電解コンデンサの一形態に、陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙を介在させて巻き取ることにより形成された電解コンデンサがある。
ここで、そのような巻回式の電解コンデンサとして、2端子(陽極1端子+陰極1端子)構造の電解コンデンサの製造方法について説明する。まず、図15に示すように、それぞれ所定の長さを有する帯状の陽極箔103、陰極箔104および2つのセパレータ紙105,106が用意される。陽極箔として、たとえば、誘電体酸化被膜を形成したアルミニウム箔が適用され、陰極箔として、アルミニウム箔が適用される。
陽極箔103の長手方向の所定の位置には陽極リードタブ端子110が接続され、陰極箔104の長手方向の所定の位置には陰極リードタブ端子113が接続されている。図16および図17に示すように、陽(陰)極リードタブ端子110,113には、円柱状のボス部116aと、陽(陰)極箔103,104に接続される板状の接続部116bと、陽(陰)極端子となる円柱状のリード線116cが設けられている。
図15に示すように、陽極箔103および陰極箔104等は、陽極箔103と陰極箔104との間に一方のセパレータ紙105が挟み込まれるとともに、一方のセパレータ紙105と他方のセパレータ紙106との間に陽極箔103が挟みこまれる態様で配置される。
次に、図18に示すように、配置された陽極箔103、陰極箔104およびセパレータ紙105,106の一端側を巻芯131a,131bに挟み込む。次に、その状態で巻芯131a,131bを右回り(時計回り)に回転させることにより、一端側から陽極箔103および陰極箔104等が巻き取られて、巻回式の電解コンデンサが形成されることになる。
ところで、電解コンデンサには、等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)と称されるインダクタンス成分がある。このESLは周波数が高くなるにしたがって大きくなり、電解コンデンサはコンデンサとしての機能を発揮できなくなる。このため、高周波領域で使用される電解コンデンサには、より低いESLが求められることになる。また、電解コンデンサには、等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)と称される抵抗成分があり、より低いESRが求められる。
ESRとESLを低減させるために、リードタブ端子として、複数のリードタブ端子を備えたマルチ端子の電解コンデンサがある。次に、そのようなマルチ端子の電解コンデンサとして、4端子(陽極2端子+陰極2端子)構造の電解コンデンサの製造方法について説明する。
図19に示すように、陽極箔103の長手方向の所定の位置にそれぞれ第1陽極リードタブ端子111と第2陽極リードタブ端子112が接続され、陰極箔104の長手方向の所定の位置にそれぞれ第1陰極リードタブ端子114と第2陰極リードタブ端子115が接続される。陽極箔103および陰極箔104等は、2端子の電解コンデンサの場合と同様に配置されて、その一端側が巻芯131a,131bに挟み込まれる(図18参照)。その状態で巻芯131a,131bを右回りに回転させることにより、一端側から陽極箔103および陰極箔104等が巻き取られて、図20に示すように、コンデンサ素子102が形成される。
次に、コンデンサ素子102に対して、陽極箔103および陰極箔104の切断面等に化成処理等の所定の処理が施される。次に、コンデンサ素子102に、封止用ゴムパッキング122(図21参照)が装着される。封止用ゴムパッキング122には、リードタブ端子111,112,114,115の位置に対応した4つの開口部122a(図21参照)が形成されている。封止用ゴムパッキング122は、リードタブ端子111,112,114,115のリード線116cを開口部122aに挿通させる態様でコンデンサ素子102に装着される。
封止用ゴムパッキング122が装着されたコンデンサ素子102は、所定の大きさの有底のアルミニウムケース120(図21参照)に収納される。次に、アルミニウムケース120の開口端側が横絞りとカールによって封止されて、所定のエージング処理が行なわれる。次に、アルミニウムケース120のカール面にプラスチック製の座板124が装着される。座板124には、リードタブ端子111,112,114,115の位置に対応した4つの開口部124a(図21参照)が形成されている。
その後、図21に示すように、座板124の開口部124aより突出した各リード線116cを電極端子として、プレス加工と折り曲げ加工を施すことで、4端子構造の電解コンデンサ101が完成する。なお、2〜4端子等のマルチ端子構造の電解コンデンサを開示した文献の一例として、特許文献1がある。
しかしながら、従来のマルチ端子構造の電解コンデンサでは次のような問題点があることが発明者によって明らかにされた。
上述したように、特に、高周波領域で使用される電解コンデンサには、より低いESLが求められる。このESLは、陽(陰)極リードタブ端子のリード線のピッチに依存することから、ESLを小さくするうえでは、4本のリード線の各ピッチを同じピッチにして、各陽(陰)極リードタブ端子をバランスよく配置することが求められる。
すなわち、電解コンデンサ101を陽(陰)極リードタブ端子側から見て、第1陽極リードタブ端子111、第2陽極リードタブ端子112、第1陰極リードタブ端子114、第2陰極リードタブ端子115を正方形(あるいは矩形)の頂点に対応する位置に配置させることが求められる。
ここで、図22に示すように、1枚の陽極箔103に2本の陽極リードタブ端子111,112を、巻き取り後に正方形の頂点に対応する位置に配置される場合を想定する。そうすると、電解コンデンサの直径が小さくなるほど、2本の陽極リードタブ端子111,112間の距離PLは短くなる。たとえば、直径6.3mmの電解コンデンサでは、2本の陽極リードタブ端子111,112間の距離PLを数mmに設定する必要がある。
ところが、直径6.3mmの電解コンデンサでは、陽極箔103の長さLは60〜70mm程度であるため、そのような長さLの陽極箔103に、数mm程度の間隔(距離PL)を隔てて2本の陽極リードタブ端子111,112を精度よく接続することが困難になる。
一方、ESRを低く抑えるには、陽極箔に接続される陽極リードタブ端子に対して一方側に延在する陽極箔の部分の抵抗値と他方側に延在する陽極箔の部分の抵抗値が同じになるように、陽極リードタブ端子を陽極箔に接続することが望ましい。
すなわち、2本の陽極リードタブ端子は、その間隔(距離PL)の半分の距離、陽極箔の一端と直近の陽極リードタブ端子との距離および陽極箔の他端と直近の陽極リードタブ端子との距離が、ほぼ等しくなるように配置されることが望ましいとされる。このため、1枚の陽極箔に2本の陽極リードタブ端子を接近させて接続させてしまうと、実質的に1本の陽極リードタブ端子を接続させている場合と同じになってしまい、特に、高周波領域において、電解コンデンサとしての特性が損なわれることになる。
そこで、発明者は、このような不具合を解消しようとして、2本の陽極リードタブ端子間の間隔を確保するために以下のような評価を行った。まず、陽極箔等が巻き取られた状態で第1陽極リードタブ端子が配置されることになる周方向位置を第1周方向位置とし、第2陽極リードタブ端子が配置されることになる周方向位置を第2周方向位置とする。
図23に示すように、陽極箔103として、第1陽極リードタブ端子111と第2陽極リードタブ端子112との間隔PLを、第1周方向位置に対応する陽極箔103の部分と、第1周方向位置に対して第2周方向位置に対応する直近の陽極箔103の部分を巻き取り、さらに、陽極箔103をもう1周分巻き取った後の第2周方向位置に対応する陽極箔103の部分との間隔に設定した陽極箔103を用意した。
この陽極箔103等を用いて巻き取り評価を行ったところ、図24に示すように、第1陽極リードタブ端子111の径方向位置に対して、第2陽極リードタブ端子112の径方向位置がずれてしまうという新たな問題が発生することが判明した。なお、第1陽極リードタブ端子111の径方向位置に対して、第2陽極リードタブ端子112の径方向位置が一致する場合、つまり、4本のリード線116cの各ピッチを同じピッチにして、各陽(陰)極リードタブ端子をバランスよく配置する場合を図24おいて点線で示す。
上述したように巻回式の電解コンデンサでは、陽極箔、陰極箔および2枚のセパレータ紙は、その一端側が巻芯によって挟み込まれ、その状態で一端側から巻き取られる。このため、2周目以降では、それまでに巻き取られた陽極箔等の部分の上にさらに陽極箔等が巻き取られることになる。
そうすると、周方向位置は同じでも、最初の方で巻き取られる部分と最後の方で巻き取られる部分とでは径方向位置が異なり、後で巻き取られるにしたがって、巻き始め(中心)からの径方向距離は長くなる。このため、図24に示すように、第2陽極リードタブ端子112は、周方向では、第1陽極リードタブ端子111が配置される第1周方向位置に対して所定の第2周方向位置に配置されるものの、径方向では、第1周方向位置に対して第2周方向位置に対応する直近の陽極箔103の部分に接続された場合の径方向位置よりも外側に配置されることになる。つまり、第2陽極リードタブ端子112が、第1陽極リードタブ端子111の径方向位置よりも外側に配置されることになる。
このことは、第1陰極リードタブ端子および第2陰極リードタブ端子についても同じことがいえ、陽極箔等が巻き取られたコンデンサ素子102では、2本の陽極リードタブ端子111,112と2本の陰極リードタブ端子114,115が、正方形の頂点に対応する位置に配置されないことになる。
2本の陽極リードタブ端子111,112と2本の陰極リードタブ端子114,115が正方形の頂点に対応する位置からずれてしまうと、各陽(陰)極リードタブ端子111,112,114,115間のピッチが変わり、ESLが高くなって電解コンデンサとしての特性が低下することになる。また、封止用ゴムパッキング122の開口部122aや座板124の開口部124aに、各陽(陰)極リードタブ端子111,112,114,115を挿通させにくくなって、生産性が阻害されることになる。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、電解コンデンサとしての特性を保持しながら、陽(陰)極リードタブ端子の位置ずれが解消される電解コンデンサを提供することである。
本発明に係る電解コンデンサは、それぞれ帯状の陽極箔および陰極箔を巻回した電解コンデンサであって、陽極箔および陰極箔と、第1陽極リードタブ端子と、第2陽極リードタブ端子と、第1陰極リードタブ端子と、第2陰極リードタブ端子とを備えている。陽極箔および陰極箔は、長手方向の一端側から互いに対向させながら所定の向きに巻き取られている。第1陽極リードタブ端子は、陽極箔の一端側から第1距離を隔てられた陽極箔の部分に接続され、巻き取られた状態で所定の第1周方向位置に配置される。第2陽極リードタブ端子は、陽極箔の一端側から第1距離の距離よりも長い第2距離を隔てられた陽極箔の部分に接続され、巻き取られた状態で第1周方向位置に対して所定の第2周方向位置に配置される。第1陰極リードタブ端子は、陰極箔の一端側から第3距離を隔てられた陰極箔の部分に接続され、巻き取られた状態で第1周方向位置および第2周方向位置に対して所定の第3周方向位置に配置される。第2陰極リードタブ端子は、陰極箔の一端側から第3距離の距離よりも長い第4距離を隔てられた陰極箔の部分に接続され、巻き取られた状態で第3周方向位置に対して所定の第4周方向位置に配置される。第1陽極リードタブ端子および第2陽極リードタブ端子のそれぞれは、陽極箔に接触させる態様で接続される陽極接続部と、陽極接続部と電気的に接続されて陽極端子となる陽極リード線とを含む。第1陰極リードタブ端子および第2陰極リードタブ端子のそれぞれは、陰極箔に接触させる態様で接続される陰極接続部と、陰極接続部と電気的に接続されて陰極端子となる陰極リード線とを含む。第2陽極リードタブ端子は、第1周方向位置に対応する陽極箔の部分から、陽極箔を所定の長さ分巻き取った後の第2周方向位置に対応する陽極箔の部分に接続される。第1陽極リードタブ端子および第2陽極リードタブ端子は、陽極箔が巻き取られた状態で、陽極リード線の径方向位置が陽極接続部の径方向位置と異なる位置になるように形成される。第2陰極リードタブ端子は、第3周方向位置に対応する陰極箔の部分から、陰極箔を所定の長さ分巻き取った後の第4周方向位置に対応する陰極箔の部分に接続される。第1陰極リードタブ端子および第2陰極リードタブ端子は、陰極箔が巻き取られた状態で、陰極リード線の径方向位置が陰極接続部の径方向位置と異なる位置になるように形成される。
本発明に係る他の電解コンデンサは、それぞれ巻回される帯状の陽極箔および陰極箔と、4つのリードタブ端子とを有している。4つのリードタブ端子は、陽極箔および陰極箔のいずれかに接触する態様で接続される接続部および接続部に電気的に接続されて端子となるリード線をそれぞれ含んでいる。その4つのリードタブ端子は、陽極箔および陰極箔が巻回された状態で、リード線が接続部に対して径方向位置を外側にシフトさせた位置に配置される態様のリードタブ端子と、リード線が接続部に対して径方向位置を内側にシフトさせた位置に配置される態様のリードタブ端子とを備えている。
本発明に係る電解コンデンサによれば、第1陽(陰)極リードタブ端子および第2陽(陰)極リードタブ端子は、陽(陰)極箔が巻き取られた状態で、陽(陰)極リード線の径方向位置が陽(陰)極接続部の径方向位置と異なる位置になるように形成される。これにより、第1陽(陰)極リードタブ端子の陽極リード線の径方向位置を外周側に、かつ第2陽(陰)極リードタブ端子の陽(陰)極リード線の径方向位置を内周側にシフトすることが可能である。このため、第1陽(陰)極リードタブ端子の陽(陰)極接続部の径方向位置が、第2陽(陰)極リードタブ端子の陽(陰)極接続部の径方向位置よりも内周側に配置されても、第1陽(陰)極リードタブ端子の陽(陰)極リード線の径方向位置と、第2陽(陰)極リードタブ端子のリード線の径方向位置とを互いに近づけることができる。したがって、第1(2)陽(陰)極リードタブ端子のリード線を、略正方形の頂点に対応する位置に配置させることができるので、陽(陰)極リードタブ端子の位置ずれを解消することができる。また、第1(2)陽(陰)極リードタブ端子間の4本の陽(陰)極リード線の各ピッチがほぼ一定となるので、ESLが小さくなり、電解コンデンサとしての特性を保持することができる。
本発明に係る他の電解コンデンサによれば、4つのリードタブ端子は、陽極箔および陰極箔が巻回された状態で、リード線が接続部に対して径方向位置を外側にシフトさせた位置に配置される態様のリードタブ端子と、リード線が接続部に対して径方向位置を内側にシフトさせた位置に配置される態様のリードタブ端子とを備えている。これにより、リードタブ端子のリード線の径方向位置を合わせることができる。その結果、製造時における位置合わせが容易になり、また、電解コンデンサとしての特性を保持することができる。
ここでは、第1陽(陰)極リードタブ端子および第2陽(陰)極リードタブ端子として、片側プレス端子を適用した電解コンデンサについて説明する。
図1(A)および図1(B)に示すように、片側プレス端子18は、2つの同じ金型のうち、主として一方の金型によって、両側プレス端子116のリード線116c(図16および図17参照)に対して非対称の形状に成型されており、図1(A)では、接続部18bに対するリード線18cのシフト量(距離S1)が相対的に小さい片側プレス端子が示され、図1(B)では、シフト量(距離S2)が相対的に大きい片側プレス端子が示されている。いずれの片側プレス端子18も、円柱状のボス部18a、陽(陰)極箔に接続される板状の接続部18bおよび陽(陰)極端子となる円柱状のリード線18cが成型されている。リード線18cはボス部18aの一端側に設けられ、接続部18bはボス部18aの他端側に設けられている。
なお、図1において、板状の接続部18bは紙面に垂直な方向に配置されている。また、この片側プレス端子18では、陽(陰)極箔への接続面として、説明上、接続部18bに対してリード線18cがシフトしている側と反対の側に位置する接続部18bの接続面を第1接続面18dとし、リード線18cがシフトしている側に位置する接続部18bの接続面を第2接続面18eとする。後述するように、片側プレス端子18では、陽(陰)極箔に接続される接続部18bの位置からリード線18cおよびボス部18aを径方向にシフトさせた位置に配置させることができる。
次に、電解コンデンサの製造方法について説明する。まず、図2に示すように、陽極箔3の長手方向の所定の位置に第1陽極リードタブ端子11として片側プレス端子18が接続され、第2陽極リードタブ端子12として片側プレス端子18が接続される。また、陰極箔4の長手方向の所定の位置に第1陰極リードタブ端子14として片側プレス端子18が接続され、第2陰極リードタブ端子15として片側プレス端子18が接続される。
このとき、第1陽極リードタブ端子11は、陽極箔3の一端側(本実施の形態では、図2において陽極箔3の左側)から所定の距離(第1距離)を隔てられ、巻き取られた状態で所定の第1周方向位置に配置されることになる陽極箔3の部分に接続される。また、第2陽極リードタブ端子12は、陽極箔の一端側から所定の距離よりも長い距離(第2距離)を隔てられ、巻き取られた状態で第1周方向位置に対して所定の第2周方向位置に配置されることになる陽極箔3の部分に接続される。
その第1陽極リードタブ端子11と第2陽極リードタブ端子12との間隔PLは、陽極箔3における第1周方向位置に対応する陽極箔3の部分と、第1周方向位置に対して第2周方向位置に対応する直近の陽極箔3の部分を巻き取り、さらに、陽極箔3をもう1周分巻き取った後の第2周方向位置に対応する陽極箔3の部分との間隔に設定される。
また、第1陰極リードタブ端子14は、陰極箔4の一端側から所定の距離(第3距離)を隔てられ、巻き取られた状態で、第1周方向位置および第2周方向位置に対して所定の第3周方向位置に配置されることになる陰極箔4の部分に接続される。また、第2陰極リードタブ端子15は、陰極箔の一端側から所定の距離よりも長い距離(第4距離)を隔てられ、巻き取られた状態で第3周方向位置に対して所定の第4周方向位置に配置されることになる陰極箔4の部分に接続される。
その第1陰極リードタブ端子14と第2陰極リードタブ端子15との間隔NLは、陰極箔4における第3周方向位置に対応する陰極箔4の部分と、第3周方向位置に対して第4周方向位置に対応する直近の陰極箔4の部分を巻き取り、さらに、陰極箔4をもう1周分巻き取った後の第4周方向位置に対応する陰極箔4の部分との間隔に設定される。ここで、周方向とは、巻き始めの起点とされる陽極箔3および陰極箔4等の一端側を中心部とする周方向を意味し、また、径方向とは、その中心部から周方向とほぼ直交する方向を意味する。
次に、図2に示すように、陽極箔3および陰極箔4は、陽極箔3と陰極箔4との間に一方のセパレータ紙5が挟み込まれるとともに、一方のセパレータ紙5と他方のセパレータ紙6との間に陽極箔3が挟みこまれる態様で配置される。
次に、図3に示すように、配置された陽極箔3、陰極箔4およびセパレータ紙5,6の一端側を、矢印51に示すように、巻芯31aと巻芯31bとで挟み込む。次に、その状態で、矢印52に示すように、巻芯31a,31bを右回り(時計回り)に回転させることにより、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14および第2陽(陰)極リードタブ端子12,15が、陽(陰)極箔3,4の内周面に位置する態様で、一端側から陽極箔3および陰極箔4等が巻き取られて、図4に示すように、コンデンサ素子2が形成される。
次に、コンデンサ素子2に対して、陽極箔等の切断面等に化成処理が施され、さらに、温度150℃〜300℃程度の熱処理が施される。次に、重合により導電性高分子となるモノマーとして、たとえば、3,4−エチレンジオキシチオフェンと、酸化剤溶液として、たとえば、p−トルエンスルホン酸第二鉄アルコール溶液との混合溶液をコンデンサ素子2に含浸させる。その後、熱化学重合させることにより、コンデンサ素子2の両極間に導電性高分子層(図示せず)が形成される。なお、電解質としては、この他に、たとえば、ポリピロール、ポリフラン、または、ポリアニリン等の導電性高分子材料、あるいは、TCNQ錯塩(7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)を用いてもよい。
次に、図5に示すように、コンデンサ素子2に封止用ゴムパッキング22が装着される。封止用ゴムパッキング22には、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14および第2陽(陰)極リードタブ端子12,15のそれぞれに対応した所定の位置に4つの開口部22aが形成されている。図6に示すように、封止用ゴムパッキング22は、第1(2)陽(陰)極リードタブ端子11,12,14,15のリード線18cおよびボス部18aを、対応する開口部22aに挿通させることによってコンデンサ素子2に装着される。
次に、封止用ゴムパッキング22が装着されたコンデンサ素子2は、所定の大きさの有底のアルミニウムケース20(図7参照)に収納される。次に、アルミニウムケース20の開口端側が横絞りとカールによって封止されて、所定のエージング処理が行なわれる。次に、アルミニウムケース20のカール面にプラスチック製の座板24が取り付けられる。
図8に示すように、座板24には、第1(2)陽(陰)極リードタブ端子11,12,14,15の位置に対応した4つの開口部24aが形成されている。座板24は、第1(2)陽(陰)極リードタブ端子11,12,14,15のリード線18cを、対応する開口部24aに挿通させることによってコンデンサ素子2に装着される。その後、図7および図8に示すように、座板24の開口部24aより突出した各リード線18cを電極端子として、プレス加工と折り曲げ加工を施すことで、4端子構造の電解コンデンサ1が完成する。
上述した電解コンデンサでは、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14として、片側プレス端子18を適用することで、そのリード線18cの径方向位置を外側にシフトさせ、かつ第2陽(陰)極リードタブ端子12,15として、片側プレス端子18を適用することで、そのリード線18cの径方向位置を内側にシフトさせて、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14のリード線18cの径方向位置と、第2陽(陰)極リードタブ端子12,15のリード線18cの径方向位置とを合わせることができる。
このことについて説明する。まず、比較例として、第1陽(陰)極リードタブ端子および第2陽(陰)極リードタブ端子として図16および図17に示す両側プレス端子を適用した場合では、図9に示すように、第2陽極リードタブ端子112(リード線116c)は、周方向では、第1陽極リードタブ端子111(リード線116c)が配置される第1周方向位置に対して所定の第2周方向位置に配置されるものの、径方向では、陽(陰)極箔3,4が1周分巻き取られる分、第2陽極リードタブ端子112(リード線116c)が、第1陽極リードタブ端子111(リード線116c)の径方向位置よりも外側に配置されてしまう。なお、図9等において、巻き始めの起点とされる陽極箔3および陰極箔4等の一端側を中心部Cで示す。
同様に、第2陰極リードタブ端子115(リード線116c)は、周方向では、第1陰極リードタブ端子114(リード線116c)が配置される第3周方向位置に対して所定の第4周方向位置に配置されるものの、径方向では、陽(陰)極箔3,4等が1周分巻き取られる分、第2陰極リードタブ端子115(リード線116c)が、第1陰極リードタブ端子114(リード線116c)の径方向位置よりも外側に配置されてしまう。なお、この比較例に係る電解コンデンサの断面構造を、図10および図11のそれぞれの下段に示す。
これに対して、上述した電解コンデンサでは、図10および図11のそれぞれの上段に示すように、第1陽(陰)極リードタブ端子11として、片側プレス端子18が適用され、しかも、その接続部18bの第2接続面18eが陽(陰)極箔3の内周面3aに接触する態様で片側プレス端子18が陽(陰)極箔3に接続される。このため、接続部18bの径方向位置は、両側プレス端子116を適用した場合の接続部116bの径方向位置と変わらないものの、リード線18c(ボス部18a)の径方向位置は、図10および図11のそれぞれの下段に示される両側プレス端子116を適用した場合のリード線116c(ボス部116a)の径方向位置よりも、コンデンサ素子2の中心(陽極箔3等の巻き始め)Cの側とは反対の側(外側)へ距離Sだけシフトすることになる。
さらに、第2陽(陰)極リードタブ端子12,15として、片側プレス端子18が適用され、しかも、その接続部18bの第1接続面18dが陽(陰)極箔3,4の内周面3a,4aに接触する態様で片側プレス端子18が陽(陰)極箔3,4に接続される。このため、接続部18bの径方向位置は、両側プレス端子116を適用した場合の接続部116bの径方向位置と変わらないものの、リード線18c(ボス部18a)の径方向位置は、図10および図11のそれぞれの下段に示される両側プレス端子116を適用した場合のリード線116c(ボス部116a)の径方向位置よりも、コンデンサ素子2の中心(陽極箔3等の巻き始め)Cの側(内側)へ距離Sだけシフトすることになる。
これにより、図9に示すように、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14としての片側プレス端子18のリード線18c(ボス部18a)の径方向位置が外側にシフトし、かつ第2陽(陰)極リードタブ端子12,15としての片側プレス端子18のリード線18c(ボス部18a)の径方向位置が内側にシフトする。このため、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14としての片側プレス端子18のリード線18c(ボス部18a)の径方向位置と、第2陽(陰)極リードタブ端子12,15としての片側プレス端子18のリード線18c(ボス部18a)の径方向位置とが互いに合わせられて、第1(2)陽(陰)極リードタブ端子11,12,14,15のリード線18cを、正方形の頂点に対応する位置に配置させることができる。このリード線18cの平面配置パターンとしては正方形に限られないが、1つの頂点のなす角度θは、70〜110°が好ましく、90°近傍がより好ましい。なお、平面配置パターンとは、電解コンデンサ1における、第1(2)陽(陰)極リードタブ端子11,12,14,15が突出している側を平面視したときのリード線の配置パターンをいう。
その結果、各第1(2)陽(陰)極リードタブ端子11,12,14,15間のピッチがほぼ一定となってESLが小さくなり、電解コンデンサとしての特性が低下してしまうのを抑制することができる。また、封止用ゴムパッキング22の開口部22aや座板24の開口部24aに、各第1(2)陽(陰)極リードタブ端子11,12,14,15のリード線やボス部を容易に挿通させることができ、生産性を向上させることができる。
(変形例)
上述した実施の形態の電解コンデンサとして、陽(陰)極箔等が巻き取られた状態で、陽(陰)極リードタブ端子の接続部が陽(陰)極箔の内周面に位置する電解コンデンサを例に挙げて説明した。陽(陰)極リードタブ端子と陽(陰)極箔との配置態様はこれに限られず、陽(陰)極箔等が巻き取られた状態で、陽(陰)極リードタブ端子の接続部が陽(陰)極箔の外周面に位置する図12に示す電解コンデンサでもよい。
具体的には、図13および図14のそれぞれの上段に示すように、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14としての片側プレス端子18の接続部18bは、その第1接続面18dが陽(陰)極箔3,4の外周面3b,4bに接続されることになる。
このため、接続部18bの径方向位置は、両側プレス端子116を適用した場合の接続部116bの径方向位置と変わらないものの、リード線18c(ボス部18a)の径方向位置は、図13および図14のそれぞれの下段に示される両側プレス端子116を適用した場合のリード線116c(ボス部116a)の径方向位置よりも距離Sだけ外側にシフトすることになる。
また、図13および図14のそれぞれの上段に示すように、第2陽(陰)極リードタブ端子12,15としての片側プレス端子18の接続部18bは、その第2接続面18eが陽(陰)極箔3,4の外周面3b,4bに接続されることになる。
このため、接続部18bの径方向位置は、両側プレス端子116を適用した場合の接続部116bの径方向位置と変わらないものの、リード線18c(ボス部18a)の径方向位置は、図13および図14のそれぞれの下段に示される両側プレス端子116を適用した場合のリード線116c(ボス部116a)の径方向位置よりも距離Sだけ内側にシフトすることになる。
これにより、図12に示すように、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14としての片側プレス端子18のリード線18c(ボス部18a)の径方向位置が外側にシフトし、かつ第2陽(陰)極リードタブ端子12,15としての片側プレス端子18のリード線18c(ボス部18a)の径方向位置が内側にシフトする。このため、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14としての片側プレス端子18のリード線18c(ボス部18a)の径方向位置と、第2陽(陰)極リードタブ端子12,15としての片側プレス端子18のリード線18c(ボス部18a)の径方向位置とが互いに合わせられて、第1(2)陽(陰)極リードタブ端子11,12,14,15のリード線18cを、正方形の頂点に対応する位置に配置させることができる。
これらの結果、陽(陰)極リードタブ端子の接続部が陽(陰)極箔の外周面に位置する電解コンデンサにおいても、各第1(2)陽(陰)極リードタブ端子11,12,14,15間のピッチがほぼ一定となってESLが小さくなり、電解コンデンサとしての特性が低下してしまうのを抑制することができる。また、封止用ゴムパッキング22の開口部22aや座板24の開口部24aに、各第1(2)陽(陰)極リードタブ端子11,12,14,15のリード線やボス部を容易に挿通させることができ、生産性を向上させることができる。
なお、上述した実施の形態では、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14と第2陽(陰)極リードタブ端子12,15の陽(陰)極箔3,4への接続態様として、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14と第2陽(陰)極リードタブ端子12,15の間隔PL(NL)が、陽(陰)極箔3,4における第1(3)周方向位置に対応する陽(陰)極箔3,4の部分と、第1(3)周方向位置に対して第2(4)周方向位置に対応する直近の陽(陰)極箔3,4の部分を巻き取り、さらに、陽(陰)極箔3,4をもう1周分巻き取った後の第2(4)周方向位置に対応する陽(陰)極箔3,4の部分との間隔に設定される場合を例に挙げて説明した。
第1陽(陰)極リードタブ端子11,14と第2陽(陰)極リードタブ端子12,15の陽(陰)極箔3,4への接続態様としてはこれに限られるものではなく、たとえば、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14が接続された陽(陰)極箔3,4の部分から、1周分に満たない長さ分を巻き取った後の陽(陰)極箔3,4の所定の部分に第2陽(陰)極リードタブ端子12,15を接続してもよい。また、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14が接続された陽(陰)極箔3,4の部分から、1周分を超えて巻き取った後の陽(陰)極箔3,4の所定の部分に第2陽(陰)極リードタブ端子12,15を接続してもよい。
このような場合でも、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14および第2陽(陰)極リードタブ端子12,15として片側プレス端子18を適用し、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14に対して径方向外側に配置されることになる第2陽(陰)極リードタブ端子12,15を、そのリード線18cが径方向内側にシフトする態様で陽(陰)極箔3,4に接続するとともに、第2陽(陰)極リードタブ端子12,15に対して径方向内側に配置されることになる第1陽(陰)極リードタブ端子11,14を、そのリード線18cが径方向外側にシフトする態様で陽(陰)極箔3,4に接続している。言い換えると、電解コンデンサは、第1接続面18dに陽極箔3または陰極箔4が接続された片側プレス端子18と、第2接続面18eに陽極箔3または陰極箔4が接続された片側プレス端子18とを含んでいる。このため、第2陽(陰)極リードタブ端子12,15のリード線18cの径方向位置と、第1陽(陰)極リードタブ端子11,14のリード線18cの径方向位置とを互いに合わせることができる。その結果、製造時における位置合わせがより容易になり、また、電解コンデンサとしての特性も保持することができる。
なお、本実施の形態では、4本のリードタブ端子を備えた電解コンデンサを例に挙げて説明したが、本発明の電解コンデンサは5本以上のリードタブ端子を備えていてもよい。
発明者は、第1陽(陰)極リードタブ端子および第2陽(陰)極リードタブ端子として片側プレス端子を適用した実施の形態の電解コンデンサを500個作製した。なお、電解コンデンサの具体的な製造方法は、上記実施の形態において説明した通りであり、直径は8.0mmとした。
また、比較例として、第1(2)陽(陰)極リードタブ端子として、いずれも両側プレス端子を適用した電解コンデンサを500個作製した。
実施例および比較例の電解コンデンサについて、4本の陽(陰)極リードタブ端子(リード線)の位置(配置形状)および特性について評価を行った。
4本の陽(陰)極リードタブ端子(リード線)の位置については、良品であるか不良品であるかの判断基準として、4本の陽(陰)極リードタブ端子のリード線が位置するポイントを結んで形成される四角形の1つの頂点の角度を測定し、90±20°の範囲内にある試料を良品とし、その範囲を外れた試料を不良品とした。その結果を表1に示す。
特性については、LCRメータを用いて、容量(Cap.)、位相ずれ損失(tanδ)、ESR、および漏れ電流(LC)について測定した。容量および位相ずれ損失の測定条件は、120Hzの周波数とした。ESRの測定条件は、100kHzとした。LCの測定条件は、定格電圧印加後2分間後の値とした。その結果を表2に示す。
表1に示すように、すべて両側プレス端子を適用した比較例に係る電解コンデンサでは、評価した500個の試料のすべてが不良品であると判定された。これに対して、実施例に係る電解コンデンサでは、評価した500個の試料のすべてが良品であると判定された。
また、表2に示すように、実施例および比較例のコンデンサの容量はほぼ同じであったが、すべて片側プレス端子を適用した実施例に係る電解コンデンサは、比較例に係る電解コンデンサと比較して、位相ずれ損失、ESRおよびLCについて低減することができた。
この評価結果により、上述した電解コンデンサでは、ESLの低減に寄与できること、そして、封止用ゴムパッキングや座板等との位置合わせが容易になり生産性を向上できることが実証された。
今回開示された実施の形態および実施例は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。