[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る転写装置1の概略構成を示す図であり、図2は、図1におけるII矢視図であると共に型保持体51が設けられている部位の近傍を拡大した図である。
以下、説明の便宜のために、水平方向の一方向をX軸方向とし、水平方向の他の一方向であってX軸方向に垂直な方向をY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向に垂直な方向(上下方向;鉛直方向)をZ軸方向という場合がある。
転写装置1は、フレーム(ベース部材)3を備えており、このフレーム3の上部に一体的に取付けた上部フレーム5と前記フレーム3の下部に一体的に取付けた下部フレーム7は、タイロッドを兼ねた互いに平行な複数(4本)のガイドロッド9によって一体的に連結してある。そして、前記下部フレーム7上にはX,Yテーブル等のごとくX,Y方向へ移動可能かつ微調整して位置決め可能な可動テーブル11が設けてあり、この可動テーブル11上には被成形品13を支持する基板テーブル15が設けられている。基板テーブル15は、たとえば、石英ガラス等のUV光(紫外線)が透過可能な材質で構成されている。
前記可動テーブル11は、通常のX,Yテーブルと同様に、X軸サーボモータによってX軸方向に移動自在かつ微調整して位置決め自在なXテーブルと、Y軸サーボモータによってY軸方向に移動自在かつ微調整して位置決め自在なYテーブルとを上下に重ねて備えた構成であって、公知の構成であるから、可動テーブル11の構成についてのより詳細な説明は省略する。
被成形品13は、たとえばシリコン,ガラス,セラミック等の紫外線が透過する適宜材料よりなる矩形な平板状の基板14の上面(厚さ方向の一方の面)に紫外線硬化樹脂(UV硬化樹脂)よりなるレジスト(被成形層)16を数10nm〜数μmの厚さに塗布した薄膜を備えた構成である。そして、基板テーブル15は、たとえば真空吸着により、被成形層16が設けられている側の面が現れるようにして、被成形品13を保持することができるようになっている。
すでに理解されるように、基板テーブル15は、可動テーブル11に一体的に設けられており、保持された基板14の面(厚さ方向の一方の面)の延伸方向(X軸方向、Y軸方向)で、型保持体51に対し相対的に移動自在になっている。なお、前記X軸サーボモータや前記Y軸サーボモータは、基板テーブル15を基板14の面の延伸方向で相対的に移動位置決めするための基板テーブル駆動手段の例である。
また、転写装置1には、基板テーブル15に対向し基板テーブル15に対して接近離反する方向(たとえばZ軸方向)へ相対的に移動可能な移動部材19が備えられている。より詳細には移動部材19はプレス装置におけるラムに相当するものであって、ボールブッシュ等を介して前記各ガイドロッド9に上下動可能に案内されていると共に、ガイドロッド9と平行にかつ互いに平行にフレーム3に設けた一対のリニアガイド21にスライダ23を介して上下動可能に案内されている。
すなわち、フレーム3に設けた一対のリニアガイド21は垂直に設けてあり、このリニアガイド21に沿って垂直方向に移動自在な一対の前記スライダ23を移動部材19に一体的に備えていることにより、移動部材19は垂直に移動するものである。この際、移動部材19は、ボールブッシュ等を介して複数のガイドロッド9によって垂直方向に案内されると共に、案内精度が高精度のリニアガイド21、スライダ23を介して垂直方向に案内されているものであるから、移動部材19は水平方向に微動することなく、かつ下面を常に水平に維持して垂直に上下動されるものである。
移動部材19を上下動するために、上部フレーム5には、移動部材可動体作動用機構が備えられている。この移動部材可動体作動用機構としては、移動部材19を往復動可能かつ精確に位置決め可能であれば任意の構成とすることができるものであり、たとえば流体圧シリンダ等のごとき流体圧機構やクランク機構又はリンク機構なども採用可能である。すなわち、前記移動部材可動体作動用機構として種々の構成を採用可能であるが、本実施形態においては、前記移動部材可動体作動用機構としてボールねじ機構を採用した場合について例示してある。
すなわち、上部フレーム5にはボールねじ機構25が垂直にかつ回転自在に備えられており、このボールねじ機構25において上下動する上下動部材27の下端部が移動部材19に一体的に連結してある。前記ボールねじ機構25において、ボールねじが回転する構成の場合にはボールナットが上下動部材27を構成し、ボールナットが回転する構成の場合にはボールねじが上下動部材27を構成するものである。なお、ボールねじ機構においてボールねじを回転するか、又はボールナットを回転するかは相対的なことであり、どちらを回転する構成としてもよいものである。
ボールねじ機構25において回転自在なボールねじ又はボールナットの上部には従動ホィール29が一体的に取付けてあり、ブラケット31を介して前記上部フレーム5に支持されたサーボモータ33に備えた駆動ホィール35と前記従動ホィール29とはタイミングベルト37が掛回してある。すなわち、前記ボールねじ機構25とサーボモータ33はタイミングベルト37等を介して連動連結してあるものである。なお、サーボモータ33とボールねじ機構25を直結することも可能である。
したがって、転写装置1の適宜位置に備えた制御装置39の制御の下にサーボモータ33を正,逆回転駆動することにより、移動部材19を、ガイドロッド9,リニアガイド21に沿って垂直に上下動することができる。移動部材19の上下動位置は、移動部材位置検出手段(図示省略)によって検出することができる。前記移動部材位置検出手段としては、たとえばサーボモータ33に備えたロータリーエンコーダ等の回転検出器或は前記リニアガイド21と平行にフレーム3に備えたリニアスケール等を採用することができる。
なお、すでに理解されるように、サーボモータ33等は、移動部材19をZ軸方向で移動位置決めするための移動部材駆動手段の例である。
転写装置1についてさらに説明する。基板テーブル15と移動部材19との間には、型保持体51が設けられている。型保持体51は、下部に凸面53を備えている。凸面53は、基板テーブル15に保持されている基板14(被成形品13)の厚さ方向の一方の面である上面にほぼ平行な状態で対向している。
凸面53は、円柱の側面の一部を用いて形成されている。なお、完全な円柱でなくてもよく、円柱に近似した形状、たとえば楕円柱状であってもよい。さらには、凸面53が、柱状の立体(円、楕円等、所定の形状の平面を、この平面に垂直な方向に所定の距離だけ移動したときに、前記所定の形状の平面の軌跡によって形成される立体)の側面の一部を用いて形成されていてもよい。
型保持体51の凸面53についてより詳しく説明すると、凸面53は、前記円柱の中心軸(前記円柱の高さ方向に延びている中心軸)を含む第1の平面と、前記円柱の中心軸を含み前記第1の平面と小さな角度で交差している第2の平面とで、前記円柱の側面を切断してできる4つの面(面積が大きい2つの面と面積が小さい2つの面)のうちで、面積が小さい1つの面の形状をしている。
なお、凸面53は、前記円柱の径が大きく前記交差角度が小さいので平面に近い形状になっている。前記円柱の中心軸の延伸軸方向(図2の紙面に直角な方向)を凸面53の長さ方向とし、前記円柱側面の周方向(図2のほぼ左右方向)を凸面53の幅方向とすると、図に示すように、たとえば300mmの幅Bに対して中央部が0.1mm(T)程度しか突出しない形状になっている。
したがって、前記円柱の半径は、凸面53の幅Bに対する凸面53の中央部の突出量Tの割合が、たとえば「1/100000〜1/3000」になるような大きな半径になっている。すなわち、前記円柱の半径は、凸面53の幅Bの125倍〜2750倍という大きな値になっている。
そして、凸面53に、転写用の型55を倣わせ、たとえば真空吸着により保持することができるようになっている。型55は、たとえば、Ni電鋳モールドによって生成され、矩形な薄い平板状に形成されている。転写用の超微細なパターンは、型55の一方の面(図2の下側)の面に形成されている。
なお、前記円柱の半径を、凸面53の幅Bに対する凸面53の中央部の突出量Tの割合が、「1/3000〜1/30」になるような半径にしてもよい。すなわち、前記円柱の半径を、凸面53の幅Bの3倍〜125倍という値にしてもよい。たとえば、凸面53の幅Bが300mmである場合、突出量Tを10mm程度まで大きくしてもよい。
また、型保持体51は、移動部材57を介して移動部材19に支持されており、移動部材19の移動に伴い、基板テーブル15に対し接近・離反する方向(上下方向;Z軸方向)で相対的に移動自在になっている。
なお、前記説明では、型保持体51と型55とが別個になっているが、型保持体51と型55とを一体化した構成、すなわち、型保持体51の凸面53に転写パターンを直接設けた構成であってもよい。
また、転写装置1には、押圧手段59が設けられている。押圧手段59は、型保持体51に保持されている型55を、前記基板テーブル駆動手段で所定の位置に移動位置決めされた基板テーブル15に保持されている被成形品13に、型保持体駆動手段で相対的に接近させ、型55で被成形品13を押圧し、型55の転写パターンを被成形品13の被成形層16に転写するときに使用されるものである。
押圧手段59は、前記円柱の中心軸に平行な直線状の押圧部位を、凸面53の一端部から他端部に向かって(図2の左から右に向かって)移動しつつ、型55で被成形品13を押圧するようになっている。
なお、前記押圧部位は、凸面53の長さ方向(図2の紙面の直角な方向)に延びている。また、前記押圧部位は、型保持体51の凸面53に保持されている型55の転写パターンが形成されている面の一部とこの一部の面に接触する被成形品13の面とに形成され、実際にはある程度の幅(図2の左右方向の幅)を備えている。
また、転写装置1には、押圧手段59によって押圧されている押圧部位(押圧部位の近傍を含む)、または、押圧手段59によって押圧されている押圧部位と押圧手段59によってすでに押圧された部位とに、UV光(紫外線)を照射するUV(紫外線)照射手段61が設けられている。なお、押圧される前の硬化を防止するために押圧される前の被成形層16の部位には、紫外線が照射されないようになっている。
転写装置1についてさらに詳しく説明すると、基板テーブル15は、X軸方向およびY軸方向に延伸している矩形状の平面(上面)に、平板状で矩形状の被成形品13を保持するようになっている。被成形品13は、平板状で矩形状の基板14とこの基板14の厚さ方向の一方の面に転写パターンが形成される薄膜状の被成形層16を備えて構成されており、被成形層16が設けられている側の面が現れるようにして(被成形層16が設けられている面とは反対側の下面が基板テーブル15の上面に接触するようにして)、基板テーブル15の上面に保持されるようになっている。
移動部材19の下側には、移動部材57が設けられている。この移動部材57は、リニアガイドベアリング58を介して移動部材19に対してX軸方向で移動自在になっている。また、移動部材57のX軸方向の一方の端部(図2の左側の端部)には、移動部材57が当接するストッパ63が設けられており、移動部材57のX軸方向の他方の端部には、移動部材57を前記ストッパ63側に(図2の左方向に)付勢する圧縮バネ65等の付勢手段が設けられている。
型保持体51の凸面53の内側(図2の上側;凸面53に対して前記円柱の図示しない中心軸が存在している側)でかつ凸面53の中間部(たとえば、X軸方向におけるほぼ中央部)には、揺動中心軸CL1が設けられている。この揺動中心軸CL1はY軸方向に延伸している直線であり、この揺動中心軸CL1を中心にして、型保持体51が、移動部材57に対し揺動自在に支持されている。
なお、揺動中心軸CL1は、凸面53の近傍に位置している。すなわち、揺動中心軸CL1は、前記円柱の中心軸と凸面53との間における凸面53側で、凸面53の近傍に位置している。より詳しくは、図2に示すように、凸面53と揺動中心軸CLとの距離L1は、凸面53の幅Bよりも小さくなっている。なお、距離L1を幅Bと等しいか僅かに大きくしてもよい。
ところで、凸面53が、楕円柱状の立体の側面の一部を用いて形成されている場合にあっては、凸面53は、前記楕円の短軸と平行な平面であって前記楕円柱状の立体の高さ方向に延伸し互いが離れている2つの平面(楕円柱状の立体の高さ方向に延びた中心軸に対して互いが対称な位置に存在している2つの平面)で、前記楕円柱状の立体の側面を切断したときに得られる2種類の凸面のうちで曲率半径が大きいほうの凸面で形成されている。
楕円柱状の立体の側面の一部を用いて形成されている凸面の揺動中心軸も、円柱側面で形成された凸面53の場合と同様に、凸面の近傍に存在している。なお、楕円柱状の立体における長軸と短軸との差を大きくして、楕円柱状の立体で形成された凸面の揺動中心軸を、前記楕円柱状の立体の中心軸に一致させてもよい。
型保持体51と移動部材57との間には、付勢手段とアクチュエータとが設けられている。前記付勢手段は、たとえば、図2の左側に設けられた皿ばね67で構成されており、型保持体51が揺動中心軸CL1を揺動中心にして一方向(図2の矢印AR1の方向)に揺動するように付勢している。一方、前記アクチュエータは、たとえば、図2の右側に設けられたピエゾ素子69で構成され、制御装置39の制御の下、ピエゾ素子69に電圧が印加されこの電圧が徐々に上昇すると、皿ばね67で付勢しているにもかかわらず、ピエゾ素子69が徐々に伸びて、揺動中心軸CL1を揺動中心にして型保持体51が他方向(図2の矢印AR3の方向)に揺動するようになっている。
なお、ピエゾ素子の代わりに、モータ等のアクチュエータを用いてもよい。より詳しくは、たとえば、サーボモータでボールねじのナットを回転させ、前記ボールねじのネジ軸を直線的に移動させ、型保持体51を揺動させてもよい。
被成形品13への転写を行うべく型55で被成形品13への押圧を行う場合には、まず、移動部材19を上昇させ、型55を被成形品13から離しておき、ピエゾ素子69をオフしておく(電圧を印加しない状態にしておく)。なお、図2では型55の部位のうち型55の中央部55Bが最も下側に位置しているが、ピエゾ素子69をオフした状態では、皿ばね67による付勢によって、型55の部位のうち型55の左端(皿ばね67が設けられている側の端)55Aが最も下側に位置している。
このように、型55の左端55Aが最も下側に位置している状態で、型55の左端55Aが被成形品13に所定の圧力をもって当接するまで移動部材19を下降すると、型55は図2に二点鎖線で示すところに位置する。ここで、ピエゾ素子69をオンし(電圧を印加し)、ピエゾ素子69が徐々に延びると、型55(型保持体51)が揺動し、図2に二点鎖線で示す型55と被成形品13との接触位置(型55による押圧位置)が、図2の左から右にむかって移動し、やがては、型55の部位のうち型55の右端55Cが最も下側に位置して被成形品13に当接するようになる。
なお、型55と被成形品13との当接位置(押圧部位)が図2の左から右に移動するときには、型55による被成形品13への押圧力を一定の値に維持すべく、図示しないロードセル(型55による被成形品13への押圧力を測定可能なロードセル;押圧力検出手段)が検出した押圧力によるフィードバック制御を行い、制御装置39によりサーボモータ33のトルクが制御されるものとする。
また、型55と被成形品13との当接位置(押圧部位)が図2の左から右に移動するときには、移動部材19の高さ位置が適宜変化するようになっている。そして、前記円柱の中心軸と凸面53を備えた型保持体51の揺動中心軸CL1とが一致していないにもかかわらず、押圧部位が図2の左から右にむかってスムーズに移動できるようになっている。
サーボモータ33に代えて空気圧シリンダ等の流体圧シリンダを用い、前記シリンダに供給される流体の圧力を制御すれば、前記フィードバックをする場合と同様に、型55による被成形品13への押圧力を一定の値に維持することができる。
なお、図2では、X軸方向において揺動中心軸CL1を中央部に配置し、一方の側に、皿ばね67を配置し他方の側にピエゾ素子69を配置してあるが、揺動中心軸CL1を一方の側に配置し、他方の側に皿ばね67とピエゾ素子69とを配置してもよい。
さらに、前述したように、移動部材57が移動部材19に対してX軸方向で移動するように構成されているので、移動部材19を下降しピエゾ素子69で型保持体51(型55)を揺動し被成形品13を押圧する場合、圧縮バネ65で付勢しているにもかかわらず、移動部材57がストッパ63から離れ、揺動中心軸CL1の位置が、前記押圧部位の移動方向(図2の右方向)に、被成形品13に対して相対的に僅かに移動する。
この揺動中心軸CL1の移動によって、型55における押圧部位の移動の道のりが、平板状の被成形品13における押圧部位の道のりよりも長いことにより発生する不具合(たとえば、型55の転写パターンと被成形層16との間の押圧部位の移動方向(X軸方向)における微妙な位置ずれによる被成形層16に転写されるパターンの変形)を防止することができる。
次に、UV照射手段61について説明する。
基板テーブル15の下側には、平板状のシャッタ71が設けられている。このシャッタ71には、Y軸方向に延びたスリット73が設けられている。このスリット73が設けられていることにより、シャッタ71は図2の右側の部位71Aと左側の部位71Bとに分かれている。シャッタ71は、図示しないガイド部材によってガイドされ、図示しないサーボモータ等のアクチュエータにより、X軸方向で移動するようになっている。したがって、スリット73もX軸方向に移動するようになっている。
また、シャッタ71の下側には、UV光の光源(UVライト)75が設けられている。そして、UVライト75をオンした状態で、制御装置39の制御の下、前記押圧部位の移動に同期させてシャッタ71を移動し、型55で被成形品13を押圧している部位にのみUV光を照射するようになっている。なお、シャッタ71の左側の部位71Bを無くせば、押圧している部位とすでに押圧した部位とにUV光が照射されることになる。
前記押圧部位の移動に同期させてシャッタ71を移動する場合、たとえば、ピエゾ素子69に印加する電圧の値に応じて、シャッタ71を移動するようになっている。
次に、転写装置1の動作について説明する。
まず、初期状態において、基板テーブル15には転写がされる前の被成形品13が保持され、型保持体51が型55を保持し、ピエゾ素子69はオフされており、移動部材19が上方に位置し、型55が被成形品13から離れており、UVライト75はオンされ、シャッタ71のスリット73は、図2に示す位置よりも更に左側に位置しており、被成形品13にはUV光が照射されないようになっているものとする。
前記初期状態から、被成形品13をX軸方向およびY軸方向で適宜位置決めし、型55の左端が被成形品13を押圧するまで移動部材19を下降すると、型55の左端に押圧部位が生成される。このように押圧部位が生成された状態でシャッタ71のスリット73を図2で示す位置に移動し前記生成された押圧部位にUV光を照射し、ピエゾ素子69に電圧を適宜印加し、押圧部位とスリット73とを図2の右方向に移動し転写を行う。
転写の終了後、移動部材19(型55)を上昇し、スリット73を図2の左側に戻し、転写が終了した被成形品13を次の転写を行う被成形品13に交換し、同様に転写を行う。
転写装置1によれば、型55の一端部から他端部に向かって押圧部位を移動しつつ転写を行うので、被成形品13(基板14の被成形層16)に気泡が発生しにくくなっている。すなわち、平板状の被成形品13に平面状の型の全面を押し付けて転写をすると、型の中央部に存在している空気が、型の周辺から外部(押圧面の外部)に逃げにくく、被成形品13に気泡が発生するおそれがあるが、型55の一端部から他端部に向かって押圧部位を移動して被成形品13を押圧すれば、従来のように、空気が逃げにくいという事態は発生しない。
また、従来の転写装置では、気泡の発生を防止するために、押圧がなされる型と基板の部位を真空にする必要があったが、転写装置1では、真空にする必要はなく、装置の構成が簡素になっている。
また、転写装置1によれば、型55の一端部から他端部に向かって押圧部位を移動しつつ転写を行うので、すなわち、型の全面で基板を同時に押圧するわけではないので、転写のための押圧力を従来に比べ小さくすることができ、装置の剛性を上げなくても正確な転写を行うことができる。
さらに、押圧し終えたときに、従来のように型の全面が被成形品にくっついているわけではなく、移動してきた押圧部位のみが被成形品13にくっついているので、被成形品13と型55とを離すための力を小さくすることができ離型が容易になっている。
また、転写装置1によれば、半径の大きな円柱の側面を用いて凸面53が形成されているので、転写されたパターンが崩れにくくなっている。より詳しく説明すると、凸面53の曲率半径が小さいと、転写後に型55が被成形層16から離れる場合、型55の微細な凸部と被成形層16の微細な凸部とが互いに干渉し、被成形層16の微細なパターンが崩れるおそれがあるが、凸面53の曲率半径が大きいので、前記干渉がほとんど発生せず、被成形層16の微細なパターンが崩れにくくなっている。
また、揺動中心軸CL1が凸面53の近傍にあるので、揺動中心軸CL1と前記円柱の中心軸とが互いに一致している場合に比べて、機構を小型化することができる。すなわち、凸面53の曲率半径を大きくし、型保持体51の揺動中心軸CL1を前記円柱の中心軸に一致させるとなると、凸面53と型保持体51の揺動中心軸CL1との間の距離が大きくなり機構が大型化するが、揺動中心軸CL1が凸面53の近傍にあるので、機構を小型化することができるものである。
さらに、揺動中心軸CL1が凸面53の近傍にあるので、アクチュエータ(ピエゾ素子69)で、型保持体51を安定した状態で揺動させることができ、安定した転写を行うことができる。より詳しく説明すると、図2に示す凸面53の幅Bを300mmとし、凸面53の中央部の突出量Tを0.1mmとすると、凸面53の半径は、112.5mとなってしまう。したがって、実際の転写装置において、凸面53の中心と揺動中心軸CL1の位置とを互いに一致させることは極めて困難である。さらに、仮に、凸面53の中心と揺動中心軸CL1の位置とを互いに一致させるとすると、図2に示す距離L1が112.5mになる。距離L1が112.5mになると、転写をするための型51の揺動角度は、極めて小さい値になり、この小さい値をピエゾ素子69等のアクチュエータで制御することは極めて困難である。しかし、本実施形態に係る転写装置1では、距離L1が、幅Bに比べてほぼ同じか小さくなっているので、転写をするための型保持体51の揺動角度を適宜の大きさにすることができ、前記揺動角度をピエゾ素子69等のアクチュエータで制御することが容易になり、的確な転写を行うことができる。
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る転写装置101の概略構成を示す斜視図であり、図4は、図3におけるIV矢視図であり、図5は、図4におけるV矢視図である。
図6は、図4におけるVI部の拡大図であり、図7は図6におけるVII―VII矢視図である。
第2の実施形態に係る転写装置101は、型55に被成形層16を設け、この被成形層16を基板14に移して転写を行う点が、第1の実施形態に係る転写装置1とは異なり、その他の点は第1の実施形態に係る転写装置1とほぼ同様に構成され、ほぼ同様の効果を奏する。
すなわち、第2の実施形態に係る転写装置101は、基板テーブル103と、基板テーブル103に対して相対的に移動自在な型保持体105と、型保持体105をY軸方向で基板テーブル103に対して相対的に移動位置決めするための駆動手段と、型保持体105をZ軸方向で基板テーブル103に対し接近・離反する方向で相対的に移動位置決めするための駆動手段と、型保持体105に保持されている型55の転写パターンが形成されている面に、薄膜状の被成形層16を設ける被成形層設置手段(図示せず)とを備えている。
また、転写装置101は、型55に設けられている被成形層16を基板14に移すべく、型保持体105に保持されている型55であって前記被成形層設置手段により被成形層16が設けられている型55を、基板テーブル103に保持されている基板14に相対的に接近させて、型55で基板14を押圧する場合、直線状の押圧部位を、型55の凸面の一端部から他端部に向かって移動しつつ、型55で基板14を押圧する押圧手段を備えている。
また、転写装置101は、制御装置(図示せず)の制御の下、型55に設けられている第1の被成形層16Aを基板14に移した後、型55を基板14からZ軸方向で相対的に離し、前記被成形層設置手段で型55に第2の被成形層16Bを設け、型55をY軸方向で所定の位置に位置決めし、型55を基板14に相対的に接近させ、前記押圧手段で第2の被成形層16Bを、既に基板14に移されている第1の被成形層16Aにつなげて(第1の被成形層16Aに重ならないようにしかも隙間無く隣接させて)基板14に移すことができるようになっている。
さらに、転写装置101には、前記押圧手段によって押圧されている押圧部位(押圧部位の近傍を含む)、または、前記押圧手段によって押圧されている押圧部位と前記押圧手段によってすでに押圧された部位とに、UV光を照射するUV照射手段108(第1の実施形態に係るUV照射手段61とほぼ同様なUV照射手段)が設けられている。
また、第1の実施形態に係る転写装置1と同様に、前記押圧をする場合、型保持体105の揺動中心軸CL1の位置が、押圧部位の移動方向に、基板14に対して相対的に移動するよう構成されている。
転写装置101についてより詳しく説明する。
転写装置101は、ベース部材107を備えており、このベース部材107の上方には、門型フレーム109が一体的に設けられている。門型フレーム109のビーム111の下部には、矩形状の水平な平面が形成されており、この平面に、平板状で矩形状の基板14を、厚さ方向の一方の面を接触させて保持することができるようになっている。したがって、ビーム111の一部が基板テーブル103を構成しているといえる。
門型フレーム109のビーム111とベース部材107との間には、ベース部材107に対して水平方向の一方向(Y軸方向)に移動自在な移動部材113が設けられている。移動部材113は2つのV字状のガイドによりガイドされて移動することができるようになっていると共に、ボールねじ等の機構を介して駆動手段の例であるサーボモータ等のアクチュエータで駆動され位置決めされるようになっている。
また、門型フレーム109のビーム111と移動部材113との間には、移動部材113に、Y軸方向と直交する水平な他の一方向(X軸方向)に移動自在なように移動部材115が設けられている。移動部材115は、たとえば、リニアガイドベアリング117を介して移動部材113に設けられており、第1の実施形態に係る転写装置1の移動部材57と同様に、付勢手段(図示せず)により付勢されストッパ119に当接している。
また。門型フレーム109のビーム111と移動部材115との間であって移動部材115の上側には、移動部材115に対して上下方向(Z軸方向)に移動自在なように移動部材121が設けられている。
より詳しく説明すると、移動部材115は、矩形な平板状の下側部材123と、上側が開口するように下側部材123に一体的に設けられた矩形な枡状の上側部材125とを備えている。移動部材121は、円柱状の上側部材128と、この上側部材128の両側で上側部材128に一体的に設けられている各下側部材129とで構成されている。各下側部材129は、上側部材125の外側で上側部材125から離れて上側部材128から下方に延びている。
各下側部材129と上側部材125との間には、リニアガイドベアリング127が設けられており、リニアガイドベアリング127により、各下側部材129(移動部材121)が上下方向に移動できるようになっている。また上側部材125の内部には、流体圧シンリンダの例であるエアシリンダ131等のアクチュエータが設けられており、移動部材121を上下方向に駆動することができるようになっている。
円柱状の上側部材128には、ベアリング133を介して型保持体支持部材134が回動自在に設けられており、型保持体支持部材134の上側には、型保持体105が一体的に設けられている。そして型保持体105は、揺動中心軸CL1を中心にして揺動可能になっている。なお、型保持体105の型55を保持する面は、第1の実施形態の場合と同様に円柱側面状の凸面に形成されている。また、第1の実施形態に係る転写装置1と同様に、X軸方向において揺動中心軸CL1の一方の側には、皿ばね135が設けられており、他方の側にはピエゾ素子137が設けられている(図6参照)。
前記被成形層設置手段(図示せず)は、たとえば、Y軸方向において型保持体105が門型フレーム109とは離れた位置(図5に二点鎖線で示す位置)に存在しているときに、型55の転写パターンが形成されている面に薄膜状の被成形層16を設けるように構成されている。また、門型フレーム109のビーム111の上方には、第1の実施形態に係るUV照射手段61と同様に構成されたUV照射手段108が設けられている。
ところで、転写装置101では、門型フレーム109のビーム111の平面が、Y軸方向で型保持体105よりも長く形成されており、前記平面に沿って、Y軸方向で型保持体105(型55)よりも長い基板14を保持可能なようになっている。
そして、図示しない制御装置の制御の下、型保持体105が型55を保持し、門型フレーム109のビーム111が基板14を保持し、型55に被成形層16が設けられておらず、型55が基板14から離れ、ピエゾ素子137がオフし、UV照射手段108によるUV光の照射が停止している初期状態から、前記平面に保持された基板14に、前記被成形層設置手段で型55に設けられた被成形層16を、移動部材113の移動方向(Y軸方向)に並べてしかも互いがつながるように複数回移すべく、移動部材113を適宜移動位置決めし、型55の一端部が基板14を押圧するように移動部材121をZ軸方向で移動し、続いて、ピエゾ素子137を駆動して型55による押圧部位を移動しつつUV照射手段108による照射を行う動作を、複数回行うようになっている。
なお、UV照射手段108を、Y軸方向でUVを照射する位置を変えることができるように構成し、型55で基板14を押圧している部位のみにUV光を照射するように構成することが望ましい。
転写装置101によれば、型55に形成した被成形層16を基板14に移すようにして、転写がなされるので、複数回の転写をつなげて行う場合、つなぎ目においても、転写パターンが乱れるおそれが少なくなる。
すなわち、たとえば、転写パターンよりも大きい被成形層を基板に設けておいてこの被成形層(基板)を型で押圧する構成であると、1回目の転写において、型の転写がされた部位周縁の近傍における被成形層(転写パターンか形成されない被成形層)は、型による押圧によって僅かではあるが変形する。この変形した部位に2回目の転写がなされるので、正確な転写がなされないおそれがある。一方、2回目の転写パターンの周縁の近傍に位置している1回目の転写パターンがなされていた部位でも2回目に転写による変形が発生するおそれがある。
しかし、転写装置101によれば、転写パターンが形成された被成形層16を互いが重ならないように隣接させて基板14に移すので、前述したような押圧による変形は発生せず、正確な転写を行うことができる。
なお、転写装置1や転写装置101は、転写用の型に形成されている転写パターンを基板に転写する転写装置であって、円柱の側面の一部を用いて形成された凸面に、前記型を倣わせて保持可能な型保持体と、前記凸面の一端部から他端部に向かって直線状の押圧部位を移動しつつ、前記型で前記被成形品を押圧する押圧手段とを有し、前記押圧手段は、前記凸面の近傍に位置している軸を揺動中心にして前記型保持体を揺動させ、押圧部位を移動しつつ前記押圧をするように構成されている転写装置の例である。