JP5342266B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも一方の面に紫外線(以下、単にUVと略記することがある)照射で着色する塗布層を有するポリエステルフィルムに関するものである。
近年、太陽電池や電子機器、さらには建材などの生活装飾品関連に至るまで多方面で機能性ポリエステルフィルムが使われている。また、生産ラインにおける、装飾やカットなどの目印として、機能性ポリエステルフィルムが使われる可能性がある。これらの用途では安価で、環境に優しく、高機能性のポリエステルフィルムが望まれている。
既存のポリエステルフィルムでは、生活用品装飾における建材用途として、主流のインクジェット法によるプリントが施されたポリエステルフィルムが知られている。インクジェット法の問題点としては、様々なポリマーや顔料を多量に使用することから環境への負荷が大きい、また、汚染などのメンテナンスや設備投資費の大きさ、ランニングコスト、さらには、生産ラインにおける目印として利用するときに、乾燥工程が必要、インクで工程が汚染されてしまうこと、フィルム厚みの変化などの技術的な難点が挙げられる。
従来のインクジェット法ではなく、例えば、UV感光型の着色性能を有するポリエステルフィルムを用いたならば、上記で述べた生産ラインにおける目印として、インクを用いず、フィルム厚みを変えず、UV照射時に着色が目視で判断でき、さらに、工程以外で着色の必要の無いところでは、強いUV光源がないために透明なままであることから利用価値の高い新規着色方法として期待できる。
さらなる例としては、電子部品におけるUV感光マーカーや光センサー技術としての用途可能性があるばかりではなく、UV感光着色技術を用いた美しい生活用品への応用の可能性がある。
UV感光着色性有機フォトクロミック化合物含有ポリエステルにおいては、問題点がいくつかある。例えば、有機フォトクロミック化合物では、フィルムの溶融、製膜時にかかる熱(約300℃)などによる分解のおそれがある。また、有機フォトクロミック化合物では、ポリエステルへの様々な方法に関する含有に対して、分散性が低い場合があり、その場合、期待した着色機能が発揮できない可能性がある。逆に、機能を重視して、有機フォトクロミック化合物をポリエステルに多量に配合した場合、フィルムの外観の問題や生産時のコストの問題が発生する。
特開2007−146014号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、使用される際に系内を汚染することがなく、太陽電池や電子機器、さらには建材などの生活装飾品関連、電子部品におけるUV感光マーカーや光センサー技術への応用が期待できる、良好な識別機能が付与されたポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者は、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも一方の面にインラインコーティングにより設けられた塗布層を有するポリエステルフィルムであり、当該塗布層中にUV照射による不可逆的なカラーチェンジ(変色)性能を有する有機フォトクロミック化合物を1.0〜10重量%含有し、且つ共重合ポリエステル、ポリビニルアルコール、シリカゾルを含有することを特徴とするポリエステルフィルムに存する。

以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムは、単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
本発明のポリエステルフィルム中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されているような耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.1〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できなかったり、粒子が凝集して、分散性が不十分となり、フィルムの透明性を低下させたりする場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、フィルム外観が悪くなる等の不具合が生じる場合がある。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分となることがあり、一方、5重量%を超えて添加すると、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは50〜250μmの範囲である。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルムの製造に関しては、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
本発明において使用することのできる有機フォトクロミック化合物として、ナフトピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、1,4−2H−オキサジン、ベンゾピラン系化合物などの有機フォトクロミック物質が挙げられるが、これらの中でもスピロオキサジン系化合物およびベンゾピラン系化合物が好ましい。
有機フォトクロミック化合物の具体例としては、1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、6’−インドリノ−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、5−クロル−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、6’−ピペリジノ−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、1−ベンジル−3,3−ジメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、1,3,5,6−テトラメチル−3−エチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、1,3,3,5,6−ペンタメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]、1,3,5,6−テトラメチル−3−エチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ピリド−(3,2−f)(1,4)−ベンゾオキサジン]、1,3’,3′−トリメチルスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、スピロ[2H−クロメン−2,2’−トリシクロ[3.3.1.13.7]デカン]、5,7−ジメチル−スピロ[2H−クロメン−2,2’−トリシクロ[3.3.1.13.7]デカン]、等が挙げられる。
有機フォトクロミック化合物は、単独で使用することも可能であるが、変色機能を向上させることや耐光性を向上させることを目的として、高沸点タイプの溶媒、可塑剤、合成樹脂、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物などの助剤を併用することが好ましい。これらの化合物は、有機フォトクロミック化合物と併用する材料として公知のものであり、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p-オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
次に本発明における有機フォトミック化合物を含有する塗布層の形成方法について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であり、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるという点でインラインコーティングが好ましく用いられる。
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に塗布層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
本発明においては、ポリエステルフィルムの一方の面、もしくは両面に有機フォトミック化合物含有水/有機溶媒混合溶液を塗布液とし、インラインコーティングを施すことで、それらを塗布層とすることを必須の要件とするものである。また、このコーティングでは、コーティングによる限定はなく、接着などの様々な機能を有する塗布液と混合して液安定性が十分ならば、それらの液と共に用いることで、さらなる性能を持たせたポリエステルフィルムを提供することが可能である。
本発明における塗布層は、ポリエステルフィルムにUV照射による着色機能を付与させるために設けられたもので、その他の用途として、フィルムへの目印やデザイン性能が期待できる塗布層の形成を挙げることができる。
本発明における塗布層に含有する、有機フォトミック化合物含有水/有機溶媒混合溶液からなる塗布液の構成について説明する。水との相溶性をある程度有する有機溶媒としては、アルコール類やケトン類、エステル類の溶媒が挙げられる。また、トルエンなどのアントラセンに対して富溶媒となるものは、さらにアルコール類やケトン類、エステル類の溶媒との混合溶媒として少量用いることが望ましい。アルコール類としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどに代表されるアルキル鎖を有する溶媒や置換基にアリール基を有するアルコールなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。エステル類については、酢酸エチルなどが挙げられる。
さらに、その塗布液の均一分散や均一溶液を狙うのでならば、その溶液の超音波処理などを行うことが望ましい。
また本発明における塗布層には、ポリエステルフィルムとした後でロール状に巻いた際に、フィルムの表裏が張り付く、いわゆるブロッキングが起こりやすくなる。ブロッキングを防止するために、粒子を含有することが好ましい。粒子の含有量としては、塗布層全体の重量比で、3〜25%の範囲であることが好ましく、5〜15%の範囲であることがより好ましく、5〜10%の範囲であることがさらに好ましい。3%未満の場合、ブロッキングを防止する効果が不十分となる場合がある。また25%を超える場合、ブロッキングの防止効果は高いものの、塗布層の透明性の低下、塗布層の連続性が損なわれることによる塗膜強度の低下などが懸念される。上記の範囲で粒子を使用することにより、耐ブロッキング性能を有するものとなる。
粒子としては例えば、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を用いることができる。特に、塗布層への分散性や得られる塗膜の透明性の観点からは、シリカ粒子が好適である。
粒子の粒径は、小さすぎるとブロッキング防止の効果が得られにくく、大きすぎると塗膜からの脱落などが起き易い。平均粒径として、塗布層の厚さの1/2〜10倍程度が好ましい。さらに、粒径が大きすぎると、塗布層の透明性が劣ることがあるので、平均粒径として、300nm以下、さらには150nm以下であることが好ましい。ここで述べる粒子の平均粒径は、粒子の分散液をマイクロトラックUPA(日機装社製)にて、個数平均の50%平均径を測定することで得られる。
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水/有機溶媒混合溶液として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて着色性能を持つポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
本発明のポリエステルフィルムに設けられる塗布層の膜厚は、通常0.002〜1.0g/m、より好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.01〜0.2g/mの範囲である。膜厚が0.002g/m未満の場合は十分なUV感光着色性能が得られない可能性があり、1.0g/mを超える場合は、外観や透明性、フィルムのブロッキング性が悪化する可能性がある。
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、UV感光着色性有機フォトミック化合物の分解が起きない限り、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における、カラーチェンジ性能を持つフォトクロミック化合物塗布ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
有機フォトミック化合物の塗布層中の含有量は、1.0〜10重量%の範囲である。含有量が1.0重量%未満では、フィルムの着色性が劣る。一方、10重量%を超えて含有する場合、フィルム中での劣化物により、不具合が生じる。
本発明における着色とは、フィルム外観における色の変化である。詳しくは、輝度測定におけるコントラスト比で表現することができ、具体的には、UV照射部分と未照射部分の比から求められる相対輝度が102〜105程度の値、好ましくは105以上である。また、L*a*b*色差評価から求められるΔEによっても、着色を表現することができ、ΔE値が5.0〜20.0程度の値が好ましく、さらに好ましくは、20.0以上である。
本発明のポリエステルフィルムによれば、有機フォトミック化合物を適量範囲内で塗布層中に含有しても透明性が高い、カラーチェンジ性能を持つフォトクロミック化合物塗布ポリエステルフィルムを提供することができる。また、本発明のポリエステルフィルムは、インクジェットなどの方法に代わる、生産ラインの何らかの目印になること、また、電子部品におけるUV感光マーカーや光センサー技術としての用途可能性があるばかりではなく、UV感光発光技術を用いた美しい生活用品への応用が期待できるため、その工業的価値は高い。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルフィルムの透過率測定
透明性の基準として、目視による透明性の評価と透過率測定が挙げられる。次のような基準で判断する。
・目視に関して
○:ほぼ透明である
△:透明であるが、少し黄色に着色している
×:黄色が強く曇っている
・透過率測定に関して
JIS − K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−300Aによりフィルムの全光線透過率を測定した。一般的なポリエステルフィルムの透過率に対して、0.5〜1%の範囲内の透過率の低下を◎、1〜2%の範囲内の透過率の低下を○、2〜4%の範囲内の透過率の低下を△、4%を超える透過率の低下を×として評価した。
(2)ポリエステルフィルムのUV照射後の着色強度のコントラスト評価
輝度計を用いて、UV照射前のフィルムの非着色部分とUV照射後の着色部分のコントラスト比の評価を行った。具体的には、電通産業製フラットイルミネーター:HF−SL−A48LCFにサンプルを置き、さらに、コニカミノルタセンシング社製:CS−200を用い、測定視野角1°、サンプルと輝度計との距離を500mmとし、輝度値(cd/m)を測定した。なお、相対輝度(%)を下記式より求めた。
相対輝度=(UV未照射部分の測定値)÷(UV照射部分の測定値)×100
得られた相対輝度の値から下記基準で評価した。
◎:105を超える(強い着色)
○:102〜105(着色している)
△:101〜102(薄い着色)
×:101未満(ほとんど着色していない)
(3)ポリエステルフィルムのUV照射後の着色強度のL*a*b*色差評価
得られたUV照射後のポリエステルフィルムについて、色差計を用いて、UV照射前のフィルムの非着色部分とUV照射後の着色部分のL*a*b*色差の評価を行った。具体的には、JIS Z 8729に従い、コニカミノルタ製色彩色差計CR−410(サンプル径50mm)を用いて、UV照射部分と非照射部分のL*a*b*色差値を測定した。このとき、光源はC/D65で、背面を白色とし、反射法にて測定を行った。測定回数は3回行い、平均値を採用した。その後、ΔL*(照射部分のL*値−非照射部分L*値)、Δa*(照射部分のa*値−非照射部分a*値)、Δb*(照射部分のb*値−非照射部分b*値)をそれぞれ求め、ΔE値を算出し、評価した。
なお、ΔE値を下記式より求めた。
ΔE={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
得られたΔEの値から下記基準で評価した。
◎:20.0を超える(強い着色)
○:10.0〜20.0(着色している)
△:5〜10.0(薄い着色)
×:5未満(ほとんど着色していない)
(4)ポリエステルフィルムのUV照射後の着色強度の目視評価
UVによる不可逆的なカラーチェンジ(着色)性能を有するポリエステルフィルムにおいて、本発明は将来的には工業的生産を目的としていて、目視で変化が見て取れる事が第一条件となるため、得られたUV照射後のポリエステルフィルムについて、目視による強度の判断を行った。次のような基準で判断する。
◎:強い着色
○:着色している
△:薄い着色
×:着色していない
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。
すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度0.63のポリエステル(A)を得た。
<ポリエステル(B)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、正リン酸を添加した後、二酸化ゲルマニウム加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.65に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度0.65のポリエステル(B)を得た。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.0μmのシリカ粒子を0.2部加えて、極限粘度0.66に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いて、極限粘度0.66のポリエステル(C)を得た。
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)、(C)をそれぞれ85%、5%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ95%、5%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々290℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、易接着の機能を有する下記樹脂Iを50重量部、IIを45重量部および不活性粒子IIIを5重量部含有する、水とエタノールとの混合溶液(混合比は4:6)中に有機フォトクロミック化合物であるスピロオキサジン系化合物、1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]を配合した塗布液を塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、乾燥後の塗布層中に1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]を9.8重量%含有する、厚さ100μm(表層5μm、中間層90μm)のポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、無色透明なフィルムであった。そのポリエステルフィルムについて、高圧水銀灯によるUV(ウシオ電気株式会社:UVC−402/1HN:302/1MN:JC01)光照射(181mW/cm,10m/分,d=100mm)を行い、カラーチェンジ性能を評価したところ、黄色着色状態への変化は良好なものであった。
・塗布剤の内容
バインダー樹脂I:ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、5ーナトリウムスルホイソフタル酸を含有し、ジオール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコールを含有する共重合ポリエステル
水溶性樹脂II:けん化度88モル%、重合度1700のポリビニルアルコール
不活性粒子III:平均粒径0.05μmのシリカゾル
実施例2:
1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]の配合量を1.2wt%にした塗布液を用いて、ポリエステルフィルムを得るということ以外は実施例1と同様の方法である。得られたポリエステルフィルムは、無色透明なフィルムであった。そのポリエステルフィルムについて、実施例1と同様の方法でUV照射を行い、カラーチェンジ(着色)性能を評価したところ、黄色着色状態への変化は良好なものであった。薄黄色着色状態(強度)であり、透明性についても良好なものであった。
比較例1:
1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]の配合量を20wt%にした塗布液を用いて、ポリエステルフィルムを得るということ以外は実施例1と同様の方法である。得られたポリエステルフィルムは、透明性が失われた黄色のフィルムであった。そのポリエステルフィルムについて、実施例1と同様の方法でUV照射を行い、カラーチェンジ(着色)性能を評価したところ、黄色着色状態への変化は顕著であった。
比較例2:
1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−(3H)−ナフト−(2,1−b)(1,4)−オキサジン]の配合量を0.5wt%にした塗布液を用いて、ポリエステルフィルムを得るということ以外は実施例1と同様の方法である。得られたポリエステルフィルムは、透明なフィルムであった。そのポリエステルフィルムについて、実施例1と同様の方法でUV照射行い、カラーチェンジ(着色)性能を評価したところ、黄色着色状態への変化は確認できなかった。
Figure 0005342266
本発明のポリエステルフィルムは、屋外向けの建材など様々な用途で、紫外線強度測定の目安になること、また、電子部品におけるUV感光マーカーや光センサー技術としての用途可能性があるばかりではなく、UV感光着色技術を用いた美しい生活用品への応用が期待できる。

Claims (1)

  1. 少なくとも一方の面にインラインコーティングにより設けられた塗布層を有するポリエステルフィルムであり、当該塗布層中にUV照射による不可逆的なカラーチェンジ(変色)性能を有する有機フォトクロミック化合物を1.0〜10重量%含有し、且つ共重合ポリエステル、ポリビニルアルコール、シリカゾルを含有することを特徴とするポリエステルフィルム。
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