次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
(1)無線通信システムの構成
まず、本発明の実施形態に係る無線通信システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システム10の全体概略構成図である。
図1に示すように、無線通信システム10は、PHSの無線通信システムである。この無線通信システム10は、無線基地局1と、無線端末2A、無線端末2B及び無線端末2Cとを含む。図1において、無線端末2A及び2Bは、位置登録した無線基地局1が提供するセル3に位置し、無線端末2Cは、セル3に位置していない。
初期状態において、無線基地局1は、セル3内の無線端末2A及び2Bからの呼接続要求があった場合、これら無線端末2A及び2Bに対して、後述するフレーム内のタイムスロットを割り当てる。これにより、無線基地局1と、無線端末2A及び2Bとは、TDD及びTDMAにより無線信号を伝送することができる。
(2)第1の実施形態
(2.1)無線基地局の構成
次に、第1の実施形態に係る無線基地局1の構成について説明する。図2は、第1の実施形態に係る無線基地局1の構成図である。図2に示すように、無線基地局1は、制御部102、記憶部103、ベースバンド信号処理部104、無線通信部105を含む。
制御部102は、例えばCPUによって構成され、無線基地局1が具備する各種機能を制御する。記憶部103は、例えばメモリによって構成され、無線基地局1における制御などに用いられる各種情報を記憶する。
ベースバンド信号処理部104は、ベースバンド回路等を含み、符号化及び復号化等を行う。
無線通信部105は、アダプティブアレイ制御を行う。この無線通信部105は、無線部106a乃至106hを含む。無線部106aは、無線周波数の信号を処理するRF部107aとアンテナ108aとを含む。同様に、無線部106b乃至106hは、対応するRF部107b乃至107hのうちの1つと、対応するアンテナ108b乃至108hのうちの1つとを含む。
RF部107a乃至107hは、RF回路等を含み、変調及び復調を行い、対応するアンテナ108a乃至108hを介して、無線端末2A及び2Bとの間で、無線信号の送信及び受信を行う。
制御部102は、割り当て部152、遅延検出部154及び周波数制御部156を含む。
割り当て部152は、初期状態において、無線端末2A及び2Bに対して、周波数f1のフレーム内のタイムスロットを割り当てる。このとき、無線部106b乃至106hの周波数はf1となる。
図3は、フレームの構成を示す図である。図3に示すように、周波数f1のフレームは、上り方向(無線端末2から無線基地局1に向かう方向)の通信に用いられる上り時間帯と、下り方向(無線基地局1から無線端末2に向かう方向)の通信に用いられる下り時間帯とからなり、上り時間帯が4つの上りタイムスロットU1乃至U4に分割され、下り時間帯が4つの下りタイムスロットD1乃至D4に分割されている。
図3に示すフレームにおいて、割り当て部152は、周波数f1の各フレーム内の第1の上りタイムスロットU1と第1の下りタイムスロットD1とを無線端末2Aに割り当てる。また、割り当て部152は、周波数f1の各フレーム内の第2の上りタイムスロットU2と第2の下りタイムスロットD2とを無線端末2Bに割り当てる。図4は、上りタイムスロットの割り当ての一例を示す図である。
その後、無線端末2A及び2Bは、割り当てられた周波数f1の上りタイムスロットを用いて、無線基地局1へ無線信号を送信し、割り当てられた周波数f1の下りタイムスロットを用いて、無線基地局1からの無線信号を受信する。
遅延検出部154は、周波数f1の上りタイムスロットを用いて無線端末2A及び2Bから送信される無線信号の衝突を検出する。具体的には、遅延検出部154は、無線通信部105からの連続する周波数f1の上りタイムスロットにある2つの無線信号(無線端末2Aからの無線信号と無線端末2Bからの無線信号)に対応する受信データを入力する。
次に、遅延検出部154は、連続する2つの無線信号(無線端末2Aからの無線信号と無線端末2Bからの無線信号)に対応する2つの受信データについて、CRC(Cyclic Redundancy Check)チェックを行い、エラーフレームの数(CRCエラー数)が所定数以上であるか否かを判定する。2つの受信データについてのCRCエラー数が所定数以上である場合、遅延検出部154は、更に、時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRを検出するとともに、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRを検出する。
図5は、受信データの構成を示す図である。図5に示す受信データは、240ビットのビット長を有する。この受信データは、先頭から順に、4ビット長の過渡応答用ランプタイム(R)、2ビット長のスタートシンボル(SS)、6ビット長のプリアンプル(PR)、16ビット長のユニークワード(UW)、180ビット長の情報部、16ビット長のCRC、16ビット長のガードにより構成されている。ヘッダ部は、過渡応答用ランプタイム(R)、スタートシンボル(SS)、プリアンプル(PR)、ユニークワード(UW)からなり、テール部は、CRCからなる。
次に、遅延検出部154は、時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRが第1の所定レベル以下に劣化し、且つ、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRが第2の所定レベル以下に劣化したか否かを判定する。
時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRが第1の所定レベル以下に劣化し、且つ、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRが第2の所定レベル以下に劣化した場合、遅延検出部154は、連続する2つの無線信号である、時間位置が前方の受信データに対応する時間位置が前方の無線信号と、時間位置が後方の受信データに対応する時間位置が後方の無線信号とが衝突したと判定する。
例えば、図1の例では、無線端末2Aが無線基地局1の遠方に位置している。このため、図4に示すように、無線基地局1において受信される、無線端末2Aからの無線信号は、遅延して周波数f1の上りタイムスロットU1の後方に外れ、周波数f1の上りタイムスロットU2に対応する無線端末2Bからの無線信号と衝突する。
時間位置が前方の無線信号と時間位置が後方の無線信号とが衝突した場合、周波数制御部156は、無線通信部105の構成を判定するとともに、構成の分割を行う。ここで、無線通信部105の構成は、初期状態では、無線部106a乃至106hの周波数はf1であり、無線部106a乃至106hによって1つのユニットが構成された状態(1RFモード)である。
無線通信部105の構成が1RFモードの場合、周波数制御部156は、無線通信部105について、無線部106a乃至106dからなるユニット1を構成するとともに、無線部106e乃至106hからなるユニット2を構成する。このように、無線通信部105が2つのユニットに分割された構成は、2RFモードと称される。図6は、2RFモードの無線通信部105の構成を示す図である。
無線通信部105の構成が2RFモードに分割された場合、周波数制御部156は、ユニット1内の無線部106a乃至106dについては、周波数をf1に維持する。更に、周波数制御部156は、ユニット1内の無線部106a乃至106dにおいて、衝突している2つの無線信号のうちの時間位置が前方の無線信号の送信元である無線端末2Aとの通信を維持する。
また、無線通信部105の構成が2RFモードに分割された場合、周波数制御部156は、ユニット2内の無線部106e乃至106hについては、周波数をf1からf2に切り替える。更に、周波数制御部156は、衝突している2つの無線信号のうちの時間位置が後方の無線信号の送信元である無線端末2Bに対して、周波数f2のフレーム内の上りタイムスロットU1を割り当てる。図7は、2RFモードにおける上りタイムスロットの割り当ての一例を示す図である。
なお、周波数f2の上りタイムスロットU1の再割り当てと同時に、周波数制御部156は、無線端末2Bに対して、周波数f2のフレーム内の下りタイムスロットD1を割り当てるようにしてもよい。
更に、周波数制御部156は、無線端末2Bに割り当てた上りタイムスロットU1に対応する周波数f2と、当該上りタイムスロットU1のスロット番号とを、ベースバンド信号処理部104及び無線通信部105を介して、無線端末2Bへ通知する。なお、無線端末2Bに対して、周波数f2のフレーム内の下りタイムスロットD1を割り当てた場合には、周波数制御部156は、下りタイムスロットD1のスロット番号についても、無線端末2Bへ通知する。
無線端末2Bは、再割り当てされた上りタイムスロットU1に対応する周波数f2と、スロット番号とを認識することにより、送信時に使用すべき周波数と、上りタイムスロットとを認識することができる。
通知先である無線端末2BのID等の識別情報は、当該無線端末2Bからの無線信号に含まれている。周波数制御部156は、この無線端末2Bの識別情報によって、通知先を特定することができる。
以上、1RFモードの場合について説明したが、無線通信部105の構成が2RFモードの場合、すなわち、無線部106a乃至106dの周波数がf1であって、無線部106e乃至106hの周波数がf2である場合、周波数制御部156は、無線通信部105について、無線部106a及び106bからなるユニット1、無線部106c及び106dからなるユニット2、無線部106e及び106fからなるユニット3、及び、無線部106g及び106hからなるユニット4を構成する。このように無線通信部105が4つのユニットに分割された構成は、4RFモードと称される。図8は、4RFモードの無線通信部105の構成を示す図である。
無線通信部105の構成が4RFモードに分割された場合、周波数制御部156は、ユニット1内の無線部106a及び106bについては、周波数をf1に維持する。更に、周波数制御部156は、ユニット1内の無線部106a及び106bにおいて、衝突している2つの無線信号のうちの時間位置が前方の無線信号の送信元である無線端末2Aとの通信を維持する。
また、無線通信部105の構成が4RFモードに分割された場合、周波数制御部156は、ユニット2内の無線部106c及び106dについては、周波数をf1からf2に切り替える。また、周波数制御部156は、ユニット3内の無線部106e及び106fについては、周波数をf2からf3に切り替え、ユニット4内の無線部106g及び106hについては、周波数をf2からf4に切り替える。
更に、周波数制御部156は、衝突している2つの無線信号のうちの時間位置が後方の無線信号の送信元である無線端末2Bに対して、周波数f2乃至f5の何れかのフレーム内の上りタイムスロットU1を割り当てる。
なお、周波数f2乃至f4の何れかの上りタイムスロットU1の再割り当てと同時に、周波数制御部156は、無線端末2Bに対して、割り当てた上りタイムスロットU1の周波数と同一の周波数f2乃至f4の何れかのフレーム内の下りタイムスロットD1を割り当てるようにしてもよい。
更に、周波数制御部156は、無線端末2Bに割り当てた上りタイムスロットU1に対応する周波数f2乃至f4の何れかと、当該上りタイムスロットU1のスロット番号とを、ベースバンド信号処理部104及び無線通信部105を介して、無線端末2Bへ通知する。
なお、無線端末2Bに対して、周波数f2乃至f4の何れかのフレーム内の下りタイムスロットD1を割り当てた場合には、周波数制御部156は、下りタイムスロットD1のスロット番号についても、無線端末2Bへ通知する。
周波数とスロット番号の通知後、周波数制御部156は、衝突している2つの無線信号のうちの時間位置が前方の無線信号の送信元の無線端末2Aに対して割り当てられた周波数f1の上りタイムスロットU1の次の周波数f1の上りタイムスロットU2、すなわち、遅延している無線端末2Aからの無線信号に対応する周波数f1の上りタイムスロットU1の次の周波数f1の上りタイムスロットU2を割り当て対象から除外する。割り当て対象から除外された上りタイムスロットU2に対応する周波数f1と、当該上りタイムスロットU2のスロット番号とは、記憶部103に記憶される。
その後、割り当て部152は、無線端末2A及び2B以外の無線端末である無線端末2Cがセル3内に進入し、当該無線端末2Cからの呼接続要求が行われたか否かを判定する。無線端末2Cからの呼接続要求が行われた場合、割り当て部152は、記憶部103に記憶された、周波数f1とスロット番号とによって特定される周波数f1の上りタイムスロットU2以外の上りタイムスロットを、無線端末2Cに割り当てる。
(2.2)無線基地局の動作
次に、第1の実施形態に係る無線基地局1の動作を説明する。図9は、第1の実施形態に係る無線基地局1の動作を示すフローチャートである。
ステップS101において、無線基地局1は、無線信号の衝突検出を行う。
図10は、無線信号の衝突検出の動作を示すフローチャートである。ステップS201において、無線基地局1内の制御部102は、無線端末2A及び2Bから受信した連続する2つの無線信号(時間位置が前方の無線信号及び時間位置が後方の無線信号)に対応する受信データを取得し、これら連続する2つの受信データのCRCエラー数が所定数以上であるか否かを判定する。
2つの受信データのCRCエラー数が所定数以上である場合、ステップS202において、制御部102は、時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRを検出するとともに、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRを検出し、時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRが第1の所定レベル以下に劣化し、且つ、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRが第2の所定レベル以下に劣化したか否かを判定する。
時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRが第1の所定レベル以下に劣化し、且つ、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRが第2の所定レベル以下に劣化した場合、無線端末2Aからの時間位置が前方の無線信号と無線端末2Bからの時間位置が後方の無線信号とは、衝突している。
この場合、図9のステップS102において、無線基地局1は、無線通信部105の構成変更と周波数切り替えとを行う。
図11は、無線通信部105の構成変更及び周波数切り替えの動作を示すフローチャートである。ステップS301において、無線基地局1内の制御部102は、現在の無線通信部105の構成が、1RFモードであるか否かを判定する。
現在の無線通信部105の構成が1RFモードである場合、ステップS302において、制御部102は、無線通信部105の構成をユニット1とユニット2に分割する2RFモードに変更する。
ステップS305において、制御部102は、無線通信部105内のユニット2の周波数をf1からf2に切り替える。
一方、ステップS301において、現在の無線通信部105の構成が1RFモードでないと判定された場合、ステップS304において、制御部102は、現在の無線通信部105の構成が、2RFモードであるか否かを判定する。
現在の無線通信部105の構成が2RFモードでない場合には、一連の動作が終了する。一方、現在の無線通信部105の構成が2RFモードである場合、ステップS305において、制御部102は、無線通信部105の構成をユニット1乃至ユニット4に分割する2RFモードに変更する。
ステップS306において、制御部102は、無線通信部105内のユニット2の周波数をf1からf2に切り替え、ユニット3の周波数をf2からf3に切り替え、ユニット4の周波数をf2からf4に切り替える。
ステップS303において、無線通信部105内のユニット2の周波数が切り替えられた後、又は、ステップS306において、無線通信部105内のユニット2乃至4の周波数が切り替えられた後、図9のステップS103において、無線基地局1は、上りタイムスロットの再割り当てを行う。
図12は、上りタイムスロットの再割り当ての動作を示すフローチャートである。ステップS401において、無線基地局1内の制御部102は、無線通信部105内のユニット1について、周波数をf1に維持する。更に、制御部102は、ユニット1において、衝突している2つの無線信号のうちの時間位置が前方の無線信号の送信元である無線端末2Aとの通信を維持する。
ステップS402において、制御部102は、2RFモードの場合は、時間位置が後方の無線信号の送信元無線端末2Bに対して、周波数f2の上りタイムスロットU1を割り当てる。一方、制御部102は、4RFモードの場合は、周波数f2乃至f4の何れかの上りタイムスロットU1を割り当てる。
ステップS403において、制御部102は、無線端末2Bに対して、2RFモードの場合は、無線端末2Bに割り当てた上りタイムスロットU1に対応する周波数f2を通知し、4RFモードの場合は、無線端末2Bに割り当てた上りタイムスロットU1に対応する周波数f2乃至f4を通知する。更に、制御部102は、無線端末2Bに対して、当該無線端末2Bに割り当てた上りタイムスロットU1のスロット番号を通知する。
その後、ステップS404において、制御部102は、2RFモードの場合は、周波数f2に対応するユニット2において、無線端末2Bとの通信を開始する。一方、制御部102は、4RFモードの場合は、周波数f2乃至f4の何れかに対応するユニット2乃至4の何れかにおいて、無線端末2Bとの通信を開始する。
その後、図9のステップS104において、無線基地局1は、タイムスロット割り当て監視を行う。
図13は、タイムスロットの割り当て監視の動作を示すフローチャートである。ステップS501において、無線基地局1内の制御部102は、無線端末2Aに対して割り当てられた周波数f1の上りタイムスロットU1の次の周波数f1の上りタイムスロットU2を割り当て対象から除外する。
ステップS502において、制御部102は、無線端末2Cがセル3内に進入し、当該無線端末2Cからの呼接続要求が行われたか否かを判定する。
無線端末2Cからの呼接続要求が行われた場合、制御部102は、割り当て対象から除外された、周波数f1の上りタイムスロットU2以外の上りタイムスロットを、無線端末2Cに割り当てる。
(2.3)作用・効果
本発明の実施形態に係る無線通信システム10において、無線基地局1は、2つの無線端末2A及び2Bに対して、同一の周波数f1の上りタイムスロットを割り当てた後、当該無線端末2A及び2Bからの無線信号を受信した際、当該無線信号の衝突を検出する。
無線信号の衝突が検出され、且つ、無線通信部105の構成が1RFモードである場合、無線基地局1は、無線通信部105をユニット1及びユニット2に分割して2RFモードに切り替え、ユニット1の周波数をf1に維持するとともに、ユニット2の周波数をf2に切り替える。更に、無線基地局1は、無線端末2Bに対して、周波数f2の上りタイムスロットを割り当てる。
また、無線信号の衝突が検出され、且つ、無線通信部105の構成が2RFモードである場合、無線基地局1は、無線通信部105をユニット1乃至ユニット4に分割して4RFモードに切り替え、ユニット1の周波数をf1に維持するとともに、ユニット2乃至4の周波数をf2乃至f4に切り替える。更に、無線基地局1は、衝突している2つの無線信号のうち、時間位置が後方の無線信号の送信元である無線端末2Bに対して、周波数f2乃至f4の何れかの上りタイムスロットを割り当てる。
これにより、衝突していた無線信号の送信元である2つの無線端末2A及び2Bのうち、一方の無線端末2Aが周波数f1の上りタイムスロットを用いた通信を継続し、他方の無線端末2Bが周波数f2、あるいは、周波数f2乃至f4の何れかの上りタイムスロットを用いた通信を開始する。したがって、無線信号の衝突が防止される。
また、無線基地局1は、衝突している2つの無線信号のうち、時間位置が前方の無線信号の送信元である無線端末2Aに対して割り当てている周波数f1の上りタイムスロットの次の上りタイムスロットを、割り当て対象から除外する。
無線端末2Aからの無線信号は、無線基地局1における受信時に、当該無線端末2Aに割り当てられている上りタイムスロットの後側に外れる場合がある。このため、上述のように、無線基地局1が、無線端末2Aに対して割り当てている周波数f1の上りタイムスロットの次の上りタイムスロットを、割り当て対象から除外することで、その後に、無線端末2Aからの無線信号が、他の無線信号と衝突することが防止される。
また、無線基地局1は、無線通信部105の構成を変更する場合、変更後の各ユニットに含まれる無線部106の数を同数にしている。具体的には、無線通信部105の構成が2RFモードに変更される場合には、ユニット1は4つの無線部106a乃至106dによって構成され、ユニット2は4つの無線部106e乃至106hによって構成される。また、無線通信部105の構成が4RFモードに変更される場合には、ユニット1は2つの無線部106a及び106bによって構成され、ユニット2は2つの無線部106c及び106dによって構成され、ユニット3は2つの無線部106e及び106fによって構成され、ユニット4は2つの無線部106g及び106hによって構成される。
1つのユニットに含まれるアンテナ108の数が減少すると、指向性が緩やかになり、無線信号の到達距離が短くなる可能性がある。このため、上述のように、変更後の各ユニットに含まれる無線部106の数を同数にして、各ユニットの指向性と無線信号の到達距離の劣化の度合を同等とすることで、一部のユニットのみについて、指向性と無線信号の到達距離が極端に劣化してしまい、その結果、無線端末との通信が不能になることが防止される。
(2)第2の実施形態
(3.1)無線基地局の構成
次に、第2の実施形態に係る無線基地局1の構成について説明する。図14は、第2の実施形態に係る無線基地局1の構成図である。図14に示すように、第2の実施形態に係る無線基地局1は、第1の実施形態に係る無線基地局1と比較すると、制御部102が、更に、タイミング調整部168及び接続先設定部170を含む点が異なる。
割り当て部162は、呼設定前の初期状態において、無線端末2A及び2Bに対して、周波数f1のフレーム内のタイムスロットを割り当てる。このとき、無線部106b乃至106hの周波数はf1となる。
その後、無線端末2A及び2Bは、割り当てられた周波数f1の上りタイムスロットを用いて、無線基地局1へ無線信号を送信し、割り当てられた周波数f1の下りタイムスロットを用いて、無線基地局1からの無線信号を受信する。
遅延検出部164は、周波数f1の上りタイムスロットを用いて無線端末2A及び2Bから送信される無線信号の遅延を検出する。具体的には、遅延検出部164は、無線通信部105からの周波数f1の上りタイムスロットにある連続する2つの無線信号(無線端末2Aからの無線信号と無線端末2Bからの無線信号)に対応する受信データを入力する。
次に、遅延検出部164は、連続する2つの無線信号(無線端末2Aからの無線信号と無線端末2Bからの無線信号)に対応する2つの受信データについて、CRC(Cyclic Redundancy Check)チェックを行い、エラーフレームの数(CRCエラー数)が所定数以上であるか否かを判定する。2つの受信データについてのエラーフレームの数が所定数以上である場合、遅延検出部164は、更に、時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRを検出するとともに、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRを検出する。
次に、遅延検出部164は、時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRが第1の所定レベル以下に劣化し、且つ、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRが第2の所定レベル以下に劣化したか否かを判定する。
時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRが第1の所定レベル以下に劣化し、且つ、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRが第2の所定レベル以下に劣化した場合、遅延検出部164は、時間位置が前方の受信データに対応する無線信号が遅延していると判定する。
遅延が検出された場合、遅延検出部164は、更に遅延時間Tdを算出する。具体的には、遅延検出部164は、相互相関関数を算出する。ここで、相互相関関数は、既知のユニークワード(UW)の時間位置と、遅延が生じている無線信号に対応する受信データ(遅延データ)のヘッダ部との差分である。次に、遅延検出部164は、相互相関関数がピークとなる時間を遅延時間Tdとして算出する。
周波数制御部166は、遅延時間Tdに基づいて、無線通信部105が使用する周波数の数(周波数使用数)を決定する。具体的には、周波数制御部166は、ガードタイムをTg、nを正の整数とした場合、(n−1)Tg<Td<nTgを満たすnを、周波数使用数として決定する。例えば、2Tg<Td<3Tgである場合、周波数制御部166は、周波数使用数を3とする。
次に、周波数制御部166は、周波数使用数と同一の数だけ、無線通信部105内の無線部106a乃至106hからなるユニットを構成する。更に、周波数制御部166は、決定した使用数の周波数を、1つずつユニットに割り当てる。なお、初期状態は、無線部106a乃至106hによって1つのユニットが構成された状態(1RFモード)である。
例えば、周波数使用数が3である場合、周波数制御部166は、無線部106a乃至106cからなるユニット1と、無線部106d乃至106fからなるユニット3と、無線部106g及び106hからなるユニット3とを構成し、3RFモードとする。更に、周波数制御部166は、周波数f1をユニット1に割り当て、周波数f2をユニット2に割り当て、周波数f3をユニット3に割り当てる。
上述した処理によって、無線通信部105が複数のユニットに分割され、更に、各ユニットに異なる周波数が割り当てられる。これにより、無線基地局1の通信エリアである、無線基地局1を中心とする円形のエリアの拡大が可能となる。具体的には、無線基地局1の通信エリアは、周波数使用数と同一の倍率で径方向に拡大される。
拡大後の無線基地局1の通信エリアは、無線基地局1を中心とする円状及び環状の通信エリアによって構成される。各円状及び環状の通信エリア(分割通信エリア)の径方向の長さは、同一であり、それぞれC・Tgである。ここでCは光速である。
図15は、拡大後の通信エリアの一例を示す図である。図15は、無線基地局1の通信エリアが径方向に3倍に拡大される場合の例である。分割通信エリア201は、拡大前の通信エリアであり、分割通信エリア201乃至203からなる通信エリアは、拡大後の通信エリアである。分割通信エリア201は、無線基地局1からの距離が0乃至C・Tgの領域である。周波数f1のユニット1は、分割通信エリア201内の無線端末との間で通信を行う。分割通信エリア202は、無線基地局1からの距離がC・Tg乃至C・2Tgの領域である。周波数f2のユニット2は、分割通信エリア202内の無線端末との間で通信を行う。分割通信エリア203は、無線基地局1からの距離がC・2Tg乃至C・3Tgの領域である。周波数f2のユニット2は、分割通信エリア203内の無線端末との間で通信を行う。周波数制御部166は、無線基地局1から遠い分割通信エリアに対応するユニットほど、当該ユニットの送信電力を大きくするようにしてもよい。
タイミング調整部168は、各ユニットの通信のタイミング(タイムスロットを用いた通信における送信及び受信のタイミング)を調整する。具体的には、nを正の整数、Cを光速とした場合、タイミング調整部168は、無線基地局1からの距離が(n−1)C・Tg乃至nC・Tgの領域に対応する分割通信エリアを担当するユニットの通信タイミングを、(n−1)・Tgだけ前方にシフトする。
図16は、通信タイミングの調整の一例を示す図である。図16は、図15に示すように、分割通信エリア201乃至203が構成され、周波数f1のユニット1が分割通信エリア201内の無線端末との間で通信を行い、周波数f2のユニット2が分割通信エリア202内の無線端末との間で通信を行い、ユニット3が分割通信エリア203内の無線端末との間で通信を行う場合の例である。ユニット1の通信タイミングは、変更がない。一方、ユニット2の通信タイミングは、Tgだけ前方にシフトし、ユニット3の通信タイミングは、2Tgだけ前方にシフトする。
接続先設定部170は、ユニットの何れかを遅延している無線信号の送信元の無線端末の接続先に設定する。具体的には、nを正の整数、Cを光速とした場合、接続先設定部170は、無線信号の遅延時間Tdについて、(n−1)Tg<Td<nTgを満たすnを特定する。更に、接続先設定部170は、特定したnについて、(n−1)C・Tg乃至nC・Tgの領域に対応する分割通信エリアを担当するユニットを、遅延している無線信号の送信元の無線端末の接続先に設定する。
更に、接続先設定部170は、遅延している無線信号の送信元の無線端末に対して、接続先として設定したユニットへの接続を指示するための指示情報を生成する。この指示情報には、接続先として設定したユニットの通信タイミングが含まれている。指示情報は、ベースバンド信号処理部104及び無線通信部105を介して、無線端末へ送信される。
その後、指示情報の送信先の無線端末と、接続先として設定されたユニットとの間で通信が開始される。
(3.2)無線基地局の動作
次に、第2の実施形態に係る無線基地局1の動作を説明する。図17は、第2の実施形態に係る無線基地局1の動作を示すフローチャートである。
ステップS601において、無線基地局1は、無線信号の遅延を検出する。
図18は、無線信号の遅延検出の動作を示すフローチャートである。ステップS701において、無線基地局1内の制御部102は、無線端末2A及び2Bから受信した連続する2つの無線信号(時間位置が前方の無線信号及び時間位置が後方の無線信号)に対応する受信データを取得し、これら連続する2つの受信データのCRCエラー数が所定数以上であるか否かを判定する。
2つの受信データのCRCエラー数が所定数以上である場合、ステップS702において、制御部102は、時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRを検出するとともに、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRを検出し、時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRが第1の所定レベル以下に劣化し、且つ、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRが第2の所定レベル以下に劣化したか否かを判定する。
時間位置が前方の受信データにおけるテール部のSNRが第1の所定レベル以下に劣化し、且つ、時間位置が後方の受信データにおけるヘッダ部のSNRが第2の所定レベル以下に劣化した場合、無線端末2Aからの無線信号には、遅延が生じている。
この場合、図17のステップS602において、無線基地局1は、遅延時間を算出する。
図19は、遅延時間算出の動作を示すフローチャートである。ステップS801において、無線基地局1内の制御部102は、既知のユニークワード(UW)の時間位置と、遅延データ(時間位置が後方の受信データ)のヘッダ部との差分を相互相関関数として算出する。
ステップS802において、制御部102は、相互相関関数がピークとなる時間を遅延時間Tdとして算出する。
その後、図17のステップS603において、無線基地局1は、周波数使用数決定、無線通信部の構成設定及び通信タイミングの調整を行う。
図20は、周波数使用数決定、無線通信部の構成設定及び通信タイミングの調整の動作を示すフローチャートである。以下においては、遅延時間Tdがガードタイムの3倍である3Tg未満である場合を例に説明する。
ステップS901において、無線基地局1内の制御部102は、遅延時間TdがガードタイムTgより大きいか否かを判定する。遅延時間TdがガードタイムTg以下である場合には、一連の動作が終了する。
一方、遅延時間TdがガードタイムTgより大きい場合、ステップS902において、制御部102は、遅延時間TdがガードタイムTgより大きく、且つ、ガードタイムTgの2倍未満であるか否かを判定する。遅延時間TdがガードタイムTg以下である場合には、一連の動作が終了する。
遅延時間TdがガードタイムTgより大きく、且つ、ガードタイムTgの2倍未満である場合、ステップS903において、制御部102は、無線通信部105の周波数使用数を2に決定する。次に、ステップS904において、制御部102は、無線通信部105の構成を2RFモードに設定する。ここでは、ユニット1及びユニット2が構成される。更に、制御部102は、決定した使用数の周波数を、1つずつユニット1及び2に割り当てる。
ステップS905において、制御部102は、ユニット2の通信タイミングをガードタイムTgだけ前方にシフトさせる。
一方、ステップS902において、遅延時間TdがガードタイムTgの2倍以上であると判定された場合、ステップS906において、制御部102は、無線通信部105の周波数使用数を3に決定する。次に、ステップS907において、制御部102は、無線通信部105の構成を3RFモードに設定する。ここでは、ユニット1、ユニット2及びユニット3が構成される。更に、制御部102は、決定した使用数の周波数を、1つずつユニット1、ユニット2及びユニット3に割り当てる。
次に、ステップS908において、制御部102は、ユニット2の通信タイミングをガードタイムTgだけ前方にシフトさせる。更に、ステップS909において、制御部102は、ユニット3の通信タイミングをガードタイムTgの2倍(2Tg)だけ前方にシフトさせる。
その後、図17のステップS604において、無線基地局1は、無線端末2Aの接続先のユニット設定を行う。
図21は、無線端末の接続先のユニット設定の動作を示すフローチャートである。なお、以下においては、通信エリアが2分割され、且つ、無線通信部105の構成が2RFモードであるものとする。
ステップS1001において、無線基地局1内の制御部102は、遅延している無線信号の送信元の無線端末2Aの接続先をユニット2に設定する。ステップS1002において、制御部102は、遅延している無線信号の送信元の無線端末2Aへユニット2への接続を指示するための指示情報を生成し、生成した指示情報を無線端末2Aへ送信する。その後ステップS1003において、指示情報の送信先の無線端末2Aと、ユニット2との通信が、周波数f2のタイムスロットを用いて開始される。なお、3RFモードの場合には、制御部102は、遅延している無線信号の送信元の無線端末2Aへユニット3への接続を指示するための指示情報を生成し、生成した指示情報を無線端末2Aへ送信する。
(3.3)作用・効果
本発明の実施形態に係る無線通信システム10において、無線基地局1は、無線端末からの無線信号の遅延を検出した場合、当該遅延の時間に基づいて、無線通信部105の周波数使用数を決定し、当該周波数使用数に応じた数のユニットを無線通信部105内に構成する。また、無線基地局1は、各ユニットに異なる周波数を割り当てる。更に、無線基地局1は、遅延の時間に対応する分割通信エリアを担当するユニットの通信タイミングを前方にシフトさせる。
これにより、無線通信部105内に構成される1のユニットは、遅延の時間に対応する通信エリアを担当することになり、更には、当該ユニットの通信のタイミングが前方にシフトされることにより、遅延が解消され、無線信号の衝突が防止される。また、無線基地局1からの距離が遠い無線端末からの信号ほど、他の無線信号との衝突が生じやすいが、無線信号の衝突が防止されることで、無線基地局1は、距離が遠い無線端末との間で通信を行うことが可能となり、通信エリアを拡大することができる。
(4)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
上述した第1の実施形態では、無線基地局1において、無線端末2Aからの無線信号と無線端末2Bからの無線信号とが衝突した場合、時間位置が後方である無線信号の送信元の無線端末2Bに対して、それまでとは別の周波数の上りタイムスロットを割り当てるようにしたが、時間位置が前方である無線信号の送信元の無線端末2Aに対して、それまでとは別の周波数の上りタイムスロットを割り当てるようにしてもよい。
また、上述した第1の実施形態では、無線通信部105内の無線部106a乃至106hは、全て初期状態において稼働していることとしたが、例えば、初期状態においては、半数の無線部106e乃至106hをスタンバイ状態とし、無線信号の衝突が検出された場合に稼働を開始するようにしてもよい。この場合、制御部102内の周波数制御部156は、無線部106e乃至106hの稼働開始時に、当該無線部106e乃至106hの周波数を、無線部106a乃至106dの周波数とは異なる周波数に設定する。
また、上述した第1の実施形態では、無線基地局1は、無線端末からの無線信号の衝突を検出したが、第2の実施形態と同様、無線信号の遅延、及び、当該遅延の時間を検出するようにしてもよい。
また、上述した第1及び第2の実施形態では、無線通信部105は、2つのユニットに分割された2RFモード、3つのユニットに分割された3RFモード、4つのユニットに分割された4RFモードが設定されたが、1つのユニットには、少なくとも1つの無線部106が含まれていればよく、例えば、無線通信部105は、8つのユニットに分割された8RFモードに変更されてもよい。
また、上述した第1及び第2の実施形態では、複数のアンテナ108a乃至108hを備え、アダプティブアレイ制御を行う無線基地局1について説明したが、他のマルチアンテナ技術、例えばMIMO(Multiple Input Multiple Output)を利用する場合においても、同様に本発明を適用することができる。
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。