JP5342165B2 - 空気二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば自動車や携帯電話等の携帯機器の電源に適した空気二次電池に関する。
近年、地球環境に配慮する観点から市場に電気自動車やハイブリッド自動車が登場するようになってきた。また、高機能な携帯電話等の携帯機器が普及するようになってきた。このような自動車や携帯機器には、よりエネルギー密度の高い二次電池が必要になる。そこで、正極側に多量の正極活物質を充填する必要のない、正極活物質として空気を用いた空気―亜鉛電池、空気―アルミニウム電池や空気―金属水素化物電池(例えば、特許文献1参照)が注目されるようになってきた。
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術には以下のような問題点が存在する。
この二次電池は、両電極間のイオン反応が活発に行なわれるようにするために、電解液として水酸化カリウム(KOH)が使用されている。これは、イオン反応が活発に行なわれる点では、好都合であるが、KOHのようにpHの高い電解液を用いると空気中の二酸化炭素を吸収して、炭酸カリウム(KCO)を生成し電解液が劣化するという問題点があった。すなわち、電解液のpHが低下し、両電極間のイオン反応が不活発になり、電圧が低下するという現象が発生してしまう。
特開2000−133325号公報
本発明の目的は、電解液の劣化がなく、電圧が低下しない空気二次電池を提供することにある。
この目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、
正極と、この正極に対峙して配置された負極と、前記正極と負極の間に配置された電解液とを備え、
前記負極は、
スズとガリウムを含有した第1の金属、または、ガリウムからなる第3の金属から選択される少なくとも1種のガリウム系金属と、標準電極電位がガリウムより低い金属元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素とを有する液状合金材を含み、
前記標準電極電位がガリウムより低い金属元素が、アルミニウムであり、
前記電解液が、前記標準電極電位がガリウムより低い金属元素として用いる元素と同元素の陽イオンを含む、pHが9以下の水溶液であることを特徴とする空気二次電池ある。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記液状合金材に前記アルミニウムを連続供給可能な構成をさらに備えたものである。
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記液状合金材および前記電解液を収容する容器を有し、
前記正極は、前記電解液および空気と接触するが、前記液状合金材とは接触しない構成としたものである。
本発明に係る空気二次電池は、正極と、この正極に対峙して配置された負極と、前記正極と負極の間に配置された電解液とを備え、
前記負極は、
スズとガリウムを含有した第1の金属、銀とガリウムを含有した第2の金属、ガリウムからなる第3の金属、または、ガリウムに鉄、銅、ゲルマニウム、アンチモンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含有した第4の金属から選択される少なくとも1種のガリウム系金属と、標準電極電位がガリウムより低い金属元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素とを有する液状合金材を含む構成であるため、電解液の劣化がなく、電圧降下がない。
以下、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
本発明に係る空気二次電池は、正極と、この正極に対峙して配置された負極と、前記正極と負極の間に配置された電解液とを備え、
前記負極は、
スズ(Sn)とガリウム(Ga)を含有した第1の金属、銀(Ag)とガリウムを含有した第2の金属、ガリウムからなる第3の金属、または、ガリウムに鉄(Fe)、銅(Cu)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)からなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含有した第4の金属から選択される少なくとも1種のガリウム系金属と、
標準電極電位がガリウムより低い金属元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素とを有する液状合金材を含むことを特徴とする。
以上のような構成であるため、本発明は、以下のような作用効果を奏する。
1)電解液の劣化がない。
2)負極は全体として粘性の低い状態を呈し、かつ、負極を構成する標準電極電位がガリウムより低い金属元素が放電時にイオンとして電解液内にスムーズに拡散することができるため、電圧降下がない。
以下に、上記構成に至った理由について詳述する。
本発明者は、如何にしたら空気二次電池でありながら、電解液の劣化もなく、電圧降下を避けることが可能なのか、鋭意研究を行った。その結果、空気二次電池において、当業者においても想到し得ない、スズとガリウムを含有した第1の金属、銀とガリウムを含有した第2の金属、ガリウムからなる第3の金属、または、ガリウムに鉄、銅、ゲルマニウム、アンチモンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含有した第4の金属から選択される少なくとも1種のガリウム系金属と、標準電極電位がガリウムより低い金属元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素とを有する液状合金材を含む負極を用いたことで、以下のような知見を得た。
1)上記液状合金材を含む負極を用いると、放電時に標準電極電位がガリウムより低い金属元素が負極内からイオンとして電解液内にスムーズに拡散するため、KOHのようなpHの高い電解液を使用する必要がなくなる。したがって、空気中の二酸化炭素を吸収して、沈殿物を生成し電解液が劣化するようなこともなくなった。
2)また、上述のように負極内から上記イオンとして電解液内にスムーズに拡散し、かつ、電解液の劣化も起こらないことより、電圧降下も発生しなかった。
上記負極を構成する液状合金材として、上記第1の金属は、スズがW%(%は、質量%の意味、以下同じ)、ガリウムがX%であり、上記第2の金属は、銀がY%、ガリウムがZ%であり、上記第1または第2の金属は粘性の低い状態を呈する下記式(1)〜(6)を満足する。また、上記第1または第2の金属に上記標準電極電位がガリウムより低い金属元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素の合計量を添加しても、粘性の低い状態を呈し、かつ、放電時にイオンとして負極内から電解液内にスムーズに溶出し、拡散することにより電圧降下抑制が可能な点から、上記金属元素の合計量は上記第1または第2の金属基準で90%以下(ただし、0%を含まない)であることが好ましい。上記金属元素の合計量として、より好ましくは、0.1%以上90%以下である。
W≦12.5 … (1)
87.5≦X≦100 … (2)
X=100−W … (3)
0.1<Y≦50 … (4)
50 ≦Z<100 … (5)
Z=100−Y … (6)
また、上記第3の金属として、実質的にガリウムのみからなる金属(その他は不可避不純物)を用いても、上記標準電極電位がガリウムより低い金属元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素の合計量がガリウム基準で90%以下(ただし、0%を含まない)の条件さえ満足するば、上述同様の作用効果を奏する。上記金属元素の合計量として、より好ましくは、0.1%以上90%以下である。
また、上記第4の金属に関しても、上述の観点より、ガリウムに鉄、銅、ゲルマニウム、アンチモンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上を0.1〜1%含有したものであり、前記標準電極電位がガリウムより低い金属元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素の合計量は、前記第4の金属基準で90%以下(ただし、0%を含まない)であることが好ましい。上記金属元素の合計量として、より好ましくは、0.1%以上90%以下である。
また、上記標準電極電位がGaより低い金属元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素としては、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ランタン(La)、セリウム(Ce)が利用可能である。これらの金属元素は、放電時に負極内から電解液内にイオンとして極めてスムーズに拡散する。また、この金属元素としては、亜鉛が好ましい。また、この金属元素として、アルミニウムを単体もしくは混合して利用する場合には、液状合金材を構成するガリウム系金属内にアルミニウムを連続供給可能な構成を備えておきさえすれば、極めてスムーズに充電を行なうことが可能である。
また、電解液としては、例えばpH5程度の硫酸亜鉛(ZnSO・7HO)水溶液やpH4程度の塩化アルミニウム(AlCl・6HO)水溶液のような酸性の電解液を用いることができる。具体的には、標準電極電位がガリウムより低い金属元素として用いる元素と同元素の陽イオンを含む水溶液を用いることができる。また、電解液としては、酸性の電解液に限定されるものではなく、水のようにほぼ中性近傍のものを使用することも可能である。さらに、電解液としては、強アルカリ性でないpHが9以下のものを使用することも可能である。なぜならば、上記負極を構成する液状合金材を用いたならば、電解液として、pHが9以下のものを使用したとしても、上述したように放電時に標準電極電位がガリウムより低い金属元素が負極内からイオンとして電解液内にスムーズに拡散するためである。よって、電解液の劣化がなく、電圧降下を抑制できる。すなわち、電解液としては、pHが9以下で、かつ、負極を構成する上記液状合金材に合わせて所定なものを適宜選定すればよい。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。
本発明の作用効果を確証するため、以下のラボ試験を実施した。
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の空気二次電池の実験構成を説明するための模式図である。図1において、1は容器、2は容器1の下層側に収容された下記表1に示す負極、3は負極2の上に注がれ容器1に収容された電解液、4は正極としての白金(Pt)からなる空気拡散電極、5は集電導線である。
下記表1の試験No.1、2(発明例)に示す組成からなる負極2は、液状合金材であり、試験No.3(比較例)に示すZnからなる負極2は、固体である。また、試験No.1、2(発明例)、3(比較例)ともに電解液3の薬剤は、下記表1に示すようにZnSO・7HOである。また、空気拡散電極(正極)4は電解液3の中に浸漬され、電解液3と接触すると同時に空気とも接触するが、負極2とは接触しないように構成されている。また、負極2と集電導線5とは、電気的に接続されている。この集電導線5は、銅等の線に塩化ビニル等の絶縁樹脂が被覆された構成である。なお、集電導線5において、電解液3との接触部分には必ず絶縁被覆が必要であり、上記負極2を構成する液状合金材や固体のZnとの接触部分は、絶縁被覆がなく、銅等の線がむき出しになっている。また、正極4では、放電時に空気のバブリングがある。
Figure 0005342165
上記のように構成された試験No.1、2(発明例)と試験No.3(比較例)をそれぞれ2.5Vで5時間充電した。充電後の試験No.1〜3について、電圧を計測した結果、それぞれ2.3V、1.7V、1Vであった。その後、放電電流を計測した結果、それぞれ4、5、0.5(mA/cm)であり、試験No.1、2に関しては、1.5V以上の電圧が示されたが、試験No.3に関しては、1Vの電圧になった。
また、上記放電電流の計測後に電解液を観察した結果、試験No.1〜3のいずれとも劣化は、認められなかった。
また、上記充電後の試験No.1〜3の負極側を観察した結果、試験No.3では、試験No.1、2では認められないデンドライトの生成が確認された。試験No.3は、上述の電圧、放電電流特性のみならず、前記デンドライトの生成の点からも適当でない。
本実施例においては、ガリウム系金属として、第1の金属としてのSn−Ga合金(試験No.2)と第3の金属としてのGa金属(試験No.1)のみについて説明したが、必ずしもこれに特定されるものではなく、上述したような条件を満足する銀とガリウムを含有した第2の金属、または、ガリウムに鉄、銅、ゲルマニウム、アンチモンからなる群から選ばれた少なくとも1種以上を含有した第4の金属や第1、第2、第3、第4の金属の組合せも使用可能である。
また、上記負極2を構成する標準電極電位がGaより低い金属元素の量に関しても、必ずしも上記表1に示す値に特定されるものではなく、上述した所定の条件を満足するものであればよい。
また、本実施例においては、電解液として、薬剤にZnSO・7HOを用いた場合についてのみ説明したが、必ずしもこれに特定されるものではなく、上述したようにpHが9以下で、かつ、負極を構成する上記液状合金材に合わせて所定なものを適宜選定すればよい。
また、本実施例においては、空気拡散電極(正極)4に白金(Pt)を用いる場合についてのみ説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば白金めっきしたチタンやカーボン等を用いることも可能である。
(実施例2)
図2は本発明の実施例2の空気二次電池の実験構成を説明するための模式図である。本実施例において、実施例1と同一の構成要素については、同一の番号を付与して詳細な説明は省略し、異なる部分のみ詳述する。図2において、6はアルミニウムを負極2を構成する液状合金材内に連続供給可能な補充機構である。
また、本実施例において、下記表2の試験No.4(発明例)に示す組成からなる負極2は、液状合金材であり、試験No.5(比較例)に示すAlからなる負極2は、固体である。また、試験No.4(発明例)、5(比較例)ともに電解液3の薬剤は、下記表2に示すようにAlCl・6HOである。また、試験No.4(発明例)においては、下記表2に示すように負極2を構成する液状合金材中に標準電極電位がGaより低い金属元素として亜鉛(Zn)以外にアルミニウム(Al)も含有するため、補充機構6によりアルミニウムを連続供給可能にしてある。これにより、極めてスムーズに充電を行なうことが可能である。
Figure 0005342165
上記のように構成された試験No.4(発明例)と試験No.5(比較例)について、電圧を計測した結果、それぞれ1.5V、0.8Vであった。その後、放電電流を計測した結果、それぞれ10、0.1(mA/cm)であり、試験No.4に関しては、1.5V以上の電圧が得られたが、試験No.5に関しては、1V以下の電圧しかえられなかった。
また、上記放電電流の計測後に電解液を観察した結果、試験No.4、5のいずれとも劣化は、認められなかった。
試験No.5は、電圧、放電電流特性自体に問題があり、適当でない。
本実施例においては、ガリウム系金属として、第3の金属としてのGa金属(試験No.4)のみについて説明したが、必ずしもこれに特定されるものではなく、実施例1の場合と同様に、上述したさまざまものを使用可能である。
また、本実施例においては、上記標準電極電位がGaより低い金属元素として、Alを主体としたZnとの混合物のみについて説明したが、必ずしもこれに特定されるものではなく、大きな電圧が得られるMgとの組合せも使用可能である。また、上記金属元素の合計量に関しても、必ずしもこれに特定されるものではなく、上述した所定の条件を満足するものであればよい。
また、本実施例においては、電解液として、薬剤にAlCl・6HOを用いた場合についてのみ説明したが、必ずしもこれに特定されるものではなく、上述したようにpHが9以下で、かつ、負極を構成する上記液状組成物に合わせて所定なものを適宜選定すればよい。
本発明の実施例1の空気二次電池の実験構成を説明するための模式図である。 本発明の実施例2の空気二次電池の実験構成を説明するための模式図である。
符号の説明
1 容器
2 負極
3 電解液
4 空気拡散電極(正極)
5 集電導線
6 補充機構

Claims (3)

  1. 正極と、この正極に対峙して配置された負極と、前記正極と負極の間に配置された電解液とを備え、
    前記負極は、
    スズとガリウムを含有した第1の金属、または、ガリウムからなる第3の金属から選択されるガリウム系金属と、標準電極電位がガリウムより低い金属元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素とを有する液状合金材を含み、
    前記標準電極電位がガリウムより低い金属元素が、アルミニウムであり、
    前記電解液が、前記標準電極電位がガリウムより低い金属元素として用いる元素と同元素の陽イオンを含む、pHが9以下の水溶液であることを特徴とする空気二次電池。
  2. 前記液状合金材に前記アルミニウムを連続供給可能な構成をさらに備える請求項1に記載の空気二次電池。
  3. 前記液状合金材および前記電解液を収容する容器を有し、
    前記正極は、前記電解液および空気と接触するが、前記液状合金材とは接触しない請求項1又は2に記載の空気二次電池。
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