JP5326397B2 - 粒子輸送装置 - Google Patents

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Description

この発明は、粒子を電気的に輸送する粒子輸送装置に関するものである。
電極部に多相電圧を印加することによりクーロン力を発生させて粒子を移動させる粒子輸送装置が特許文献1に示されている。
ここで特許文献1の粒子輸送装置の構成を、図1・図2を基に説明する。
図1はその斜視図、図2は側面図である。図1・図2に示すように、絶縁体2中に複数本の線状電極3を平行に配置して平板状固定子1を構成し、電源9で線状電極3に交番電圧を印加することにより、線状電極3の近傍にクーロン力を発生させ、平板状固定子1上の粒子29を平板状固定子1表面に吸引しつつ輸送する。
特許第3569544号公報
ところが、特許文献1に示されている粒子輸送装置においては、平板状固定子1上の一部の粒子が定位置に付着したまま輸送されない、という問題が生じ得ることを発明者等は実験的及び理論的に発見した。
平行配置された線状電極に対して複数相の交番電圧を印加することによって粒子が輸送されるのは、互いに隣接する線状電極間で粒子に生じる前方向と後方向のクーロン力が均衡する安定平衡位置(安定点)が各相の電圧変化に従って順次移動し、それに伴って粒子が移動するからである。
しかし、印加される各相の電圧が一定周波数の正弦波交流電圧などであって、相間が互いに等しい位相差をもっている場合、時間経過に伴って駆動電圧の変移があっても粒子を安定点からそれに隣接する次の安定点まで動かすために必要な十分な大きさのクーロン力が作用しない位置(特異点)が生じる。このような位置の粒子はそこから移動せず滞留することになる。
このことは以降に示す本発明の実施形態で述べる従来技術との比較説明で一層明らかになる。
この発明の目的は、粒子が滞留する特異点が生じないようにして、粒子を高効率のもとで輸送できるようにした粒子輸送装置を提供することにある。
この発明の粒子輸送装置は次のように構成する。
(1)互いに平行または略平行に配列された線状電極と、
前記線状電極の配列順番号をk(kは0から始まる整数)、前記線状電極に印加すべき周期変化する駆動電圧の採り得る位相の数である相数をnとしたとき、
p=Mod(k,n)+1 (ここで、Modは剰余関数である。)
で表される第p相の駆動電圧Vp(t)(tは時刻)を前記配列順番号kの線状電極に印加する電圧印加手段と、
を備えた粒子輸送装置において、
任意の2時刻t1,t2(t1≠t2)における第p相の駆動電圧Vp(t)の組合せを
[V1(t1),V2(t1),・・・,Vn−1(t1),Vn(t1)]
[V1(t2),V2(t2),・・・,Vn−1(t2),Vn(t2)]
と表したときに、少なくとも1組は循環置換によって互いに一致させることができない駆動電圧Vp(t)の組合せとなっていることを特徴とする。
前述の特異点は、線状電極の配列空間上での線状電極への印加電圧パターンが循環置換により互いに一致することに起因しているので、上記の駆動電圧を印加することによって特異点が生じる要因が無くなるかまたは少なくなって、粒子の滞留が抑制でき、高効率な粒子輸送が実現できる。
ここで循環置換とは、有限要素数の順列[a b c d e]を[b c d e a]や[c d e a b]に置換する操作のことである。
(2)互いに平行または略平行に配列された線状電極と、
前記線状電極の配列順番号をk(kは0から始まる整数)、前記線状電極に印加すべき周期変化する駆動電圧の採り得る位相の数である相数をnとしたとき、
p=Mod(k,n)+1 (ここで、Modは剰余関数である。)
で表される第p相の駆動電圧Vp(t)(tは時刻)を前記配列順番号kの線状電極に印加する電圧印加手段と、
を備えた粒子輸送装置において、
任意の2時刻t1,t2(t1≠t2)における第p相の駆動電圧Vp(t)の組合せを
[V1(t1),V2(t1),・・・,Vn−1(t1),Vn(t1)]
[V1(t2),V2(t2),・・・,Vn−1(t2),Vn(t2)]
と表したときに、
循環置換によって互いに一致させることができる2時刻の組合せ、および、
循環置換によって互いに一致させることができない2時刻の組合せ、
の両者を有することを特徴とする。
例えば、任意の2時刻t1,t2(t1≠t2)における第p相の駆動電圧Vp(t)の組合せを
t1…[0, 0, 0, +V]
t2…[+V,0, 0, 0 ]
とすると、右へ一つだけ動かす循環置換([a b c d]→[d a b c])によって一致させることができる。
また、任意の2時刻t1,t2(t1≠t2)における第p相の駆動電圧Vp(t)の組合せを
t1…[ 0, 0, 0,+V]
t2…[+V,+V, 0, 0]
とすると、どのような循環置換によっても一致しない。
このように「循環置換によって一致させることができるような2時刻{t1,t2}の組合せ」と、「循環置換によって一致させることができない2時刻{t1,t2}の組合せ」の両者を持つことになる。
このように、第p相の駆動電圧Vp(t)の組合せが循環置換によって互いに一致しないので、上記特異点が生じる要因が無くなるかまたは少なくなって、粒子の滞留が抑制でき、高効率な粒子輸送が実現できる。
(3)前記印加電圧のパターンVp(t)は、それぞれ2種類以上の離散的な電圧Wj(j=1,2,・・・,m)のいずれかの値を採る、ものとする。
この構成により、線状電極への印加電圧パターンを循環置換しても互いに一致しない駆動電圧を容易に生成できる。
(4) 第p相の駆動電圧Vp(t)
[V1(t),V2(t),・・・,Vn−1(t),Vn(t)]
は、任意の時刻において、
[W1,W2,W2,・・・,W2]
[W1,W1,W2,・・・,W2]
のいずれかの循環置換によって表せるものとする。
この構成により、駆動電圧を簡易な波形を基にして生成できる。
(5)前記複数の線状電極は誘電体または絶縁体の基板上に配置し、前記線状電極上に絶縁体膜を被覆する。
この構成により、電極間の放電や電極からの放電を抑制することができ、また電極の酸化を抑制することができるので、長期に亘って安定した特性が維持できる。
この発明によれば、特異点が生じないかまたは生じにくくなって、粒子の滞留が抑制でき、高効率な粒子輸送が実現できる。
《第1の実施形態》
この発明の第1の実施形態に係る粒子輸送装置について図3〜図12を参照して説明する。
図3は複数の線状電極とそれらに対して電圧を印加する構成を示す図であり、図3(A)は線状電極を形成した誘電体基板の平面図、図3(B)はその側面図である。
誘電体基板51の上面には複数の線状電極52を平行且つ一定間隔に配列形成し、さらに絶縁物のカバーコート54を被覆することによって配列電極基板部50を構成している。周期パルス電源40は、その出力端子V1〜V4から4相の駆動電圧を出力する。線状電極52は、その並び順に4本ごとに接続部53を並列接続するとともに、後に示す周期パルス電源の出力端子V1〜V4にそれぞれ接続している。
図3(B)において、線状電極52は、各線状電極E1(1),E2(1),E3(1),E4(1),E1(2),E2(2),E3(2),E4(2)・・・,E1(4),E2(4),E3(4),E4(4)からなる。
一般的に表すと、線状電極52の配列順番号をk、前記線状電極に印加すべき周期変化する駆動電圧の採り得る位相の数である相数をnとしたとき、
p=Mod(k,n)+1 (ここで、Modは剰余関数である。)
で表される第p相の駆動電圧Vp(t)(tは時刻)を配列順番号kの線状電極52に印加する。なお、線状電極52の配列順番号kは、k=0,1,2,3・・・というように0から始まる整数である。
図3の例では、n=4であるので、E1(1),E1(2),E1(3),E1(4)にV1、E2(1),E2(2),E2(3),E2(4)にV2、E3(1),E3(2),E3(3),E3(4)にV3、E4(1),E4(2),E4(3),E4(4)にV4がそれぞれ印加される。
なお、線状電極52を絶縁物のカバーコート54で被覆したことにより、線状電極52を腐食性ガスや酸素、水分などによる腐食や酸化から保護でき、また、火花放電を防止できる。また、粒子の帯電を防ぐことができ、安定に輸送することができる。また、電界が著しく大きい部位が露出しないため、粒子の破砕を防止できる。
図4は、この発明の第1の実施形態に係る粒子輸送装置の断面図であり、配列電極基板部50の上に沿って動く粒子が受ける力を具体的に求めるために具体的な寸法の例を示している。
図4に示すような構造パラメータを持つ配列電極基板部において、配列電極基板部の上面に接する半径4μmの球形粒子を考える(なお、説明の便のため、図4に図示した粒子の縮尺は、図の他の部分の縮尺に一致していない)。ここで、粒子の材質はアルミナとし、比誘電率を8.5とする。また、誘電体基板51およびカバーコート54の比誘電率はいずれも5.24とした。
図5は周期パルス電源の構成を示すブロック図である。図5(A)は粒子輸送装置全体のブロック図であり、図5(B)は周期パルス電源40の構成を示すブロック図である。図5(A)において配列電極基板部50は図3に示した誘電体基板51、それに形成した線状電極52およびそれらを所定間隔で並列接続する接続部53とからなる。
図5(B)に示すように、周期パルス電源40は定電圧直流電源回路42、ゲートドライバ回路43およびタイミング信号発生回路41とで構成している。タイミング信号発生回路41は、この例では正電圧を発生するタイミング信号(パルス信号)を与え、ゲートドライバ回路43はそのタイミング信号に応じて、定電圧直流電源回路42から入力される+V,GND(0V)の電圧を切り替えて出力端子V1〜V4へ出力する。ここで+Vは例えば600[V]である。
この発明の第1の実施形態に係る粒子輸送装置の格別な作用についての理解を助けるために、以降比較例と共に説明する。
図6は、比較例としての粒子輸送装置において、図5に示した周期パルス電源40から出力される4相の電圧波形である。各相の駆動電圧は、周期Tの1/4区間が“H”レベル(+V[V])、その他の3/4区間が0[V]である。隣接する相は90°(1/4周期)ずつずれている。
図7は、本発明の第1の実施形態に係る粒子輸送装置において、図5に示した周期パルス電源40から出力される4相の電圧波形である。図6・図7中の下部の図は、電圧が+V[V]のときを1、電圧が0[V]のときを0、として4ビットの2値信号として表したものである。
図7に示すように、電圧Vi(i=1,2,3,または4)は周期Tの周期関数であり、時刻t=0からt=Tの間において、
(T/8)×(2i−2)<t<(T/8)×(2i−1)
又は
(T/8)× Mod(2i,8)<t<(T/8)× Mod(2i,8)+2
のときに+V、
それら以外のtのとき0を採る。
ただし、Vは正の電圧であり、Mod(a,b)は整数aを整数bで除したときの剰余を求める剰余関数である。周期TはT=20[ms]とした。
上記の関係を4相の電圧V1,V2,V3,V4についてそれぞれ表すと次のようになる。
V1 = +V[V]となるのは、
0<t<T/8または2T/8<t<4T/8のとき。
V1 = 0[V]となるのは、
それ以外のとき。
V2 = +V[V]となるのは、
2T/8<t<3T/8または4T/8<t<6T/8のとき。
V2 = 0[V]となるのは、
それ以外のとき。
V3 = +V[V]となるのは、
4T/8<t<5T/8または6T/8<t<Tのとき。
V3 = 0[V]となるのは、
それ以外のとき。
V4 = +V[V]となるのは、
6T/8<t<7T/8または0<t<2T/8のとき。
V4 = 0[V]となるのは、
それ以外のとき。
上記印加電圧の組合せは表1に示す8通り存在する。ここで、それぞれの印加電圧の組合せを、表1に示した名称で表現する。このとき図7に示した印加電圧の変化は、図7中に付記したように、
(W41)→(S4)→(W12)→(S1)→
(W23)→(S2)→(W34)→(S3)→
(以降、繰り返し)
のように表現できる。
Figure 0005326397
図6に示した比較例のように、印加電圧の組み合わせ(S1),(S2),(S3),(S4)を繰り返すと、線状電極への印加電圧パターンが循環置換により互いに一致する。また、印加電圧の組み合わせを仮に(W12),(W23),(W34),(W41)を繰り返した場合も線状電極への印加電圧パターンが循環置換により互いに一致する。しかし、図7に示したように、線状電極への印加電圧パターンが循環置換により互いに一致しない複数の電圧パターンを順次選択する(交互に切り替える)と、V1〜V4の4入力のうち、1入力のみに+Vが印加される時間帯と、2入力に+Vが印加される時間帯とが交互に存在することになり、任意の2時刻における線状電極への印加電圧パターンは循環置換によっても必ずしも一致しない。
次に、静電界勾配中に置かれた粒子に作用する力について説明する。簡単のため、粒子の比誘電率は1と同程度とし、粒子の存在による電界の変化は十分小さいものとする。また、静電勾配は空間的に緩やかに変化するものとする。このとき、空間全体の静電エネルギーの変化量Uは、
Figure 0005326397
と表されることが知られている。
この粒子を粒子径に対して十分ゆるやかな空間勾配のある静電界中に置いたときに働く力Fは、
Figure 0005326397
で表される。ここで、記号∇は勾配を表す。
式(2)の中で、力のx成分Fxに着目すると、
Figure 0005326397
を得る。
式(2)、(3)より、粒子には、電界が大きい方向へ向かう力が働くことが分かる。上記表1には、この粒子が受ける力のx成分についても併せて表している。表1中の
Fx(S1)(x)の(x)は図4中のX=0を基準とする座標である。
図8は、図6および図7に示した、印加電圧の組み合わせが(S1)、すなわち(V1,V2,V3,V4)=(+V,0,0,0)であるときに生じる電気力線を表している。
図8において、電気力線EFLは線状電極E1( j )、E2( j )、およびE4( j )の周囲において密に集中していて、これらと比較して、線状電極E3( j )の周囲における電気力線は疎である。ここで( j )は4相の繰り返し周期の周期番号である。
図8のように、特に線状電極E1( j)(j=1,2,3)の近傍に向かって電気力線が集中している、すなわち、線状電極E1( j)へ向かって電界の大きさの勾配が正であることが分かる。したがって、線状電極E1( j)の近傍に置かれた粒子には当該電極へ向かう力が生じることが分かる。
次に、この配列電極基板部の上に沿って動く粒子が受ける力を具体的に求める。なお、以下の考察においては、式(3)で表されるx方向の力のみに着目する。また、粒子に作用する力としては、この他にも、電界から受けるz方向の力、基板表面から受ける摩擦力、帯電に基づくクーロン力、空気の粘性による力などがあるが、これらの力が作用しても本発明の効果には大きな影響を与えないものと考えられる。
さて、印加電圧の組合せ(S1)および(W12)に対して粒子が受ける力のx成分をそれぞれ、Fx(S1)およびFx(W12)とおく。
まず、Fx(S1)およびFx(W12)を、静電界シミュレーションで求めた電界に対して式(3)を用いて求めたものを図9・図10にそれぞれ示す。図9・図10において縦軸は粒子が受ける力のx成分、横軸は配列電極基板部上の位置であり、各線状電極の位置と粒子が受ける力との関係を表すために線状電極E1(1),E2(1),E3(1),E4(1),E1(2),E2(2),E3(2),E4(2)を併せて示している。
Fx(S1)およびFx(W12)が求められると、他の印加電圧の組合せに対して粒子が受ける力のx成分は、線状電極への印加電圧パターンが循環置換によって一致する性質(並進対称性)により、表1に示すように、Fx(S1)またはFx(W12)を用いて表すことができる。
また、印加電圧の周期性から、それぞれのFxは周期をLとする関数である。
まず、比較例である図6に示した電圧印加の方法で粒子の運動を、図11を参照して説明する。図11は、(S1)〜(S4)のそれぞれの印加電圧の組合せに対して、粒子が受ける力のx成分Fxを表している。ここで(S1)〜(S4)は図6に示した4つの電圧印加の状態である。図11においては図の上から下へ向かって、時間変化に対応している。この図11の波形は図9に示したFxの波形の位相を順次シフトさせたものに等しい。それぞれの波形において、零点を正から負へ横切る点は、位置の摂動に対して復元力が働くから安定平衡位置(安定点)に対応している。
印加電圧の組合せが(S1)であるとき、粒子がA1の位置にあって静止している場合を考える。A1は、安定平衡位置の一つである。
印加電圧の組合せが(S2)に切り替わった瞬間における粒子位置はA2である。この(S2)の波形から分かるように、A2における力Fx(x)は僅かに正の値であるので、A2においては+x方向の小さな力が作用する。
このとき、粒子をA2に留める力が十分小さければ、粒子は+x方向の矢印f2に従って+x方向へ動き続け、例えば別の安定平衡位置であるB2に至る。
同様に、印加電圧の組合せが(S3)→(S4)→(S1)の順に切り替わるに従って、粒子はC3→D4→E1と移動する。すなわち、印加電圧の組合せの切り替え周期ごとに粒子は距離Lだけ進むことになる。
一方、A2に位置する粒子に作用する力Fx(x)が、粒子をA2に留める力(基板表面から受ける摩擦力など)に比べて小さいと、印加電圧の組合せが(S3)→(S4)→(S1)の順に切り替わっても、粒子はそれぞれA3,A4,A1’に対応する位置(同一位置)に留まる。すなわち、この特異点で粒子が滞留してしまう。
次に、本発明の実施形態に係る粒子輸送装置による粒子の運動を、図12を参照して説明する。図12は、(S1)、(W23)、(S2)、(W34)、(S3)、(W41)、(S4)、(W12)、(S1)のそれぞれの印加電圧の組合せに対して、粒子が受ける力のx成分Fxを表している。図12において図の上から下へ向かって、時間変化に対応している。この図12の波形は図9に示したFxの波形と図10に示したFxの波形を交互に当てはめるとともにその位相を順次シフトさせたものに等しい。
まず、(S1)の印加電圧の組合せのとき、粒子がJ1の位置にあって静止している場合を考える。J1は、安定平衡位置の一つである。
印加電圧の組合せが(W23)に切り替わった瞬間における粒子位置はJ2である。この(W23)の波形から分かるように、J2における力Fxは正の値であるので、J2においては+x方向に力が作用する。そのため、粒子は矢印f3に従って+x方向へ動き続け、例えば別の安定平衡位置(移動方向に隣接する次の安定平衡位置)であるK2に至る。
同様に、印加電圧の組合せが(S2)、(W34)、(S3)、(W41)、(S4)、(W12)、(S1)の順に切り替わるに従って、粒子はK3→L3→L4→M4→M5→N5→N6→P6→P7→Q7→Q8→R8→R9→S9と移動し、以降も同様に運動することが期待されるから、印加電圧の組合せの切り替え周期ごとに粒子は距離Lだけ進むことになる。
ここで、図11に示した比較例と対比すると、比較例の場合にA2で働く力は図9に示したデータに基づくと5.6×10-10[N]であるのに対し、本発明の実施形態のJ2で働く力は図10に示したデータに基づくと1.2×10-9[N]であり、比較例の約2倍である。
そのため、本発明の実施形態の方が基板表面の定位置に粒子を留める力に打ち克って基板上を一方向に運動する粒子の割合が大きくなると考えられる。
このことは実験によっても確かめられた。
このように、線状電極への印加電圧パターンの循環置換によって互いに一致しない組み合わせとすることによって、一部の粒子が定位置に付着したまま輸送されないという問題が改善される。
《第2の実施形態》
第1の実施形態では駆動電圧として2値の矩形波パルスを用いたが、2値の矩形波パルス以外にも多値のパルス電圧で駆動してもよい。
図13は本発明の第2の実施形態に係る粒子輸送装置において、配列電極基板部へ与えられる4相の電圧波形である。この例では、+V[V],0[V],−V[V]の3値のパルス電圧で駆動するようにしている。図13中に示したS1,S2,S3,S4はV1,V2,V3,V4のうち1入力にのみ+Vが印加される時間帯、PN1,PN2,PN3,PN4は隣接する2入力のうち、x座標の小さい方に+V、大きい方に−Vが印加される時間帯、NP1,NP2,NP3,NP4は隣接する2入力のうち、x座標の小さい方に−V、大きい方に+Vが印加される時間帯、NN1、NN2、NN3、NN4は隣接する2入力に−Vが印加される時間帯である。
上記S4→S3→S2→S1の繰り返しによる印加電圧の空間分布、PN4→PN3→PN2→PN1の繰り返しによる印加電圧の空間分布、NP4→NP3→NP2→NP1の繰り返しによる印加電圧の空間分布、NN4→NN3→NN2→NN1の繰り返しによる線状電極への印加電圧パターンの循環置換によって互いに一致する。但し、これらの印加電圧パターンを順次選択することによって線状電極に対する印加電圧パターンは任意の2時刻において循環置換によっても必ずしも一致しない。
《第3の実施形態》
第1・第2の実施形態では駆動電圧として矩形波パルスを用いたが、第3の実施形態では三角波を用いる。
図14に示す例は、本発明の第3の実施形態に係る粒子輸送装置において、配列電極基板部へ与えられる4相の電圧波形である。この例は、第1の実施形態で示した図7の波形を三角波に置換したものである。このようにして三角波であっても、任意の2時刻における線状電極への印加電圧の空間分布を循環置換によっても必ずしも一致しないようにできる。
その他にノコギリ波、ガウシアン波などのパルスを用いても同等の効果が得られる。
また、2種類の印加電圧の組み合わせパターンを交互に選択するものに限らず、線状電極への印加電圧の空間分布が循環置換によって互いに一致する3種類以上の印加電圧パターンを順次選択することによって駆動電圧を生成するようにしてもよい。
また、以上に示した例では相数をV1,V2,V3,V4の4つとし、1周期の1/(2n)の区間毎に印加電圧のパターンが変化する例を示したが、相数nは4に限らず、さらに1周期の1/(3n)や1/(4n)の区間毎に印加電圧のパターンが変化するようにしてもよい。
特許文献1に示されている粒子輸送装置の斜視図である。 特許文献1に示されている粒子輸送装置の側面図である。 第1の実施形態に係る粒子輸送装置の複数の線状電極とそれらに対して電圧を印加する電源の構成を示す図であり、図3(A)は線状電極を形成した誘電体基板の平面図、図3(B)はその側面図である。 第1の実施形態に係る粒子輸送装置の断面図であり、配列電極基板部50の上に沿って動く粒子が受ける力を具体的に求めるために具体的な寸法の例を示す図である。 周期パルス電源の構成を示すブロック図である。 比較例としての粒子輸送装置において、図5に示した周期パルス電源40から出力される4相の電圧波形である。 第1の実施形態に係る粒子輸送装置において、図5に示した周期パルス電源40から出力される4相の電圧波形である。 図6および図7に示した印加電圧の組み合わせが(S1)、すなわち(V1,V2,V3,V4)=(+V,0,0,0)であるときに生じる電気力線を表す図である。 印加電圧の組み合わせが(S1)であるときの粒子が受ける力のx成分Fx(S1)を示す図である。 印加電圧の組み合わせが(W12)であるときの粒子が受ける力のx成分Fx(W12)を示す図である。 印加電圧の組み合わせ(S1)〜(S4)の変化に伴って粒子が受ける力のx成分Fxの変化を表す図である。 印加電圧の組み合わせ(S1)→(W23)→(S2)→(W34)→(S3)→(W41)→(S4)→(W12)→(S1)の変化に伴って粒子が受ける力のx成分Fxの変化を表す図である。 第2の実施形態に係る粒子輸送装置において、配列電極基板部へ与えられる4相の電圧波形である。 第3の実施形態に係る粒子輸送装置において、配列電極基板部へ与えられる4相の電圧波形である。
符号の説明
40…周期パルス電源
41…タイミング信号発生回路
42…定電圧直流電源回路
43…ゲートドライバ回路
50…配列電極基板部
51…誘電体基板
52…線状電極
53…接続部
54…カバーコート
EFL…電気力線

Claims (5)

  1. 互いに平行または略平行に配列された線状電極と、
    前記線状電極の配列順番号をk(kは0から始まる整数)、前記線状電極に印加すべき周期変化する駆動電圧の採り得る位相の数である相数をnとしたとき、
    p=Mod(k,n)+1 (ここで、Modは剰余関数である。)
    で表される第p相の駆動電圧Vp(t)(tは時刻)を前記配列順番号kの線状電極に印加する電圧印加手段と、
    を備えた粒子輸送装置において、
    任意の2時刻t1,t2(t1≠t2)における第p相の駆動電圧Vp(t)の組合せを
    [V1(t1),V2(t1),・・・,Vn−1(t1),Vn(t1)]
    [V1(t2),V2(t2),・・・,Vn−1(t2),Vn(t2)]
    と表したときに、少なくとも1組は循環置換によって互いに一致させることができない駆動電圧Vp(t)の組合せとなっていることを特徴とする粒子輸送装置。
  2. 互いに平行または略平行に配列された線状電極と、
    前記線状電極の配列順番号をk(kは0から始まる整数)、前記線状電極に印加すべき周期変化する駆動電圧の採り得る位相の数である相数をnとしたとき、
    p=Mod(k,n)+1 (ここで、Modは剰余関数である。)
    で表される第p相の駆動電圧Vp(t)(tは時刻)を前記配列順番号kの線状電極に印加する電圧印加手段と、
    を備えた粒子輸送装置において、
    任意の2時刻t1,t2(t1≠t2)における第p相の駆動電圧Vp(t)の組合せを
    [V1(t1),V2(t1),・・・,Vn−1(t1),Vn(t1)]
    [V1(t2),V2(t2),・・・,Vn−1(t2),Vn(t2)]
    と表したときに、
    循環置換によって互いに一致させることができる2時刻の組合せ、および、
    循環置換によって互いに一致させることができない2時刻の組合せ、
    の両者を有することを特徴とする粒子輸送装置。
  3. 前記印加電圧のパターンVp(t)は、それぞれ2種類以上の離散的な電圧Wj(j=1,2,・・・,m)のいずれかの値を採る、請求項1または2に記載の粒子輸送装置。
  4. 第p相の駆動電圧Vp(t)
    [V1(t),V2(t),・・・,Vn−1(t),Vn(t)]
    は、任意の時刻において、
    [W1,W2,W2,・・・,W2]
    [W1,W1,W2,・・・,W2]
    のいずれかの循環置換によって表せる、請求項3に記載の粒子輸送装置。
  5. 前記複数の線状電極は誘電体または絶縁体の基板上に配置され、前記線状電極上に絶縁体膜が被覆された請求項1〜4のいずれかに記載の粒子輸送装置。
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