JP5338227B2 - 複合ロールの製造方法 - Google Patents

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本発明は、遠心鋳造機を利用してロール胴部の内・外層の成分が異なる複合ロールを効率的に製造する方法に係り、特に鉄鋼の圧延に使用される複合ロールの製造方法に関する。
ここで、ロール胴部の内層とは、その表面部を除くロール軸部を意味し、一方ロール胴部の外層とは、その表面部を意味する。外層は1層あるいは複数層からなる。
周知のように鉄鋼等の金属の圧延に使用されるロールの特性としては、ロール胴部の表面部が耐摩耗性に優れる一方、その内側のロール軸部は靭性が高いことが必要である。そのため、遠心鋳造機を利用してロール胴部の内・外層の成分が異なる複合ロールを製造することが一般に行われている(特許文献1、2、3、4等)。
ロール胴部の内・外層をともに遠心鋳造法で形成する場合、たとえば図6(a)に示した鋳型1をその中心1a周りに回転させながら、まず鋳型内に外層溶湯L1を注湯して外層W1を形成し、次いでその内側に内層溶湯を注湯して、ロール軸部である内層を形成する。
その方法は鋳型1の回転速度を調整して遠心力の調整を行い、さらにロール胴部の表面部、その内側のロール軸部、両ロールネック部など部位ごとに鋳型の傾斜角度の調整を行うこともある(特許文献2、3、4)。図6(a)中、23は遠心力付与モータ、2、3は遠心鋳造機の鋳型支持部材、2a、3aは鋳型支持ローラ、5は取鍋、6は鋳型1に装着する注湯用漏斗をそれぞれ示す。なお、鋳型の傾斜角度の調整を行うには公知の傾斜型遠心鋳造機を用いる。
図7には、遠心鋳造機を利用してロール胴部の内、外層を遠心鋳造法で形成した複合ロールの特性図を示した。この場合、高硬度の外層W1から、低硬度の内層W3となる内層溶湯への溶け込みが十分に生じていないため、外層W1に向かい内層W3の硬さが急激に上昇している。このような複合ロールは圧延に供すると使用時に外層が剥離しやすいことが知られている。
そこで、耐スポーリング性に優れる複合ロールを製造するための製造方法が特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載の製造方法は、図6(a)に示した遠心鋳造機を用い、ロール胴部の外層W1を遠心鋳造法で形成する第1工程と、図6(b)に示したように、鋳型1を竪置きにし、鋳型1を静止させた状態で内層溶湯L3を下から注湯する第2工程を有する。図6(b)中、21は鋳型1に設けた下注ぎ管接続口を示し、内層溶湯L3はここから鋳型1内へ注湯される。溶湯下注ぎ管24は下注ぎ管接続口21と接続して使用する。また、鋳型1には溶湯吐出口22が設けてある。
この2工程からなる製造方法によれば、図8に示したように、ロール胴部の外層W1をその内側に注湯する内層溶湯に十分溶け込ませることができ、ロール胴部の内・外層間を冶金的に溶着してなる複合ロールを得ることができる。
特開昭56-99065号公報 特開昭60-216960号公報 特開昭56-168954号公報 特開昭57-91864号公報
しかしながら、特許文献1の複合ロールの製造方法は、第2工程で内層溶湯L3を下から、ロール全長(ロール胴部の長さと、その両側のロールネック部の長さの合計)を超える長さの溶湯下注ぎ管24を介して注湯する必要があり、製造効率が劣るという欠点があった。
これに対して、図4(a)に示したように、内層溶湯L3を上から注湯する第2工程とすれば、下側に開口部が形成されたノズルを有する上注ぎ漏斗7を用いることができ、効率よく複合ロールを製造することが可能となる。
ここで、図4(a)には、内層溶湯L3を上から注湯する際、流下する溶湯流10に振れがない状態を示し、図5(a)には流下する溶湯流11に決まった振れがある状態を示した。また、図4(b)、図5(b)には内層溶湯L3への溶け込み状態をそれぞれ模式的に示した。
流下する溶湯流11に決まった振れがあると、図5(b)で示したように、局部的に内層溶湯L3が当った部分の溶損量が過大となり、ロール胴部の表面部に溶損箇所12が生じる。この結果、遠心鋳造法で形成したロール胴部の表面部(外層W1あるいはその内側に形成した中間層W2)内側の、内層溶湯L3への溶け込みが不均一となる。このような複合ロールは、圧延に供した場合、ロール寿命が短くなってしまう。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、遠心鋳造法で形成した外層の内側に内層溶湯を上から注湯するに際し、溶湯流に振れがあっても、外層の内側には局部的な溶損箇所が生じず、内層溶湯への外層の均一な溶け込みが生じる複合ロールの製造方法を提供する。
本発明者は、ロール胴部の内・外層の成分が異なる複合ロールを効率的に製造する方法について鋭意検討した結果、遠心鋳造法で形成した外層の内側に内層溶湯を上注ぎ法で注湯する際、以下の構成を有する第2工程とすれば、前記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
1.ロール胴部の外層をその内側に注湯する内層溶湯に溶け込ませ、ロール胴部の内・外層間を冶金的に溶着してなる複合ロールを製造するにあたり、
鋳型を遠心鋳造機の鋳型支持ローラ上に水平又は傾けて載置し、中心周りに鋳型を回転させながら、鋳型内に外層溶湯を注湯し、ロール胴部の外層を遠心鋳造法で形成する第1工程と、前記外層が形成された鋳型を、その中心を垂直にして回転台上に竪置きにした後、回転台をその回転中心周りに回転させながら、前記外層の内側に内層溶湯を上から注湯する第2工程を有することを特徴とする複合ロールの製造方法。
2.前記第1工程で、外層の内側に中間層溶湯を注湯し、遠心鋳造法で中間層を形成することを特徴とする請求項1に記載の複合ロールの製造方法。
本発明によれば、遠心鋳造法で形成した外層の内側に内層溶湯を上から注湯するに際し、内層溶湯流に振れがあっても、外層の内側には局部的な溶損箇所が生じず、内層溶湯への外層の均一な溶け込みが生じる。このため、ロール胴部の内・外層間に剥離が生じ難く、寿命の長い複合ロールを効率的に製造する方法を実現できる。
以下、本発明法について図を用い、詳細に説明する。
図1は、本発明法の第1工程に用いて好適な遠心鋳造機の正面図、図2は、本発明法の第2工程に用いて好適な鋳型竪置き回転装置の正面図である。
(第1工程について)
本発明法の第1工程では、図1に示した遠心鋳造機を用い、遠心鋳造法で中間層を有する外層を形成するのが好適である。この遠心鋳造機は、水平方向と鋳型1の中心1aのなす鋳型傾斜角θが調整可能なものであり、外層、中間層を形成する際、θ=0とするか、0<θ<90°で調整する。これに限らず、鋳型傾斜角θを所定の角度に固定した遠心鋳造機であってもよい。
この傾斜型遠心鋳造機には、傾斜した鋳型1の下側側面に接触して、スラスト力を受ける鋳型支持ローラ4aが設けられている。傾斜した鋳型1の下側面に接触している鋳型支持ローラ4aは、鋳型支持部材4に回転自在に支持され、図示しないベッド上に搭載されている。また、鋳型1の外周面と接触している鋳型支持ローラ2a、3aも同様に、鋳型支持部材2、3を介してベッド上に搭載されている。そのほかには、図6(a)に示した水平型遠心鋳造機と同様、溶湯の温度を所定温度に保持できる取鍋5、遠心力付与モータなどが設けられている。
図1中、L1は鋳型内へ最初に注湯する外層溶湯であり、取鍋5内で所定温度に保持されている。取鍋5から溶湯を受ける注湯用漏斗6は、傾斜した鋳型1の上側面の開口に軸方向移動可能に設けてられている。
取鍋5内で所定温度に保持されている外層溶湯L1を、中心1a周りに鋳型1を回転させながら、注湯用漏斗6を介して鋳型1内に注湯し、ロール胴部の外層W1を遠心鋳造法で形成する。このようにして外層W1を形成した後に、後述する第2工程に進んでもよいし、第2工程へ進む前に、遠心鋳造機でさらに中間層W2を形成させてもよい。この場合、引き続き中間層W2を形成するための、中間層溶湯を満たした取鍋5を遠心鋳造機に搬送した後、同様にして外層W1の内側に中間層溶湯を注湯する。
その際、最初に鋳型1内に注湯された外層溶湯が、凝固することで形成される外層W1の内周面が、後で注湯された中間層溶湯によって溶かされ、混ざり合うこと(すなわち、外層W1の内周面が中間層溶湯へ溶け込むことを、外層の溶け込みという)が均一に生じるようにする。
この外層の均一な溶け込みが生じるように、遠心力付与モータで鋳型1に加える遠心力と時間を調整しつつ、所定温度に保持した中間層溶湯の供給を行う。鋳型1に加える遠心力と時間については、たとえば特許文献2に記載されている条件とすることができる。
外層W1の均一な溶け込みが生じたときの状態を模式的に図3(b)に示した。外層の均一な溶け込みが生じた複合ロールは、外層W1とその内側に形成される中間層W2間に鋳造欠陥が生じ難い。
このように第1工程で、外層W1の内側に中間層溶湯を注湯し、遠心鋳造法で中間層W2を形成するのが、ロール胴部の内・外層間を冶金的に溶着する際、中間層W2を介することで、溶け込みを十分に行うようにでき、ロール胴部の内・外層間を冶金的により強固に溶着できるので好ましい。
(第2工程について)
本発明法の第2工程では、図2に示した鋳型竪置き回転装置を用い、内層溶湯L3を上から注湯し、ロール軸部である内層を形成するのが好適である。
この鋳型竪置き回転装置には、下側に開口部を有するノズルが設けられた上注ぎ用漏斗7と、回転中心8aを有する回転台8と、一対の鋳型支持ローラ9とが具備されている。
上注ぎ用漏斗7は、第1工程で用いた注湯用漏斗6の代わりに、鋳型1の上側面の開口に挿入して用いられ、回転台8上には、遠心鋳造法で外層W1と、場合によってはその内側に中間層W2を形成した鋳型1が、その中心1aを垂直にして竪置きにされる。
この回転台8を回転中心8a周りに回転させることで、鋳型1を回転させるようになっている。また、一対の鋳型支持ローラ9は、竪置きにした鋳型1の中心1aと、回転台8の回転中心8aとが一致するように鋳型1を支持するものであり、図2で上側に位置するロールネック部を形成する鋳型の周面に接触させてある。
なお、上注ぎ用漏斗7は、鋳型1に対して遊嵌状態とされ、鋳型1が回転台8の回転に伴う回転しても、回転しないように支持されている。
そこで、内層溶湯L3の注湯中、溶湯流11に決まった振れが生じるため、流下する内層溶湯L3によって湯面が徐々に上昇し、上側に位置するロールネック部に達するまでの間、溶湯流11が遠心鋳造法で形成したロール胴部の表面部の内側に局部的に当る(図5(a)参照)。この溶湯流11が当った部分の溶損量が過大となり、図5(b)で示したように溶損箇所12が生じ、外層あるいは中間層の溶け込不良が生じる。
この溶け込み不良を防止するために、本発明法の第2工程では、図2に示した鋳型竪置き回転装置を用い、遠心鋳造法で好ましくは外層W1の内側に中間層W2が形成された鋳型1を、その中心1aを垂直にして回転台8上に竪置きにした後、回転台8を回転中心8a周りに回転させながら、中間層W2の内側に内層溶湯L3を上から注湯する。
内層溶湯L3を上から注湯する際、溶湯流に決まった振れが生じても、少なくとも流下する内層溶湯L3によって湯面が、上側に位置するロールネック部に達するまでの間、回転台と一緒に竪置きにした鋳型1を回転させるようにしたから、決まった方向に振れた溶湯流が周方向に一様に当るようになる。
したがって、図5(b)に示したような局部的な溶損箇所12が生じず、外層W1の内側、あるいは中間層W2の内側に均一な溶け込みが生じる。この結果、ロール胴部の内・外層間に剥離が生じ難く、寿命の長い複合ロールを効率的に製造することができる。中間層W2の均一な溶け込みが生じたときの状態を模式的に図3(c)に示した。
表1に示す成分組成の外層および内層を有する、ロール胴部の直径が680mm、胴長が1500mm、全長が3600mmの熱間仕上げ圧延機用ワークロールを本発明法で製造した。
傾斜型遠心鋳造機上で、重力倍数で130Gの遠心力で鋳型を回転させつつ注入温度が1410℃である外層溶湯を注湯し、肉厚が80mmの外層を形成し、次いで外層溶湯注入開始後18分後に肉厚50mm相当分の中間層溶湯を注湯した。その際、外層に重力倍数で130Gの遠心力が加わるように鋳型を回転させ、中間層溶湯を注湯した後も同程の度回転を20分間継続した。なお、鋳型傾斜角θは20°とした。
このような条件で外層の均一な溶け込みが生じている中間層を遠心鋳造法で形成した。表1に外層溶湯と中間層溶湯の成分を示した。
ここまでは特許文献2と同じである。この後、特許文献2では、鋳型の回転速度を徐々に減速させ、その過程で残余の部分、すなわちロール軸部である内層と、両側のロールネック部を、表1の中間層溶湯と同じ成分の溶湯を注湯して遠心鋳造法で形成している。
Figure 0005338227
一方、本発明法では、遠心鋳造法でロール胴部の表面部分(=180mm、外層肉厚:80mm、中間層肉厚:100mm)を形成し、その後、外層と中間層とが形成された鋳型をその中心を垂直にして回転台上に竪置きにした後、回転台を5〜30rpmの回転速度で回転させながら、内側に内層溶湯を上から注湯することで、ロール軸部である内層と、両側のロールネック部も形成した。なお、本発明法では表1に示した成分の内層溶湯を上から鋳型内へ注湯した。なお、比較のために、回転しない固定台上に竪置きにした後、内層溶湯を上から注湯することも行った。
本発明法によれば、内層溶湯によって中間層の均一な溶け込みが生じ、中間層を介して内・外層間が冶金的に強固に溶着されているから、熱間仕上げ圧延のワークロールに供した場合、ロール胴部の内・外層間に剥離が生じ難い。
一方、比較として行った、回転しない固定台上に竪置きにした後、内層溶湯を上から注湯した場合は、内層溶湯による中間層の内側の溶け込みが、周方向に不均一となったことが原因で、本発明法で製造したロールに比べて寿命が短いものがあった。
また、特許文献2の方法で製造した複合ロールは、遠心鋳造法で外層、中間層(ただし内層溶湯と同じ成分)およびロール軸部である内層も形成したもので、中間層の使用量厚みが小さく、内層溶湯への溶け込みが不十分であるため、熱間仕上げ圧延のワークロールに供した場合、本発明法に比べて寿命が短かった。
本発明法の第1工程に用いて好適な遠心鋳造機の正面図である。 本発明法の第2工程に用いて好適な鋳型竪置き回転装置の正面図である。 (a)、(b)、(c)は本発明法の作用・効果を模式的に示す断面図である。 (a)、(b)は鋳型を竪置き静止状態として内層溶湯を上から注湯する場合に、溶湯流が正常であるときの鋳型内を示す縦断面図、そのX−X断面図である。 (a)、(b)は鋳型を竪置き静止状態として内層溶湯を上から注湯する場合に、溶湯流が振れたときの問題点を示す縦断面図、そのX−X断面図である。 特許文献1に記載の複合ロールの製造方法に用いる遠心鋳造機と、下注ぎ鋳造装置を示す正面図である。 遠心鋳造機を利用してロール胴部の内、外層を形成した複合ロールの特性図である。 特許文献1に記載の製造方法で得られる複合ロールの特性図である。
符号の説明
θ 鋳型傾斜角
L1 外層溶湯
L2 中間層溶湯
L3 内層溶湯
W1 外層
W2 中間層
W3 内層(ロール軸部)
1 鋳型
1a 鋳型1の中心
2、3、4 鋳型支持部材
2a、3a、4a 遠心鋳造機の鋳型支持ローラ
5 取鍋
6 注湯用漏斗
7 上注ぎ用漏斗
8 回転台
8a 回転台8の回転中心
9 鋳型支持ローラ
10、11 溶湯流
12 溶損箇所
21 下注ぎ管接続口
22 溶湯吐出口
23 遠心力付与モータ
24 溶湯下注ぎ管

Claims (2)

  1. ロール胴部の外層をその内側に注湯する内層溶湯に溶け込ませ、ロール胴部の内・外層間を冶金的に溶着してなる複合ロールを製造するにあたり、
    鋳型を遠心鋳造機の鋳型支持ローラ上に水平又は傾けて載置し、中心周りに鋳型を回転させながら、鋳型内に外層溶湯を注湯し、ロール胴部の外層を遠心鋳造法で形成する第1工程と、前記外層が形成された鋳型を、その中心を垂直にして回転台上に竪置きにした後、回転台をその回転中心周りに回転させながら、前記外層の内側に内層溶湯を上から注湯する第2工程を有することを特徴とする複合ロールの製造方法。
  2. 前記第1工程で、外層の内側に中間層溶湯を注湯し、遠心鋳造法で中間層を形成することを特徴とする請求項1に記載の複合ロールの製造方法。
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