JP5349107B2 - 樹脂封止シートの製造方法及び樹脂封止シート - Google Patents

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本発明は、樹脂封止シートの製造方法及びその方法により製造された樹脂封止シートに関する。
近年、世界的な温暖化現象により環境に対する意識が高まり、炭酸ガス等の温暖化ガスを発生しない新しいエネルギーシステムが関心を集めている。太陽電池発電によるエネルギーは炭酸ガス等の温暖化の原因となるガスを排出しないため、クリーンなエネルギーとして研究開発が行われており、産業用エネルギーとして注目されている。太陽電池の代表例としては、単結晶、多結晶のシリコンセル(結晶系シリコンセル)を用いたものや、アモルファスシリコン、化合物半導体を用いたもの(薄膜系セル)等が挙げられる。太陽電池は、長期間、屋外で風雨に曝されて使用されることが多く、発電部分をガラス板やバックシート等を貼り合わせてモジュール化し、外部からの水分の侵入を防止することにより、発電部分の保護、漏電防止等を図っていた。
発電部分を保護する部材としては、発電に必要な光透過を確保するために、光入射側には透明ガラスや透明樹脂を使用している。反対側の部材には、バックシートと言われるアルミ箔、フッ化ポリビニル樹脂(PVF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やそのシリカ等のバリアーコート加工の積層シートが使用されている。そして発電素子を樹脂封止シートで挟み込み、ガラスやバックシートでさらに外部を被覆して熱処理を施すことにより樹脂封止シートを溶融し、全体を一体化封止(モジュール化)している。
上述した樹脂封止シートは、次の(1)〜(3)が特性として要求される。すなわち、(1)ガラス、発電素子、バックシートとの良好な接着性、(2)高温状態における樹脂封止シートの溶融に起因する発電素子の流動防止性(耐クリープ性)、(3)太陽光の入射を阻害しない透明性、である。このような観点から、樹脂封止シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)に、紫外線劣化対策として紫外線吸収剤、ガラスとの接着性向上のためのカップリング剤、架橋のための有機過酸化物等の添加剤を配合し、カレンダー成形やTダイキャストにより製膜されている。さらに長期に亘って太陽光に曝されることに鑑み、樹脂の劣化による光学特性の低下の防止を図るため、耐光剤等の各種添加剤が配合されている。これにより、長期にわたり太陽光の入射を阻害しない透明性を維持している。
上述したような樹脂封止シートにより太陽電池をモジュール化する形態として、ガラス/樹脂封止シート/結晶系シリコンセル等の発電素子/樹脂封止シート/バックシートの順で重ね合わせ、ガラス面を下にして専用の太陽電池真空ラミネーターを用いて、樹脂の溶融温度以上(EVAの場合は150℃の温度条件)で予熱する工程とプレス工程を経て、樹脂封止シートを溶融して貼り合わせる方法がある。当該方法においては、先ず、予熱工程で樹脂封止シートの樹脂が溶融し、プレス工程で溶融した樹脂に接している部材と密着して真空ラミネートされる。このラミネート工程においては、(i)樹脂封止シートに含有されている架橋剤、例えば有機過酸化物が熱分解し、EVAの架橋が促進された後、(ii)樹脂封止シートに含有しているカップリング剤が接触している部材と共有結合する。これにより、互いの接着性がより向上し、高温状態における樹脂封止シートの溶融に起因する発電部分の流動が防止(耐クリープ性)され、ガラス、発電素子、バックシートとの優れた接着性が実現されるのである。
特許文献1には、電子線照射によって架橋された有機高分子樹脂封止シートが、アモルファスシリコン太陽電池に積層したモジュールが開示されている。この有機高分子樹脂封止シートには、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)やエチレン−メチルアクリレート(EMA)等が用いられており、有機高分子樹脂シートに酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、シランカップリング剤を配合し、スリットから押出成形にてシーティングした樹脂封止シートを用いて発電部分やバックシートと150℃において真空ラミネートを実施することによりモジュールを作製している。特許文献1には、モジュールの受光面より加速電圧500kV、照射線量300kGyにて電子線を照射して架橋処理を行ったり、予め電子線照射により架橋処理を施した樹脂封止シートを用いて、180℃で真空ラミネートを実施してモジュールを作製することで、耐クリープ性及び耐候性に優れた太陽電池モジュールを提供できることが記載されている。
特許文献2には、電子線照射を施したエチレン共重合体からなる太陽電池素子封止材料が開示されている。エチレン共重合体の代表例として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)やエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体及びエチレン−不飽和カルボン酸共重合体から選ばれた樹脂を用いて、架橋ゲル化率65%以上の高い架橋度を付与することにより、封止材料が流動したり、変形したりすることを防止した耐クリープ性を有する太陽電池素子封止材料を提供できることが記載されている。
特許文献3には、架橋剤及びシランカップリング剤を配合したエチレンビニルアセテート共重合体からなるシートであって、エンボス加工を施した後に、一定のゲル分率まで放射線架橋させた例が開示されている。
特開平6−334207号公報 特開2001−119047号公報 特開平8−283696号公報
しかしながら、電子線照射により表面が活性化されたシートは、シートの密着力(以下、ブロッキングとも言う。)が強すぎて、巻物にした際にシートを剥ぎ取ることが困難となる。特許文献1及び2には、ブロッキング対策に関する記載はなく、実使用に耐え得るものではない。
特許文献3には、エンボス加工柄や巻取張力等の詳細に関する記載はなく、巻物のブロッキング対策に対する具体的な解決策は明示されていない。また、電子線照射により熱収縮が改善する旨の記載があるが、照射前のシートの熱収縮率が高く、そのため電子線照射時の加工安定性が不十分である。
上記事情に鑑み、本発明は、優れた耐クリープ性を有することに加え、シート同士がブロッキングすることなくハンドリングが良好で、且つ、熱による収縮が起こりにくい樹脂封止シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、樹脂封止シートを構成する熱可塑性樹脂を加熱溶融してシート状に成形した後、得られたシートにエンボス加工、電離性照射線による架橋処理をこの順で施すことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
以下の(i)〜(iii)の工程をこの順で含む、樹脂封止シートの製造方法:
(i)架橋剤を実質的に含まない、熱可塑性樹脂を加熱溶融してシート化する工程、
(ii)前記工程(i)で得られたシートにエンボス加工を施す工程、
(iii)前記工程(ii)でエンボス加工されたシートに電離性放射線による架橋処理を施す工程。
[2]
前記エンボス加工時に与えられる熱によって樹脂封止シートの配向を緩和する、上記[1]記載の樹脂封止シートの製造方法。
[3]
前記電離性放射線による架橋処理時に発生する熱によって樹脂封止シートの配向を緩和する、上記[1]記載の樹脂封止シートの製造方法。
[4]
前記エンボス加工後にシートを冷却する工程をさらに含む、上記[1]記載の樹脂封止シートの製造方法。
[5]
シートを巻物状に巻き取る工程をさらに含み、その際の巻取張力が3〜200N/1000mm幅である、上記[1]記載の樹脂封止シートの製造方法。
[6]
前記工程(i)により得られるシートの熱収縮率が、{(Tm)−10}℃において0〜15%である、上記[1]記載の樹脂封止シートの製造方法(ここで、Tmは熱可塑樹脂の融点を示す)。
[7]
前記工程(ii)において、2対のニップロールの間にエンボスロールを配し、前記エンボスロールの速度を1としたときに前記2対のニップロールの速度比を0.8〜1.2の範囲に調整する、上記[1]記載の樹脂封止シートの製造方法。
[8]
前記電離性放射線による架橋処理後のシートのゲル分率が2〜65質量%である、上記[1]記載の樹脂封止シートの製造方法。
[9]
前記エンボス加工が、樹脂封止シートの少なくとも片面に施されており、エンボス加工深さが10μm以上300μm以下であり、エンボス加工の模様が、縞、布目、梨地、皮紋、ダイヤ格子、合成皮革様しぼ模様、ピラミッド模様(四角錘)からなる群のいずれかに属する模様であり、エンボス加工による全面積に対する凸部分の面積比率が5〜50%である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂封止シートの製造方法。
[10]
上記[1]記載の方法で製造された樹脂封止シート。
本発明により、優れた耐クリープ性を有し、シート同士がブロッキングすることなくハンドリングが良好で、且つ、熱による収縮が起こりにくい樹脂封止シートの製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施の形態の樹脂封止シートの製造方法は、以下の(i)〜(iii)の工程をこの順で含む製造方法である。
(i)熱可塑性樹脂を加熱溶融してシート化する工程、
(ii)前記工程(i)で得られたシートにエンボス加工を施す工程、
(iii)前記工程(ii)でエンボス加工されたシートに電離性放射線による架橋処理を施す工程。
本実施の形態の製造方法は、(i)加熱溶融によるシート化工程、(ii)エンボス加工工程、(iii)電離性放射線照射による架橋処理工程からなり、これらの工程をこの順番で実施する。上記工程以外にも、ヒートセット、アニール等の工程を含んでもよいが、シートに熱をかける工程は、エンボス柄維持の観点から、架橋処理工程の後に実施することが好ましい。これらの工程は、一連のラインで連続して実施してもよく、各工程に分け、別々に実施しても構わない。工程の順番としては、エンボス加工を施した後に架橋処理を実施する。これは、電離性放射線の照射を実施するとシート表面が活性化され、シート同士がよりブロッキングしやすくなるため、巻き取ったシートを剥離することが困難になるためである。また、架橋処理後、連続してエンボス加工を施した場合でも、工程内のロール等に貼り付きやすいため、加工安定性が低下するという問題がある。また、架橋後のシートは、エンボス加工が入りにくくなるという点からも問題を有している。
樹脂封止シートが熱により収縮しないようにするためには、シート温度が高いときにシートに張力をかけないことが重要である。これは、全ての工程において共通である。例えば、(i)加熱溶融によるシート化工程では、樹脂を加熱溶融させてシート状に成形した後、シートが冷却されるまでの段階が挙げられる。(ii)エンボス加工工程では、エンボス加工後、シートが冷却されるまでの段階の他、予熱工程を有する場合にはこの段階も含む。(iii)電離性放射線による架橋処理工程においては、電離性放射線の照射により加熱されている箇所が挙げられる。さらに、ヒートセット工程やアニール工程を含む場合は、これらの段階も対象となる。シートの熱収縮を抑制する観点から、シート温度が{(Tm)−40}℃以上になる箇所において張力を調整することが好ましい。張力を調整する方法としては、特に限定されないが、低張力及びマイナス張力(弛み)範囲の制御精度の観点から、ロールの速度比を調整することが好ましい。この場合のロールとは、ニップロールや駆動ロールのことをいう。この場合、工程川上に配されたロールの速度を1とした場合、川下のロールの速度は0.8〜1.2であることが好ましい。各ロールの速度が上記範囲であると、シートの蛇行を防ぎつつ、熱収縮をより抑制しやすくなる傾向にある。
樹脂封止シートは、最終的には巻物状に巻き取る。すべての工程を一連のラインで連続的に実施した場合、架橋処理工程の後にシートを巻物状に巻き取る工程(巻取工程)を実施することになる。また、それぞれの工程を別々に実施した場合、それぞれの工程毎に巻取工程を実施することになる。この際の巻取張力は、製品巻きずれとブロッキング防止の観点から、製品幅1000mmに対して3〜200Nが好ましく、5〜150Nがより好ましい。なお、最終的に太陽電池モジュールを作製する際には、樹脂封止シートの巻物をそのまま使用してもよいし、巻物を所望のサイズに切り落としたもの(枚葉加工品)を使用してもよい。
[工程(i)]
工程(i)は、熱可塑性樹脂を加熱溶融してシート化する工程である。ここで、「シート化」とは加熱溶融した樹脂をシート状に成形することをいう。シート化する方法としては、Tダイや環状ダイによる押出成形法、インフレーション成形法、射出成形法、熱プレス成形法、カレンダー成形法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、加熱溶融後にシートを冷却する方法として、冷水による冷却(水冷)、風による冷却(空冷)、ロールによる冷却等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、加熱溶融してシート状に成形した後、冷却する前にエンボス加工を施してもよい。シートは単層でも多層でもよく、多層の場合、多層化する方法として、多層ダイによる押出や、フィルムを貼り合わせる(ラミネート)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
工程(i)により得られるシートの熱収縮率は、熱可塑性樹脂の融点をTmとした場合に、{(Tm)−10}℃において0〜15%が好ましく、0〜10%がより好ましい。シートの熱収縮率が上記範囲であると、エンボス加工後のシートの熱収縮率をより低く抑えやすい。また、シートの熱収縮率の観点から、加熱溶融時の樹脂温度は{(Tm)+10}〜{(Tm)+150}℃が好ましく、{(Tm)+20}〜{(Tm)+130}℃がより好ましい。ここで、熱可塑性樹脂の融点Tmは、示差走査熱良計を使用し、樹脂約5mgを0℃から200℃まで20℃/分の速度で昇温させ、200℃で5分間溶融保持した後に−50℃以下まで急冷し、次いで0℃から200℃まで20℃/分で昇温させた際に得られる融解に伴う吸熱ピークの温度をいう。
さらに、上述したように、シート化後、シート温度が{(Tm)−40}℃以下に冷却されるまでは、張力を調整することが好ましい。張力の調整方法としては特に限定されないが、低張力及びマイナス張力(弛み)範囲の制御精度の観点から、ロールの速度比を調整することが好ましい。この場合のロールとは、ニップロールや駆動ロールのことをいう。この場合、工程川上に配されたロールの速度を1とした場合、川下のロールの速度は0.8〜1.2であることが好ましい。各ロールの速度が上記範囲であると、シートの蛇行を防ぎつつ、熱収縮をより抑制しやすくなる傾向にある。
工程(i)により得られるシートの厚みは、50〜1500μmが好ましい。より好ましくは100〜1000μmであり、さらに好ましくは150〜800μmである。シートの厚みが上記範囲であると、シートの生産性がよく、封止シートの必要物性であるクッション性にも優れる傾向にある。また、シートの厚み変動率は、0.5〜30%が好ましく、0.5〜25%がより好ましい。厚み変動率とは、シート厚み(t)に対するシートの厚み変動値(最大厚みと最小厚みの差:R)の比率(R/t)のことをいう。厚み変動率が上記範囲であると、エンボス加工時の加工深さが均一になりやすい他、各工程におけるシート搬送時の蛇行が起こりにくくなり、加工安定性がより良好となる傾向にある。
[工程(ii)]
工程(ii)は、工程(i)で得られたシートにエンボス加工を施す工程である。エンボス加工は、加熱溶融によるシート化工程からシートを巻き取るまでの間に施してもよく、シート化工程で一旦巻物にした後、オフラインで実施してもよい。エンボス加工を施していないシートはブロッキングしやすいため、エンボス加工はシート化工程から巻き取るまでの間に施す方が好ましい。
エンボス加工の方法としては、先に述べたように、シート化工程において、冷却する前に加工を施す方法の他、IRヒーターや温調ロール等によりシートに予熱を加えて加工を施す方法や、予熱を用いず、加熱したエンボスロールにより加工を施す方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。エンボス加工工程においては、加工方法により熱媒は異なるものの、いずれの場合もシートは必ず熱を受ける。この熱により、加熱溶融によるシート化工程で発生したシートの配向は緩和され、熱による収縮が低減される傾向にある。シートの配向緩和効果の観点から、エンボス加工の方法としては、シートに予熱を加える方法が好ましい。予熱時のシート温度は、配向緩和効果、エンボス加工深さ及びエンボス加工安定性の観点から、{(Tm)−20}〜{(Tm)+40}℃が好ましく、{(Tm)−15}〜{(Tm)+35}℃がより好ましい。
上述したように、エンボス加工工程においてはシートが加熱される。この際、シートに張力をかけるとシートが伸び、熱収縮が増大する要因となる。そのため、エンボス加工を施す際には、シートにかかる張力を適正な範囲に調整することが好ましい。張力の調整方法としては特に限定されないが、低張力及びマイナス張力(弛み)範囲の制御精度の観点から、2対のニップロール間にエンボスロールを配し、これらのロールの速度比を調整することが好ましい。具体的には、エンボスロールの速度を1とした際の各ニップロールの速度比は0.8〜1.2であることが好ましい。各ロールの速度比が上記範囲であると、エンボス加工安定性を維持しつつ、熱収縮をより抑制しやすくなる傾向にある。
また、エンボス加工後になるべく早くシート温度を下げることも、熱収縮抑制には効果的である。この観点から、本実施の形態の製造方法においては、エンボス加工後にシートを冷却する工程をさらに含むことが好ましい。シートを冷却する方法としては、水冷ロールやチルロールによる冷却や、冷風による冷却等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
エンボス加工を施すエンボスロールの材質としては、金属、ゴム、ペーパー等が挙げられるが、特に限定はされない。また、シートの貼りつき防止を目的とし、テフロン(登録商標)やシリコン等を用いて、ロール表面に高剥離化処理を施しても構わない。
エンボス加工は、樹脂封止シートの少なくとも片面に施されていればよく、両面加工していても構わない。シートのブロッキング防止性能の観点から、エンボス加工深さは10μm以上が好ましく、より好ましくは15μm以上である。また、加工深さは300μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下である。太陽電池モジュールを作製する際に、セルの間の隙間を封止する必要があるが、加工深さが上記範囲であると、電子線架橋により加熱時の樹脂シートの流動性が低下した状態においても、より良好に封止しやすくなる傾向にある。エンボス加工の模様としては特には限定されないが、例えば、縞、布目、梨地、皮紋、ダイヤ格子、合成皮革様しぼ模様、ピラミッド模様(四角錘)等が挙げられる。シートのブロッキング防止性の観点からは、エンボス加工後のシートは平面部が少ない方が好ましく、全面積に対する凸部分の面積比率は、5〜50%であることが好ましい。
[工程(iii)]
工程(iii)は、工程(ii)でエンボス加工されたシートに電離性放射線による架橋処理を施す工程である。電離性照射線による架橋処理とは、樹脂封止シートにα線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を照射し、シートを構成するポリマーを架橋させることである。α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を照射させて架橋することで、熱可塑性樹脂、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体の共重合体等の側鎖部分の脱離による有機酸やパーオキサイド等の未反応成分を樹脂中に残留させることを防止し、未反応成分による太陽電池セルや導電性機能層又は配線への悪影響を防止できる。
本実施の形態の製造方法においては、エンボス加工工程の後に、電離性放射線照射によりシートに架橋を施す。架橋処理は、エンボス加工からシートを巻き取るまでの間に施してもよく、エンボス加工工程において一旦巻物にした後、オフラインで実施してもよいが、必ずエンボス加工後に実施する。これは、電離性放射線照射によりシート表面が活性化されてシート同士がよりブロッキングしやすくなるため、エンボス加工を施さずに巻き取ると、シートの剥離が困難になるためである。架橋後、連続してエンボス加工を施した場合でも、工程内のロール等に貼り付きやすいため、加工安定性が低下するという問題がある。また、架橋後のシートは、エンボス加工が入りにくくなるという点からも問題を有している。
電離性放射線照射により架橋を施すことにより、シートに優れた耐クリープ性を付与することができる他、シートの熱収縮率を低減させる効果がある。これは、架橋処理時に発生する熱により、シートの配向が緩和されるためである。さらに、架橋により高分子鎖の運動が抑制されることも熱収縮低減効果の理由として挙げられる。
シートの架橋度は、ゲル分率を測定することにより評価できる。本実施の形態における架橋処理後の樹脂封止シートのゲル分率は2〜65質量%が好ましく、3〜65質量%がより好ましく、3〜60質量%がさらに好ましい。ゲル分率が上記範囲であると、架橋度の均一性と、太陽電池モジュールのセル間の隙間を封止する際の隙間埋め性と流動性(耐クリープ性)とのバランスが良好となる。
ここで、樹脂封止シートのゲル分率は、沸騰p−キシレン中で試料を12時間抽出し、不溶解部分の割合を次式により表示したもので、樹脂封止シートの架橋度の尺度として用いられる。
ゲル分率(wt%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
シートの厚み方向の架橋分布は、電子線等の電離性放射線の加速電圧により調整可能である。例えば、加速電圧を高くすることにより、厚み方向に対して均一に架橋させたり、逆に加速電圧を低くすることにより、シートの片面のみを架橋させることが可能である。そのため、電離性放射線の加速電圧は、シートの厚みを考慮しつつ、所望する架橋分布になるように適宜調整すればよく、特に限定されない。
電離性放射線照射による架橋反応は、熱可塑性樹脂に添加される安定剤や耐候剤等の影響を受けるため、同じ樹脂を同条件で照射しても、添加剤処方が異なれば架橋度は異なる。そのため、電離性放射線の照射線量は、所望のゲル分率となるように適宜調整すればよく、特に限定されない。また、ゲル分率の調整方法として、電離性放射線の照射線量の他、樹脂種類による架橋度合いの違いや、転移化剤等による架橋促進や、架橋抑制の効果を利用してもよい。例えば、ケン化オレフィン系共重合体、エチレンモノマーと酢酸ビニル、脂肪族不飽和カルボン酸、脂肪族不飽和カルボン酸エステル等の極性基を有する樹脂を表面層とし、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(「VLDPE」、「ULDPE」と呼ばれているもの)樹脂を内層とした場合は、全層透過させるために十分な加速電圧であっても表面層のゲル分率は高く、内層のゲル分率は低くすることができる。更に、加速電圧を調整することによって、内層の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(「VLDPE」、「ULDPE」と呼ばれているもの)樹脂層を架橋しない未架橋層として構築しつつ、電子線照射による架橋処理を施すことができる。また、内層としてポリプロピレン系樹脂を配した場合は、ポリプロピレン系樹脂は電子線等によって架橋しないため、未架橋層を構築できる。
また、本実施の形態の熱可塑性樹脂は、架橋剤を添加していてもよい。架橋剤としては、有機過酸化物が挙げられ、これを樹脂中に配合し、あるいは含浸させて熱架橋を行う。この場合100〜130℃における半減期が1時間以内の有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、エチレン系共重合体との良好な相溶性が得られ、且つ、前記半減期を有するものとして、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等が挙げられる。有機過酸化物の含有量は、エチレン系共重合体に対して0〜10質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましい。ただし、これら架橋剤を添加した場合、シート化工程で樹脂を溶融させる際の熱により、シートが架橋してしまう懸念がある。エンボス加工をより安定に、また、熱収縮を発生させないようなマイルドな条件で実施するためには、エンボス前のシートの架橋度は低い方が好ましいので、これらの架橋剤は添加しない(実質的に含まない)ことが好ましい。
次に、本実施の形態の樹脂封止シートを構成する熱可塑性樹脂について説明する。熱可塑性樹脂としては、接着性や封止性能の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレンモノマーと酢酸ビニルとの共重合により得られる共重合体を示す。また、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体とは、エチレンモノマーと、脂肪族不飽和カルボン酸から選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる共重合体を示す。さらに、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体とは、エチレンモノマーと、脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる共重合体を示す。
上記共重合は、高圧法、溶融法等の公知の方法により行うことができ、重合反応の触媒としてマルチサイト触媒やシングルサイト触媒等を用いることができる。また、上記共重合体において、各モノマーの結合形状は特に限定されず、ランダム結合、ブロック結合等の結合形状を有するポリマーを使用することができる。なお、光学特性の観点から、上記共重合体としては、高圧法を用いてランダム結合により重合した共重合体が好ましい。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、光学特性、接着性、柔軟性の観点から、共重合体を構成する全モノマー中の酢酸ビニルの割合が、10〜40質量%であることが好ましく、13〜35質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが更に好ましい。また、樹脂封止シートの加工性の観点より、JIS−K−7210に準じて測定されるメルトフローレートの値(以下、「MFR」とも略記される。)(190℃、2.16kg)が0.3g/10min〜30g/10minであることが好ましく、0.5g/min〜30g/minであることがより好ましく、0.8g/min〜25g/minであることが更に好ましい。
上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体(以下、「EAA」とも略記される。)、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下、「EMAA」とも略記される。)等が挙げられる。また、上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。ここで、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メタノール、エタノール等の炭素数1〜8のアルコールとのエステルが好適に使用される。
これらの共重合体は、3成分以上のモノマーを共重合してなる多元共重合体であってもよい。上記多元共重合体としては、例えば、エチレン、脂肪族不飽和カルボン酸及び脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも3種類のモノマーを共重合してなる共重合体が挙げられる。
上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体は、共重合体を構成する全モノマー中の脂肪族不飽和カルボン酸の割合が、3〜35質量%であることが好ましい。また、MFR(190℃、2.16kg)は、0.3g/10min〜30g/10minであることが好ましく、0.5g/10min〜30g/10minであることがより好ましく、0.8g/10min〜25g/10minであることが更に好ましい。
また、樹脂封止シートを構成する樹脂中には、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体が含まれていてもよい。グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体とは、反応サイトとしてエポキシ基を有するグリシジルメタクリレートとのエチレンコポリマー及びエチレンターポリマーを示し、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。上記化合物は、グリシジルメタクリレートの反応性が高いため安定した接着性を発揮でき、また、ガラス転移温度が低く柔軟性が良好となる傾向にある。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂が好ましい。ここでポリエチレン系樹脂とは、エチレンの単独重合体又はエチレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体を示す。また、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体を示す。
上記ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
上記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(「VLDPE」、「ULDPE」と称される。)等が挙げられる。
上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体であることが好ましく、エチレンと、炭素数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体であることがより好ましい。上記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用することができる。また、共重合体を構成する全モノマー中のα−オレフィンの割合(仕込みモノマー基準)は、6〜30質量%であることが好ましい。さらに、上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、軟質の共重合体であることが好ましく、X線法による結晶化度が30%以下であることが好ましい。
また、上記エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレンと、プロピレンコモノマー、ブテンコモノマー、ヘキセンコモノマー及びオクテンコモノマーから選ばれる少なくとも1種のコモノマーとの共重合体が、一般に入手が容易であり、好適に使用できる。
上記ポリエチレン系樹脂は、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができ、シングルサイト系触媒を用いて重合することが好ましい。また上記ポリエチレン系樹脂は、クッション性の観点から、密度が0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であることが更に好ましい。密度が0.920g/cm3以下であると、クッション性が良好となる傾向にある。なお、密度が0.920g/cm3を超えると透明性が悪化するおそれがある。高密度のポリエチレン系樹脂を用いる場合には、低密度のポリエチレン系樹脂を、例えば、30質量%程度の割合で添加することで透明性を改善することもできる。
上記ポリエチレン系樹脂は、樹脂封止シートの加工性の観点から、MFR(190℃、2.16kg)が0.5g/10min〜30g/10minであることが好ましく、0.8g/10min〜30g/10minであることがより好ましく、1.0g/10min〜25g/10minであることが更に好ましい。
上記ポリエチレン系樹脂としては、結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したポリエチレン系共重合体を使用することもできる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンとエチレンとα−オレフィンとの3元共重合体等が挙げられる。
上記プロピレン−α−オレフィン共重合体とは、プロピレンとα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体を示す。上記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体が好ましく、プロピレンと、エチレン及び炭素数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種からなる共重合体がより好ましい。ここで炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用することができる。また、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成する全モノマー中のエチレン及び/又はα−オレフィンの含有割合(仕込みモノマー基準)は、6〜30質量%であることが好ましい。さらに、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、軟質の共重合体であることが好ましく、X線法による結晶化度が30%以下であることが好ましい。
上記プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレンと、エチレンコモノマー、ブテンコモノマー、ヘキセンコモノマー及びオクテンコモノマーから選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとの共重合体が、一般に入手が容易であり、好適に使用できる。
上記ポリプロピレン系樹脂は、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができ、シングルサイト系触媒を用いて重合することが好ましい。また上記ポリプロピレン系樹脂は、クッション性の観点から、密度が0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であることが更に好ましい。密度が0.920g/cm3以下であると、クッション性が良好となる傾向にある。なお、密度が0.920g/cm3を超えると透明性が悪化するおそれがある。
上記ポリプロピレン系樹脂は、樹脂封止シートの加工性の観点から、MFR(230℃、2.16kgf)が0.3g/10min〜15.0g/10minであることが好ましく、0.5g/10min〜12g/10minであることがより好ましく、0.8g/10min〜10g/10minであることが更に好ましい。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したポリプロピレン系共重合体を使用することもできる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンと、エチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンとの共重合体、又は、プロピレンと、エチレンと、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンとの3元共重合体等が好適に使用できる。これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体等のいずれの形態でもよく、好ましくはプロピレンとエチレンとのランダム共重合体、又は、プロピレンとエチレンとブテンとのランダム共重合体である。
上記ポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒のような触媒で重合された樹脂だけでなく、メタロセン系触媒等で重合された樹脂でよく、例えば、シンジオタクチックポリプロピレンや、アイソタクティックポリプロピレン等も使用できる。また、ポリプロピレン系樹脂を構成する全モノマー中のプロピレンの割合(仕込みモノマー基準)は、60〜80質量%であることが好ましい。さらに、熱収縮性が優れるという観点から、ポリプロピレン系樹脂を構成する全モノマー中のプロピレン含有割合(仕込みモノマー基準)が60〜80質量%であり、エチレン含有割合(仕込みモノマー基準)が10〜30質量%であり、ブテン含有割合(仕込みモノマー基準)が5〜20質量%である3元共重合体が好ましい。
また上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂の総量に対して50質量%以下の高濃度のゴム成分を均一微分散させてなる樹脂を用いることもできる。
樹脂封止シートを構成する樹脂が上記ポリプロピレン系樹脂を含有することで、硬さ、耐熱性等の特性が一層向上する傾向にある。
また、ポリブテン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が特に優れるため、樹脂封止シートの硬さや腰の調整を目的として、上記ポリプロピレン系樹脂と併用することが好ましい。上記ポリブテン系樹脂としては、結晶性であり、ブテンと、エチレン、プロピレン及び炭素数5〜8のオレフィン系化合物から選ばれる少なくとも1種からなる共重合体であり、かつ、ポリブテン系樹脂を構成する全モノマー中のブテンの含有量が70モル%以上である高分子量のポリブテン系樹脂が好適に使用できる。
上記ポリブテン系樹脂は、MFR(190℃、2.16kg)が0.1g/10min〜10g/10minであることが好ましい。また、ビカット軟化点が40〜100℃であることが好ましい。ここで、ビカット軟化点はJIS K7206−1982に従って測定される値である。
本実施の形態の樹脂封止シートは、単層構造、多層構造のいずれの構造を有していてもよい。以下、各構造について説明する。
[単層構造]
樹脂封止シートが単層構造を有する場合、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取扱性を確保する観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる層であることが好ましい。
[多層構造]
本実施の形態における樹脂封止シートは、表面層と、前記表面層に積層された内層とを含む少なくとも2層以上の多層構造を有していてもよい。ここで、樹脂封止シートの両表面を形成する2層を「表面層」といい、それ以外を「内層」という。
多層構成を有する場合、表面層にはガラスやバックシートへの接着性が良好な樹脂を使用し、内層にはクッション性や水蒸気バリア性等に優れる樹脂や、水及び/又はガス捕捉剤を含有した樹脂を使用すると、接着性や段差埋め込み性を損なうことなく、高機能化を達成することができる。また、内層に安価な樹脂を使用したり、封止シートのリサイクル材等の安価な原料を使用すると、コスト低減にも繋がる。
表面層としては、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取扱性を確保する観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
被封止物と接触する表面層の層比率は、良好な接着性を確保する観点から、樹脂封止シートの全厚に対し、少なくとも5%以上の厚さを有していることが好ましい。厚さが5%以上であると、上述した単層構造の場合と同等の接着性が得られる傾向にある。
内層を構成する樹脂としては、特に限定されず、上述した表面層に含まれる樹脂に加えて、他のいかなる樹脂を用いてもよい。内層には、他の機能を付与することを目的として、樹脂材料、混合物、添加物等を適宜選定できる。例えば、新たにクッション性を付与する目的として、内層として熱可塑性樹脂を含有する層を設けてもよい。
内層として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩素系エチレンポリマー系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられ、生分解性を有したものや植物由来原料系のもの等も含まれる。上記の中でも、結晶性ポリプロピレン系樹脂との相溶性がよく、透明性が良好な水素添加ブロック共重合体樹脂、プロピレン系共重合樹脂、エチレン系共重合体樹脂が好ましく、水素添加ブロック共重合体樹脂及びプロピレン系共重合樹脂がより好ましい。
水素添加ブロック共重合体樹脂としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体が好ましい。ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。共役ジエンとは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
プロピレン系共重合体樹脂としては、プロピレンとエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンとから得られる共重合体が好ましい。そのエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンの含有量は6〜30質量%が好ましい。この炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられる。
プロピレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒を用いて重合されたものでもよい。さらにポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したプロピレン系共重合体を使用できる。
エチレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒で重合されたものでもよい。また、ポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したエチレン系共重合体を使用できる。
内層の材料としてポリエチレン系樹脂を用いる場合、ポリエチレン系樹脂の密度は、適度なクッション性を得る観点から、0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であることが更に好ましい。密度が0.920g/cm3以上の樹脂層を被封止物と接触しない層(内層)として形成した場合、透明性が悪化する傾向にある。
また、樹脂封止シートは、中央層の両面に、中央層に対して対称の配置となるように同一成分の層が1又は2以上積層された構造を有していてもよい。このような樹脂封止シートとしては、例えば、2層の表面層(以下、「スキン層」と記載する場合がある。)と3層の内層からなる樹脂封止シートであって、2層の表面層が同一成分からなり、表面層に隣接する2層の内層(以下、「ベース層」と記載する場合がある。)が同一成分からなる樹脂封止シートが挙げられる。
上記構造を有する樹脂封止シートにおいて、表面層の膜厚は、樹脂封止シート全体の膜厚に対して5〜40%であることが好ましく、上記ベース層の膜厚は、樹脂封止シート全体の膜圧に対して50〜90%であることが好ましく、ベース層に挟まれた内層(以下、「コア層」と記載する場合がある。)の膜厚は、樹脂封止シート全体の膜厚に対して5〜40%であることが好ましい。
次に、樹脂封止シート加工性の観点について検討する。樹脂封止シートを構成する樹脂のMFR(190℃、2.16kg)は、良好な加工性を確保する観点から、0.5〜30g/10minであることが好ましく、0.8〜30g/10minであることがより好ましく、1.0〜25g/10minであることが更に好ましい。樹脂封止シートが2層以上の多層構造の場合、内層(ベース層やコア層)を構成する樹脂のMFRは、樹脂封止シート加工性の観点から、表面層のMFRより低いことが好ましい。
本実施の形態における樹脂封止シートには、特性を損なわない範囲で、各種添加剤、例えば、カップリング剤、防曇剤、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、無機フィラー、架橋調整剤等を添加してもよい。
樹脂封止シートには、安定した接着性を確保する目的でカップリング剤を添加してもよい。上記カップリング剤の添加量及び種類は、所望の接着性の度合いや被接着物の種類によって適宜選択できる。上記カップリング剤の添加量としては、カップリング剤を添加する樹脂層の全質量基準で、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.03〜4質量%であることがより好ましく、0.05〜3質量%であることが更に好ましい。上記カップリング剤の種類としては、樹脂層に、太陽電池セルやガラスへの良好な接着性を付与する物質が好ましく、例えば、有機シラン化合物、有機シラン過酸化物、有機チタネート化合物等が挙げられる。また、これらのカップリング剤は、押出機内にて樹脂に注入混合する、押出機ホッパー内に混合して導入する、マスターバッチ化して混合して添加する等の公知の添加方法で添加することができる。ただし、押出機を経由する場合、押出機内の熱や圧力等によりカップリング剤の機能が阻害されることがあるため、カップリング剤の種類によっては添加量を適宜調整する必要がある。また、カップリング剤の種類は、樹脂封止シートの透明性や分散具合の観点、押出機への腐食や押出安定性の観点等を考慮して、適宜選択すればよい。好ましいカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラングリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の不飽和基やエポキシ基を有するものが挙げられる。
また、樹脂封止シートには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加することができる。特に長期に渡って透明性や接着性を維持する必要がある場合、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加することが好ましい。これらの添加剤を樹脂に添加する場合、その添加量は、添加する樹脂の総量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系等の酸化防止剤が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等は樹脂封止シートを構成する樹脂中に、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%を添加する。エチレン系樹脂に添加する場合、シラノール基を有する樹脂をマスターバッチ化して混合することで、さらに接着性を付与することもできる。添加方法としては、特に限定されず、液体の状態で溶融樹脂に添加する、直接対象樹脂層に練り込み添加する、シーティング後に塗布する等の方法が挙げられる。
樹脂封止シートは、厚さが50〜1500μmであることが好ましく、100〜1000μmであることがより好ましく、150〜800μmであることが更に好ましい。厚さが50μm未満であると、構造的にクッション性が乏しい場合や、作業性の観点で、耐久性や強度に問題が生ずる傾向にある。一方、厚さが1500μmを超えると、生産性の低下や密着性の低下を招来するという問題が生じる傾向にある。
次に、樹脂封止シートの光学特性について説明する。光学特性の指標としてはヘイズ値が用いられる。ヘイズ値が10.0%以下であると樹脂封止シートにより封止された被封止物を外観上確認できると同時に、太陽電池の封止材として用いた場合に、実用上十分な発電効率が得られるため好ましい。上記観点から、ヘイズ値は9.5%以下であることが好ましく、9.0%以下であることがより好ましい。ここで、ヘイズ値は、ASTM D−1003に準拠して測定することができる。
また、樹脂封止シートは、太陽電池の封止材として用いた場合に、実用上十分な発電効率を確保するために、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、88%以上であることが更に好ましい。ここで、全光線透過率は、ASTM D−1003に準拠して測定することができる。
以下に実施例、比較例に基づき本実施の形態を詳細に説明するが、本実施の形態は、本発明の主旨を超えない限り本実施例に限定されるものではない。なお、本実施例で用いる評価方法は下記の通りである。また、本実施例中の部及び%は、特に断らない限り質量基準である。
<熱可塑性樹脂のVA>
JIS−K−7129に準拠して測定した。
<熱可塑性樹脂のMFR>
JIS―K−7210に準拠して測定した。
<熱可塑性樹脂の密度>
JIS―K−7112に準拠して測定した。
<熱可塑性樹脂の融点>
ティーエイインスツルメント社製の示差走査熱良計「MDSC2920型」を使用し、樹脂約5mgを0℃から200℃まで20℃/分の速度で昇温させ、200℃で5分間溶融保持した後に−50℃以下まで急冷し、次いで0℃から200℃まで20℃/分で昇温させた際に得られる融解に伴う吸熱ピークの温度を融点とした。
<ゲル分率>
沸騰p−キシレン中で試料を12時間抽出し、不溶解部分の割合を次式により表示したもので、樹脂封止シートの架橋度の尺度として用いた。
ゲル分率(wt%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
<熱収縮率>
{(樹脂の融点)―10}℃に設定した恒温槽の中に100mm角のサンプルを5分間投入した後、サン プルの流れ方向、幅方向それぞれについて寸法を測定し、寸法変化の大きいほうの変化率を熱収縮率とした。
<巻物の剥離性(ブロッキング防止性)評価>
全工程終了後の巻物状の製品をはがし、剥がし易さを評価した。
◎:自然と剥がれる
○:手で容易に剥離可能
×:剥離困難
<太陽電池発電部のずれ評価>
太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス150cm×100cm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/発電部分(単結晶シリコンセル(厚さ250μm):これを6×8列に配置)/樹脂封止シート/太陽電池用ガラス板の順に重ね、LM―SA220型真空ラミネート装置(NPC社製)を用いて、150℃にて真空ラミネート(ラミネート時間:真空時間5分、プレス時間10分)を行い、発電部分の単結晶シリコンセルのずれを測定した。
◎:元の位置からのずれが、0〜3mm
○:元の位置からのずれが、3〜8mm
×:元の位置からのずれが、8mm以上
<太陽電池発電部分隙間埋め評価>
太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス5cmX10cm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/発電部分(単結晶シリコンセル(厚さ250μm)/樹脂封止シート/太陽電池用ガラス板の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて150℃にて真空ラミネートし、発電部分の単結晶シリコンセルの樹脂封止シートとの接触状況を目視にて確認した。
◎:ラミネート時間が真空2分、プレス5分においても、単結晶シリコンセルと樹脂封止シートとの接 触部分がすべて良好。(隙間なし)
○:ラミネート時間が真空5分、プレス10分において単結晶シリコンセルと樹脂封止シートとの接触 部分がすべて良好。(隙間なし)
×:単結晶シリコンセルと樹脂封止シートとの接触部分に隙間が生じた。(ほぼすべてに隙間あり)
<耐クリープ性評価>
太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス5cmX10cm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/発電部分(単結晶シリコンセル(厚さ250μm)/樹脂封止シート/太陽電池用ガラス板の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて真空ラミネートし、積層した太陽電池の一方のガラス板を85℃に設定した恒温槽の壁面に固定し、24時間放置し、他方のガラス板とのズレを測定した。
◎:ガラス板のズレはなし
○:ガラス板のずれが3mm以下
×:ガラス板のズレが3mm以上。
実施例及び比較例において用いた各材料は以下の通りである。
<熱可塑性樹脂>
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体
(実施例1〜17、実施例24〜31、比較例1〜4)
東ソー社製 ウルトラセン751
(実施例18)
東ソー社製 ウルトラセン631
(実施例19)
東ソー社製 ウルトラセンYX13
(2)線状超低密度ポリエチレン
ダウ・ケミカル日本社製 Engage8180
(3)低密度ポリエチレン
旭化成ケミカルズ社製 サンテックM2004
(4)エチレン−プロピレン共重合体
サンアロマー社製 5C30F
(5)エチレン−アクリル酸共重合体
ダウ・ケミカル日本社製 EAA449
<架橋剤>
アルケマ吉富社製 ルペロックス101
熱可塑性樹脂としてエチレン―酢酸ビニル共重合体を用い、全工程を連続で実施した例を表1及び2に示す。
[実施例1]
押出機を使用して樹脂を溶融押出し、冷却工程を経た後、エンボス加工、電子線照射による架橋を実施し、巻物状に巻き取った。エンボス加工条件として、IRヒーターを用いてシートに予熱を加え、エンボス加工し、水冷ロールにてシートを冷却した。また、エンボスロールの前後のニップロールはエンボスロールと同速とした。エンボス柄はピラミッド柄とし、加工深さは100μmになるように、エンボスロールニップ圧等を調整した。架橋条件として、加速電圧を500kVとし、ゲル分率が15質量%となるよう照射線量を調整した。架橋工程後、巻き取る際の巻取張力は、5N/1000mm幅とした。得られた樹脂封止シートの巻物の剥離性は良好であり、かつ、ラミネート時の熱収縮や隙間埋め性、耐クリープ性も問題なく、ハンドリング性と実用性を兼ね備えたものであった。
[実施例2〜17]
実施例2〜4に示すように、エンボス方式として、加熱ロールを用いて予熱を加えた場合(実施例2)、予熱なく、加熱したエンボスロールで加工した場合(実施例3)、樹脂を溶融押出後、冷却する前にエンボス加工を実施した場合(実施例4)のいずれの場合も巻物の剥離性は良好で、かつ熱収縮による太陽電池発電部セルのずれも発生しない良好なシートが得られた。また、実施例5〜8に示すように、エンボスロール前後の張力条件を変更したが、同様に熱収縮等の良好な樹脂封止シートが得られた。さらに、実施例9〜10に示すように、エンボス加工後の冷却工程を方式変更及び除外したが、同様に熱収縮等の良好な樹脂封止シートが得られた。実施例11〜14に示すように、架橋度(ゲル分率)を変更したが、隙間埋め性や耐クリープ性に大きな問題はなかった。実施例15〜17に示すように、架橋工程後の巻取張力を変更したが、巻きずれや巻物の剥離性に大きな問題はなく、良好な樹脂封止シートが得られた。
[実施例18〜24]
熱可塑性樹脂を変更した例を表3に示す。なお、実施条件は実施例1と同じである(ただし、樹脂の融点、架橋特性に合わせ、樹脂溶融温度、エンボス予熱温度、照射条件等は実施例1と同等となるように調整している)。実施例18〜23に示すように、VA含有量の異なるエチレン―酢酸ビニル共重合体や、他のオレフィン系樹脂を用いた場合でも、同様にブロッキング、熱収縮に問題はなく、隙間埋め性、耐クリープ性に優れた樹脂封止シートが得られた。さらに、実施例24に示すように、実施例1で用いた熱可塑性樹脂に架橋剤を添加した場合も同様に、良好な樹脂封止シートが得られた。
[実施例25〜31]
工程の一部をオフラインで実施した例を表4に示す。シート化〜エンボスまでを連続で行い、一旦巻物状にした後に架橋工程を実施した場合(実施例25〜27)、シート化後一旦巻取った後に、エンボス加工〜架橋工程を連続して実施した場合(実施例28)、シート化、エンボス加工、架橋をそれぞれ別で実施した場合(実施例29〜31)のいずれも、ブロッキング、熱収縮に問題はなく、隙間埋め性、耐クリープ性に優れた樹脂封止シートが得られた。
[比較例1〜4]
比較例を表5に示す。比較例1に示すように、エンボス加工を施さない場合、シートのブロッキングが激しく、巻物の剥離が困難であった。また、比較例2に示すように、電子線照射による架橋を施さない場合、耐クリープ性に劣る結果となった。さらに、比較例3〜4に示すように、シート化工程の後、架橋工程を実施し、その後エンボス加工を行った場合、連続、オフラインに関わらず、表面が活性化されたシートが工程内のロール等に貼りつく等の問題が生じ、加工安定性に問題があった。また、架橋後はエンボス加工が入りにくく、巻物の剥離性に劣る結果となった。
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本発明は、太陽電池の半導体素子等を保護する封止材を提供する製造方法としての産業上利用可能性を有する。

Claims (10)

  1. 以下の(i)〜(iii)の工程をこの順で含む、樹脂封止シートの製造方法:
    (i)架橋剤を実質的に含まない、熱可塑性樹脂を加熱溶融してシート化する工程、
    (ii)前記工程(i)で得られたシートにエンボス加工を施す工程、
    (iii)前記工程(ii)でエンボス加工されたシートに電離性放射線による架橋処理を施す工程。
  2. 前記エンボス加工時に与えられる熱によって樹脂封止シートの配向を緩和する、請求項1記載の樹脂封止シートの製造方法。
  3. 前記電離性放射線による架橋処理時に発生する熱によって樹脂封止シートの配向を緩和する、請求項1記載の樹脂封止シートの製造方法。
  4. 前記エンボス加工後にシートを冷却する工程をさらに含む、請求項1記載の樹脂封止シートの製造方法。
  5. シートを巻物状に巻き取る工程をさらに含み、その際の巻取張力が3〜200N/1000mm幅である、請求項1記載の樹脂封止シートの製造方法。
  6. 前記工程(i)により得られるシートの熱収縮率が、{(Tm)−10}℃において0〜15%である、請求項1記載の樹脂封止シートの製造方法(ここで、Tmは熱可塑樹脂の融点を示す)。
  7. 前記工程(ii)において、2対のニップロールの間にエンボスロールを配し、前記エンボスロールの速度を1としたときに前記2対のニップロールの速度比を0.8〜1.2の範囲に調整する、請求項1記載の樹脂封止シートの製造方法。
  8. 前記電離性放射線による架橋処理後のシートのゲル分率が2〜65質量%である、請求項1記載の樹脂封止シートの製造方法。
  9. 前記エンボス加工が、樹脂封止シートの少なくとも片面に施されており、エンボス加工深さが10μm以上300μm以下であり、エンボス加工の模様が、縞、布目、梨地、皮紋、ダイヤ格子、合成皮革様しぼ模様、ピラミッド模様(四角錘)からなる群のいずれかに属する模様であり、エンボス加工による全面積に対する凸部分の面積比率が5〜50%である、請求項1〜のいずれか1項記載の樹脂封止シートの製造方法。
  10. 請求項1記載の方法で製造された樹脂封止シート。
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