JP5325433B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
例えば、アニオン交換樹脂からなる電解質膜と、この電解質膜の一方側表面に、コバルトナノパウダーとアニオン交換樹脂との混合物を塗布することにより形成された燃料側電極と、電解質膜の他方側表面に、銀を担持したカーボンを塗布することにより形成された酸素側電極とを備え、燃料として水加ヒドラジンが燃料側電極に供給される燃料電池が提案されている(特許文献1参照。)。
本発明の目的は、ヒドラジン類を燃料とする燃料電池において、排出されるヒドラジン類を、システムとして効率的に無害化処理することのできる燃料電池システムを提供することにある。
このように、本発明の燃料電池システムでは、排出物中のヒドラジン類と酸素とを反応させてヒドラジン類が無害化処理されるので、ヒドラジン類が燃料電池システムの系外へ排出されることを防止することができる。さらに、燃料電池の発電のために酸素供給手段から供給される酸素を利用して無害化処理が行なわれるので、ヒドラジン類を処理する装置などを別途設ける必要がない。その結果、燃料電池システムを、効率的に無害化処理することのできるシステムとして構築することができる。
図1は、本発明の燃料電池システムの第1の実施形態を示す概略構成図である。
図1において、燃料電池システム1は、燃料電池2と、燃料電池2に燃料を供給するための燃料供給手段としての燃料供給部3と、燃料電池2に酸素を供給するための酸素供給手段としての酸素供給部4と、燃料電池2からの排出物を排出するための排出部5と、燃料電池2の運転を制御する制御部6とを備えている。
(A)燃料電池
燃料電池2は、ヒドラジン類を燃料とする、例えば、固体高分子形(PEFC)の燃料電池である。燃料電池2は、電解質膜7と、電解質膜7を挟んで対向配置される燃料極としてのアノード部8および酸素極としてのカソード部9とを備えており、これらが1つの発電単位(単位セル)として複数積層されることによりスタック構造に形成されている。なお、図1では、便宜上、複数の単位セルのうち、1つだけを表わし、その他の単位セルについては省略している。
プロトン交換膜としては、その内部をプロトン(H+)が移動できる膜であれば、特に制限されず、例えば、パーフルオロスルホン酸膜が挙げられる。
アニオン交換膜としては、その内部をアニオン(例えば、水酸化物イオン(OH-))が移動できる膜であれば、特に制限されず、例えば、4級アンモニウム基、ピリジニウム基などのアニオン交換基を有する固体高分子膜(アニオン交換樹脂)が挙げられる。
燃料側電極10の材料としては、特に制限されず、例えば、触媒が担持された多孔質担体などが挙げられる。
触媒としては、特に制限されず、例えば、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)などの周期表第8〜10(VIII)族元素や、例えば、Cu、Ag、Auなどの周期表第11(IB)族元素など、さらには、これらの組み合わせなどが挙げられ、好ましくは、Pt(白金)が挙げられる。
燃料側セパレータ11には、燃料側電極10との接触面において、燃料側電極10に向けて開放する溝(図示せず)が形成されている。アノード部8では、この溝と燃料側電極10の一方の面とにより形成される燃料流路内を、燃料が流れる。また、燃料側セパレータ11には、その燃料の流入口(図示せず)に、後述する燃料供給路15が接続されており、また、その燃料の流出口(図示せず)に、後述する燃料排出路19が接続されている。
カソード部9は、電解質膜7の他方の面に接触形成された酸素側電極12と、酸素側電極12における電解質膜7と接触する一方の面とは反対側の他方の面に接触形成され、隣接する単位セルとの境界を成す酸素側セパレータ13とを備えている。
酸素側セパレータ13には、酸素側電極12との接触面において、酸素側電極12に向けて開放する溝(図示せず)が形成されている。カソード部9では、この溝と酸素側電極12の他方の面とにより形成される酸素流路内を、酸素を含む空気(以下では、酸素を含む空気を、単に、「酸素」ということがある。)が流れる。また、酸素側セパレータ13には、その酸素の流入口(図示せず)に、後述する酸素供給路17が接続されており、また、その酸素の流出口(図示せず)に、後述する酸素排出路20が接続されている。
(B)燃料供給部
燃料供給部3は、燃料が貯められる燃料タンク14と、燃料タンク14内の燃料をアノード部8に供給する燃料供給路15とを備えている。
ヒドラジン類としては、例えば、無水ヒドラジン(NH2NH2)、水加ヒドラジン(NH2NH2・H2O)などのヒドラジン、トリアザン(NH2NHNH2)、テトラザン(NH2NHNHNH2)などが挙げられ、好ましくは、無水ヒドラジン、水加ヒドラジンが挙げられる。
燃料供給バルブ16は、燃料供給路15を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁などの公知の開閉弁である。また、燃料供給バルブ16は、制御部6と電気的に接続されており(図1の破線参照。)、制御部6からの入力信号により、その開閉が制御される。
(C)酸素供給部
酸素供給部4は、酸素をカソード部9に供給する酸素供給路17を備えている。
酸素供給ポンプ18は、大気中の酸素を、酸素供給路17に流すためのポンプであって、例えば、エアコンプレッサなどの公知の送気ポンプである。また、酸素供給ポンプ18は、制御部6と電気的に接続されており(図1の破線参照。)、制御部6からの入力信号により稼動するとともに、その出力が制御される。酸素供給ポンプ18の出力が制御されることによって、酸素供給路17を流れる酸素の流量が制御される。
(D)排出部
排出部5は、アノード部8で生成する生成物や未反応の燃料などを排出物として排出するための燃料排出路19と、アノード部8からクロスオーバーする燃料などを排出物として排出するとともに、カソード部9に供給される酸素を排出するための、無害化手段としての酸素排出路20と、燃料排出路19および酸素排出路20に排出された排出物を溜めるための貯留部21と、貯留部21に溜められた排出物をシステムの系外に排出するための排出路23とを備えている。
燃料排出バルブ22は、燃料排出路19を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁などの公知の開閉弁である。また、燃料排出バルブ22は、制御部6と電気的に接続されており(図1の破線参照。)、制御部6からの入力信号により、その開閉が制御される。
貯留部21は、燃料電池2よりも下方に配置され、例えば、排出物を溜めることのできる公知の貯留槽の他、排出物を溜めることのできる槽を備える装置であってもよい。貯留部21として、好ましくは、排出物を溜めることのできる槽を備える装置が挙げられ、具体的には、排出物を溜めるとともに、排出物を気体成分と液体成分とに分離できる気液分離器が挙げられる。
貯留部21には、その他方側の酸素排出路20の接続位置よりも上方において、排出物の気体成分を系外に排出するための気体排出路25が接続されている。
排出バルブ24は、排出路23を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁などの公知の開閉弁である。また、排出バルブ24は、制御部6と電気的に接続されており(図1の破線参照。)、制御部6からの入力信号により、その開閉が制御される。
(E)制御部
制御部6は、例えば、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータで構成されている。制御部6には、燃料供給バルブ16、酸素供給ポンプ18および燃料排出バルブ22および排出バルブ24が制御対象として電気的に接続されている(図1の破線参照)。
(F)貯留部の内部構成
図2は、図1に示す貯留部21の内部構成を示す断面図である。なお、図2では、気液分離機構を省略して貯留部21を表わしている。
触媒板26は、例えば、略矩形状のメッシュ板で形成され、好ましくは、略矩形状の銅板メッシュで形成される。複数の触媒板26は、一方側の側壁と他方側の側壁とが対向する幅方向に沿って、各触媒板26の一方および他方の面が互いに対向するように所定の間隔を隔てて配置されている。
また、貯留部21の一方側の側壁下部には、上記したように排出路23が接続されている。
(G)燃料電池システムでの発電
以上説明した燃料電池システム1では、制御部6によって、燃料供給バルブ16が開かれ、酸素供給ポンプ18が稼動されることにより、燃料供給路15に燃料としてのヒドラジン類が供給され、酸素供給路17に酸素が供給される。
また、酸素の供給量は、例えば、燃料電池2において目標とされる発電電力量の発生に必要な酸素の化学当量の1.1〜2.2倍の量であり、具体的な数値としては、供給される燃料の流量や目標発電電力量により異なるが、供給圧力として、例えば、0〜200kPa・G(ゲージ圧)であり、好ましくは、50〜150kPa・G(ゲージ圧)である。つまり、燃料電池システム1の発電において、酸素は、燃料電池2の目標発電電力量に必要な必要量よりも多い余剰量で供給される。
一方、酸素は、酸素供給ポンプ18の稼動により、カソード部9の酸素流路(図示せず)に流入し、スタック構造とされた各単位セルの酸素側電極12と接触する。
そして、電解質膜7がアニオン交換膜である場合、燃料電池2では、下記反応式(1)〜(3)で表わされる反応が生じて、発電が行なわれる。
(1) N2H4+4OH-→N2+4H2O+4e- (アノード部8での反応)
(2) O2+2H2O+4e-→4OH- (カソード部9での反応)
(3) N2H4+O2→N2+2H2O (燃料電池2全体での反応)
(H)ヒドラジン類を含有する排出物の無害化処理
上記した発電では、アノード部8に水(H2O)が生成するため、アノード部8中の燃料濃度が低下して、燃料電池2の発電効率が低下するおそれがある。燃料濃度の低下に起因する燃料電池2の発電効率の低下を防止すべく、発電中には、アノード部8の濃度センサ(図示せず)の検知に応じて、燃料排出バルブ22が開かれることにより、アノード部8で生成する水(H2O)およびその水と混合される未反応の燃料(ヒドラジン類)が、図1および図2において実線で液面が示されるように、排出物として貯留部21に溜められる。
そして、具体的には、カソード部9を通過して酸素排出路20から排出された酸素が、下流路28の小孔29から上方に向けて、触媒板26の面に沿って排出物中に気泡として吹き込まれることにより、排出物中のヒドラジン類と酸素とが接触する。カソード部9を通過する酸素は、燃料電池2の発電により生じる熱で、例えば、60〜90℃程度に温められるので、排出物には温かい酸素が吹き込まれる。
(4)N2H4+O2→N2+2H2O
上記した反応では、ヒドラジン類が酸素との反応により分解して、窒素(N2)と水(H2O)とが生成する。このようにして、貯留部21に溜められる排出物中のヒドラジン類の全部または一部が酸素との反応により分解する。つまり、火災や爆発のおそれのあるヒドラジン類が無害化される無害化処理が行なわれる。
以上のように、この燃料電池システム1では、アノード部8から排出される未反応ヒドラジン類が排出物として貯留部21に溜められるとともに、アノード部8からクロスオーバーによりカソード部9に移動した未反応ヒドラジン類も、排出物として貯留部21に溜められる。
また、貯留部21が気液分離器であることから、無害化処理により生じる気体成分(窒素(N2))を液体成分(水(H2O))と分離するための気液分離器を別途設ける必要がない。そのため、システムを簡略にすることができる。
(第2の実施形態)
図3は、本発明の燃料電池システムの第2の実施形態を示す概略構成図である。図3において、図1に示す各部に対応する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付している。また、以下では、同一の参照符号を付した部分についての詳細な説明を省略する。
(I)還流部
還流部31は、アノード部8から排出される燃料を燃料タンク14へ戻す還流用流路32を備えている。
還流用バルブ33は、還流用流路32を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁などの公知の開閉弁である。また、還流用バルブ33は、制御部6と電気的に接続されており(図3の破線参照。)、制御部6からの入力信号により、その開閉が制御される。
(J)ヒドラジン類を含有する排出物の無害化処理
この燃料電池システム30では、燃料電池2の発電中、アノード部8で生成する水(H2O)およびその水と混合される未反応の燃料(ヒドラジン類)は、還流用バルブ33が開かれることにより、還流用流路32を通って、燃料タンク14へ還流され、再度燃料電池2の発電に利用される。なお、燃料タンク14は、燃料タンク14とアノード部8との循環系内の燃料の濃度の低下度合に応じて、適宜濃度の高い燃料が充填されたタンクと取り替えられる。
そのため、カソード部9から排出されるヒドラジン類が、ヒドラジン類の状態で、燃料電池システム1の系外へ排出されることを防止することができる。さらに、ヒドラジン類の無害化処理が、燃料電池2の発電のためにカソード部9に供給される酸素を利用して行なわれるので、ヒドラジン類を無害化処理する装置などを別途設ける必要がない。その結果、燃料電池システム1を、効率的に無害化処理することのできるシステムとして構築することができる。
以上、本発明の2つの実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜設計を変形することができる。
また、前述の実施形態では、燃料電池システム1の発電において、酸素は、燃料電池2の目標発電電力量に必要な必要量よりも多い余剰量で供給されるとしたが、その量は、例えば、ヒドラジン類の濃度、アノード部8および/またはカソード部9から排出される排出物に含有されるヒドラジン類の量などに応じて適宜適切な量に調節することができる。それによって、無害化処理の処理効率を向上させることができる。
2 燃料電池
3 燃料供給部
4 酸素供給部
7 電解質膜
8 アノード部
9 カソード部
20 酸素排出路
21 貯留部
Claims (3)
- 電解質膜と、前記電解質膜を挟んで対向配置される燃料極および酸素極とを備える燃料電池と、
前記燃料極に燃料としてヒドラジン類を供給する燃料供給手段と、
前記酸素極に酸素を供給する酸素供給手段と、
前記燃料極側および前記酸素極側の少なくとも一方から排出されるヒドラジン類を含有する排出物を溜めるための貯留部と、
前記酸素供給手段から供給される酸素を前記貯留部の前記ヒドラジン類に気泡として吹き込み、前記貯留部に溜められる前記排出物を無害化する無害化手段と
を備えることを特徴とする、燃料電池システム。 - 前記貯留部が、気液分離器であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム。
- さらに、
前記貯留部に接続され、前記貯留部に溜められた排出物を系外に排出するための排出路と、
前記排出路の途中に介在され、前記排出路を開閉するための排出バルブと
を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
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