(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1を用いて説明する。図1は、本発明のアンテナ装置のブロック図である。
図1において、本実施の形態1の通信装置3は、アンテナモジュール1、アンテナ装置2、電子ユニット9とから構成されている。アンテナ装置2は、能動回路4と、電子ユニット9と能動回路4とを接続する第1伝送線路14aと第2伝送線路14bとを有している。
アンテナモジュール1は、第1アンテナ5aと、第2アンテナ5bとを有しており、第1アンテナ5a及び第2アンテナ5bの受信信号は、能動回路4へ供給される。また、能動回路4を介して、第1アンテナ5aと第1伝送線路14aとは対応して接続され、第2アンテナ5bと第2伝送線路14bとは対応して接続される。
能動回路4は、第1アンテナ5aが受信した信号が入力される第1可変整合回路6aと、第1可変整合回路6aの出力側に接続された第1増幅器7aと、第3ハイパスフィルタ11aと、第3ローパスフィルタ13aとを有する。第3ハイパスフィルタ11aは、第1増幅器7aの出力側に接続され、第1伝送線路14aに接続される。第3ローパスフィルタ13aは、第1伝送線路14aに接続され、第1伝送線路14aを介して供給される電源電圧が入力される。
更に、能動回路4は、第2アンテナ5bが受信した信号が入力される第2可変整合回路6bと、第2可変整合回路6bの出力側に接続された第2増幅器7bと、第4ハイパスフィルタ11bと、第4ローパスフィルタ13bと、制御信号判定回路8を有する。第4ハイパスフィルタ11bは、第2増幅器7bの出力側に接続され、第2伝送線路14bに接続される。第4ローパスフィルタ13bは、第2伝送線路14bに接続され、第2伝送線路14bを介して供給される第1制御信号が入力される。制御信号判定回路8は、第4ローパスフィルタ13bの出力側に接続される。
第3ローパスフィルタ13aを介して出力される電源電圧は、能動回路4の各能動素子(例えば、第1増幅器7a、第2増幅器7b、制御信号判定回路8等)へ供給される。
電子ユニット9は、第1伝送線路14aを介して第1アンテナ5aで受信された信号が入力される第1ハイパスフィルタ10aと、第1ハイパスフィルタ10aの出力側に接続された第1RF回路15aと、第1伝送線路14aに接続され、電源供給回路16において生成される電源電圧が入力される第1ローパスフィルタ12aとを有する。
電子ユニット9は、第2伝送線路14bを介して第2アンテナ5bで受信された信号が入力される第2ハイパスフィルタ10bと、第2ハイパスフィルタ10bの出力側に接続された第2RF回路15bと、第2伝送線路14bに接続され、第1制御信号発生回路17aにおいて生成される第1制御信号が入力される第2ローパスフィルタ12bとを有する。さらに、第1RF回路15aと第2RF回路15bの出力には復調回路18が接続されている。
図1において、通信装置3は、アンテナモジュール1と、能動回路4と、第1伝送線路14aと、第2伝送線路14bと、電子ユニット9とを有する。通信装置3は、第1アンテナ5aで受信され、第1RF回路15aから出力される第1信号と、第2アンテナ5bで受信され、第2RF回路15bから出力される第2信号とを、復調回路18において最適な方法で処理するダイバーシティ受信方式の構成を有している。具体的な処理方法としては、例えば、最大比合成方式や選択方式などが考えられる。
能動回路4への電源の供給は、電源供給回路16から第1伝送線路14aを介して行われる。
図2は実施の形態1に関するアンテナ装置の電源電圧の特性を示す図である。復調回路18から、電源供給を行うことを促す信号が電源供給回路16へ送信された後、電源供給回路16において、図2に示すような概ね直流電圧が生成され、第1ローパスフィルタ12aへ出力される。第1ローパスフィルタ12aへ出力された電源電圧は、概ね直流電圧であることより、第1ローパスフィルタ12aを通過する。
第1ローパスフィルタ12aのカットオフ周波数は、アンテナモジュール1において受信される信号の周波数においては、十分な減衰量が取れるように設定されると共に、電源電圧の通過ロスが極力小さくなるように設定されている。これにより、第1アンテナ5aにより受信された信号が第1ローパスフィルタ12aを通過して電源供給回路16へ供給される事を防止できる。また、第1アンテナ5aにより受信された信号の大部分を第1RF回路15aへ供給する事ができ、通信装置3の受信特性を向上させることができる。
更に、第1ローパスフィルタ12aを通過した電源電圧は、第1ハイパスフィルタ10aを通過して、第1RF回路15aへ供給される事はほとんどない。これは、第1ハイパスフィルタ10aのカットオフ周波数が、第1アンテナ5aにより受信された信号の周波数において、通過ロスが極力小さくなるように設定されると共に、概ね直流値である電源電圧が通過しないように設定されているためである。これにより、第1RF回路15aへ不要な電源が供給される事を防止でき、消費電流を低減できる。
次に、第1ローパスフィルタ12aを通過した電源電圧は、第1伝送線路14aを介して、第3ローパスフィルタ13aへ供給される。第3ローパスフィルタ13aと第3ハイパスフィルタ11aのカットオフ周波数の設定は、第1ローパスフィルタ12aと第1ハイパスフィルタ10aの場合と同様の方法で設定される。これにより、第1アンテナ5aにより受信された信号が、第3ローパスフィルタ13aを通過して他の回路へ供給されることによる伝送損失を防止する。また、電源電圧の一部が第3ハイパスフィルタ11aを介して第1増幅器7aに供給される事による電源供給ロスを防止する。
第3ローパスフィルタ13aへ供給された電源電圧は、第3ローパスフィルタ13aを通過して、第1増幅器7a、第2増幅器7b、制御信号判定回路8へ供給される。
ここで、電源供給回路16から供給される電源電圧は、図31、図32に示した従来のアンテナ装置の場合と異なり、図2に示すように、電源電圧に制御信号が重畳されておらず、電源電圧が概ね直流電圧となっている。このため、本発明のアンテナ装置においては、従来のアンテナ装置のように、能動回路4がレギュレータを必要としない。故に、従来のアンテナ装置に対して、レギュレータを2つ削減でき、小型なアンテナ装置を実現できる。また、レギュレータを実装する必要が無いため、生産効率の向上、低コスト化を図ることが可能となる。
尚、実施の形態1においては、復調回路18から電源供給回路16へ電源供給を促す信号が送信されたが、これに限られるものではない。例えば、図1に図示していない他の処理回路から電源供給を促す信号が送信されても良い。
また、実施の形態1においては、図2に示すように、復調回路18から電源供給を促す信号を電源供給回路16が受信した後は、絶えず電源電圧を能動回路4へ供給している。しかしながら、第1アンテナ5a又は第2アンテナ5bが第1増幅器7a又は第2増幅器7bを歪ませるほどの大きな電力レベルの信号を受信した場合、復調回路18より電源供給回路16へ電源供給を止めるよう促す信号を送信しても良い。これにより、第1増幅器7a又は第2増幅器7bが歪んでしまい、受信特性が大きく劣化する事を防止できると共に、消費電力の低減を図ることができる。これを実現するため、例えば、第1RF回路15a又は第2RF回路15bに入力される電力値を検出可能な検出回路が、電子ユニット9に配置されても良い。
尚、第1RF回路15a又は復調回路18において、入力される信号の電力値あるいは信号品質(C/N(Carrier To Noise Ratio)、BER(Bit Error Rate)等の受信信号の質を表す指標値)等に基づいて、電源供給回路16は、能動回路4へ供給する電源電圧の電圧値を微調整する構成としても良い。これにより、能動回路4や第1伝送線路14aの製造ばらつきに起因するアンテナ装置の特性ばらつきを低減する事ができる。
能動回路4への第1制御信号の供給は、第1制御信号発生回路17aから第2伝送線路14bを介して行われる。
図3は実施の形態1に関するアンテナ装置の制御信号の特性を示す図である。復調回路18から、第1制御信号を送信するように促す信号が第1制御信号発生回路17aへ送信された後、第1制御信号発生回路17aにおいて、図3に示すような第1制御信号が生成され、第2ローパスフィルタ12bへ出力される。
図3において、第1制御信号発生回路17aは、0V以上の9ステップの電位により、時間的に変化する第1制御信号を生成している。図32の従来のアンテナ装置の場合のように、電源電圧には制御信号が重畳されていない。このため、本発明のアンテナ装置2は、広い電位幅を利用して制御信号を生成する事が可能となる。これにより、制御信号判定回路8が制御信号を受信する際の受信感度を向上させることができる。また、本発明のアンテナ装置2は、制御信号のステップ数(図3においては9ステップの電位)を容易に増やす事ができ、能動回路4においてより高度な制御が可能となる。
第1ローパスフィルタ12aのカットオフ周波数は、アンテナモジュール1において受信される信号の周波数においては、十分な減衰量が取れるように設定されると共に、第2ローパスフィルタ12bへ出力された図3の第1制御信号は、概ね通過する(通過ロスが極めて小さい)ように設定される。このため、第2アンテナ5bにより受信された信号が、第2ローパスフィルタ12bを通過して第1制御信号発生回路17aへ供給される事を防止できる。また、第2アンテナ5bにより受信された信号の大部分を第2RF回路15bへ供給する事ができる。これにより、通信装置3の受信特性を向上させることができる。
更に、第2ローパスフィルタ12bを通過した第1制御信号は、第2ハイパスフィルタ10bを通過して、第2RF回路15bへ供給される事はほとんどない。これは、第2ハイパスフィルタ10bのカットオフ周波数が、第2アンテナ5bにより受信された信号の周波数において、通過ロスが極力小さくなるように設定されると共に、第1制御信号が通過しないように設定されているためである。これにより、第2RF回路15bへ不要な電源が供給される事を防止でき、消費電流を低減できる。
次に、第2ローパスフィルタ12bを通過した第1制御信号は、第2伝送線路14bを介して、第4ローパスフィルタ13bへ供給される。第4ローパスフィルタ13b、及び、第4ハイパスフィルタ11bのカットオフ周波数の設定は、第2ローパスフィルタ12b、及び、第2ハイパスフィルタ10bの場合と同様の方法で設定されている。これにより、第2アンテナ5bにより受信された信号が、第4ローパスフィルタ13bを通過して他の回路へ供給されることによる伝送損失を防止できると共に、第1制御信号の一部が第4ハイパスフィルタ11bを介して第2増幅器7bに供給される事による第1制御信号の伝送ロスを防止できる。
第4ローパスフィルタ13bへ供給された第1制御信号は、第4ローパスフィルタ13bを通過して、制御信号判定回路8へ供給され、第1制御信号が解読される。解読結果に応じた制御信号が、制御信号判定回路8から第1可変整合回路6a及び第2可変整合回路6bへ送信され、第1可変整合回路6a及び第2可変整合回路6bは、所定の信号を受信するために最適な構成となる。これにより、常に、良好な受信特性を有する通信装置3を実現出来る。
尚、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bへ送信される制御信号を、一本の信号線である第2伝送線路14bを介して行う事になるが、図3に示したように、広い電位範囲で第2制御信号を生成できるので、単位時間に多くの情報を送信する事が可能となる。
また、図3に示した第1制御信号に代えて、アンテナモジュール1が受信する信号の周波数と異なる正弦波を用いても良い。正弦波の振幅値、位相を用いても、第1制御信号を送信できる。これにより、第1制御信号が占有する周波数帯域を狭くする事ができ、第1制御信号による通信装置3の受信性能の劣化を回避できる。
更に、図3に示した第1制御信号に代えて、図4に示したような第1制御信号を採用しても良い。図4は実施の形態1に関するアンテナ装置の他の制御信号の特性を示す図である。図4に示した第1制御信号は、図3に示した第1制御信号の矩形波状の波形と比較して、比較的滑らかな波形となっている。これにより、図3に示した第1制御信号と比較して、図4の第1制御信号は、占有する周波数帯域幅を狭くする事が可能となり、通信装置3の受信特性の劣化を回避できる。
さらに、第1伝送線路14aと、第2伝送線路14bとは、同軸線路で構成されても良い。この場合、電源電圧及び第1制御信号は、同軸線路の信号線とシールド線との間で供給される事となる。
また、実施の形態1において、能動回路4は制御信号判定回路8を有しない構成としてもよい。この場合、第1制御信号を直接、第1可変整合回路6a及び第2可変整合回路6bへ入力する構成とし、第1制御信号そのもので第1可変整合回路6a及び第2可変整合回路6bを制御する。これにより、制御信号判定回路8を削除する事ができ、より小型なアンテナ装置を実現することができる。
さらに、第1ハイパスフィルタ10a、第2ハイパスフィルタ10b、第3ハイパスフィルタ11a、第4ハイパスフィルタ11bは、1素子のコンデンサを直列に挿入しただけの回路構成であってもよい。このような簡単な構成であっても、電源電圧及び制御信号の通過を阻止出来ると共に、必要部品数の低減を図ることが出来る。
また、第1ハイパスフィルタ10aに比べて、第2ハイパスフィルタ10bのフィルタの段数が多い構成であっても良い。電源電圧に比べて、第1制御信号は周波数が概ね高いため、アンテナモジュール1が受信する信号の周波数に接近することも予想される。このため、第2ハイパスフィルタ10bのフィルタの段数を増やして、第1制御信号が占有している周波数帯域における減衰量を増加させ、通信装置3の受信特性が劣化する事を防止する。アンテナモジュール1が受信する信号と比較して、第1制御信号の電力値は大きいことが予想されるため、このような構成により第2RF回路15bへ第1制御信号が漏れ込むのを阻止することは、通信装置3の受信性能を劣化させないために非常に重要である。同様の理由で、第3ハイパスフィルタ11aに比べて、第4ハイパスフィルタ11bのフィルタの段数が多い構成であっても良い。
尚、第1ローパスフィルタ12a、第2ローパスフィルタ12b、第3ローパスフィルタ13a、第4ローパスフィルタ13bは、1素子のインダクタを直列に挿入しただけの回路構成であってもよい。このような構成であっても、アンテナモジュール1が受信する受信信号の通過を阻止出来ると共に、必要部品数の低減を図ることが出来る。
また、図1に示したアンテナ装置2は、受信専用となっているが、送受可能なものであっても良い。この場合、受信用の第1増幅器7a、第2増幅器7bと並列に、送信用の増幅器をそれぞれ用意し、送信用と受信用の増幅器をフィルタ若しくはスイッチにより切替えて使用することが出来る。これにより、無線信号を送受信可能で、かつ小型な通信装置を実現できる。
更に、図1においては、第1制御信号により第1アンテナ5a、第2アンテナ5bの直下に接続された第1可変整合回路6a、第2可変整合回路6bを制御したが、この構成のみに限る必要は無い。例えば、第1増幅器7a、第2増幅器7b自体の特性(例えば、P1dB、NF特性等)を制御しても良い。この場合、第1増幅器7a、第2増幅器7bの特性を変化することができるトランジスタ周辺回路に可変素子(例えば、バリキャップコンデンサ等)を配置しておき、この可変素子の素子値を第1制御信号により変化させる形態が考えられる。
図5は、実施の形態1に関するアンテナ装置の他の能動回路のブロック図である。
図5において、図1の能動回路4と異なる点は、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとを無くしている。代わりに、第1増幅器7aの入力側と出力側に接続された第1バイパススイッチ19aと、第2増幅器7bの入力側と出力側に接続された第2バイパススイッチ19bとを設けている。更に、図1の制御信号判定回路8を無くして、第4ローパスフィルタ13bを通過した第1制御信号が、直接、第1バイパススイッチ19a、第2バイパススイッチ19bに入力されている。
図5の構成において、第1バイパススイッチ19a、第2バイパススイッチ19bは、第1増幅器7a、第2増幅器7bに大きな受信信号が入力され、第1増幅器7a、第2増幅器7bが歪むことを防止する。更に、電子ユニット9の第1RF回路15a、第2RF回路15bに大きな受信信号が入力され、第1RF回路15a、第2RF回路15bの出力が歪むことを防止する役割を担っている。
具体的には、能動回路4又は電子ユニット9に受信された信号の電力値を検出する検出回路(図示せず)を用意しておき、受信される電力値が一定値以下の場合(通常動作時)は、第1バイパススイッチ19a、第2バイパススイッチ19bはオフとなり、第1増幅器7a、第2増幅器7bを受信信号が通過し、増幅される。
検出回路が導出した信号の電力値が、ある一定値以上となった場合、第1制御信号により、第1バイパススイッチ19aと第2バイパススイッチ19bの内、少なくとも一方のスイッチをオンにする。これにより、第1増幅器7aあるいは第2増幅器7bを受信信号はバイパスし増幅される事はなくなるため、受信信号が歪んで、受信特性が劣化する事を回避できる。
また、第1バイパススイッチ19a、第2バイパススイッチ19bがオンにする代わりに、電源供給回路16が第1増幅器7a、第2増幅器7bへの電源供給を止めても良い。これにより、消費電力が少なく、受信性能の優れた通信装置3を実現できる。
なお、本発明の実施例において、“能動回路”とは、能動素子を少なくとも1つ含んでいる回路のことを指しており、例えば、受動素子で構成されたフィルタや能動素子を含んでいる増幅器等が混載された回路のことを指している。また、能動回路4において、第1制御信号により制御される対象の素子は、複数あってもよい。例えば、図1の第1、第2可変整合回路6a、6bと図5の第1、第2バイパススイッチ19a、19bとは、共に存在しても良いし、更に、第1、第2増幅器7a、7bの特性を同時に制御しても良い。これら複数の素子を組み合わせた制御は、第2伝送線路14bを介して能動回路4へ供給される第1制御信号の電圧幅を広く利用出来る本発明の効果により実現可能となる。
また、図1においては、第1RF回路15a、第2RF回路15bを電子ユニット9側に置いたが、これらの回路は能動回路4に含まれた構成であっても良い。これにより、第1、第2伝送線路14a、14bを伝送する受信信号の周波数を下げる事が可能となり、伝送線路での伝送ロスを低減できる。この場合、第1RF回路15a、第2RF回路15bを制御するための制御信号も、第1制御信号に含む事となる。
尚、アンテナモジュール1は、1つの小型モジュールであることが望ましい。これは、第1アンテナ5aの直下の能動素子(例えば、第1増幅器7a等)と第2アンテナ5bの直下の能動素子(例えば、第2増幅器7b等)への電源電圧の供給を、一本の線路である第1伝送線路14aを介して行っているためである。このことを考慮し、第1アンテナ5aと第2アンテナ5bとは、近接配置されているにも関わらず、相関係数が低く、アンテナ間のアイソレーションが高くなるアンテナの組み合わせ、又は、構造である事が望ましい。これを実現するアンテナ構造の一例として、第1アンテナと第2アンテナの内、一方をバランス型アンテナとし、他方をアンバランス型アンテナとする。このアンテナ構造についての詳しい説明は後述する。
また、偏波方向が直交しているアンテナを用いても、小型でありながら、低い相関係数を実現できる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図6、7を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態2に関するアンテナ装置のブロック図である。図1において示した実施の形態1と同様の部分については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図6において、図1の実施の形態1と異なる点は、アンテナモジュール1が第1アンテナ5a、第2アンテナ5bに加えて、第3アンテナ5cを有している。また、能動回路4が、第3アンテナ5cと接続された第3可変整合回路6cと、第3可変整合回路6cの出力側に接続された第3増幅器7cと、第6ハイパスフィルタ11cと、第6ローパスフィルタ13cとを有してる。第6ハイパスフィルタ11cは、一方が第3増幅器7cと接続され、他方が第3伝送線路14cと接続されている。第6ローパスフィルタ13cは、一方が第3伝送線路14cと接続され、他方が制御信号判定回路8と接続されている。
更に、電子ユニット9は、第3伝送線路14cと接続された第5ハイパスフィルタ10cと、第3RF回路15cと、第5ローパスフィルタ12cと、第2制御信号発生回路17bを有している。第3RF回路15cは、一方が第5ハイパスフィルタ10cと接続され、他方が復調回路18に接続されている。第5ローパスフィルタ12cは、一方が第3伝送線路14cに接続され、他方が第2制御信号発生回路17bに接続されている。
図6に示した実施の形態2のアンテナ装置は、3つのブランチを有したダイバーシティ受信方式のアンテナ装置を構成している。実施の形態1のアンテナ装置と比較して、図6に示したアンテナ装置2の動作上の大きな差異は、能動回路4の制御方法である。
実施の形態2のアンテナ装置2は、第1制御信号発生回路17aから第2伝送線路14bを介して供給される第1制御信号と、第2制御信号発生回路17bから第3伝送線路14cを介して供給される第2制御信号との2つの制御信号を用いることができる。このため、例えば、これら2つの制御信号の差、和、積等を基に導出された値を制御信号として用いて能動回路4を高度に制御することが出来る。
具体的には、第2伝送線路14bと第3伝送線路14cの2本の線路をフィーダ線のように利用し、第1制御信号と第2制御信号をバランスモード(ディファレンシャルモード)で、これらの線路に供給してもよい。これにより、2つの制御信号の電位をマイナス側まで広げる事ができる。また、第2伝送線路14bと第3伝送線路14cを近接して配置しておけば、これらの線路から制御信号が電磁波として放射される事を防止できる。
上記の具体的な動作の様子を、図7を用いて説明する。
図7は実施の形態2に関するアンテナ装置の制御信号判定回路のブロック図である。図7において、制御信号判定回路8は、第1制御信号と第2制御信号とが入力されるバラン20と、バラン20の出力信号が入力される制御回路21とを少なくとも有する。
図6の電子ユニット9から能動回路4を制御するための制御信号は、第1制御信号と第2制御信号との差により導出される信号により供給される。第1制御信号と第2制御信号との差により制御信号を送信する場合、第1制御信号と第2制御信号との位相を逆相にすると、最も効率良く、制御信号を制御信号判定回路8へ伝送できる。この伝送状態を、バランスモード(ディファレンシャルモード)と呼ぶ。
バランスモードで第1伝送線路14aと第2伝送線路14bとの間を伝送してきた制御信号は、バラン20で、正負の電位を持つアンバランス信号に変換され、制御回路21へ供給される。これにより、正方向だけでなく負方向の電位も有する制御信号を用いる事が可能となり、能動回路4の多様な制御が可能となる。また、第1伝送線路14aと第2伝送線路14bとに逆相の制御信号が伝送されるため、第1伝送線路14aと第2伝送線路14bとを近接配置した場合には、これらの伝送線路からの制御信号の放射を抑圧することが可能となる。
バランスモードで伝送される制御信号を正弦波として、周波数方向、位相方向、振幅方向に信号を持たせても良い。これにより、制御信号が占有する周波数帯域を狭帯域化でき、受信特性の高い通信装置3を実現できると共に、能動回路4を多様に制御することが可能となる。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図8を用いて説明する。図8は実施の形態3に関する第1アンテナユニットのブロック図である。図8に示した実施の形態3は、実施の形態1又は実施の形態2の第1アンテナ5aと第2アンテナ5bとを構成するアンテナモジュール1を、第1アンテナユニット22により実現した場合の実施例である。
図8において、本実施の形態3の第1アンテナユニット22は、第1端子23、第2端子24、第3端子25、および第4端子26の4端子を少なくとも有するアンテナ素子27(図8においては、アンテナ素子27の形状を特定せず、ブラックボックスの状態で記載している)を有している。アンテナ素子27の第1端子23に第1線路28の一方が接続され、アンテナ素子27の第2端子24に第2線路29の一方が接続され、アンテナ素子27の第3端子25に第3線路30の一方が接続され、アンテナ素子27の第4端子26に第4線路31の一方が接続される。第1線路28の他方と第2線路29の他方とは第1交点32において接続され、第3線路30の他方と第4線路31の他方とは第2交点33において接続されている。
更に、本実施の形態3の第1アンテナユニット22は、第1線路28の途中に接続された第1整合回路34と第1位相器38と、第2線路29の途中に接続された第2整合回路35と第2位相器39とを有している。第1アンテナユニット22は、同様に、第3線路30の途中に接続された第3整合回路36と第3位相器40と、第4線路31の途中に接続された第4整合回路37と第4位相器41とを有している。また、第1交点32と、第2交点33とにおいて、図1の能動回路4が接続される。具体的な一例としては、第1交点32には図1の第1可変整合回路6aが接続され、第2交点33には図1の第2可変整合回路6bが接続される。
ここで、第1交点32から信号を入力した場合、第3線路30の第2交点33側に現れる信号の位相と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている。また、第2交点33から信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との位相差も概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている。
上記の条件を満たすように、第1線路28、第2線路29、第3線路30、及び第4線路31の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35、第3整合回路36、及び第4整合回路37と、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、及び第4位相器41とは設計されている。
例えば、第1可変整合回路6aから第1交点32に入力された信号は、第2交点33から第2可変整合回路6b側へ概ね伝搬して行かない。逆に、第2可変整合回路6bから第2交点33に入力された信号についても、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点32から第1可変整合回路6b側へ概ね伝搬して行かない。よって、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間でアイソレーションが確保できる。これにより、図1の第1RF回路15aと第2RF回路15bとは、1つのアンテナ素子27を介して、信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、図1の第1RF回路15aと第2RF回路15bとは、時間的、周波数的な制限を課せられる事も無く、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。これにより、2つのアンテナ間の相関係数が低い、小型なアンテナモジュールを実現できる。
上記の「第1交点32から信号を入力した場合、第3線路30の第2交点33側に現れる信号の位相と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている」という記載、及び「第2交点33から信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との位相差も概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となっている」との記載における「概ね」の範囲は、上記の比較する2つの信号の位相差が135度±360度*n以上、225度±360度*n以下(nは0以上の整数)となる範囲を指している。同様に、特許請求の範囲を含め本願の記載において、所定の位相(または位相差)に対する「概ね」の記載は、所定の位相(または位相差)に対して、−45度から+45度の幅を有していることを意味している。本願における所定の位相(または位相差)が、−45度から+45度の範囲内であれば、第1交点32と第2交点33との間のアイソレーションが10dB以上の値を確保できるためである。
尚、第1交点32から信号を入力した場合、第3線路30の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路28、第2線路29、第3線路30、及び第4線路31の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35、第3整合回路36、及び第4整合回路37と、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、及び第4位相器41とが設計されていても良い。また、同様に、第2交点33から信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路28、第2線路29、第3線路30、及び第4線路41の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35、第3整合回路36、及び第4整合回路37と、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、及び第4位相器41とが設計されていてもよい。これにより、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
尚、上記の「第3線路30の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となる」という記載及び「第1線路28の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となる」という記載における「概ね」の範囲は、上記の比較する2つの信号の振幅比が10dB以下となる範囲を指している。上記の比較する2つの信号の振幅比が10dB以下となるように第1アンテナユニット22が設計されれば、第1交点32と第2交点33との間のアイソレーションが10dB以上の値を確保できるためである。同様に、以下、本願においては、比較される2つの信号の振幅の絶対値が「概ね同一となる」との記載があった場合、「概ね同一」の範囲は、比較する2つの信号の振幅比が10dB以下となる範囲を指している。
ここで“振幅”は、正負の符号を有さない絶対値の意味である。
また、第1端子23と、第2端子24とに、同位相で振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とを設計してもよい。
ここで、例えば、第1端子23と第2端子24との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子23と第2端子24との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となる。故に、第1端子23と、第2端子24とに、同位相で振幅の絶対値が等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点32において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点32から第1可変整合回路6a側へは概ねコモンモードの信号は伝搬していかない。
逆に、例えば、第1端子23と第2端子24との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子23と第2端子24との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となる。故に、第1端子23と、第2端子24とに、位相差が180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となることより、第1交点32において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点32から第1可変整合回路6a側へディファレンシャルモードの信号は概ね伝搬して行くこととなる。
このように、第1端子23と、第2端子24とに、同位相で振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように設計する。これにより、第1端子23と第2端子24との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1可変整合回路6aへ伝搬させることができる。
更に、第1端子23と、第2端子24とに、同位相で振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件を考慮した場合、第1端子23から第2交点33までの位相変化量と、第2端子24から第2交点33までの位相変化量との差は、零となる。つまり、第1端子23と第2端子24との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第2交点33において同相で足し合わされ、第2交点33から第2可変整合回路6b側へ概ね伝搬される。逆に、第1端子23と第2端子24との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第2交点33において逆相で足し合わされて相殺され、第2交点33から第2可変整合回路6b側へ概ね伝搬されない。
よって、第1端子23と第2端子24との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1可変整合回路6a側のみへ伝搬されて第1端子23と第2端子24との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2可変整合回路6b側のみへ伝搬される。つまり、本実施の形態の第1アンテナユニット22は、アンテナ素子27を介して第1端子23と第2端子24との間に生じる前記2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。
尚、この場合に、第1端子23と、第2端子24とに、同位相で同振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とが設計されていてもよい。
これにより、第1交点32に現れるコモンモードの信号の電流を、より精度良く相殺させる事ができ、第1交点32から第1可変整合回路6a側へ伝搬するコモンモードに対するディファレンシャルモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
また、同様に、第1端子23と、第2端子24とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第3線路30の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路30、第4線路31の線路長と、第3整合回路36、第4整合回路37と、第3位相器40、第4位相器41とが設計されていてもよい。これにより、第2交点33に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点33から第2可変整合回路6b側へ伝搬するディファレンシャルモードに対するコモンモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
尚、第1端子23から第1交点32までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子24から第1交点32までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とが設計されていてもよい。
例えば、第1端子23と第2端子24との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子23から第1交点32までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子24から第1交点32までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点32においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点32は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点32から第1端子23、及び第2端子24までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となり、第1端子23及び第2端子24から、それぞれ第1交点32側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子23と第2端子24との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点32側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点33側へ伝搬する。これにより、第2可変整合回路6bへ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第1可変整合回路6aへ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子23と、第2端子24とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とを設計してもよい。
これにより、第1交点32に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点32から第1可変整合回路6a側へ伝搬する信号のコモンモードに対するディファレンシャルモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。アンテナ素子27に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離可能なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子23から第2交点33までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子24から第2交点33までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路30、第4線路31との線路長と、第3整合回路36、第4整合回路37と、第3位相器40、第4位相器41とは、設計されてもよい。
これにより、第1端子23と第2端子24との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第1端子23から第2交点33までの位相変化量と、第2端子24から第2交点33までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点33においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。
つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点33は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点33から第1端子23、及び第2端子24までの位相変化量は共に90度となることより、第1端子23及び第2端子24から、それぞれ第2交点33側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。
よって、第1端子23と第2端子24との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点33側へ概ね伝搬せず、概ね第1交点33側へ伝搬する。これにより、第1可変整合回路6aへ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができ、更に第2可変整合回路6bへ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子23と、第2端子24とに、位相差180度で振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路30の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路30、第4線路31の線路長と、第3整合回路36、第4整合回路37と、第3位相器40、第4位相器41とを設計してもよい。
第1交点32に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点32から第1可変整合回路6a側へ伝搬する信号のコモンモードに対するディファレンシャルモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。
これにより、アンテナ素子27に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離できるダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第3端子25から第2交点33までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第4端子26から第2交点33までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路30、第4線路31との線路長と、第3整合回路36、第4整合回路37と、第3位相器40、第4位相器41とを、設計してもよい。
これにより、例えば、第3端子25と第4端子26との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第3端子25から第2交点33までの位相変化量と、第4端子26から第2交点33までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点33においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点33は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点33から第3端子25、及び第4端子26までの位相変化量は共に90度となることより、第3端子25及び第4端子26から、それぞれ第2交点33側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。
よって、第3端子25と第4端子26との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点33側へ概ね伝搬せず、概ね第1交点32側へ伝搬する。これにより、第1可変整合回路6aへ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第2可変整合回路6bへ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第3端子25と、第4端子26とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路30の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路30、第4線路31の線路長と、第3整合回路36、第4整合回路37と、第3位相器40、第4位相器41とを設計してもよい。第2交点33に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点33から第2可変整合回路6b側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードに対するコモンモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子27に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、図8において、第1整合回路34、第2整合回路35、第3整合回路36、第4整合回路37、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、第4位相器41のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路28、第2線路29、第3線路30、及び第4線路31における伝送ロスを低減できると共に、部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
尚、第1整合回路34、第2整合回路35、第3整合回路36、第4整合回路37、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、第4位相器41とは、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計される。しかしながら、レジスタンス素子や増幅回路等が含まれる回路により設計しても良い。これにより、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、通信装置の送受信特性を向上させる事ができる。
(実施の形態4)
以下に、本発明の実施の形態4について、図9を用いて説明する。図9は実施の形態4に関する第3アンテナユニットのブロック図である。図9に示した実施の形態4は、実施の形態1又は実施の形態2の第1アンテナ5aと第2アンテナ5bとを構成するアンテナモジュール1を、図9の第3アンテナユニット42により実現した場合の実施例である。尚、実施の形態3と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図9において、本実施の形態4の第3アンテナユニット42は、少なくとも3端子を有するアンテナ素子27(図9においては、アンテナ素子27の形状を特定せず、ブラックボックスの状態で記載している)を有している。アンテナ素子27の第1端子23に第1線路28の一方が接続され、アンテナ素子27の第2端子24に第2線路29の一方が接続され、アンテナ素子27の第3端子25に第3線路30の一方が接続される。第1線路28の他方と第2線路29の他方とは第1交点32に接続され、第3線路30の他方は第2交点33に接続されている。
そして、第2交点33から信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路28、第2線路29、及び第3線路30の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とは設計されている。このことから、例えば、第1可変整合回路6aから送信された信号は、第3線路30の他方側及び第3端子25において相殺されるため、第2可変整合回路6b側へ概ね伝搬しない。
逆に、第2可変整合回路6bから送信された信号についても、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との位相差は概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点32から第1可変整合回路6a側へ概ね伝搬しない。よって、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間でアイソレーションが確保できる。これにより、図1の第1RF回路15aと第2RF回路15bとは、アンテナ素子27を介して、信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1RF回路15aと第2RF回路15bとは、時間的、周波数的な制限を受けることなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。
また、本実施の形態4の第3アンテナユニット42は、第3端子25と第2可変整合回路6bとを接続する線路の数、整合回路の数、位相器の数を減らす事ができるため、小型化、軽量化を図ることができる。
尚、第3線路30の他方から信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路28及び第2線路29の線路長と、第1整合回路34及び第2整合回路35と、第1位相器38及び第2位相器39とを設計しても良い。これにより、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
また、第1端子23と、第2端子24とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とを設計してもよい。
ここで、例えば、第1端子23と第2端子24との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子23と第2端子24との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となる。故に、第1端子23と、第2端子24とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる。第1交点32において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点32から第1可変整合回路6a側へは概ねコモンモードの信号は伝搬しない。逆に、例えば、第1端子23と第2端子24との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子23と第2端子24との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となる。故に、第1端子23と、第2端子24とに、位相差が±180度で、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となる。第1交点32において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点32から第1可変整合回路6a側へディファレンシャルモードの信号は概ね伝搬する。
このように、第1端子23と、第2端子24とに、同位相で、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように設計される。これにより、第1端子23と第2端子24との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1可変整合回路6aへ伝搬させることができる。
更に、第1端子23と、第2端子24とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件を考慮する。第1端子23から第2交点33までの位相変化量と、第2端子24から第2交点33までの位相変化量との差は、零となる。つまり、第1端子23と第2端子24との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第3端子25において同相で足し合わされ、第2可変整合回路6b側へ概ね伝搬される。逆に、第1端子23と第2端子24との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第3端子25において逆相で足し合わされて相殺され、第2可変整合回路6b側へ概ね伝搬されない。
よって、第1端子23と第2端子24との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1可変整合回路6a側のみへ伝搬され、第1端子23と第2端子24との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2可変整合回路6b側のみへ伝搬される。つまり、本実施の形態の第3アンテナユニット42は、第1端子23と第2端子24との間に生じる前記2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。
尚、この場合に、第1端子23と、第2端子24とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とを設計してもよい。第1交点32に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点32から第1可変整合回路6a側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子27に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能な、小型なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子23から第1交点32までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子24から第1交点32までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とを設計してもよい。
例えば、第1端子23と第2端子24との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子23から第1交点32までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子23から第1交点32までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)である。第1交点32においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点32は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点32から第1端子23、及び第2端子24までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子23及び第2端子24から、それぞれ第1交点32側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子23と第2端子24との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点32側へ概ね伝搬せず、概ね第2交点33側へ伝搬する。これにより、第2可変整合回路6bへ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができ、更に、第1可変整合回路6aへ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子23と、第2端子24とに、同位相で、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とを設計してもよい。第1交点32に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点32から第1可変整合回路6a側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子27に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、図9において第1整合回路34、第2整合回路35、第1位相器38、第2位相器39のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路28及び第2線路29における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
尚、第1整合回路34、第2整合回路35、第1位相器38、及び第2位相器39は、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計されるが、レジスタンス素子や増幅回路等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、電子機器の送受信特性を向上させる事ができる。
(実施の形態5)
以下に、本発明の実施の形態5について、図10を用いて説明する。図10は実施の形態5に関する第2アンテナユニットのブロック図である。図10に示した実施の形態5は、実施の形態1又は実施の形態2の第1アンテナ5aと第2アンテナ5bとを構成するアンテナモジュール1を、図10の第2アンテナユニット43により実現した場合の実施例である。尚、実施の形態3と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図10において、本実施の形態5の第2アンテナユニット43は、第1端子23、及び第2端子24の2端子を少なくとも有するアンテナ素子27(図10においては、アンテナ素子27の形状を特定せず、ブラックボックスの状態で記載している)を有している。アンテナ素子27の第1端子23に第1線路28の一方が接続され、第1端子23に第3線路30の一方が接続され、第2端子24に第2線路29の一方が接続され、第2端子24に第4線路31の一方が接続されている。第1線路28の他方と第2線路29の他方とは第1交点32に接続され、第3線路30の他方と第4線路31の他方とは第2交点33に接続されている。
そして、第1交点32から信号を入力した場合、第3線路30の第2交点33側に現れる信号の位相と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路28、第2線路29、第3線路30、及び第4線路31の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35、第3整合回路36、及び第4整合回路37と、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、及び第4位相器41とは設計されている。
このことから、例えば、第1可変整合回路6aから送信された信号は、第3線路30の第2交点33側に現れる信号の位相と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の位相との位相差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となることから、第2交点33から第2可変整合回路6b側へ概ね伝搬しない。
逆に、第2可変整合回路6bから送信された信号についても、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との位相差も概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるため、第1交点32から第1可変整合回路6a側へ概ね伝搬しない。
よって、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間で、信号が伝搬する事は無くなり、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間でアイソレーションが確保できる。これにより、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとは、アンテナ素子27を介して、信号のやり取りを相互に独立に行う事が可能となる。つまり、第1RF回路15aと第2RF回路15bとは、時間的、周波数的な選択をする必要もなく、相互に独立に信号のやり取りを行う事ができる。また、本実施の形態5の第2アンテナユニット43は、アンテナ素子27との間を2つの接続端子のみで接続する事が可能であり、図8の第1アンテナユニット22、図9の第2アンテナユニット42と比較して、構造の簡易化を図ることが可能となる。
尚、第1交点32から信号を入力した場合、第3線路30の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路28、第2線路29、第3線路30、及び第4線路31の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35、第3整合回路36、及び第4整合回路37と、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、及び第4位相器41とを設計しても良い。また、同様に、第2交点33から信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路28、第2線路29、第3線路30、及び第4線路31の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35、第3整合回路36、及び第4整合回路37と、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、及び第4位相器41とを設計してもよい。これにより、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間のアイソレーションを更に高くできるという有利な効果が得られる。
また、第1端子23と、第2端子24とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とを設計してもよい。
ここで、例えば、第1端子23と第2端子24との間にコモンモードの信号が入力された場合、第1端子23と第2端子24との間において、コモンモードの信号の電流の位相差は零となる。故に、第1端子23と、第2端子24とに、同位相であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる。第1交点32において、コモンモードの信号の電流は相殺され、第1交点32から第1可変整合回路6a側へは概ねコモンモードの信号は伝搬しない。
逆に、例えば、第1端子23と第2端子24との間にディファレンシャルモードの信号が入力された場合、第1端子23と第2端子24との間において、ディファレンシャルモードの信号の電流の位相差は±180度となる。故に、第1端子23と、第2端子24とに、位相差は±180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね0度±360度*n(nは0以上の整数)となる。第1交点32において、ディファレンシャルモードの信号の電流は足し合わされ、第1交点32から第1可変整合回路6a側へディファレンシャルモードの信号は概ね伝搬する。
このように、第1端子23と、第2端子24とに、同位相で、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となるように設計される事により、第1端子23と第2端子24との間に発生するディファレンシャルモードの信号のみ選択して第1可変整合回路6aへ伝搬させることができる。
更に、第1端子23と、第2端子24とに、同位相で、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の位相と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の位相との差が概ね180度±360度*n(nは0以上の整数)となる条件を考慮した場合、第1端子23から第2交点32までの位相変化量と、第2端子24から第2交点33までの位相変化量との差は、零となる。
つまり、第1端子23と第2端子24との間に生じたコモンモードの信号の電流は、第2交点33において同相で足し合わされ、第2交点33から第2可変整合回路6b側へ概ね伝搬され、逆に、第1端子23と第2端子24との間に生じたディファレンシャルモードの信号の電流は、第2交点33において逆相で足し合わされて相殺され、第2交点33から第2可変整合回路6b側へ概ね伝搬されない。
よって、第1端子23と第2端子24との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、概ね第1可変整合回路6a側のみへ伝搬され、第1端子23と第2端子24との間に生じたコモンモードの信号は、概ね第2可変整合回路6b側のみへ伝搬される。つまり、本実施の形態の第2アンテナユニット43は、第1端子23と第2端子24との間に生じる前記2つのモードの信号を別々に取り出すことが可能である。
尚、この場合に、第1端子23と、第2端子24とに、同位相で、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とを設計してもよい。
これにより、第1交点32に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点32から第1可変整合回路6a側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を向上させる事ができる。また、同様に、第1端子23と、第2端子24とに、位相差180度で、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合、第3線路30の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路30、第4線路31の線路長と、第3整合回路36、第4整合回路37と、第3位相器40、第4位相器41とを設計してもよい。
第2交点33に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点33から第2可変整合回路6b側へ伝搬する信号のコモンモードに対するディファレンシャルモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子27に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子23から第1交点32までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子24から第1交点32までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とを設計してもよい。
第1端子23と第2端子24との間にコモンモードの信号が生じた場合、第1端子23から第1交点32までの位相変化量が概ね90度±360度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子33から第1交点32までの位相変化量が概ね−90度±360度*n(nは0以上の整数)であるため、第1交点32においてはコモンモードの信号は相殺されることとなる。
つまり、コモンモードの信号にとって、第1交点32は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第1交点32から第1端子23、及び第2端子24までの位相変化量は、それぞれ90度、−90度となることより、第1端子23及び第2端子24から、それぞれ第1交点32側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子23と第2端子24との間に生じたコモンモードの信号は、第1交点32側へ概ね伝搬して行かず、概ね第2交点33側へ伝搬して行く事となる。
これにより、第2可変整合回路6bへ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第1可変整合回路6aへ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子23と、第2端子24とに、同位相で、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第1線路28の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値と、第2線路29の第1交点32側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第1線路28、第2線路29の線路長と、第1整合回路34、第2整合回路35と、第1位相器38、第2位相器39とを設計してもよい。第1交点32に現れるコモンモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第1交点32から第1可変整合回路6a側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードのコモンモードに対する信号成分の比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子27に発生するコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、第1端子23から第2交点32までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)であると共に、第2端子24から第2交点33までの位相変化量が概ね+90度±180度*n(nは0以上の整数)となるように、第3線路30、第4線路31との線路長と、第3整合回路36、第4整合回路37と、第3位相器38、第4位相器39とを、設計してもよい。
これにより、例えば、第1端子23と第2端子24との間にディファレンシャルモードの信号が生じた場合、第1端子23から第2交点33までの位相変化量と、第2端子24から第2交点33までの位相変化量とが同一量であるため、第2交点33においてはディファレンシャルモードの信号は相殺されることになる。
つまり、ディファレンシャルモードの信号にとって、第2交点33は仮想的に接地された場所となる。仮想的に接地された第2交点33から第1端子23、及び第2端子24までの位相変化量は共に90度となることより、第1端子23及び第2端子24から、それぞれ第2交点33側を見た時の入力インピーダンスは無限大となる。よって、第1端子23と第2端子24との間に生じたディファレンシャルモードの信号は、第2交点33側へ概ね伝搬せず、概ね第1交点32側へ伝搬する。
これにより、第1可変整合回路6bへ伝搬するディファレンシャルモードの信号のコモンモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができると共に、第2可変整合回路6bへ伝搬するコモンモードの信号のディファレンシャルモードの信号に対する比率を更に向上させる事ができる。
更に、この条件下において、第1端子23と、第2端子24とに、位相差180度であり、且つ、振幅の絶対値の等しい信号を入力した場合に、第3線路30の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値と、第4線路31の第2交点33側に現れる信号の振幅の絶対値とが概ね同一となるように、第3線路30、第4線路31の線路長と、第3整合回路36、第4整合回路37と、第3位相器40、第4位相器41とを設計してもよい。第2交点33に現れるディファレンシャルモードの信号の電流をより精度良く相殺させる事ができ、第2交点33から第2可変整合回路6b側へ伝搬する信号のディファレンシャルモードに対するコモンモードの信号成分の比率を向上させる事ができる。これにより、アンテナ素子27に発生する相関係数の低いコモンモードの信号とディファレンシャルモードの信号を精度良く分離でき、相関係数の低い2つの信号を得る事が可能なダイバーシティアンテナを実現できる。
尚、図10において、第1整合回路34、第2整合回路35、第3整合回路36、第4整合回路37、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、第4位相器41のうち少なくとも1つを無くした構成としてもよい。これにより第1線路28、第2線路29、第3線路30、及び第4線路31における伝送ロスを低減できると共に、必要となる部品点数を減らす事ができ、小型化、軽量化を図ることができる。
尚、第1整合回路34、第2整合回路35、第3整合回路36、第4整合回路37、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、第4位相器41とは、基本的にはリアクタンス素子の回路にて設計されるが、レジスタンス素子や増幅回路等が含まれる回路にて設計されても良い。これにより、第1可変整合回路6aと第2可変整合回路6bとの間の高いアイソレーション特性を実現できると共に、図1の通信装置3の送受信特性を向上させる事ができる。
図11は本実施の形態5に関する第2アンテナユニットをアンテナモジュールに組み込んだ図である。尚、図10と同様の構成については、同一符号のみ記載し、異なる構成を中心に、以下に説明する。
図11においては、アンテナ素子27として、第1エレメント44と第3エレメント46とから成るアンテナエレメントと、第2エレメント45と第4エレメント47とから成るアンテナエレメントとの2対のアンテナエレメントにより構成されたダイポールアンテナを用いた場合を示している。図11において、第3エレメント46の端部に第1端子23が設けられ、第4エレメント47の端部に第2端子24が設けられている。
アンテナ素子27は、任意の線49に対して、線対称の形状を有している。これにより、第1端子23から見たアンテナ素子27の入力インピーダンスと、第2端子24から見たアンテナ素子27の入力インピーダンスとがほぼ同様のものとなり、第2アンテナユニット43を設計し易くなる。
そして、第1端子23に接続された第1線路28及び第3線路30と、第2端子24に接続された第2線路29及び第4線路31と、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、及び第4位相器41と、能動回路4とは、通信装置3に内蔵されているグランド板48の上方及び下方に配置されている。
第1端子23から第1交点32までの位相変化量が+90度となるように第1線路28と第1位相器38とは設計されており、第2端子24から第1交点32までの位相変化量が−90度となるように第2線路29と第2位相器39とは設計されている。また第1端子23から第1交点33までの位相変化量が+90度となるように第3線路30と第3位相器40とは設計されており、第2端子24から第1交点33までの位相変化量が+90度となるように第4線路31と第4位相器41とは設計されている。
第1エレメント44と第2エレメント45とは、グランド板48の端部に概ね平行に配置されており、第3エレメント46と第4エレメント47とは、グランド板48の端部に概ね垂直に配置されている。
図12は本実施の形態5に関するアンテナ素子のディファレンシャルモード時の動作を示す図である。図12において、第1エレメント44と第2エレメント45とには、向きの揃った電流(図12において矢印で図示)が発生し、第3エレメント46と第4エレメント47とには、向きが逆となる電流が発生する。よって、第1端子23と第2端子24とに発生する信号の位相差は180度となる。このような信号が第1端子23と第2端子24に入力された場合、上述した原理により、第1交点32には信号は現れるが、第2交点33には、信号が現れない。
つまり、アンテナ素子27にディファレンシャルモードの信号が発生した場合には、第1可変整合回路6aにはその信号が受信されるが、第2可変整合回路6bにはその信号は受信されない。また、第1可変整合回路6aからアンテナ装置1に信号を入力した場合、この信号は第2可変整合回路6bには伝搬されず、大部分の信号はアンテナ素子27に供給される。そして、供給された信号は、アンテナ素子27にディファレンシャルモードの電流を発生させ(図5参照)、電磁波として空中に放射される。放射に寄与するアンテナ素子27上の電流ベクトルは、第1エレメント44と第2エレメント45とに発生する電流ベクトルが主であり、第3エレメント46と第4エレメント47とに発生する電流ベクトルについては、電流ベクトルの向きが逆向きとなるため、大きくは放射に寄与しない。よって、アンテナ素子27にディファレンシャルモードが発生した場合の放射パターンは、図12の点線で示したような放射パターン50となる。このことから、主に、第1エレメント44及び第2エレメント45に対して主に垂直方向から到来する電磁波を受信した場合には、アンテナ素子27上にディファレンシャルモードが発生し、第1可変整合回路6aからのみ、その信号が取り出されることとなる。
図13は本実施の形態5に関するアンテナ素子のコモンモード時の動作を示す図である。図13において、第1エレメント44と第2エレメント45とには、向きが逆の電流(図13において矢印で図示)が発生し、第3エレメント46と第4エレメント47とには、向きが揃った電流が発生する。よって、第1端子23と第2端子24とに発生する信号の位相差は実質的に0度となる。このような信号が第1端子23と第2端子24に入力された場合、上述した原理により、第1交点32に信号は現れるが、第2交点33には、信号が現れない。つまり、アンテナ素子27にコモンモードの信号が発生した場合には、第2可変整合回路6bにはその信号が受信されるが、第1可変整合回路6aにはその信号は受信されない。また、第2可変整合回路6bからアンテナ装置2に信号を入力した場合、この信号は第1可変整合回路6aには伝搬されず、大部分の信号はアンテナ素子27に供給される。
そして、供給された信号は、アンテナ素子27にコモンモードの電流を発生させ図13に示すように、電磁波として空中に放射される。放射に寄与するアンテナ素子27上の電流ベクトルは、第3エレメント46と第4エレメント47とに発生する電流ベクトルと、それに連動して発生するグランド板48上の電流ベクトル52が主である。第1エレメント44と第2エレメント45とに発生する電流ベクトルについては、電流ベクトルの向きが逆向きとなるため、大きくは放射に寄与しない。よって、アンテナ素子27にコモンモードが発生した場合の放射パターンは、図13の点線で示したような放射パターン51となる。このことから、第3エレメント46及び第4エレメント47に対して主に垂直方向から到来する電磁波を受信した場合には、アンテナ素子27上にコモンモードが発生し、第2可変整合回路6bからのみ、その信号が取り出される。
以上のことから、図11〜13に示した対称構造を有するアンテナ素子27(例えば、ダイポールアンテナ)を用いる事により、1つのアンテナ素子27を指向性ダイバーシティアンテナとして使用することが可能となる。これにより、アンテナモジュール1の小型化、軽量化を図ることが可能となり、能動回路4が小型集積化できるため、電源及び第1制御信号の供給が容易となる。
尚、グランド板48に関しても、アンテナ素子27同様に、任意の線49を基準に線対称となる形状を有していても良い。これにより、指向性ダイバーシティアンテナの設計が容易となる。
上述した第2アンテナユニット43に関する記載は、図8の4つの端子を有する第1アンテナユニット22の場合や、図9の3つの端子を有する第3アンテナユニット42の場合にも、同様に当てはまる。
図14は本実施の形態5に関する第1アンテナユニットのブロック図である。任意の線49を基準に線対称の形状を持つ4つの端子を有するアンテナ装置を示す。図14では、第1端子23と第2端子24とを結ぶ第1直線(図示せず)上の第1端子23と第2端子24との中点(図示せず)において、第1直線に垂直な線49を基準に、アンテナ素子27は実質的に線対称形状を有している。
更に、第3端子25と第4端子26とを結ぶ第3直線(図示せず)上の第3端子25と第4端子26との中点(図示せず)において、第3直線に垂直な線49に対して、アンテナ素子27は実質的に線対称形状を有している。アンテナ素子27として、このような形状を採用する事により、指向性ダイバーシティアンテナの設計が容易となる。
図15は本実施の形態5に関する第3アンテナユニットのブロック図である。任意の線49を基準に線対称の形状を持つ3つの端子を有するアンテナ装置を示す。図15では、第1端子23と第2端子24とを結ぶ第1直線(図示せず)上の第1端子23と第2端子24との中点(図示せず)において、第1直線に垂直な線49を基準に、アンテナ素子27は実質的に線対称形状を有している。また、線49の上に第3端子25が実質的に存在する構造となっている。アンテナ素子27として、このような形状を採用する事により、指向性ダイバーシティアンテナの設計が容易となる。
尚、実施の形態5においては、対称構造のアンテナ素子(ダイポールアンテナ)を用いたが、対称構造のアンテナ素子に限る必要はなく、少なくとも2つの接続端子を有したアンテナ素子であれば、非対称構造のアンテナ素子を用いてもよい。携帯電話等の小型携帯端末に内蔵される事を想定した場合、アンテナ素子に許されるスペースが非常に少ない事から、対称構造のアンテナ素子を採用する事は困難である。故に、本発明のアンテナ装置を用いれば、非対称構造のアンテナ素子27を用いた場合においても、アンテナ素子27に発生するコモンモードとディファレンシャルモードの2つのモードをそれぞれ独立に受信・送信でき、等価的に2本分のアンテナ素子として機能させる事ができる。これにより、アンテナモジュール1を収納する容積が少ない小型の電子機器に最適なアンテナ装置を実現できる。
図16から図25には、第1端子23から見た入力インピーダンスが50Ωとなる第1エレメント44と第3エレメント46とから成るアンテナエレメントと、第2端子24から見た入力インピーダンスが50Ωとなる第2エレメント45と第4エレメント47とから成るアンテナエレメントとを用いて、周波数620MHzにおいて第2アンテナユニット43を設計した一例を示している。
図16は本実施の形態5に関する第2アンテナユニットのディファレンシャルモード時の設計例を示す図である。図17は本実施の形態5に関する第2アンテナユニットのコモンモード時の設計例を示す図である。アンテナ素子27がディファレンシャルモードで動作している時を考える。第1エレメント44と第3エレメント46とから成るアンテナエレメントと、第2エレメント45と第4エレメント47とから成るアンテナエレメントとが直列に接続された形となるため、第1端子23と第2端子24とから見たアンテナ素子27の入力インピーダンスは100Ωとなる。
アンテナ素子27がコモンモードで動作している時を考える。第1エレメント44と第3エレメント46とから成るアンテナエレメントと、第2エレメント45と第4エレメント47とから成るアンテナエレメントとが並列に接続された形となるため、第1端子23と第2端子24とから見たアンテナ素子27の入力インピーダンスは25Ωとなる。
これらの事実を設計に反映させたため、図16のアンテナ素子27(ポート番号3)の入力インピーダンスは100Ωとなっており、図17のアンテナ素子27(ポート番号6)の入力インピーダンスは25Ωとなっている。また、一般的に高周波回路は50Ωで設計されるので、図16の第1負荷回路53(ポート番号1)、及び第2負荷回路54(ポート番号2)と、図17の第1負荷回路53(ポート番号4)、及び第2負荷回路54(ポート番号5)とは、それらの入力インピーダンスを50Ωとして設計を行った。ここで、第1負荷回路53は、図11の能動回路4における第1交点32と接続される入力ポート55から、能動回路4以降を見たときの負荷を表している。また、第2負荷回路54は、図11の能動回路4における第2交点33と接続される入力ポート56から、能動回路4以降を見たときの負荷を表している。
図16及び図17においては、第1位相器38、第2位相器39、第3位相器40、及び第4位相器41は、それぞれ3素子のリアクタンス素子で実現している。
図18は本実施の形態5に関するアンテナ装置のディファレンシャルモード時の通過特性を示す図である。図18は、図16で示したアンテナ素子27がディファレンシャルモードで動作した場合のアンテナ素子27(ポート番号3)と第1負荷回路53(ポート番号1)と第2負荷回路54(ポート番号2)との間の通過特性を示したものである。図18において、例えば、S(3,1)とは、第1負荷回路53(ポート番号1)からアンテナ素子27(ポート番号3)への通過特性を示している。図18より、第1負荷回路53(ポート番号1)からアンテナ素子27(ポート番号3)への通過特性S(3,1)は、周波数620MHzにおいて、ほぼ0dBとなり、導通状態である事が分かる。これに対して、第2負荷回路54(ポート番号2)からアンテナ素子27(ポート番号3)への通過特性S(3,2)は、周波数620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。また、第1負荷回路53(ポート番号1)から第2負荷回路54(ポート番号2)への通過特性S(2,1)についても、周波数620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。
図19は本実施の形態5に関するアンテナ装置のコモンモード時の通過特性を示す図である。図19は、図17で示したアンテナ素子27がコモンモードで動作した場合のアンテナ素子27(ポート番号6)と第1負荷回路53(ポート番号4)と第2負荷回路54(ポート番号5)との間の通過特性を示したものである。図19において、例えば、S(6,4)とは、第1負荷回路53(ポート番号4)からアンテナ素子27(ポート番号6)への通過特性を示している。図19より、第2負荷回路54(ポート番号5)からアンテナ素子27(ポート番号6)への通過特性S(6,5)は、周波数620MHzにおいて、ほぼ0dBとなり、導通状態である事が分かる。これに対して、第1負荷回路53(ポート番号4)からアンテナ素子27(ポート番号6)への通過特性S(6,4)は、周波数620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。また、第1負荷回路53(ポート番号4)から第2負荷回路54(ポート番号5)への通過特性S(5,4)についても、周波数620MHzにおいて、−30dB以下となり、高いアイソレーションが取れている事が分かる。
以上より、上述した第1アンテナユニット22、第3アンテナユニット42、第2アンテナユニット43の動作が実際に実現できることがわかる。参考までに、図20から図25において、ポート番号1から6までの各ポートにおけるインピーダンス特性を示す。図20は本実施の形態5に関するアンテナ装置のポート番号1におけるインピーダンス特性を示す図である。同様に、図21はポート番号2、図22はポート番号3、図23はポート番号4、図24はポート番号5,図25はポート番号6におけるインピーダンス特性を示す図である。
図20から図25において、例えば、S(1,1)とは、図11における第1交点32から第2アンテナユニット43を見た時の入力インピーダンス特性を示している。
尚、第1アンテナユニット22、第2アンテナユニット43は、第1線路28と、第2線路29と、第3線路30と、第4線路31の特性インピーダンスが共にZoである。第1交点32に接続される第1負荷回路53の第1交点32から見た入力インピーダンスと、第2交点33に接続される第2負荷回路54の第2交点33から見た入力インピーダンスと、第1端子23から見たアンテナ素子27の入力インピーダンスと、第2端子24から見たアンテナ素子27の入力インピーダンスとが共に概ねZo/2であるように設計しても良い。これにより、アンテナ素子27と、第1負荷回路53または第2負荷回路54とのインピーダンス整合が容易に取れることとなり、反射損を低減できる。参考までに、図16、図17は、上記のインピーダンスの関係を満たしており、その結果、図18〜25に示すように、良好な電気特性を実現している。
また、図8〜図10において、第1端子23と第1交点32との間は、1本の線路である第1線路28と、1つの第1整合回路34と、1つの第1位相器38とで構成されているが、複数の線路、複数の整合回路、複数の位相回路により構成されていても良い。第2端子24と第1交点32との間、第3端子25と第2交点33との間、第4端子26と第2交点33との間についても同様である。
そして、第1線路、第2線路、第3線路、第4線路とは、複数の線路にて構成されるものも含んでいる。同様に、第1整合回路、第2整合回路、第3整合回路、第4整合回路とは、複数の整合回路にて構成されるものも含んでおり、第1位相器、第2位相器、第3位相器、第4位相器とは、複数の位相器にて構成されるものも含んでいる。
(実施の形態6)
以下に、本発明の実施の形態6について、図26〜29を用いて説明する。図26は本実施の形態6に関する車載用アンテナの実施例を示す図である。図26は、例えば実施の形態5に示したアンテナ装置を、テレビ放送やラジオ放送を受信する車載用アンテナに用いた一実施例を示す概略図であり、車室内からフロントガラス57を見た場合の図となっている。
図26において、実施の形態5に示したアンテナ素子27を、透明樹脂フィルム上に形成した第1フィルムアンテナ58が、フロントガラス57の上部領域(例えば、車の天板59とフロントガラス57が接する辺から10cm以内の領域)の車室内側に貼り付けられている。
更に、図26中の第1フィルムアンテナ58(アンテナ素子27)の上方には、第1フィルムアンテナ58と接続される第1回路60が配置される。第1回路60は、第2アンテナユニット43の内、アンテナ素子27直下に配置される回路(第1整合回路34、第1位相回路38等が該当)と、図1等の能動素子4等とを有した回路である。
そして、第1回路60と、電子ユニット9とは、約5m程度の第1伝送線路14aと、第2伝送線路14bとにより、接続されている。
図27、図28は、図26で示した実施例を、車上方より図示したものである。
図27は本実施の形態6に関する車載用アンテナのディファレンシャルモード時の放射パターンである。図27は、第1フィルムアンテナ58(アンテナ素子27)の第1端子23(図12参照)と第2端子24(図12参照)とに、ディファレンシャルモードの信号が励起される場合のアンテナ装置の放射パターン61を示している。放射パターン61は、図12で説明した原理により放射される。これは、第2伝送線路14bから信号を送受したときの放射パターンである。
天板59が反射板の役割を果たすため、車の前方方向の指向性利得が車の後方方向の指向性利得よりも大きくなる。これにより、車室内で反射・散乱された後、第1フィルムアンテナ58に到来するテレビ放送波の受信を抑圧できる。車室内における反射・散乱波は、単位時間当たりの振幅、位相変動が大きいため、受信されるテレビ放送がデジタル放送である場合には、復調時にエラーとなり易い。故に、実施の形態6に示すアンテナ装置2は、車室内からの反射・散乱波の受信を抑圧でき、受信特性を向上させられる。
図28は本実施の形態6に関する車載用アンテナのコモンモード時の放射パターンである。図28は、第1フィルムアンテナ58(アンテナ素子27)の第1端子23(図12参照)と第2端子24(図12参照)とに、コモンモードの信号が励起される場合のアンテナ装置の放射パターン62を示している。放射パターン62は、図13で説明した原理により放射される。これは、第1伝送線路14aから信号を送受したときの放射パターンである。
天板59が反射板の役割を果たすため、放射パターン62の最大値方向は、車の前方方向へ少し傾く。
図27、図28に示すように、第1伝送線路14aを介して信号をやり取りする時の放射パターン61と、第2伝送線路14bを介して信号をやり取りする時の放射パターン62とで、放射パターンのピーク方向を概ね直交させることが可能となり、小型でありながら、相関係数の低いアンテナモジュール1を実現できる。
例えば、図1において、第1伝送線路14aを介して第1増幅器7a、第2増幅器7b等の能動素子へ電源供給を行うため、アンテナ装置2は、小型で、相関係数の低いアンテナ素子が必要であるが、本発明のアンテナ素子27は、この条件を満たしており最適なアンテナ素子と言える。
尚、上記においては、実施の形態5に示す第2アンテナユニット43を用いて説明したが、これに限る必要はなく、実施の形態1〜4に示したアンテナ装置を用いても、同様の効果が得られる。
また、図1において、アンテナモジュール1の第1アンテナ5aの代わりに、図8の第1アンテナユニット22、図10の第2アンテナユニット43、図9の第3アンテナユニット42の内、いずれか1つのアンテナユニットを用いてもよい(以後、図1の第1アンテナ5aの代わりに用いられたアンテナユニットを、アンテナユニットAと呼ぶ)。また、第2アンテナ5bの代わりに、図8の第1アンテナユニット22、図10の第2アンテナユニット43、図9の第3アンテナユニット42の内、いずれか1つのアンテナユニットを用いてもよい(以後、図1の第2アンテナ5bの代わりに用いられたアンテナユニットを、アンテナユニットBと呼ぶ)。
この場合、能動回路4は、第1伝送線路14aと対応して接続される相手を、アンテナユニットAの第1交点32と第2交点33との間で切り替える第1スイッチ(図示せず)と、第2伝送線路14bと対応して接続される相手を、アンテナユニットBの第1交点32と第2交点33との間で切り替える第2スイッチ(図示せず)とを備えている。
ここで、第1スイッチ(図示せず)と第2スイッチ(図示せず)とは、図1の電源供給回路16から第1伝送線路14aを介して電源が供給されていてもよい。
また、第1スイッチ(図示せず)と第2スイッチ(図示せず)とは、受信される電力値や受信信号の信号品質値(C/N特性やBER特性が該当)に基づいて、第1制御信号発生回路17aから第2伝送線路14bを介して供給される第1制御信号により制御されることとなる。
そして、第1制御信号発生回路17aから第2伝送線路14bを介して供給される第1制御信号は、異なるレベルに区分された複数の電圧値を有しており、この複数の電圧値により、第1スイッチ(図示せず)と第2スイッチ(図示せず)とを独立して制御してもよい。
図1の実施例の場合、第1制御信号の供給は、第2伝送線路14bの1本の線路のみで行う事となり、2つの制御対象素子である第1スイッチ(図示せず)、第2スイッチ(図示せず)を同時且つ独立に制御する事が困難であると予想されるが、本発明のアンテナ装置2は、第1制御信号に広い電位幅を利用できるため、容易に、同時且つ独立に、第1スイッチ(図示せず)、第2スイッチ(図示せず)を制御する事ができる。
これにより小型の4ブランチのダイバーシティ方式のアンテナ装置を容易に実現する事ができ、受信特性を向上させることができる。
図29は本実施の形態6に関するアンテナ装置を2セット用いた車載用アンテナの実施例を示す図である。図29には、上記の4ブランチのダイバーシティ方式のアンテナ装置を2セット(合計で8ブランチのダイバーシティ受信方式)使用して、車載用テレビ受信システムを構築した場合の実施例を示している。
図29において、上記のアンテナユニットAとアンテナユニットBとを、透明樹脂フィルム上に形成した第2フィルムアンテナ63と、上記のアンテナユニットAとアンテナユニットBとを、透明樹脂フィルム上に形成した第3フィルムアンテナ64とが、フロントガラス57の上部領域(例えば、車の天板59とフロントガラス57が接する辺から10cm以内の領域)の車室内側に貼り付けられている。
第2フィルムアンテナ63の上方に配置された第1スイッチ(図示せず)と接続された第1伝送線路14aと、第2フィルムアンテナ63の上方に配置された第2スイッチ(図示せず)と接続された第2伝送線路14bとは、電子ユニット9と接続される。同様に、第3フィルムアンテナ64の上方に配置された第1スイッチ(図示せず)と接続された第3伝送線路14cと、第3フィルムアンテナ64の上方に配置された第2スイッチ(図示せず)と接続された第4伝送線路14dとは、電子ユニット9と接続される。
図29に示した構成により、8ブランチのダイバーシティ受信システムを構築する事ができ、受信特性の高い通信装置3を容易に実現する事ができる。
なお本発明の実施例の説明において、“接続する”という記述をしたが、これは電気的に接続することを意味し、例えば、半田による接続、静電的接続、電磁的接続など、アンテナの信号が伝送される接続方法であれば構わない。
以上、主に、ダイバーシティ受信システムの事例により本発明の説明を行ったが、本発明の適用はこれに限られない。例えば、2つ以上のシステムを受信するシステム(例えば、第1アンテナでテレビ放送を受信し、第2アンテナで携帯電話の信号を受信するシステム)や、MIMO送受信システム用のアンテナ装置としても使用可能である。