JP5352028B1 - 薄片化黒鉛・樹脂複合材料及びその製造方法 - Google Patents

薄片化黒鉛・樹脂複合材料及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

樹脂などへの分散性が高く、取り扱いが容易な薄片化黒鉛・樹脂複合材料を提供する。
薄片化黒鉛と樹脂とが複合化した薄片化黒鉛・樹脂複合材料である。10mg/L濃度のメチレンブルーのメタノール溶液の吸光度と、該メチレンブルーのメタノール溶液に薄片化黒鉛・樹脂複合材料を投入し、遠心分離により得られた上澄み液の吸光度との差に基づき測定された薄片化黒鉛・樹脂複合材料1gあたりのメチレンブルー吸着量(μモル/g)をy、該薄片化黒鉛・樹脂複合材料のBET比表面積(m/g)をxとした場合、比y/xが0.15以上であり、かつBET比表面積が25m/g以上である。

Description

本発明は、黒鉛または一次薄片化黒鉛を剥離することにより得られる薄片化黒鉛・樹脂複合材料及びその製造方法に関する。
黒鉛は、多数のグラフェンが積層されてなる積層体である。黒鉛を剥離することで、グラフェンあるいは黒鉛よりもグラフェン積層数が少ない薄片化黒鉛が得られる。該薄片化黒鉛は、導電性材料や熱伝導性材料などへの応用が期待されている。
近年、グラフェンや、薄片化黒鉛にポリマーをグラフトさせることにより、該グラフェンや薄片化黒鉛の樹脂中における分散性を高める方法などが種々検討されている。例えば、下記の特許文献1には、剥離されたグラフェンとラジカル重合性モノマーとを共存重合することにより、ポリマーがグラフト化されたグラフェンを製造する方法が開示されている。
US7,659,350 B2
特許文献1の方法では、あらかじめ黒鉛を剥離し、それによって得られた剥離グラフェンを使用する。
しかしながら、従来公知のグラフェンの剥離方法では、原料の黒鉛を酸により処理した後、上記黒鉛を加熱して剥離し、さらに得られたグラフェンまたは薄片化黒鉛の粉体を集積する必要があった。このように、グラフェンまたは薄片化黒鉛を得るためには、数多くの複雑な工程を経て原料の黒鉛を剥離する必要があった。また、従来の方法では、グラフェンまたは薄片化黒鉛は粉体として得られるため、取り扱いが困難であるという問題があった。
本発明の主な目的は、樹脂などへの分散性が高く、取り扱いが容易な薄片化黒鉛・樹脂複合材料を提供することにある。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、薄片化黒鉛と樹脂とが複合化した薄片化黒鉛・樹脂複合材料である。本願の第1の発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料では、下記の方法により測定されたメチレンブルー吸着量(μモル/g)をy、BET比表面積(m/g)をxとした場合、比y/xが0.15以上であり、且つBET比表面積が、25m/g以上である。上記メチレンブルー吸着量は、10mg/Lの濃度のメチレンブルーのメタノール溶液の吸光度と、該メチレンブルーのメタノール溶液に薄片化黒鉛・樹脂複合材料を投入し、攪拌した後、遠心分離により得られた上澄み液の吸光度との差に基づき測定される。このメチレンブルー吸着量測定方法については、後の実施形態の説明において詳述する。
本願の第2の発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、薄片化黒鉛と樹脂とが複合化した薄片化黒鉛・樹脂複合材料であり、複合材料における樹脂の熱分解開始温度及び熱分解終了温度は、それぞれ、複合化前の樹脂の熱分解開始温度及び熱分解終了温度よりも高い。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の他の特定の局面では、樹脂の含有量が、1質量%〜70質量%である。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の別の特定の局面では、樹脂が、ラジカル重合性モノマーの重合体である。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法は、上記の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法である。本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法では、黒鉛または一次薄片化黒鉛と、ポリマーとを含み、ポリマーが黒鉛または一次薄片化黒鉛に固定されている組成物を用意する。組成物中に含まれるポリマーを熱分解することにより、ポリマーの一部を残存させながら、黒鉛または一次薄片化黒鉛を剥離する。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法のある特定の局面では、組成物を用意する工程において、ポリマーが黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化または吸着されていることにより、ポリマーが黒鉛または一次薄片化黒鉛に固定されている。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法の第1の実施形態では、組成物を用意する工程が、黒鉛または一次薄片化黒鉛と、ラジカル重合性モノマーとを含む混合物を用意する工程と、混合物に含まれるラジカル重合性モノマーを重合することによって、混合物中にラジカル重合性モノマーが重合しているポリマーを生成すると共に、ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化させる工程とを含む。
本発明の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法の第2の実施形態では、組成物を用意する工程において、ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛の存在下で、50℃以上かつ400℃以下の温度範囲の温度に加熱することによりポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化させる。
以下においては、上記第1の実施形態か上記第2の実施形態を含めた、本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法の様々な特定の局面を説明する。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法のある特定の局面では、組成物を用意する工程において、組成物が熱分解性発泡剤をさらに含む。その場合には、黒鉛または一次薄片化黒鉛をより一層効果的に剥離することができる。従って、得られる薄片化黒鉛の比表面積をさらに大きくすることができる。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法の他の特定の局面では、熱分解性発泡剤が、下記の式(1)〜式(4)に示される構造を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の加熱発泡剤である。
Figure 0005352028
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Figure 0005352028
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本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法の別の特定の局面では、ポリマーを熱分解することにより、黒鉛または一次薄片化黒鉛を剥離する工程において、混合物に含まれる熱分解性発泡剤を熱分解する。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法の上記第1の実施形態のさらに他の特定の局面では、ポリマーを生成すると共に、ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化させる工程において、混合物に含まれる熱分解性発泡剤を熱分解する。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法の上記第1の実施形態のさらに別の特定の局面では、ポリマーを生成すると共に、ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化させる工程が、混合物を加熱することによって混合物に含まれるラジカル重合性モノマーを重合することにより行われる。その場合には、混合物を加熱するだけで、ラジカル重合性モノマーの重合及びポリマーの重合の両方を行うことができる。従って、黒鉛または一次薄片化黒鉛をより一層容易に剥離することができる。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法のさらに他の特定の局面では、ラジカル重合性モノマーがビニル系モノマーである。好ましくは、ビニル系モノマーは、スチレンモノマーまたはグリシジルメタクリレートである。スチレンモノマーは安価であるため、薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造コストを下げることができる。前述した第1の実施形態では、ラジカル重合性モノマーとしてスチレンモノマーを好適に用いることができる。また、前述した第2の実施形態では、上記ポリマーとして、グリシジルメタクリレートのポリマーが好適に用いられる。
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料では、グラフェン間が広げられているため、比表面積が大きい。また、本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、中心部分はグラファイト構造を有し、エッジ部分でグラフェン間が広げられて薄片化している構造を有する。このため、従来の薄片化合金よりも取り扱いが容易である。さらに、本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、樹脂を含むため、他の樹脂への分散性が高い。
図1は、実施例1におけるポリスチレンのTG/DTA測定結果を示す図である。 図2は、実施例2におけるポリ酢酸ビニルのTG/DTA測定結果を示す図である。 図3は、実施例3におけるポリプロピレングリコールのTG/DTA測定結果を示す図である。 図4は、実施例1で得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料のTG/DTA測定結果を示す図である。 図5は、実施例2で得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料のTG/DTA測定結果を示す図である。 図6は、実施例3で得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料のTG/DTA測定結果を示す図である。 図7は、実施例1で得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料のXRDスペクトルを示す図である。 図8は、実施例2で得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料のXRDスペクトルを示す図である。 図9は、実施例3で得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料のXRDスペクトルを示す図である。 図10は、実施例1により得られた薄片化黒鉛を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した写真である。 図11は、実施例2により得られた薄片化黒鉛を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した写真である。 図12は、実施例3により得られた薄片化黒鉛を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した写真である。 図13は、参考例1で得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料のTG/DTA測定結果を示す図である。 図14は、参考例2で得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料のTG/DTA測定結果を示す図である。 図15は、参考例3で得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料のTG/DTA測定結果を示す図である。 図16は、実施例4〜14及び参考例4〜7で得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料及び公知の炭素質材料におけるBET比表面積(m2/g)と、メチレンブルー吸着量(μモル/g)との関係を示す図である。 図17は、図16の点線で囲った範囲を拡大表示した図である。
以下、本発明の薄片化黒鉛・樹脂複合材料及びその製造方法について、詳述する。
[薄片化黒鉛・樹脂複合材料]
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、薄片化黒鉛と樹脂とが複合化したものである。
薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、薄片化黒鉛と樹脂とを含む。
薄片化黒鉛・樹脂複合材料に含まれる薄片化黒鉛は、原料である黒鉛、一次薄片化黒鉛のグラフェン層の層間の少なくとも一部が剥離されたものである。黒鉛は、複数のグラフェン層の積層体であり、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などである。原料として用いられる黒鉛としては、膨張黒鉛が好ましい。膨張黒鉛は、通常の黒鉛よりもグラフェン層の層間が大きいため、容易に剥離され得る。そのため、黒鉛として膨張黒鉛を用いることにより、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を容易に製造することができる。
上記黒鉛では、グラフェンの積層数は10万層以上〜100万層程度であり、BETによる比表面積は22m/g以下の値を有する。また、本発明の薄片化黒鉛・樹脂複合材料とは、グラフェンの積層数が3000層以下のものをいう。
本願の第1の発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、メチレンブルー吸着量(μモル/g)をy、BET比表面積(m/g)をxとした場合、比y/xは0.15以上、より好ましくは0.27以上、より好ましくは、0.39以上である。
上記メチレンブルー吸着量は、以下の方法で求められる。10mg/Lの濃度のメチレンブルーのメタノール溶液に、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を投入し、攪拌する。次に遠心分離し、得られた上澄み液の極大吸収波長における吸光度変化を観察する。メチレンブルーは、薄片化黒鉛・樹脂複合材料のグラフェンが積層されている部分に対し、π共役により吸着する。他方、メチレンブルーは光の照射により蛍光を発する。グラフェンにメチレンブルーが吸着されると蛍光を発しなくなる。すなわち、蛍光強度が低下することになる。よって、元のメチレンブルーの蛍光強度に対する上記上澄み液から求められた蛍光強度の低下量により、メチレンブルー吸着量を求めることができる。
他方、上記メチレンブルー吸着量と、炭素質材料の比表面積とには相関が存在する。従来から知られている球状の黒鉛粒子では、BETにより求められた比表面積(m/g)をx、上記メチレンブルー吸着量(μモル/g)をyとしたとき、y≒0.13xの関係にある。これは、比表面積が大きい程、メチレンブルー吸着量が多くなることを示している。従って、メチレンブルー吸着量は、比表面積の代わりの指標となり得るものである。
そして、第1の本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料では、上記の通り比y/xが0.15以上である。なお、従来の球状の黒鉛粒子ではy≒0.13xであった。これに対して、本発明ではy/x=0.15以上であり、従って、第1の本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、従来の球状の黒鉛粒子と区別される。すなわち従来より知られている球状の黒鉛に比べ、本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料では、同じBET比表面積でありながら、メチレンブルー吸着量がより多くなっている。これは、本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料では、乾燥状態では幾分凝縮するものの、メタノール中などの湿式状態ではグラフェン間が乾燥状態に比べて広がっているためと考えられる。
本願の第2の発明においては、薄片化黒鉛・樹脂複合材料における樹脂の熱分解開始温度及び熱分解終了温度は、それぞれ、複合化前の樹脂の熱分解開始温度及び熱分解終了温度よりも高い。なお、本発明において、熱分解開始温度及び熱分解終了温度は、それぞれ、TGA測定依存の分解開始温度及び分解終点温度をいう。
本願の第1,第2の発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料では、グラフェン間が広げられているだけでなく、樹脂が薄片化黒鉛に複合している。そのため、樹脂材料に添加した場合の分散性に優れている。さらに、樹脂に添加する際には、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を有機溶剤に分散させた分散液の状態で添加することが望ましい。分散液においては、グラフェン間が広がっており、凝集を抑制することができる。よって、薄片化黒鉛・樹脂複合材料の添加量を少なくした場合であっても、樹脂中により一層均一に分散させることができる。加えて、分散液や溶液中において沈殿し難いため、分散液や溶液のポットライフすなわち使用可能時間を長くすることも可能となる。よって、好ましくは、本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、有機溶剤に分散もしくは溶解させた分散液もしくは溶液として調製することが望ましい。
薄片化黒鉛・樹脂複合材料のBET比表面積は、25m/g以上であり、好ましくは、35m/g以上であり、より好ましくは45m/g以上であり、100m/g以上であることがより好ましい。なお、薄片化黒鉛・樹脂複合材料のBET比表面積の上限値は、通常、2500m/g以下となる。
薄片化黒鉛は、原料として、黒鉛の代わりに一次薄片化黒鉛を用いたものであってもよい。一次薄片化黒鉛とは、黒鉛を剥離することにより得られた薄片化黒鉛や、本発明の薄片化黒鉛・樹脂複合材料のほか、後述の各種方法により黒鉛を剥離することにより得られた薄片化黒鉛を広く含むものとする。一次薄片化黒鉛は、黒鉛を剥離することにより得られるものであるため、その比表面積は、黒鉛よりも大きいものであればよい。
薄片化黒鉛・樹脂複合材料に含まれる樹脂は、ラジカル重合性モノマーの重合体であることが好ましい。樹脂は、複数種類のラジカル重合性モノマーの共重合体であってもよいし、1種類のラジカル重合性モノマーの単重合体であってもよい。ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性の官能基を有するモノマーである限り特に限定されない。ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−エチルアクリル酸メチル、α−ベンジルアクリル酸メチル、α−[2,2−ビス(カルボメトキシ)エチル]アクリル酸メチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジシクロヘキシル、α−メチレン−δ−バレロラクトン、α−メチルスチレン、α−アセトキシスチレンからなるα−置換アクリル酸エステル、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートなどのグリシジル基や水酸基を持つビニルモノマー;アリルアミン、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなアミノ基を有するビニルモノマー;メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸などのカルボキシル基を有するモノマー;ユニケミカル社製、ホスマーM、ホスマーCL、ホスマーPE、ホスマーMH、ホスマーPPなどのリン酸基を有するモノマー;ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基を有するモノマー;アルキル基やベンジル基などを有する(メタ)アクリレート系モノマーなどが挙げられる。好ましいラジカル重合性モノマーとしては、ビニル系モノマーが挙げられる。特に、安価なスチレンモノマーが挙げられる。
薄片化黒鉛・樹脂複合材料中における樹脂の含有量は、1質量%〜70質量%であることが好ましい。それによって、樹脂の複合化により、マトリックス樹脂などへの分散性をより一層高め、かつエッジ部分のグラフェン間をより確実に広げることができる。5質量%〜30質量%であることがより好ましく、10質量%〜20質量%であることがさらに好ましい。
本発明の薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、比較的飛散し難いという特徴を有する。これは、後述の通り、上記ラジカル重合性モノマーが重合してなるポリマーが熱分解工程において、完全に分解されず残存しているためと考えられる。言い換えれば、薄片化黒鉛におけるグラフェン層間に挟まれている部分に位置しているポリマーは、両側のグラフェンに挟まれているため、熱分解温度付近では完全に分解しないと考えられる。そのため、本発明の薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、取り扱いが容易である。
また、本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、グラフェン間の層間距離が広げられており、比表面積が大きい。さらに、本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、中心部分がグラファイト構造を有し、エッジ部分が薄片化している構造である。このため、従来の薄片化合金よりも取り扱いが容易である。また、本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、樹脂を含むため、他の樹脂への分散性が高い。特に、他の樹脂が、薄片化黒鉛・樹脂複合材料に含まれる樹脂と親和性の高い樹脂である場合、薄片化黒鉛・樹脂複合材料の他の樹脂への分散性は、より高い。
このような薄片化黒鉛・樹脂複合材料は、例えば、以下のような製造方法により製造することができる。
[薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法]
(原料組成物を用意する工程)
本発明に係る薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法では、上記の黒鉛または一次薄片化黒鉛と、上記のポリマーとを含み、ポリマーが黒鉛または一次薄片化黒鉛に固定されている組成物をまず用意する。この組成物を用意する工程としては、例えば、ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化することにより、ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛に固定する以下の第1及び第2の方法や、ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛を吸着させることにより、ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛に固定する第3の方法を用いることができる。
(第1の方法)
第1の方法では、まず、原料として、上記の黒鉛または一次薄片化黒鉛と、上記のラジカル重合性モノマーとを含む混合物を用意する。次に、混合物に含まれているラジカル重合性モノマーを重合することにより、混合物中に上記ラジカル重合性モノマーが重合しているポリマーを生成させるとともに、該ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化させる。
第1の方法では、まず、黒鉛または一次薄片化黒鉛と、ラジカル重合性モノマーとを含む組成物を用意する。
黒鉛とラジカル重合性モノマーとの配合割合は特に限定されないが、質量比で1:1〜1:100の割合とすることが望ましい。配合割合を範囲とすることで、黒鉛または一次薄片化黒鉛を効果的に剥離し、薄片化黒鉛・樹脂複合材料をより一層効果的に得ることができる。
上記組成物を用意する工程では、好ましくは、熱分解する際にガスを発生する熱分解性発泡剤をさらに含む組成物を用意する。その場合には、後述する加熱により黒鉛または一次薄片化黒鉛をより一層効果的に剥離することができる。
上記熱分解性発泡剤としては、加熱により自発的に分解し、分解時にガスを発生する化合物である限り、特に限定されない。上記熱分解性発泡剤としては、例えば、分解時に窒素ガスを発生するアゾカルボン酸系、ジアゾアセトアミド系、アゾニトリル化合物系、ベンゼンスルホヒドラジン系またはニトロソ化合物系等の発泡剤や、分解時に一酸化炭素、二酸化炭素、メタンまたはアルデヒド等を発生する発泡剤などを用いることができる。上記熱分解性発泡剤は単独で用いてもよく、複数の種類の発泡剤を組み合わせて用いてもよい。
好ましくは、上記熱分解性発泡剤としては、下記の式(1)に示される構造を有するアゾジカルボンアミド(ADCA)や、下記の式(2)〜(4)に示される構造を有する発泡剤を用いることができる。これらの発泡剤は、加熱により自発的に分解し、分解時に窒素ガスを発生する。
Figure 0005352028
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なお、上記熱分解性発泡剤の熱分解温度は特に限定されず、上記ラジカル重合性モノマーが自発的に重合を開始する温度より低くてもよく、高くてもよい。例えば、上記式(1)に示される構造を有するADCAの熱分解温度は210℃であり、上記ラジカル重合性モノマーがスチレンの場合には、スチレンが自発的に重合を開始する温度150℃よりも高い温度である。上記式(2)〜(4)に示される構造を有する熱分解性発泡剤の熱分解開始温度は順に88℃、96℃、110℃であり、これらはスチレンが自発的に重合を開始する温度150℃よりも低い温度である。
上記黒鉛または一次薄片化黒鉛と上記熱分解性発泡剤との配合割合は特に限定されないが、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛100重量部に対し、上記熱分解性発泡剤を100重量部〜300重量部配合することが好ましい。上記熱分解性発泡剤の配合量を上記範囲とすることで、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛をより一層効果的に剥離し、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を効果的に得ることができる。
上記組成物を用意する方法は特に限定されないが、例えば、上記ラジカル重合性モノマーを分散媒として使用し、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛を上記ラジカル重合性モノマー中に分散させる方法などが挙げられる。また、上記熱分解性発泡剤をさらに含む上記組成物は、上記ラジカル重合性モノマーに上記熱分解性発泡剤を溶解または分散することにより用意することができる。
次に、上記組成物に含まれる上記ラジカル重合性モノマーを重合することにより、上記組成物中に上記ラジカル重合性モノマーが重合しているポリマーを生成する工程を行う。
このとき、上記ラジカル重合性モノマーはフリーラジカルを生成し、それによって上記ラジカル重合性モノマーがラジカル重合することにより、上記ラジカル重合性モノマーが重合しているポリマーが生成する。一方、上記組成物中に含まれる黒鉛は、複数のグラフェン層の積層体であるため、ラジカルトラップ性を有する。そのため、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛を含む上記組成物中において上記ラジカル重合性モノマーを共存重合させると、上記フリーラジカルが上記黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェン層の端部及び表面に吸着される。従って、重合時に生じた上記フリーラジカルを有する上記ポリマーまたは上記ラジカル重合性モノマーが、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェン層の端部及び表面にグラフト化する。
上記組成物に含まれる上記ラジカル重合性モノマーを重合する方法としては、例えば、上記ラジカル重合性モノマーが自発的に重合を開始する温度以上に上記組成物を加熱する方法が上げられる。上記組成物を上記温度以上に加熱することによって、上記組成物に含まれる上記ラジカル重合性モノマーにフリーラジカルを生成することができる。それによって、上述の重合及びグラフト化を行うことができる。
上記のように、加熱により上記ラジカル重合性モノマーを重合する場合には、上記組成物を加熱するだけで、上記ラジカル重合性モノマーの重合及び後述する上記ポリマーの熱分解の両方を行うことができる。従って、黒鉛または一次薄片化黒鉛の剥離がより一層容易となる。
上記加熱方法としては、上記組成物を上記温度以上に加熱できる方法であれば特に限定されず、適宜の方法及び装置により上記組成物を加熱することができる。また、上記加熱の際には、密閉することなく、すなわち常圧下で加熱してもよい。
また、上記ラジカル重合性モノマーを確実に重合させるために、上記ラジカル重合性モノマーが自発的に重合を開始する温度以上の温度まで加熱した後、上記温度をさらに一定時間維持してもよい。上記温度付近に維持する時間は、使用するラジカル重合性モノマーの種類及び量にもよるが、好ましくは0.5〜5時間の範囲である。
上記ポリマーを生成する工程の後に、上記組成物を上記ポリマーの熱分解温度まで加熱することにより、ポリマーの一部を残存させながら、上記ポリマーを熱分解する工程を行う。それによって、上記組成物に含まれる上記ポリマー及び上記黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェン層の端部及び表面にグラフト化している上記ポリマー等が熱分解する。なお、本発明において、上記ポリマーの熱分解温度とは、TGA測定依存の分解終点温度をいう。例えば、ポリマーがポリスチレンである場合には、上記ポリマーの熱分解温度は約350℃である。
このとき、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェン層の端部及び表面にグラフト化している上記ポリマー等が熱分解する際に、上記グラフェン層間に剥離力が生じる。従って、上記ポリマー等を熱分解することによって、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェン層間を剥離し、薄片化黒鉛を得ることができる。
また、この熱分解によっても、一部のポリマーは組成物中に残存している。そして、熱分解によって得られる薄片化黒鉛・樹脂複合材料における樹脂の熱分解開始温度及び熱分解終了温度は、それぞれ、複合化前の樹脂の熱分解開始温度及び熱分解終了温度よりも高くなる。
なお、本発明では、薄片化黒鉛とは、元の黒鉛または一次薄片化黒鉛を剥離処理して得られる剥離後のグラフェン積層体であり、元の上記黒鉛または一次薄片化黒鉛よりも比表面積の大きいグラフェン積層体または元の黒鉛または一次薄片化黒鉛の分解終点が低温化へシフトしたグラフェン積層体をいう。
上記加熱方法としては、上記ポリマーの熱分解温度まで加熱できる方法であれば特に限定されず、適宜の方法及び装置により上記組成物を加熱することができる。また、上記加熱の際には、密閉することなく、すなわち常圧下で加熱してもよい。従って、安価にかつ容易に薄片化黒鉛を製造することができる。樹脂を残存させるように熱分解させるには、加熱時間を調整することにより達成することができる。すなわち、加熱時間を短くすることにより残存樹脂量を多くすることができる。また、加熱温度を低めることにより残存樹脂量を増加させることもできる。
後述の第2の方法及び第3の方法においても、ポリマーの一部を残存させるように加熱する工程においては、加熱温度及び加熱時間を調整すればよい。
上記ポリマーの一部を組成物中に残存させつつ、ポリマーの一部が残存するようにしてポリマーを熱分解させることができれば、上記ポリマーの熱分解温度以上の温度まで加熱した後、上記温度をさらに一定時間維持してもよい。上記温度付近に維持する時間は、使用するラジカル重合性モノマーの種類及び量にもよるが、好ましくは0.5〜5時間の範囲である。
また、上記ポリマーを生成する工程において、加熱により上記ラジカル重合性モノマーを重合させる場合には、上記ポリマー生成する工程における加熱処理と、後述する上記ポリマーを熱分解する工程における加熱処理とを、同一の方法及び装置により連続して行ってもよい。
上記加熱の際、上記組成物が熱分解性発泡剤をさらに含む場合には、上記組成物を上記熱分解性発泡剤の熱分解温度まで加熱すると、上記熱分解性発泡剤が上記組成物中で熱分解する。一方、上記熱分解性発泡剤は、熱分解時にはガスを発生して発泡する。このとき、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェン層間付近で上記熱分解性発泡剤が熱分解すると、上記グラフェン層間に上記熱分解により発生した上記ガスが入り込み、上記グラフェン層の間隔が広げられる。それによって、上記グラフェン層間に剥離力が生じるため、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛をさらに剥離することができる。従って、上記熱分解性発泡剤を用いることによって、得られる薄片化黒鉛の比表面積をより一層大きくすることができる。
本発明では、上記ラジカル重合性モノマー及び/または上記ポリマーと上記熱分解性発泡剤を併用することによって、黒鉛または一次薄片化黒鉛をより一層効果的に剥離し得る。このような方法により黒鉛または一次薄片化黒鉛をより一層効果的に剥離し得る理由については定かではないが、以下の理由が考えられる。上述のように、上記ラジカル重合性モノマーがフリーラジカルを生成した場合、重合時に生じた上記フリーラジカルを有する上記ポリマーまたは上記ラジカル重合性モノマーが、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェン層の端部及び表面にグラフト化する。そのため、上記フリーラジカルは上記黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェン層にトラップされる。一方、上記熱分解性発泡剤はラジカルと親和性が高いという性質を有するため、上記組成物中において上記黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェン層にトラップされたフリーラジカルに引き寄せられる。従って、上記熱分解性発泡剤は黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェンシート積層面付近において熱分解し易くなる。よって、上記熱分解性発泡剤の熱分解により、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェン層間に効果的に剥離力を与えることができる。
なお、上記熱分解性発泡剤の熱分解は、必ずしも上記ポリマーを熱分解する工程において行わずともよい。例えば、上記熱分解性発泡剤の熱分解温度が、上記ラジカル重合性モノマーが自発的に重合を開始する温度より低い場合には、上記ポリマーを生成する工程において、加熱により上記ラジカル重合性モノマーを重合させる際に、上記熱分解性発泡剤を熱分解してもよい。また、上記熱分解性発泡剤の熱分解は、ラジカル重合性モノマーの重合前でもよく、重合後でもよく、重合と同時でもよい。
また、上記熱分解性発泡剤を確実に熱分解させるために、上記熱分解性発泡剤の熱分解温度以上の温度まで加熱した後、上記温度をさらに一定時間維持してもよい。上記温度付近に維持する時間は、使用する熱分解性発泡剤の種類及び量にもよるが、好ましくは0.5〜5時間の範囲である。
(第2の方法)
第2の方法では、黒鉛または一次薄片化黒鉛と、ラジカル重合性モノマーが重合しているポリマーとを含み、ポリマーが黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化している組成物を用意する工程において、ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛の存在下で、50℃以上かつ400℃以下の温度範囲の温度に加熱することにより、ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化させる。すなわち、第1の方法では、黒鉛または一次薄片化黒の存在下でラジカル重合性モノマーを重合してポリマーを生成するとともにポリマーの黒鉛または一次薄片化黒鉛へのグラフト化が図られていたが、これに対して、第2の方法では、予め得られたポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛の存在下で上記特定の温度範囲に加熱することにより、ポリマーを熱分解することにより生成したポリマーラジカルを直接黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフトさせることができる。
第2の方法のポリマーとしては、適宜の熱分解ラジカル生成ポリマーを用いることができる。
ほとんどの有機ポリマーが分解温度でラジカルを発生する。従って、上記分解温度付近でラジカルを形成するポリマーとしては多くの有機ポリマーを用いることができる。もっとも、好ましくは、ビニル系モノマーなどのラジカル重合性モノマーの重合体が好適に用いられる。このようなビニル系モノマー、すなわちビニル基含有モノマーとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのモノマーが挙げられる。好ましくは、スチレンやグリシジルメタクリレートが挙げられる。また、上記ビニル基含有モノマーを重合してなるポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリプロピレン、ポリビニルフェノール、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテルなどを挙げることができる。
また、ポリ塩化ビニル、塩素化塩化ビニル樹脂、フッ化エチレン樹脂やフッ化ビニリデン樹脂、塩化ビニリデン樹脂などの、塩素などのハロゲン元素を含有するポリマーなども使用可能である。エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドンやそれらの共重合体も、使用可能である。ポリイソブチレンやポリアルキレンエーテルなどのカチオン重合によって得られたポリマーも使用可能である。
オリゴマーを架橋してなる、ポリウレタン、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂やシリコーン樹脂なども使用可能である。
ポリアリルアミンを用いてもよく、その場合には黒鉛または一次薄片化黒鉛にアミノ基をグラフトすることができる。ポリビニルフェノールやポリフェノール類を用いてもよく、その場合には、フェノール性OHを黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフトすることができる。また、リン酸基を有するポリマーを用いると、リン酸基をグラフトすることができる。
また、ポリエステル、ポリアミドなどの縮合系ポリマーを用いてもよい。その場合には、分解温度で得られるラジカル濃度は低いけれども、分解物がグラフトされる。
上記予め用意したポリマーとして、グリシジルメタクリレートのホモポリマー、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリプロピレングリコール、ポリブチラールなどが好適に用いられる。これらのポリマーを用いることにより、黒鉛または一次薄片化黒鉛をより一層効果的に剥離することができる。
第2の方法において、上記黒鉛または一次薄片化黒鉛と上記ポリマーとの配合割合は特に限定されないが、重量比で1:5〜1:20の割合とすることが望ましい。配合割合をこの範囲内とすることにより、黒鉛または一次薄片化黒鉛をより効果的に剥離し、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を効果的に得ることができる。
第2の方法においても、第1の方法の場合と同様に、組成物を用意する工程において、好ましくは、熱分解性発泡剤をさらに組成物に含有させることが望ましい。第1の方法の場合と同様に、後述するポリマーの熱分解を引き起こす加熱により、黒鉛または一次薄片化黒鉛をより一層効果的に剥離することができる。
使用し得る熱分解性発泡剤としては、第1の方法の場合と同様である。従って、好ましくは、前述した式(1)〜(4)で示される構造を有する発泡剤を用いることが望ましい。
第2の方法においても、黒鉛または一次薄片化黒鉛と熱分解性発泡剤との配合割合は特に限定されないが、黒鉛または一次薄片化黒鉛100重量部に対し、熱分解性発泡剤は100〜300重量部の割合で配合することが好ましい。この範囲内であれば、黒鉛または一次薄片化黒鉛をより一層効果的に剥離することができる。
第2の方法においても、組成物を用意する具体的な方法は限定されないが、例えば、上記ポリマーと黒鉛または一次薄片化黒鉛とを適宜の溶媒もしくは分散媒中に投入し、加熱する方法が挙げられる。
上記加熱によりポリマーが黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフトされる。この加熱温度については、50℃以上かつ400℃以下の範囲とすることが望ましい。この温度範囲内とすることにより、ポリマーを黒鉛に効果的にグラフトさせることができる。それによって、黒鉛または一次薄片化黒鉛をより一層効果的に剥離することができる。この理由については、以下の通りと考えられる。
上記ラジカル重合性モノマーを重合して得られたポリマーを加熱することにより、ポリマーの一部が分解し、黒鉛または一次薄片化黒鉛のグラフェン層にラジカルトラップされる。従って、ポリマーが黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフトされることになる。そして、後述する加熱工程においてポリマーを分解し、焼成すると、ポリマーの黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフトされているグラフト面に大きな応力が加わる。そのため、剥離力がグラフト点を起点として作用し、グラフェン層間が効果的に広げられることになると考えられる。
(第3の方法)
第3の方法としては、上記黒鉛と、上記ポリマーとを適宜の溶媒に溶解もしくは分散させる方法を挙げることができる。このような溶媒としては、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチルなどを用いることができる。
また、熱分解性発泡剤を用いる場合には、上記溶媒中に熱分解性発泡剤をさらに添加し分散もしくは溶解させればよい。
また、第3の方法では、上記組成物として、溶媒中において、ポリマーが黒鉛もしくは一次薄片化黒鉛に吸着されている組成物を用意する。ポリマーを黒鉛もしくは一次薄片化黒鉛に吸着させる方法は特に限定されない。ポリマーが黒鉛に対して吸着性を有するため、上述した溶媒中において、黒鉛もしくは一次薄片化黒鉛をポリマーと混合する方法を用いることができる。好ましくは、ポリマーに黒鉛もしくは一次薄片化黒鉛により効果的に吸着させるために、超音波処理を実施することが望ましい。超音波処理方法は特に限定されない。例えば、適宜の超音波処理装置を用いて、100W、発振周波数28kHz程度の超音波を照射する方法を用いることができる。
また、超音波処理時間についても特に限定されず、ポリマーが黒鉛に吸着するのに必要な時間以上であればよい。例えば、ポリ酢酸ビニルを黒鉛に吸着させるには、好ましくは、30分、60分、より好ましくは、120分程度維持すればよい。
ポリマーの吸着は、黒鉛の表面エネルギーとポリマーとの相互作用によると考えられる。
(ポリマーの熱分解による黒鉛の剥離工程)
上記第1の方法、第2の方法、及び第3の方法のいずれにおいても、上記のようにして組成物を用意したのち、組成物中に含まれるポリマーを熱分解する。それによって、ポリマーの一部を残存させながら、黒鉛または一次薄片化黒鉛が剥離され、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得ることができる。この場合のポリマーの熱分解を果たすために、上記組成物をポリマーの熱分解温度以上に加熱すればよい。より具体的には、ポリマーの熱分解温度以上に加熱し、さらにポリマーを焼成する。このとき、組成物中にポリマーが残存する程度に焼成する。それによって、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得ることができる。例えば、ポリスチレンの熱分解温度を380℃〜450℃程度であり、ポリグリシジルメタクリレートの熱分解温度は400℃〜500℃程度であり、ポリブチラールの熱分解温度は大気中で550℃〜600℃程度である。
上記ポリマーの熱分解により薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得ることができるのは、前述した理由によると考えられる。すなわち、黒鉛にグラフトしているポリマーが焼成されると、グラフト点に大きな応力が作用し、それによってグラフェン間の距離が広がるためと考えられる。
なお、第1の方法では、ラジカル重合性モノマーを重合するための加熱と、上記ポリマーの熱分解とを同じ加熱工程において連続的に実施してもよい旨を説明したが、第2の方法においても、上記ポリマーを黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフトさせるための加熱工程と、上記ポリマーを熱分解する加熱工程とを連続的に実施してもよい。
さらに、第1の方法及び第2の方法のいずれにおいても、複数回実施することが望ましい。例えば、第1の方法により組成物を用意したのち、ポリマーを熱分解して、実質的にポリマーが含まれない薄片化黒鉛を得た後に、該薄片化黒鉛を第1の方法の原料の一次薄片化黒鉛として用い、さらに第1の方法を1回以上繰り返すことにより、より一層比表面積の大きい薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得てもよい。同様に、第2の方法により組成物を用意した後に、ポリマーを熱分解して、実質的にポリマーが含まれない薄片化黒鉛を得た後に、得られた薄片化黒鉛を第2の方法における原料の一次薄片化黒鉛として、さらに第2の方法及びポリマーの熱分解を実施し、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得てもよい。これらの場合においても、より一層比表面積の大きな薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得ることができる。なお、例えば、第1の方法により組成物を用意したのち、ポリマーを熱分解して、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た後に、該薄片化黒鉛・樹脂複合材料を第1の方法の原料の一次薄片化黒鉛として用い、さらに第1の方法を1回以上繰り返すことにより、より一層比表面積の大きい薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得てもよい。同様に、第2の方法により組成物を用意した後に、ポリマーを熱分解して、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た後に、得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料を第2の方法における原料の一次薄片化黒鉛として、さらに第2の方法及びポリマーの熱分解を実施し、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得てもよい。
さらに、第1の方法により用意された組成物を加熱して、実質的にポリマーが含まれない薄片化黒鉛を得た後に、該薄片化黒鉛を第2の方法の原料としての一次薄片化黒鉛として、以下第2の方法と同様にして薄片化黒鉛を得てもよい。逆に、第2の方法で得られた組成物を加熱し、実質的にポリマーが含まれない薄片化黒鉛を得た後に、該薄片化黒鉛を第1の方法の原料の一次薄片化黒鉛として、以下第1の方法と同様にして、組成物を用意し、さらに加熱によりポリマーを熱分解し、薄片化黒鉛を得てもよい。このように、上記の熱分解によって得られる実質的にポリマーが含まれない薄片化黒鉛を、さらに原料としての一次薄片化黒鉛として用い、本発明の製造方法による薄片化を1回以上繰り返すことにより、より一層比表面積の大きい薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得ることができる。
なお、第1の方法により用意された組成物を加熱して、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た後に、該薄片化黒鉛・樹脂複合材料を第2の方法の原料としての一次薄片化黒鉛として、以下第2の方法と同様にして薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得てもよい。逆に、第2の方法で得られた組成物を加熱し、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た後に、該薄片化黒鉛・樹脂複合材料を第1の方法の原料の一次薄片化黒鉛として、以下第1の方法と同様にして、組成物を用意し、さらに加熱によりポリマーを熱分解し、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得てもよい。このように、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を、さらに原料としての一次薄片化黒鉛として用い、本発明の製造方法による薄片化を1回以上繰り返すことにより、より一層比表面積の大きい薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得ることができる。
(他の変形例)
なお、本発明においては、上記のようにラジカル重合性モノマーが重合しているポリマーが黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化している構造を有する組成物中のポリマーを熱分解することにより薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得ている。本発明では、さらに、他の方法により黒鉛を薄片化する工程を施してもよい。例えば、上記のように、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を原料として用い、従来知られているような他の黒鉛の薄片化方法をさらに実施してもよい。あるいは、他の黒鉛の薄片化方法で得られた一次薄片化黒鉛を原料として本発明の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法を実施してもよい。その場合においても、より一層比表面積の大きい薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得ることができる。このような他の黒鉛の薄片化方法としては、例えば、電気化学的処理による黒鉛の薄片化方法、あるいは吸着−熱分解法を用いることができる。
以下、本発明を具体的に実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
膨張化黒鉛(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8」)10gと、熱分解性発泡剤として上記式(1)に示される構造を有するADCA(永和化成社製、商品名「AC#R−K3」、熱分解温度210℃)20gと、ラジカル重合性モノマーとしてスチレンモノマー(和光純薬工業社製)200gとを混合し、混合物とした。次に、上記混合物に対し、超音波処理装置(本多電子社製)を用いて、100W、発振周波数28kHzで120分間超音波処理した。それによって、上記膨張化黒鉛が上記スチレンモノマー中に分散している組成物を得た。
次に、上記組成物を120℃の温度となるまで加熱し、1時間維持し、さらに150℃の温度で1時間維持した。それによって、上記組成物中のスチレンモノマーを重合させた。
続いて、上記組成物を230℃の温度となるまでさらに加熱し、230℃の温度で1時間維持した。それによって、上記組成物中において上記ADCAを熱分解し、発泡させた。
その後、上記組成物を430℃の温度となるまでさらに加熱し、430℃の温度で2時間維持した。それによって、上記組成物中のスチレンモノマーが重合したポリマーを熱分解し、上記黒鉛が剥離した薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た。
(実施例2)
膨張化黒鉛(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8」、BET比表面積=22m/g)1000mgと、熱分解性発泡剤として上記式(1)に示される構造を有するADCA(永和化成社製、商品名「AC#R−K3」、熱分解温度210℃)2gと、ラジカル重合性モノマーとして酢酸ビニルポリマー(SN−04T、デンカ社製)10gとテトラヒドロフラン20gを混合し、混合物とした。次に、上記混合物に対し、超音波処理装置(本多電子社製)を用いて、100W、発振周波数28kHzで120分間超音波処理した。それによって、上記膨張化黒鉛が上記酢酸ビニルポリマー中に分散している組成物を得た。
続いて、上記組成物を80℃2時間乾燥処理し、110℃の温度となるまでさらに加熱し、THF溶液を完全に乾燥した。さらに230℃の温度で2時間維持した。それによって、上記組成物中において上記ADCAを熱分解し、発泡させた。
その後、上記組成物を500℃の温度となるまでさらに加熱し、2時間維持した。それによって、上記組成物中の酢酸ビニルポリマーを熱分解し、上記黒鉛が剥離した薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た。
(実施例3)
膨張化黒鉛(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8」、BET比表面積=22m/g)6gと、熱分解性発泡剤として上記式(1)に示される構造を有するADCA(永和化成社製、商品名「AC#R−K3」、熱分解温度210℃)12gと、ポリプロピレングリコールPPG、三洋化成社製、品番:サンニックスGP−3000、数平均分子量=3000)120gとを、溶剤としてのテトラヒドロフラン120gと混合し、原料組成物を用意した。次に、原料組成物に、超音波処理装置(本多電子社製)を用いて、100W、発振周波数28kHzで2時間超音波を照射した。この超音波処理により、ポリプロピレングリコールを膨張化黒鉛に吸着させた。このようにして、ポリプロピレングリコールが膨張化黒鉛に吸着されている組成物を用意した。
上記超音波照射後に、上記組成物を溶液流延法により成形し、乾燥温度80℃の温度で2時間維持し、次に110℃の温度で1時間維持、さらに150℃の温度で1時間維持し、さらに230℃の温度で2時間維持した。それによって、上記組成物中において上記ADCAを熱分解し、発泡させた。
次に、450℃の温度で1.5時間維持する加熱工程を実施した。それによって、上記ポリプロピレングリコールを熱分解し、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た。
(参考例1)
実施例1と同様にして、膨張化黒鉛がスチレンモノマー中に分散している組成物を得た。
次に、上記組成物を実施例1と同様にして加熱し、組成物中においてADCAを熱分解し、発泡させた。
その後、上記組成物を実施例1とは異なり、450℃の温度で2時間維持した。それによって、組成物中のスチレンモノマーが重合したポリマーを熱分解し、黒鉛が剥離した薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た。
(参考例3)
実施例3と同様にしてポリプロピレングリコールが膨張化黒鉛に吸着されている組成物を用意した。
実施例3と同様に超音波照射後に、組成物を溶液流延法により成形し、さらに加熱し、組成物中においてADCAを熱分解し、発泡させた。
しかる後、参考例3では、400℃の温度で24時間維持する加熱工程を実施した。それによって、ポリプロピレングリコールを熱分解し、薄片化黒鉛を得た。
〔実施例及び参考例の評価〕
1)TG/DTA測定
a)実施例1〜3で重合されたまたは使用したポリマーに対し、空気雰囲気下で30℃から1000℃まで10℃/分の速度で加熱する燃焼試験を行った。この燃焼試験を行った際のTG/DTA測定結果を図1〜3に示す。
b)実施例1〜3及び参考例1〜3により得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料に対し、空気雰囲気下で30℃から1000℃まで10℃/分の速度で加熱する燃焼試験を行った。この燃焼試験を行った際のTG/DTA測定結果を図4〜6及び図13〜15に示す。
図1〜3と図4〜6との比較から、薄片化黒鉛・樹脂複合材料における樹脂の熱分解開始温度及び熱分解終了温度は、それぞれ、複合化前の樹脂の熱分解開始温度及び熱分解終了温度よりも高いことが分かる。
また、図4〜6の全てのTG曲線の570℃付近において、上記TG曲線の変曲点が見られる。よって、上記変曲点よりも低い温度において、ポリマーが残存していると考えられる。
さらに、図4〜6の全てのDTA曲線の元の膨張化黒鉛の分解終点温度が低下していることで全体的に剥離が進んでいると考えられる。
また、図13〜図15から明らかなように、参考例1〜3では、ポリマーが完全に熱分解し、残存していないことがわかる。
2)BET比表面積の測定
実施例1〜3及び参考例1〜3により得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料を、島津製作所社製比表面積測定装置ASAP−2000で窒素ガスを用い、BET比表面積を測定した。結果を下記の表1に示す。
Figure 0005352028
表1から明らかなように樹脂を残存させていない参考例1〜3に比べ、実施例1〜3においては、樹脂の一部が残存させているため、BET比表面積を高め得ることがわかる。すなわち、樹脂の一部を残存させるように分解させることにより黒鉛の剥離効果が高められることがわかる。
3)XRD測定
実施例1〜3により得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料のXRDスペクトルを図7〜9に示す。
図7〜9から明らかなように、元の膨張化黒鉛のグラファイト構造の結晶化ピーク強度が、剥離処理をすることにより低下していることが分かる。
4)SEMによる観察
実施例1〜3により得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料を、走査型電子顕微鏡(SEM)により1000倍に拡大して撮影し、それによって得られた写真を観察した。実施例1〜3により得られた薄片化黒鉛・樹脂複合材料の上記SEM写真を図10〜12に示す。
図10〜12からも明らかなように、本発明に従う各実施例の製造方法により、薄く、比表面積の大きい薄片化黒鉛・樹脂複合材料が得られたことがわかる。
(実施例4〜8)
各成分の配合割合は実施例3と同様とし、但し、全体量を20重量%減らしたことを除いては、実施例3と同様にして実施例4の薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た。
実施例5〜実施例8では、それぞれ、実施例4と同じ処理工程を実施して、実施例4と同様にして薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た。すなわち、実施例5〜8は実施例4を繰り返した例に相当する。ただし、全体量を20重量%増やしたことにより、焼成温度と焼成時間は同じでも、実際には焼成炉内中で、部分的に焼成のされ方にバラつきがあった。すなわち、操作上の理由により、焼成温度が±10℃の範囲で焼成温度がばらついた。
(実施例9〜12)
各成分の配合割合は実施例2と同様とし、但し、全体の量を重量で3倍に増やしたこと以外は、実施例2と同様にして実施例9の薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た。
また、実施例10〜12においては、実施例9と同じ処理工程を実施して、実施例10〜12の薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得た。すなわち、実施例10〜12は実施例9を繰り返した例に相当する。ただし、全体量を20重量%増やしたことにより、焼成温度と焼成時間は同じでも、実際には焼成炉内中で、部分的に焼成のされ方にバラつきがあった。すなわち、操作上の理由により、焼成温度が±10℃の範囲で焼成温度がばらついた。
(実施例13〜14)
実施例13〜実施例14では、最終工程の焼成温度および焼成時間を400℃で10時間に変更した以外は、それぞれ実施例4と同様にして各工程処理を実施した。
実施例4〜8、実施例9〜12及び実施例13,14の各薄片化黒鉛・樹脂複合材料について、以下の要領で、メチレンブルー吸着量を測定した。
メチレンブルーの吸着量の測定
メスフラスコに、10mg/L、5.0mg/L、2.5mg/L、1.25mg/Lの濃度のメチレンブルーのメタノール溶液を調製した。メチレンブルーとしては、関東化学社製特級試薬のメチレンブルーを用いた。島津製作所製、紫外可視分光光度計(品番UV−1600)を用い、用意した上記4種類のメチレンブルー溶液の吸光度を測定し、検量線を作成した。
次に、50mLのメスフラスコ中に、メチレンブルー0.005gを入れ、測定溶媒としてメタノールを加え、100mg/Lのメチレンブルー溶液を調製した。このメチレンブルー溶液を、10倍に測定溶媒を用いて希釈し、10mg/Lのメチレンブルー溶液を得た。
100mLのナスフラスコに、スターラーバーと、測定対象のカーボン試料(0.05〜0.005g、試料のBET値によって変更)と、上記10mg/Lのメチレンブルー溶液50mLとを加えた後、超音波洗浄機を用いて15分間超音波処理した。このようにして、カーボン試料を分散させた後、25℃の温度で冷却バス中で60分撹拌した。
吸着平衡に達した後、遠心分離によりカーボン試料と上澄み液とを分離した。上記紫外可視分光光度計を用い、ブランクである10mg/Lのメチレンブルー溶液の吸光度と、上記上澄み液の吸光度とを測定した。
上記ブランクのメチレンブルー溶液の吸光度と上記上澄み液の吸光度との差、すなわち吸光度の減少量を算出した。この吸光度の減少量と、前述した検量線の傾きにより、メチレンブルー溶液の濃度の減少量を求めた。このメチレンブルー溶液の濃度の減少量から、以下の式により、カーボン表面へのメチレンブルーの吸着量を求めた。
吸着量(mol/g)={メチレンブルー溶液の濃度の減少量(g/L)×測定溶媒の体積(L)}/{メチレンブルーの分子量(g/mol)×仕込んだカーボン試料の質量(g)}
また、上記実施例4〜14で得た薄片化黒鉛・樹脂複合材料のBET比表面積を求めた。
さらに、実施例4〜14で得た薄片化黒鉛・樹脂複合材料における樹脂のグラフト率を以下の方法で求めた。
薄片化黒鉛への樹脂グラフト率(%)の測定
高圧加熱反応処理されたカーボン材料を含有するサンプル1〜10gを50倍重量の良溶媒で溶解した。超音波装置を用いて45kHz、100Wの出力で、常温で30分間分散処理を行った。
得られた溶液を、3μmの穴径を有するアドバンテック社製PTFE−T300A090Cを用いて、アスピレーターを用いて吸引をしながら濾過した。さらに、溶液量と同量の溶剤を添加して、再度濾過し、グラフェンに未反応のポリマーを洗浄濾過した。
ロ紙上のサンプルを、オーブンで乾燥し、含有する溶剤を除去した。該サンプルを用いて、TG/DTA測定結果から樹脂残存量を求め、グラフト率とした。
上記のようにして求めたメチレンブルー吸着量と、BET比表面積、並びにBET比表面積から求めた樹脂グラフト率を下記の表2に示す。
Figure 0005352028
また、上記BET比表面積とメチレンブルー吸着量との関係を図16に示す。
なお、図16および図17において、上記実施例4〜14とは別に、公知の炭素質材料のBET比表面積と上記のようにして測定したメチレンブルー吸着量との関係を併せて示す。図16および図17において、点P1(参考例4)は、球状黒鉛(社団法人日本粉体工業技術協会製、品番:RPSA−2)の結果を示す。点P2(参考例5)は、球状黒鉛(社団法人日本粉体工業技術協会製、品番:RPSA−3)の結果を示す。点P3(参考例6)は、球状黒鉛(ライオン株式会社、品番:EC−300J、平均粒子径40nm)の結果を示す。点P4(参考例7)は、球状黒鉛(ライオン株式会社、品番:EC−600JD、平均粒子径34nm)の結果を示す。図16では、公知の黒鉛材料として上記の4点(参考例4〜7)のみをプロットしたが、他の公知の炭素質材料においても、図16および図17に示すy=0.13x、但しr=0.99近くにプロットされることが確かめられている。
これに対して、実施例4〜14の薄片化黒鉛・樹脂複合材料では、図16および図17に示すように、y=0.13xよりもメチレンブルー吸着量がかなり多くなることがわかる。すなわち、y>0.13xであり、y/xは0.15以上である。図16および図17に示した実施例4〜14におけるyとxとの関係を求めると、y=0.47x、但しr=0.86である結果が得られた。
すなわち、上記実施例4〜14の薄片化黒鉛・樹脂複合材料では、乾式で測定されるBET比表面積に比べ、湿式下で測定されるメチレンブルー吸着量が非常に大きいことがわかる。よって、上記実施例4〜14の薄片化黒鉛・樹脂複合材料をメタノールに分散させた分散液の状態で樹脂に添加すれば、樹脂への分散性をより一層高め得ることがわかる。

Claims (18)

  1. 薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法であって、
    黒鉛または一次薄片化黒鉛と、ポリマーとを含み、前記ポリマーが前記黒鉛または一次薄片化黒鉛に固定されている組成物を用意する工程と、
    前記組成物中に含まれる前記ポリマーを開放系にて熱分解することにより、前記ポリマーの一部を残存させながら、前記黒鉛または一次薄片化黒鉛を剥離する工程とを備える、薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  2. 前記組成物を用意する工程において、前記ポリマーが前記黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化または吸着されていることにより、前記ポリマーが前記黒鉛または一次薄片化黒鉛に固定されている、請求項1に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  3. 前記組成物を用意する工程が、
    前記黒鉛または一次薄片化黒鉛と、ラジカル重合性モノマーとを含む混合物を用意する工程と、
    前記混合物に含まれる前記ラジカル重合性モノマーを重合することによって、前記混合物中にラジカル重合性モノマーが重合している前記ポリマーを生成すると共に、前記ポリマーを前記黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化させる工程とを含む、請求項2に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  4. 前記混合物を用意する工程において、前記混合物が熱分解性発泡剤をさらに含む、請求項3に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  5. 前記熱分解性発泡剤が、下記の式(1)〜式(4)に示される構造を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の加熱発泡剤である、請求項4に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
    Figure 0005352028
    Figure 0005352028
    Figure 0005352028
    Figure 0005352028
  6. 前記ポリマーを熱分解することにより、前記黒鉛または一次薄片化黒鉛を剥離する工程において、前記混合物に含まれる前記熱分解性発泡剤を熱分解する、請求項4または5に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  7. 前記ポリマーを生成すると共に、前記ポリマーを前記黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化させる工程において、前記混合物に含まれる前記熱分解性発泡剤を熱分解する、請求項4または5に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  8. 前記ポリマーを生成すると共に、前記ポリマーを前記黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化させる工程が、前記混合物を加熱することによって前記混合物に含まれる前記ラジカル重合性モノマーを重合することにより行われる、請求項4〜6のいずれか一項に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  9. 前記組成物を用意する工程において、前記ポリマーを前記黒鉛または一次薄片化黒鉛の存在下で、50℃以上かつ400℃以下の温度範囲の温度に加熱することにより前記ポリマーを前記黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフト化させる、請求項4に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  10. 前記組成物を用意する工程において、前記組成物が熱分解性発泡剤をさらに含む、請求項2または6に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  11. 前記熱分解性発泡剤が、下記の式(1)〜式(4)に示される構造を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の加熱発泡剤である、請求項10に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
    Figure 0005352028
    Figure 0005352028
    Figure 0005352028
    Figure 0005352028
  12. 前記ポリマーを熱分解することにより、前記黒鉛または一次薄片化黒鉛を剥離する工程において、前記組成物に含まれる前記熱分解性発泡剤を熱分解する、請求項10または11に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  13. 前記ラジカル重合性モノマーが、ビニル系モノマーである、請求項のいずれか一項に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  14. 前記ビニル系モノマーがスチレンまたはグリシジルメタクリレートである、請求項13に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  15. 前記薄片化黒鉛・樹脂複合材料として、10mg/L濃度のメチレンブルーのメタノール溶液の吸光度と、該メチレンブルーのメタノール溶液に薄片化黒鉛・樹脂複合材料を投入し、遠心分離により得られた上澄み液の吸光度との差に基づき測定された薄片化黒鉛・樹脂複合材料1gあたりのメチレンブルー吸着量(μモル/g)をy、該薄片化黒鉛・樹脂複合材料のBET比表面積(m/g)をxとした場合、比y/xが0.15以上であり、且つBET比表面積が、25m/g以上である、薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得る、請求項1〜14のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  16. 前記薄片化黒鉛・樹脂複合材料として、前記薄片化黒鉛複合材料における樹脂の熱分解開始温度及び熱分解終了温度が、それぞれ、前記複合化前の前記樹脂の熱分解開始温度及び熱分解終了温度よりも高い薄片化黒鉛・樹脂複合材料を得る、請求項1〜14のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  17. 前記薄片化黒鉛・樹脂複合材料における樹脂の含有量が、1質量%〜70質量%である、請求項15または16に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
  18. 前記薄片化黒鉛・樹脂複合材料において、前記樹脂がラジカル重合性モノマーの重合体である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法。
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