JP5337939B2 - 架空線用テンションバランサ - Google Patents

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Description

本発明は、電車線の張力を保持するための設備に用いられる架空線用テンションバランサに関するものである。
架空線、特に電車線(吊架線・補助吊架線・トロリ線)にあっては、温度変化による伸縮や、クリープ、トロリ線の摩耗による弾性伸び、さらに経年による支持物の傾斜などにより、弛度張力が影響を受けるため、電車線の張力を一定に保持する必要がある。また、その調整を自動的に行って、メンテナンスフリー化することが望ましく、例えば、特許文献1に開示されているように、複数の圧縮コイルばねを用い、さらにコンパクト化するために筒状部材を介して各ばねを同心的に多重に組み合わせて直列接続したテンションバランサが提案されている。
図21に上記構造を用いたテンションバランサの一例を示す。図21に於いて、円筒状のケーシング1内に、外側中筒2と内側中筒3とロッド4とが同心的にかつ軸線方向にそれぞれ相対変位自在に受容されている。また、ケーシング1および外側中筒2の間、外側中筒2および内側中筒3の間、内側中筒3およびロッド4の間のそれぞれに大・中・小径の各圧縮コイルばね5、6、7が同心的に介装されている。各圧縮コイルばね5、6、7は、それぞれ軸線方向の一端を各外側の部材の内周面に固着された各内向フランジ部1a、2a、3aに係止され、それぞれの他端を各内側の部材の外周面に固着された各外向フランジ部2b、3b、4bに係止されている。
外側中筒2および内側中筒3およびロッド4は、組み付け時にはケーシング1内に受容されており、図に於ける右方に突出し得るようにされている。ケーシング1は、その後端の端板1bに固設された取付金具15を介して支柱16に結合されていると共に、ケーシング1の上面に固設された孔あきブラケット17に結合された支持ロープ18を介して支柱16に支持されている。そして、ロッド4の突出端に取り付けられた架空線連結金具19には、がいしや引き止めロッド部を介して架空線としての電車線20の端部が結合されている。なお、図示例の電車線では、上側に吊架線を、下側にトロリ線を互いに平行に配設して構成されている。
このようにしてなるテンションバランサは、標準設置条件では各圧縮コイルばね5、6、7をある程度圧縮変形させて、例えば図21に示されるように外側中筒2および内側中筒3およびロッド4を使用ストローク範囲のほぼ中間位置に達するストローク長だけ突出させた状態で設置される。従って、例えば気温が下がって電車線20が縮むと、各圧縮コイルばね5〜7の反発力に抗してロッド4および内側中筒3および外側中筒2がそれぞれ更に突出し、気温が上がって電車線20が伸びると、各圧縮コイルばね5〜7の弾発復元力によりロッド部4および内側中筒3および外側中筒2がケーシング1内に没入するため、電車線20の伸び縮みによる変位を吸収し得ると共に、電車線20を安定した張力により緊張状態に保持することができ、メンテナンスフリーなどの特長を有する。
ところが、このようなテンションバランサにおいては、圧縮コイルばね5、6、7が単純な直列組み合わせからなり、圧縮コイルばね5、6、7の伸縮時に各コイル端に生じる相対的周方向変位により、最も外側の筒体(ケーシング)と最も内側の筒体(ロッド)との間では「ねじれ」が発生する。電車線の構造が上側に吊架線を配して下側にトロリ線を配した平行線からなる場合には、上記ねじれにより平行線が傾動するという課題がある。そこで、このような課題を解決するものとして、例えば、特許文献2に示すような架空線連結部材を最外周筒状部材との間に回り止め手段を設けたものが提供されている。
実公昭39−19536号公報 特許第3477038号公報
しかしながら、従来のテンションバランサの回り止め手段は、最も内側の筒状部材(ロッド4)の没入方向開口端部の内周面に、一対の回り止め板またはU字金具でガイド孔を設け、最も外側の筒状部材(ケーシング1)の端板に固設された長尺プレート24を、ガイド孔に挿通した構成であるため、ロッド4(架空線連結部材が連結されている。)とケーシング1との間にねじれが生ずると、そのねじれによるロッドの回りを阻止しようとしてその力が長尺プレート24とガイド孔との間で接触力として作用し摩擦抵抗が生ずる。そのためロッドの進退が影響され、電車線の伸び縮みによる変位を吸収しようとするロッドの進退が阻害されるという課題がある。
また、ケーシング1および中筒2、3の適所には水抜き孔が設けられているが、ケーシング1および中筒2、3内には、外側中筒2、内側中筒3およびロッド4の摺動を円滑にするグリスが充填されているため、このグリスが水抜き孔より漏出し、飛散して周辺を汚染するという課題がある。
さらに、従来の架空線用テンションバランサにおいては、架空線連結金具19とロッド4との連結部分が、ロッド4の内部に位置し外部より目視できないため、点検時には分解が必要となり、点検作業に手数と時間がかかる課題がある。
本発明はかかる従来の課題に着目してなされたものであり、種々の原因による電車線の伸縮に対し圧縮コイルばねの円滑な伸縮により電車線のテンションをメンテナンスフリーにて略一定に保持可能にするとともに、前記伸縮時における圧縮コイルばね端における相対的周方向変位にもとづく筒状部材間などでのねじれに伴う電車線の傾きを確実に防止でき、しかも、ケーシングおよび中筒に設けた水抜き孔よりケーシング、中筒内に充填したグリスが漏れ出さない架空線用テンションバランサを提供することを目的とする。
前述した目的を達成するために、本発明に係る架空線用テンションバランサは、
空中に架設された架空線の張力を一定に保持するための架空線用テンションバランサであって、
前記架空線用テンションバランサが、テレスコピック状に設けられた複数の筒状部材およびその中心部に同軸的に設けられた一対の対向する長板からなるロッド部と、前記複数の筒状部材におけるそれぞれの内側のものおよび前記ロッド部を没入方向に弾発付勢すべく前記各筒状部材間および最も内側の筒状部材と前記ロッド部との間にそれぞれ同心的に介装された圧縮コイルばねと、前記最も外側の筒状部材の一端側に固設された端板に固着され、前記一対の対向する長板からなるロッド部に対し同軸的に延出する長尺プレートと、前記ロッド部の一対の長板間に回動自在に設けられた一対のローラとを具備し、
前記長尺プレートを、前記ロッド部に設けた一対のローラ間に挟みながら、該ロッド部の移動を長尺プレートに沿ってガイドすることを特徴とする。
この構成により、最も外側の筒状部材の一端に固設された端板の中央部に固着された長尺プレートは、前記ロッド部の一対の長板間に回転自在に支持された一対のローラ間に延出して往復動可能に挟持されるため、ロッド部は、前記最も外側の筒状部材に対し長尺プレートで回り止めがなされ、電車線(架空線)は、該ロッド部の外出端に架空線連結金具を介して連結されている。従って、電車の通過時や強風時に発生する振動あるいは風雪時や着氷などによる外力の電車線のねじれの発生を回避することができる。
また、ロッド部に電車線や圧縮コイルばねによるねじれようとする力が作用し、そのために長尺プレートにもねじれようとする力が作用しても、長尺プレートは一対の回転自在のローラ間に挟持されてガイドされるため、ロッド部の往復動(進退)は影響されず円滑となる。
また、本発明に係る架空線用テンションバランサは、前記ロッド部の外出側の端部に架空線連結用の架空線連結金具が回動可能に取付けられ、該架空線連結金具は、ロッド部に対し、回動規制手段とその解除手段を備えることを特徴とする。
この構成により、架空線用連結金具は、ロッド部に対し、回動規制手段で回動を規制でき、また、その解除手段で回動規制を解除することができる。従って、架空線連結金具には、架空線(電車線)が連結されているので、架空線が傾動しないで所定の位置状態のときには、回動規制手段で架空線連結金具の回動を規制し、その位置を保持することができ、架空線(電車線)が傾動したりしたときは解除手段で回動規制を解除し、架空線連結金具を回動可能とすることにより、正しい姿勢に修正することができる。
これにより前記各筒状部材およびロッド部に対して架空線連結金具を任意の角度位置で回り止め可能になり、架空線(電車線)の架設当初およびその後に架空線のねじれが生じた場合にも、そのねじれを解消できるとともに、そのねじれ解消後は前記回り止め作用を確実に発揮することができる。
また、本発明に係る架空線用テンションバランサの前記架空線連結金具の回動規制手段とその解除手段は、前記ロッド部に固設されたカム部材と、前記架空線連結金具に設けられて前記カム部材に対し嵌合・離間可能なカム部と、前記カム部材に対しカム部を嵌合方向に付勢するばね、とを備え、
前記カム部がばねのばね力で押圧されてカム部材に嵌合してロッド部に対し架空線連結金具の回動を規制し、ばねのばね力に抗してカム部をカム部材より離間すると架空線連結金具の回動規制が解除されることを特徴とする。
この構成により、カム部材とカム部の嵌合により架空線連結金具のねじれ等による回動を規制し、任意の位置で回り止めが可能となり、架空線(電車線)の架設当初およびその後に架空線のねじれが生じた場合にも、カム部材に対するカム部の嵌合位置を変えることによって、そのねじれを解消できるとともに、そのねじれを解消後は前記回り止め作用を確実に発揮することができる。
また、本発明にかかる架空線用テンションバランサの架空線連結金具は、ロッド部との取付部分が外部より目視可能となり、点検を可能としている。
すなわち、本発明のロッド部は、一対の対向する長板で構成され、その対向する長板の端部間が連結板で連結され、この連結板に架空線連結金具が取り付けられているので、この取付部分は、対向する長板間から目視可能となる。従って、分解しなくても点検が可能となるので、点検作業も容易となる。
さらに、本発明に係る架空線用テンションバランサの前記筒状部材は、水抜き孔を備え、該水抜き孔には筒状部材内に充填したグリスの漏洩を防止するフィルターが設けられていることを特徴とする。
この構成により、筒状部材内に充填したグリスの漏洩を防止でき、筒状部材内のグリスが漏洩して周囲を汚染することがない。
本発明の架空線用テンションバランサによれば、次のような効果を奏する。
(1)電車線の伸縮時に圧縮コイルばねの円滑な伸縮により電車線のテンションをメンテナンスフリーにて略一定に保持可能にするとともに、前記伸縮時における圧縮コイルばね端における相対的周方向変位にもとづく筒状部材間でのねじれに伴う電車線の傾きを確実に防止できる。
(2)筒状部材の水抜き孔には充填したグリスの漏洩を防止するフィルターが設けられているので、水抜き孔よりグリスが漏洩して周囲を汚染することもない。
(3)長尺プレートは、回転自在の一対のローラ間に挟持されて回り止めを図っているので、ロッド部と筒状部材間にねじれが生じ、長尺プレートに、そのねじれようとする力が作用しローラと接触しても、一対のローラが転動してガイドするため摩擦力が軽減し、ロッド部や筒状部材の往復動(進退)は影響されず円滑となる。
(4)架空線連結金具のロッド部との取付部分は、外部より目視可能となっているので、点検作業が容易である。
本発明の実施形態による架空線用テンションバランサを示す要部の正面断面図。 図1に示した架空線用テンションバランサの要部の底面図。 図1に示した架空線用テンションバランサの左側面図。 図1に示したロッド部の正面図。 図4に示したロッド部の平面図。 図1に示した長尺プレートの斜視図。 図6に示した端板の斜視図。 図6に示した取付金具の斜視図。 図1に示したケーシングの縦断正面図。 図9に示したケーシングの右側面図。 図1に示した中筒の縦断正面図。 図11に示した中筒の右側面図。 ロッド部と連結ピンの部分を拡大して示す断面図。 図1に示した架空線用テンションバランサの一方の端部を示す斜視図。 本発明の他の実施形態による架空線用テンションバランサを示す要部の正面断面図。 図15に示した長尺プレートの正面図。 図15に示した端板の斜視図。 図15に示した取付金具の斜視図。 図15に示した架空線用テンションバランサの左側面図。 図15に示した架空線用テンションバランサのロッド部と連結ピンの部分を拡大して示す断面図。 従来のテンションバランサを示す要部の正面断面図。
以下、本発明の一実施の形態にかかる架空線用テンションバランサを、図1乃至図20を参照して説明する。なお、前記従来例と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
本実施の形態では、従来例と同様に、最外周筒状部材としての円筒状のケーシング1内に、筒状部材としての中筒3および架空線連結部材としてのロッド部4が同心的かつ軸線方向に進退自在(往復動自在)に受容されていると共に、各部材の内外周面間に大小の径をなす各コイルばね6、7が外側から順番にばね定数が大きくなるように同心的に介装された2重構造にて構成されている。なお、ロッド部4は、軽量化のために、図4および図5に示すように一対の長板4a、4aをこれらの両端部において連結板10、11で連結したものからなる。
また、図1では架空線用テンションバランサの組立状態が示されているが、各コイルばね6、7の軸線方向両端を係止するばね座としての内向および外向の各フランジ部1a、3b間およびフランジ部3a、連結板11間の各対となるもの同士間にそれぞれ各コイルばね6、7が、所定の初期荷重を加えられた状態で組み付けられている。
本発明に基づく各コイルばね6、7は、それぞれ軸線長さの短い短コイルばねを直列に組み合わされて構成されており、本実施形態では、それぞれ3本の短コイルばね6a、6b、6cおよび7a、7b、7cが直列に組み合わされている。なお、架空線の張力変化率を各短コイルばねの直列数を変えることにより任意に対応でき、架空線の流れ対策に有効である。また、各短コイルバネ7a、7b、7cはそれぞれ四角形のロッド部4の角の2箇所で接触するため、負荷時での形状の安定化、特に耐座屈性が良好となる。
コイルばね6は、上記したように隣り合う短コイルばね6a、6b、6c同士が直列に組み合わされているが、さらに隣り合うもの同士の巻方向(右巻・左巻)が互い違いになるようにされている。他の短コイルばね7a、7b、7c同士も同様に右巻・左巻が交互に組み合わされている。これによりコイルばねを直列に組み合わせた場合のバックリングによる偏心荷重を極力回避できる。また、各短コイルばね6a、6b、6cおよび7a、7b、7cをコイルエンドの両端同士が揃う整数巻を避けた巻き方にすると、上記と同様に偏心荷重を極力回避し得る。なお、表面処理にアルミニウムメッキを用いることにより、耐塩害性を高めることができる。
ロッド部4の図の右側の突出端部には、図4および図5に示すように前記連結板10が溶接等により一体に設けられ、この連結板10に回動規制手段とその解除手段としての連結ピン21を介してU字状の架空線連結金具(フック部材)19が支持されている。また、各長板4aの一部にはケーシング1の外周面を越えて下方へ延出する略U字形の支持アーム12が固着され、その支持アーム12の延出端には、ケーシング1の外周面に沿って軸線方向に延在するようにされた目盛板8の基部が固着されている。目盛板8には、ロッド部4の軸線方向のケーシング1に対する変位を示す目盛りが印されている。
このようにして構成された架空線用テンションバランサにあっては、標準状態の設置時には従来例の図21http://www6.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjitemdrw.ipdl?N0000=231&N0500=1E_M/??<;88?<7///&N0001=22&N0552=9&N0553=000005と同様に、中筒3およびロッド部4がそれぞれ所定量突出した状態で設置される。また、ケーシング1内には、中筒3、ロッド部4の摺動やケーシング1、中筒3、ロッド部4と圧縮コイルばね6、7との摺動を円滑にするためにグリスが充填されている。
連結板10に連結ピン21が前述と同様に連結され、その連結ピン21の軸部21aの先端部に、架空線連結金具19が固設されている。図13に示すように軸部21aの架空線連結金具19とは相反する側には矩形断面形状の多角形断面部21bが同軸的に設けられており、その多角形断面部21bの軸部21aとは相反する側には組み付け時の抜け止め用の頭部21cが設けられている。
連結板10の中心部には上記多角形断面部21bに対応する、回り止め機構としての多角形断面形状の貫通孔10aが軸線方向に貫通して形成されている。上記連結ピン21の軸部21aは貫通孔10aを挿通可能であり、かつ貫通孔10aに位置した場合には回動自在なサイズとなっている。なお、架空線連結金具19は図21に示す従来例と同様にがいしや引き止めロッド部等を介して電車線20に接続されている。
従って、連結ピン21の多角形断面部21bが貫通孔10aに位置するときは、架空線連結金具19の回動は規制され、架空線連結金具19で連結ピン21を押し込み連結ピン21の軸部21aが貫通孔10aに位置するときは回動可能となる(図13参照)。
また、このように架空線連結金具19の連結板10との取付部分は、対の長板4a、4a間より目視可能となっているので、連結ピン21の頭部21cの点検も容易となる。
上記した多角形断面部21bを設けていることにより、初期組み付け時やメンテナンス時における架空線連結金具19の軸線回りの初期位置について、図示例では矩形であることから90度のピッチにて回動位置が調整可能である。なお、多角形断面部21bの形状は、図示例の矩形に限らず、多角形であれば良く、三角形や六角形など種々の形状とすることができる。この場合、貫通孔10aもこの形状に対応したものとする。
ロッド部4は長板4a、4a間に溶接した、図4、図13に示すようなU字形チャンネル25によって補強される。このU字形チャンネル25は、連結板10の設置側の長板4a、4a間から長板4a、4a内および内筒3内に粉塵、鳥、蛇などが入り込むのを防止するようにも機能する。符号4cは、長板4aに設けられて架設作業を容易化するための架設用治具孔である。このロッド部4の前記架空線連結金具19とは反対側の端部は、ロッド部4を形成する長板4a、4a間が連結板11で連結されている。この連結板11には、後述する長尺プレート24が挿通される長孔11aが形成されている。また、この連結板11の内面には図4および図5に示すような長孔26bを有するコ字状ブラケット26が溶接などによって取り付けられている。
このブラケット26の上下部には図5に示すように一対のピン孔26aが並設されている。これらのピン孔26aのそれぞれには円筒状のローラ27を回転自在に支持したピン28が挿通および支持されている。このピン28端の溝には、ローラ27の抜け止めをする止め輪29が嵌合される。これらのローラ27は取付金具15、ケーシング1の端板1bに連設された長尺プレート24を挟んで転動可能であり、従ってロッド部4が長尺プレート24に沿って回動規制されながら低摩擦状態で進退移動する。
一方、ケーシング1の一端(図1中の左端)には図6および図7に示すような端板1bが溶接により取り付けられ、この端板1bには、ロッド部4内に向けて長尺プレート24が固設されている。本例では、この端板1bの中心部には一本の縦孔30とこれを挟む一対の別の縦孔31とが穿設され、縦孔31には図8に示すような一端の上下部に係止突起15aを持つ取付金具15が端板1bの内側から外へ向かって、図6に示すようにそれぞれ挿入されている。
また、縦孔30には長尺プレート24の一端部が挿入され、この長尺プレート24に形成された取付孔24aと取付金具15に形成された取付孔15bとにボルト32が通されて、これにナット(図示しない)がねじ込まれることで、取付金具15に端板1bを介して長尺プレート24端が連結固定されている。即ち、長尺プレート24は端板1b、取付金具15と一体に連結固定されている。
この場合において、取付金具15および端板1bに一端部が支持された長尺プレート24は、前記連結板11およびブラケット26にそれぞれ形成された長孔11a、26bを通して長板4a、4a間に臨んでいる。そしてブラケット26に取り付けられた前記一対のローラ27は、長尺プレート24をこれの両側面に接するように挟んで、その長尺プレート24に沿って転動自在である。従って、取付金具15、ケーシング1および中筒3に対してロッド部4をその周りに回動させることなく進退移動自在に支持する。
また、ケーシング1の内周に設けられた前記フランジ部1aの下部には、図9および図10に示すようにケーシング1内の水抜きをするための水抜き孔1cが形成されている。また、ケーシング1の前記フランジ部1a側とは反対側の外周には、上下部の2箇所に円弧状の補強板34が溶接によって固着されている。そしてケーシング1および前記補強板34には挿入孔35、36が互いに連通するように設けられている。これらの挿入孔35、36には、図3に示すようなU字ボルト37が挿通され、補強板34から外へ突出するU字ボルト37端に抜け止め用のカラー38がリベット38a止めされている。
そして、このケーシング1に取り付けられたU字ボルト37の、一対の平行部37a、37aの間隔は、端板1bから突出する2枚の取付金具15と長尺プレート24とを重ねた厚さに略等しく、従って、取付金具15は平行部37a、37aに挟まれて、ケーシング1に対し回動規制されている。なお、2枚の取付金具15に設けられた取付孔15c(図6、図8参照)には、支柱等にテンションバランサを取り付けるための取付部材に連続するためのボルト・ナット39(図1、図3参照)が装着される。
また、中筒3の内周に設けられた前記フランジ部3aの下部には、図11および図12に示すように、中筒3内の水抜きをする切欠3cが形成されている。なお、各切欠1c、3cにはケーシング1内および中筒3内に浸入した水を潤滑グリースや塵埃などと分離して排出するフィルター13(図14参照)が設置されている。
中筒3のフランジ部3bおよびロッド部4の周りの連結板11には、コイルばね6、7の端部を支持するばね座43、44が当接されている。これらのばね座43、44は潤滑油を収納した油溝Pを介在するように重ねられている。前記コイルばね6、7に負荷を加えるとその周りに回転力が発生し、これらとばね支持部との接触面に大きな摩擦力が発生し、座屈現象が誘発されることがある。前記油溝Pを通じて前記接触面に油を供給するこことで、前記コイルばね6、7の伸縮時の挙動を安定化させることができる。この結果、前記のような座屈の発生を回避することができる。
かかる構成になる架空線用テンションバランサでは、風や雪または着氷などによる外力が作用しても、ケーシング1の端板1bに固設した長尺プレート24をロッド部4側の一対のローラ27が転動自在に挟持しているため、ロッド部4が回動するのを防止できる。同様に、電車の通過時や強風時に振動が発生しても、ロッド部4の回動が規制され、従って電車線20のねじれを防止できる。また、電車線にねじれが発生してヨーク22(図21参照)を軸線回りにねじる方向の力が作用してもその電車線20にねじれが発生するのを防止できる。また、長尺プレート24は、回転自在の一対のローラ27、27間に挟持されて回り止めを図っているので、ロッド部4とケーシング1との間にねじれが生じ、長尺プレート24とローラ27間にそのねじれを止めようと力が作用しローラ27と接触しても、一対のローラ27、27が転動してガイドするため、ロッド部4の往復動(進退)に影響を与えず円滑となる。なお、電車線が気温変化などにより大きく伸長した場合にも、長尺プレート24とローラ27とが外れないように、長尺プレート24の長さが設定される。
また、ロッド部4を構成する一対の長板4a、4a間に挿通されるように長尺プレート24が組み付けられることから、架設(取り付け)作業を簡素化し得る。また、ロッド部4が回動しないことから、目盛板8が必ず下方に位置し、目盛板8上の表示を常に定位置から確認することができ、保守・点検作業を容易に行い得る。そして本実施形態ではロッド部4自体が回動することがないため、上記目盛り板8用のガイドを設けなくても良く、部品点数の削減および製造コストの低減を図ることができる。また、ケーシング1および中筒3の最下部に水抜き孔1c、3cを設けた場合に、その水抜き孔1c、3cが常に最下部位置にあることになり、水抜きを確実かつ安定して行い得る。
図15乃至図20は本発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、長尺プレート24を取り付けるケーシング1の端板1bの中心部に、図17に示すように、1本の水平孔45と2本の垂直孔46とが互いに交差するように設けられ、、中央上部の外側面には2つの切欠47を持つスペーサ48が溶接されている。
2本の垂直孔46、46には、図18に示すようなコ字状の取付ブラケット49の対向片49a、49aが挿通されている。これらの対向片49a、49aを繋ぐ連続片49bに形成された縦孔50を通して前記長尺プレート24の一端が端板1bの前記水平孔45に嵌合されている。また、ケーシング1端の上下部の外周には図19に示すような円弧状の補強板34が設けられ、上部の補強板34上には平板上の補強片51が載置されている。
そして、補強板34、補強片51およびケーシング1の各対応部位に設けられた各一対の孔35、36、52には取付棒53が挿通されている。これらの取付棒53の上端はかしめ部54によって補強片51を保持し、下端にはカラー55が取り付けられて、各孔からの抜け止めがなされている。なお、端板1bの外側面では、前記取付棒53がスペーサ48の切欠47にガイドされている。これにより端板1bは取付棒53によってケーシング1内に保持されている。この端板1bは、ケーシング1に溶接等で固設されてもよいのは、当然であり、その場合の取付棒53は、補強としての役目も果たす。
前記端板1b側であって、ロッド部4を構成する2枚の長板4a、4c間には、上下一対の水平ピン56が架設され、この水平ピン56には円筒状のローラ57が回転自在に取り付けられている。そしてこれらのローラ57は、ロッド部4の移動とともに前記長尺プレート24に沿って転動可能となっている。これにより、ローラ57の取り付けのために、図1、図4、図5に示すようなブラケット26が不要となる。また、取付金具15に取り付けられた長尺プレート24はロッド部4のねじり方向への回転を規制することとなる。
一方、ロッド部4の右端の突出端部にはロッド部4を形成する長板4a、4aを連結する連結板10が一体に設けられ、この連結板10に連結ピン58を介して架空線連結金具19が支持されている。図20に示すようにこの連結ピン58は円形断面の軸部58aの一端にU字状の架空線連結金具19が固設されており、その軸部58aの他端部は連結板10の内側面に固着されたカム部材59の中心部を貫通して、その他端には凹凸状のカム部58bが形成されている。
連結ピン58の軸部58aは連結板10に形成された貫通孔10a内に回動自在に支持されている。したがって、ロッド部4におけるカム部材59の対向部位には、このカム部材59に対して回転する方向に繋ぎ替え可能なカム部58bが取り付けられている。そして軸部58aと連結板10との間には、ばね60が介在されて、カム部58bをカム部材59に対し当接する方向に付勢している。
従って、初期組付け時やメンテナンス時における架空線連結金具19の軸線周りの初期位置を、カム部58bのカム部材59に対する嵌合位置を変えることで、調整することができる。この場合には、架空線連結金具19とともに連結ピン58を回動操作するだけで、カム部材59に対しカム部58bがばね60に抗して進退して回動できるので、その連結ピン58を所定の角度、例えば90度の角度分、手動で回動操作できる。
続いて、その回動位置で前記回動操作を止めることで、ばね60のばね力で自動的にカム部材59に対しカム部58bが嵌合する。ここでカム部58bおよびカム部材59の嵌合部(凹凸部)を多段に亘って設けることで、60度や30度といった所定の角度ピッチでの嵌合位置の調整を行うことができる。
このように、本実施形態では、空中に架設された架空線(電車線)20の張力を一定に保持するための架空線用テンションバランサが、テレスコピック状に設けられた複数の筒状部材1、3および一対の対向する長板4a、4aからなるロッド部4と、複数の筒状部材1、3におけるそれぞれの内側のものおよびロッド部4を没入方向に弾発付勢するべく各筒状部材1、3間および最も内側の筒状部材3とロッド部4との間にそれぞれ同心的に介装された圧縮コイルばね6、7とを有し、各筒状部材1、3の中心部およびロッド部4に対し同軸的に設けられ、最外周の筒状部材(ケーシング)1の端板1bに固設され、かつ各筒状部材1、3の中心部および前記ロッド部4に対し同軸的に設けられた長尺プレート24を、ロッド部4に設けられた一対のローラ28間に挟みながら、ロッド部4の移動を長尺プレート24に沿ってガイドする構成とした。
従って、端板1bの支柱等に固定される取付金具15が設けられた側とは反対側の中央部に溶接等により固着された前記長尺プレート24は、前記一対の長板4a、4a間に回転自在に支持された一対のローラ28に挟まれて、ロッド部4の往復動をガイドするため、ケーシングとしての筒状部材1(取付金具15)に対しロッド部4を構成する長板4aの回り止めがなされ、従って、電車の通過時や強風時に発生する振動あるいは風雪や着氷による外力が電車線に作用しても、その電車線20のねじれの発生を回避することができることとなる。
本例での連結ピンの回動規制手段とその解除手段は、図20に示すようにロッド部4のプレート10の内面にカム部材59が固設され、このプレート10にはカム部材59の中心孔に連通する貫通孔10aが設けられている。架空線連結金具19が固設された連結ピン58の軸部58aは、プレート10の貫通孔10aから挿入されカム部材59を貫通して摺動可能に挿通され、その軸部58aの先端には、前記カム部材59に対し嵌合・離間可能なカム部58bが固設され、また、軸部58aには、カム部材59に対しカム部58bを嵌合方向に付勢するばね60が設けられて構成されている。
この構成によれば、カム部58bがばね60のばね力で押圧されてカム部材59に嵌合しているときは、ロッド部4に対する架空線連結金具19の回動が規制され、ばね60のばね力に抗して連結ピン58を押し込みカム部58bをカム部材59より離間すると、架空線連結金具19の回動規制が解除される。
そして、前記各筒状部材1、3の中心部および前記一対の長板4a、4a間に同軸的に設けられ、かつ架空線連結用の架空線連結金具19が前記一対の長板4a、4aに対して相対的に回動することを防止するべく、架空線連結金具19と前記長板4a端との間に回り止め部材が設けられたことで、筒状部材1、3に対して架空線連結金具19が回り止めされるため、架空線20側のねじれや外力により架空線連結金具19部材が回動することを防止できる。
この場合において、前記回動規制手段とその解除手段を備える連結ピン58を、図20に示すようなロッド部4の内面に設けられたカム部材59と、架空線連結金具19に設けられてカム部材59に対し嵌合自在のカム部58bと、カム部材59に対して前記カム部58bを嵌合方向に付勢するばね60と、から構成した場合には、前記各筒状部材1、3およびロッド部4に対して架空線連結金具19を任意の角度位置で回り止め可能になり、架空線(電車線)20の架設当初およびその後に架空線20のねじれが生じた場合にも、前記カム部材59に対する前記カム部58bの嵌合位置を替えることなどによって、そのねじれを解消できるとともに、そのねじれ解消後は前記回り止め作用を確実に発揮することができる。
本発明は電車線の伸縮に対し圧縮コイルばねの円滑な伸縮により電車線のテンションをメンテナンスフリーにて略一定に保持可能にするとともに、前記伸縮時における圧縮コイルばね端における相対的周方向変位にもとづく筒状部材間でのねじれに伴う電車線の傾きを確実に防止できるという効果を有し、電車線の張力を保持するための設備に用いられる架空線用テンションバランサ等に有用である。
1 ケーシング
1a、3a フランジ部
1b 端板
3 中筒
4 ロッド部
4a 長板
6、7 圧縮コイルばね
10、11 連結板
10a 貫通孔
13 フィルター
15 取付金具
17 孔あきブラケット
19 架空線連結金具(フック部材)
20 電車線
21、58 連結ピン(回動/回動規制部材)
21a 軸部
21b 多角形断面部
21c 頭部
24 長尺プレート
28、57 ローラ
58b カム部
59 カム部材
60 ばね

Claims (5)

  1. 空中に架設された架空線の張力を一定に保持するための架空線用テンションバランサであって、
    前記架空線用テンションバランサが、テレスコピック状に設けられた複数の筒状部材およびその中心部に同軸的に設けられた一対の対向する長板からなるロッド部と、前記複数の筒状部材におけるそれぞれの内側のものおよび前記ロッド部を没入方向に弾発付勢すべく前記各筒状部材間および最も内側の筒状部材と前記ロッド部との間にそれぞれ同心的に介装された圧縮コイルばねと、前記最も外側の筒状部材の一端側に固設された端板に固着され、前記一対の対向する長板からなるロッド部に対し同軸的に延出する長尺プレートと、前記ロッド部の一対の長板間に回動自在に設けられた一対のローラとを具備し、
    前記長尺プレートを、前記ロッド部に設けた一対のローラ間に挟みながら、該ロッド部の移動を長尺プレートに沿ってガイドすることを特徴とする架空線用テンションバランサ。
  2. 前記架空線用テンションバランサは、前記ロッド部の外出側の端部に架空線連結用の架空線連結金具が回動可能に取付けられ、該架空線連結金具は、ロッド部に対し、回動規制手段とその解除手段を備えることを特徴とする請求項1記載の架空線用テンションバランサ。
  3. 前記架空線連結金具の回動規制手段とその解除手段は、前記ロッド部に固設されたカム部材と、前記架空線連結金具に設けられて前設カム部材に対し嵌合・離間可能なカム部と、前記カム部材に対しカム部を嵌合方向に付勢するばね、とを備え、
    前記カム部がばねのばね力で押圧されてカム部材に嵌合してロッド部に対し架空線連結金具の回動を規制し、ばねのばね力に抗してカム部をカム部材より離間すると架空線連結金具の回動規制が解除されることを特徴とする請求項2記載の架空線用テンションバランサ。
  4. 前記ロッド部の外出側の端部に回動可能に取り付けられ、その回動規制手段とこの解除手段を備える架空線連結金具は、ロッド部との取付部分が外部より目視可能となり、点検を可能としてなることを特徴とする請求項2または3に記載の架空線用テンションバランサ。
  5. 前記筒状部材は、水抜き孔を備え、該水抜き孔には筒状部材内に充填したグリスの漏洩を防止するフィルターが設けられていることを特徴とする請求項1記載の架空線用テンションバランサ。
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