JP5341468B2 - 省電力ギヤ油組成物 - Google Patents
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ところで、各種機械においては、通常運転時の他にも、起動時の電力消費量削減も求められており、これに対しては低温流動性の向上で対応している。ギヤ油においても同様に低温流動性の向上が必要とされている。
さらに、省電力化や低温流動性向上の際には、当然、ギヤ油としての基本性能である極圧性を十分に兼ね備えている必要もある。
また、本発明は、上記工業用ギヤ油組成物において、前記オレフィン系粘度指数向上剤がエチレンと炭素数3〜30のオレフィンとの共重合体である工業用ギヤ油組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記工業用ギヤ油組成物において、さらにモリブデン化合物がモリブデン量換算で該組成物の全量に対して0.001〜1.0質量%配合されている工業用ギヤ油組成物を提供するものである。
本発明のギヤ油組成物に用いる炭化水素系潤滑油基油は、原油由来の水素化分解潤滑油基油であり、ASTM D3238環分析方法による%CNが25以下であり、好ましくは22以下である。%CNが25を超えると、電力消費量が多くなる傾向にある。なお、%CNはナフテンの含有量と相関するが、ナフテンが多いと電力消費量が多くなる傾向にあるため、より少ない方が好ましく、上記数値以下であれば下限値に限定はなく、ナフテンを実質的に含有しなくてもよい。
なお、本発明で用いる炭化水素系潤滑油基油には、ポリαオレフィン基油は含まない。ここで、ポリαオレフィン基油とは、αオレフィンの重合体からなる基油である。
本発明で用いる炭化水素系潤滑油基油である原油由来の水素化分解潤滑油基油の40℃における動粘度は20〜60mm2/sであり、30〜50mm2/sであることがより好ましい。この動粘度にすることで一層の省電力効果が得られる。
本発明の作動油組成物に用いるオレフィン系粘度指数向上剤は、エチレンとエチレン以外のモノマーからなる共重合体である。
エチレンと共重合体を形成するエチレン以外のモノマーとしては、例えば、オレフィン系炭化水素、ジエン系炭化水素、ビニル芳香族炭化水素等が挙げられる。これらのエチレン以外のモノマーの炭素数は、好ましくは3〜30であり、より好ましくは3〜25であり、さらに好ましくは3〜15であり、特に好ましくは3〜8であり、最も好ましくは3〜5である。エチレン以外のモノマーの炭素数が30以下とすることで、粘度指数向上剤の分子量を比較的低く抑えることができ、耐せん断安定性を向上させることができるため好ましい。
エチレン以外のモノマーとして用いられるジエン系炭化水素は、鎖状であっても、環状であってもよく、分岐鎖があってもよい。ジエン系炭化水素の具体例としては、ブタジエン、シクロブタジエン、ペンタジエン、シクロペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン等が挙げられる。
これらエチレン以外のモノマーの内、好ましいものはオレフィン系炭化水素であり、特に好ましいものは炭素数3〜5のオレフィン系炭化水素である。
オレフィン系粘度指数向上剤はエチレンとエチレン以外のモノマーを重合して合成するが、エチレン以外のモノマーは1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
オレフィン系粘度指数向上剤は、規則的交互重合体、ランダム重合体、ブロック重合体またはグラフト重合体のいずれであってもよい。
上記のオレフィン系粘度指数向上剤は、1種を単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のギヤ油組成物は、極圧剤として、硫黄を含有する極圧剤を含有する。
この硫黄を含有する極圧剤としては、例えば、硫黄系極圧剤や硫黄−リン系極圧剤が挙げられ、耐摩耗性の観点から、硫黄系極圧剤のうちの硫化オレフィンや硫黄−リン系極圧剤を配合することが好ましい。
硫黄系極圧剤としては、炭化水素硫化物、硫化油脂、硫化エステル等が挙げられる。
上記炭化水素硫化物としては、一般式(1)又は一般式(2)で表される炭化水素硫化物が挙げられる。
R1で表される1価の炭化水素基の具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ノニル基、ドデシル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、トリル基、へキシルフェニル基、ベンジル基などが挙げられる。
R2で表される2価の炭化水素基の具体例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基などが挙げられる。
上記硫化油脂としては、油脂と硫黄の反応生成物が挙げられる。
ここで、油脂としては、ラード、牛脂、鯨油、パーム油、ヤシ油、ナタネ油などの動植物油脂が挙げられる。
硫化エステルは、油脂と各種アルコールとの反応により得られる脂肪酸エステルを硫化することにより得られ、化学構造そのものは明確でない。油脂としてラード、牛脂、鯨油、パーム油、ヤシ油、ナタネ油などの動植物油脂などが挙げられる。
硫黄−リン系極圧剤としては、上記の硫黄系極圧剤とリン系極圧剤とを組みあわせて配合したものや、硫黄−リン系化合物が挙げられる。
硫黄系極圧剤と組み合わせるリン系極圧剤としては、ホスフェート、ホスファイト、及びこれらの誘導体が挙げられる。ホスフェート、ホスファイトは、モノ、ジ、トリエステルのいずれでもよく、そのアルコール残基としては、ブチル、オクチル、ラウリル、ステアリル、オレイル基などの炭素数4〜30のアルキル基、フェニル基などの炭素数6〜30のアリール基、メチルフェニル、オクチルフェニル基などの炭素数7〜30のアルキル置換アリール基などが挙げられる。上記リン系極圧剤の具体的化合物の例としては、トリブチルホスフェート、モノオレイルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。これらの誘導体としては、上記モノエステルすなわちアシッドホスフェートやアシッドホスファイトのアミン塩があり、例えばステアリルアミン塩、オレイルアミン塩、ココナッツアミン塩などが挙げられる。
R6は水素原子または炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、環状炭化水素基を表す。具体的には、水素原子、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、ドデシル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、ヘキシルフェニル基などがある。好ましい例として、R5がプロピレン基でR6が水素原子のものが挙げられる。
上記の硫黄を含有する極圧剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のギヤ油組成物は、さらにモリブデン化合物をギヤ組成物の全量に対しモリブデン量換算で0.001〜1.0質量%含有させることで、さらに省電力効果を高めることができる。モリブデン化合物のモリブデン量換算の含有量は、好ましくは0.005〜0.3質量%であり、より好ましくは0.01〜0.2質量%である。
上記モリブデン化合物としては、モリブデン酸アミン、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオカーバメートなどが挙げられる。
上記モリブデン化合物の中で、最も好ましいものはモリブデン酸アミンである。
本発明のギヤ油組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種公知の添加剤を配合することができる。例えば酸化防止剤、油性剤、清浄分散剤、さび止め剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、泡消剤、抗乳化剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤、アルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、ホスホン酸エステル等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
清浄分散剤としては、アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル等の無灰系清浄分散剤、アルカリ土類金属系清浄分散剤が挙げられる。
さび止め剤としては、カルボン酸、金属セッケン、カルボン酸アミン塩、スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分エステル等が挙げられる。
流動点降下剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリブテン、ポリアルキルスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアルキルアクリレート等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン油やエステル系消泡剤等が挙げられる。
抗乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等の抗乳化剤が挙げられる。
これら添加剤は、1種を単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のギヤ油組成物の40℃における動粘度は、JIS K2283動粘度試験方法(40℃)において、30〜2000mm2/sであり、好ましくは60〜1000mm2/sである。40℃動粘度が30mm2/s未満であると、適切な油膜厚さが保たれなくなり、極圧性が低下する傾向がある。40℃動粘度が1000mm2/sを超えると、電力消費量が多くなる傾向がある。
各実施例、比較例において組成物の調製に用いた基油、添加剤成分は次のとおりである。
各実施例、比較例において組成物の調製に用いた基油の製造方法と性状を下記に記載する。
なお、40℃動粘度はJIS K2283動粘度試験方法で測定した。
原油の常圧蒸留で得られたボトム油を減圧蒸留装置で処理し、そこで得られた減圧軽油を水素化処理および水素化分解を行った。その後、軽質分、燃料分を減圧ストリッパーで除去した残渣物を得た。残渣物を減圧蒸留し、得られた潤滑油留分の水素化脱ロウ処理、安定化処理を行った。
以下に、基油(A−1)及び(A−2)の性状を示す。
40℃動粘度:35.6mm2/s、40℃における密度:0.824、
%CN:19.4、%CA:0.6
(A−2)水素化分解油
40℃動粘度:43.5mm2/s、40℃における密度:0.828、
%CN:20.5、%CA:0.4
原油を常圧蒸留し、分留後の残油を減圧下で分留、得られた留出油をフルフラール溶剤抽出法によってパラフィンリッチラフィネートを精製した。つづいてそのラフィネートをベンゾケトンによる溶剤脱ロウ処理し、得られた脱ロウ油の高圧水素化処理を行った。
(A−3)水素化精製油
40℃動粘度:81mm2/s、40℃における密度:0.859、
%CN:29.9、%CA:2.0
原油を常圧蒸留し、分留後の残油を減圧下で分留、得られた留出油をフルフラール溶剤抽出法によってパラフィンリッチラフィネートを精製した。つづいてそのラフィネートをベンゾケトンによる溶剤脱ロウ処理をした。以下に、得られた基油(A−4)及び(A−5)の性状を示す。
(A−4)精製鉱油
40℃動粘度:99mm2/s、40℃における密度:0.869
%CN:24.4、%CA:7.7
(A−5)精製鉱油
40℃動粘度:510mm2/s、40℃における密度:0.885
%CN:22.0、%CA:8.4
(B−1) 重量平均分子量が16,000、エチレン/プロピレンのモル比が53:47であるエチレン/プロピレン共重合体
(B−2) 重量平均分子量が5,000、エチレン/プロピレンのモル比が53:47であるエチレン/プロピレン共重合体
(B−3) 重量平均分子量が150,000であるポリイソブチレン
(B−4) 重量平均分子量が22,000であるポリメタクリレート
重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにて測定、ポリスチレン換算にて算出した。ゲル浸透クロマトグラフィーはカラムにShodex GPC LF−804を3本、移動層にTHF、検出器に示差屈折検出器を用いた。
(C−1) 硫化オレフィン(硫黄含有量19質量%)
(C−2) アシッドホスフェートのアミン塩
(C―3) β−ジチオホスホリル化プロピオン酸(一般式(5)の、R3とR4がイソブチル基、R5がプロピレン基、R6が水素原子であるもの)
(C−4) 硫化エステル
(D)モリブデン化合物
(D−1) Mo酸アミン(Mo量:4.4質量%、モリブデン酸のジトリデシルアミンとの反応物)
ギヤ油組成物の粘度指数、極圧性、省電力効果について、下記の評価方法により評価した。
<粘度指数>
粘度指数はJIS K2283動粘度試験方法により測定した。
極圧性を耐荷重試験で評価した。耐荷重試験はFZGギヤ試験機を用い、ドイツ工業規格(DIN)のDIN51354−2に準拠した。具体的には、規格に沿った荷重をギヤに負荷したのち、ギヤ回転速度1,440rpmで21,700回転に達するまで試験を行う。ここまでを1ステージとする。以下、荷重ステージを段階的に上昇させ、各ステージ終了時におけるピニオンの16歯面における摩耗傷(スカッフィング、スコーリング)の合計面積を測定し、20mm2未満を合格とした。各表に記載した「FZGギヤ試験不合格ステージ」は不合格となった最終ステージである(例えば、FZGギヤ試験不合格ステージが11のものは、10ステージまでは合格で、11ステージ目で不合格となったことを示す。)。したがって、FZGギヤ試験合格ステージの数値が大きい程、極圧性は高い。なお、試験は12ステージまで実施し、12ステージ目を合格したものは12+として示した。
ASTM D 5182に規定されるFZG試験において、50℃、1450rpm、3ステージにおける消費電力をJIS K 2219に規定する工業用2種のギヤ油(コスモギヤSE220)の消費電力と比較し、下記の基準で評価した。
◎:省電力効果2.5%以上
○:省電力効果1.5%以上〜2.5%未満
△:省電力効果0.5%以上〜1.5%未満
×:省電力効果0.5%未満
基油に粘度指数向上剤、硫黄を含有する極圧剤、その他の添加剤を表1の上段に示す割合(質量%)で配合し、ギヤ油組成物を調製した。それらのギヤ油組成物の各種性能を評価し、その結果を表1の下段に示す。
(比較例1〜5)
基油に粘度指数向上剤、極圧剤、その他の添加剤を表2の上段に示す割合(質量%)で配合し、ギヤ油組成物を調製した。それらのギヤ油組成物の各種性能を評価し、その結果を表2の下段に示す。
Claims (4)
- 40℃動粘度が20〜60mm 2 /sであり、環分析による%CNが25以下で、かつ%CAが1.5以下である原油由来の水素化分解潤滑油基油に、エチレンとエチレン以外のモノマーとの共重合体からなる重量平均分子量が5,000〜25,000であるオレフィン系粘度指数向上剤及び硫黄を含有する極圧剤が配合された組成物であって、前記オレフィン系粘度指数向上剤の配合量が該組成物全量に対して7〜60質量%であり、前記硫黄を含有する極圧剤の配合量が該組成物の全量に対して0.1〜10質量%であり、かつ該組成物の40℃における動粘度が30〜2000mm2/sであることを特徴とする工業用ギヤ油組成物。
- 前記オレフィン系粘度指数向上剤がエチレンと炭素数3〜30のオレフィンとの共重合体である請求項1に記載の工業用ギヤ油組成物。
- 前記硫黄を含有する極圧剤が硫化オレフィン及び硫黄−リン系極圧剤から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1又は請求項2に記載の工業用ギヤ油組成物。
- さらにモリブデン化合物がモリブデン量換算で該組成物の全量に対して0.001〜1.0質量%配合されている請求項1〜3のいずれかに記載の工業用ギヤ油組成物。
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