JP5333551B2 - ロールチョッククランプ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、粗圧延機や厚板圧延機などの可逆式圧延機により粗バーや厚鋼板などの圧延材を製造する方法、及びそれに使用されるロールチョッククランプ装置に係り、特に寸法形状に優れる圧延材が得られる技術に関する。
鋼板を熱間または冷間で圧延する圧延機において、ワークロールのロールチョック(軸受箱)と圧延機のハウジングとの間には、僅かな隙間が設けられている。この隙間は、ロール交換作業を容易にするものであるが、圧延作業中においてはワークロールとバックアップロールの相対的位置関係を変動させる原因となる。ワークロールのロールチョック(軸受箱)の両端が水平方向で前後に移動してワークロールとバックアップロールの相対的位置関係が変動すると、圧延材には板曲がり(キャンバー)が生じ、また幾何学的にロールギャップが変動して板厚精度が低下するため、種々の対策が提案されている。
例えば特許文献1では、圧延機および圧延方法に関し、ロールチョックと圧延機ハウジングの間に可動フレームを設け、当該可動フレームにはロールバランス等を行うための第1液圧装置を設けた圧延機において、上記ロールチョックおよび可動フレームを圧延材の流れ方向に押し付け拘束する第2液圧装置と、可動フレームを上下方向に押し付け拘束する第3液圧装置を更に設け、これによって、第2液圧装置により圧延中のロールの傾きが少なくなり、圧延材の蛇行などが少ない安定した圧延が可能で、第3液圧装置によりロール軸のころがり軸受の円筒型コロによる圧延機の共振を防止し圧痕のない圧延材を得ることが可能とすることが提案されている。
また、特許文献2では、ワークロールの軸方向および通板方向のがたつきを抑制する圧延機および圧延方法に関し、ワークロールを支持するロールチョックを拘束するパワークランプ装置をハウジングに設け、当該パワークランプ装置はハウジングとロールチョックを係合しワークロールの軸方向および通板方向のがたつきを抑制する圧延機および当該圧延機を用いて、パワークランプ装置を圧延機の定常運転時は低圧で駆動させ、噛み込み時および尻抜け時は高圧で駆動させる圧延方法が提案されている。
また、特許文献3では、ロールチョッククランプ装置に関し、ロールチョックの端部に対応して複数個の油圧シリンダをハウジング側に配置し、各シリンダはそのピストンがロールチョックに当接した程度で押圧を停止して、その状態を維持して板厚制御装置(AGC装置)への影響を最小限にすること、および、各シリンダの流路を共通化することにより偏荷重が生じた場合に、全てのシリンダがロールチョックに接することを可能とすることが提案されている。
ここで、熱延鋼板の圧延では、1つの圧延機に着目した場合、圧延の噛込みは板一枚に対し一回であり、また圧延終了から次の圧延開始までの時間間隔は1分前後あるため、ロールチョッククランプ装置のON/OFFや圧力変更などの切替えをする時間は十分にある。従って熱延鋼板の圧延において、たとえば多段の連続圧延機で仕上げる場合などでは、ロールチョッククランプ装置の作動開始は、前段の圧延機を板の先端が通過した信号と連動させればよい。
さらに、熱延鋼板の圧延では、先端噛込み時や尾端尻抜け時など非定常時における板の蛇行が問題となる場合が多く、板の先端が熱延コイル巻き取り装置に到達してからの定常安定時における、定常圧延中のロールチョッククランプ装置の動作切り替え等は従来行われていない。
特開2002−143912号公報 特開2001−198609号公報 特開2001−340906号公報
これに対し、粗バーや厚鋼板の圧延では、ワークロールを正逆に回転させる可逆式圧延機により鋼材が圧延され、ロールチョックの圧延水平方向のがたつきにより、ロールチョックの圧延水平方向位置の変動に起因した圧延材の板厚誤差が発生したり、ロールチョックの圧延水平方向位置の左右非対称に起因したキャンバーが発生したりすることがある。特にロール軸の軸方向にシフトするロールシフト機能を有する可逆式圧延機が用いられる場合はロール磨耗が均一とならないため、板厚誤差やキャンバーが発生しやすい。
また、可逆式圧延機の代表である粗圧延機や厚板圧延機は、熱延鋼板・冷延鋼板を圧延する薄板圧延機に比べ圧延荷重が大きいため、クランプ装置は、より大荷重で拘束する必要がある一方、板厚制御などの圧延に対する作動時間やタイミングを調整する必要があり、その両者を両立する正確なクランプ手段が必要となる。
さらに、可逆式圧延機の場合、正転圧延してから逆転圧延するまでの時間など、次の圧延までの時間が非常に短く、その間にサイドガイドの調整、ワークロール開度の締め込み、ワークロールの幅方向移動(ロールシフト)や圧延方向への回転(ロールクロス)、ロールのたわみ矯正(ロールベンダー)という様々な操作を行うため、ロールチョッククランプ装置も、圧延終了から圧延開始までに行われるロールチョッククランプ装置以外の上記装置と干渉なくクランプを開始する必要があり、操作開始のタイミングが限られる。従来は、可逆式圧延機の正逆圧延におけるチョッククランプ操作開始のタイミングを決定する良好な手段が明らかではなかった。
また、上述のように薄板圧延機に比べ圧延荷重が大きく、また板厚制御装置との干渉が問題となるため、チョッククランプ開始後も一定の拘束力ではなく、拘束力を適度に変更する手段が必要であるが、可逆式圧延機のロールチョックの変動を適度に拘束し且つ板厚制御装置との干渉を避ける拘束力の大きさと変更方法が未知であった。特に圧延中において、ワークロールの回転方向や回転加速度によりチョッククランプする拘束力を変える方法は従来技術では明らかにされていない。
さらに、ロールチョッククランプ装置の受ける衝撃や磨耗を緩和するためにも、チョックの変動を所定範囲内に抑える最小限の拘束力とした方がよい。
ここで、特許文献1〜3は、特に可逆式圧延を対象とするものでなく、スラブの粗圧延や厚板圧延におけるロールチョッククランプ装置を備えた可逆式圧延機による圧延方法は示されていない。
また、特許文献2は、クランプ装置を圧延機の定常運転時は低圧で駆動させ、噛み込み時および尻抜け時は高圧で駆動させる方法であるが、クランプ装置の駆動タイミングについては明らかにされていない。可逆式圧延機に特許文献2のクランプ方法を用いて噛込み時を高圧でクランプすると、場合によっては圧延機のハウジング内にチョックが挟み込まれて上下に動かなくなり、厚板先端部の板厚制御ができなくなる可能性がある。
熱延鋼板の定常圧延時は、板先端がコイル巻き取り装置に巻き取られているため、板のテンションにより比較的チョックが安定するが、厚板などの可逆式圧延で特許文献2のように定常圧延時を低圧でクランプすると、定常圧延時でも板のテンションがないことでチョックが不安定であったり、ワークロールの回転速度を変えているためチョックが動いたりなどが問題となる。ただしどのような条件でチョックが動くかなどは明らかにされていなかった。
上記の理由により、短い可逆圧延動作の中でチョッククランプ装置の拘束力をどのタイミングでどの位の大きさに切り替えるかが課題である。
そこで本発明は、適切な拘束力でクランプ可能なロールチョッククランプ装置、及びそのようなロールチョッククランプ装置を備えた可逆式圧延機による圧延材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、可逆式圧延機にロールチョッククランプ装置を取り付けて厚鋼板を圧延する場合、厚鋼板が上下圧延ロール間に噛み込む前にロールチョックをロールチョッククランプ装置で十分に拘束しておけば、噛み込んだ後に拘束力を下げても圧延水平方向のがたつきの生じにくい圧延条件があることを知見した。
また、圧延中に常時ロールチョックをクランプした場合の拘束力を考察し、板厚制御装置への影響が少ない拘束力があることを知見した。また、厚鋼板の噛み込みの前後は水平方向の衝撃荷重が大きくなることから、拘束力を下げることで板厚制御装置への影響を防げることを知見した。これは特許文献2にあるような、噛み込み時を高圧にするという従来とは逆の考え方である。
また、ロールチョッククランプ装置の作動開始は、圧延開始前に作動するベンダー装置等の押圧装置の作動信号に連動させ、拘束力の切り替えは、ベンダー装置の作動開始信号からの設定時間1および、圧延開始の作動信号からの設定時間2とすることが有効であることを知見した。設定時間1および設定時間2の設定次第で、圧延中の拘束力を大小任意に切り替えることが可能で、制御プログラムも1つで済みシステムメンテナンスも容易である。
また、ワークロールの軸心がバックアップロールの軸心よりも圧延正方向にオフセットしている上記可逆式圧延機において、ワークロールを圧延正方向に拘束するロールチョッククランプ装置が必要とする拘束力は、圧延正転時に小さく、圧延逆転時に大きいことを知見した。さらに、圧延逆転最大速度から正転最大速度に至る正加速度回転中は、ワークロールが圧延正方向に移動するため必要とする拘束力が小さく、逆に正転最大速度から逆転最大速度に至る負加速度回転中は、ワークロールが圧延逆方向に移動するため必要とする拘束力が大きくなることが明らかとなった。
なお、本発明で厚鋼板とは通常厚鋼板として製造される4mm以上の板厚を有する鋼板を指す。
このような知見に基づき、発明の第1態様は、ワークロールのロールチョックを圧延方向に沿った方向に拘束するロールチョッククランプ装置を備えた可逆式圧延機において、
圧延材がワークロールに噛み込む前に上記ロールチョックへ第1の拘束力を掛けて当該ロールチョックを拘束し、上記圧延材がワークロールに噛み込む際の衝突荷重が所定以上の大きさと推定すると、圧延材がワークロールに噛み込む前に上記第1の拘束力よりも小さな第2の拘束力に設定変更することを特徴とする圧延材の製造方法を提供するものである。
次に、発明の第2態様は、可逆式圧延機に設けられて、ワークロールのロールチョックに圧延方向に沿った方向の拘束力を掛けてロールチョックを拘束するためのクランプ装置本体と、クランプ装置本体による上記拘束力を制御する拘束力コントローラとを備えたロールチョッククランプ装置であって、
上記拘束力コントローラは、上記拘束力として、ロールチョックをガタが無くなる方向に移動させて拘束するための第1の拘束力、上記第1の拘束力より小さい第2の拘束力、及び圧延中にロールチョックを拘束しておくための第3の拘束力を有し、圧延材がワークロールに噛み込む前に第1の拘束力に設定し、その第1の拘束力に設定した後であって圧延材が噛み込む前に第2の拘束力に設定し、圧延材の噛み込みが完了したら第3の拘束力に設定することを特徴とするものである。
次に、発明の第3態様は、上記第2態様に記載した構成に対し、上記第2の拘束力は、圧延材がワークロールに噛み込む際に発生すると思われる推定した衝突荷重に基づき設定され、所定衝突荷重未満と判定した場合には、第2の拘束力を第1の拘束力と同じ値とし、所定衝突荷重以上と判定した場合には第2の拘束力を第1の拘束力よりも小さな値に設定することを特徴とするものである。
次に、発明の第4態様は、上記第2態様または第3態様に記載した構成に対し、圧延中に、クランプ装置本体による拘束力を掛ける方向と逆方向にワークロールが変位しにくいと判定した場合には、第3の拘束力の大きさを第2の拘束力と等しい値とすることを特徴とするものである。
次に、発明の第5態様は、上記第2態様〜第4態様のいずれかに記載した構成に対し、上記可逆式圧延機は、ワークロールの軸心がバックアップロールの軸心よりも圧延正方向にオフセットしていると共に、クランプ装置本体は、上記ロールチョックを圧延正方向に押圧して拘束し、
拘束力コントローラは、圧延正方向に圧延する場合には、第3の拘束力を第1の拘束力よりも小さく設定し、圧延正方向とは逆方向に圧延する場合には、第3の拘束力を第1の拘束力と等しく設定することを特徴とするものである。
次に、発明の第6態様は、上記第2態様〜第4態様のいずれかに記載した構成に対し、上記可逆式圧延機は、ワークロールの軸心がバックアップロールの軸心よりも圧延正方向にオフセットしていると共に、クランプ装置本体は、上記ロールチョックを圧延正方向に拘束し、
ワークロール回転の速度検出手段と加速度検出手段を備え、
拘束力コントローラは、ワークロールが圧延正方向回転且つ減速回転又は圧延逆方向回転且つ加速回転と判定すると、第3の拘束力を第1の拘束力1と等しい値とし、ワークロールが圧延正方向回転且つ加速回転又は圧延逆方向回転且つ減速回転では、第3の拘束力を第2の拘束力に等しいか第1の拘束力よりも小さな値とすることを特徴とするものである。
次に、発明の第7態様は、上記第2態様〜第6態様のいずれかに記載した構成に対し、上記可逆式圧延機は、圧延ロールを圧下方向に沿った方向に押圧する押圧装置を備え、
上記第1の拘束力の負荷の作動開始は、押圧装置の作動前若しくは同時期であることを特徴とするものである。
本発明によれば、少なくとも圧延機への圧延材の噛み込み時の拘束力を適切な値に調整することで、圧延機の寿命への悪影響を抑えると共に、板形状に優れる圧延材を得ることが可能となる。
実施形態に係るロールチョッククランプ装置を備えた可逆式圧延の一例を示す模式図である。 第1実施形態に係るタイムチャート例を示す図である。 拘束力と拘束力反力の関係を示す図である。 第1実施形態に係るタイムチャートの別例を示す図である。 第1実施形態に係るタイムチャートの別例を示す図である。 第2実施形態に係るタイムチャートを示す図である。 第2実施形態に係るタイムチャートの別例を示す図である。 第3実施形態に係るタイムチャートを示す図である。 ロールチョッククランプ装置が無い場合の正転圧延時のロールチョックの挙動を示す図である。 ロールチョッククランプ装置が無い場合の逆転圧延時のロールチョックの挙動を示す図である。 第3実施形態に係るタイムチャートの別例を示す図である。
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るロールチョッククランプ装置を備えた可逆式圧延機(以下、単に圧延機と呼ぶ。)の一例を示す模式図である。
(構成)
まず構成について説明すると、パスラインを挟んで上下に対をなすワークロール3が配置される。符号2はバックアップロール2を示し、そのバックアップロール2に対し、上記ワークロール3は下流側にオフセット量dだけオフセットして配置されている。符号4はワークロール3のロールチョックである。符号5は、ハウジングに反力をとるシフトブロックで、下流側で上記ロールチョック4と隙間aを開けて配置されている。
符号6は、クランプ装置本体である。クランプ装置本体6は、たとえば油圧シリンダ装置で構成されて、上記ロールチョック4に対し、ハウジングに反力をとって上流側から下流側に向けて拘束力を負荷する。このクランプ装置本体6は、拘束力コントローラ20からの指令に応じた拘束力を発生する。
ここで、上記圧延機1では、バックアップロール2に対し、ワークロール3が下流側(圧延正方向)に距離dだけオフセットして取り付けられているので、上流側から下流側に圧延中、ワークロール3にはロールチョック4を下流側のシフトブロック5側に押し付ける力が作用する。ただしワークロール3に加わる水平力はバックアップロール2からのオフセット分力だけでなく、圧延材の板との摩擦力や、バックアップロール2との摩擦力等により複雑にバランスするため、圧延状況に応じてワークロール3は水平方向に変動することになる。
ワークロール3が水平方向に移動すると、ロールギャップが変動して、圧下量が変動し、板厚精度が低下するため、ロールチョック4とシフトブロック5との隙間aが変動しないように、ロールチョッククランプ装置6でロールチョック4を下流側のシフトブロック5に適度な拘束力で押し付けることが必要となる。
また、上記圧延機1には、押圧装置を構成するベンダー装置11が設けられている。このベンダー装置11は、左右のロールチョック4に対し圧下方向に沿った方向に荷重を負荷する装置で、圧延材がワークロール3に噛み込む前に荷重を負荷して、ワークロール3を逆ぞり状に変形させておき、圧延材が噛み込んだ後の圧延中のワークロール3が例えばフラットな状態で圧延させる。なお、上記ベンダー装置11は、ロールチョック4に対し圧下方向に沿った方向へ荷重を負荷する装置の一例で他の押圧装置の作動開始信号を利用しても良い。
次に、拘束力コントローラ20について説明する。
拘束力コントローラ20には、圧延荷重その他の情報に基づき設定された、ロールチョック4をシフトブロック5に押し付けて拘束するために必要な力である第1の拘束力F1、その第1の拘束力F1より小さな第2の拘束力F2、及び圧延中にロールチョック4を拘束しておくための第3の拘束力F3が設定される。本実施形態では、第1の拘束力F1と第3の拘束力F3が同じ値として説明する。もちろん、目的が異なるので、第1の拘束力F1と第3の拘束力F3とは同じ値である必要はない。
そして、拘束力コントローラ20は、ベンダー装置11の作動開始信号、圧延開始信号及び圧延終了信号を入力し、上記作動開始信号に同期してクランプ装置本体6に作動指令を供給し、圧延終了信号を入力すると作動終了信号をクランプ装置本体6に出力する。また、クランプ装置本体6に対し、作動開始時の拘束力として第1の拘束力F1に対応する指令値を出力し、作動開始から設定時間1経過後に第2の拘束力F2に対応する指令値を出力し、圧延開始信号から設定時間2が経過すると第3の拘束力F3に対応する指令値を出力する。更に、圧延終了信号を入力すると、作動終了信号をクランプ装置本体6に供給し待機させる。
なお、上記指令値は、たとえばクランプ装置本体6のシリンダ室に作動油を圧送するポンプ等の油圧制御部21に供給され、ポンプの吐出圧を変更することで実現される。
ここで、設定時間1及び2は、ベンダー装置11の開始が圧延開始前の3秒に設定されている場合に、例えば、設定時間1を2秒、設定時間2を1秒など、応答遅れを考慮して設定すればよい。
(作用・効果など)
本実施形態では、厚鋼板の圧延を圧延機1で行い、ロールチョック4を厚鋼板の噛み込み前からロールチョッククランプ装置6で拘束し、その拘束力は圧延荷重などによって切り替える。
ここで、ロールチョック4を水平方向にクランプするため、垂直方向に作用する板厚制御装置への影響が懸念されるが、圧延条件に合わせた適切な拘束力でクランプすることで、板厚制御装置への影響が少ないことがわかった。特に厚鋼板の噛み込み時は、水平方向の荷重が大きくなるため、拘束力を下げることが必要である。
次に、ロールチョッククランプ装置の制御について説明する。図2にそのタイムチャートを示す。
圧延開始前に作動するベンダー装置11の作動開始信号に連動させて作動を開始し拘束する。ベンダー装置11はワークロール3のロールチョック4の垂直方向に加重するため、ロールチョッククランプ装置の水平方向と干渉するが、本実施の場合は、ベンダー装置11の作動遅れを利用して、クランプ装置の方を先に機能させることが可能である。場合によっては、ベンダー装置11に先行する信号と連動させ、クランプ装置と干渉させないようにしてもよい。ベンダー装置11のように、ワークロール3に加重する装置の信号等であれば、他の操作と連動させてもよい。ワークロール3に加重する段階であるため、ロールチョッククランプ装置も作動させることが可能であるというインターロックとしての作動開始信号を勘案したものである。
すなわち、ベンダー装置11による荷重負荷が行われている状態でロールチョッククランプ装置を作動させてロールチョック4をシフトブロック5に当接するまで移動させるには所要の大きな拘束力に第1の拘束力F1を設定する必要があるが、ベンダー装置11による荷重負荷が完了する前に拘束力を掛けることで、その分、第1の拘束力F1を小さく設定可能となる。
また、一般には、板幅方向にロールチョック4を動かすワークロールシフトなどの動作が終了済みの条件で通常ベンダー動作が開始されるので、ロールチョッククランプ装置の動作もそれと連動させておくことで、ワークロールシフト装置との干渉を避けることができる。
なお、可逆式圧延機1は、正逆の圧延を繰り返す関係で、圧延各種の設定変更に使用される時間が短い傾向にある。このため、クランプ装置本体6の作動開始を、ベンダー装置11と同期をとって行う方が好ましいが、余裕がある場合には、ベンダー装置11の作動開始前にクランプ装置本体6を作動させても良い。
このように、ベンダー装置の作動開始信号でクランプ作動開始してから設定時間1が経過するまでの時間は第1の拘束力F1とし、クランプ作動開始後の最初一定時間である設定時間1は拘束力1でチョックを十分に圧延水平方向に押し付ける。設定時間1の時間を2秒とすると、圧延開始前に終了する場合が多く、圧延開始前に第2の拘束力F2に切り替わる。その後、圧延開始の信号から一定時間設定時間2の間は第2の拘束力F2のままとなる。
ここで、圧延開始の噛み込み時には、拘束反力として衝撃荷重を受ける。この衝撃荷重は、圧延荷重などが大きいほど大きくなる。この衝撃荷重が大きいと、一時的な圧延ハウジングの変形でハウジングへのチョックの噛み込み等が発生する可能性がある。また、上記衝撃荷重を受ける圧延機1やクランプ装置本体6の寿命にも影響する。また、一時的に圧下量にも影響が出るので、圧延制御の点からも好ましくない。図3に、そのときに予想されるタイムチャート例を示す。
これに対し、本実施形態では、圧延材の噛み込み時に拘束力を一時的に第2の拘束力F2に下げることで、上記衝撃荷重のピーク値Pを小さく抑えられる。この結果、上述のような不具合が解消される。この第2の拘束力F2にしている間、予め第1の拘束力F1で押し付けてあるので、ロールチョック4変位は圧延下流側へ拘束され安定位置となる。その後圧延開始となり設定時間2が開始する。なお、図3は、噛み込み時に拘束力を一時的に小さくする場合を例示しているので、上記衝撃荷重のピーク値Pが小さく図示されているが、拘束力を一時的に小さくしない場合には、大きな衝撃荷重になると思われる。
さらに、設定時間2が経過すると拘束力2が第3の拘束力F3と高くなるため、圧延中は確実にチョックを拘束することが可能となる。
ここで、拘束力コントローラ20において、推定される圧延荷重を入力し、推定される圧延荷重が所定値未満の場合には、第2の拘束力F2に切り替えることやらないようにしても良い(図4参照)。
続いて、圧延開始から設定時間2だけ経過すると、圧延時に拘束可能な第3の拘束力F3に変更される。
ここで、拘束されているロールチョック4の戻りが少ない場合と推定した場合には、第2の拘束力F2を第3の拘束力F3に、つまり拘束力の切替をしないようにしても良い(図5参照)。例えばロールチョッククランプ装置への圧延水平方向荷重が大きい圧延条件の場合などに適用する。
このように、圧延信号のタイミングと設定時間設定で効果的に切り替え制御することができ、安定したロールチョッククランプ動作が実現できる。
以上のように、本実施形態によれば、正逆圧延の反転が素早い可逆式圧延機1において、確実にロールチョッククランプ装置を作動させることが容易に可能で、板厚偏差や板曲がり(キャンバー)が発生しやすい圧延条件等や、正転圧延と逆転圧延等により、異なる大きさの拘束力を用いたり、当該パスにおける圧延中の作動時間を変更したりできるので、圧延開始から終了までにおいて板厚制御装置との干渉が少なく、板形状に優れる圧延材を得ることが可能で、産業上極めて有用である。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。上記第1実施形態と同様な部材などについては同一の符号を付して説明する。
基本構成は、上記第1実施形態と同様であるが、拘束力コントローラ20で制御する拘束力の切替などについて、正転圧延と逆転圧延で異なる組み合わせとするものである。
拘束力コントローラ20で、決定する拘束力の切り替えタイミングの設定時間も、正転圧延の場合は設定時間1a、2aとし、逆転圧延の場合は設定時間1b、2bとして、異なる設定時間とした。
すなわち、図6のタイムチャートに示すように、正転圧延時には、第3の拘束力F3を第2の拘束力F2と同じ、つまり第3の拘束力F3への切替を行わない。一方、逆転圧延時には、第3の拘束力F3を第2の拘束力F2よりも大きな値に設定するようにしたものである。なお、噛み込み時の衝撃荷重が所定値よりも小さいと判定した場合には、図7のように、第1の拘束力F1から第2の拘束力F2に切り替えなくても良い。
(作用・効果)
本実施形態においても、圧延する厚鋼板を圧延機11に噛み込む前に、正転圧延と逆転圧延とも、第1の拘束力F1によって、ロールチョック4をシフトブロック5に当接するまで移動させて下流側へ拘束させる。
正転圧延の場合は、設定時間1a経過後(例えば2秒)から第2の拘束力F2に切替え、圧延中の拘束力も第2の拘束力F2のままにして切替を行わない。これは、正転圧延の場合には、圧延によってロールチョック4に加わる水平分力が、下流側つまりロールチョッククランプ装置による拘束方向と同じ方向となる傾向にあるため、圧延中の拘束力を高く切り替える必要がないとの判断によるものである。つまり、圧延中は常に第2の拘束力F2のままの第1の拘束力F1よりも低い力としても、正転時の荷重バランスから、ロールチョック4を下流側へ拘束することが可能な圧延条件と判断したものである。
逆転圧延の場合も、設定時間1b経過後(例えば1.5秒)から第2の拘束力F2に切り替える。設定時間2bの設定は圧延の噛み込みから数秒(例えば1秒)とし、噛み込みの非定常が終わると圧延中を第3の拘束力F3とする。逆転の場合は、圧延中もチョックが上流側に移動してくる頻度が高いため、板厚制御装置に干渉しない程度の拘束力で確実に押し付ける必要があるため、圧延中の拘束力として、第2の拘束力F2よりも大きな第3の拘束力F3に切り替える。
このように、正転圧延時と逆転圧延時とでワークロール3の回転方向及び板の通板方向に応じて、ロールチョッククランプ装置による拘束力を変更することで、より適切な拘束力に設定可能となる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第2実施形態と同様な構成などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、上記各実施形態と同様であるが、拘束力コントローラ20での拘束力の切替が若干異なる。
また、本実施形態は、ワークロール3の回転加速度を検出する加速度検出手段を備える。加速度検出手段としては、加速度の連続値を出力する測定器である必要はなく、加速度の正負判定出力が可能であればよい。つまり、本実施形態においては、ワークロール3が加速中か減速中かが判定できればよいため、産業上も非常に実現しやすい。また、通常の圧延機1は、ワークロール3の回転速度計を備えているため、ワークロール3の回転の加速度検出手段としては、回転速度計の微分検出器や、回転速度計の変化量を正負判定するソフトウェアによるものでも可能である。
そして、拘束力コントローラ20では、基本の拘束力切替パターンは上記第2実施形態と同様であるが、次の点で異なる。
すなわち、正転圧延中において、ワークロール3が減速を開始したと判定した場合には、第2の拘束力F2を、第2の拘束力F2よりも大きな第3の拘束力F3に変更する。又、逆転圧延中において、ワークロール3が減速を開始したと判定した場合には、第3の拘束力F3を、第3の拘束力F3よりも小さな第2の拘束力F2に変更する。
その他の処理は、上記第2実施形態と同様である。
(作用・効果)
本第3実施形態は、次に述べるようなことを考慮して、正転圧延中における減速中の拘束力を高めに切り替えると共に、逆転圧延中における減速中の拘束力を低めに切り替えることで、より適切な拘束力で拘束を行うことが可能とするものである。図8にそのときのタイムチャートを示す。
すなわち、上記ロールチョッククランプ装置が無い可逆式圧延機1にて、正転圧延中及び逆転圧延中における、ロール回転と圧延荷重とロールチョック4の変位について調査したところ、図9及び図10に示すような傾向にあった。なお、ロールチョック4の変位は、圧延機1のハウジング下流側に埋設した距離センサにより、ハウジングとチョックとの相対変位を測定したものである。
図9及び図10のように、ロールの回転が正転加速と逆転減速の場合では、チョック変位が下流側に位置している頻度が高い。逆にロールの回転が正転減速と逆転加速の場合では、チョック変位が下流側から離れた位置にいる頻度が高い。このことから、圧延機1の上流側から圧延正方向にロールチョック4を拘束するロールチョッククランプ装置では、正転加速と逆転減速の場合は比較的チョックからの反力が小さく、正転減速と逆転加速で反力が大きくなることが想定されるため、ロールチョック4を一定範囲に拘束するために必要な拘束力を切り替えることが効果的であることが分かる。より高い拘束力が必要となるのは、ワークロール3回転が正転減速と逆転加速の場合が多く、チョックが下流側から上流側へ移動する頻度が高かいことが想定される。
ここで、ワークロール3回転の加速度検出のみでロールチョッククランプ装置の拘束力を切り替える方法は、回転加速度が安定して加速・減速となる圧延条件であれば、設定時間設定による切り替えよりも有効である。または、圧延開始前は第1の拘束力F1でロールチョック4をクランプさせるため、設定時間の設定で切り替え、圧延中から圧延終了までの拘束力を、ワークロール3の回転加速度により切り替える併用が有効である。
なお、圧延条件によっては、常に第2の拘束力F2でロールチョック4をクランプすれば十分な場合が考えられる(図11参照)。この場合は、拘束力の設定を第2の拘束力F2としておけば、ベンダー作動開始によるチョッククランプ装置作動開始から一定の第2の拘束力F2とすることも可能である。
このとき、ロールチョッククランプ装置として油圧シリンダなどによる押圧装置が考えた場合、拘束力の設定は、油圧シリンダに供給するポンプからの圧力設定によるものとなる。従って拘束力を低く設定した場合、圧力による油圧シリンダの作動速度も低下し、クランプ装置がロールチョック4を圧延機1下流側へ押し付け完了するまでの時間が長くなってしまう。クランプ装置を作動開始させてから圧延開始前までは通常数秒しかないため、第2の拘束力F2の設定では十分に拘束できない場合が発生する。従って、圧延中は第2の拘束力F2で十分な場合においても、圧延開始前のクランプ装置の拘束力は第1の拘束力F1として一旦一定以上の力で一定以上の速度により下流側へロールチョック4を移動させて拘束しておくのがよい。
ここで、上記各実施形態では、ベンダー装置11などの押圧装置がある場合を例示しているが、当該押圧装置が無くても良い。このような押圧装置がない場合には、押圧装置がある場合に比べて当該押圧装置の作動時の摩擦によるロールチョック4の拘束が無くなる分だけ、上記第2の拘束力F2を小さく設定することが出来ない。
また、圧延条件によって使い分けることが可能であり、ロールチョック4の変動を拘束することと、板厚制御装置(AGC装置)への干渉度合いやクランプ装置の衝撃荷重、磨耗を抑えることとのバランスで、組み合わせて使用することが好ましい。
また、上記における各信号は、それに相当する他のタイミングを参照しても同等の結果が得られる。例えば、実際のベンダー作動開始信号や圧延開始信号でなくとも、それぞれベンダー荷重や圧延荷重のモニタ計測値がある値以上になるタイミングを参照すればよい。
1 可逆式圧延機
2 バックアップロール
3 ワークロール
4 ロールチョック
5 シフトブロック
6 クランプ装置本体
11 ベンダー装置
20 拘束力コントローラ
F1 第1の拘束力
F2 第2の拘束力
F3 第3の拘束力
a 隙間
d オフセット量

Claims (4)

  1. 可逆式圧延機に設けられて、ワークロールのロールチョックに圧延方向に沿った方向の拘束力を掛けてロールチョックを拘束するためのクランプ装置本体と、クランプ装置本体による上記拘束力を制御する拘束力コントローラとを備えたロールチョッククランプ装置であって、
    上記可逆式圧延機は、ワークロールの軸心がバックアップロールの軸心よりも圧延正方向にオフセットしていると共に、クランプ装置本体は、上記ロールチョックを圧延正方向に押圧して拘束し、
    上記拘束力コントローラは、
    上記拘束力として、ロールチョックをガタが無くなる方向に移動させて拘束するための第1の拘束力、上記第1の拘束力より小さい第2の拘束力、及び圧延中にロールチョックを拘束しておくための第3の拘束力を有し、圧延材がワークロールに噛み込む前に第1の拘束力に設定し、その第1の拘束力に設定した後であって圧延材が噛み込む前に第2の拘束力に設定し、圧延材の噛み込みが完了したら第3の拘束力に設定し、圧延正方向に圧延する場合には、第3の拘束力を第1の拘束力よりも小さく設定し、圧延正方向とは逆方向に圧延する場合には、第3の拘束力を第1の拘束力と等しく設定することを特徴とするロールチョッククランプ装置。
  2. 可逆式圧延機に設けられて、ワークロールのロールチョックに圧延方向に沿った方向の拘束力を掛けてロールチョックを拘束するためのクランプ装置本体と、クランプ装置本体による上記拘束力を制御する拘束力コントローラとを備えたロールチョッククランプ装置であって、
    ワークロール回転の速度を検出する速度検出手段と加速度を検出する加速度検出手段とを備え、
    上記可逆式圧延機は、ワークロールの軸心がバックアップロールの軸心よりも圧延正方向にオフセットしていると共に、クランプ装置本体は、上記ロールチョックを圧延正方向に拘束し、
    上記拘束力コントローラは、
    上記拘束力として、ロールチョックをガタが無くなる方向に移動させて拘束するための第1の拘束力、上記第1の拘束力より小さい第2の拘束力、及び圧延中にロールチョックを拘束しておくための第3の拘束力を有し、圧延材がワークロールに噛み込む前に第1の拘束力に設定し、その第1の拘束力に設定した後であって圧延材が噛み込む前に第2の拘束力に設定し、圧延材の噛み込みが完了したら第3の拘束力に設定し、ワークロールが圧延正方向回転且つ減速回転又は圧延逆方向回転且つ加速回転と判定すると、第3の拘束力を第1の拘束力1と等しい値とし、ワークロールが圧延正方向回転且つ加速回転又は圧延逆方向回転且つ減速回転では、第3の拘束力を第2の拘束力に等しいか第1の拘束力よりも小さな値とすることを特徴とするロールチョッククランプ装置。
  3. 圧延中に、クランプ装置本体による拘束力を掛ける方向と逆方向にワークロールが変位しにくいと判定した場合には、第3の拘束力の大きさを第2の拘束力と等しい値とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載したロールチョッククランプ装置。
  4. 上記可逆式圧延機は、圧延ロールを圧下方向に沿った方向に押圧する押圧装置を備え、
    上記第1の拘束力の負荷の作動開始は、押圧装置の作動前若しくは同時期であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載したロールチョッククランプ装置。
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