空シリカ粒子の調製方法 | |
JP6386949B2 (ja) | 微小炭酸カルシウム中空粒子 | |
JP2008115053A5 (ja) | ||
JP2007001796A (ja) | 炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法 | |
JP2017088424A (ja) | 塩基性炭酸マグネシウムの製造方法 | |
Chen et al. | Improving the productivity and purity of vaterite produced via a refined bubbling method | |
RU2443629C1 (ru) | Способ синтеза фторида магния | |
WO2009090791A1 (ja) | ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート4級塩の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080929 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20091016 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20110907 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20120828 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120924 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20130604 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20130619 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20130730 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |