JP5346820B2 - H5n1亜型a型インフルエンザウィルスに対する抗体 - Google Patents

H5n1亜型a型インフルエンザウィルスに対する抗体 Download PDF

Info

Publication number
JP5346820B2
JP5346820B2 JP2009553239A JP2009553239A JP5346820B2 JP 5346820 B2 JP5346820 B2 JP 5346820B2 JP 2009553239 A JP2009553239 A JP 2009553239A JP 2009553239 A JP2009553239 A JP 2009553239A JP 5346820 B2 JP5346820 B2 JP 5346820B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibody
seq
subtype
antibodies
antigen
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009553239A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010521147A5 (ja
JP2010521147A (ja
Inventor
アントニオ・ランツァヴェッキア
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Humabs LLC
Original Assignee
Humabs LLC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Humabs LLC filed Critical Humabs LLC
Publication of JP2010521147A publication Critical patent/JP2010521147A/ja
Publication of JP2010521147A5 publication Critical patent/JP2010521147A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5346820B2 publication Critical patent/JP5346820B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/08Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from viruses
    • C07K16/10Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material from viruses from RNA viruses
    • C07K16/1018Orthomyxoviridae, e.g. influenza virus
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/12Antivirals
    • A61P31/14Antivirals for RNA viruses
    • A61P31/16Antivirals for RNA viruses for influenza or rhinoviruses
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/20Immunoglobulins specific features characterized by taxonomic origin
    • C07K2317/21Immunoglobulins specific features characterized by taxonomic origin from primates, e.g. man
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/56Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments variable (Fv) region, i.e. VH and/or VL
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2317/00Immunoglobulins specific features
    • C07K2317/50Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments
    • C07K2317/56Immunoglobulins specific features characterized by immunoglobulin fragments variable (Fv) region, i.e. VH and/or VL
    • C07K2317/565Complementarity determining region [CDR]

Description

本発明はインフルエンザウィルス、特にヒトH5N1亜型A型インフルエンザウィルスに特異性を有するヒト抗体に関する。
A型インフルエンザウィルスはヒトで重篤な疾患を引き起こす病原体である。ウィルスの表面タンパク質である血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)の亜型によって、株を分類することができる。現在のところ、互いに抗原的に異なる16種類のHA亜型(H1〜H16)および9種類のNA亜型(N1〜N9)が知られている。現在、ヒト間で流行しているA型インフルエンザウィルスは、H1N1亜型またはH3N2亜型である。
ヒトからヒトへの感染(水平感染)が可能で、現在流行している亜型と比較して新しいHAまたはNAの亜型を有するようなA型インフルエンザウィルス株が出現した際に、インフルエンザの世界的流行が発生する。たとえば、ヒトは現在、鳥類間でここ数年流行しているH5N1亜型に対して免疫性を持たない。H5N1亜型がヒトからヒトへの感染に適応した場合、広域にわたるインフルエンザ感染の大流行となる可能性がある。
H5N1大流行に対処する現在の取り組みとして、予防ワクチン接種、またはオセルタミビル(Tamiflu(登録商標))およびザナミビル(Relenza(登録商標))のようなノイラミニダーゼ阻害剤が挙げられる。文献1では、ヒト定常領域(κ軽鎖およびIgG1重鎖)とマウス可変領域とのキメラのモノクローナル抗体が、H5N1亜型を中和することができ、よって予防や治療に適していることが報告されている。文献2では、トリインフルエンザA/Ck/HK/Yu22/02株に対して作製されたマウスモノクローナル抗体を開示し、この抗体がヒト化され得ることを提案している。
H5亜型の中で、ウィルスは、HAの配列に基づき、分岐群と呼ばれる様々な系統に分類される。ベトナムで2004年に、インドネシアで2005年にそれぞれ単離されたウィルスは、分岐群1および2の標準ウィルス(ローマ数字IおよびIIで表すこともある)に指定されている。文献1の抗体は、A/Vietnam/1203/04およびA/Hong Kong/213/03の株に対して作製されたものであり、両株共に分岐群1に入る。
H5N1亜型の様々な分岐群を含む、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの感染や疾患を予防し、かつ治療するためのさらなる改良物質が求められている。
以下で詳細を説明するように、本発明者はH5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和するヒトモノクローナル抗体を提供する。
本発明者は、FLA5.10、FLD21.140、FLA3.14およびFLD20.19からなる群から選択される抗体の相補性決定領域を1つ以上有する抗体も提供する。これらの抗体は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和できることが好ましい。
本発明者は、FLD84、FLD93、FLD122、FLD127、FLD129、FLD132およびFLD194からなる群から選択される抗体の相補性決定領域を1つ以上有する抗体も提供する。これらの抗体は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和できることが好ましい。
本発明者は、FLA5.10、FLD21.140、FLA3.14およびFLD20.19からなる群から選択される抗体と同じエピトープに結合する抗体も提供する。これらの抗体は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和できることが好ましい。
本発明者は、FLD84、FLD93、FLD122、FLD127、FLD129、FLD132およびFLD194からなる群から選択される抗体と同じエピトープに結合する抗体も提供する。これらの抗体は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和できることが好ましい。
本発明者は、FLA5.10、FLD21.140、FLA3.14、FLD20.19、FLD84、FLD93、FLD122、FLD127、FLD129、FLD132およびFLD194からなる群から選択される抗体と競合してH5血球凝集素タンパク質に結合する抗体も提供する。これらの抗体は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和できることが好ましい。
本発明者は、分岐群2のH5亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和できる抗体も提供する。
本発明者は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和でき、ラムダ(λ)軽鎖を有する抗体も提供する。
本発明者は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和できるIgG抗体も提供する。ただし、この抗体はIgG1重鎖を持たない。
本発明者は、本発明の第1の抗体と本発明の第2の抗体の組合せも提供する。ここで、第1と第2の抗体は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素の異なるエピトープに結合する。したがって、これらの抗体が血球凝集素タンパク質の単一分子に同時に結合できることもある。このような組合せの1つには、FLD20.19とFLD194の抗体が含まれる。他の組合せには、(i)H5血球凝集素タンパク質への結合でFLD20.19と競合する抗体と(ii)H5血球凝集素タンパク質への結合でFLD194と競合する抗体とが含まれる。他の組合せには、(i)FLD20.19と同じエピトープに結合する抗体と(ii)FLD194と同じエピトープに結合する抗体とが含まれる。
これらの様々な抗体は、様々な方法で作製することができ、ウィルスの感染や疾患の予防および治療に利用可能である。これらの抗体は診断にも利用可能である。
ヒトモノクローナル抗体
いくつかの実施形態において、本発明はH5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和することができるヒトモノクローナル抗体を提供する。非ヒト抗体とは異なって、これらのヒト抗体はヒトに投与したときに、抗体の定常領域に対する免疫反応を誘発することはない。文献1で開示されているようなキメラ抗体とは異なり、これらのヒト抗体の可変領域は100%ヒト由来である(この可変領域は、相補性決定領域だけでなく、特に、フレームワーク領域も100%ヒト由来である)。このため、これらのヒト抗体はヒトに投与したときに、この可変領域のフレームワーク領域に対する免疫反応を誘発することはない(随意に、あらゆる抗イディオタイプの反応を除く)。これらのヒト抗体はヒト由来ではない、いかなる配列も含まない。
抗体に関して本来用いられている「モノクローナル」という表現は、単一クローン系統の免疫細胞から産生された抗体を指す。これは、多クローンのB細胞により産生される「ポリクローナル」抗体、すなわち、すべての抗体が同じ標的タンパク質を認識するものの、この標的タンパク質上にある様々なエピトープを標的とし得る抗体、とは異なる。本明細書では、「モノクローナル」という言葉は特定の細胞由来を意味するものではなく、すべて同じアミノ酸配列を有し、かつ同じ標的タンパク質における同じエピトープを認識する、あらゆる抗体の集団について言及するものである。したがって、モノクローナル抗体は、免疫細胞、非免疫細胞、無細胞系などのあらゆる適切なタンパク質合成系を用いて作製することができる。この用法は、当分野でよく用いられている。たとえば、相補性決定領域を移植してマウス骨髄腫NS0細胞株で発現させたヒト化抗体Synagis(登録商標)、CHO細胞株で発現させたヒト化抗体Herceptin(登録商標)およびCHO細胞株で発現させたファージディスプレイ抗体Humira(登録商標)のすべての製品情報に、これらがモノクローナル抗体製品であることが言及されている。
ヒトモノクローナル抗体は、様々な方法で作製することができる。目的の抗原を産生するヒトB細胞を、たとえば、エプスタイン−バーウィルス(EBV)に感染させることにより、不死化させることができる。ヒトモノクローナル抗体は、たとえばスキッドマウスやトリメラマウスのような宿主において、宿主自身の免疫系を機能的なヒトの免疫系に置き換えることにより、非ヒト宿主からも作製することができる。ヒトIg遺伝子座をマウスに遺伝子導入してヒトモノクローナル抗体(インフルエンザウィルスのM2タンパク質に対するヒト抗体を含む)を作製することに成功している。Abgenix社の「xeno-mouse」がその一例である。ファージディスプレイも成功しており、Humira(登録商標)の製品化につながっている。ヒトモノクローナル抗体産生に好ましい方法は、文献7および8に開示されている。この方法では、標的抗原に特異的なヒトのメモリーB細胞を、ポリクローナルB細胞活性化因子存在下でEBVを用いて形質転換する。
本発明の特定の実施形態では、本発明者は本明細書でFLA5.10、FLD21.140、FLA3.14およびFLD20.19と呼ばれるヒトモノクローナル抗体を作製した。本発明のさらに特定の実施形態では、本発明者は本明細書でFLD84、FLD93、FLD112、FLD127、FLD129、FLD132およびFLD194と呼ばれるヒトモノクローナル抗体を作製した。これらの抗体は、文献7および8の技法を用いて作製した。
抗体FLA5.10は、分岐群1のH5N1亜型ウィルスを特異的に認識する。エピトープマッピング解析により、この抗体がHAタンパク質を認識することが示されている。この抗体の重鎖および軽鎖(κ鎖)にある可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号13(配列番号14によりコードされる)および配列番号15(配列番号16によりコードされる)の通りである。したがって、この抗体の相補性決定領域は以下の配列の通りである。
Figure 0005346820
抗体FLD21.140は、分岐群1のH5N1亜型ウィルスを特異的に認識する。この抗体はHAタンパク質を認識する。この抗体の重鎖および軽鎖(λ鎖)にある可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5(配列番号6によりコードされる)および配列番号7(配列番号8によりコードされる)の通りである。したがって、この抗体の相補性決定領域は以下の配列の通りである。
Figure 0005346820
抗体FLA3.14は、分岐群1および2のH5N1亜型ウィルスおよびを認識する。エピトープマッピング解析により、HAタンパク質を認識することが示されている。この抗体の重鎖および軽鎖(κ鎖)にある可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号9(配列番号10によりコードされる)および配列番号11(配列番号12によりコードされる)の通りである。したがって、この抗体の相補性決定領域は以下の配列の通りである。
Figure 0005346820
抗体FLD20.19は、分岐群1および2のH5N1亜型ウィルスを認識する。この抗体はHAタンパク質を認識する。この抗体の重鎖および軽鎖(κ鎖)にある可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1(配列番号2によりコードされる)および配列番号3(配列番号4によりコードされる)の通りである。したがって、この抗体の相補性決定領域は以下の配列の通りである。
Figure 0005346820
抗体FLD84は、分岐群1および2のH5N1亜型ウィルスを認識する。この抗体はHAタンパク質を認識する。この抗体の重鎖および軽鎖(κ鎖)にある可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号42(配列番号41によりコードされる)および配列番号44(配列番号43によりコードされる)の通りである。したがって、この抗体の相補性決定領域は以下の配列の通りである。
Figure 0005346820
抗体FLD93は、分岐群1および2のH5N1亜型ウィルスを認識する。この抗体はHAタンパク質を認識する。この抗体の重鎖および軽鎖(κ鎖)にある可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号52(配列番号51によりコードされる)および配列番号54(配列番号53によりコードされる)の通りである。したがって、この抗体の相補性決定領域は以下の配列の通りである。
Figure 0005346820
抗体FLD122は、分岐群1および2のH5N1亜型ウィルスを認識する。この抗体はHAタンパク質を認識する。この抗体の重鎖および軽鎖(κ鎖)にある可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号62(配列番号61によりコードされる)および配列番号64(配列番号63によりコードされる)の通りである。したがって、この抗体の相補性決定領域は以下の配列の通りである。
Figure 0005346820
抗体FLD127は、分岐群1のH5N1亜型ウィルスを認識する。この抗体はHAタンパク質を認識する。この抗体の重鎖および軽鎖(κ鎖)にある可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号72(配列番号71によりコードされる)および配列番号74(配列番号73によりコードされる)の通りである。したがって、この抗体の相補性決定領域は以下の配列の通りである。
Figure 0005346820
抗体FLD129は、分岐群1のH5N1亜型ウィルスならびにインフルエンザH5亜型のHAを有する分岐群1および2の両方の偽型ウィルスを認識する。この抗体はHAタンパク質を認識する。この抗体の重鎖および軽鎖(λ鎖)にある可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号82(配列番号81によりコードされる)および配列番号84(配列番号83によりコードされる)の通りである。したがって、この抗体の相補性決定領域は以下の配列の通りである。
Figure 0005346820
抗体FLD132は、分岐群1のH5N1亜型ウィルスならびにインフルエンザH5亜型のHAを有する分岐群1および2の両方の偽型ウィルスを認識する。この抗体はHAタンパク質を認識する。この抗体の重鎖および軽鎖(κ鎖)にある可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号92(配列番号91によりコードされる)および配列番号94(配列番号93によりコードされる)の通りである。したがって、この抗体の相補性決定領域は以下の配列の通りである。
Figure 0005346820
抗体FLD194は、H5N1亜型ウィルスの分岐群1および2を認識する。この抗体はHAタンパク質を認識する。この抗体の重鎖および軽鎖(κ鎖)にある可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号102(配列番号101によりコードされる)および配列番号104(配列番号103によりコードされる)の通りである。したがって、この抗体の相補性決定領域は以下の配列の通りである。
Figure 0005346820
これらの抗体1つ以上からの相補性決定領域配列を代替の可変領域に移すことによって、抗原結合特異性を共有するさらなる抗体を作製することができる。この方法は「相補性決定領域移植」として知られている(文献9〜14)。相補性決定領域移植の方法は、異なる動物種からの可変領域間で抗原結合特異性を移すために一般的に用いられているが、この方法を用いてあるタイプの抗体から異なるタイプの抗体に抗原結合特異性を移すこともできる。相補性決定領域のH1、H2およびH3を、受容部位であるV領域内に共に移植してもよいが、これらのうちの1つまたは2つのみでも適切に移植できるであろう(文献12)。同様に、L1、L2およびL3のうちの1つまたは2つあるいは3つすべてを、受容体であるV領域内に移植してもよい。供与体の相補性決定領域を1、2、3、4、または5つ、あるいは6つすべて有する抗体が好ましい。移植する相補性決定領域が1つのみの場合、一般的に、6つの中で通常最も短いL2以外の相補性決定領域にするであろう。一般的に、供与体の相補性決定領域はすべて、同じヒト抗体由来となる。しかし、数種のヒト抗体を混合して用いることも可能である。たとえば、第1の抗体から軽鎖の相補性決定領域を移植し、第2の抗体から重鎖の相補性決定領域を移植するような場合である。
相補性決定領域を供与体の可変領域から受容体の可変領域に移植すると、多くの場合、同時に供与体の1つ以上のフレームワーク残基が改変される。
相補性決定領域移植の代わりに、特異性決定残基移植の方法が用いられてもよい(文献15、16)。これは、相補性決定領域内で特異性を決定する残基のみを移植するものである。
Kabatの番号付け(文献17)によると、軽鎖可変領域の相補性決定領域はアミノ酸24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)であり、重鎖可変領域の相補性決定領域はアミノ酸31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)である。Chothiaの番号付け(文献18)によると、軽鎖可変領域の相補性決定領域はアミノ酸26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)であり、重鎖可変領域の相補性決定領域はアミノ酸26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)である。上記の表は、標準化されたIMGT番号付け系(文献19〜21)によって相補性決定領域を特定している。すなわち、相補性決定領域1はIMGT番号で27〜38位、相補性決定領域2はIMGT番号で56〜65位、相補性決定領域3はIMGT番号で105〜117位となる。フレームワークまたは「FR」のアミノ酸残基は相補性決定領域以外の可変領域残基である。
文献22では、インフルエンザウィルスに対するヒトモノクローナル抗体を開示しているが、H5亜型に対するヒトモノクローナル抗体は開示していない。
抗体
本発明の抗体は様々な形態で用いることができる。一例としては、哺乳動物から自然に見つかるような、自然抗体であってもよい。自然抗体は重鎖と軽鎖からなる。重鎖と軽鎖の双方が、可変領域と定常領域に分けられる。この重鎖と軽鎖の双方の可変領域が多様であるために、様々な抗体が様々な抗原を認識できる。脊椎動物種の自然抗体の軽鎖には、定常領域のアミノ酸配列に基づき、カッパ鎖(κ鎖)またはラムダ鎖(λ鎖)の2種が存在する。自然抗体の重鎖にはα鎖、δ鎖、ε鎖、γ鎖、μ鎖があり、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMのクラスとなる。クラスはさらにIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgA2などのサブクラスまたはアイソタイプに分類することができる。抗体はアロタイプにも分類することができる。たとえばγ重鎖には、G1mアロタイプであるa、f、x、またはz、G2mアロタイプであるn、もしくは、G3mアロタイプであるb0、b1、b3、b4、b5、c3、c5、g1、g5、s、t、u、またはvがある。κ軽鎖にはKm(1)、Km(2)またはKm(3)のアロタイプがある。自然IgG抗体は同一の2本の軽鎖(一方は定常領域C、もう一方は可変領域V)と同一の2本の重鎖(一方は3つの定常領域C1、C2、およびC3、もう一方は可変領域V)とを持ち、ジスルフィド架橋により結合している。自然抗体の各クラスの領域および三次元構造はよく知られている。
本発明の抗体が定常領域のある軽鎖を有している場合、抗体はκ軽鎖またはλ軽鎖であってもよい(しかし、一部の実施例では、抗体はλ軽鎖を有していなければならない)。本発明の抗体が定常領域のある重鎖を有している場合、抗体はα重鎖、δ重鎖、ε重鎖、γ重鎖、またはμ重鎖であってもよい。IgGクラス(IgG抗体)の重鎖が好ましい。IgG1サブクラスの抗体が好ましい(しかし、一部の実施例では、抗体はIgG1重鎖を有していない。)。Synagis(登録商標)抗体はκ軽鎖を有するIgGである。本発明の抗体はすべて適切なアロタイプを有してもよい(上記参照)。
本発明の抗体は、抗原結合活性を保持する自然抗体の断片であってもよい。たとえば、自然抗体のパパイン分解により、2つの同一の「Fab」フラグメントと呼ばれる抗原結合断片が作られ、それぞれは、単一の抗原結合部位および抗原結合活性を有さない残りの「Fc」フラグメントを有する。ペプシン処理により2つの抗原結合部位を有する「F(ab')」断片が得られる。「Fv」は自然抗体の抗原結合部位全体を含む最小の断片であり、1本の重鎖と1本の軽鎖可変領域とのダイマーからなる。したがって、本発明の抗体は、自然抗体のFab、Fab'、F(ab')、Fvまたは他のタイプの断片であってもよい。
本発明の抗体は、1本鎖ポリペプチドとしてVおよびVの領域を含む「1本鎖Fv」(「scFv」または「sFv」)であってもよい(文献23〜25)。一般的に、VとVの領域は、scFvが抗原に結合可能な好ましい構造を形成することを可能にする、VとVの領域間の短いポリペプチドのリンカー(たとえば12アミノ酸以上)で連結する。scFvタンパク質発現の一般的方法、少なくとも最初に選択する手段は、ファージディスプレイライブラリーや他のコンビナトリアルライブラリーとの関連で行うものである(文献26〜28)。複数のscFvを連結して1本のポリペプチド鎖にすることができる。(文献29)。
本発明の抗体は、連結した複数のFv(scFv)断片を含む、「二重特異性抗体」または「三重特異性抗体」などであってもよい(文献30〜33)。VとVの領域間を、対にするには短すぎる(たとえば12アミノ酸より短い)VとVの領域間リンカーで連結することにより、他のFv断片の相補的な領域と強制的に対になり、それにより2つの抗原結合部位をつくることができる。
本発明の抗体は単一可変領域抗体またはVHH抗体であってもよい。ラクダ科動物(ラクダやラマなど)およびサメから自然に見つかる抗体は、重鎖を有するが軽鎖はない。したがって、抗原認識は、哺乳類の自然抗原とは異なり、単一可変領域によって決定される(文献34〜36)。このような抗体の定常領域は、抗原結合活性を保持したまま、取り除くことができる。単一可変領域抗体を発現させる方法、少なくとも最初に選択する手段はファージディスプレイライブラリーや他のコンビナトリアルライブラリーとの関連で行うものである(文献37)。文献38は、H5N2亜型A型インフルエンザウィルスに対して産生され、かつノイラミニダーゼに対する特異性を有する、ラクダ科動物の抗体(CC07)について開示している。
本発明の抗体は「ドメイン抗体」(dAb)であってもよい。このようなドメイン抗体はヒト抗体の重鎖または軽鎖のどちらかの可変領域を基にしており、分子量は約13kDa(完全な抗体の分子量の10分の1よりも少ない)である。それぞれ異なる標的を認識する重鎖と軽鎖のドメイン抗体を対にすることにより、2つの特異性を有する抗体を作ることができる。本発明のドメイン抗体は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血液凝集素に結合できる領域を少なくとも1つ含有する。ドメイン抗体は体内から迅速に除去されるが、血液のタンパク質(血清アルブミンなど)に結合する第2のドメイン抗体への融合、ポリマー(ポリエチレングリコールなど)との接合、または他の様式により、血液循環器系に残留することができる。
本発明の抗体は、定常領域は1つの生物種(たとえばヒト)由来であるが、可変領域は他の生物種(たとえばヒト以外)由来であるキメラ抗体であってもよい。抗体のキメラ化は本来、簡単に得られるマウスのモノクローナル抗体からヒト抗体に抗体特異性を容易に移入することによって、直接ヒトのモノクローナル抗体を作製する難点を回避するために開発された。本発明者は、さらなる研究のための原点としてヒト抗体を既に提供しているため、本発明を行う上で、一般的にはキメラ化は必要とされないであろう。しかし、H5N2亜型A型インフルエンザウィルスを防ぐための非ヒト抗体が作製された場合、この抗体を用いてキメラ抗体を作製することができる。同様に、本発明のヒト抗体を非ヒト生物種に用いる際は、ヒト抗体の可変領域を非ヒト生物種からの定常領域に接合することが可能である。
本発明の抗体は相補性決定領域移植抗体であってもよい。相補性決定領域移植抗体の作製方法は上記の通りである。本発明者は、さらなる研究のための原点としてヒト抗体を既に提供しているため、キメラ化に関しては、相補性決定領域移植は一般的には必要とされない。
したがって、本明細書における「抗体」という用語は、多様な構造的特徴を有する様々なタンパク質を包含する(通常、2つのβシートの間に逆平行のβ鎖が並んだ2層サンドイッチ構造に折り畳まれているall−βタンパク質を有する免疫グロブリン領域を少なくとも1つ含む)。しかし、すべての抗体タンパク質が、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスのビリオンに存在するタンパク質(一般的には、主な2つの表面糖タンパク質のうちの1つである血球凝集素)との結合能力を有する。
本発明の抗体は1つの抗原結合部位(たとえばFab断片やscFvにあるような部位)または複数の抗原結合部位(たとえばF(ab')断片または二重特異性抗体あるいは自然抗原にあるような部位)を含んでもよい。抗体が2つ以上の抗原結合部位を有する場合、有利に抗原を架橋できる。
抗体が2つ以上の抗原結合部位を有している場合、その抗体は単一特異性(すなわち、すべての抗原結合部位が同じ抗原を認識する)または多重特異性(すなわち、抗原結合部位が2つ以上の抗原を認識する)であることになる。したがって、多重特異性抗体の場合は、少なくとも1つの抗原結合部位はH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを認識し、他の少なくとも1つの抗原結合部位は他の抗原を認識するであろう。
本発明の抗体は、共有結合など介して、タンパク質以外の物質を含んでいてもよい。たとえば、抗体が放射線同位体を含んでいてもよい。Zevalin(登録商標)とBexxar(登録商標)の製品は、それぞれ90Y放射線同位体および131I放射線同位体を含んでいる。さらなる例として、抗体は細胞毒性分子を含んでいてもよい。たとえば、Mylotarg(登録商標)には、細菌毒素であるN−アセチル−γ−カリケアマイシンが結合されている。さらなる例として、抗体が共有結合で結合されたポリマーを含んでいてもよい。たとえば、ポリオキシエチル化ポリオールやポリエチレングリコール(PEG)の結合により、抗体の循環半減期が長くなることが報告されている。
本発明のいくつかの実施形態では、抗体が1つ以上の定常領域(たとえばC領域またはC領域を含む)を含んでいてもよい。上記のように、定常領域は、κ軽鎖、またはλ軽鎖、あるいはα重鎖、δ重鎖、ε重鎖、γ重鎖、またはμ重鎖を形成してもよい。本発明の抗体が定常領域を有する場合、この定常領域は自然ものか、改変されたものである。重鎖は3つ(αクラス、γクラス、δクラスにおけるように)または4つ(μクラス、εクラスにおけるように)の定常領域を含んでいてもよい。定常領域は、抗体-抗原間の相互作用に直接関わらないが、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)、C1q結合、補体依存性細胞障害活性、Fc受容体結合、食作用、および細胞表面受容体の下方制御を含む様々なエフェクター機能を与えることができるが、これらに限定されない。
定常領域は、自然抗体のC末端領域であって、Fc領域を形成することができる。本発明の抗体がFc領域を有するとき、このFc領域は自然のものであるか、改変されたものである。Fc領域は一部の抗体の機能に重要であり、たとえば、Herceptin(登録商標)の活性はFc依存的である。自然抗体のFc領域の境界は変化することもあるが、ヒトIgG重鎖のFc領域は通常、Cys226位またはPro230位のアミノ酸残基から重鎖のC末端にわたって定義される。Fc領域は一般的に、1種類以上のFc受容体に結合することができる。Fc受容体には、FcγRI(CD64)、FcγRII(たとえば、FcγRIIA、FcγRIIB1、FcγRIIB2、FcγRIIC)、FcγRIII(たとえば、FcγRIIIA、FcγRIIIB)、FcRn、FcαR(CD89)、FcδR、FcμR、FcεRI(たとえば、FcεRIαβγまたはFcεRIαγ)、FcεRII(たとえば、FcεRIIAまたはFcεRIIB)などがある。Fc領域は、Fc受容体に加えて、またはFc受容体の代わりに、C1qのような補体タンパク質に結合することができる。抗体のFc領域を改変することによって、エフェクター機能を変化させることができる。たとえば、受容体の結合親和性を上昇または低下させることができる。一例を挙げると、文献39で報告しているように、Fc領域の残基234、235、236、237、297、318、320および/または322に変異を入れることによって、エフェクター機能を改変することができる。同様に、文献40で報告しているように、Fc領域の残基238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438および/または439(KabatのEUインデックスの番号付け)に変異を入れることにより、ヒトIgG1のエフェクター機能を改良することができる。文献41では、ヒトIgG抗体のC1qに対する親和性を改変するためのFc領域の残基322、329および/または331の改変を報告している。文献42では、改変する残基として、270、322、326、327、329、331、333および/または334が選択されている。文献43では、FcRI、FcRII、FcRIIIおよびFcRn、これらの受容体にヒトIgGが結合するために重要な残基のマッピングと同時に、FcR結合特性が改良されたバリアントの設計も報告している。すべてのC領域はアイソタイプ間で置換可能である。たとえば、文献44に開示しているような、ヒトIgG4のC3領域(および随意にC2領域)をヒトIgGのC3領域に置換した抗体では、凝集体形成が抑制される。文献44においても、ヒトIgGの409位(KabatのEUインデックスの番号付け)のアルギニンをたとえばリジンに変異させると、凝集体形成の抑制が示されることを報告している。利用可能なモノクローナル抗体のFc領域の変異によって、エフェクター機能が変化することが知られている。たとえば文献45では、Rituxan(登録商標)のC1q結合を変化させるための変異の研究を報告している。文献46では、Numax(登録商標)のFcR結合を変化させるための変異の研究において、残基252、254および256の変異によって、抗原結合には影響を与えずに、FcRnの結合が10倍上昇することを報告している。
本発明の抗体は一般的にグリコシル化されるであろう。重鎖C2領域にN結合型糖鎖を付加することによってグリコシル化された抗体は、たとえば、C1qやFcRの受容体との親和性が低くなり、C1q結合やFcR結合に影響を及ぼし得る(文献43)。グリカンの構造も活性に影響を及ぼし得る。たとえば、グリカン二分岐鎖末端におけるガラクトース糖の数(0、1または2)によって、補体媒介の細胞死に相違がみられることもある。抗体のグリカンは、投与後にヒト免疫原生反応を誘引しないものが好ましい。
本発明の抗体は、本来は付随するであろう産物が存在しない状態で作製されてもよい。抗体の自然な混入物質には、酵素、ホルモン、または宿主細胞の他のタンパク質などが含まれる。
本発明の抗体は直接使用することが可能であり(たとえば、医薬品の有効性分、または診断薬として)、また開発研究の基礎としても利用可能である。たとえば、所望の特性を改良するために、抗体の配列改変または化学修飾をしてもよい。所望の特性とは、たとえば、結合親和性または結合力、薬物動態学的な特性(たとえば生体内での半減期)などである。このようにして抗体を改良する技法は、当技術分野で周知である。たとえば、抗体は「親和性成熟」の対象となってもよい。親和性成熟では、標的抗原に対する親和性を改良するために、(一般的には相補性決定領域内にある)1残基以上を変異させる。ランダム変異導入法または特異的変異誘導法を用いることができるが、文献47では、ランダム点突然変異に代わる技法として、V領域とV領域のシャフリングによる親和性成熟を記載している。文献48では、Synagis(登録商標)の重鎖および軽鎖の相補性決定領域にin vitroで親和性成熟を誘導して、Numax(登録商標)を作製した方法について報告している。得られた抗体は力価が改良されて、RSV Fタンパク質への結合親和性が70倍上昇している。
本発明の抗体は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルス由来の抗原に特異的なものであることが好ましい。したがって、抗体は、ヒトタンパク質のような任意の対照抗原よりも、このウィルス抗原に対してより高い結合親和性を有することになる。抗体が、標的抗原に対してナノモルまたはピコモル(たとえば、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、10-13Mまたはそれ以上)の親和定数をもつことが好ましい。このような親和性は従来の解析技法を用いて測定できる。たとえば、メーカーの使用説明書に従って操作するとBIAcore(登録商標)測定器内で実施される、表面プラズモン共鳴技術を用いて測定できる。他の方法では、放射線標識した標的抗原(血球凝集素)を用いる放射線免疫測定法によって、結合親和性を測定することもある。
本発明の抗体は、分岐群1および/または2のH5亜型ウィルスを認識することができる。この抗体は、他の分岐群のH5亜型ウィルスも認識してもよい。いくつかの実施形態では、抗体が分岐群2を認識しなければならない。
文献49では、H5血液凝集素と反応する、免疫測定機器用のモノクローナル抗体について開示している。
中和活性
本発明の抗体は、ヒトに感染する恐れのあるH5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和するために利用することができる。したがって、この抗体は、ヒトを宿主としてウィルスが感染を開始および/または持続する能力を中和することができる。中和活性を測定するために、本明細書において記載しているマイクロ中和試験などの様々な試験方法が利用可能である。100TCID50(50%の組織細胞が感染するウィルス量)のH5N1型ウィルスのMDCK細胞における感染力を、抗体が中和できることが好ましい。このような試験に使用するためのH5N1型ウィルスは、米国疾病予防管理センター(CDC)のインフルエンザウィルス部門(ジョージア州、アトランタ)などのあらゆる適切な供給源から入手することができる。H5N1型ウィルスは、感染患者からも単離することができる。あるいは、逆遺伝学的な技法を用いて、H5亜型のHAとN1亜型のNAを他の6つのウィルスセグメントと組み合わせることによって単離することもできる。本発明のいくつかの実施形態では、インフルエンザ中和試験にウィルスを用いる代わりに、H5亜型インフルエンザのHAを有するレトロウィルスの偽型を用いることができる。
試験で用いられているMDCK細胞は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から、カタログ番号CCL-34で入手可能である。
本発明の好ましい実施形態では、100μg/ml以下の濃度(たとえば、75μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、10μg/ml、1μg/ml、500ng/ml、250ng/ml、100ng/ml、75ng/ml、50ng/ml、10ng/mlまたはそれ以下)の抗体が、100TCID50のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和することができる。100ng/mlまたはそれ以下の濃度でウィルスを中和できる抗体が特に好ましい。上記の濃度で、分岐群1および分岐群2のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスそれぞれ100TCID50を、独立に中和することができる抗体が特に有用である。
H5亜型A型インフルエンザウィルスを中和できる抗体が、必ずしも他の15種類の亜型の血球凝集素をすべて中和できないわけではない。いくつかの実施形態では、抗体が複数の血球凝集素亜型(たとえば全16亜型)を中和することもある。他の実施形態では、抗体がH3N2亜型インフルエンザウィルスを中和しないこともある。他の実施形態では、抗体がH5亜型のみを中和することもある。
核酸および組換え抗体の発現
本発明には、本発明の抗体をコードする核酸配列も含まれる。本発明の抗体が2本以上の鎖(たとえば重鎖1本および軽鎖1本)を有する場合には、本発明にはそれぞれの鎖をコードする核酸が含まれる。本発明には、本発明の抗体の相補性決定領域のアミノ酸配列をコードする核酸配列も含まれる。
これらの抗体をコードする核酸は、目的の抗体を発現する細胞、ウィルスまたはファージから調整することができる。たとえば、目的とする不死化B細胞から核酸(mRNA転写産物またはDNA)を調整した後、目的の抗体をコードする遺伝子をクローニングして、組換え発現に使用できる。組換え供給源からの発現は、B細胞やハイブリドーマからの発現に比べて安定で再現性があり培養も容易であるなどの理由から、医薬の用途により一般的に用いられている。B細胞から免疫グロブリン遺伝子を採取して核酸配列を決定する方法は、当技術分野で周知である(文献51などを参照されたい)。したがって、培養、継代培養、クローニング、サブクローニング、核酸配列決定、核酸調整などの様々な工程を経て、目的の細胞またはファージで永続的に抗体を発現させることができる。本発明は、細胞、核酸、ベクター、配列、抗体など、このような工程で使用するものおよび調整するものすべてを含む。
本発明は、(i)目的の抗体を発現している不死化B細胞クローンを作製する工程と、(ii)このB細胞クローンから目的の抗体をコードする核酸を採取する工程とを含む、目的の抗体をコードする1分子以上の核酸(たとえば、重鎖および軽鎖の遺伝子)の調整方法を提供する。工程(ii)において得られる核酸は、異なる細胞型に挿入してもよく、またはその核酸配列を決定してもよい。
本発明は、(i)目的の抗体をコードするB細胞クローンから1つ以上の核酸分子(たとえば、重鎖および/または軽鎖の遺伝子)を採取する工程と、(ii)発現宿主内に核酸を挿入して宿主内で目的の抗体を発現させる工程とを含む、組換え細胞の作製方法も提供する。
同様に、本発明は、(i)目的の抗体をコードするB細胞クローンから得られた核酸の配列を決定する工程と、(ii)工程(i)から得られた配列情報を利用して核酸を調整し、発現宿主内に挿入して宿主内で目的の抗体を発現させる工程とを含む、組換え細胞の作製法も提供する。
これらの方法で作製した組換え細胞は、発現および培養の目的で利用することができる。これらの組換え細胞は、抗体を発現させて大規模に医薬品を製造するために、特に有用である。
本発明は、細胞が抗体を産生するように細胞を培養する工程を含む、本発明の抗体の作製法を提供する。この方法が、細胞が産生した抗体を回収して精製抗体を提供するための工程をさらに含んでもよい。本明細書中の他の部分で記載されているように、これらの方法で用いられる細胞は、組換え細胞、不死化B細胞、または他のあらゆる適切な細胞であってよい。これらの方法で精製した抗体は、医薬組成物および/または診断組成物などに利用可能である。
組換え発現のための細胞には、細菌、酵母、および動物細胞、特に哺乳細胞(たとえば、CHO細胞、PER.C6(欧州細胞カルチャーコレクション(ECACC)寄託番号96022940、文献52)のようなヒト細胞、NSO細胞(ECACC寄託番号85110503)、またはHKB-11細胞(文献53、54)など)、ならびに植物細胞を含む。本発明の抗体をグリコシル化することができて、特に、抗体に付加される糖鎖構造自体がヒトで免疫原生とならない発現宿主が好ましい(上記を参照されたい)。無血清の培地で増殖可能な発現宿主が好ましい。動物由来産物が存在しない培地で増殖可能な宿主が好ましい。
発現宿主を培養して、1つの株化細胞としてもよい。
本発明で使用する核酸を操作して、一部の核酸配列を挿入、欠失、または改良してもよい。これらの操作による変更には、制限酵素認識部位の導入、コドン使用頻度の改良、転写、および/あるいは翻訳調節配列の追加または最適化などを含むが、これらに限定されるものではない。また、核酸を変更して、コードするアミノ酸を変えることも可能である。たとえば、抗体のアミノ酸配列内に、1残基以上(たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)のアミノ酸置換、1残基以上(たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)のアミノ酸欠失、および/または1残基以上(たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)のアミノ酸挿入をすることが有用である。このような点変異によって、エフェクター機能、抗原結合親和性、翻訳後修飾、免疫原生などの改良や、共有結合基(たとえば標識)を付加するためのアミノ酸の導入、または(たとえば精製用に)タグの導入をすることができる。変異は、部位特異的に導入してもよく、あるいは、ランダムに導入した後に(たとえば分子進化などで)選択してもよい。
本発明に記載の特定の核酸配列は、配列番号2、4、6、8、10、12、14および/または16の配列を1つ以上含む。
本発明の核酸は、(プラスミドのような)ベクター内に存在してもよい。たとえば、クローニングベクター内や発現ベクター内などに存在してもよい。したがって、目的のアミノ酸配列をコードしている配列は、転写を適切に制御するために、プロモーターの下流にあってもよい。本発明は、このようなベクターを提供し、これらのベクターを含有している細胞も提供する。
本発明は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素を中和可能な抗体を分泌できるヒト不死化B細胞も提供する。本発明は、本発明の抗体を分泌できるヒト不死化B細胞も提供する。
医薬組成物
医薬品の有効成分としての抗体の利用は広く普及していて、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)、Rituxan(登録商標)、Mylotarg(登録商標)、Zevalin(登録商標)、Synagis(登録商標)(パリビズマブ)、Zenapax(登録商標)(ダクリズマブ)などの製品が含まれる。Synagis(登録商標)およびNumax(登録商標)(モタビズマブ)は、呼吸器疾患予防に特に効果的である。したがって、本発明者は、1つ以上の抗体を含有する医薬組成物を提供する。医薬品等級用にモノクローナル抗体を精製する技法は、当技術分野で周知である。
分岐群1のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能な少なくとも1つの抗体と、分岐群2のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能である少なくとも1つの抗体の組合せは、特に有用である。H5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素上の異なるエピトープにそれぞれ結合する2つの抗体を含む組合せも有用である。これらの組合せの抗体は、併行分離投与または連続投与によって患者に投与してもよい。
したがって、たとえば、本発明者はH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能な第1のヒトモノクローナル抗体、およびH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能な第2のヒトモノクローナル抗体を含む医薬組成物を提供する。このとき、第1および第2の抗体は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルス血球凝集素上の異なるエピトープに独立して結合する。第1および第2の抗体が、協力して、分岐群1と分岐群2のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和してもよく、かつ/または2つの抗体が同じH5血球凝集素上の異なるエピトープに独立して結合してもよい。
(たとえば受動免疫法などで)抗体を有効成分として患者に送達することに代わる方法として、(たとえば能動免疫法などで)本発明の抗体に認識するエピトープを含有するペプチドを送達することができる。したがって、本発明の医薬組成物は、FLA5.10、FLD21.140、FLA3.14、FLD20.19、FLD84、FLD93、FLD122、FLD127、FLD129、FLD132およびFLD194からなる群から選択される抗体により認識されるエピトープを含有しているポリペプチドを含んでいてもよい。ポリペプチドはHA0、HA1またはHA2のペプチドの全長より短いものであってもよい。
抗体を送達する、さらに別の方法として、患者のin situで発現できるような抗体をコードする核酸を送達することが可能である。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の抗体をコードしている核酸を含んでいてもよい。核酸は複製ベクターまたは非複製ベクターの形状であってもよい。ウィルスベクターまたは非ウィルスベクターを使用してもよい。適した遺伝子治療および核酸送達ベクターは、当技術分野で周知である。
医薬組成物は、一般的に医薬的に許容可能な1つ以上の担体および/または賦形剤を含有する。文献55では、これらの成分について詳細に検討している。これらの成分には、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体が含まれていてもよい。さらに、この組成物の中には、湿潤剤や乳化剤やpH緩衝剤のような、補助的な物質が含まれていてもよい。
医薬組成物は、様々な形状で調合してもよい。たとえば、液状の溶液または懸濁液として注射可能な形状などでもよい。注射前に液体溶媒中で溶解または懸濁をするのに適した固体の形状で調合してもよい(たとえば、Synagis(登録商標)やHerceptin(登録商標)のように、任意に防腐剤を含み、滅菌水や緩衝液で再構成するために凍結乾燥された組成物)。局所投与のために、たとえば、軟膏、クリーム、または粉末剤として、組成物を調合してもよい。経口投与のために、たとえば、錠剤、カプセル剤、噴霧剤または(任意で風味をつけた)シロップ剤として、組成物を調合してもよい。この場合には、一般的に、有効成分が分解されるのを防ぐための物質を含むことになるであろう。肺内投与のために、たとえば、微細粉末剤や噴霧剤を用いた吸入器として、組成物を調合してもよい。坐剤や膣坐剤として組成物を調合してもよい。経鼻投与、経耳投与または経眼投与のために、たとえば滴下剤として、組成物を調合してもよい。使用時に(たとえば滅菌水や滅菌緩衝液で)再構成してから患者に投与する組成物の組合せとして設計したキットの形状で、組成物を調合してもよい。たとえば、抗体を乾燥させた形状で提供することができる。
抗体を投与するための好ましい薬剤的形状には、たとえば大量瞬時投与または持続点滴投与のような、注射または点滴などによる非経口投与に適した形状が含まれる。医薬製品が注射用または点滴用である場合、油性溶媒中または水性溶媒中の懸濁液、溶液、または乳濁液の形状であってもよく、薬剤を懸濁し、防腐し、安定化し、かつ/または分散させるような担体/賦形剤を含有してもよい。
医薬組成物は、一般的にpH5.5〜8.5であり、好ましくはpH6〜8、より好ましくは約7である。pHは緩衝液によって一定に保たれる。
医薬組成物は、通常滅菌される。医薬組成物は一般的に非発熱性であり、たとえば、1用量あたり1EU(エンドトキシン単位、標準測定値)未満、好ましくは1用量あたり0.1EU未満である。無グルテン医薬組成物が好ましい。医薬組成物はヒトに対して実質的に等張であってもよい。
組成物は抗菌剤および/または防腐剤を含有してもよい。
組成物は界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤を有する場合、一般的には、たとえば0.01%未満のような低レベルで用いられる。
組成物には、浸透圧を与えるためにナトリウム塩(塩化ナトリウムなど)を含有させてもよい。10±2mg/mlの濃度のNaClが一般的である。
組成物は、糖アルコール(マンニトールなど)または二糖類(スクロースまたはトレハロースなど)を15〜30mg/mlの範囲(たとえば25mg/ml)で含有してもよい。これは、組成物が、凍結乾燥した組成物または凍結乾燥してから再構成した物質を含む組成物である場合には、特に好ましい。
組成物は、ヒスチジンなどの遊離アミノ酸を含有してもよい。たとえば、文献56では、水性担体の中にヒスチジンを含有させてSynagis(登録商標)抗体を改良した水性製剤を開示している。
医薬組成物は、効果的な分量の有効成分を含有するであろう。当然ながら、有効成分の濃度は、送達される組成物の量により変化する。また、抗体を主成分とする既知の医薬品は、この点について指針を提供している。たとえば、Synagis(登録商標)は、50mgの抗体を0.5mlに、または100mgの抗体を1.0mlに再構成することが規定されている。推奨される用量に基づいて適切量が患者に送達される。
本発明の医薬組成物は、調製後、被験者に直接投与することができる(下記を参照されたい)。この医薬組成物は、ヒトの被験者に対する投与に適合していることが好ましい。この医薬組成物は、一般的に液状(水溶液など)であろう。
抗体を含有する組成物、特に医薬組成物においては、抗体の質量パーセント濃度が、全タンパク質のうち少なくとも50%(たとえば少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%またはそれ以上)で調合することが好ましい。したがって、抗体は精製されている。
本発明の医薬組成物は、気密密封容器に入れて供給されることが好ましい。
本発明は、本発明の抗体と薬剤的に許容可能な1つ以上の成分とを混合する工程を含む医薬組成物の調合方法も提供する。
医学的な処置と用法
本発明の抗体は、特にヒトにおける、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスによって引き起こされる疾患の治療および/または予防に利用してもよい。したがって、本発明は療法用に本発明の抗体を提供する。さらに、処置する患者に本発明の抗体を投与する過程を含む、患者の処置法を提供する。さらに、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスが引き起こす疾患の治療および/または予防のための薬剤の製造における、本発明の抗体の利用を提供する。さらに、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスが引き起こす疾患の治療および/または予防に利用するための本発明の抗体も提供する。
本発明者は、併行分離投与または連続投与のための第1および第2の抗体も提供する。いくつかの実施形態では、上記のように、第1および第2の抗体が、協力して分岐群1と分岐群2のウィルスを中和できる。いくつかの実施形態では、上記のように、第1および第2の抗体が同じH5血球凝集素上の異なったエピトープに結合する。
本発明者は、組み合わせて療法に用いるための前記第1の抗体および前記第2の抗体も提供する。本発明者は、療法に用いるための前記第1の抗体および前記第2の抗体の組合せも提供する。本発明者は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスが引き起こす疾患の治療法および/または予防法に用いるための前記第1の抗体および前記第2の抗体も提供する。
本発明者は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスが引き起こす疾患の治療および/または予防のための薬剤の製造における前記第1の抗体および前記第2の抗体の利用を提供する。本発明者は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスが引き起こす疾患の治療および/または予防のための薬剤の製造における前記第1の抗体の利用であって、この薬剤を前記第2の抗体と共に投与するために調合する場合の前記第1の抗体の利用も提供する。同様に、本発明者は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスが引き起こす疾患の治療および/または予防のための薬剤の製造における前記第2の抗体の利用であって、この薬剤を前記第1の抗体と共に投与するために調合する場合の前記第2の抗体の利用も提供する。
本発明者は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスが引き起こす疾患の治療および/または予防のための薬剤の製造における前記第1の抗体の利用であって、この患者が事前に第2の抗体で処置を受けている場合の前記第1の抗体の利用も提供する。同様に、本発明者は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスが引き起こす疾患の治療および/または予防のための薬剤の製造における前記第2の抗体の利用であって、この患者が事前に第1の抗体で処置を受けている場合の前記第2の抗体の利用も提供する。事前に処置を受けている患者が、あらかじめ投与された抗体を体内血液循環中に保持したままであってもよい。
本発明者は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスが引き起こす疾患の治療法および/または予防法に用いるための前記第1の抗体であって、前記第1の抗体を前記第2の抗体と共に投与する(または投与のために調合する)場合の前記第1の抗体も提供する。本発明者は、H5N1亜型A型インフルエンザウィルスが引き起こす疾患の治療法および/または予防法に用いるための前記第2の抗体であって、前記第2の抗体を前記第1の抗体と共に投与する(または投与のために調合する)場合の前記第2の抗体も提供する。
抗体の治療的な用途は、ヒト以外の生物種(一般的に鳥類)からのH5N1型ウィルスの人畜共通感染症と、H5N1型インフルエンザの世界的な大流行の発生との両方に関連がある。
抗体は免疫学的予防(受動免疫法)および/または免疫療法に用いることができる。たとえば中和試験などで血中循環抗体レベルを検査することによって、患者に感染試験をさせることなく予防有効性を確認することができる。本発明の医薬組成物を投与した後の治療有効性を確認するために、A型インフルエンザ感染症の存在および/または重篤性を評価するためのあらゆる方法を用いることができる。このような方法は、抗ウィルス薬やワクチンの分野において、インフルエンザに対してよく用いられている。
H5N1型感染の危険性が特に高い患者群、または特に感染しやすい患者群が処置対象となることもある。このような被験者群には、HIV患者または臓器移植患者のような免疫抑制治療中の患者などの免疫無防備状態の被験者、高齢者(50歳以上、60歳以上、および好ましくは65歳以上)、乳幼児(5歳以下)、入院患者、医療従事者、軍務関係者および軍人、妊婦、慢性疾患患者、免疫不全患者、抗ウィルス剤(たとえば、オセルタミビル組成物またはザナミビル組成物)をワクチン接種の7日前以降に服用している患者、抗ウィルス剤で治療を受けているが抗ウィルス反応が十分ではない患者、および海外渡航者が含まれるが、これに限られるものではない。
本発明の医薬組成物は、あらゆる方法によって投与してもよく、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、経皮、経皮的塗布、経口、局所、皮下、経鼻、腸内、舌下、膣内または直腸などの投与方法が含まれるが、これに限られるものではない。皮下噴射器も本発明の医薬組成物の投与に利用してもよい。一般的に、治療組成物は溶液または懸濁液のように、注射剤として調合されてもよい。注射前に液体溶媒中で溶解または懸濁をするのに適した固体の形状で調合してもよい。
組成物は一般的に、皮下、腹腔内、静脈または筋肉内に注射することにより直接的に送達されるか、あるいは組織の間質腔に直接的に送達されるであろう。組成物は、患部内に投与することもできる。投与処置は、単回または複数回で行われる。抗体を主成分とする既知の医薬品は、投薬頻度に関する指針を提供している。これは、たとえば、医薬品が毎日、毎週、毎月などの間隔で送達されるべきかどうかといった指針である。頻度および用量は、症状の重症度によって決まることもある。
患者は、有効成分の効果的な用量、すなわち、H5N1亜型A型インフルエンザウィルス感染の治療、改善または予防にじゅうぶんな用量を投与される。治療効果には、身体症状の緩和も含まれる。あらゆる特定の被験者それぞれの最適有効量は、被験者の体格と健康状態、疾患の性質および程度、投薬のために選択される療法または療法の組合せなどによって決まるであろう。ある状況下で投与される効果的な量は、ルーチン試験によって決まり、かつ臨床医の判断に委ねられている。本発明の目的で、投与される本発明組成物の有効用量は、一般的に約0.01mg/kgから約50mg/kg、または約0.05mg/kgから約10mg/kgである。抗体を主成分とする既知の医薬品は、この点についての指針を提供しており、たとえば、Herceptin(登録商標)は21mg/ml溶液を静脈内注入で初回投与は4mg/kg(体重)を、2回目以降は2mg/kg(体重)を1週間間隔で投与する。Rituxan(登録商標)は375mg/mを1週間間隔で投与する。Synagis(登録商標)は、一般的にRSウィルス流行期に月に1度、15mg/kg(体重)を筋肉内投与する。
本発明の抗体は、他の療法と共に(組合せてまたは独立で)投与されてもよい。たとえば、インフルエンザウィルスに対して有効な抗ウィルス組成物(オセルタミビルまたはザナミビル)である。これらの抗ウィルス組成物には(3R,4R,5S)-4-アセチルアミノ-5-アミノ-3(1-エチルプロポキシ)-1-シクロヘキセン-1-カルボン酸、または5-(アセチルアミノ)-4-[(アミノイミノメチル)-アミノ]-2,6-アンヒドロ-3,4,5-トリデオキシ-D-グリセロ-D-ガラクトノン-2-エノン酸などのノイラミニダーゼ阻害剤が含まれ、これらのエステル(エチルエステル)や塩(リン酸塩)も含まれる。より好ましい抗ウィルス組成物は(3R,4R,5S)-4-アセチルアミノ-5-アミノ-3(1-エチルプロポキシ)-1-シクロヘキセン-1-カルボン酸エチルエステルリン酸塩 (1:1)で、オセルタミビルリン酸塩(Tamiflu(登録商標))としても知られている。このような組合せ療法は治療効果において相乗的向上をもたらす。このような抗ウィルス剤は、組合せ療法において、1つ以上の本発明の抗体(本発明で開示されている範囲内)を共に投与する場合に、特に有用である。
診断
治療的に有効であるだけでなく、本発明の抗原結合活性(非中和抗体を含む)は、診断にも利用可能であることを意味する。抗体は免疫測定法、放射線免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などに用いられてもよい。したがって、本発明の抗体は固相担体に吸着させてもよい。固相に吸着させることで、診断試験における抗体の用途を広げることができる。標的抗原の精製においても、その用途を広げることができる。
本発明の抗体は、放射線同位体、蛍光分子、または酵素のように、解析によって検出可能な試薬で標識してもよい。標識することによって、診断試験における抗体の用途を広げることができる。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、抗原性または免疫原生ペプチドを、スクリーニングおよび/または同定するための免疫測定法に用いることができる。たとえば、患者に投与した時に、抗HA反応を誘引するペプチドを同定する場合である。
全般
「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる(consisting)」を包含する。たとえば、「Xを含む」はもっぱらXを含むか、X+Yのように他のものが加わっていてもよい。「実質上」は「完全」を除外しない。たとえば、「実質上」Yを含まない組成物は、「完全に」Yを含まない可能性があり、本発明の記述で「実質上」という言葉は省略されている場合がある。
「およそ」、「約」という言葉は、数値Xとの関係を指し、たとえばX±10%である。
本発明の異なる工程は、任意で異なる時に、異なる人が、異なる場所(異なる国など)で、行うことができる。
図1は、免疫学的予防試験(カプラン-マイヤー生存曲線)における、感染(0日目)から15日間にわたる生存マウスの割合(%)を示す。 図2は、予防学的試験における、マウスの脳、脾臓および肺組織でのウィルス力価(組織グラムあたりのlog10TCID50の値)の平均値を示す。D2.2(対照)、FLA3.14およびFLA5.10の抗体のデータを、感染後2日後および4日後について示す。アスタリスクは統計的有意性を示す(*=D2.2に対してP<0.01、**=D2.2に対してP<0.001)。矢印は、試験での検出の下限を示す(1.5log10TCID50/g)。 図3は、マウスからの肺組織における免疫組織化学的解析を示す。パネルAおよびCはFLA5.10抗体で処理したマウスからの肺組織を示す。パネルB及Dは無処理の対照マウスからの肺組織を示す。パネルEおよびFはパネルBおよびCの拡大図を示す。Brは細気管支を指す。 図4は血清療法における、図1と同様のデータを示す。 図5は血清療法における、図1と同様のデータを示す。
不死化B細胞の作製
4名の成人がHPAI(病原性の高い鳥インフルエンザ)H5N1感染と診断された。回復期初期(疾患発症後1〜4ヶ月)に、すべての被験者から、自己のウィルスに力価のある中和抗体が検出された。記入済みのインフォームド・コンセントを患者から受け取った後に、4名全員から血液を採取した。
凍結した抹消血単核球(PBMC)を解凍し、CD22、IgM、IgDおよびIgAに対する抗体で染色した。FACSAria機器を用いてCD22、IgM-、IgD-、IgA-のB細胞を単離した。CpGオリゴデオキシヌクレオチド2006および放射線照射した同種異系のPBMC存在下でEBVを用いて、30細胞/ウェルでB細胞を不死化した(文献8)。10%ウシ胎児血清(FCS)含有RPMI1640(cRPMI)完全培地で細胞を培養した。14日後に培養液の上清を回収して、中和活性をスクリーニングした。
本質的に文献58で記載されているように、MDCK細胞を用いて、100TCID50のA/VietNam/1203/04(H5N1)用いて、マイクロ中和試験で中和を評価した。簡潔に述べると、無希釈の上清を100TCID50のウィルスと共に室温で1時間培養した後に、単層のMDCK細胞を加えた。単層細胞をさらに2〜3日培養し、細胞変性効果(CPE)を測定した。終点中和抗体力価の測定も同様に行った。ただし、100TCID50のウィルスと混合する前に、血漿または上清サンプルを2倍希釈した。血漿サンプルは初回希釈1:10で測定し、一方上清サンプルは初回希釈1:8で測定した。感染力の残存性は1希釈あたり4ウェルで測定した。中和抗体力価は、MDCK細胞に対して100TCID50の感染力を有する適切な野生株のH5N1亜型ウィルスを、ウェルの50%で完全に中和することのできる血清の最高希釈率の逆数で定義される。感染力は4日目のCPEの有無によって確認され、力価はReed-Muench法によって算出した。
測定可能な中和活性を有する培養液は、CpG2006および照射PBMC存在下で、希釈を0.5細胞/ウェルに制限することによりクローン化した。B細胞クローンは、CELLine Two−Compartment Bioreactors内でIg除去されたFCS10%含有cRPMI培養液で高密度培養して、1〜3mg/mlの抗体が濃縮された上清を産生させた。抗体はさらに、プロテインGカラムで精製した。抗体のアイソタイプ、サブクラス、および軽鎖は、特殊な抗体およびHRP標識抗ヒトIg抗体を利用したELISAにより、特徴付けした。抗体は標準認定試薬(シグマ−アルドリッチ、ブーフス、ザンクト・ガレン州)で定量化した。
中和ヒト抗体を産生する、いくつかの独立したクローンを単離した。ELISAではH5-HAを認識するが生存ウィルスは中和できない抗体を産生するクローンも、各患者から確認された。FLA3.14、FLA5.10、FLD20.19、FLD21.140と名付けた4クローンを選抜して、これ以降の試験に用いた。すべてのクローンは、ベトナムで単離された分岐群1のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスに対する中和活性を有するIgG1抗体を分泌した。H5N1亜型分岐群1の異なる3株の100TCID50に対するヒト抗体の中和抗体力価を記録した。
Figure 0005346820
FLA5.10およびFLD21.140は、分岐群1のH5N1亜型の基準株に対してin vitroでの中和活性を示した。FLD21.140は、FLA5.10、FLA3.14およびFLD20.19より高い活性を持ち、分岐群1および2の両方のH5N1亜型の基準株に対してin vitroでの中和活性を示した。FLD20.19は特に分岐群1および2のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスに非常に効果的だった。H3N2亜型インフルエンザウィルスA/Califolnia/7/04を中和した抗体はなかった。中和抗体力価は次の通りである。抗体濃度は1mg/mlに標準化した。
Figure 0005346820
他の一連のモノクローナル抗体は、4名のうち1名の提供者の凍結PBMCから単離したB細胞から作製した。中和抗体を産生するいくつかの独立クローンを単離した。FLD84、FLD93、FLD122、FLD127、FLD129、FLD132、およびFLD194と名付けた7つのクローンを、これ以降の試験に用いるために選抜した。FLD127、FLD129およびFLD132は、分岐群1のH5N1亜型基準株に対するin vitroでの中和活性を示した。FLD132およびFLD129は、FLD127、FLD84、FLD93、FLD122およびFLD194よりも高い活性を有し、分岐群1および2のH5N1亜型基準株に対するin vitroでの中和活性を示した。FLD194、およびFLD122は、特に分岐群1および2のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスに非常に効果的だった。
培養液上清の中和抗体力価は次の通りである。
Figure 0005346820
*これらのFLD20.19力価と前出データは直接比較できない。
異なる初期抗体濃度および異なるウィルス量が用いられている。
特に、FLD122およびFLD194は、先の選抜で単離された最良のモノクローナル抗体により示されたもの(FLD20.19)に匹敵する効能で、3つのウィルスを中和した。
マウスにおける予防的および治療的血清療法
BALB/cマウスは、アジアで1997年から2003年までに単離されたH5N1亜型ウィルスHPAI(病原性の高い鳥インフルエンザ)に、非常に感染しやすい。ウィルスの経鼻投与後、アジアで1997年から単離されたH5N1亜型ウィルスは、マウスの肺で高い力価で複製し、一部のウィルスは肺外部位に広がり、マウスにとって致死的となる。抗H5N1ヒト抗体の、ウィルス暴露前の予防またはウィルス暴露後の免疫治療の有効性を調査するために、BALB/cマウスに抗体で受動免疫後、抗体接種から24時間後にA/VietNam/1203/04(H5N1亜型)への経鼻投与、またはA/VietNam/1203/04(H5N1亜型)の経鼻投与し24、48、または72時間後に抗体注入を行った。すべての実験で4〜8の群のメスのBALB/cマウス(4〜6週齢)を用いた。マウスの接種と組織の回収はバイオセーフティーキャビネットでろ過式呼吸用保護装備を着用した者により行われた。
予防効果を測定するために、段階的な抗体量1mlのFLA3.14またはFLA5.10モノクローナル抗体、またはA/VietNam/1203/04(H5N1亜型)の組換え型HAに対して作製したヒツジ過免疫血清、をマウス腹腔内に注入した。対照として、ヒトモノクローナル抗体D2.2(ジフテリア毒素特異的)またはA146(炭疽防御抗原特異的)をマウスに投与した。腹腔内投与から24時間後、中和抗体力価測定のためマウスから採血し、その後10TCID50のA/VietNam/1203/04(H5N1亜型)50μlを経鼻注入した。ウィルス感染の前後日でマウスの観察と体重測定を行った。図1に示すように、抗H5ポリクローナル過免疫抗体を注入したマウスは完璧にウィルスから保護された。予防効果の試験において、FLA5.10で処理したすべてで、100%致死が回避された。FLA3.14も致死が回避されたが、効果は低く、抗体量依存的であった。最高抗体量のFLA3.14を投与したマウスは、致死をほとんど完全に回避した。最小抗体量のFLA3.14(1mg/kg)を投与したマウスは、死亡までの時間は遅くなったが、致死感染を防ぐことはできなかった。in vivoでFLA5.10はFLA3.14よりも強い効力を有するというデータは、in vitroのA/VietNam/1203/04に対する中和抗体力価と合致している(上記参照)。
FLA3.14およびFLA5.10の抗体がどのようにして致死を回避するのかを調べるために、受動免疫させたマウスにおける動態研究を行った。FLA3.14、FLA5.10またはD2.2で受動免疫させたマウスに、24時間後にA/Vietnam/1203/04(H5N1)を感染させた。2日後および4日後のマウスを死亡させ、肺、脳および脾臓を無菌で取り出した。組織は、Leibovitz L-15培地で均質化した。培地には抗生・抗真菌溶液を、肺破砕液(10% w/v)、脾臓破砕液(5% w/v)および脳破砕液(10% w/v)となるように添加した。その後、各組織4つのMDCK単層細胞で力価評価を行った。力価はReed-Muench法で計算し、組織gあたりのlog10TCID50で表した。図2は、2日目および4日目で、FLA3.14およびFLA5.10の抗体を投与されたマウスの脳、脾臓および肺組織の方が、D2.2対照抗体を投与されたものよりも、顕著にウィルスが少なかったことを示す。
病理学的試験を行うために、マウスの解剖を行い、肺を10%中性ホルマリン溶液で膨張させ、パラフィンに包埋し、切片を作製した。スライドはヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。H5抗原に対する免疫染色を行うために、パラフィン切片を作製した。染色はヤギ抗体を用い、ヤギ抗鳥インフルエンザH5抗体を1:1000に希釈し、ベクター社の抗ヤギ2次抗体、色素原としてジアミノベンチジン、および対比染色としてヘマトキシリンを用いてABC免疫組織染色を行なった。図3は、FLA5.10でウィルス感染予防されたマウスは、肺気道および実質組織に劇的な病理学的変化が少なかったことを示す。したがって、予防的にFLA5.10を投与したマウスからの肺組織切片における、ネクローシスのある異常な細気管支およびウィルスHA抗原の割合(13%)は、対照マウス(80%)と比較して低かった(図3のパネルAとC対パネルBとD、またはパネルAとC対パネルEとF)。同様に、肺組織切片の免疫染色でH5抗原が多く検出された炎症性間質(I)病変は、FLA5.10を投与したマウスの方がD2.2対照抗体を投与したマウスより少なかった(1対10+)。これらのデータにより、FLA3.14またはFLA5.10は、肺でのウィルス複製の制限、ウィルスが引き起こす肺症状の減弱、および離れた臓器への肺外転移を克服することで、おそらく死亡を回避していることを示唆している。
確立した感染の減退化は、H5N1に対する抗ウィルス治療の臨床に関連のある終点を示す。この目的のために、FLA3.14、FLA5.10、FLD20.19およびFLD21.140(1mg/マウスを腹腔内注入)での処理の有効性を、5LD50のA/Vietnam/1203/04ウィルスを24、48および72時間前に経鼻投与したBALB/cマウスを用いて測定した。図4は、FLA3.14、FLA5.10、FLD20.19およびFLD21.140がA/Vietnam/1203/04ウィルスに全時点で感染したマウスにおいて死亡を強力に回避しており、対照抗体(D2.2)では死亡回避がないことが示されている。H5N1分岐群2からの抗原的に多岐となるA/Indonesia/5/05感染に対するFLA3.14、FLA5.10およびFLD20.19抗体の治療効果も調べた。図5は、FLA3.14およびFLD20.19がA/Indonesia/5/05ウィルスに24時間目に感染したマウスにおいて死亡を強力に回避しており、FLA5.10および対照抗体(D2.2)では死亡回避がないことが示されている。この結果は、in vitroの中和データと合致している。これらのデータは、マウスモデルにおいて感染から72時間以内のモノクローナル抗体治療は伝染力の強いH5N1亜型A型インフルエンザウィルスからの生存を顕著に改善可能であるという、考えを立証している。重要なことに、これらのデータは、たとえば共通のエピトープによって生じた抗体を用いて、分岐群2のH5N1亜型ウィルスに対して交差的に死亡回避可能であることが暗示する。
H5N1亜型ウィルスパネルに対するモノクローナル抗体の反応幅
モノクローナル抗体中和の交叉反応性の幅を、偽型レトロウィルスを用いて調べた。HAオープン・リーディング・フレーム翻訳領域全長を含む分岐群1、2.1、2.2、および2.3のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを用いた。データはng/mlで表されたIC50値を示している。
Figure 0005346820
FLD20.19に加えて、他の2つのモノクローナル抗体(FLD122およびFLD194)も、試験した様々な分岐群のすべてのウィルスを高い力価で中和可能な、幅広い反応性を示した。
抗体の特徴付け
FLA5.10、FLD21.140、FLA3.14およびFLD20.19の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子の配列決定をした(配列番号2、4、6、8、10、12、14、16)。コードされているアミノ酸配列を推定し(配列番号1、3、5、7、9、11、13、15)、IMGT番号付け系を用いて相補性決定領域のアミノ酸残基を決定した(文献19〜21)(配列番号17〜40)。
FLD84、FLD93、FLD122、FLD127、FLD129、FLD132およびFLD194の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子の配列決定をした(配列番号41、43、51、53、61、63、71、73、81、83、91、93、101、103)。コードされているアミノ酸配列を推定し(配列番号42、44、52、54、62、64、72、74、82、84、92、94、102、104)、IMGT番号付け系を用いて相補性決定領域のアミノ酸残基を決定した(文献19〜21)(配列番号17〜40)。(配列番号45〜50、55〜60、65〜70、75〜80、85〜90、95〜100、105〜110)。
特異性が重複しない抗体を同定するために、交叉阻害実験を行った。FLD20.19、FLA3.14、およびFLD194.110に対する競合性を様々な抗体で試験した。阻害%は以下の通りである。
Figure 0005346820
このように、FLD20.19とFLD194はHA結合で交叉競合はしておらず、よって、明確に異なる、重ならないエピトープを認識しているはずである。したがって、これらの抗体は、エスケープ変異体を封じ込めるために、組み合わせて用いることができる。
本発明が一例としてのみ説明されるものであり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、変更をする可能性もあることを理解されたい。
Figure 0005346820
Figure 0005346820

Claims (14)

  1. 分岐群1および2の両方のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能なヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、該抗体は、(i)それぞれ配列番号29、30および31に記載の重鎖相補性決定領域1、2および3、およびそれぞれ配列番号32、33および34に記載の軽鎖相補性決定領域1、2および3;または(ii)それぞれ配列番号35、36および37に記載の重鎖相補性決定領域1、2および3、およびそれぞれ配列番号38、39および40に記載の軽鎖相補性決定領域1、2および3;または(iii)それぞれ配列番号45、46および47に記載の重鎖相補性決定領域1、2および3、およびそれぞれ配列番号48、49および50に記載の軽鎖相補性決定領域1、2および3;または(iv)それぞれ配列番号55、56および57に記載の重鎖相補性決定領域1、2および3、およびそれぞれ配列番号58、59および60に記載の軽鎖相補性決定領域1、2および3;または(v)それぞれ配列番号65、66および67に記載の重鎖相補性決定領域1、2および3、およびそれぞれ配列番号68、69および70に記載の軽鎖相補性決定領域1、2および3;または(vi)それぞれ配列番号105、106および107に記載の重鎖相補性決定領域1、2および3、およびそれぞれ配列番号108、109および110に記載の軽鎖相補性決定領域1、2および3を含む、抗体またはその抗原結合断片。
  2. 100μg/ml以下の濃度において、100TCID50の分岐群1および2の両方のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能な請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
  3. 1μg/ml以下の濃度において、100TCID50の分岐群1および2の両方のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能な請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
  4. 配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する、分岐群1および2の両方のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能なヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
  5. 配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する、分岐群1および2の両方のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能なヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
  6. 配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する、分岐群1および2の両方のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能なヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
  7. 配列番号52のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号54のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する、分岐群1および2の両方のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能なヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
  8. 配列番号62のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する、分岐群1および2の両方のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能なヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
  9. 配列番号102のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号104のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する、分岐群1および2の両方のH5N1亜型A型インフルエンザウィルスを中和可能なヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
  10. 請求項1からのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片の重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む核酸。
  11. 請求項1からのいずれか1項に記載の第1の抗体またはその抗原結合断片、ならびに請求項1からのいずれか1項に記載の第2の異なる抗体またはその抗原結合断片を含む組成物であって、第1の抗体および第2の抗体がH5N1亜型A型インフルエンザウィルスの血球凝集素における異なるエピトープに結合する組成物。
  12. (i)H5N1感染の処置用医薬の製造のための、(ii)ワクチンの製造のための、または(iii)H5N1感染の診断用医薬の製造のための、請求項1からのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、請求項10に記載の核酸、または請求項11に記載の組成物の使用。
  13. 請求項1から9のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、請求項10に記載の核酸、または請求項11に記載の組成物を含む、H5N1感染の処置用またはH5N1感染の診断用医薬。
  14. 請求項1から9のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片、請求項10に記載の核酸、または請求項11に記載の組成物を含む、ワクチン。
JP2009553239A 2007-03-13 2008-03-13 H5n1亜型a型インフルエンザウィルスに対する抗体 Expired - Fee Related JP5346820B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US89461207P 2007-03-13 2007-03-13
US60/894,612 2007-03-13
PCT/IB2008/001527 WO2008110937A2 (en) 2007-03-13 2008-03-13 Antibodies against h5n1 strains of influenza a virus

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2010521147A JP2010521147A (ja) 2010-06-24
JP2010521147A5 JP2010521147A5 (ja) 2011-05-06
JP5346820B2 true JP5346820B2 (ja) 2013-11-20

Family

ID=39760169

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009553239A Expired - Fee Related JP5346820B2 (ja) 2007-03-13 2008-03-13 H5n1亜型a型インフルエンザウィルスに対する抗体

Country Status (5)

Country Link
US (2) US8124092B2 (ja)
EP (1) EP2125886A2 (ja)
JP (1) JP5346820B2 (ja)
CN (1) CN102046654A (ja)
WO (1) WO2008110937A2 (ja)

Families Citing this family (39)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005026375A2 (en) 2003-05-22 2005-03-24 Fraunhofer Usa, Inc. Recombinant carrier molecule for expression, delivery and purification of target polypeptides
CA2616859C (en) 2005-08-03 2015-04-14 Fraunhofer Usa, Inc. Compositions and methods for production of immunoglobulins
CN102046654A (zh) * 2007-03-13 2011-05-04 胡马斯有限公司 针对甲型流感病毒h5n1株系的抗体
WO2009009759A2 (en) 2007-07-11 2009-01-15 Fraunhofer Usa, Inc. Yersinia pestis antigens, vaccine compositions, and related methods
US8871207B2 (en) 2008-07-25 2014-10-28 Humabs, LLC Neutralizing anti-influenza A virus antibodies and uses thereof
CN102216327A (zh) * 2008-07-25 2011-10-12 生物医学研究所 中和抗甲型流感病毒抗体及其用途
WO2010037046A1 (en) 2008-09-28 2010-04-01 Fraunhofer Usa, Inc. Humanized neuraminidase antibody and methods of use thereof
GB0818356D0 (en) * 2008-10-07 2008-11-12 Istituto Superiore Di Sanito Antibodies
JP5837820B2 (ja) 2008-10-22 2015-12-24 インスティテュート・フォー・リサーチ・イン・バイオメディシンInstitute For Research In Biomedicine 形質細胞から抗体を産生する方法
ES2934102T3 (es) * 2009-05-11 2023-02-16 Janssen Vaccines & Prevention Bv Moléculas de unión humanas que pueden neutralizar el virus de la gripe H3N2 y usos de las mismas
EP2483307A1 (en) * 2009-09-29 2012-08-08 Fraunhofer USA, Inc. Influenza hemagglutinin antibodies, compositions, and related methods
JP2013540701A (ja) * 2010-08-12 2013-11-07 セラクローン サイエンシーズ, インコーポレイテッド 抗赤血球凝集素抗体組成物およびその使用方法
CN102775469B (zh) * 2011-05-12 2018-02-09 厦门大学 甲型流感病毒核衣壳蛋白的抗原表位及其用途
WO2013011347A1 (en) 2011-07-18 2013-01-24 Institute For Research In Biomedicine Neutralizing anti-influenza a virus antibodies and uses thereof
JP2013087069A (ja) * 2011-10-17 2013-05-13 Toyobo Co Ltd H5亜型インフルエンザウイルスを特異的に認識するモノクローナル抗体
AU2012347878B2 (en) 2011-12-05 2018-05-10 Trellis Bioscience, Llc Antibodies useful in passive influenza immunization
CN104169297B (zh) 2012-01-12 2018-06-01 淡马锡生命科学研究院有限公司 靶向进化枝2.3 的h5 流感病毒上的中和表位的单克隆抗体
US9969794B2 (en) 2012-05-10 2018-05-15 Visterra, Inc. HA binding agents
CN104968367B (zh) 2012-11-13 2018-04-13 弗·哈夫曼-拉罗切有限公司 抗血凝素抗体和使用方法
IL241552B2 (en) * 2013-03-14 2023-09-01 Contrafect Corp Preparation and methods based on neutralizing antibodies administered intranasally for increased therapeutic efficacy
PL3052192T3 (pl) 2013-10-02 2021-04-06 Medimmune, Llc Przeciwciała neutralizujące przeciwko grypie A i ich zastosowania
US10639370B2 (en) 2014-02-04 2020-05-05 Contrafect Corporation Antibodies useful in passive influenza immunization, and compositions, combinations and methods for use thereof
RU2720282C1 (ru) 2014-02-04 2020-04-28 Контрафект Корпорейшн Антитела, подходящие для пассивной иммунизации против гриппа, и их композиции, комбинации и способы применения
KR101628331B1 (ko) * 2014-03-28 2016-06-08 주식회사 녹십자엠에스 인플루엔자 a 바이러스 특이적 단클론 항체 및 이를 이용한 인플루엔자 감염 치료 및 진단 방법
JP6614523B2 (ja) * 2014-03-28 2019-12-04 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所 インフルエンザウイルスのrna依存性rnaポリメラーゼのpb2サブユニットに対するモノクローナル抗体
EP3169407A4 (en) 2014-07-15 2018-04-25 Medimmune, LLC Neutralizing anti-influenza b antibodies and uses thereof
TWI702229B (zh) 2014-12-19 2020-08-21 美商再生元醫藥公司 流行性感冒病毒血球凝集素之人類抗體
EP3307310A2 (en) 2015-05-13 2018-04-18 The Trustees Of The University Of Pennsylvania Aav-mediated expression of anti-influenza antibodies and methods of use thereof
CN107667114B (zh) 2015-06-01 2021-07-02 免疫医疗有限责任公司 中和抗流感结合分子及其用途
EP3374390A1 (en) 2015-11-13 2018-09-19 Visterra, Inc. Compositions and methods for treating and preventing influenza
IL260413B2 (en) 2016-01-13 2024-01-01 Medimmune Llc A method for treating type A influenza
PL238020B1 (pl) * 2016-09-12 2021-06-28 Inst Biotechnologii I Antybiotykow Kompozycja przeciwciał monoklonalnych przeciwko hemaglutyninie wirusów grypy serotypu H5 i jej zastosowanie, hybrydomy produkujące rzeczone przeciwciała, sposób diagnozowania infekcji wirusami grypy serotypu H5 oraz zestawy diagnostyczne
JOP20190200A1 (ar) 2017-02-28 2019-08-27 Univ Pennsylvania تركيبات نافعة في معالجة ضمور العضل النخاعي
SG10201913833PA (en) 2017-02-28 2020-03-30 Univ Pennsylvania Influenza vaccines based on aav vectors
WO2018160582A1 (en) 2017-02-28 2018-09-07 The Trustees Of The University Of Pennsylvania Adeno-associated virus (aav) clade f vector and uses therefor
CN113924147A (zh) 2019-03-25 2022-01-11 威特拉公司 用于治疗和预防流感的组合物和方法
WO2021142413A1 (en) * 2020-01-12 2021-07-15 Vanderbilt University Human antibodies to crimean congo hemorrhagic fever virus
WO2021202815A1 (en) * 2020-03-31 2021-10-07 Northeastern University Colorimetric and multiplexed isothermal rna-and antibody-based assay for sars-cov-2 and other viral diagnostics and cell analysis
CN114181302B (zh) * 2020-09-14 2023-03-24 东莞市朋志生物科技有限公司 针对甲型流感病毒的抗体、试剂盒和载体

Family Cites Families (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2817869B1 (fr) 2000-12-07 2005-01-14 Technopharm Anticorps monoclonal humain dirige contre le virus influenza ou un fragment de celui-ci
AU2003223285A1 (en) * 2002-03-13 2003-09-29 Kirin Beer Kabushiki Kaisha Human monoclonal antibodies to influenza m2 protein and methods of making and using same
JP5525688B2 (ja) 2005-08-19 2014-06-18 株式会社ビーエル インフルエンザウイルスh5亜型の免疫検出法
US8642513B2 (en) 2005-09-15 2014-02-04 Crucell Holland B.V. Method for preparing immunoglobulin libraries
GB0522460D0 (en) 2005-11-03 2005-12-14 Prendergast Patrick T Composition and method for the treatment of avian influenza
RU2008134426A (ru) * 2006-01-26 2010-03-10 ЭйчИкс ДИАГНОСТИКС, ИНК. (US) Моноклональные антитела, связывающиеся с вирусом птичьего гриппа
AU2007249160B2 (en) 2006-05-15 2013-09-12 I2 Pharmaceuticals, Inc. Neutralizing antibodies to influenza viruses
MX2009002174A (es) 2006-09-07 2009-03-12 Crucell Holland Bv Moleculas de union humanas capaces de neutralizar el virus de la influenza h5n1 y usos de las mismas.
CN101541832B (zh) * 2006-09-07 2014-11-12 克鲁塞尔荷兰公司 能中和流感病毒h5n1的人结合分子及其应用
WO2008033105A1 (en) 2006-09-13 2008-03-20 Dso National Laboratories Hemagglutinin antibody and uses thereof
AU2007295073A1 (en) 2006-09-15 2008-03-20 Fraunhofer Usa, Inc. Influenza antibodies, compositions, and related methods
CN102046654A (zh) * 2007-03-13 2011-05-04 胡马斯有限公司 针对甲型流感病毒h5n1株系的抗体

Also Published As

Publication number Publication date
US20100278834A1 (en) 2010-11-04
WO2008110937A2 (en) 2008-09-18
JP2010521147A (ja) 2010-06-24
US8124092B2 (en) 2012-02-28
CN102046654A (zh) 2011-05-04
EP2125886A2 (en) 2009-12-02
US20120114664A1 (en) 2012-05-10
WO2008110937A3 (en) 2009-04-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5346820B2 (ja) H5n1亜型a型インフルエンザウィルスに対する抗体
US20210155676A1 (en) Human immunodeficiency virus neutralizing antibodies
JP6022515B2 (ja) 抗a型インフルエンザウイルス中和抗体およびその使用
US20230117565A1 (en) Bispecific antibodies against plasma kallikrein and factor xii
JP6035332B2 (ja) A型インフルエンザウイルス中和抗体及びその使用法
JP5814790B2 (ja) デングウイルス中和抗体およびその使用
KR102555955B1 (ko) 당뇨병성 황반 부종의 치료를 위한 조성물 및 방법
US10654915B2 (en) Antibodies useful in passive influenza immunization
WO2015131836A1 (zh) 一种h7型甲型流感病毒的中和抗体及其用途
WO2008125985A2 (en) Blocking interaction between pathogen factors and factor h to inhibit hemorrhagic syndromes
US20170158753A1 (en) Monoclonal antibodies directed against envelope glycoproteins from multiple filovirus species
JP6101204B2 (ja) インフルエンザh5赤血球凝集素の主要中和エピトープに特異的なモノクローナル抗体
WO2022065445A1 (ja) SARS-CoV-2中和抗体又はその断片
US20100061995A1 (en) Immunotherapy To Treat Or Prevent Viral Infection
US20220041694A1 (en) Sars-cov-2 antibodies for treatment and prevention of covid-19
US20220340644A1 (en) Influenza neutralizing antibodies and their uses
JP6622825B2 (ja) A型インフルエンザウイルス中和抗体及びその使用法
JP2017086068A (ja) A型インフルエンザウイルス中和抗体及びその使用法
AU2013202434A1 (en) Dengue virus neutralizing antibodies and uses thereof

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110311

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110311

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130319

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20130619

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20130626

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130703

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130730

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130819

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees