JP5328778B2 - 誘起引張応力による生物組織成長 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は概して組織の拡張に関し、特に、植込み可能/除去可能なデバイスの一方向的放射状拡張によって誘起される引張応力による生物学的組織成長に関する。
組織成長が持続的な引張応力に応答して開始され持続されうることは、よく知られている。応力はある限られた面積にかけられる力と定義される。そのような引張力(応力)の負荷は多くの形態をとり、皮膚、骨、筋、神経、血管、肺などを含む多くの種類の生体組織においてヒト組織の成長をもたらしている。組織成長を促進するためにそのような引張力を生み出すデバイスには、持続的な力が加わるように組織の様々な部分に付着するフック、スプリングおよび他の機械的デバイスが含まれる。これらの技法は、典型的には再建手術に関連し、そこではヒトの解剖学的構造の一部分が損傷されていて、しばしば持続的な非外来診療を必要とする。そのため、美容整形についてはこのタイプの技法はあまり受け入れられておらず、したがって典型的には外科用インプラントが使用される。インプラントの使用は、組織成長を支援する環境を生み出さない。後述するように、インプラントは、切離された領域に設置され、人工的に生み出された空隙を埋める。こうしてインプラントは偽の新しい組織になり、組織成長のための自然の起動力を排除する。
組織成長を促進するための、外来診療用の非侵襲的なタイプのデバイスも、当技術分野では知られているが、それらは一貫性のない最小限の結果しかもたらしていない。当技術分野で知られている非侵襲的デバイスは、適用可能な組織上に引張力を生じさせる目的で、皮膚への不規則で一貫性のないわずかな吸引力の適用をもたらす。そうすることで、非侵襲的技法は、吸引力にさらされる全体的領域における、制御も方向付けもなされない組織成長を得ようとする。
多少の組織成長を促進するのには成功しているものの、非侵襲的技法には、日々の使用者の相互作用が要求され、一貫性のない、そしてしばしば非対称的な結果をもたらすという共通の問題がある。その上、組織成長が起こるためには、長期間にわたり一貫して引張力が加えられるべきであることも、よく知られている。デバイスの誤用または一貫性のない使用は、とりわけ処置の初期段階においては、組織生成を抑制する。このタイプのデバイスは、典型的には、扱いにくく不便であり、使用者の日々の活動を制限する。
侵襲的技法については、効果的であるだけでなく患者がその日々の活動を続けることを可能にする、目標とする組織成長のための環境を生み出すことが課題になっている。従来は、腹腔鏡手技または他の低侵襲外科手技(植込みを包含する)の実行を容易にするための解剖学的作業スペースを生み出すために、膨張可能なデバイスを利用して組織層が切離されてきた。外科用バルーン切離デバイスをある領域に挿入し、それを膨張させて空隙を生み出し、そこにインプラントを設置する。過去の鈍的切離技法とは対照的に、切離バルーンは、解剖学的構造中の自然の組織面または組織境界を尊重しつつ、組織ポケットを生み出す。
組織拡張具として知られる第2のタイプの膨張可能なデバイスまたはバルーンは、流体で満たされた組織拡張具に応答して上層の皮膚および組織が徐々に変化し拡張するにつれて、先に切離したポケットを時間をかけて徐々に拡張するための一時的インプラントとして利用されてきた。そのような組織拡張具は、典型的には、皮膚組織が徐々に変化し拡張しうるように、長期間にわたって所定の位置に置かれる。したがって、組織が時間の経過と共に徐々に拡張するにつれて、流体を追加する拡張具の定期的な調節が要求される。皮膚および周囲組織における成長は促進されるが、ポケットまたは空隙は比較的固い組織拡張具で満たされているので、空隙における組織成長はまれにしか起こらない。
豊胸は伝統的に、上述の技法を使用した後、2タイプのインプラント(シリコーンまたは食塩水)の一方を挿入することによって行われてきた。食塩水インプラントには手術時に食塩水が充填される。このタイプのインプラントは、非常に小さい切開を通して、収縮した形態で挿入することができ、体内の所定の位置に配置されてから、その最終サイズへと膨張させることができる。膨張した状態で植え込まれるシリコーンインプラントは、より堅く、薄い軟組織の下ではより目立つので、ほとんどの場合、大胸筋の下への設置(胸筋下設置)が要求される。これは外科手術の長さおよび複雑さならびに術後回復に要する時間を増加させる。どちらの技法も、実際の乳房組織が成長するわけではないので、異物、すなわちインプラントを体内に留めておく必要がある。
簡単に述べると、本発明の実施形態では、新しい組織成長を促進する除去可能なデバイスを人体内に植え込む。組織拡張デバイスは組織成長が望まれる領域にわたって植え込まれる。植込み時のデバイスは活性化されていない収縮した状態にある。デバイスは、組織成長が望まれる領域にわたって植え込まれ配置されたら、活性化される。本発明の一実施形態では、組織拡張デバイスの一つ以上のトロイド状、らせん状または他の形状の容器中に流体が注入される。容器は外膜および内膜内に収容される。これらの膜は、容器の構造的構成と相まって、支持構造を生み出し、この支持構造は、一実施形態では、組織拡張デバイスの内膜下に凸状ドームまたは空隙スペースを生み出す。
組織拡張デバイスによって形成されるドームまたは空隙は、上層の組織に対して、引張力を課す。この引張力に適応するために、上層の組織(大半の例では皮膚)が、新しい組織を形成することによって伸展または伸長する。同様に、凸状の組織拡張デバイスは、デバイスの下に空隙を生み出し、それが、下層の組織を引上げる減圧または吸引圧または力を(例えば、空隙またはポケットと、漸次または段階的に膨張または拡張させたデバイスの外側にある環境との間の圧力差によって)生み出すことなどにより、組織拡張デバイスの下層の組織に引張応力を課す。この誘起引張応力は組織成長を促進する。それだけで、または組織増強作用物質の導入を伴って、凸状形状内の新しい組織は、応力平衡が達成されるまで成長する。新しい組織成長によって引張応力がなくなったら、それ以後の成長は抑制される。したがって、組織拡張デバイスをもう一度活性化し拡大させて、さらに大きな空隙(または古いもしくは元の空隙スペースが下層の組織の成長で埋められたとき、新しい空隙スペース)を生み出す。新たに拡大された空隙が、下層の組織および上層の組織に新たな引張応力を課すことにより、新しい組織成長のサイクルが繰り返される。
新しい組織成長が所望の体積に達したら、組織拡張デバイスを不活化する。本発明の一実施形態では、組織拡張デバイスを構成するトロイド状容器内から流体を抜き取ることによって不活化が行われる。不活化に続いて、組織拡張デバイスを低侵襲性外科手技によってその領域から抜き取る。
本発明の別の態様は、身体の特定領域への組織拡張デバイスの外部適用である。本発明のこの実施形態では、組織拡張デバイスを収縮状態で、医用接着剤または類似の物品を使って皮膚の外表面に付着させる。接着剤によって形成される皮膚とデバイスとの間の結合は気密シールを生み出す。流体がデバイス中に注入されるにつれて、デバイス内のチャンバーが拡張して、ドーム様または凸状の形状を生み出す。デバイスの底面が凸状形状へと引き揚げられるにつれて、付着させた皮膚も生み出された空隙中に持ち込まれる。その結果生じる皮膚に対する穏やかな吸引力または引張力は、皮膚組織の内層と外層との間に、減圧のポケットおよび吸引力を生み出す。この継続的引張力は、その領域内での組織成長を促進して、空隙を埋め、減圧の区域および張力を身体から排除する。その領域が拡張された組織成長によって平衡に達したら、追加の流体をデバイス内に注入して、凸状形状をさらに拡大し、張力の区域を再び確立する。組織拡張デバイスを体内に植え込んだ実施形態の場合と同様に、デバイスの拡張は、新しい組織成長が所望の量に到達するまで継続される。組織成長が望ましい体積に到達したら、デバイスを流体の除去によって収縮させ、皮膚の表面から取り除く。
本発明の別の実施形態では、組織拡張デバイスの適用(その植込み適用、または皮膚表面に外から付着させる適用のいずれか)を、組織成長を促進する作用物質と組み合わせる。本発明のさまざまな実施形態に関して本明細書で使用する「作用物質」という用語は、広く解釈されるものとし、例えば未精製型および精製型の脂肪組織(自己由来および非自己由来)、および/または組織成長を促進する細胞もしくは他の医薬で強化された脂肪組織を包含するが、これらに限るわけではない。これらの作用物質は、組織拡張デバイスによって生み出された空隙内に注入される。別の実施形態では、作用物質には、幹細胞、前駆細胞、脂肪由来細胞、例えば内皮細胞前駆細胞(幹細胞ではない)、および他の増殖細胞(分化の方向付けられた(differentiation-committed)細胞および他の再生細胞を含む)が含まれる。これらの作用物質は組織成長を促進するために空隙内に注入される。これらの作用物質のそれぞれは、単独で、または組み合わされて、組織成長を促進するために、組織拡張デバイスによって生み出された空隙内に注入することができる。
本発明の一実施形態では、脂肪組織(好ましくは患者から収集されたものであるが、必ずしもそうでない)を、本発明の組織拡張デバイスが生み出す空隙内に注入する。典型的には、患者の臀部、腹部または大腿部から脂肪組織が収集される。本発明の一実施形態によれば、患者から収集された未精製脂肪組織が空隙内に注入され、本発明の別の実施形態では、脂肪組織が精製されおよび/または小分けされる。本発明のこの実施形態によれば、第1の組織小分け部分を保存しておき、第2部分を加工して幹細胞を分離、抽出する。次に、抽出された幹細胞を保存しておいた精製脂肪組織の第1部分と組み合わせて、抽出された幹細胞で強化された精製脂肪組織標品を作り出す。本発明の別の実施形態では、未精製脂肪を収集し、上述のように分離抽出された幹細胞と組み合わせる。本発明の別の実施形態では、新しい組織成長を促進するために、脂肪由来細胞、例えば分化の方向付けられた内皮細胞前駆細胞、および当業者に知られている他の増殖細胞を、脂肪組織と組み合せるか、または組織拡張デバイスが生み出した空隙内に別個に注入することができる。さまざまな成長因子も注入することができる。実際、本発明では、組織拡張デバイスと組み合わせて使用されるこれらのおよび他の作用物質、組織および/または細胞のあらゆる組合せが考えられる。
上に定義した脂肪組織および/または他の作用物質は、組織拡張デバイスが生み出す空隙内に、1回以上の注入によって導入される。新しい組織が形成され、空隙内の応力が低減または排除されると、組織拡張デバイスの構造部材内に追加の流体を導入することによって、組織拡張デバイスを拡張させる。新たに拡張された組織拡張デバイスは、組織成長が望まれる区域上に、引張応力の領域を再び生み出す。実質上それと同時に、再び組織成長を促進するために、再び生み出されたまたは拡張された空隙内に、脂肪組織および/または組織成長を促進するための他の作用物質が、1回以上追加注入される。新しい組織が所望の体積に達するまで、このプロセスが繰り返される。
この開示および以下の詳細な説明において述べる特徴および利点は網羅的ではなく、特に、数多くの追加の特徴および利点が、本願の図面、明細書および特許請求の範囲に照らして、関連技術分野の当業者には明白になるだろう。さらにまた、本明細書で使用する表現は、主として、読みやすいように、説明を目的として選択されたものであり、本発明の内容を限定しまたは制限するために選択されたものではない場合があるため、本発明の内容を決定するには特許請求の範囲に依拠する必要があることに注意すべきである。
以下に述べる好ましい実施形態の説明を参照し、それを添付の図面と合わせて解釈することによって、本発明の上述のおよび他の特徴および目的ならびにそれらを達成する方法はより明白になり、本発明そのものが最も良く理解されるだろう。
図1は、ヒト乳房の解剖学的構造の正面図であり、一部分は皮下の詳細を示している。 図2は、皮下層から胸郭までを示すヒト乳房の解剖学的構造の断面図である。 図3は、浅在筋膜と深在筋膜との間の筋膜裂を示すヒトの解剖学的構造の典型的部分の断面図である。 図4は、本発明の一実施形態に従って組織ポケットを生み出すための組織拡張デバイスの植込みおよび向きを図解した、組織の簡略化された断面図である。 図5A〜5Dは、組織拡張デバイスを使用する、本発明の一実施形態に従うくぼんだ組織ポケットの漸進的形成を図解した、同じヒト皮膚組織の簡略化された断面図である。 図6A〜6Cは、外部適用型組織拡張デバイスを使用する、本発明の一実施形態に従うくぼんだ組織ポケットの漸進的形成を図解した、同じヒト皮膚組織の簡略化された断面図である。 図7は、耐荷重構造を有する組織拡張 デバイスの本発明の一実施形態の断面図である。 図8Aおよび8Bは、本発明の一実施形態に従って凸状組織ポケットを生み出すための、薄壁圧力容器に収容されたトロイド状部材を有する組織拡張デバイスの、それぞれ上面または平面図および断面図である。 図9Aは、凸状組織ポケットを生み出すための、薄壁圧力容器に収容された単一らせん状容器を有する本発明の組織拡張デバイスの一実施形態の断面図である。図9Bは、薄壁圧力容器に収容された単一らせん状容器を有する組織拡張デバイスの図9Aに示す本発明の実施形態の平面または上面図である。 図10は、本発明の組織拡張デバイスを使って組織成長を促進するための方法の実施形態の一つである。
図面は単に例示を目的として本発明の実施形態を示すものである。本明細書に記載する本発明の原理から逸脱することなく、ここに示した構造および方法の代替実施形態を利用しうることは、以下の説明から、当業者には容易にわかるだろう。
本発明の具体的実施形態を、添付の図面を参照しながら、以下に詳しく説明する。複数の図における類似する要素は、一貫性を保つために、類似する参照番号で識別される。本発明をある程度詳しく説明し図解したが、本開示は単に例示のためになされているにすぎず、当業者は本発明の要旨または範囲から逸脱することなく、構成部分の組合せおよび配列に数多くの変化を加えることができると理解される。
上述のように、穏やかで持続的で均一な張力にさらされると、あらゆるタイプのヒト組織が成長し、新しい正常組織を生成するだろう。伸張または伸展は、ヒト組織の正常な成長、再生および正常な平衡に関与する機構である。このプロセスは、身体自身が持つ成長および治癒のための自然の機構である。例えば、手に切り傷ができると、切り傷周辺部に張りができる。この傷を治癒するために、身体はその部分に張力を課して、張りを生じ、それによってその部分が治癒するまで細胞複製を活性化する。
本発明の一実施形態によれば、実験室試験で証明されるように、低侵襲性組織拡張デバイスが、身体の特定領域内に、持続的な引張応力状態を生じさせ、それが下層の組織を成長させる。デバイスは、穏やかにかつ漸進的に組織を前方に引張って、その組織を持続的張力に応答して成長させる。この「引張り」は、例えばデバイスの内側と外側の圧力に所望の差異を生み出すことなどによって、拡張デバイスの内膜が規定する空隙中に生じた吸引力または減圧力に基づきうる。持続的な機械的張力(応力)は、生化学的シグナルによって細胞に伝達され、それが細胞成長を引き起こすことによって、新しい生成組織が生じる。その後、新しい組織が成長した後は、通常の平衡(すなわち応力なし)が回復される。
靱帯、例えば乳房の乳房下部靱帯は、筋膜と皮膚を接合している。ヒト筋膜は簡単に言えば、身体内の臓器または部分を包み、支持し、または一つにまとめる結合組織の帯または鞘である。身体のある部分、例えば乳房では、筋膜の層間の融合点が、明瞭な境界を生み出していて、それを外科医は切離(特にバルーン切離)時に効果的に使って、靱帯によって接合された層の間に、解剖学的に明瞭なスペースを生み出すことができる。例えば乳房、前腕、脚、および眉弓中において、そのような有用な境界を形成する靱帯が確認されている。本明細書に記載する原理が、そのような筋膜境界が存在する任意の身体領域に応用できることは、外科医、特に形成外科医および他の当業者には理解されるだろう。開示する実施形態の多くは、特に乳房組織の生成に関して議論されているが、当業者であれば、これらの実施形態が典型例としての性質を持つこと、そして本明細書に提示する技法および概念は身体中の任意の軟組織成長を促進するために使用できることがわかるだろう。さらにまた、本明細書に記載する原理が、組織成長の促進が有益であるだろう他のさまざまな外科処置(例えば手根管症候群の処置)に応用できることも、当業者には理解されるだろう。
知られているとおり、乳房靱帯は、乳房の周りに円周状の靱帯を形成して、浅在筋膜と深在筋膜との間に円周状の融合を形成する。乳房を完全に取り囲んで浅在筋膜と深在筋膜との間の裂に円形の境界を形成するこの結合靱帯を、ここでは、円周状乳房靱帯という。この円周状乳房靱帯は、二つの組織層をつなぐ自然の境界を形成し、それを、該層間を切離する外科医が切離の程度を決定し限定するために使用しうる。これらの明確な層は、本明細書に開示するとおり、組織成長の領域も提供することが見出された。
最初に図1および図2を参照して述べると、ヒト乳房60の解剖学的構造の正面図および側面図が図解されている。表皮層62は真皮層64の上にある。真皮層64の下には皮下脂肪の層66がある。提靱帯68は、皮下脂肪の層66内に位置し、乳房60を正常な位置に保持する。腺小葉70は乳頭72の周りに放射状に配列する。各腺葉70はそれぞれの乳管74を持ち、それらは乳頭72上で開口している。乳頭72は乳輪88で囲まれる。大胸筋76は胸壁および肋骨78を覆い、浅在筋膜の層80によって覆われる。肋骨78と周囲の肋間血管および肋間神経84との間に位置する肋間筋82が示されている。肺86は肋骨78の後ろに位置する。
図3を参照して述べると、特に浅在筋膜と深在筋膜との間の筋膜裂を図解した、ヒト皮膚組織の解剖学的構造の断面図が示されている。脂肪層66内の表在血管12は貫通血管20につながり、貫通血管は深在血管22につながっている。組織層を接合する垂直な皮膚靱帯26も脂肪層66内に示されている。筋25は深在筋膜の薄層18によって覆われる。脂肪層66は浅在筋膜の薄層14で包まれる。天然の組織面または筋膜裂16(図3では間隙として示されているが、切離前に間隙は存在しない)が浅在筋膜14と深在筋膜18との間に見出される。この筋膜裂16は、切離バルーンによってたやすく切離されて解剖学的空洞を生み出しうる人体内の潜在的スペースとみなすことができる。これらの組織層を接合する靱帯は、該潜在的スペースの境界を定義し、バルーン切離時に生み出される潜在的スペースを限定することが見出された。
本発明の一実施形態によれば、また図4をさらに参照して述べると、組織拡張デバイス100が、組織成長を支持する環境を生み出すために、外層130(例えば腺状乳房組織)と内層120(例えば下層の筋膜)との間に植え込まれる。本発明の一実施形態によれば、腋窩切開が施され、その腋窩切開から腺状乳房組織の下層にある所望の位置まで内側および内部へトンネルを形成する。組織拡張デバイス100を、内層の筋膜120と外層の腺状乳房組織130との間の天然の潜在的スペース内に前進させて、そこに配置する。あるいは、天然の組織面を定義する浅在筋膜と深在筋膜との間に組織拡張デバイスを配置することができる。そのような天然組織面に沿った切離は、事実上無血のスペースが生み出されうる点で望ましい。本発明では実施例および図面の多くが、豊胸または乳房組織成長に関連して、組織成長用の環境を生み出すための本発明の適用を説明しているが、本明細書に提示する組織拡張デバイスおよび技法が、組織の成長を促進するために身体中の数多くの他の適用および場所に利用できることは、関連技術分野の当業者には理解されるだろう。
組織拡張デバイス100は、流体をデバイス100中に導入できるようにするためのアクセス部位110も有する。アクセス部位は、デバイス100から表皮の上に延びる付属品であるか、あるいは皮下にあって経皮注射によってアクセス可能なものであることができる。注入された流体は、組織拡張デバイス110内の構造を膨張させて、上層の組織の抵抗を受けるドームの形状に似た凸状の形状を生み出す。本発明の一実施形態によれば、組織拡張デバイス100は、外層または外膜135および内層または内膜145に収容された膨張可能/拡張可能な領域160または容器を含む。「ドーム」という用語の使用は、比較的広く解釈されて、拡張デバイス110によって形成されるほとんど任意の空隙を包含するものとする。例えば、空隙の形状は、円形、卵形、楕円形または他の形の周縁部を持つ、デバイス110の膨張させた壁の深さまたは高さによって定義される特定の厚さを持つディスクまたはプレートであることができると予想される。言い換えると、ドームは、組織がデバイス110の内膜145に向かって成長するにつれて(そして次に、所望の再成長体積が得られるまで、組織を引き出してさらなる成長を引き起こすために、再び膨張させるにつれて)、デバイス110の下層にある元の組織または組織表面から漸増的にまたは漸次に離れて体積を漸増させる、比較的薄いプレートまたは空隙であると考えることができる。
本発明の一実施形態によれば、組織拡張デバイス100は、その活性化された膨張状態、すなわち「オン」状態では、凸状ドームのそれに似ている。ドーム(組織拡張デバイス)のサイズはデバイス中に注入される流体の量によって制御される。ドームは、球体の中空の上半分に似た一般的構造要素であり、典型的には円形の平面を有する。また、ドームは全ての方向に等しい力を課すように構築または構成することができるが、断面が完全に球状である必要はない。例えばドームは楕円のセクションであってもよい。ベースラインを楕円の二つの直径のうちの短い方と平行にとると、背の高いドームが生じ、上向きに伸びる感じを与える。一方、長軸を横切る断面は、その体積を抑えた背の低いドームをもたらす。ドームは、アーチをその垂直軸の周りに回転させたものとみなすこともできる。
ドームは凸状の形状で、内部が中空でくぼんでいる。従来のバルーン切離またはインプラントとは異なり、本発明の組織拡張デバイス(ドーム)の下にあるくぼんだスペースは開いた空隙状態を保つ。その空隙を取り囲む組織による力の分布は、新しい組織成長に関与する空隙内に引張応力を生じさせる。空隙の内側領域内の引張応力は、組織拡張デバイスによって与えられる圧力差によって生じる。組織拡張デバイスのサイズが増加するにつれて、デバイスの上層にある皮膚または組織は張り、拡張に対して等しくて反対向きの抵抗力を示す。これらの力は組織拡張デバイスの基部を支持する組織に伝達される。空隙の下にある領域は、組織拡張デバイスおよび乱されていない正常組織に対してかけられる圧力と比較して、低下した内圧にさらされる。空隙内の低下した内圧は、空隙領域全体にわたって分布するわずかな牽引力または引張力として、下層の組織に伝わる。この引張応力は組織成長を促進する。ここでも、組織拡張デバイスの形状を変化しても、新しい組織成長を生じさせる点では同等に有効でありうることは、当業者にはわかるだろう。したがって、デバイスのサイズおよび形状は、人体の他の解剖学的部分に対応するように構成させることができる。これらの設計のそれぞれにおいて、結果として生じる構造は、その下での組織成長を促進する中空の凸状形状のものまたは空隙を与える。
図5A〜5Dを参照すれば、組織拡張デバイス100に関する本発明の適用の進行ステップを見ることができる。図5Aは、外層130および内層120を含むヒト皮膚組織が植込み前の状態で存在する時の解剖学的構造の簡略化された断面図を表す。図5Bは、組織拡張デバイス100が組織の内層120と外層130との間に挿入されている、低侵襲性外科手術後の同じ皮膚組織を示す。組織拡張デバイスは、その収縮状態、すなわち「オフ」状態では、周囲の組織をごくわずかしか押しのけない。図5Cは、組織拡張デバイス100が拡張モードになった皮膚組織の同じ断面を示す。アクセス部位(図示されていない)を通して、組織拡張デバイス100中に流体を注入して、凸状のドーム様形状を生み出させる。組織拡張デバイス100の膨張した形状は、個々の適用に応じて、さまざまであることができる。図5A〜5Dは、本発明の一般的断面図を順を追って表すものである。
膨張させた組織拡張デバイス100の凸状の形状は、さまざまな力の矢150で表される力の平衡によって形成される。組織の外層130はデバイス100の拡張に抵抗する。同様に、組織の下層120は、組織拡張デバイス100の凸状形状によって形成されるくぼんだ空隙170内に押しやられまいと抵抗して、それに、ある度合の引張応力を課す。組織拡張デバイスが拡張される度合は担当医によって制御されるが、一般的には、その部位に外傷が生じるのを防ぎまたは最小限に抑えるために、漸進的である。その結果生じる対抗力150と、片側を組織拡張デバイス100、もう一方の側を下の組織層120に囲まれた空隙170とが、新しい組織成長180のための環境をつくり出す。
組織拡張デバイス100によって生み出された空隙170内で新しい組織180が成長するにつれて、内層120上の引張応力は減少し、最終的には排除される。引張応力が排除されると、新しい組織成長のための起動力が薄れ、その領域は再び平衡状態になる。同様に、組織拡張デバイス100によって生み出された増加した体積に適応するために皮膚または真皮層が伸展されるので、外層130もある程度の新しい組織成長を起こす。身体は組織拡張デバイスによって誘起された応力を軽減しようとするので、その領域が張力を受けている間に、空隙170は、生物学的漿液によって満たされる。そのような場合、本発明の一実施形態によれば、細胞培養および/または組織が生物学的漿液内で成長することを可能にする作用物質の導入によって、空隙170内での組織再生が惹起または強化されうる。前述のように、組織拡張デバイス100の適用(その植込み適用、または皮膚表面に外から付着させる適用のいずれか)は、組織成長を促進する作用物質と組み合わされる。生成させた空隙170内での新しい組織の成長を支援し促進するためのこれらのおよび他の技法を、本明細書に記載する組織拡張デバイス100の使用と併せて利用することが考えられる。
本発明の一実施形態では、新しい組織成長180が、組織拡張デバイス100によって作り出された空隙170内への、脂肪組織の漸進的導入によって促進される。脂肪組織または脂肪は、典型的には、脂肪細胞からなるルーズな結合組織である。本発明の典型的な実施形態の一つでは、脂肪組織を空隙170内に注入する。脂肪組織は自己由来または非自己由来であることができ、精製された形態または未精製の形態で空隙170内に注入することができる。脂肪組織などの一つ以上の作用物質の注入は、組織成長を促進すると共に被膜拘縮などの合併症を減少させるために、さまざまな体積で長期間にわたって行うことができる。
本発明のさらに別の実施形態によれば、脂肪組織(好ましくは患者から収集されたもの)が、後で使用するために保存しておく一部分と、幹細胞を抽出するために精製される第2の部分とに分割される。この精製プロセスは、一般に、収集した脂肪組織から水およびトリグリセリドを分離するだけでなく、脂肪組織中の成熟脂肪細胞の一部を損傷しまたはその傷害を引き起こすように選択された回転速度および回転時間での遠心分離を伴う。興味深いことに、この精製プロセスは、成熟脂肪細胞を比較的損傷されていない状態に保とうとするのではなく、脂肪組織中の成熟脂肪細胞の一部をさらに損傷して、植込み後に患者の身体によるそのクリアランスを早めるように設計される。水、トリグリセリド、および損傷した成熟脂肪細胞からの油(ならびに他の副産物または組織成分)は、精製された脂肪組織からは分離され、捨てられて、抽出された幹細胞を後に残す。次に、第2部分から抽出された幹細胞を、保存しておいた第1部分と組み合わせて、増加した幹細胞濃度によって強化された未精製脂肪組織標品を作る。このプロセスは、脂肪組織の収集中に損傷を受けた可能性がある脂肪細胞を置き換え、よって組織成長を促進するのに役立つ。次に、この脂肪組織と幹細胞との強化混合物を空隙170内に注入する。
本発明の一実施形態によって脂肪組織または脂肪吸引物を調達および処理するための手順には、患者(または他のドナー)の脂肪組織の収集に加えて、外的に幹細胞を分離および培養する必要を伴わない組織の精製が含まれる。前述のように、脂肪吸引物精製手順は、収集された脂肪組織中に貯蔵されたトリグリセリドの大部分を除去し、脂肪組織(すなわち精製脂肪組織)を、その水分および損傷された脂肪細胞の破壊によって生じる油分から分離するように設計される。本発明のこの精製技法を使用する利点は、患者の体外で追加組織を成長させるためのどの種類の細胞培養も必要ないことである。そのような外的培養を回避することにより、微生物汚染のリスクがより良く管理され、組織調製プロセスの複雑度が低下し、関連コストが抑制または低減される。この精製プロセスまたは組織調製プロセスのさらなる利点は、このプロセスが脂肪由来幹細胞(ADAS)を分離または抽出するという技術的に困難なステップを必要とせず、むしろADASを、その自然の支持構造または3D足場内に留めておき、それにより脈管形成および他の利益を促進することである。
臨床治験では、精製脂肪組織の導入によって、有望な結果が得られている。組織移植プロセスには、ドナー部位としてある区域(例えば膝の内側域、腹部域、臀部、または転子域)を選択すること、そしてその区域に、500ccあたり15ccのアドレナリンおよび20〜30ccのリドカイン0.5%を追加した冷食塩液を浸透させることが含まれた。脂肪組織は、直径2mmのカニューレおよび3ccシリンジを使って取り除かれた。一実施形態によれば、そのシリンジを直接、遠心機に設置し、次にその遠心機を2700rpmに設定して15分間稼働させたところ、注射用の精製脂肪組織が、その水分および損傷脂肪細胞の破壊に起因する油分から分離された。前述のように、油層および残存液体(トリグリセリドを含む)は捨てた。その脂肪組織を、直径1mmの注入カニューレを使って、ADASまたは精製脂肪組織の実質的に均一な分布が保証されるような注入点および経路の術前計画またはモデルに従って作成された単一トンネルまたは経路で、同じ患者に植え込んだ。
移植される組織中に存在する大量のトリグリセリドは望ましくない肉芽腫を生成させる。したがって本発明の組織移植方法は、一実施形態によれば、収集された組織中に貯蔵されたトリグリセリドの大部分を除去することを目的とする精製手順を含む。本明細書に開示する精製プロセスは、細胞培養に関連する微生物汚染のリスクを低減する。加えて、幹細胞またはADASが、微小血管床の再構築に有利な自然のまたは既存の3D足場または支持構造中に維持される。精製手順後に行われた脂肪組織の超微細構造検査では、血管周囲部位の内皮細胞および間葉系幹細胞からなる、よく保存された脈管-支質成分中の要素の存在が確認される。精製脂肪組織中に残っている残存成熟脂肪細胞は、細胞質膜の断絶を示し、細胞壊死までに及ぶさまざまな度合の変性を呈した。
本発明の一実施形態によれば、精製脂肪組織の幹細胞は、損傷部分、または増加した引張力にさらされている部分を標的とする。第2段階またはそれ以降の段階では、幹細胞が新しい微小血管の産生につながる血管新生因子を分泌し、新たに形成された血管は透過性が高い傾向にあるので、その新しい微小血管が組織に水分を与える。すなわち、幹細胞が損傷または応力を受けた部分を標的とするときの(これには、凝集または低均一性分配技法よりも、患部域への直接的かつ均一な注入の方が有利である)、組織の「間葉化(mesemchymalization)」につながる一連の事象は、血管新生因子の放出;新しい血管の形成;および水分の提供である。このプロセスは、成熟脂肪細胞におけるADASの発生に有利である。脂肪組織の注入後は、新たに形成された微小循環が既存の微小循環に取って代わる。
強化された脂肪組織の注入は、一般的には、シリンジまたは類似の器具で行われる。注入点および注入経路を含む術前計画により、外科医には、術中ガイダンス用のマップ、または脂肪組織(典型的には精製脂肪組織)配置を高レベルな均一性で達成することを目指すマップが提供される。術前計画は、例えば非精製脂肪組織、幹細胞を追加した脂肪組織、または他の組織/細胞(例えば、分離されていても解離されていなくてもよい、間葉細胞、とりわけ平滑筋もしくは骨格筋細胞、筋細胞(筋幹細胞)、軟骨細胞、脂肪細胞、線維筋芽細胞、外胚葉細胞、または神経細胞)など、ほぼ全ての組織移植または植込みに利するだろう。さらに、成長因子、血管因子、抗炎症因子、選択的成長阻害因子なども、組織の植込みと共に、または組織の植込み後に与えることができる。組織および細胞は、好ましくは、生検によって取得され、培養中で増やされた、自己由来細胞であるが、近親者または他のドナー由来の細胞を例えば適当な免疫抑制と共に使用することもできる。免疫学的に不活性な細胞、例えば胚細胞、幹細胞、および免疫抑制の必要性を回避するために遺伝子操作された細胞も使用しうる。
本発明の他の実施形態では、空隙170内に導入される作用物質が、薬学的刺激、未分化幹細胞、分化幹細胞、内皮細胞前駆体、および/または他の増殖細胞(分化の方向付けられた細胞を含む)の標品を含む。
空隙内に注入される作用物質の総体積は、本明細書に提示する実施形態に従って本発明を実施するために、また患者毎に、広範囲にわたって変動しうる。一例として、乳房インプラントの平均サイズは325〜400ccの範囲にあり、乳房再構築または豊胸を行うには、精製脂肪組織などの作用物質を400ccまでまたはそれ以上用意しておくことが望ましいだろう。実際、所望する体積の組織成長または組織拡張が起こるまで、組織拡張デバイス100からの張力の増加と組み合わせて、本明細書に記載する作用物質をさまざまな体積で複数回注入することができる。
新しい組織180の成長および/または組織促進作用物質の注入によって力150(例えば圧力)の完全な平衡が起こる前に、組織拡張デバイス100を(図5Dに示すように)再び拡張させることで、空隙170を拡張し、外組織層130および内組織層120に負荷される引張応力を再び生み出す。このプロセスは、所望する量の拡張とそれに対応する新しい組織成長が空隙170内で起こるまで反復される。臨床治験により、永続的な組織成長が起こるためには、誘起応力および拡張プロセスを数週間または数ヶ月にわたって一貫して起こすべきであることが示されている。乳房組織の促進については、平均的な乳房インプラントを複製するには、空隙170を325〜400立方センチメートルまたはそれ以上の体積まで拡張する必要があるだろう。前述のように、所望の結果が達成されるまで継続的組織成長を促進するために、空隙の体積を時間の経過と共に漸進的に増加させる。
所望する量の成長が起こり、組織拡張デバイス100によって誘起される力150が新しい組織成長180によって排除されたら、新たに成長した自然の組織を後に残して、組織拡張デバイス100を取り除くことができる。本発明により、患者の関与は最小限で、組織成長を、特定の標的部位において増加した速度で起こすことが可能になる。さらにまた、例示の図面およびそれに対応する説明では、対称的なドーム様または円錐形のデバイスが提示されているが、本発明は、凸状の領域または空隙をデバイスの下に生み出すことが可能である限り、他の幾何学的形状にも同様に適用することができる。
本発明の別の実施形態によれば、図6A〜6Cに示すように、組織拡張デバイス100が、組織成長が望まれる領域の上に重層される。図5A〜5Dの場合と同様に、図6A〜6Cは、ヒト皮膚組織の簡略化された断面図を表す。本発明のこの実施形態では、皮膚組織(皮膚)の外層の外表面に、組織拡張デバイスを付着させる。デバイス100は、医学分野の当業者には知られているであろうさまざまな接着剤によって、皮膚の外層に付着させることができる。皮膚へのデバイス100の付着は、下層の組織成長180と共に皮膚が拡張し、組織拡張デバイス100の拡張によって空隙が形成されうるように、耐久性かつフレキシブルである。皮膚とデバイス100との間の結合は、以下の段落で説明するように、組織拡張デバイスの活性化および拡張時に陰圧の領域が生み出されるように、シールをもたらす。
組織拡張デバイス100は、その収縮した状態では、単に、下層の組織130の自然の外形に沿っているに過ぎない。デバイス100に流体が注入されると、デバイスの拡張可能な区分が充満して凸状またはドーム様の形状を生み出す。図5Bに示すようなデバイス100の漸進的拡張が、減圧された領域、またはその領域に対する穏やかな吸引作用をもたらし、それがその下における組織成長180を促進する。ここでも、組織成長180が、皮膚組織の外層130と内層120との間に生み出された空隙領域中で起こる。デバイス100は、その下に新しく形成される組織180に適応するために皮膚が伸展し成長する時にもしっかりと付着した状態を保つように、皮膚に付着させる。所望する組織成長の体積、およびデバイス内に流体を注入する回数に応じて、組織拡張デバイス100を収縮させ、取り除き、次に、下層の皮膚への新しい適用において再付着させることができる。そのようにして、下層の皮膚は、接着剤または皮膚にデバイス100を付着させるために使用される他の材料による妨害を受けずに、伸展/成長し、組織成長180に適応することができる。
所望する量の組織成長180が達成されると、侵襲的手技のリスクを何も伴わずに、デバイス100を永続的に除去することができる。この外部適用実施形態は、身体のどの領域にも容易に適用することができ、優先的な拡張方向を与えるように設計することができる。本発明の説明の多くは植込み型の実施形態に焦点を絞っているが、組織拡張デバイス100の外部適用を利用する本発明の実施形態にも、本明細書に開示する概念を同等に適用できることは、当業者にはわかるだろう。
さらにまた、新しい組織成長を促進するために、薬学的刺激、幹細胞in-situ培養および/または脂肪組織などの作用物質の注入を、外部の組織拡張デバイスによって生み出された空隙内に導入することもできる。皮膚表面に対する引張応力(吸引力)の一貫した継続的存在は、本明細書に開示する作用物質の定期的および漸進的な注入と組み合わされて、迅速かつ永続的な組織成長を促進することができる。
本発明の別の態様は、被膜拘縮の防止または処置である。インプラントを体内(とりわけ乳房領域)に設置した後に、そのインプラントを取り囲む組織が硬化し、インプラントを圧迫する場合がある。起こりうる硬化は、インプラント周囲での過剰な瘢痕組織形成およびその組織の拘縮によるものである。インプラント内の流体の粘度自体は無変化のままである。インプラントの周囲に形成された瘢痕組織は乳房または他の組織の硬化(拘縮した筋が与える感触に似たもの)を引き起こし、インプラントの周囲に自然に形成された瘢痕組織はインプラントを締めつけ圧迫する。被膜拘縮は予測不可能な合併症であると同時に、豊胸では最もよく見られる合併症でもある。
組織拡張デバイスの使用と組み合わせた、脂肪組織を包含する開示した作用物質の導入は、被膜拘縮の例を防止することおよび/または最小限に抑えることができる。組織拡張デバイスの植込みを伴う本発明の実施形態に関して、脂肪組織の添加は、本発明の一実施形態によれば、空隙内での組織成長を促進するだけでなく、拡張デバイスの被包を最小限に抑えまたは防止する。さらにまた、所望の組織成長が達成された処置の終了時には、組織拡張デバイスが取り除かれて、被膜拘縮のさらなるリスクを防ぐ。この利点は、組織拡張デバイスの外側適用については、より一層顕著である。体内に異物は何も導入されないので、被膜拘縮のリスクは完全に排除される。
本発明の別の実施形態によれば、組織拡張デバイスを使って被膜拘縮を効果的に処置することができる。前述のように、被膜拘縮は、植え込まれた異物の導入に対する生理学的反応に関連する状態である。本発明の方法実施形態の一つによれば、先に設置されたインプラントを取り囲む組織(被膜拘縮を起こしている区域)に空隙領域を生み出し、その領域内に脂肪組織標品などの作用物質を導入することによって、被膜拘縮を処置することができる。そのような本発明の例示的実施形態では、組織拡張デバイスが、被膜拘縮を起こしている領域にわたって、皮膚に外から配置されるか、または皮下組織の層間に植え込まれる。
目的の領域に組織拡張デバイスが配置されたら、それが拡張されて組織上に引張力を生み出し、その結果、被膜拘縮組織の近くに、またはすぐ隣接して、空隙区域が生じる。次に、新しい組織成長を促進するために、その空隙内に、脂肪組織標品もしくは他の作用物質またはそれらの組合せを注入することができる。本発明の別の実施形態では、空隙領域を両側的に拡張するために、組織拡張デバイスの膨張が既存のインプラントの収縮と併せて行われる。
被膜拘縮はインプラントを取り囲む硬化した組織を表すことを想起されたい。インプラントの内容物を抜き取ること、および組織拡張デバイスを使って組織をインプラントから引き離す引張応力または牽引応力を生み出すことで、拘縮している組織が引き起こすインプラントの圧力を緩和することにより、被膜拘縮の領域に空隙を生み出すことができる。
この空隙内に注入される脂肪組織を包含する作用物質は、新しい正常な組織成長を促進することによって、被膜拘縮を軽減および/または排除することができる。組織拡張デバイスによって維持される継続的引張応力は、この状態を処置する脂肪組織の能力を補助する。前述した組織拡張デバイスの適用の場合と同様に、被膜拘縮を処置するために導入される脂肪組織標品は精製されているか、未精製であることができ、理想的にはその患者から収集される。脂肪組織は、別個の精製プロセスによって取得されたまたは培養によって生育した幹細胞の添加によって強化することもできる。理想的には、組織中に貯蔵されたトリグリセリドの大部分を取り除くと共に、成熟脂肪細胞の薄い細胞質シートに傷害を引き起こすために、収集した脂肪組織標品の一部を遠心分離によって精製する。引張応力と脂肪組織標品との組合せは、一緒に作用して、新しい組織成長を促進し、被膜拘縮を緩和する。一実施形態では、幹細胞が、微小血管床の再構築に有利なその自然の三次元的足場内に維持される。
そのような併用処置の結果、構造的な正常脂肪組織(すなわち正常脂肪組織)の成長が起こる。組織が成長すると、空隙を再確立するための組織拡張デバイスのさらなる拡大が、脂肪組織標品の補充注入と組み合わされて、皮膜拘縮を低減または排除するように作用し、かつ、以前のデバイスは継続的に収縮させる。皮膜拘縮が処置されると、以前の(原因となった)インプラントは完全に収縮させおよび/または抜き取って、自然の正常脂肪組織を後に残すことができる。
図7は、耐荷重構造を有する組織拡張デバイス100の本発明の一実施形態の断面図である。組織拡張デバイス100の植込み後は、膨張させたデバイスの形状が一貫していて、かつ制御可能であることが重要である。本発明の一実施形態では、デバイスの外形が、2つの膜内の限られたスペースへの流体の注入によって制御され、本発明の別の実施形態では、ニチノールもしくは活性化可能なポリマーなどの形状記憶材料、または漸次大きくなる内腔を生み出しうる他の任意の材料もしくは構造を使用しうる。
図7に示すように、本発明の一実施形態は横支持部材220と縦支持部材210とを有する。これらの支持部材は、組織拡張デバイス100に対する外組織層130の抵抗によって誘起される力を支持部材210、220に伝達し、最終的には組織拡張デバイスの基部および周囲の組織に伝達する能力をもつ結合ファブリック230または膜によって連結される。支持構造210、220および結合ファブリック230は、本発明の一実施形態では、内膜145および外膜135に収容される。皮膚組織の外層130が組織拡張デバイス100に均一な分布した力150を負荷するとすれば、組織拡張デバイス100のさまざまな拡張段階での望ましい形状がわかれば、支持部材210、220の構成は、当技術分野でよく知られている従来の工学的方法を使って決定することができる。さらにまた、支持部材のサイズ(体積)、および支持構造の断片間の圧力障壁を変化させることにより、支持部材内への流体の逐次的注入により、漸次拡大していく空隙170またはドーム(この例ではデバイス100の頂上を中心とするもの)を生み出すことができる。非対称的な組織成長に適応するために、他の設計および構成を構築することもできる。
図8Aおよび8Bは、本発明の一実施形態に従って凸状の組織ポケットを生み出すための放射状拡張デバイスの、それぞれ上面または平面図および断面図である。ある軸の周りの一連の同心トロイド310または閉じた円(この実施形態の場合)が、組織拡張デバイス100の一実施形態をなす。トロイド310は1個ずつ直径が少し大きくなっており、内膜145および外膜135内に収容される。各トロイドへのアクセスは、トロイド310の膨張によって生み出される空隙170の形状を制御して、持ち上げ(elevation)エンジンを生み出すことを可能にする。デバイスの下にあるくぼんだ領域である空隙170へのアクセス320は、一番上のトロイド状リングの中心を通して達成することができる。
図9Aは、凸状の組織ポケット170を生み出すための、薄壁圧力容器(膜)に収容された単一のらせん状容器を利用する組織拡張デバイスの本発明の一実施形態の断面図である。複数のトロイド状部材310からなっていた前述の実施形態とは異なり、本発明のこの実施形態は、らせん状に構築された単一トロイド状部材410からなる。単一トロイド状部材410は、中心のアクセスポイント420から、標的組織成長域を覆うのに十分な直径まで、同心円的にらせんを画く。トロイド状部材410はさらに、外膜135と内膜145との間に収容される。膜135、145、そしてトロイド状部材410そのものは、組織拡張デバイス100に対して課されるどの方向の内圧および外圧にも耐えうる十分な強度を持つように設計される。
図9Bは、薄壁圧力容器に収容された単一のらせん状容器を利用する組織拡張デバイスに関する図8に示す実施形態の平面図である。ここでも、単一トロイド状容器410は、一対の膜135、145内に収容された同心らせん状の形状が得られるように構成される。両端が閉じた薄壁円筒容器における応力および圧力の計算は、均一な内圧または外圧下にある楕円体の場合と同じく、よく知られている。計算は、重力の影響および動荷重の影響を考慮するように、使用者が体験する可能性がある、考えうるあらゆる向きについて完了すべきである。例えば、乳房組織の成長を促進するために植え込まれた単一トロイド状容器410内の圧力は、そのデバイスを植え込まれた患者が伏臥(仰臥)位をとった場合は、重力によって均一に増加するだろう。重力の力を表すベクトルは、組織拡張デバイスの基部に対して実質的かつ均一に直角に作用し、一方、外の組織によって課される力および内側の空隙のそれは、デバイスの表面に対して直角に作用する。したがって、当業者には理解されるとおり、デバイスの上端付近にあるトロイド状容器410のらせんまたは部材は、デバイスのデザインに影響を与える力を受ける。
同様に、患者の方向が変化すると、重力を表すベクトルの再配向により、トロイド状容器410内の圧力が変化する。患者が立位をとっている場合、重力はトロイド状容器410の下側または最初のらせんに分布する。さらにまた、組織拡張デバイスが安全かつ機能的でありつづけることを保証するために、動荷重も考慮するべきである。
上述のように、組織拡張デバイスへのアクセスは、本発明の一実施形態では、中心アクセスポイントを介してなされる。図8Aおよび8Bに示す実施形態では、このアクセスポイントが、結果として生じるドームの中心または頂上近くにある。下側の皮膚層に対して、ゆっくりした一貫した持続的引張応力を与えるために、追加の流体を経皮注射によってトロイド状容器内に挿入することができる。結果として生じた空隙170内で所望する体積の新しい組織を成長させたら、単一トロイド状組織拡張デバイス内の流体を抜き出すことができる。その後、組織拡張デバイス100を取り除いて、異物を残さずに、新たに成長した永続的組織を後に残すことができる。
図10は、本発明に従って組織拡張デバイス100を使って組織を生物学的に拡張するための例示的プロセスの一方法実施形態を示すフローチャートである。フローチャートの各ブロックおよびフローチャート中のブロックの組合せが、特定の機能もしくは機能性または特定のプロセス目的を表すことは、理解されるだろう。すなわち、フローチャートのブロックは、特定された機能を実行するための手段の組合せ、および特定された機能を実行するためのステップの組合せをサポートする。フローチャートの各ブロックおよびフローチャート中のブロックの組合せを、本発明の意図および新規な特徴から逸脱することなく、異なる形で実行できることも理解されるだろう。
図10は、新しい組織成長が望まれる領域への組織拡張デバイス100の外部配置または内部配置510から始まる(505)。配置したら、組織拡張デバイスを活性化する(520)。前述のように、活性化は、ポリマーなどの2つの膜内に収容された一つ以上のトロイド状部材内への流体の注入を含みうるか、または例えばニチノールなど(ただしこれに限るわけではない)の形状記憶材料が関係しうる。組織拡張デバイスの活性化により、デバイスは、組織成長が望まれる領域の上に凸状またはドーム状の形状を形成することになり、組織をデバイス内に引っ張ることによって、その下に、応力を受ける空隙または領域を生み出す。こうして空隙は、下層の組織上に引張応力を誘起して、新しい組織成長を促進する。デバイスの活性化は、本発明の一実施形態に従って、共通のアクセスポイントを通して単一トロイド状容器内に流体を繰返し注入することによって行うか、または本発明の別の実施形態に従って、複数のアクセスポイントを介して複数のトロイド状容器に多重に注入することによって行うことができる。実際、これらの選択肢の任意の組合せを利用して、組織成長を促進するために必要な形状および下層の引張応力が与えられるように、組織拡張デバイスを漸増的に活性化することができる。
新しい組織が成長して、組織拡張デバイスによって生み出された空隙を占有するようになるにつれて、下層の組織上に課される力、すなわち引張応力が、減少する。減少した応力は、新しい組織を成長させるための起動力を低下させる。所望の領域における新しい組織成長を維持するために、組織拡張デバイスの凸状の形状の体積を増加させる(530)。本発明の一実施形態では、所定の体積の流体を、規定したスケジュールに従ってデバイスに入れる。最初は、組織成長を促進するための必要な引張応力を生み出すのに、より大量の注入が必要である場合がある。その後の増分では、組織成長を促す類似の環境を与えるために必要とされる注入量が実質的に少なくなりうる。別の実施形態では、拡張の量および拡張の時間が、組織成長の速度に基づく。組織拡張デバイスの増加したサイズがもたらす、空隙内に追加された体積は、下層の組織上の引張応力を回復する。典型的には、組織拡張デバイスに対する追加体積は、医師が、組織拡張デバイスの支持構造内へ流体を経皮注入することによって達成される。
再び、力の平衡または力の排除に至るまで、組織成長が促進される。新しい組織成長による力の平衡と、それに続く組織拡張デバイスのサイズの増加による引張応力の再生およびさらなる組織成長の促進という、このプロセスは、所望する量、体積の新しい組織成長が起こるまで継続される。本発明の他の実施形態では、組織成長を促進するために、作用物質、例えば薬学的刺激、脂肪組織、および/または幹細胞in-situ培養などを、組織拡張デバイスの下の空隙内に、下層の組織と接触させて、導入することができる(560)。
新しい組織成長が安定化したら、組織拡張デバイスを、(本発明のある実施形態ではトロイド状部材内に含有される流体の除去によって)不活化する(540)。ここでも、流体の除去は、診療所または同様の医療施設における経皮注射(抜き出し)によって達成することができる。不活化されたら、組織拡張デバイスを新しい組織成長の領域から取り除いて(550)、処置を終了する(595)ことで、異物が何も存在せずに、新しく成長した組織が後に残る。ここでも、体内植込みに関しては、組織成長の領域(筋膜裂)からの組織拡張デバイスの除去は、医療施設で行われる低侵襲手術であり、一方、体外組織拡張デバイスの除去は適切な外来患者施設または診療所で実行することができると思われる。本発明のさらに別の実施形態では、組織拡張デバイスを体内に(ただしその収縮状態で)残すことができる。組織拡張デバイスは収縮させるので、組織成長の起動力を与えることはできず、体内にインプラントを残すリスクは、それを取り除くための手術のリスクおよび費用と比較すれば有利なはずである。
本発明をある程度詳しく説明したが、この開示は例示のためになされたに過ぎず、当業者は、特許請求の範囲に記載する本発明の要旨または範囲から逸脱することなく、構成要素の組合せおよび配列に数多くの変化を加えることができると理解される。

Claims (4)

  1. 組織成長を促進するためのデバイスであって、
    内膜、
    外膜、ここで、内膜および外膜はそれぞれ、デバイスの内表面および外表面を形成する、および
    少なくとも一つの膨張可能な容器、ここで、少なくとも一つの膨張可能な容器は、外膜および内膜内に収容され、その少なくとも一つの膨張可能な容器を膨張させることにより、デバイスは、デバイスの内表面の下にある組織領域にわたって引張応力を生み出すことになり、それよって組織成長を促進する
    を含むデバイス、ここで、
    少なくとも一つの膨張可能な容器の膨張によって、デバイスは、外表面上にかけられる荷重を支持することのできる凸状の形状を形成し、その凸状の形状が、外表面の外側と比較して、低い差圧を有する内表面下の内側領域を規定し、それが下層の組織上に引張応力を誘起し、それによって組織成長を促進する、および
    少なくとも一つの膨張可能な容器は、同心らせんとして構成される単一の長い容器であるか、または、内膜および外膜内に収容され、共通する軸の周りに同心円状に構成された、直径が増加していく複数のトロイド状の膨張可能な容器である。
  2. 少なくとも一つの膨張可能な容器が、外表面上にかけられる荷重下でデバイスを造形し支持するように構成された構造部材を含む、請求項に記載のデバイス。
  3. 少なくとも一つの膨張可能な容器を、注入によって漸次膨張または収縮させることができるアクセス部位をさらに含む、請求項1または2に記載のデバイス。
  4. デバイスの内表面が、前記領域を覆う皮膚にデバイスを付着させ気密シールを形成するための医用接着剤を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のデバイス。
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